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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154447
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】ポジ型感光性組成物および硬化膜
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/023 20060101AFI20241024BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20241024BHJP
   G03F 7/075 20060101ALI20241024BHJP
   H10K 50/00 20230101ALI20241024BHJP
   H10K 59/12 20230101ALI20241024BHJP
   H10K 85/10 20230101ALI20241024BHJP
【FI】
G03F7/023
G03F7/038 503
G03F7/075 511
H10K50/00
H10K59/12
H10K85/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068247
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(72)【発明者】
【氏名】稲成 浩史
【テーマコード(参考)】
2H225
3K107
【Fターム(参考)】
2H225AE12P
2H225AF05P
2H225AM85P
2H225AN36P
2H225AN39P
2H225BA01P
2H225CA24
2H225CB02
2H225CC03
2H225CC21
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC11
3K107CC45
3K107DD90
3K107DD97
3K107EE03
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、パターニング性および透明性、高透明性、低誘電率特性に優れるポジ型感光性組成物およびその硬化膜を提供することである。
【解決手段】 (A)カチオン重合性基及び、アルカリ可溶性基を有する環状ポリシロキサン化合物、(B)キノンジアジド化合物、(C)酸発生剤を必須成分として含有するポジ型感光性組成物を用いることで、パターニング性および透明性、低誘電率特性に優れる絶縁膜を得ることができる。その絶縁膜はLSI、TFT、タッチパネル等に用いられる絶縁膜として有用である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カチオン重合性基および、アルカリ可溶性基を有する環状ポリシロキサン化合物、(B)キノンジアジド化合物、(C)酸発生剤を必須成分として含有するポジ型感光性組成物。
【請求項2】
カチオン重合性基がエポキシ基または、オキセタン基のうち少なくとも1つである請求項1に記載のポジ型感光性組成物。
【請求項3】
アルカリ可溶性基が下記式(X1)~(X2)で表される構造から選ばれる構造である事を特徴とする請求項1に記載のポジ型感光性組成物。
【化1】
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のポジ型感光性組成物を硬化して得られる硬化膜。
【請求項5】
請求項4の硬化膜よりなる薄膜トランジスタ平坦化膜。
【請求項6】
請求項5の薄膜トランジスタ平坦化膜を含む有機EL表示デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルカリ現像によりポジ型パターンを与える得る感光性組成物およびその硬化膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポジ型感光性組成物はディスプレイ製造、半導体製造において広く使用されており、アクリル樹脂、フェノール樹脂を主成分とするポジ型レジストが提案・商品化されている。一方、パターニング後デバイスに機能膜として残る永久レジストとしてポジ型感光性組成物を用いる場合、より耐久性を有する樹脂であるポリイミド系ポリマー(特許文献1)、シリコン系ポリマー(特許文献2)等の材料をベースとするポジ型感光性材料が提案されているが、いずれも配線間の絶縁膜などに用いる場合には誘電率が高く、寄生容量による信号遅延が問題となるなど、未だ満足のいく物性のものが得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-033772号公報
【特許文献2】特開2011-022173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記事情から本発明の目的は、パターニング性に優れ、その硬化膜が、高透明性、低誘電率特性を示すポジ型感光性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記事情に鑑み、本発明者らが鋭意検討した結果、下記特長を有する樹脂組成物を用いることにより上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、以下の構成を有するものである。
【0006】
1).(A)カチオン重合性基および、アルカリ可溶性基を有する環状ポリシロキサン化合物、(B)キノンジアジド化合物、(C)酸発生剤を必須成分として含有するポジ型感光性組成物。
【0007】
2).カチオン重合性基がエポキシ基または、オキセタン基のうち少なくとも1つである1)に記載のポジ型感光性組成物。
【0008】
3).アルカリ可溶性基が下記式(X1)~(X2)で表される構造から選ばれる構造である事を特徴とする1)または2)に記載のポジ型感光性組成物。
【0009】
【化1】

4).1)~3)のいずれか1項に記載のポジ型感光性組成物を硬化して得られる硬化膜。
【0010】
5).4)の硬化膜よりなる薄膜トランジスタ平坦化膜。
【0011】
6).5)の薄膜トランジスタ平坦化膜を含む有機EL表示デバイス。
【発明の効果】
【0012】
本発明により得られるポジ型感光性組成物はパターニング性に優れ、加熱して硬化させる事により透明性、低誘電率特性に優れた薄膜を与え得る。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の詳細を説明する。
本発明の感光性組成物は、フォトリソグラフィーによりポジ型のパターンを形成することができ、加熱して硬化させる事により透明性、低誘電率特性に優れた薄膜を与え得る。
本発明における感光性組成物では、(A)カチオン重合性基及び、アルカリ可溶性基を有する環状ポリシロキサン化合物、(B)キノンジアジド化合物、(C)酸発生剤を必須成分として含有することを特徴とする。環状ポリシロキサン化合物がアルカリ溶解性を発現する構造を有し、ナフトキノンアジド化合物と組み合わさることによって、アルカリ現像によるポジ型のパターニングが可能であり、カチオン重合性基を有する為、パターニング後の加熱により架橋反応が進行し優れた透明性、低誘電特性を示す薄膜が得られる。以下、詳細説明する。
【0014】
<(A)環状ポリシロキサン化合物>
感光性組成物は、(A)成分として、カチオン重合性基及びアルカリ可溶性基を有する環状ポリシロキサン化合物を含有する。以下では、カチオン重合性基及びアルカリ可溶性基を有する環状ポリシロキサン化合物を、「化合物(A)」と称する場合がある。化合物(A)は、環状ポリシロキサン構造およびカチオン重合性基、アルカリ可溶性基を有する。
【0015】
本明細書において、「環状ポリシロキサン構造」とは、環の構成要素にシロキサン単位(Si-O-Si)を有する環状分子構造骨格を意味する。環状ポリシロキサン構造を含有する化合物は、線状のポリシロキサン構造のみを含有する化合物と比較して、製膜性および得られる硬化物の耐熱性に優れる傾向がある。化合物(A)は、環状ポリシロキサン構造を主鎖に含有していてもよく側鎖に含有していてもよい。化合物(A)が主鎖に環状ポリシロキサン構造を含有する場合は、硬化物が耐熱性に優れる傾向がある。環状ポリシロキサン構造は、単環構造でもよく、多環構造でもよい。多環構造は多面体構造でもよい。環を構成するシロキサン単位のうち、T単位(XSiO3/2)またはQ単位(SiO4/2)の含有率が高いほど、得られる硬化物は硬度が高く、耐熱性に優れる傾向がある。M単位(XSiO1/2)またはD単位(XSiO2/2)の含有率が高いほど、得られる硬化物はより柔軟で低応力となる傾向がある。
【0016】
本明細書において、「カチオン重合性基」とは、熱や、活性エネルギー線が照射された場合に、カチオン重合し、架橋構造を形成する官能基を意味する。カチオン重合性基としては、エポキシ基、ビニルエーテル基、オキセタン基、およびアルコキシシリル基が挙げられる。安定性の観点から、化合物(A)は、架橋性基としてエポキシ基を有することが好ましい。エポキシ基の中でも、安定性の観点から、脂環式エポキシ基またはグリシジル基が好ましい。特に、重合性に優れることから、脂環式エポキシ基が好ましい。
【0017】
化合物(A)は、1分子中に複数のカチオン重合性基を有していてもよい。化合物(A)が1分子中に複数のカチオン重合性基を有する場合に、架橋密度の高い硬化物が得られ、耐熱性が向上する傾向がある。複数のカチオン重合性基は同一でもよく、2種以上の異なる官能基でもよい。
【0018】
本明細書において、アルカリ可溶性基とは、化合物にアルカリ可溶性を付与する官能基を意味する。化合物(A)は、アルカリ可溶性官能基を有することにより、アルカリ水溶液への可溶性を示す。化合物(A)とキノンジアジド化合物を含有する感光性組成物は、アルカリ現像によるパターニングが可能なパターン形成用材料(ポジ型感光性組成物)として適用され得る。
【0019】
アルカリ可溶性基としては、下記X1またはX2で表されるイソシアヌル酸誘導体構造、フェノール性水酸基およびカルボキシル基等が挙げられる。得られる硬化物の耐熱性等の観点から、化合物(A)は、アルカリ可溶性基として、上記式X1またはX2で表される構造を有することが好ましい。
【0020】
【化2】

カチオン重合性基及びアルカリ可溶性基をポリシロキサン系化合物中へ導入する方法は特に限定されない。化学的に安定なケイ素-炭素結合(Si-C結合)によって架橋性基及びアルカリ可溶性基をポリシロキサン系化合物中へ導入できることから、ヒドロシリル化反応を用いる方法が好ましい。換言すれば、化合物(A)は、ヒドロシリル化反応により有機変性され、ケイ素-炭素結合を介してカチオン重合性基及びアルカリ可溶性基が導入された環状ポリシロキサン化合物であることが好ましい。
【0021】
カチオン重合性基およびアルカリ可溶性基が導入された環状ポリシロキサン化合物は、例えば、下記の化合物を出発物質とするヒドロシリル化反応により得られる。
(α)1分子中に、SiH基(ヒドロシリル基)との反応性を有する炭素-炭素二重結合と、アルカリ可溶性官能基と、を有する化合物;
(β)1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する環状ポリシロキサン化合物;および
(γ)1分子中に、SiH基との反応性を有する炭素-炭素二重結合と、カチオン重合性官能基と、を有する化合物。
【0022】
(化合物(α))
化合物(α)は、1分子中に、SiH基との反応性を有する炭素-炭素二重結合と、アルカリ可溶性官能基とを有する有機化合物であれば特に限定されない。化合物(α)を用いることにより、化合物(A)にアルカリ可溶性官能基が導入される。
【0023】
SiH基との反応性を有する炭素-炭素二重結合を含む基(以下、単に「アルケニル基」と称することがある)としては、ビニル基、アリル基、メタリル基、アクリル基、メタクリル基、2-ヒドロキシ-3-(アリルオキシ)プロピル基、2-アリルフェニル基、3-アリルフェニル基、4-アリルフェニル基、2-(アリルオキシ)フェニル基、3-(アリルオキシ)フェニル基、4-(アリルオキシ)フェニル基、2-(アリルオキシ)エチル基、2,2-ビス(アリルオキシメチル)ブチル基、3-アリルオキシ-2,2-ビス(アリルオキシメチル)プロピル基およびビニルエーテル基等が挙げられる。SiH基との反応性の観点から、化合物(α)は、アルケニル基としてビニル基またはアリル基を含むことが好ましい。
【0024】
化合物(α)は、1分子中に2個以上のアルケニル基を有していてもよい。化合物(α)が1分子中に複数のアルケニル基を含む場合は、ヒドロシリル化反応により複数の化合物(β)を架橋できるため、得られる硬化物の架橋密度が高く、耐熱性が向上する傾向がある。
【0025】
入手性の観点から、化合物(α)は、ジアリルイソシアヌル酸、モノアリルイソシアヌル酸、ビニルフェノール、アリルフェノール、下記一般式(IIa)もしくは(IIb)で表される化合物、ブテン酸、ペンテン酸、ヘキセン酸、へプテン酸またはウンデシレン酸が好ましい。一般式(IIa)および(IIb)におけるRは、-O-、-CH-、-C(CH-、-C(CF-、および-SO-からなる群から選択される2価の基である。
【0026】
【化3】

これらの中でも、硬化物の耐熱性の観点から、化合物(α1)は、ジアリルイソシアヌル酸、モノアリルイソシアヌル酸、ジアリルビスフェノールA、ジアリルビスフェノールS、ビニルフェノールまたはアリルフェノールであることが好ましい。さらに硬化物の電気特性等の観点から、化合物(α)は、ジアリルイソシアヌル酸またはモノアリルイソシアヌル酸であることが特に好ましい。
【0027】
(化合物(β))
化合物(β)は、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する環状ポリシロキサン化合物であり、例えば、国際公開第96/15194号に記載の化合物で、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するもの等が使用できる。化合物(β)は、好ましくは1分子中に3個以上のSiH基を含む。耐熱性および耐光性の観点から、Si原子上に存在する基は、水素原子およびメチル基のいずれかであることが好ましい。
【0028】
化合物(β)は、例えば下記一般式(III)で表される環状ポリシロキサンである。
【0029】
【化4】


式中のR、RおよびRは、それぞれ独立に炭素数1~20の有機基を表す。mは2~10の整数、nは0~10の整数を表す。mは3以上が好ましい。m+nは3~12が好ましい。
【0030】
、RおよびRとしては、C、HおよびOからなる群から選択される元素により構成される有機基が好ましい。R、RおよびRの例として、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキルキル基、オキシアルキル基、アリール基等が挙げられる。中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等の鎖状アルキル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基等の環状アルキル基、またはフェニル基が好ましい。化合物(β)の入手性の観点から、R、RおよびRは、メチル基、プロピル基、ヘキシル基またはフェニル基であることが好ましい。RおよびRは、炭素数1~6の鎖状アルキル基であることがより好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0031】
一般式(III)で表される環状ポリシロキサン化合物としては、1,3,5,7-テトラハイドロジェン-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1-プロピル-3,5,7-トリハイドロジェン-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5-ジハイドロジェン-3,7-ジヘキシル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5-トリハイドロジェン-1,3,5-トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9-ペンタハイドロジェン-1,3,5,7,9-ペンタメチルシクロシロキサンおよび1,3,5,7,9,11-ヘキサハイドロジェン-1,3,5,7,9,11-ヘキサメチルシクロシロキサン等が例示される。中でも、入手容易性およびSiH基の反応性の観点から、1,3,5,7-テトラハイドロジェン-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン(一般式(III)において、m=4、n=0であり、Rがメチル基である化合物)が好ましい。
【0032】
化合物(β)は、多環の環状ポリシロキサンでもよい。多環は多面体構造でもよい。多面体骨格を有するポリシロキサンは、多面体骨格を構成するSi原子の数が6~24であるものが好ましく、6~10であるものがより好ましい。多面体骨格を有するポリシロキサンの具体例としては、下記一般式(IV)で示されるシルセスキオキサン(Si原子数=8)が挙げられる。
【0033】
【化5】

上記式中、R10~R17は、それぞれ独立に、水素原子、鎖状アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基およびブチル基等)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基等)、アリール基(フェニル基およびトリル基等)、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部をハロゲン原子またはシアノ基等で置換した基(クロロメチル基、トリフルオロプロピル基およびシアノエチル基等)、アルケニル基(ビニル基、アリル基、ブテニル基およびヘキセニル基等)、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、およびメルカプト基またはアミノ基を含有する有機基等から選択され1価の基である。上記炭化水素基の炭素数は、好ましくは1~20、より好ましくは1~10である。多面体骨格を有する環状ポリシロキサンは、ヒドロシリル化反応の反応性基であるヒドロシリル基を2個以上有する。したがって、R10~R17のうち少なくとも2つは水素原子である。
【0034】
環状ポリシロキサンは、多面体骨格を有するシリル化ケイ酸でもよい。多面体骨格を有するシリル化ケイ酸の具体例としては、下記一般式(V)で示される化合物(Si原子数=8)が挙げられる。
【0035】
【化6】

上記式中、R18~R41は、前述の一般式(IV)におけるR10~R17の具体例と同様であり、R18~R41のうち少なくとも2つは水素原子である。
【0036】
多面体骨格を有するシリル化ケイ酸においては、多面体骨格を構成するSi原子とSiH基(ヒドロシリル化反応の反応性基)とが、シロキサン結合を介して結合しているため、硬化物に柔軟性を付与できる。
【0037】
環状ポリシロキサンは、公知の合成方法により得られる。例えば、一般式(III)で表される環状ポリシロキサンは、国際公開第96/15194号等に記載の方法により合成できる。シルセスキオキサン等の多面体骨格を有するポリシロキサンおよび多面体骨格を有するシリル化ケイ酸は、例えば、特開2004-359933号公報、特開2004-143449号公報、特開2006-269402号公報等に記載の方法により合成できる。化合物(β)として、市販の環状ポリシロキサン化合物を用いてもよい。
【0038】
(化合物(γ))
化合物(γ)は、1分子中にアルケニル基とカチオン重合性基とを有する化合物であれば特に限定されない。化合物(γ)を用いることにより、化合物(A)にカチオン重合性基が導入される。したがって、化合物(γ)におけるカチオン重合性基は、前述の化合物(A)が有するカチオン重合性基と同一であり、好ましい態様も同様である。化合物(γ)におけるアルケニル基は、前述の化合物(α)におけるアルケニル基と同様のものが好ましい。
【0039】
カチオン重合性官能基としてエポキシ基を有する化合物(γ)の具体例としては、ビニルシクロヘキセンオキシド、アリルグリシジルエーテル、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートおよびモノアリルジグリシジルイソシアヌレート等が挙げられる。反応性の観点から、脂環式エポキシ基を有する化合物が好ましく、ビニルシクロヘキセンオキシドが特に好ましい。
【0040】
化合物(γ)のカチオン重合性官能基は、ビニルエーテル基、オキセタン基、およびアルコキシシリル基等でもよい。カチオン重合性官能基としてアルコキシシリル基を有する化合物(γ)の具体例としては、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、メチルジエトキシビニルシラン、メチルジメトキシビニルシランおよびフェニルジメトキシビニルシラン等のアルコキシシラン類等が挙げられる。カチオン重合性官能基としてビニルエーテル基を有する化合物(γ)としては、プロペニルエテニルエーテル等が挙げられる。カチオン重合性官能基としてオキセタン基を有する化合物(γ)としては、2-ビニルオキセタン、3-アリルオキシオキセタンおよび(3-エチルオキセタン-3-イル)メチルアクリレート等が挙げられる。
【0041】
(他の出発物質)
ヒドロシリル化反応による化合物(A)の合成においては、上記の化合物(α)(β)(γ)に加えて、他の出発物質を用いてもよい。例えば、出発物質として、化合物(δ):1分子中に2個以上のアルケニル基を有する化合物(ただし、化合物(α)および化合物(γ)を除く)を用いてもよい。1分子中に複数のアルケニル基を含む化合物(δ)を出発物質として用いれば、ヒドロシリル化反応により複数の化合物(β)が架橋されるため、化合物(A)の分子量が高められ、製膜性および硬化膜の耐熱性が向上する傾向がある。
【0042】
化合物(δ)は、有機重合体系化合物および有機単量体系化合物のいずれでもよい。有機重合体系化合物としては、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリアリレート系、ポリカーボネート系、飽和炭化水素系、不飽和炭化水素系、ポリアクリル酸エステル系、ポリアミド系、フェノール-ホルムアルデヒド系(フェノール樹脂系)またはポリイミド系の化合物が挙げられる。有機単量体系化合物としては、例えば、フェノール系、ビスフェノール系、ベンゼンまたはナフタレン等の芳香族炭化水素系;直鎖系および脂環系等の脂肪族炭化水素系;複素環系の化合物が挙げられる。
【0043】
化合物(δ)の具体例としては、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、1,1,2,2-テトラアリロキシエタン、ジアリリデンペンタエリスリット、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルモノベンジルイソシアヌレート、ジアリルイモノメチルソシアヌレート、1,2,4-トリビニルシクロヘキサン、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、ノナンジオールジビニルエーテル、1,4-シクロへキサンジメタノールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ビスフェノールSのジアリルエーテル、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、1,3-ジイソプロペニルベンゼン、1,4-ジイソプロペニルベンゼン、1,3-ビス(アリルオキシ)アダマンタン、1,3-ビス(ビニルオキシ)アダマンタン、1,3,5-トリス(アリルオキシ)アダマンタン、1,3,5-トリス(ビニルオキシ)アダマンタン、ジシクロペンタジエン、ビニルシクロへキセン、1,5-ヘキサジエン、1,9-デカジエン、ジアリルエーテル、ビスフェノールAジアリルエーテル、2,5-ジアリルフェノールアリルエーテル、およびそれらのオリゴマー、1,2-ポリブタジエン(1,2比率10~100%のもの、好ましくは1,2比率50~100%のもの)、ノボラックフェノールのアリルエーテル、アリル化ポリフェニレンオキサイド、その他、従来公知のエポキシ樹脂のグリシジル基の全部をアリル基に置き換えたもの等が挙げられる。
【0044】
耐熱性および耐光性の観点から、化合物(δ)は、下記一般式(VI)で表される化合物であることが好ましい。
【0045】
【化7】

式中のRおよびRはアルケニル基であり、同一でも異なっていてもよい。Rは、炭素数1~50の1価の有機基を表す。
【0046】
およびRは、前述の化合物(α)におけるアルケニル基と同様のものが好ましく、中でもビニル基およびアリル基が好ましく、アリル基が特に好ましい。硬化物の耐熱性を高める観点から、Rの炭素数は1~20が好ましく、1~10がより好ましい。Rの具体例は、前述の一般式(IV)におけるR10~R17具体例と同様である。Rは、SiH基との反応性を有する炭素-炭素二重結合を含んでいてもよい。化合物(δ)の好ましい例としては、トリアリルイソシアヌレートおよびジアリルモノメチルイソシアヌレートが挙げられる。
【0047】
一般式(VI)におけるRは、グリシジル基等の反応性基でもよい。エポキシ基の1種であるグリシジル基はカチオン重合性を有するため、一般式(VI)においてRがグリシジル基である化合物は、前述の化合物(γ)に分類される。一方、化合物(γ)として、グリシジル基よりもカチオン重合性の高い官能基を含む化合物(例えば、ビニルシクロヘキセンオキシド等の脂環式エポキシ基を含有する化合物)を用いる場合、主に脂環式エポキシ基がカチオン重合に関与するため、グリシジル基のカチオン重合への寄与が小さい。したがって、一般式(VI)においてRがグリシジル基である化合物は、化合物(δ)に分類することもできる。このような化合物(δ)の具体例としては、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートが挙げられる。
【0048】
ヒドロシリル化反応による化合物(A)の合成における出発物質として、化合物(ε):1分子中に、ヒドロシリル化反応に関与する官能基を1個のみ有する化合物(ただし、化合物(α)および化合物(γ)を除く)を用いてもよい。ヒドロシリル化反応に関与する官能基とは、SiH基、またはアルケニル基である。ヒドロシリル化反応に関与する官能基を1つのみ含む化合物を用いることにより、化合物(A)の末端に特定の官能基を導入できる。
【0049】
例えば、化合物(ε)として1つのSiH基を有するシロキサン化合物を用いることにより、化合物(A)の末端にシロキサン構造部位を導入できる。1つのSiH基を有するシロキサン化合物の具体例としては、前述の一般式(III)においてm=1である環状ポリシロキサン化合物、前述の一般式(IV)においてR10~R17のうち1つが水素原子である多面体ポリシロキサン化合物、前述の一般式(V)においてR18~R41のうち1つが水素原子であるシリル化ケイ酸化合物等が挙げられる。1つのSiH基を有するシロキサン化合物は、鎖状シロキサン化合物でもよい。
【0050】
化合物(ε)として、1つのアルケニル基を含む基を1つ有する化合物を用いることにより、化合物(A)の末端に所望の官能基を導入できる。
【0051】
上記の他に、2個以上のSiH基を有する鎖状ポリシロキサン等のヒドロシリル化反応に関与する化合物を、出発物質に含めてもよい。
【0052】
上記の例では、アルケニル基とアルカリ可溶性官能基とを有する化合物(α)、およびアルケニル基と架橋性基とを有する化合物を用いることにより、複数のSiH基を有する環状ポリシロキサン化合物(β)にアルカリ可溶性基とカチオン重合性官能基が導入される。化合物(α)に代えてアルカリ可溶性官能基とSiH基と含む化合物を用いてもよく、化合物(γ)に代えて架橋性基とSiH基とを含む化合物を用いてもよい。この場合、アルケニル基を有する環状ポリシロキサン化合物を用いることにより、環状ポリシロキサン化合物に、架橋性基およびアルカリ可溶性官能基を導入できる。環状ポリシロキサン化合物として、複数のアルケニル基を有する化合物を用いてもよい。
【0053】
アルケニル基を含有する環状シロキサン化合物としては、1,3,5,7-テトラビニル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1-プロピル-3,5,7-トリビニル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5-ジビニル-3,7-ジヘキシル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5-トリビニル-1,3,5-トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9-ペンタビニル-1,3,5,7,9-ペンタメチルシクロシロキサンおよび1,3,5,7,9,11-ヘキサビニル-1,3,5,7,9,11-ヘキサメチルシクロシロキサン等が挙げられる。アルケニル基を有する環状ポリシロキサン化合物は、耐熱性および耐光性の観点から、Si原子上に存在する有機基が、ビニル基またはメチル基であることが好ましい。
【0054】
(ヒドロシリル化反応)
ヒドロシリル化反応の順序および方法は特に限定されない。例えば、国際公開第2009/075233号に記載の方法に準じたヒドロシリル化反応により、化合物(A)が得られる。合成工程を簡便とする観点からは、全ての出発物質を1ポットに仕込んでヒドロシリル化反応を行い、最後に未反応の化合物を除去する方法が好ましい。一方、低分子量体の生成を抑制する観点からは、環状ポリシロキサン化合物へのアルカリ可溶性官能基の導入とカチオン重合性官能基の導入とを段階的に実施することが好ましい。例えば、複数のアルケニル基を含む化合物(例えば化合物(α)および/または化合物(δ))と複数のSiH基を含む化合物(例えば化合物(β))とを、一方を過剰量としてヒドロシリル化反応を行い、未反応の化合物を除去後に、1分子中にヒドロシリル化反応に関与する官能基を1個のみ有する化合物(例えば化合物(γ)および/または化合物(ε)添加してヒドロシリル化反応を行う方法が好ましい。
【0055】
ヒドロシリル化反応における各化合物の割合は特に限定されないが、出発物質のアルケニル基の総量AとSiH基の総量をBとが、1≦B/A≦30を満たすことが好ましく、1≦B/A≦10を満たすことがより好ましい。B/Aが1以上であれば、未反応のアルケニル基が残存し難く、B/Aが30以下であれば、未反応のSiH基が残存しにくいため、硬化膜の特性を向上できる。
【0056】
ヒドロシリル化反応には、塩化白金酸、白金-オレフィン錯体、白金-ビニルシロキサン錯体等のヒドロシリル化触媒を用いてもよい。ヒドロシリル化触媒と助触媒とを併用してもよい。ヒドロシリル化触媒の添加量は特に限定されないが、出発物質に含まれるアルケニル基の総量(モル数)に対して、好ましくは10-8~10-1倍、より好ましくは10-6~10-2倍である。
【0057】
ヒドロシリル化の反応温度は適宜に設定すればよく、好ましくは30~200℃、より好ましくは50~150℃である。ヒドロシリル化反応における気相部の酸素体積濃度は3%以下が好ましい。酸素添加によるヒドロシリル化反応促進の観点からは、気相部には、0.1~3体積%程度の酸素が含まれていてもよい。
【0058】
ヒドロシリル化反応には、溶媒を使用してもよい。溶媒としては、ベンゼン、トルエン、ヘキサンおよびヘプタン等の炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソランおよびジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;アセトンおよびメチルエチルケトン等のケトン系溶媒;クロロホルム、塩化メチレンおよび1,2-ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒等が挙げられる。反応後の留去が容易であることから、トルエン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソランまたはクロロホルムが好ましい。ヒドロシリル化反応においては、必要に応じて、ゲル化抑制剤を用いてもよい。
【0059】
(化合物(A)の好ましい態様)
化合物(A)は、好ましくはカチオン重合性基として脂環式エポキシ基を有する。脂環式エポキシ基は、1分子中にビニル基と脂環式エポキシ基とを有する化合物(γ)を出発物質として化合物(A)に導入されることが好ましい。
【0060】
化合物(A)はアルカリ可溶性基を有する。アルカリ可溶性基の中でも、前述の構造X1または構造X2が好ましい。前述のように、構造X1およびX2は、それぞれ、ジアリルイソシアヌル酸およびモノアリルイソシアヌル酸を出発物質(化合物(α))として化合物(A)に導入できる。
【0061】
環状ポリシロキサンの環状構造は、2以上のSiH基を有する環状ポリシロキサンを出発物質(化合物(β))として化合物(A)に導入されることが好ましい。中でも、化合物(β)として1,3,5,7-テトラハイドロジェン-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサンを用いることが好ましい。
【0062】
((B)キノンジアジド化合物)
本発明の感光性組成物は、キノンジアジド化合物を必須成分として含有し、アルカリ溶解性を発現する構造を含有する化合物と組み合わせることで、ポジ型のパターニング性を発現する。キノンジアジド化合物としては、特に制限は無く、レジスト分野で感光剤として使用されるもので公知のものを用いることが出来る。 キノンジアジド化合物は二種類以上を併用してもよい。キノンジアジド化合物としては、例えば、フェノール化合物と1,2-ベンゾキノンジアジド-4-スルホン酸又は1,2-ベンゾキノンジアジド-5-スルホン酸とのエステル、フェノール化合物と1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸又は1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸とのエステルが挙げられる。
【0063】
前記フェノール化合物としては、例えば、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,3’,4-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2,4-ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(p-ヒドロキシフェニル)メタン、トリ(p-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1-トリ(p-ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3-トリス(2,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルプロパン、4-{4-[1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチル]-α,α-ジメチルベンジル}フェノール、4,4’-[1-[4-[1-[4-ヒドロキシフェニル]-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、ビス(2,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビインデン-5,6,7,5’,6’,7’-ヘキサノール、及び2,2,4-トリメチル-7,2’,4’-トリヒドロキシフラバンが挙げられる。
【0064】
キノンジアジド化合物の具体例として、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノンと1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸とのエステル、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノンと1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸とのエステル、4-{4-[1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチル]-α,α-ジメチルベンジル}フェノールと1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸とのエステル、又は4-{4-[1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチル]-α,α-ジメチルベンジル}フェノールと1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸とのエステルなどが好適に使用できる。
【0065】
本発明の感光性組成物において、キノンジアジド化合物の含有量は、溶剤を除いた成分100重量部中、1~30重量部であることが好ましく、3~20重量部であることがより好ましく、5~15重量部であることがさらに好ましい。
【0066】
((C)酸発生剤)
本発明の感光性組成物は、熱または、光によって活性化する酸発生剤を含有することで、カチオン重合基による架橋反応を促進することが出来る。用いる酸発生剤としては、特に制限なく、公知の光酸発生剤、熱酸発生剤が適用できる。酸発生剤は、熱もしくは露光によりルイス酸を発生するものであれば特に限定されない。光酸発生剤としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、アンモニウム塩、その他のオニウム塩等のイオン性光酸発生剤;イミドスルホネート類、オキシムスルホネート類、スルホニルジアゾメタン類等の非イオン性光酸発生剤が挙げられる。市販されている光酸発生剤としては、FX-512(3M社)、UVR-6990及びUVR-6974(ユニオン・カーバイド社)、UVE-1014及びUVE-1016(ジェネラル・エレクトリック社)、KI-85(デグッサ社)、SP-150、SP-172、SP-606(ADEKA社)並びにサンエイドSI-60L、SI-80L及びSI-100L(三新化学工業社)、WPI113及びWPI116(和光純薬工業社)、CPI―210S、CPI310FG、Ik-1(サンアプロ社)、RHODORSIL PI2074(ローディア社)、BBI-102、BBI-103、BBI-105(みどり化学)を挙げることができる。
【0067】
<その他の成分>
本発明の感光性組成物は、上記(A)~(C)以外の樹脂成分や添加剤等を含有していてもよい。
【0068】
(貯蔵安定剤)
本発明の感光性組成物としては貯蔵安定性確保のため、ヒドロシリル化反応抑制剤を使用してもよい。具体的には、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機イオウ化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、これらを併用してもかまわない。
【0069】
脂肪族不飽和結合を含有する化合物としては、3-ヒドロキシ-3-メチル-1-ブチン、3-ヒドロキシ-3-フェニル-1-ブチン、1-エチニル-1-シクロヘキサノール等のプロパギルアルコール類、エン-イン化合物類、ジメチルマレート等のマレイン酸エステル類等が例示される。有機リン化合物としては、トリオルガノホスフィン類、ジオルガノホスフィン類、オルガノホスフォン類、トリオルガノホスファイト類等が例示される。有機イオウ化合物としては、オルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイド等が例示される。スズ系化合物としては、ハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズ等が例示される。有機過酸化物としては、ジ-t-ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸t-ブチル等が例示される。
【0070】
これらのゲル化抑制剤のうち、遅延活性が良好で原料入手性がよいという観点からは、ベンゾチアゾール、チアゾール、ジメチルマレート、3-ヒドロキシ-3-メチル-1-ブチン、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、トリフェニルホスフィンが好ましい。
【0071】
(溶剤)
本発明の硬化性組成物において均一に塗布するために溶剤を使用することが好ましい。使用できる溶剤は特に限定されるものではなく具体的に例示すれば、エチルシクロヘキサン、トリメチルペンタン等の炭化水素系溶剤、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン等のエーテル系溶剤、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、イソ酪酸イソブチル、酪酸イソブチル等のエステル系溶剤、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート(PGMEA)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル等のグリコール系溶剤、トリフルオロトルエン等のハロゲン系溶剤を好適に用いることができる。
【0072】
特に均一な膜が形成しやすい観点より、1,4-ジオキサン、イソ酪酸イソブチル、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート、メチルイソブチルケトン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル等が好ましい。
【0073】
使用する溶剤量は適宜設定できるが、用いるポジ型感光性組成物1gに対しての好ましい使用量の下限は0.1gさらには0.3gであり、好ましい使用量の上限は0.95gさらには0.85gである。使用量が少ないと、低粘度化等の溶剤を用いることの効果が得られにくく、また、使用量が多いと、材料に溶剤が残留して熱クラック等の問題となり易なる。これらの、溶剤は単独で使用してもよく、2種類以上の混合溶剤として用いることもできる。
【0074】
(添加剤)
本発明のポジ型感光性組成物は、上記の他に、接着性改良剤、カップリング剤(シランカップリング剤等)、劣化防止剤、ラジカル禁止剤、離型剤、難燃剤、難燃助剤、界面活性剤、消泡剤、乳化剤、レベリング剤、はじき防止剤、イオントラップ剤(アンチモン-ビスマス等)、チクソ性付与剤、粘着性付与剤、保存安定改良剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、増粘剤、可塑剤、反応性希釈剤、酸化防止剤、熱安定化剤、導電性付与剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、金属不活性化剤、熱伝導性付与剤および物性調整剤等を、本発明の目的および効果を損なわない範囲において含有していてもよい。
【0075】
(ポストベイクについて)
本発明の感光性組成物は、最終的に加熱により、架橋性基による架橋反応が進行し、低誘電率特性に優れた薄膜を得ることが出来る。加熱する温度は、280℃以下が好ましく、さらに周辺部材への熱ダメージが小さい観点より、250℃以下が好ましい。
【0076】
(フォトリソグラフィーについて)
本発明の感光性組成物の調製方法は特に限定されず、種々の方法で調製可能である。各種成分を硬化直前に混合調製しても良く、全成分を予め混合調製した一液の状態で低温貯蔵しておいても良い。
【0077】
本発明の感光性組成物を各種基材にコーティング方法は、均一に塗布が可能である方法であれば特に限定されるものではなく、一般によく使用される、スピンコーティング、スリットコーティングで塗布することができる。
【0078】
感光させるための光源としては、使用するナフトキノンジアジド化合物の吸収波長を発光する光源を使用すればよく、通常300~450nmの範囲の波長を含む光源、例えば、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、発光ダイオードなどを使用できる。露光量は特に制限されないが、好ましい露光量の範囲は1~1000mJ/cm、より好ましくは1~500mJ/cmである。
【0079】
また溶剤除去の目的で、露光前にプリベークや真空脱揮プロセスを行うことが出来る。ただし熱を加えることで現像性が低下するなどの問題から、プリベーク温度は、130℃以下が好ましく、更に好ましく120℃以下が好ましい。真空脱揮と加熱とを同時に行うこともできる。
【0080】
現像によるパターニング形成について特に限定される方法はなく、一般的に行われる浸漬法やスプレー法等の現像方法により露光部を溶解・除去し所望のパターン形成させることができる。現像液については、一般に使用するものであれば特に限定なく使用することができ、具体例としては、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液やコリン水溶液等の有機アルカリ水溶液や、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸リチウム水溶液などの無機アルカリ水溶液やこれら水溶液に溶解速度等の調整のためにアルコールや界面活性剤などを添加したもの、各種有機溶剤等を挙げることができる。
【0081】
さらに透明性に優れる硬化膜を得る目的で、ブリーチング処理を行うことが出来る。ブリーチングで用いる光源としては、上記で挙げたものを特に制限無く使用できる。ブリーチング時の露光量は特に制限されないが、好ましい露光量の範囲は10~5000mJ/cm、より好ましくは50~2000mJ/cmである。
【0082】
(誘電率について)
本発明の感光性組成物は、硬化後得られる薄膜は優れた絶縁膜として機能する。特に薄膜トランジスタの平坦化膜に用いられる絶縁膜として適用する場合、誘電率が低いほど、配線間の寄生容量が小さくなり、伝送遅延などのエラーを低減することができる。周波数100kHzおいてその値が3.1以下である事が好ましく、3.0以下であることがより好ましく、2.9以下である事がさらに好ましい。
【0083】
(光線透過率について)
本発明の感光性組成物は、硬化後得られる薄膜は優れた透明性を有する。特にディスプレイの薄膜トランジスタの平坦化膜に用いられる絶縁膜として適用する場合、光線透過率が高いほどディスプレイの画質向上に有利となる。光線波長400nmおいてその値が93%以上である事が好ましく、95%以上であることがより好ましく、96%以上である事がさらに好ましい。
【実施例0084】
以下に、本発明の実施例および比較例を示すが、本発明は以下によって限定されるものではない。
【0085】
本発明の感光性組成物より形成した薄膜は、ポジ型のパターン形成が可能であり、比較例の組成物と比較して優れた特性を示す絶縁膜として機能する。
【0086】
(薄膜形成およびフォトリソグラフィー性評価方法:パターニング性)
ガラス基板または、2000Åモリブデン薄膜つきガラス基板50×50mm上に実施例1、2および比較例1で得られた感光性組成物をスピンコートにより2μm厚で製膜し、ホットプレートにて100℃、2分乾燥、マスクアライナー(MA-10、ミカサ製)にてホールパターンのフォトマスク越しに120mJ/cm露光し、アルカリ現像液(TMAH2.38%水溶液、多摩化学工業製)にて現像処理を行った。さらに基板全面に500mJ/cm露光してブリーチング処理を行った後、230℃、30分でポストベイクを行い薄膜形成した。パターン形状を顕微鏡で観察し5×5μmのホール形成できているものを○、ホール形成ができていないものを×とした。
【0087】
(誘電率評価)
上記方法でモリブデン薄膜つきガラス基板上に形成した感光性組成物の薄膜上に真空蒸着機を用いてアルミ電極(3mmΦ)を形成しコンデンサを作製した。
半導体パラメーターアナライザ(Keithley4200)を用い1kHz、10V印加時の静電容量(F)を測定し、下記式から誘電率を算出した。
【0088】
ε=C×t/ε×A
C:静電容量(F)
ε:真空の誘電率(8.85X10-12
t:膜厚(m)
A:面積(m
比誘電率(ε)を上記式より算出した。
(光線透過率)
上記方法でガラス基板上に形成した感光性組成物の硬化膜を、試紫外可視分光光度計(日本分光社製 JASCO JSV 560)により、空気中での400nmの光線透過率を測定した。
【0089】
(合成実施例1)
100mL四つ口フラスコにトルエン20g、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン3gを入れ、気相部を窒素置換した後、内温100℃で加熱、攪拌した。ジアリルイソシアヌル酸2g、ジアリルモノメチルイソシアヌレート3g及び白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.7mg、トルエン5gの混合液を添加した。添加後H-NMRでビニル基由来のピーク消失を確認したのち、内温を80℃としてビニルシクロヘキセンオキシドを1g添加した。添加後H-NMRでビニル基由来のピーク消失を確認したのち、トルエンを減圧留去し、無色透明の液体「反応物A」を得た。
【0090】
(合成比較例1)
100mL付四つ口フラスコに、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル100g、テトラエトキシシラン5g、ジメチルジエトキシシラン10g、及びフェニルトリエトキシシラン30gを入れ、さらにギ酸10.3gと水16.0gの混合溶液を滴下して加えた。その後、80℃で1時間加熱し、さらに低分子成分を留去して「反応物B」を得た。
【0091】
(実施例1~2、比較例1)
合成実施例1~3、比較合成例1で得られた反応物A、Bおよび、キノンジアジド化合物((4-{4-[1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチル]-α,α-ジメチルベンジル}フェノールと1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸とのエステル(エステル化率2.0))、酸発生剤(SP-210S)、溶剤(プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート)を表1に記載の割合で調合し感光性組成物を調整した。結果を表―2に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】