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2024-154449感光性樹脂組成物、硬化膜及び半導体装置
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  • -感光性樹脂組成物、硬化膜及び半導体装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154449
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、硬化膜及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20241024BHJP
   G03F 7/023 20060101ALI20241024BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20241024BHJP
   C08G 73/22 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/004 502
G03F7/023
C08G73/10
C08G73/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068255
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】竹山 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】増田 有希
【テーマコード(参考)】
2H225
4J043
【Fターム(参考)】
2H225AE03P
2H225AE04P
2H225AE05P
2H225AF05P
2H225AM75P
2H225AM80P
2H225AN23P
2H225AN24P
2H225AN31P
2H225AN33P
2H225AN51P
2H225AN54P
2H225AN79P
2H225BA22P
2H225CA12
2H225CB06
2H225CC03
2H225CC21
4J043PA04
4J043PA19
4J043PB05
4J043PC065
4J043PC066
4J043QB15
4J043QB26
4J043QB31
4J043RA35
4J043SA06
4J043SA47
4J043SA71
4J043SB01
4J043TA03
4J043TA22
4J043TA71
4J043TB01
4J043UA151
4J043UA152
4J043UA632
4J043UA672
4J043UB061
4J043UB062
4J043UB231
4J043UB232
4J043VA022
4J043VA071
4J043VA072
4J043VA081
4J043XA16
4J043XB09
4J043XB20
4J043YA06
4J043YA23
4J043ZA12
4J043ZB22
(57)【要約】
【課題】高い耐熱性と高解像度が両立された感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】(A)ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾオキサゾール前駆体およびそれらの共重合体からなる群より選択される1種以上の樹脂、(B)感光剤および(C)熱架橋基を有する化合物を含有する感光性樹脂組成物であって、前記(C)熱架橋基を有する化合物が、(C1)熱架橋基を1つ含有する化合物、および(C2)熱架橋基を4つ以上含有する化合物を含有する感光性樹脂組成物
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾオキサゾール前駆体およびそれらの共重合体からなる群より選択される1種以上の樹脂、(B)感光剤および(C)熱架橋基を有する化合物を含有する感光性樹脂組成物であって、
前記(C)熱架橋基を有する化合物が、(C1)熱架橋基を1つ含有する化合物、および(C2)熱架橋基を4つ以上含有する化合物を含有する感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)樹脂100重量部に対して、前記(C1)化合物の含有量をCW1(重量部)、前記(C2)化合物の含有量をCW2(重量部)としたとき、1.0≦CW1/CW2≦3.0である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(C1)化合物の熱架橋基が、メチロール基またはアルコキシメチル基であり、
前記(C2)化合物の4つ以上の熱架橋基が、それぞれ独立に、メチロール基またはアルコキシメチル基である、請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)感光剤が、(B1)1,2-ナフトキノン-2-ジアジド-4-スルホン酸エステル化合物、および(B2)1,2-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホン酸エステル化合物を含有し、
前記(A)樹脂100重量部に対して、前記(B1)化合物の含有量をBW1(重量部)、前記(B2)化合物の含有量をBW2(重量部)としたときに、1.0≦BW1/BW2≦4.0である、請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記樹脂(A)100重量部に対して、前記(B)感光剤の含有量をBW(重量部)、前記(C)化合物の含有量をCW(重量部)としたとき、0.5≦BW/CW≦1.0である、請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
さらに、(D)酸化防止剤を含有する、請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記(D)酸化防止剤が、ヒンダードフェノール構造を有する、請求項6に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物を硬化した硬化膜。
【請求項9】
請求項8に記載の硬化膜を具備する半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、硬化膜及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーデバイスの表面保護膜には、優れた耐熱性、機械特性などを併せ持つポリイミド樹脂が広く用いられている。パワーデバイスの高耐圧化、高周波化、高温動作化などの高性能化に伴い、デバイスに残存して永久膜となる保護膜についても、耐電圧、体積抵抗値、耐薬品性、信頼性、及び耐久性に対する要求が高まっている。
【0003】
例えば、高い電圧に耐え得る十分な耐電圧性、高温高湿状態においても常温状態に匹敵する体積抵抗値、プレッシャークッカー試験後にも維持される高い体積抵抗値、高い耐湿熱性などの各種耐性が求められている。更に、大きな電力を取り扱うためのパワーデバイス用の電極の形成には、強力な酸・塩基水溶液を用いるため、保護膜にも優れた酸・塩基耐性が求められる。
【0004】
このようなパワーデバイス装置に適した信頼性の高い樹脂組成物として、線膨張係数が低い特定構造のポリアミド酸エステルを含む耐熱性の高い樹脂組成物(特許文献1参照)、高耐電圧で高温高湿状態における体積抵抗値と耐薬品性のすべてが高く、これらの性能が長期にわたって維持される特定構造のポリベンゾオキサゾール前駆体樹脂組成物(特許文献2参照)、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸やポリベンゾオキサゾール前駆体等に多官能(メタ)アクリレート及び分子量1000未満の低分子量イミド化合物を適用したネガ型の感光性樹脂組成物(特許文献3参照)、酸重合性基、塩基重合性基、及び、ラジカル重合性基よりなる群から選択される重合性基を二つ以上含有する特定構造のポリイミド前駆体と特定量の光重合開始剤を含むネガ型の感光性樹脂組成物(特許文献4参照)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-15507号公報
【特許文献2】特開2016-23226号公報
【特許文献3】特開2017-219850号公報
【特許文献4】特開2020-24374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載された技術では耐熱性の指標となる硬化膜のプレッシャークッカー400時間試験後の5%重量減量温度が低く、パワーデバイスに使用できる程度の十分な高温信頼性を有しているとは言えない。また、特許文献3や特許文献4に記載された技術は高温耐性や銅への密着性は高いものの、ネガ型の感光性であることから解像度が低く、高い耐熱性と高解像度を両立させているとは言えない。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するため、高い耐熱性と高感度を両立した感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は次の構成を有する。
すなわち、本発明の感光性樹脂組成物は、(A)ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾオキサゾール前駆体およびそれらの共重合体からなる群より選択される1種以上の樹脂、(B)感光剤および(C)熱架橋基を有する化合物を含有する感光性樹脂組成物であって、前記(C)熱架橋基を有する化合物が、(C1)熱架橋基を1つ含有する化合物、および(C2)熱架橋基を4つ以上含有する化合物を含有する感光性樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の感光性樹脂組成物により、高い耐熱性と高感度が両立された感光性樹脂組成物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】半導体装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本願発明において、熱架橋基を1つ含有する化合物および熱架橋基を4つ以上含有する化合物を併用することが耐熱性と感度を向上させることを新たに見出し、さらに、その含有量を規定することで、より高い耐熱性を図ることを見出したものである。
【0012】
本発明にかかる感光性樹脂組成物は、(A)ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾオキサゾール前駆体およびそれらの共重合体からなる群より選択される1種以上の樹脂(以下(A)樹脂と略称)、(B)感光剤および(C)熱架橋基を有する化合物を含有する感光性樹脂組成物であって、(C)熱架橋基を有する化合物が、(C1)熱架橋基を1つ含有する化合物および(C2)熱架橋基を4つ以上含有する化合物を含有する感光性樹脂組成物である。
【0013】
(C)熱架橋基を有する化合物を(A)樹脂が共存することで、感光性樹脂組成物の相溶性を維持しつつ、樹脂またはその他添加成分と架橋し、熱硬化後の膜の耐熱性、耐薬品性をさらに高めることができる。また、(C)熱架橋基を有する化合物を用いることで、(C)熱架橋基を有する化合物が熱硬化時にポリマーと反応しポリマーに付加されるため、その後の工程で熱による分解、気化が起こらなくなる。(C1)熱架橋基を1つ含有する化合物を用いることで、硬化時の膜の収縮を小さくし、硬化後のパターンに発生するシワを抑制することができる。ポリマー同士を架橋させ耐熱性を向上させる(C2)熱架橋基を4つ以上含有する化合物と併用することにより、硬化後の5%重量減少温度を向上させることができ、高い耐熱性を得るができる。
【0014】
ここで、5%重量減少温度とは、感光性樹脂組成物の硬化膜を、温度120℃、湿度100%での環境下で400時間静置後、その硬化膜を(株)島津製作所製DTG-60を用いて室温から10℃/分で200℃まで昇温し、200℃で10分加熱処理後、10℃/分で500℃まで昇温したときの、硬化膜の200℃での重量を基準として、重量が5%減少した温度と定義する。 この5%重量減少温度が470~500℃となることが好ましく、パワーデバイスに求められる高い耐熱性を達成できる。この5%重量減少温度は、より好ましくは480~500℃である。
【0015】
本願において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0016】
(C)熱架橋基を有する化合物とは、アルコキシメチル基、メチロール基、エポキシ基、オキセタニル基をはじめとする熱反応性の官能基を分子内に少なくとも1つ有する化合物を指す。
【0017】
(C1)熱架橋基を1つ含有する化合物としては、アルコキシメチル基、メチロール基、エポキシ基、オキセタニル基を分子内に有すれば特に限定はないが、好ましくはフェノール性水酸基を有し、メチロール基、アルコキシメチル基から選ばれる基を1つ含有する化合物であり、以下で示した構造の化合物が挙げられる。
【0018】
【化1】
【0019】
より好ましい例としては下記一般式(1)で示した構造が挙げられる。
【0020】
【化2】
【0021】
上記一般式(1)中、R10は炭素数1~20の有機基を表し、好ましくは炭素数1~4までのアルキル基である。炭素数が20以下であると硬化時の収縮率が小さくなり、好ましい。R11は、アルキル基、ビニル基、エステル基、アミド基、エチニル基、フェノキシ基、スルホン基、チオエーテル基、フェニル基、フルオロアルキル基、及びケトン基から選ばれた少なくとも1種の官能基を有する炭素数1~20の有機基、フッ素原子または炭素数1~20のアルコキシ基を表す。yは0~4の整数を示す。硬化時の収縮率を低くするためにはyは0~1であることが好ましく、0がさらに好ましい。zは1~5の整数を示す。ただし、y+z≦5である。
【0022】
一般式(1)で示される化合物のうち、より好ましい例として以下の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
【化3】
【0024】
(C1)熱架橋基を1つ含有する化合物の含有量は、(A)樹脂100重量部に対して、好ましくは0.5~40重量部であり、さらに好ましくは5~30重量部の範囲である。この範囲で含有することで良好なアルカリ溶解性が得られる。また、(C2)熱架橋基を4つ以上含有する化合物としては、アルコキシメチル基、メチロール基、エポキシ基、オキセタニル基をはじめとする熱反応性の官能基を分子内に4つ以上有すれば特に限定はないが、好ましくはフェノール性水酸基を有し、メチロール基、及びアルコキシメチル基から選ばれる基を4つ以上6つ以下含む化合物であり、以下の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
【化4】
【0026】
(C2)熱架橋基を4つ以上含有する化合物として、尿素系有機基を含有するアルコキシメチル基含有化合物の具体例を下記に示すが、これらに限定されない。
【0027】
【化5】
【0028】
アルコキシメチル基またはメチロール基を4つ以上有する化合物の好ましい例としては、例えば、HMOM-TPPHBA、(以上、商品名、本州化学工業(株)製)、NIKALAC MX-270、MW-100LM(以上、商品名、(株)三和ケミカル製)など公知のものが挙げられる。
【0029】
エポキシ基またはオキセタニル基を有する化合物としては、“エポライト”(登録商標)40E、“エポライト”100E、“エポライト”200E(以上商品名、共栄社化学(株)製)、VG3101L(商品名、(株)プリンテック製)、“テピック”(登録商標)S、“テピック”G、“テピック”P(以上商品名、日産化学工業(株)製)、OXT-121、OXT-221、OX-SQ-H、OXT-191、PNOX-1009、RSOX(以上商品名、東亜合成(株)製)、など公知のものが挙げられる。
【0030】
(C2)熱架橋基を4つ以上含有する化合物の含有量は、(A)樹脂100重量部に対して、3~40重量部が好ましく、5~20重量部がさらに好ましい。この範囲であれば架橋密度が高くなり、機械特性、耐熱性、耐薬品性が向上し、硬化後のシワ発生を抑えることができる。
【0031】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、(B)感光剤(以下、(B)成分と呼称する場合がある)を含有する。
【0032】
(A)樹脂を含む感光性樹脂組成物がさらに、(B)感光剤を含有することで、樹脂組成物に感光性を付与し、微細な開口パターンを形成することができる。
(B)感光剤は、紫外線に感応して化学構造が変化する化合物であり、例えば、光酸発生剤、光塩基発生剤、光重合開始剤などを挙げることができる。
【0033】
微細加工性の観点から、(A)樹脂および(B)感光剤を含む感光性樹脂組成物は、ポジ型感光性を有することが好ましい。
【0034】
上記した(B)感光剤の中で、光酸発生剤が好ましい。光酸発生剤を用いることで、感光性樹脂組成物の光照射部に酸が発生し、光照射部のアルカリ現像液に対する溶解性が増大するため、光照射部が溶解するポジ型のパターンを得ることができる。光酸発生剤としては、キノンジアジド化合物、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩などが挙げられる。さらに増感剤などを必要に応じて含むことができる。
【0035】
キノンジアジド化合物としては、フェノール性水酸基を有した化合物にナフトキノンジアジドのスルホン酸がエステルで結合した化合物が好ましい。ここで用いられるフェノール性水酸基を有する化合物としては、公知のものを使用してもよく、それらに4-ナフトキノンジアジドスルホン酸あるいは5-ナフトキノンジアジドスルホン酸をエステル結合で導入したものが好ましいものとして例示することができるが、これ以外の化合物を使用することもできる。
【0036】
フェノール性水酸基を有した化合物の官能基全体の50モル%以上がキノンジアジドスルホニル基で置換されていることが好ましい。50モル%以上置換されているキノンジアジド化合物を使用することで、キノンジアジド化合物のアルカリ水溶液に対する親和性が低下する。その結果、未露光部の樹脂組成物のアルカリ水溶液に対する溶解性は大きく低下する。さらに、露光によりキノンジアジドスルホニル基がインデンカルボン酸に変化し、露光部の感光性樹脂組成物のアルカリ水溶液に対する大きな溶解速度を得ることができる。すなわち、結果として組成物の露光部と未露光部の溶解速度比を大きくして、高い解像度でパターンを得ることができる。
【0037】
このようなキノンジアジド化合物を含有することで、一般的な水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)やそれらを含むブロードバンドに感光するポジ型の感光性を有する樹脂組成物を得ることができる。また、(B)感光剤は1種のみ含有しても、2種以上組み合わせて含有してもよい。
【0038】
キノンジアジドスルホニル基としては、5-ナフトキノンジアジドスルホニル基、4-ナフトキノンジアジドスルホニル基、同一分子中に4-ナフトキノンジアジドスルホニル基および5-ナフトキノンジアジドスルホニル基を含むものなどが挙げられる。
【0039】
キノンジアジド化合物は、フェノール性水酸基を有する化合物と、キノンジアジドスルホン酸化合物とのエステル化反応によって、公知の方法により合成することができる。キノンジアジド化合物を使用することで解像度、感度、残膜率がより向上する。
【0040】
(B)感光剤の分子量は、2500以下が好ましく、1600以下がより好ましい。分子量が2500以下であれば、パターン形成後の熱処理においてキノンジアジド化合物が十分に熱分解し、耐熱性、機械特性、接着性に優れた硬化膜を得ることができる。一方、800以上が好ましく、900以上がより好ましい。
【0041】
(B)感光剤の含有量は、(A)樹脂成分100重量部に対して、1~100重量部が好ましく、5~30がより好ましい。この範囲であれば、熱処理後の膜の耐熱性、耐薬品性および機械特性を維持しつつ、感光性を付与することができる。
【0042】
4-ナフトキノンジアジドスルホニル基を有する感光剤(以下、(B1)化合物と略称)が式(2)で表される化合物を含有し、5-ナフトキノンジアジドスルホニル基を有する感光剤(以下、((B2)化合物と略称)が式(3)で表される化合物を含有することが好ましい。
【0043】
【化6】
【0044】
【化7】
【0045】
式(2)で表される化合物の具体例としては、4CPA-15、4CPA-20、4CPA-80(以上商品名、ダイトーケミックス(株)製)TP4-250,HA4-170(以上商品名、東洋合成(株)製)などが挙げられる。
【0046】
また、式(3)で表される化合物の具体例としては、TP5-250、TP5-280、HA5-170(以上商品名、東洋合成(株)製)STP-525、STP-528(以上商品名、(株)三宝化学研究所製)などが挙げられる。
【0047】
また、本発明にかかる感光性樹脂組成物は、(A)樹脂を含有する。
【0048】
(A)樹脂について説明する。
【0049】
ポリイミドはイミド環を有するものであれば、特に限定されない。またポリイミド前駆体は、脱水閉環することによりイミド環を有するポリイミドとなる構造を有していれば、特に限定されず、ポリアミド酸やポリアミド酸エステルなどを含有することができる。ポリベンゾオキサゾールはオキサゾール環を有するものであれば、特に限定されない。ポリベンゾオキサゾール前駆体は、脱水閉環することによりベンゾオキサゾール環を有するポリベンゾオキサゾールとなる構造を有していれば、特に限定されず、ポリヒドロキシアミドなどを含有することができる。耐熱性の面からポリイミド、ポリイミド前駆体が好ましい。環状構造となることで、耐熱性、耐溶剤性が飛躍的に向上する。さらにアルカリ可溶性の面から、ポリイミド前駆体がより好ましい。
【0050】
ポリイミドは一般式(4)で表される構造単位を有し、ポリイミド前駆体およびポリベンゾオキサゾール前駆体は下記一般式(5)で表される構造単位を有し、ポリベンゾオキサゾールは一般式(6)で表される構造単位を有する。
【0051】
(A)樹脂はこれらを2種以上含有してもよいし、一般式(4)で表される構造単位、一般式(5)で表される構造単位、一般式(6)で表される構造単位を共重合した樹脂を含有してもよい。
【0052】
【化8】
【0053】
一般式(4)中、Vは炭素数4~40の4~10価の有機基、Wは炭素数4~40の2~8価の有機基を表す。aおよびbは、それぞれ独立に0~6の整数を示し、アルカリ可溶性を持たせるために、a+b>0であることが好ましい。RおよびRは水酸基、カルボキシ基、スルホン酸基およびチオール基からなる群より選ばれる基を表し、複数のRおよびRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0054】
【化9】
【0055】
一般式(5)中、XおよびYは、それぞれ独立に炭素数4~40の2~8価の有機基を表す。RおよびRは、それぞれ独立に水素原子、または炭素数1~20の1価の有機基を表す。cおよびdは、それぞれ独立に0~4の整数を示し、c+d>0である。eおよびfは、カルボキシル基またはエステル基の数を示し、それぞれ独立に0~2の整数を表す。好ましくは1または2である。アルカリ現像液に対する溶解性と、得られる感光性樹脂組成物の溶液安定性の点から、一般式(5)中に含まれるRおよびRのうち、それぞれ10モル%~90モル%が水素原子であることが好ましい。さらに、一般式(5)に含まれるRおよびRがそれぞれ独立に炭素数1~16の1価の炭化水素基を少なくとも1つ以上含有し、その他は水素原子であることがより好ましい。
【0056】
Xは芳香族基を有し、e≧2であって、芳香族アミド基のオルト位にカルボキシ基またはカルボキシエステル基を有し、脱水閉環することによりイミド環を形成する構造となる。
【0057】
一般式(5)において、ポリベンゾオキサゾール前駆体の場合は、一般式(5)中のXは芳香族基を有し、d>0であって、芳香族アミド基のオルト位にヒドロキシル基を有し、脱水閉環することによりベンゾオキサゾール環を形成する構造となる。
【0058】
【化10】
【0059】
一般式(6)中、Tは炭素数4~40の2価の有機基を示し、Uは、炭素数4~40の4価の有機基を表す。
【0060】
本発明の樹脂は、重量平均分子量で3,000~200,000が好ましい。この範囲では、樹脂のアルカリ現像液への適度な溶解性が得られるため、露光部と未露光部の高いコントラストが得られ、所望のパターンが形成できる。樹脂のアルカリ現像液への溶解性の面から、100,000以下がより好ましく、50,000以下がより好ましい。また、伸度向上の面から、10,000以上が好ましい。ここで分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により測定し、標準ポリスチレン検量線より換算して得ることができる。
【0061】
(A)樹脂は、一般式(4)、一般式(5)または一般式(6)で表される構造単位に加えて、他の構造単位を有してもよい。他の構造単位としては、例えば、カルド構造、シロキサン構造などが挙げられるが、これらに限定されない。ここの場合、一般式(4)、一般式(5)または一般式(6)で表される構造単位を、主たる構成単位とすることが好ましい。ここで主たる構成単位とは(A)樹脂の全構造単位数のうち一般式(4)、一般式(5)または一般式(6)で表される構造単位を50モル%以上有することをいい、70モル%以上有することがより好ましく、90モル%以上含有することがより好ましい。
【0062】
上記一般式(4)中、V-(R、上記一般式(5)中、(OH)-X-(COORは酸二無水物の残基、および上記一般式(6)中のTはジカルボン酸の残基を表す。Vは炭素数4~40の4価~10価の有機基であり、なかでも芳香族環または環状脂肪族基を含有する炭素原子数4~40の有機基が好ましい。Xは炭素数4~40の2価~8価の有機基および、Tは炭素数4~40の2価の有機基であり、なかでも芳香族環、または環状脂肪族基を含有する炭素原子数4~40の有機基が好ましい。
【0063】
(A)樹脂を構成する酸の残基としては、ジカルボン酸残基として、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、もしくはビス(カルボキシフェニル)プロパンなどの芳香族ジカルボン酸、またはシクロヘキサンジカルボン酸、もしくはアジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸などを挙げることができる。3価となる酸残基としては、トリメリット酸、トリメシン酸などのトリカルボン酸などを挙げることができる。4価となる酸残基としてはピロメリット酸、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス{4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル}フルオレン、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンおよび下記に示した構造の芳香族テトラカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸などを挙げることができるが、これらに限定されない。(A)樹脂を構成する酸の残基としてはこれらを2種以上用いてもよいが、テトラカルボン酸の残基を(A)樹脂に含まれる酸残基中で1~40モル%含むことが好ましい。また、アルカリ現像液に対する溶解性や感光性の点から、(A)樹脂に含まれる酸残基中で水酸基を有する酸の残基を50モル%以上含むことが好ましい。
【0064】
酸の残基を構成する酸成分は、耐熱性の点から芳香族環を有することが好ましく、下記に示すような炭素数6~30の3価または4価の有機基がさらに好ましい。
【0065】
【化11】
【0066】
式中、R17は酸素原子、C(CF、またはC(CHを表す。R18およびR19は水素原子、または水酸基を表す。
【0067】
(A)樹脂はフッ素原子を有すると、アルカリ水溶液で現像する際に、膜の界面に撥水性が付与され、界面からの現像液のしみこみなどが抑えられるため好ましい。(A)樹脂100重量部に対するフッ素原子含有量は、界面からのしみこみ防止効果を十分得るために10重量部以上が好ましく、また、アルカリ水溶液に対する溶解性の点から20重量部以下が好ましい。
【0068】
(A)樹脂を構成する酸、およびジアミン残基中でフッ素原紙を有するとしては、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン酸、9,9-ビス{4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル}フルオレン酸および下記に示した構造が好ましい。
【0069】
【化12】
【0070】
式中、R17は酸素原子、C(CF、またはC(CHを表す。R18およびR19は水素原子、または水酸基を表す。
【0071】
上記一般式(4)中のW-(R、上記一般式(5)中の(OH)-Y-(COORおよび上記一般式(6)中のUはジアミンの残基を表す。W、YおよびUは炭素数4~40の2~4価の有機基であり、なかでも芳香族環または環状脂肪族基を含有する炭素原子数4~40の有機基が好ましい。
【0072】
ジアミン残基の具体的な例としては、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)メチレン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシ)ビフェニル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)フルオレンなどのヒドロキシル基含有ジアミン、3-スルホン酸-4,4’-ジアミノジフェニルエーテルなどのスルホン酸含有ジアミン、ジメルカプトフェニレンジアミンなどのチオール基含有ジアミン、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ベンジン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、1,5-ナフタレンジアミン、2,6-ナフタレンジアミン、ビス(4-アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(3-アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス{4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}エーテル、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’,3,3’-テトラメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’,4,4’-テトラメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルなどの芳香族ジアミン残基や、これらの芳香族環の水素原子の一部を、炭素数1~10のアルキル基やフルオロアルキル基、ハロゲン原子などで置換した化合物、2,4-ジアミノ-1,3,5-トリアジン(グアナミン)、2,4-ジアミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジン(アセトグアナミン)、2,4-ジアミノ-6-フェニル-1,3,5-トリアジン(ベンゾグアナミン)などの含窒素複素芳香族環を有するジアミン残基、1,3-ビス(3-アミノプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3-ビス(p-アミノフェニル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3-ビス(p-アミノフェネチル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,7-ビス(p-アミノフェニル)-1,1,3,3,5,5,7,7-オクタメチルテトラシロキサンなどのシリコーンジアミン、シクロヘキシルジアミン、メチレンビスシクロヘキシルアミンなどの脂環式ジアミン残基および下記に示した構造のジアミン残基などが挙げられる。ジアミン残基はこれらを2種以上用いてもよいが、アルカリ現像液に対する溶解性の点から、(A)樹脂に含まれるジアミン残基100モル%中で水酸基を有するジアミンの残基を60モル%以上含むことが好ましい。
【0073】
【化13】
【0074】
式中、R20は酸素原子、C(CF、C(CH、R21~R24はそれぞれ水素原子、または水酸基を表す。
【0075】
その中で、アルカリ現像性や(A)樹脂、その硬化膜の透過率を向上させる観点から、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルヒド、4,4’-ジアミノジフェニルスルヒド、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレンおよび下記に示した構造のジアミンなどが好ましい。
【0076】
【化14】
【0077】
式中、R20は酸素原子、C(CF、またはC(CHを表す。R21~R22はそれぞれ水素原子、または水酸基を表す。
【0078】
特に好ましくは3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、下記に示した構造のジアミンなどである。
【0079】
【化15】
【0080】
式中、R20は酸素原子、C(CF、またはC(CHを表す。R21~R22はそれぞれ水素原子、または水酸基を表す。
【0081】
これらのジアミンは、ジアミンとして、またはジアミンにホスゲンと反応させて得られるジイソシアネート化合物、トリメチルシリル化ジアミンとして使用できる。
【0082】
耐熱性を低下させない範囲で、脂肪族ポリシロキサン構造を有するジアミン残基を共重合してもよい。脂肪族ポリシロキサン構造を有するジアミン残基を共重合することで基板との接着性を向上させることができる。具体的には、ジアミン成分として、ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、ビス(p-アミノフェニル)オクタメチルペンタシロキサンなどを全ジアミン残基中の1~15モル%共重合したものなどが挙げられる。この範囲で共重合させることが、シリコンウエハなどの基板との接着性向上の点、および、アルカリ溶液へ溶解性を低下させない点で好ましい。
【0083】
(A)樹脂の末端に末端封止剤を反応させることができる。ポリマーの末端を水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基およびチオール基からなる群より選ばれた官能基を有するモノアミンにより封止することで、樹脂のアルカリ水溶液に対する溶解速度を好ましい範囲に調整することができる。また、ポリマーの末端を酸無水物、酸クロリド、モノカルボン酸で封止することで、アルカリ水溶液に対する溶解速度を好ましい範囲に調整することができる。
【0084】
末端封止剤として用いられるモノアミンは、5-アミノ-8-ヒドロキシキノリン、1-ヒドロキシ-7-アミノナフタレン、1-ヒドロキシ-6-アミノナフタレン、1-ヒドロキシ-5-アミノナフタレン、1-ヒドロキシ-4-アミノナフタレン、2-ヒドロキシ-7-アミノナフタレン、2-ヒドロキシ-6-アミノナフタレン、2-ヒドロキシ-5-アミノナフタレン、1-カルボキシ-7-アミノナフタレン、1-カルボキシ-6-アミノナフタレン、1-カルボキシ-5-アミノナフタレン、2-カルボキシ-7-アミノナフタレン、2-カルボキシ-6-アミノナフタレン、2-カルボキシ-5-アミノナフタレン、2-アミノ安息香酸、3-アミノ安息香酸、4-アミノ安息香酸、4-アミノサリチル酸、5-アミノサリチル酸、6-アミノサリチル酸、2-アミノベンゼンスルホン酸、3-アミノベンゼンスルホン酸、4-アミノベンゼンスルホン酸、3-アミノ-4,6-ジヒドロキシピリミジン、2-アミノフェノール、3-アミノフェノール、4-アミノフェノール、2-アミノチオフェノール、3-アミノチオフェノール、4-アミノチオフェノールなどが好ましい。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて樹脂の末端を封止してもよい。
【0085】
酸無水物としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、ナジック酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、3-ヒドロキシフタル酸無水物などの酸無水物、3-カルボキシフェノール、4-カルボキシフェノール、3-カルボキシチオフェノール、4-カルボキシチオフェノール、1-ヒドロキシ-7-カルボキシナフタレン、1-ヒドロキシ-6-カルボキシナフタレン、1-ヒドロキシ-5-カルボキシナフタレン、1-メルカプト-7-カルボキシナフタレン、1-メルカプト-6-カルボキシナフタレン、1-メルカプト-5-カルボキシナフタレン、3-カルボキシベンゼンスルホン酸、4-カルボキシベンゼンスルホン酸などのモノカルボン酸類およびこれらのカルボキシル基が酸クロリド化したモノ酸クロリド化合物およびテレフタル酸、フタル酸、マレイン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、1,5-ジカルボキシナフタレン、1,6-ジカルボキシナフタレン、1,7-ジカルボキシナフタレン、2,6-ジカルボキシナフタレンなどのジカルボン酸類のモノカルボキシル基だけが酸クロリド化したモノ酸クロリド化合物、モノ酸クロリド化合物とN-ヒドロキシベンゾトリアゾールやN-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミドとの反応により得られる活性エステル化合物などが好ましい。これらは単独または2種以上を組み合わせて使用される。
【0086】
末端封止剤に用いられるモノアミンの導入割合は、樹脂中に全アミン成分に対して2~50モル%が好ましく、2~25モル%がより好ましい。酸無水物、酸クロリド、モノカルボン酸の導入割合は、樹脂中の全酸成分に対して2~50モル%が好ましく、2~25モル%がより好ましい。
【0087】
ポリマー中に導入された末端封止剤は、以下の方法で容易に検出できる。例えば、末端封止剤が導入されたポリマーを酸性溶液に溶解し、ポリマーの構成単位であるアミン成分と酸無水物成分に分解し、これをガスクロマトグラフィー(GC)や、NMR測定することにより、末端封止剤を容易に検出できる。これとは別に、末端封止剤が導入されたポリマーを直接、熱分解ガスクロマトグラフィー(PGC)や赤外スペクトル測定及び13C-NMRスペクトル測定することによっても検出できる。
【0088】
(A)樹脂は、重量平均分子量が10,000以上100,000以下であることが好ましい。重量平均分子量が10,000以上であれば、硬化後の硬化膜の機械特性を向上させることができる。より好ましくは重量平均分子量が20,000以上である。一方、重量平均分子量が100,000以下であれば、各種現像液による現像性を向上させることができ、さらに重量平均分子量が50,000以下であれば、アルカリ溶液による現像性を向上させることができるため好ましい。
【0089】
重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて確認できる。例えば展開溶剤をN-メチル-2-ピロリドン(以下、NMPと省略する場合がある)として測定し、ポリスチレン換算で求めることができる。
【0090】
(A)樹脂は公知の方法により合成される。(A)樹脂がポリイミド前駆体である、ポリアミド酸またはポリアミド酸エステルである場合、製造方法として例えば、低温下でテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物を反応させる方法、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとによりジエステルを得、その後アミンと縮合剤の存在下で反応させる方法、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとによりジエステルを得、その後残りのジカルボン酸を酸クロリド化し、アミンと反応させる方法などで合成することができる。
【0091】
ポリベンゾオキサゾール前駆体であるポリヒドロキシアミドの場合、製造方法としては、ビスアミノフェノール化合物とジカルボン酸を縮合反応させることで得ることが出来る。具体的には、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)のような脱水縮合剤と酸を反応させ、ここにビスアミノフェノール化合物を加える方法やピリジンなどの3級アミンを加えたビスアミノフェノール化合物の溶液にジカルボン酸ジクロリドの溶液を滴下するなどがある。
【0092】
ポリイミドである場合、前述の方法で得られたポリアミド酸またはポリアミド酸エステルを加熱あるいは酸や塩基などの化学処理で脱水閉環することにより得ることができる。
【0093】
ポリベンゾオキサゾールである場合、前述の方法で得られたポリベンゾオキサゾール前駆体(ポリヒドロキシアミド)を加熱あるいは酸や塩基などの化学処理で脱水閉環することにより得ることができる。
【0094】
上記の方法で重合させた後、多量の水やメタノール/水の混合液などに投入し、沈殿させて濾別乾燥し、単離することが望ましい。この沈殿操作によって未反応のモノマーや、2量体や3量体などのオリゴマー成分が除去され、熱硬化後の膜特性が向上する。
【0095】
(A)樹脂の含有量は感光性樹脂組成物100重量%のうち、20~60重量%とすることが好ましく、25~40重量%とすることがさらに好ましい。前記範囲とすることで、スピン塗布を行う上で適切な粘度とすることができる。
【0096】
また、本発明において、(A)樹脂100重量部に対して、(C1)化合物の含有量をCW1(重量部)、前記(C2)化合物の含有量をCW2(重量部)としたとき、1.0≦CW1/CW2≦3.0であることが好ましい。CW1/CW2が1.0以上であれば高い耐熱性が得られ、CW1/CW2が3.0以下であれば硬化後のシワ発生を抑制できる。
【0097】
好ましくは1.5≦CW1/CW2≦2.5、より好ましくは1.7≦CW1/CW2≦2.2、さらに好ましくは1.9≦CW1/CW2≦2.1である。
【0098】
また、本発明において、(C1)化合物の熱架橋基が、メチロール基またはアルコキシメチル基であり、
前記(C2)化合物の4つの熱架橋基が、それぞれ独立に、メチロール基またはアルコキシメチル基であることが好ましい。これにより、アルカリ現像性と架橋密度向上を両立できる。また、アルカリ現像性、すなわち感度を向上できる点で分子内にフェノール性水酸基を含むことが更に好ましい。
【0099】
また、本発明において、(B)感光剤が、(B1)1,2-ナフトキノン-2-ジアジド-4-スルホン酸エステル化合物、および(B2)1,2-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホン酸エステル化合物を含有し、樹脂(A)100重量部に対して、(B1)化合物の含有量をBW1(重量部)、(B2)化合物の含有量をBW2(重量部)としたときに、1.0≦BW1/BW2≦4.0であることが好ましい。
【0100】
露光光源として主に用いられるブロードバンドに対しては、製造工程のスループットの向上を目的に、高感度である感光性樹脂組成物が要請されている。そのためg線・h線・i線全ての領域の吸収を良くしなくてはならないが、(B1)1,2-ナフトキノン-2-ジアジド-4-スルホン酸エステル化合物はi線で反応したときに着色するため、底部まで光が通らず光照射部のアルカリ水溶液に対する溶解性が増大しない。(B2)1,2-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホン酸エステル化合物がg線照射することとフォトブリーチ効果でi線の透過率が上がり、1.0≦BW1/BW2≦4.0の混合比で(B-1)1,2-ナフトキノン-2-ジアジド-4-スルホン酸エステル化合物が底部まで反応して、より高感度となる。好ましくは1.5≦BW1/BW2≦3.0、より好ましくは1.8≦BW1/BW2≦2.7、さらに好ましくは2≦BW1/BW2≦2.5である。
【0101】
また、本発明において、樹脂(A)100重量部に対して、(B)感光剤の含有量をBW(重量部)、前記(C)熱架橋基を有する化合物の含有量をCW(重量部)としたとき、0.5≦BW/CW≦1.0であることが好ましい。BW/CWが0.5以上であれば高感度が得られ、BW/CWが1.0以下であれば高耐熱性が得られる。これにより、高感度と高耐熱性を両立できる。
好ましくは0.6≦BW/CW≦0.9、より好ましくは0.7≦BW/CW≦0.8である。
【0102】
また、本発明において、さらに、(D)酸化防止剤を含有することが好ましい。
酸化防止剤を含有することで、後工程の硬化における硬化膜の劣化を抑えることができ、黄変および伸度などの機械特性の低下を抑えられるとともに、耐熱性を向上できる。金属材料への防錆作用により、金属材料の酸化を抑制することができ、特に銅への密着性を向上できるため、好ましい。
【0103】
また、本発明において、(D)酸化防止剤が、ヒンダードフェノール構造を有することが好ましい。
ヒンダードフェノール化合物は、アルカリ水溶液で現像可能な場合、溶解促進剤として作用し残渣抑制効果も併せ持つ。(D)酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系酸化防止剤またはヒンダードアミン系酸化防止剤が好ましく、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が最も好ましい。また、1分子中のフェノール基又はアミノ基の数としては、酸化防止効果が得やすいことから2以上が好ましく、4以上がより好ましい。
【0104】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例として以下のものが挙げられるが、下記構造に限らない。
【0105】
【化16】
【0106】
【化17】
【0107】
【化18】
【0108】
【化19】
【0109】
【化20】
【0110】
ヒンダードアミン化合物としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、メチル-1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルメタクリレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルメタクリレート、デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)-4-ピペリジニル)エステルと1,1-ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピリジル)ブタン-1,2,3,4-テトラカルボキシレート又はテトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピリジル)ブタン-1,2,3,4-テトラカルボキシレートが挙げられる。
【0111】
(D)酸化防止剤の添加量としては、好ましくは(A)樹脂成分100重量部に対し、0.1重量部以上10.0重量部以下が好ましく、0.3重量部以上5.0重量部以下がより好ましい。酸化防止剤の含有量が、かかる範囲である場合に、現像性および硬化による変色抑制効果を適度に保つことができる。また、銅に対する密着性を向上させることができる。
【0112】
本発明の感光性樹脂組成物は、溶剤を含有することが好ましい。
これにより感光性樹脂組成物をワニスの状態にすることができ、塗布性を向上させることができる。
【0113】
溶剤は、γ-ブチロラクトンなどの極性の非プロトン性溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、ジアセトンアルコールなどのケトン類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチルなどのエステル類、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸i-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸i-ブチル、蟻酸n-ペンチル、酢酸i-ペンチル、プロピオン酸n-ブチル、酪酸エチル、酪酸n-プロピル、酪酸i-プロピル、酪酸n-ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n-プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸エチル等の他のエステル類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類などの溶剤を単独で、または複数種で含有させることができる。
【0114】
溶剤の含有量は、特に限定されないが、(A)樹脂成分100重量部に対して、50~2000重量部が好ましく、100~1500重量部がさらに好ましい。
【0115】
(A)樹脂を含む感光性樹脂組成物は、必要に応じてその他の成分として、ラジカル重合性化合物、フェノール性水酸基を有する化合物、密着改良剤、接着改良剤、界面活性剤等を含有してもよい。また、基板との接着性を高めるために、保存安定性を損なわない範囲で本発明の樹脂組成物にシラン化合物を含有することができる。シラン化合物を含有することにより、下地基板との接着性が向上する。シラン化合物の具体例としては、トリメトキシアミノプロピルシラン、トリメトキシエポキシシラン、トリメトキシビニルシラン、トリメトキシチオールプロピルシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、α-メチルスチリルジメチルメトキシシラン、p-スチリルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4―エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン 、3-エチル-[(トリエトキシシリルプロポキシ)メチル]オキセタン 、N-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン 、ビニルトリエトキシシラン、m-アセチルアミノフェニルトリメトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されない。シランカップリング剤の好ましい含有量は、(A)樹脂100重量部に対して0.01~5重量部である。
【0116】
次に、本発明における感光性樹脂組成物の製造方法について説明する。例えば、(A)樹脂と(B)感光剤、(C)熱架橋基を有する化合物、(D)酸化防止剤、ラジカル重合性化合物、溶剤、フェノール性水酸基を有する化合物、密着改良剤、接着改良剤、界面活性剤などをガラス製のフラスコやステンレス製の容器に入れてメカニカルスターラーなどによって撹拌溶解させる方法、超音波で溶解させる方法、遊星式撹拌脱泡装置で撹拌溶解させる方法などが挙げられる。
【0117】
上記感光性樹脂組成物の固形成分濃度は溶剤を含む全成分を100重量部としたとき、10~50重量部が好ましい。この固形成分濃度の場合、粘度が500~3000mPa・sの範囲内となり、塗布性に優れ所望の膜厚を得ることが容易になる。ここで、固形成分濃度とは溶剤以外の成分の濃度を言う。
【0118】
また、得られた感光性樹脂組成物は、濾過フィルターを用いて濾過し、ゴミや粒子を除去することが好ましい。濾過フィルターの材質には、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン(NY)、ポリテトラフルオロエチエレン(PTFE)などがあるが、ポリエチレンやナイロンが好ましい。異物を確実に除去するためにはこのような材質の0.1μm~5μmのポアサイズのフィルターで濾過することが好ましい。
【0119】
次に、本発明の樹脂組成物を用いた硬化膜を形成する方法について説明する。
本発明において、基板上に感光性樹脂組成物を塗布した際、塗布直後の膜中に溶剤が残存している膜を塗布膜、塗布膜を乾燥した膜を乾燥膜、乾燥膜を紫外線、可視光線などの化学線を照射して露光したのち、溶剤で現像した膜を現像膜、乾燥膜や現像膜を加熱硬化した膜は硬化膜と定義する。
【0120】
まず、本発明の樹脂組成物を基板に塗布し、塗布膜を得る。基板としては、シリコンウエハ、金属をスパッタしたシリコンウエハ、セラミックス類、ガリウムヒ素、有機系回路基板、無機系回路基板、シリコンウエハとエポキシ樹脂などの封止樹脂の複合基板、封止樹脂基板、およびこれらの基板に回路の構成材料が配置されたものなどが挙げられるが、これらに限定されない。有機系回路基板の例としては、ガラス布・エポキシ銅張積層板などのガラス基板銅張積層板、ガラス不織布・エポキシ銅張積層板などのコンポジット銅張積層板、仮張りキャリア基板、ポリエーテルイミド樹脂基板、ポリエーテルケトン樹脂基板、ポリサルフォン系樹脂基板などの耐熱・熱可塑性基板、ポリエステル銅張フィルム基板、ポリイミド銅張フィルム基板などのフレキシブル基板が挙げられる。また、無機系回路基板の例は、ガラス基板、アルミナ基板、窒化アルミニウム基板、炭化ケイ素基板などのセラミック基板、アルミニウムベース基板、鉄ベース基板などの金属系基板が挙げられる。回路の構成材料の例は、銀、金、銅などの金属を含有する導体、無機系酸化物などを含有する抵抗体、ガラス系材料および/または樹脂などを含有する低誘電体、樹脂や高誘電率無機粒子などを含有する高誘電体、ガラス系材料などを含有する絶縁体などが挙げられる。
【0121】
塗布方法としてはスピナーを用いた回転塗布、スプレー塗布、ロールコーティング、スクリーン印刷、ブレードコーター、ダイコーター、カレンダーコーター、メニスカスコーター、バーコーター、ロールコーター、コンマロールコーター、グラビアコーター、スクリーンコーター、スリットダイコーターなどの方法が挙げられる。また、塗布膜厚は、塗布手法、組成物の固形成分濃度、粘度などによって異なるが、通常、乾燥後の膜厚が0.1~150μmになるように塗布される。
【0122】
シリコンウエハなどの基板と樹脂組成物との接着性を高めるために、基板を前述のシランカップリング剤で前処理することもできる。例えば、シランカップリング剤をイソプロパノール、エタノール、メタノール、水、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、アジピン酸ジエチルなどの溶媒に0.5~20重量%溶解させた溶液を、スピンコート、浸漬、スプレー塗布、蒸気処理などにより表面処理をする。場合によっては、その後50℃~300℃までの熱処理を行い、基板とシランカップリング剤との反応を進行させる。
【0123】
次に上記基板を乾燥して、乾燥膜を得る。乾燥はオーブン、ホットプレート、赤外線などを使用し、50℃~150℃の範囲で1分間~数時間行うことが好ましい。
【0124】
この樹脂膜上に所望のパターンを有するマスクを通して化学線を照射し、露光、現像しパターンを形成してもよい。露光に用いられる化学線としては紫外線、可視光線、電子線、X線などがあるが、本発明では水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)を用いることが好ましい。
【0125】
露光後、現像液を用いて現像膜を得る。現像液としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアルカリ性を示す化合物の溶液が好ましい。
【0126】
本発明では特に、現像液として、アルカリ水溶液を用いることが好ましい。アルカリ現像工程後、微小な表面荒れと面内で均一な濡れ性が向上し、寸法均一性にすぐれたパターンを形成できるため好ましい。
【0127】
また場合によっては、アルカリ溶液にN-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、ジメチルアクリルアミドなどの極性溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類などを単独あるいは数種を組み合わせたものを添加してもよい。現像は上記の現像液を被膜面にスプレーする、現像液中に浸漬する、あるいは浸漬しながら超音波をかける、基板を回転させながら現像液をスプレーするなどの方法によって行うことができる。現像後は水にてリンス処理をすることが好ましい。ここでもエタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類などを水に加えてリンス処理をしてもよい。
【0128】
現像膜を加熱処理して熱架橋反応を進行させることにより樹脂膜を硬化させて硬化膜を得る。架橋により、耐熱性および耐薬品性を向上することができる。この加熱処理の方法は、段階的に昇温する方法や、ある温度範囲を選び連続的に昇温しながら5分間~5時間実施する方法を選択できる。前者の一例として、130℃、200℃で各30分ずつ熱処理する方法が挙げられる。後者の一例として室温より400℃まで2時間かけて直線的に昇温するなどの方法が挙げられる。本発明においての熱処理条件としては窒素雰囲気下で、最大硬化温度は200℃以上400℃以下が好ましく、250℃以上390℃以下が更に好ましく、320℃以上380℃以下が最も好ましい。
【0129】
さらに、本発明の硬化膜の製造方法は、加熱処理して得られた硬化膜にドライエッチング処理を施す工程を含むことが好ましい。ドライエッチング工程を施すことで、硬化膜上での微小な表面あれを向上し、アンカー効果によるバリアメタルとの密着性を向上できる。
【0130】
本発明のドライエッチング工程は、プラズマエッチング、反応性イオンエッチングなどが挙げられる。硬化膜において、異方性の高いエッチングが可能になるため、高いアンカー効果が得られる点から、反応性イオンエッチングの方が好ましい。ドライエッチングに用いられる反応性ガスは特に限定されず、テトラフルオロメタン、トリフルオロメタン、酸素、窒素、テトラクロロメタン、一酸化炭素、二酸化炭素などの反応性ガスを単独あるいは2種類以上を混合し用いられる。また、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスを混合してもよい。この中でも、硬化膜の表面エネルギーを向上し、バリアメタルとの密着性を向上できるため、反応性ガスは酸素を有することが好ましい。また、プラズマエッチング時のプラズマ出力は200W以上1500W以下が好ましく、圧力は、5~80Paが好ましい。
【0131】
ドライエッチング工程により、エッチングされる硬化膜の膜減り量は、0.1~0.5μmが好ましい。
【0132】
本発明の半導体装置は、硬化膜を具備する半導体装置である。一実施形態は、上記実施形態の感光性樹脂組成物を用いてなる硬化膜を有する半導体装置に関する。
【0133】
半導体装置の構成部材は、一般的に、半導体素子と封止部材(封止層)とを含む。半導体素子は、代表的に、半導体チップ(Si、SiC、GaN)、Cu、Niめっき、Agめっき、Auめっき、Au/Pd/Niメッキ、半田、焼結銀、焼結銅、Alワイヤ、Auワイヤ、及びセラミック基板(アルミナ、アルミナジルコニア、窒化アルミニウム、窒化ケイ素)などの無機材料から構成される。また、封止層は、代表的に樹脂等の有機材料から構成される。以下、樹脂から構成される封止層を樹脂封止層という。
【0134】
半導体装置において、各構成部材の間にプライマー層として上記実施形態の感光性樹脂組成物を用いた硬化膜を形成することによって、構成部材間の密着性を容易に高めることができる。より具体的には、例えば、樹脂封止層と基板との間、又は樹脂封止層と半導体素子との間に、上記感光性樹脂組成物の硬化膜を形成することで、各部材間の密着性を確保することができ、サイクル試験時の剥離を防止することが可能となる。このような観点から、一実施形態において、半導体装置は、基板と、上記基板上に搭載した半導体素子と、上記基板の少なくとも半導体素子搭載面に設けられたプライマー層と、上記プライマー層の上に設けられた樹脂封止層とを有し、上記プライマー層が、上記実施形態の感光性樹脂組成物を用いて形成された硬化膜から構成されることが好ましい。上記基板は、半導体素子を搭載するダイパットと、リードとから構成されるリードフレームであってよく、半導体素子の電極パットとリードフレームのリードとはワイヤを介して電気的に接続される。
【0135】
一実施形態において、上記シリコンカーバイド(SiC)基板又はガリウムナイトライド(GaN)基板を用いるパワー半導体デバイスの構成材料として上記感光性樹脂組成物を好適に使用することもできる。上記感光性樹脂組成物を用いてパワー半導体装置を構成した場合、ヒートサイクル試験時の各部材間の密着性の低下を容易に抑制することができる。
【0136】
以下、上記実施形態の半導体デバイスの代表的な構造において、図1を参照して具体的に説明する。図1は、半導体装置の一実施形態を示す模式的断面図である。図1に示す半導体デバイスは、ダイパット1aと、半導体素子2と、プライマー層3と、リード1bと、ワイヤ4と、樹脂封止層5とを有し、プライマー層3は上記実施形態の感光性樹脂組成物から形成される。図1に示すように、樹脂封止層5と接する基板の半導体素子搭載面(リード1b、半導体素子2を搭載したダイパット1aの表面)に、上記感光性樹脂組成物から形成されたプライマー層3が設けられていることにより、各部材間の密着性を容易に高めることができる。
【0137】
一実施形態において、半導体装置の製造方法は、少なくとも、半導体素子を搭載した基板の表面に、上記実施形態の感光性樹脂組成物を塗布し乾燥させてプライマー層を形成する工程と、上記プライマー層の上に樹脂封止層を形成する工程とを有する。
【0138】
上記実施形態において、上記プライマー層は、上記実施形態の感光性樹脂組成物を用いて形成される。作業性の観点から、樹脂成分として、(A)樹脂を含む感光性樹脂組成物を使用することが好ましい。上記プライマー層は、上記感光性樹脂組成物を所定の箇所に塗布し、塗膜を乾燥することによって得ることができる。本発明に記載したような感光性を付与することで、プライマー層のパターン形成が可能となる。パターン形成の方法は前述したとおりである。
【0139】
半導体素子を搭載するダイパットと、リードとから構成されるリードフレームの材料は、特に限定されず、当技術分野で周知の材料から選択することができる。パワー半導体装置に適用する観点から、ダイパット材料は、Ni又はCuからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。また、Ni又はCuからなる群からなる群から選択される1種は、その表面にAgめっきを有していてもよい。リードフレームのリード材料は、Ni又はCuからなる群から選択されることが好ましい。
【0140】
半導体素子の材料は、特に限定されず、例えば、シリコンウエハ、シリコンカーバイドウエハ等であってよい。
【0141】
樹脂封止層は、当技術分野で周知の封止材を用いて形成されたものであってよい。例えば、樹脂封止材は液状又は固体のエポキシ系樹脂組成物であってよい。樹脂封止層は、例えば、樹脂封止材を用いてトランスファー成形によって形成することができる。
【0142】
他の実施形態において、半導体装置の製造方法は、例えば、同一構造の配線が複数形成された半導体基板に、上記実施形態の感光性樹脂組成物を塗布及び乾燥して硬化膜を形成する工程と、必要に応じて上記感光性樹脂層上に上記半導体基板上の電極と電気的に導通する再配線を形成する工程とを有する。また、上記工程に加えて、必要に応じて再配線上又は樹脂層上に上記実施形態の感光性樹脂組成物を用いて硬化膜を形成する工程を有してよい。さらに、上記工程に加えて、必要に応じて上記硬化膜に外部電極端子を形成する工程、次いで、必要に応じてダイシングする工程を有してもよい。
【0143】
上記感光性樹脂層(プライマー層)の塗布方法は、特に制限されないが、スピンコート、スプレー塗布、又はディスペンス塗布であることが好ましい。上記樹脂層の乾燥方法は当技術分野で公知の方法によって行うことができる。上記実施形態の樹脂組成物は、再配線を形成する工程で必要とされる耐スパッタ性、耐メッキ性、及び耐アルカリ性等の特性にも優れる。そのことから、上記実施形態の感光性樹脂組成物は、上記に記載した半導体装置の構成に限定されることなく、あらゆる半導体装置の材料として好適に使用することができる。
【実施例0144】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお、実施例中の感光性樹脂組成物の評価は以下の方法で行った。
【0145】
(1)感度の評価
<感光性樹脂組成物膜の作製>
8インチシリコンウエハ上に、感光性樹脂組成物(以下ワニスと呼ぶ)をプリベイク後の膜厚が15μmとなるように塗布し、ホットプレート(東京エレクトロン(株)製の塗布現像装置ACT8)を用いて、120℃で3分間乾燥することにより、感光性樹脂膜(乾燥膜)を得た。
【0146】
<膜厚の測定方法>
大日本スクリーン製造(株)製ラムダエースを使用し、乾燥膜および現像膜は、屈折率1.629で測定し、硬化膜は屈折率1.773で測定した。
【0147】
<露光>
露光機(Nikon社製i線ステッパーNSR-2005i9C)に、20μm、40、60、80、100、150μm角のスクエアパターンの切られたレチクルをセットし、365nmの強度で露光時間を変化させて乾燥膜をi線で露光した。
【0148】
<現像>
東京エレクトロン(株)製ACT8の現像装置を用い、50回転で水酸化テトラメチルアンモニウムの2.38重量%水溶液を10秒間、露光後の膜に噴霧した。この後、0回転で120秒間静置し、400回転で水にてリンス処理し、3000回転で10秒間振り切り乾燥した。評価基準は上記現像後マスクサイズ20μmのパターンで20μmパターンが形成される最適露光時間(以下、これをEOPという)を求めた。EOPが800mJ/cm以下のものを極めて良好(A)、800mJ/cm超1000mJ/cm以下のものを良好(B)、1000mJ/cm超1200mJ/cm以下のものを可(C)、1200mJ/cm超のものを不良(D)とした。
【0149】
(2)熱硬化後のパターンしわ評価
<熱硬化処理>
前記(1)の方法で作製された現像膜を、光洋サーモシステム(株)製イナートオーブンCLH-21CD-Sに室温で投入後、酸素濃度20ppm以下で3.5℃/分で350℃まで昇温し、350℃で1時間加熱処理を行った。温度が50℃以下になったところでウエハを取り出し耐熱性樹脂被膜(硬化膜)を作製した。
【0150】
<しわ評価>
光学顕微鏡を用いて得られた硬化膜のパターンでコーナー部の観察を行った。評価基準はパターンサイズの一辺が100μm超のスクエアパターンでシワがないものを良好(A)、一辺が100μm超のスクエアパターンでシワがあり、一辺が80μm角超、100μm角以下のスクエアパターンでシワがないものを可(B)、一辺が80μm角超のスクエアパターンでシワがあり、一辺が80μm角以下のスクエアパターンでシワがないものを不可(C)とした。
【0151】
(3)耐熱性評価
<硬化膜の作製>
<高温高湿後の重量減少温度評価>
前述(1)の条件で8インチシリコン基板上にワニスの乾燥膜を得たのち、前述(2)の条件で加熱処理することで硬化膜を得た。得られた硬化膜をタバイエスペック製HAST CHAMBER(EHS-211MD)に投入し、PCT試験(プレッシャークッカーテスト)として121℃、湿度100%、2気圧の条件下で400時間処理を行った。ウエハを取り出し、45重量%のフッ化水素酸に5分間浸漬することで、ウエハから硬化膜を剥がした。剥離した膜を20mg程度になるよう裁断し、(株)島津製作所製DTG-60を用いて室温から10℃/分で200℃まで昇温し、200℃で10分処理後、10℃/分で500℃まで加熱した。200℃で処理後の重量から5%重量が減少した温度を求めた。5%重量減少温度が480℃以上のものを極めて良好(A)、470℃以上480℃未満のものを良好(B)、460℃以上470℃未満のものを可(C)、460℃未満のものを不良(D)とした。
【0152】
(合成例1) ヒドロキシル基含有ジアミン化合物(a)の合成
2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(商品名 BAHF セントラル硝子(株)製)18.3g(0.05モル)をアセトン100mL、プロピレンオキシド17.4g(0.3モル)に溶解させ、-15℃に冷却した。ここに3-ニトロベンゾイルクロリド20.4g(0.11モル)をアセトン100mLに溶解させた溶液を滴下した。滴下終了後、-15℃で4時間反応させ、その後室温に戻した。析出した白色固体をろ別し、50℃で真空乾燥した。
【0153】
固体30gを300mLのステンレスオートクレーブに入れ、メチルセルソルブ250mLに分散させ、5%パラジウム-炭素を2g加えた。ここに水素を風船で導入して、還元反応を室温で行った。約2時間後、風船がこれ以上しぼまないことを確認して反応を終了させた。反応終了後、ろ過して触媒であるパラジウム化合物を除き、ロータリーエバポレーターで濃縮し、下記式で表されるヒドロキシル基含有ジアミン化合物(a)を得た。
【0154】
【化21】
【0155】
(合成例2) ヒドロキシル基含有酸無水物(b)の合成
乾燥窒素気流下、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(BAHF)18.3g(0.05mol)とアリルグリシジルエーテル34.2g(0.3mol)をガンマブチロラクトン(GBL)100gに溶解させ、-15℃に冷却した。ここにGBL50gに溶解させた無水トリメリット酸クロリド22.1g(0.11mol)を反応液の温度が0℃を越えないように滴下した。滴下終了後、0℃で4時間反応させた。この溶液をロータリーエバポレーターで濃縮して、トルエン1Lに投入して下記式で表されるヒドロキシル基含有酸無水物(b)を得た。
【0156】
【化22】
【0157】
(合成例3) (A)樹脂(A-1)の合成
乾燥窒素気流下、合成例1で得られたヒドロキシル基含有ジアミン(a)13.6g(0.0225mol)をNMP50gに溶解させた。ここに合成例2で得られたヒドロキシル基含有酸無水物(b)17.5g(0.025mol)をピリジン30gとともに加えて、40℃で2時間反応させた。その後、末端封止剤として、4-アミノフェニルアセチレン0.58g(0.005mol)を加え、さらに40℃で1時間反応させた。反応終了後、溶液を水2Lに投入して、ポリマー固体の沈殿をろ過で集めた。ポリマー固体を80℃の真空乾燥機で72時間乾燥しポリイミド前駆体の(A)樹脂(A-1)を得た。GPCにより得られたポリマーの重量平均分子量を測定し、10,000以上50,000の範囲内であることを確認した。
【0158】
(合成例4) (A)樹脂(A-2)の合成
乾燥窒素気流下、合成例1で得られたヒドロキシル基含有ジアミン化合物(a)15.13g(0.040モル)、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(SiDA)1.24g(0.005モル)をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)50gに溶解させた。ここに3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸無水物(マナック(株)製、ODPA)15.51g(0.05モル)をNMP21gとともに加えて、20℃で1時間反応させ、次いで50℃で2時間反応させた。その後、N,N-ジメチルホルムアミドジエチルアセタール14.7g(0.1モル)をNMP15gで希釈した溶液を10分かけて滴下した。滴下後、40℃で3時間撹拌した。反応終了後、溶液を水2Lに投入して、ポリマー固体の沈殿をろ過で集めた。ポリマー固体を80℃の真空乾燥機で72時間乾燥しポリイミド前駆体の(A)樹脂(A-2)を得た。GPCにより得られた(A)樹脂(A-2)の重量平均分子量を測定し、n=10~100,000の範囲内であることを確認した。
【0159】
(合成例5) フェノール樹脂の合成
乾燥窒素気流下、m-クレゾール70.2g(0.65モル)、p-クレゾール37.8g(0.35モル)、37重量%ホルムアルデヒド水溶液75.5g(ホルムアルデヒド0.93モル)、シュウ酸二水和物0.63g(0.005モル)、メチルイソブチルケトン264gを仕込んだ後、油浴中に浸し、反応液を還流させながら、4時間重縮合反応を行った。その後、油浴の温度を3時間かけて昇温し、その後に、フラスコ内の圧力を30~50mmHgまで減圧し、揮発分を除去し、溶解している樹脂を室温まで冷却して、フェノール樹脂を得た。GPCから重量平均分子量は3,500であった。
【0160】
(合成例6) (B1)1,2-ナフトキノン-2-ジアジド-4-スルホン酸エステル化合物(B1-1)の合成
乾燥窒素気流下、TrisP-PA(商品名、本州化学工業(株)製)21.22g(0.05モル)と4-ナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリド26.86g(0.10モル)、4-ナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリド13.43g(0.05モル)を1,4-ジオキサン50gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4-ジオキサン50gと混合したトリエチルアミン15.18gを、系内が35℃以上にならないように滴下した。滴下後30℃で2時間撹拌した。トリエチルアミン塩を濾過し、ろ液を水に投入した。その後、析出した沈殿をろ過で集めた。この沈殿を真空乾燥機で乾燥させ、下記式で表される(B1)1,2-ナフトキノン-2-ジアジド-4-スルホン酸エステル化合物(B1-1)を得た。
【0161】
【化23】
【0162】
(合成例7) (B2)1,2-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホン酸エステル化合物(B2-1)の合成
乾燥窒素気流下、TrisP-HAP(商品名、本州化学工業社製)15.31g(0.05モル)と5-ナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリド40.28g(0.15モル)を1,4-ジオキサン450gに溶解させ、室温にしたほかは、合成例2と同様にして下記式で表される(B2)1,2-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホン酸エステル化合物(B2-2)を得た。
【0163】
【化24】
【0164】
各実施例、比較例に使用した他の熱架橋基を有する化合物、酸化防止剤をそれぞれ下記に示した。
・(C1)熱架橋基を1つ有する化合物; デナコール EX-145(商品名 ナガセケムテックス(株)製)
【0165】
【化25】
【0166】
・(C1)熱架橋基を1つ有する化合物; MOM-26X(商品名 本州化学工業(株)製)
【0167】
【化26】
【0168】
・(C1)熱架橋基を1つ有する化合物; 4MOM-P(商品名 本州化学工業(株)製)
【0169】
【化27】
【0170】
・(C2)熱架橋基を4つ以上有する化合物; HMOM-TPPHBA(商品名 本州化学工業(株)製)
【0171】
【化28】
【0172】
・(C2)熱架橋基を4つ以上有する化合物; NIKALAC MX-270(商品名、(株)三和ケミカル製)
【0173】
【化29】
【0174】
・(C2)熱架橋基を4つ以上有する化合物; NIKALAC MW-100LM(商品名、(株)三和ケミカル製)
【0175】
【化30】
【0176】
・(C2)熱架橋基を4つ以上有する化合物;TML-BPA(商品名 本州化学工業(株)製)
【0177】
【化31】
【0178】
・(D)酸化防止剤; “Irgafas”168(商品名 BASFジャパン(株)製)
【0179】
【化32】
【0180】
・酸化防止剤; “Irganox”245(商品名 BASFジャパン(株)製)
【0181】
【化33】
【0182】
(実施例1)
前記合成例3で得られた(A)樹脂(A-1)を100.0g、前記合成例6で得られた(B1)1,2-ナフトキノン-2-ジアジド-4-スルホン酸エステル化合物(B1-1)を15.0g、(C1)熱架橋基を1つ有する化合物として商品名デナコール EX-145を24.5g、(C2)熱架橋基を4つ以上有する化合物として商品名HMOM-TPPHBAを7.0gそれぞれ計り、溶剤としてγブチロラクトン(GBL)250.0gを加えて溶解した後、0.5μmのポリテトラフルオロエチレン製のフィルター(住友電気工業(株)製)で濾過して感光性樹脂組成物(ワニス)を得た。
【0183】
(実施例2~実施例24)
実施例1と同様の方法でワニスを得た。
【0184】
(比較例1~3)
実施例1と同様の方法で、ワニスを得た。
【0185】
ワニスの(A)樹脂、(B)感光剤、(C)熱架橋基を有する化合物、(D)酸化防止剤の種類と量、感光性樹脂組成物の硬化温度は(表1)に示した。表1中の各成分を番号で記載した欄の下段には配合量を記載した。溶剤はすべての実施例および比較例でγブチロラクトン(GBL)250.0gである。
【0186】
【表1-1】
【0187】
【表1-2】
【0188】
このワニスを用いて前記した方法で感度と熱硬化後のパターンしわ、耐熱性を評価した。感度を評価する基板は、8インチシリコンウエハを用いた。評価結果を表2に示す。
【0189】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0190】
本発明に係る樹脂組成物は、高い耐熱性を有し、例えば、半導体絶縁膜、TFT-LCD絶縁膜、電極保護膜、有機ELなどのフレキシブルディスプレイの製造における基板材料として、好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0191】
1a:ダイパット
1b:リード
1:1a(ダイパッド)+1b(リード)
2:半導体素子
3:プライマー層
4:ワイヤ
5:樹脂封止層
図1