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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154446
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】荷役車両及び荷役システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20241024BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20241024BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20241024BHJP
   B66F 9/24 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
G08G1/16 D
G08G1/00 X
G08G1/09 V
B66F9/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068244
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 美徳
【テーマコード(参考)】
3F333
5H181
【Fターム(参考)】
3F333AA02
3F333FA05
3F333FA11
3F333FA20
3F333FE05
3F333FE09
5H181AA07
5H181AA27
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181CC24
5H181FF04
5H181FF33
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL09
5H181LL15
(57)【要約】
【課題】走行時の安全性を向上させる。
【解決手段】荷役車両20は、情報を送受信する通信部24と、自車の位置を計測する位置計測装置25と、制御部27と、を備えている。制御部27は、自車が所定の位置条件を満たした場合に、通信部24を、自車の位置情報を含む障害物データ262を送信する送信状態にし、かつ、情報を受信可能な受信状態にする。これにより、見通しが悪く死角が生じる曲がり角部に、複数の荷役車両20が異なる走行路から進入した場合に、荷役車両20同士で互いの位置情報を含む障害物データ262を交換することができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を送受信する通信部と、
自車の位置を計測する位置計測部と、
自車が所定の位置条件を満たした場合に、前記通信部を、自車の位置情報を含む送信情報を送信する送信状態にし、かつ、情報を受信可能な受信状態にする通信制御部と、
を備える荷役車両。
【請求項2】
前記通信部が他車の前記送信情報を受信した場合に、当該送信情報に基づいて自車の動作を制御する動作制御部を備える、
請求項1に記載の荷役車両。
【請求項3】
前記動作制御部は、
前記通信部が他車の前記送信情報を受信した場合に、当該送信情報に基づいて地図情報を更新し、
前記地図情報が更新されたことをオペレータに報知する、
請求項2に記載の荷役車両。
【請求項4】
前記通信制御部は、自車が所定位置から所定距離範囲内に位置した場合に、前記通信部を前記送信状態及び前記受信状態にする、
請求項1に記載の荷役車両。
【請求項5】
前記通信制御部は、他車の所定距離範囲内に位置した場合に、前記通信部を前記送信状態及び前記受信状態にする、
請求項1に記載の荷役車両。
【請求項6】
前記送信情報は、自車の位置情報と、自車のコストマップ情報とを含む、
請求項1に記載の荷役車両。
【請求項7】
前記送信情報は、自車の車両種、自車のサイズ、持ち荷の種類、持ち荷のサイズ、前後の向きの情報の少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の荷役車両。
【請求項8】
通信部を有する荷役車両と、
作業エリアに配置されて前記荷役車両を検知する検知部、前記作業エリアに配置されて前記荷役車両との間で情報を送受信可能なデータ通信機、を有するデータ通信ユニットと、
を備え、
前記荷役車両は、前記データ通信機の所定距離範囲内に位置した場合に、前記通信部を、自車の位置情報を含む送信情報を送信する送信状態にし、かつ、情報を受信可能な受信状態にし、
前記データ通信ユニットは、前記検知部が前記荷役車両を検知した場合に、前記データ通信機を、情報を受信可能な受信状態にし、かつ、受信した前記荷役車両の送信情報を送信する送信状態にする、
荷役システム。
【請求項9】
通信部を有する荷役車両と、
作業エリアに配置されて前記荷役車両を検知する検知部、前記作業エリアに配置されて前記荷役車両との間で情報を送信可能なデータ通信機、を有するデータ通信ユニットと、
を備え、
前記荷役車両は、前記データ通信機の所定距離範囲内に位置した場合に、前記通信部を、情報を受信可能な受信状態にし、
前記データ通信ユニットは、前記検知部が動作体を検知した場合に、前記データ通信機により、前記動作体の位置情報を含む送信情報を送信する、
荷役システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷役車両及び荷役システムに関する。
【背景技術】
【0002】
フォークリフト等の荷役車両による荷役作業では、荷棚等により死角が生じる曲がり角部において衝突事故が発生するおそれがある。
そこで、例えば特許文献1に記載の技術では、荷役車両から見て死角側の環境に設置したカメラの映像を荷役車両側に表示し、荷役車両のオペレータに死角側の状況を認識させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7057053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、人(オペレータ)がカメラ映像を視認したうえで衝突回避のアクションを判断している。そのため、オペレータによる誤認識又は誤判断がなされるおそれがあり、十分に安全であるとは言い切れない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、走行時の安全性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る荷役車両は、
情報を送受信する通信部と、
自車の位置を計測する位置計測部と、
自車が所定の位置条件を満たした場合に、前記通信部を、自車の位置情報を含む送信情報を送信する送信状態にし、かつ、情報を受信可能な受信状態にする通信制御部と、
を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、走行時の安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る荷役システムの概略の制御構成を示すブロック図である。
図2】実施形態に係る作業エリアの曲がり角部の周辺を示す平面図である。
図3】実施形態に係るデータ送受信処理の手順を示すフローチャートである。
図4】実施形態の変形例1を説明するための図である。
図5】実施形態の変形例2を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0009】
[荷役システムの構成]
図1は、本実施形態に係る荷役システム1の概略の制御構成を示すブロック図であり、図2は、荷役システム1の作業エリア50の曲がり角部C周辺を示す平面図である。
図1及び図2に示すように、荷役システム1は、複数の荷役車両20により、所定の作業エリア50で荷役作業(荷の積卸し、運搬、積付け、ピッキング、仕分け、荷揃え等の作業及びこれに付随する作業)を行うものである。
【0010】
作業エリア50は、例えば倉庫等であり、荷棚52を備える。ただし、作業エリア50は、曲がり角部Cを有する作業場所であれば特に限定されない。ここで、「曲がり角部C」とは、荷役車両20の走行路のうち、進入する荷役車両20(のオペレータ又は搭載センサ)に死角が生じる部分であり、例えば視界を遮る荷棚52等が付近に配置された交差点やカーブ等である。本実施形態の曲がり角部Cは、壁51に直交するように少なくとも2列の荷棚52が配置されて、壁51に沿った第1走行路55と荷棚52に沿った第2走行路56とが直交するT字路である。
【0011】
具体的に、荷役システム1は、データ送受信ユニット10と、複数の荷役車両20と、管理サーバ30とを備える。
【0012】
データ送受信ユニット10は、作業エリア50の曲がり角部Cに配置され、当該曲がり角部Cに進入する荷役車両20を検知して情報のやり取りを行う。データ送受信ユニット10は、環境センサ11と、データ送受信装置12とを備える。
【0013】
環境センサ11は、曲がり角部Cに進入する荷役車両20を検知する。環境センサ11は、曲がり角部Cに連なる全ての走行路に対して、当該曲がり角部Cから少なくとも所定距離まで見通せる(検知できる)位置、例えば交差点において道路反射鏡(カーブミラー)が設置される位置に配置される。本実施形態の環境センサ11は、第1走行路55と第2走行路56とが交差する壁51上に配置される。
ただし、環境センサ11は、曲がり角部Cに進入する動作体(荷役車両20含む)を、他の走行路から進入する荷役車両20の死角の範囲で検知可能であれば、その位置や検知範囲は特に限定されない。また、環境センサ11のセンサ種別は、荷役車両20を検知できるものであれば特に限定されず、例えば画像センサ(カメラ)でもよいし、LiDAR(Light Detection and Ranging)等の光学センサでもよい。あるいは、荷役車両20に設けられたマーカを検知するセンサ等でもよい。
【0014】
データ送受信装置12は、曲がり角部Cの近傍に配置され、曲がり角部Cの所定距離範囲内において後述の障害物データ262の送受信を行う。データ送受信装置12は、後述のとおり、環境センサ11からの実行信号に基づいてデータの送受信を行う。
なお、データ送受信ユニット10は、データ送受信装置12により送受信するデータを一時記憶しておく記憶部や、環境センサ11とデータ送受信装置12の制御やデータ処理を行う制御部を備えていてもよい。
【0015】
荷役車両20は、荷の搬送、荷の昇降及び荷の受渡し等が可能な車両であり、例えば軌条等を用いずに路上を走行できるフォークリフト等である。荷役車両20は、無人(自動)で動作可能な無人搬送フォークリフト(AGF:Automated Guided Forklift)でもよいし、オペレータが搭乗して運転する有人機でもよい。荷役車両20は無人機(AGF)の場合、管理サーバ30からの動作指令等に基づいて所定の荷役作業を行う。
具体的に、各荷役車両20は、駆動部21、操作部22、表示部23、通信部24、位置計測装置25、記憶部26、制御部27を備える。
【0016】
駆動部21は、荷役車両20の各種駆動源である走行モータ、操舵モータ及び荷役モータ(いずれも図示省略)を含む。走行モータは、車輪のうちの駆動輪を駆動する。操舵モータは、車輪のうちの操舵輪を回転(操舵動作)させる。荷役モータは、荷を保持する保持部(例えばフォーク)に昇降や傾倒等の各動作を行わせる駆動源である。
操作部22は、例えば有人(手動)運転時に運転者が各種操作を行う操作手段である。操作部22は、例えばハンドルやペダル、レバー、各種ボタン等を含み、これらの操作内容に応じた操作信号を制御部27に出力する。
【0017】
表示部23は、例えば液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイその他のディスプレイであり、制御部27から入力される表示信号に基づいて各種情報を表示する。なお、表示部23は、操作部22の一部を兼ねるタッチパネルであってもよい。また、表示部23は、音声出力可能な音声出力部を含んでもよいし、ランプ等の表示灯を含んでもよい。
通信部24は、管理サーバ30や他の荷役車両20等との間で各種情報を送受信可能な通信デバイスである。
【0018】
位置計測装置25は、荷役車両20自身の位置を計測するものである。本実施形態の位置計測装置25は、自己位置推定と環境地図作成を同時に行うSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)技術を利用したものである。具体的には、カメラで得た映像データから自己の位置及び姿勢と周辺の物体の位置情報を三次元で把握するVisual SLAM技術、または、二次元又は三次元のLiDARを用いたLiDAR SLAM技術を用いたものである。
ただし、位置計測装置25の具体構成は特に限定されず、例えば、GNSS(衛星測位システム)を利用するものでもよい。また、GNSSの電波が届きにくい屋内では、例えば、Wi-Fi、ビーコン、RFID、IMES、UWB、地磁気、音波、可視光等を利用した屋内測位(インドアマッピング)技術を利用してもよい。あるいは、走行方向を計測するセンサ(慣性計測装置等)と走行距離センサとを用い、微少時間に走行した方向と距離とを逐次積算して位置を計測するもの等でもよい。
【0019】
記憶部26は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等により構成されるメモリであり、各種のプログラム及びデータを記憶するとともに、制御部27の作業領域としても機能する。
本実施形態の記憶部26は、後述のデータ送受信処理(図3参照)を実行するためのプログラムのほか、地図データ261と障害物データ262を記憶している。
【0020】
地図データ261は、静止物体の位置情報等を含む作業エリア50の地図情報であり、位置計測装置25により随時更新される。地図データ261は、少なくとも曲がり角部Cの位置情報を含む。
障害物データ262は、作業エリア50の障害物に関するデータであり、本実施形態では荷役車両20(自車)の位置情報とコストマップデータを含む。コストマップデータは、作業エリア50の各部の移動難易度を表した地図データである。コストマップデータは、例えばリアルタイムの地図データ261に基づいて随時更新され、移動経路の生成等に用いられる。
なお、障害物データ262は、作業エリア50における荷役車両20の走行を妨げる障害物の情報を含むものであればよい。例えば、障害物データ262は、走行路中の物体や作業員(人)の位置情報を含んでもよいし、自車を他車から見た障害物として自車の位置情報を含んでもよい。また、障害物データ262は、位置情報のほか、自車の車両種、自車のサイズ、持ち荷の種類、持ち荷のサイズ、前後の向きの情報等の少なくとも1つを含んでもよい。
【0021】
制御部27は、例えばCPU(Central Processing Unit)等により構成され、荷役車両20各部の動作を制御する。具体的に、制御部27は、記憶部26に予め記憶されているプログラムを展開し、展開されたプログラムと協働して各種処理を実行したりする。
【0022】
管理サーバ30は、荷役システム1を中央制御するものであり、複数の荷役車両20の動作を制御可能に構成されている。管理サーバ30は、端末装置とクラウドサーバで構成されるもの等であってもよい。
具体的に、管理サーバ30は、操作部31、表示部32、通信部34、記憶部36、制御部37を備える。
【0023】
操作部31は、操作者が管理サーバ30を動作させるための各種操作を行う操作手段であり、例えばマウスやキーボード等のポインティングデバイスを含む。
表示部32は、例えば液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイその他のディスプレイである。表示部32は、制御部37から入力される表示信号に基づいて各種情報を表示する。
通信部34は、各荷役車両20との間で各種情報を送受信可能な通信デバイスである。
【0024】
記憶部36は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等により構成されるメモリであり、各種のプログラム及びデータを記憶するとともに、制御部37の作業領域としても機能する。
制御部37は、例えばCPU(Central Processing Unit)等により構成され、管理サーバ30各部の動作を制御する。具体的に、制御部37は、操作部31の操作内容等に基づいて、記憶部36に予め記憶されているプログラムを展開し、展開されたプログラムと協働して各種処理を実行したりする。
【0025】
[データ送受信処理]
続いて、作業中の荷役車両20が曲がり角部Cにおいてデータを送受信するデータ送受信処理について説明する。
図3は、データ送受信処理の手順を示すフローチャートである。
【0026】
データ送受信処理は、荷役車両20が曲がり角部Cに接近したときに、データ送受信ユニット10との間でデータを送受信し、死角における障害物の有無を検知して衝突を回避する処理である。このデータ送受信処理は、例えば荷役車両20の制御部27が記憶部26から該当するプログラムを読み出して展開することで、データ送受信ユニット10と協働して実行される。
【0027】
図3に示すように、データ送受信処理が実行されると、荷役車両20の制御部27は、オペレータの操作又は管理サーバ30からの動作指令に基づいて、作業エリア50での所定の荷役作業を開始する(ステップS1)。
このとき、荷役車両20は、作業中に周囲をスキャンして地図データ261及びコストマップデータを随時更新する。これは、例えばLiDAR(Light Detection and Ranging)等の距離センサを搭載し、作業中に周囲のスキャンを随時実行して周囲の物体を検出すればよい。
【0028】
次に、制御部27は、荷役車両20(自車)が曲がり角部Cに接近したか否かを判定する(ステップS2)。
ここでは、制御部27は、例えば地図データ261に基づいて、荷役車両20が曲がり角部Cの所定距離内まで接近したか否かを判定する。自車の位置は位置計測装置25により取得する。
そして、荷役車両20が曲がり角部Cに接近していないと判定した場合(ステップS2;No)、制御部27は、上述のステップS1へ処理を移行して荷役作業を続行する。
【0029】
また、荷役車両20が曲がり角部Cに接近したと判定した場合(ステップS2;Yes)、制御部27は、通信部24の送信機能により、自車の位置情報とコストマップデータを含む障害物データ262を周囲へ送信(発信)する(ステップS3)。すなわち、制御部27は、通信部24を、障害物データ262を送信する送信状態にする。
次に、制御部27は、通信部24の受信機能を有効(ON)にする(ステップS4)。すなわち、制御部27は、通信部24を、情報を受信可能な受信状態にする。
なお、当該ステップS3,S4では、例えばパブリッシュ・サブスクライブ方式でデータが送信及び受信される。また、当該ステップS3,S4の処理順序は特に限定されない。
【0030】
一方、データ送受信ユニット10は、データ送受信処理の開始に伴って、環境センサ11による動作体の検出を実行する(ステップT1)。
次に、データ送受信ユニット10は、ステップT1の検出結果に基づいて、当該データ送受信ユニット10が配置された曲がり角部Cに荷役車両20が接近してくるか否かを判定する(ステップT2)。
ここでは、曲がり角部Cの所定距離範囲内まで荷役車両20が近づいてきた場合に、荷役車両20が曲がり角部Cに接近してきたと判定する。そして、荷役車両20が曲がり角部Cに接近してこないと判定した場合(ステップT2;No)、データ送受信ユニット10は、上述のステップT1へ処理を移行して動作体の検出を続ける。
【0031】
また、荷役車両20が曲がり角部Cに接近してきたと判定した場合(ステップT2;Yes)、データ送受信ユニット10は、データ送受信装置12の受信機能を有効(ON)にする(ステップT3)。すなわち、データ送受信ユニット10は、データ送受信装置12を、情報を受信可能な受信状態にする。
次に、データ送受信ユニット10は、データ送受信装置12の送信機能により、障害物データ262を周囲へ送信する(ステップT4)。すなわち、データ送受信ユニット10は、データ送受信装置12を、障害物データ262を送信する送信状態にする。ただし、データ送受信ユニット10がステップT3において或る荷役車両20から障害物データ262を受信しており、かつ、当該荷役車両20とは異なる他の荷役車両20が曲がり角部Cに接近してきた場合にのみ、障害物データ262の送信を行うこととしてもよい。
なお、当該ステップT3,T4では、例えばパブリッシュ・サブスクライブ方式でデータが送信及び受信される。また、当該ステップT3,T4の処理順序は特に限定されない。
【0032】
これにより、データ送受信ユニット10は、ステップT3において、荷役車両20がステップS3で送信した障害物データ262を受信し、ステップT4において、当該障害物データ262を周囲に送信する。すると、荷役車両20は、ステップS4において、当該障害物データ262を受信する。ただし、荷役車両20は、自車の障害物データ262は受信しなくてよい(受信したと見做さなくてよい)。
したがって、曲がり角部Cに複数の荷役車両20が進入してきた場合、データ送受信ユニット10を介して複数の荷役車両20間で障害物データ262が交換される。これにより、各荷役車両20は、異なる走行路から曲がり角部Cに接近する他の荷役車両20の障害物データ262を取得できる。ひいては、荷棚52の死角で認識できない他の荷役車両20等の障害物の情報を好適に取得できる。
【0033】
次に、荷役車両20の制御部27は、ステップS4で他車の障害物データ262を受信したか否かを判定し(ステップS5)、受信していないと判定した場合には(ステップS5;No)、上述のステップS1へ処理を移行する。
【0034】
一方、ステップS4で他車の障害物データ262を受信したと判定した場合(ステップS5;Yes)、制御部27は、受信した障害物データ262の内容を加味して地図データ261を生成する(ステップS6)。
これにより、例えば自車の死角に存在する障害物(例えば他の荷役車両20)の情報を含んだ地図データ261が生成(更新)される。
【0035】
次に、制御部27は、ステップS6で生成された新たな地図データ261に基づいて、荷役車両20の動作を制御する(ステップS7)。
この場合の動作は、移動経路の生成(更新)等の通常動作のほか、新たな障害物に対応する回避動作を含む。回避動作とは、例えば、障害物を回避する新たな移動経路の生成(更新)、障害物である他車が通過するまで待機(停止)、障害物である他車が自車よりも移動優先度が高い場合には後退、等である。
また、新たな障害物の存在やその回避動作をオペレータに報知したり、報知したうえでオペレータに動作の実行操作を行わせたりしてもよい。この場合の報知態様は特に限定されず、報知内容を表示部23に表示したり音声出力したりしてもよい。表示部23の表示内容は、地図データ261が更新されたことをオペレータに報知するものであればよい。具体的には、例えば平面視での新たな移動経路でもよいし、停止(待機)や進行,右左折指示を色や矢印で表示する仮想的な信号機等でもよい。あるいは、曲がり角部Cに進入した各荷役車両20のオペレータが互いを認識していることを操作部22の操作等により確認し、その確認結果を表示部23に表示してもよい。
【0036】
次に、制御部27は、データ送受信処理を終了させるか否かを判定し(ステップS8)、終了させないと判定した場合には(ステップS8;No)、上述のステップS1へ処理を移行し、荷役作業を続ける。
そして、例えば荷役作業の終了等により、データ送受信処理を終了させると判定した場合には(ステップS8;Yes)、制御部27は、データ送受信処理を終了させる。
一方、データ送受信ユニット10は、データ送受信処理を終了させるか否かを判定し(ステップT5)、終了させないと判定した場合には(ステップT5;No)、上述のステップT1へ処理を移行する。
そして、例えば管理サーバ30からの終了指令等により、データ送受信処理を終了させると判定した場合には(ステップT5;Yes)、データ送受信ユニット10は、データ送受信処理を終了させる。
【0037】
なお、ステップS4で荷役車両20が取得する障害物データは、他車によるものでなく、データ送受信ユニット10の環境センサ11が取得した情報に基づくものであってもよい。
具体的には、データ送受信ユニット10が環境センサ11により曲がり角部C周辺の障害物を検出し、当該曲がり角部Cに接近してきた荷役車両20に当該障害物データを送信することとしてもよい。この場合、データ送受信ユニット10が送信する障害物データは、検出した障害物の情報(少なくとも位置情報)を含むものであればよい。またこの場合、上記データ送受信処理におけるステップS3とT3は不要となる。
このような構成によっても、各荷役車両20は曲がり角部Cにおける死角の情報を取得できる。
【0038】
[本実施形態の技術的効果]
以上のように、本実施形態によれば、上述のステップS2~S4のとおり、自車の位置が所定の位置条件を満たした場合に、通信部24が、自車の位置情報を含む障害物データ262(送信情報)を送信する送信状態にされ、かつ、情報を受信可能な受信状態にされる。
これにより、見通しが悪く死角が生じる曲がり角部Cに複数の荷役車両20が異なる走行路から進入した場合に、荷役車両20同士で互いの位置情報を含む障害物データ262を交換することができる。したがって、見通しが悪い曲がり角部Cでの衝突事故の発生を抑制し、走行時の安全性を向上させることができる。また、管理サーバ30を介在させずに簡便に必要な情報を取得できる。
【0039】
また、本実施形態によれば、通信部24が他車の障害物データ262を受信した場合に、当該他車の障害物データ262に基づいて自車の動作が制御される。
これにより、オペレータへの報知や障害物の回避動作等を好適に実行できる。
【0040】
また、本実施形態によれば、障害物データ262には、荷役車両20の位置データとそのコストマップデータが含まれる。
これにより、当該障害物データ262を取得した他の荷役車両20は、この荷役車両20を好適に回避できる。また、他の荷役車両20は、コストマップデータによって当該荷役車両20から見た障害物の情報を好適に取得できる。
【0041】
[変形例1]
上記実施形態では、データ送受信ユニット10を介して複数の荷役車両20が互いの障害物データ262を取得(交換)することとした。しかし、例えば図4に示すように、複数の荷役車両20同士が直接に障害物データ262を交換することとしてもよい。
この場合、各荷役車両20の地図データ261上には、障害物データ262の送受信を実行する曲がり角部Cが実行ポイントPcとして設定されている。そして、各荷役車両20の制御部27は、実行ポイントPcの所定距離範囲R1内に位置した場合に曲がり角部Cに接近したと判定し(ステップS2;Yes)、通信部24の送信機能により障害物データ262の周囲への送信を行うとともに(ステップS3)、通信部24の受信機能を有効にする(ステップS4)。
【0042】
これにより、荷役車両20が曲がり角部C(実行ポイントPc)に近づいたときに、当該曲がり角部Cの近くに他の荷役車両20が存在する場合には、これらの荷役車両20の間で障害物データ262を交換できる。ひいては、データ送受信ユニット10を設ける必要なく、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
なお、実行ポイントPcの検知は、検知用ターゲットを曲がり角部Cに実際に配置し、当該検知用ターゲットを荷役車両20の搭載センサで検知することとしてもよい。
【0043】
[変形例2]
また、曲がり角部Cに限らず複数の荷役車両20が互いに接近した場合に、障害物データ262を取得(交換)することとしてもよい。
この場合、例えば図5に示すように、荷役車両20が他の荷役車両20を検知した場合に(ステップS2;Yes)、通信部24の送信機能により障害物データ262の周囲への送信を行うとともに(ステップS3)、通信部24の受信機能を有効にすればよい(ステップS4)。他車の検知は、例えば当該他車が自車の所定距離範囲R2内に位置した場合に、検知したと判定すればよい。
なお、この場合には、各荷役車両20に優先順位を設定しておき、より優先順位の高い荷役車両20の計画経路が優先され、優先順位の低い荷役車両20の計画経路及び移動速度は再設定することとしてもよい。
【0044】
これにより、荷役車両20が作業エリア50内の位置に依らず他の荷役車両20に互いに近づいた場合に、これらの荷役車両20の間で障害物データ262を交換できる。したがって、上記実施形態と同様の効果が得られるうえに、フォーク等で保持している荷Lによりオペレータ(又は搭載センサ)に死角が生じる場合でも、当該死角に存在する障害物等の情報を取得できる。
【0045】
[その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態(変形例含む)に限られない。
例えば、荷役システム1は、QoS(Quality of Service)を実装し、例えば曲がり角部Cにおける荷役車両20同士のデータの送受信に遅延が生じないようにする等して、データ通信の効率化を図るのが望ましい。
【0046】
また、上記実施形態では、管理サーバ30が荷役システム1を制御することとしたが、管理サーバ30は無くてもよい。すなわち、本発明は、サーバレスのシステムにも好適に適用できる。
【0047】
また、本発明に係る荷役車両は、無人運転(自動運転)が可能なもの、有人運転(遠隔操作含む)が可能なもの、有人運転と無人運転を切り替え可能なものを含む。さらに、本発明は、有人運転の荷役車両と無人運転の荷役車両が混在している荷役システムにも適用可能であるし、有人運転のアシスト機能としても利用可能である。
【0048】
また、本発明に係る荷役車両は、フォーク(又はそれに類するもの)で荷を保持して走行できるものであればフォークリフトに限定されず、例えば無人で走行する無人搬送車(AGV:Automated Guided Vehicle)等を含む。
その他、上記実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 荷役システム
10 データ送受信ユニット(データ通信ユニット)
11 環境センサ(検知部)
12 データ送受信装置(データ通信機)
20 荷役車両
23 表示部
24 通信部
25 位置計測装置(位置計測部)
26 記憶部
27 制御部(通信制御部、動作制御部)
30 管理サーバ
50 作業エリア
52 荷棚
55 第1走行路
56 第2走行路
261 地図データ
262 障害物データ(送信情報)
C 曲がり角部
L 荷
Pc 実行ポイント
R 距離
図1
図2
図3
図4
図5