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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154458
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】三相AC/DC変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/12 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
H02M7/12 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068264
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 雅史
【テーマコード(参考)】
5H006
【Fターム(参考)】
5H006AA02
5H006CA01
5H006CA02
5H006CA07
5H006CB01
5H006DA02
5H006DA04
5H006DC02
5H006DC05
(57)【要約】
【課題】従来のものよりも低コスト、小型、長寿命であり、かつ制御が簡単な三相AC/DC変換装置を提供する。
【解決手段】三相AC/DC変換装置1Aは、第1相電力が入力される第1PFC部21Aと、第2相電力が入力される第2PFC部22Aと、第3相電力が入力される第3PFC部23Aと、PFC部21A,22A,23Aに1対1に接続された第1入力端、第2入力端および第3入力端を有する三相LLCコンバータ部3Aとを備える。PFC部21A,22A,23Aは、スイッチング素子の制御により生じる高周波ノイズを除去するためのコンデンサを含む。三相LLCコンバータ部3Aは、第1入力端、第2入力端および第3入力端に各1つ接続されたトランスTr1,Tr2,Tr3を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相交流電源から供給される第1相電力、第2相電力および第3相電力を所望の直流電力に変換する三相AC/DC変換装置であって、
入力端に前記第1相電力が入力される第1PFC部と、
入力端に前記第2相電力が入力される第2PFC部と、
入力端に前記第3相電力が入力される第3PFC部と、
前記第1PFC部の出力端に接続された第1入力端、前記第2PFC部の出力端に接続された第2入力端および前記第3PFC部の出力端に接続された第3入力端を有する三相LLCコンバータ部と、
少なくとも前記第1PFC部、前記第2PFC部および前記第3PFC部を制御する制御部と
を備え、
前記第1PFC部、前記第2PFC部および前記第3PFC部は、それぞれ前記制御部によって前記三相交流電源の周波数よりも高い周波数でオンオフ制御されるスイッチング素子と該制御により生じるノイズを除去するためのコンデンサとを含み、
前記三相LLCコンバータ部は、前記第1入力端に接続された第1絶縁トランス、前記第2入力端に接続された第2絶縁トランスおよび前記第3入力端に接続された第3絶縁トランスを含む
ことを特徴とする三相AC/DC変換装置。
【請求項2】
前記第1PFC部、前記第2PFC部および前記第3PFC部は、互いに中性点接続され、
前記第1絶縁トランス、前記第2絶縁トランスおよび前記第3絶縁トランスを構成する3つの一次側コイルおよび3つの二次側コイルは、それぞれ互いに中性点接続されている
ことを特徴とする請求項1に記載の三相AC/DC変換装置。
【請求項3】
前記オンオフ制御の周波数は、10kHz以上である
ことを特徴とする請求項2に記載の三相AC/DC変換装置。
【請求項4】
前記コンデンサは、フィルムコンデンサまたはセラミックコンデンサである
ことを特徴とする請求項2に記載の三相AC/DC変換装置。
【請求項5】
前記第1PFC部、前記第2PFC部および前記第3PFC部は、それぞれインタリーブ方式のPFC回路である
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の三相AC/DC変換装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1PFC部、前記第2PFC部および前記第3PFC部における前記オンオフ制御を、それぞれの前記出力端の電圧の実効値に基づいて行う
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の三相AC/DC変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三相交流電源から供給される電力を所望の直流電力に変換する三相AC/DC変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のものよりも高出力、小型、低コストな電気自動車用急速充電器が求められている。このような急速充電器によれば、近年の電気自動車に搭載される大容量バッテリを短時間で充電することができる。また、このような急速充電器の実現は、電気自動車のより一層の普及に繋がると期待される。
【0003】
高出力な急速充電器は、単相のAC/DC変換装置に比べて一相当たりの電流値が小さな三相のAC/DC変換装置で構成されることが多い。三相AC/DC変換装置は、通常、入力される交流電圧を、力率を改善しつつ直流の中間電圧(これは、リンク電圧、バス電圧等と呼ばれることもある)に変換するPFC(Power Factor Correction)部と、中間電圧を変換して所望の直流電力を出力するDC/DCコンバータ部とを備える。DC/DCコンバータ部としては、小型で高効率な電流共振型DC/DCコンバータが採用されることが多い。
【0004】
従来の三相AC/DC変換装置として、特許文献1に記載のものが知られている。このAC/DC変換装置は、図6に示すように、各相に入力リアクトルを設けた三相ブリッジ方式のPWM整流(インバータ)回路からなるPFC部と、単相ブリッジ方式のLLCコンバータからなるLLC部と、これらの間に設けられた平滑コンデンサCとを備えている。この三相AC/DC変換装置では、PFC部の整流出力を平滑コンデンサCで平滑することにより中間電圧が生成される。
【0005】
平滑コンデンサCは、通常、PFC部で生じた高周波スイッチングノイズを吸収するためのフィルムコンデンサと、交流電源の周波数(例えば、商用周波数である50Hz/60Hz)に起因する低周波リップルを除去するための大容量の電解コンデンサとで構成される。
【0006】
交流電源が三相200V系である場合、中間電圧の電圧値は380~400V程度となる。この場合は、高耐圧で高リップルに対応した多数(例えば、10個以上)の電解コンデンサで平滑コンデンサCを構成することになる。一般に、このような電解コンデンサは、高周波スイッチングノイズ用のフィルムコンデンサに比べ、単位体積あたりの静電容量が大きく、商用周波数に起因する低周波リップルの除去に適している反面、高コストで、大型で、短寿命であり、耐環境性能も高くない。したがって、前述の急速充電器を実現するためには、電解コンデンサの使用に伴う高コスト化、大型化、短寿命化の問題を解決する必要がある。なお、この問題は、交流電源から入力される電圧が高くなればなるほど重要となる。
【0007】
さらに、従来の別の三相AC/DC変換装置として、特許文献2に記載のものが知られている。この三相AC/DC変換装置は、図7に示すように、相毎に設けられた昇圧チョッパ部(計3つの昇圧チョッパ部)およびDC/DCコンバータ部(計3つのDC/DCコンバータ部)で構成されている。昇圧チョッパ部はダイオードブリッジ整流回路を含み、DC/DCコンバータ部はフォワード型のコンバータである。
【0008】
この三相AC/DC変換装置では、DC/DCコンバータ部において中間電圧に含まれるリップルがある程度除去されるとのことである。しかしながら、完全に除去されるわけではないので、やはり、昇圧チョッパ部およびDC/DCコンバータ部の出力部に設けられた平滑コンデンサを高コスト、大型、短寿命な大容量の電解コンデンサで構成する必要がある。すなわち、この三相AC/DC変換装置も、図6に示した三相AC/DC変換装置と同様の問題を有している。
【0009】
この問題を解決し得る従来の三相AC/DC変換装置として、特許文献3に記載のものが知られている。この三相AC/DC変換装置は、図8に示すように、相毎に設けられた一次側コンバータユニット(計3つの一次側コンバータユニット)と、相毎に設けられた高周波トランス(計3つの高周波トランス)と、共通の二次側コンバータとで構成されている。
【0010】
この三相AC/DC変換装置では、一次側コンバータユニットが非平滑DCリンクキャパシタCdによって低周波(商用周波数)と高周波とをリンクする非平滑直流ステージとなるように構成されており、平滑直流リンクを使用するようには構成されていない。このため、この三相AC/DC変換装置によれば、大容量の電解コンデンサを不要とすることができる、とのことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2018-183037号公報
【特許文献2】特開平10-304663号公報
【特許文献3】特開2019-169991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、図8に示す従来の三相AC/DC変換装置では、PFC回路とフルブリッジインバータ回路とを組み合わせてなる一次側コンバータユニットに対し、位相シフトパルス幅変調制御と称するこの回路特有の複雑な制御がなされる。そして、この制御の下では、PFC回路がDCM(不連続通電モード)で動作する。このため、この三相AC/DC変換装置は、ピーク電流が大きく、効率が低いので、大電力用途には向いていない。
【0013】
さらに、図8に示す従来の三相AC/DC変換装置では、二次側コンバータにおいて各相の出力が単純に加算されるだけなので、相間の不平衡が生じ得る。そして、この不平衡を解消するためには、複雑な相毎の個別制御が必要となる。なお、相間の不平衡は、高周波トランス、コイルLb、コンデンサCr等の相毎に設けられた回路要素の特性バラつき、とりわけ、高周波トランスおよびコイルLbの特性バラつきによって生じることが知られている。
【0014】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、従来のものよりも低コスト、小型、長寿命であり、かつ制御が簡単な三相AC/DC変換装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明に係る三相AC/DC変換装置は、三相交流電源から供給される第1相電力、第2相電力および第3相電力を所望の直流電力に変換するものであって、入力端に第1相電力が入力される第1PFC部と、入力端に第2相電力が入力される第2PFC部と、入力端に第3相電力が入力される第3PFC部と、第1PFC部の出力端に接続された第1入力端、第2PFC部の出力端に接続された第2入力端および第3PFC部の出力端に接続された第3入力端を有する三相LLCコンバータ部と、少なくとも第1PFC部、第2PFC部および第3PFC部を制御する制御部とを備え、第1PFC部、第2PFC部および第3PFC部は、それぞれ制御部によって三相交流電源の周波数よりも高い周波数でオンオフ制御されるスイッチング素子と該制御により生じるノイズを除去するためのコンデンサとを含み、三相LLCコンバータ部は、第1入力端に接続された第1絶縁トランス、第2入力端に接続された第2絶縁トランスおよび第3入力端に接続された第3絶縁トランスを含む、との構成を有している。
【0016】
上記の構成、すなわち、第1相に設けられた第1PFC部の出力端を三相LLCコンバータ部の第1入力端に接続し、第2相に設けられた第2PFC部の出力端を三相LLCコンバータ部の第2入力端に接続し、かつ第3相に設けられた第3PFC部の出力端を三相LLCコンバータ部の第3入力端に接続した構成では、三相LLCコンバータ部の出力に三相交流電源の周波数の6倍の高調波が重畳される。したがって、この構成によれば、従来の中間電圧における低周波リップルの除去に用いるコンデンサよりも小容量な出力コンデンサで低周波リップルを吸収することが可能となる。
【0017】
第1PFC部、第2PFC部および第3PFC部は、互いに中性点接続され、第1絶縁トランス、第2絶縁トランスおよび第3絶縁トランスを構成する3つの一次側コイルおよび3つの二次側コイルは、それぞれ互いに中性点接続されていることが好ましい。
【0018】
上記の構成、すなわち、第1PFC部、第2PFC部および第3PFC部が互いに中性点接続され、かつ第1絶縁トランス、第2絶縁トランスおよび第3絶縁トランスを構成する3つの一次側コイルおよび3つの二次側コイルがそれぞれ互いに中性点接続された構成によれば、第1PFC部、第2PFC部、第3PFC部および三相LLCコンバータ部における相間の不平衡が自律的に解消または緩和される。したがって、この構成によれば、複雑な相毎の個別制御を行ったり、第1PFC部、第2PFC部および第3PFC部と三相LLCコンバータ部とを連携させる特別な制御を行ったりする必要がなくなる。
【0019】
三相交流電源が商用交流電源である場合は、オンオフ制御の周波数を10kHz以上とし、コンデンサをフィルムコンデンサまたはセラミックコンデンサとすることが好ましい。フィルムコンデンサおよびセラミックコンデンサは、電解コンデンサに比べ、低コストで、小型で、長寿命で、耐環境性能も優れている。
【0020】
第1PFC部、第2PFC部および第3PFC部は、それぞれインタリーブ方式のPFC回路であることが好ましい。このような構成とすることで、三相LLCコンバータ部の出力に重畳される高調波の周波数がn倍(ただし、nはPFC回路のステージ数)され、より小容量の出力コンデンサで低周波リップルを吸収することが可能となり、三相AC/DC変換装置全体の小型化が可能となる。
【0021】
制御部は、第1PFC部、第2PFC部および第3PFC部におけるオンオフ制御を、それぞれの出力端の電圧の実効値に基づいて行ってもよい。このような構成とすることで、各PFC部の出力端における電圧の変動、具体的には、三相交流電源の周波数に起因する低周波リップルの影響を受けることなく制御を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、従来のものよりも低コスト、小型、長寿命であり、かつ制御が簡単な三相AC/DC変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1実施例に係る三相AC/DC変換装置を示す回路図である。
図2】本発明の第2実施例に係る三相AC/DC変換装置を示す回路図である。
図3】本発明の第3実施例に係る三相AC/DC変換装置を示す回路図である。
図4】本発明の変形例に係る三相AC/DC変換装置を示す回路図である。
図5】本発明の別の変形例に係る三相AC/DC変換装置を示す回路図である。
図6】従来の三相AC/DC変換装置を示す回路図である。
図7】従来の別の三相AC/DC変換装置を示す回路図である。
図8】従来のさらに別の三相AC/DC変換装置を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しながら、本発明に係る三相AC/DC変換装置の実施例について説明する。
【0025】
[第1実施例]
図1に、本発明の第1実施例に係る三相AC/DC変換装置1Aを示す。三相AC/DC変換装置1Aは、三相交流電源10から供給される電力を所望の直流電力に変換して負荷20に供給するためのもので、同図に示すように、第1PFC部21Aと、第2PFC部22Aと、第3PFC部23Aと、三相LLCコンバータ部3Aとを備えている。このほか、三相AC/DC変換装置1Aは、三相交流電源10の第1相に接続される入力端子T1、三相交流電源10の第2相に接続される入力端子T2、三相交流電源10の第3相に接続される入力端子T3、負荷20の一端に接続される出力端子T4、および負荷20の他端に接続される出力端子T5も備えている。なお、本実施例および後述する第2,第3実施例では、三相交流電源10は三相200V系の商用交流電源であり、負荷20は電気自動車の駆動用バッテリである。
【0026】
第1PFC部21Aは、高周波スイッチングが可能なブリッジレス方式のトーテムポール型PFC回路で構成されており、コイルL1と、第1スイッチング素子Q1および第2スイッチング素子Q2と、第1ダイオードD1および第2ダイオードD2と、非平滑コンデンサC1とを備えている。なお、ブリッジレス方式の整流回路は、ダイオードブリッジ整流回路に比べて素子の導通損が少なく、ダイオードの逆回復時間に起因する損失もないため高効率で、PFC(力率改善)機能を兼ねることができるため、kW程度以上の高出力なAC/DC変換装置に向いている。
【0027】
コイルL1は、入力端子T1に接続された一端と、スイッチング素子Q1,Q2に接続された他端とを有している。コイルL1の一端は、第1PFC部21Aの「入力端」であるといえる。
【0028】
スイッチング素子Q1,Q2は、パワー半導体スイッチング素子の一種であるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)で構成されている。スイッチング素子Q1,Q2にはFWD(Free Wheeling Diode)としてのダイオードが逆並列接続されているが、これは、スイッチング素子Q1,Q2に内蔵されたものであってもよいし、外付けされたものであってもよい。
【0029】
第1スイッチング素子Q1は、ノードVp1に接続されたコレクタと、コイルL1の他端に接続されたエミッタとを有している。また、第2スイッチング素子Q2は、コイルL1の他端に接続されたコレクタと、ノードVn1に接続されたエミッタとを有している。つまり、スイッチング素子Q1,Q2は、直列に接続された状態でノードVp1-Vn1間に設けられている。
【0030】
スイッチング素子Q1,Q2は、不図示の制御部により、商用周波数よりも十分に高い10kHz~数100kHzの範囲内の高い周波数でオンオフ制御される。制御部は、不図示の検出回路によって検出された各部の電流または電圧を参照しながら、不図示の適当な駆動回路を介してスイッチング素子Q1,Q2をオンオフ制御する。
【0031】
第1ダイオードD1は、ノードVp1に接続されたカソードと、中性点Nに接続されたアノードとを有している。また、第2ダイオード素子D2は、中性点Nに接続されたカソードと、ノードVn1に接続されたアノードとを有している。つまり、ダイオードD1,D2は、直列に接続された状態でノードVp1-Vn1間に逆方向に設けられている。なお、ダイオードD1,D2の接続点は、第1PFC部21Aの「他の入力端」であるといえる。
【0032】
非平滑コンデンサC1は、スイッチング素子Q1,Q2のオンオフ制御により生じる高周波スイッチングノイズを吸収し得るように選定されたコンデンサであり、ノードVp1に接続された一端と、ノードVn1に接続された他端とを有している。「非平滑」との名称から明らかなように、非平滑コンデンサC1は、平滑を意図したものではない。言い換えると、非平滑コンデンサC1は、商用周波数に起因する低周波リップルの除去を意図したものではない。このため、本実施例では、非平滑コンデンサC1として、従来の三相AC/DC変換装置において中間電圧の低周波リップル除去のために使用されてきた高リップルに対応した大容量の電解コンデンサではなく、電解コンデンサよりも小型、低コスト、長寿命で、かつ耐環境性能が優れたフィルムコンデンサを使用したが、これに代えてセラミックコンデンサ等を使用することもできる。非平滑コンデンサC1としてこのようなコンデンサを使用した結果、非平滑コンデンサC1の両端、すなわち、ノードVp1-Vn1間に生じる中間電圧は、低周波リップルを含み得る。なお、非平滑コンデンサC1の両端は、第1PFC部21Aの「出力端」であるといえる。
【0033】
第2PFC部22Aおよび第3PFC部23Aは、接続先が入力端子T1ではなくT2,T3である点、および接続先がノードVp1,Vn1ではなくVp2,Vn2,Vp3,Vn3である点を除き、第1PFC部21Aと共通している。
【0034】
各PFC部21A,22A,23Aを構成するダイオードD1,D2の接続点は、中性点Nにおいて互いに接続されている。つまり、PFC部21A,22A,23Aは、他の入力端において互いに中性点接続されている。
【0035】
三相LLCコンバータ部3Aは、第5スイッチング素子Q5、第6スイッチング素子Q6、第7スイッチング素子Q7、第8スイッチング素子Q8、第9スイッチング素子Q9および第10スイッチング素子Q10と、第1共振コイルLr1、第2共振コイルLr2および第3共振コイルLr3と、第1共振コンデンサCr1、第2共振コイルCr2および第3共振コイルCr3と、第1高周波絶縁トランス(以下、単に「トランス」という)Tr1、第2トランスTr2および第3トランスTr3とを備えている。
【0036】
スイッチング素子Q5,Q6,Q7,Q8,Q9,Q10は、IGBTで構成されている。スイッチング素子Q5,Q6,Q7,Q8,Q9,Q10にはFWDとしてのダイオードが逆並列接続されているが、これは、スイッチング素子Q5,Q6,Q7,Q8,Q9,Q10に内蔵されたものであってもよいし、外付けされたものであってもよい。
【0037】
第5スイッチング素子Q5は、ノードVp1に接続されたコレクタと、第1共振コイルLr1の一端に接続されたエミッタとを有している。また、第6スイッチング素子Q6は、第1共振コイルLr1の一端に接続されたコレクタと、ノードVn1に接続されたエミッタとを有している。つまり、スイッチング素子Q5,Q6は、直列に接続された状態でノードVp1-Vn1間に設けられている。なお、第5スイッチング素子Q5のコレクタおよび第6スイッチング素子Q6のエミッタは、三相LLCコンバータ部3Aの「第1入力端」であるといえる。
【0038】
第1共振コイルLr1は、前述の一端と、第1トランスTr1を構成する一次巻線の一端に接続された他端とを有している。なお、図1に示されている第1トランスTr1の一次巻線には、励磁インダクタンスが含まれているものとする。
【0039】
第1トランスTr1を構成する一次巻線は、前述の一端と、第1共振コンデンサCr1の一端に接続された他端とを有している。また、第1トランスTr1を構成する二次巻線は、一端と、他のトランスTr2,Tr3を構成する二次巻線の他端に接続された他端とを有している。
【0040】
第1共振コンデンサCr1は、前述の一端と、他の共振コンデンサCr2,Cr3の他端に接続された他端とを有している。
【0041】
本実施例では、第1共振コイルLr1、第1トランスTr1(励磁インダクタンス)および第1共振コンデンサCr1が直列共振回路を構成している。なお、この直列共振回路は、三相LLCコンバータ部3Aの第1相に位置する共振回路なので、「第1共振回路」であるといえる。第1共振回路は、スイッチング素子Q5,Q6によって駆動される。
【0042】
スイッチング素子Q7,Q8、第2共振コイルLr2、第2共振コンデンサCr2および第2トランスTr2は、接続先がノードVp1,Vn1ではなくVp2,Vn2である点を除き、スイッチング素子Q5,Q6、第1共振コイルLr1、第1共振コンデンサCr1および第1トランスTr1と共通している。なお、第7スイッチング素子Q7のコレクタおよび第8スイッチング素子Q8のエミッタは、三相LLCコンバータ部3Aの「第2入力端」であるといえる。また、第2共振コイルLr2、第2トランスTr2および第2共振コンデンサCr2で構成された直列共振回路は、「第2共振回路」であるといえる。第2共振回路は、スイッチング素子Q7,Q8によって駆動される。
【0043】
スイッチング素子Q9,Q10、第3共振コイルLr3、第3共振コンデンサCr3および第3トランスTr3も、接続先がノードVp1,Vn1ではなくVp3,Vn3である点を除き、スイッチング素子Q5,Q6、第1共振コイルLr1、第1共振コンデンサCr1および第1トランスTr1と共通している。なお、第9スイッチング素子Q9のコレクタおよび第10スイッチング素子Q10のエミッタは、三相LLCコンバータ部3Aの「第3入力端」であるといえる。また、第3共振コイルLr3、第3トランスTr3および第3共振コンデンサCr3で構成された直列共振回路は、「第3共振回路」であるといえる。第3共振回路は、スイッチング素子Q9,Q10によって駆動される。
【0044】
前述の通り、各トランスTr1,Tr2,Tr3の一次巻線は、共振コンデンサCr1,Cr2,Cr3を介して互いに接続されている。つまり、トランスTr1,Tr2,Tr3の一次巻線は、Y結線により中性点接続されている。
【0045】
前述の通り、各トランスTr1,Tr2,Tr3の二次巻線は、互いに直接的に接続されている。つまり、トランスTr1,Tr2,Tr3の二次巻線も、Y結線により中性点接続されている。
【0046】
三相LLCコンバータ部3Aは、第3ダイオードD3、第4ダイオードD4、第5ダイオードD5、第6ダイオードD6、第7ダイオードD7および第8ダイオードD8と、出力コンデンサC2とをさらに備えている。
【0047】
第3ダイオードD3は、出力端子T4に接続されたカソードと、第1トランスTr1を構成する二次巻線の一端に接続されたアノードとを有している。また、第4ダイオードD4は、第1トランスTr1を構成する二次巻線の一端に接続されたカソードと、出力端子T5に接続されたアノードとを有している。つまり、ダイオードD3,D4は、直列に接続された状態で出力端子T4-T5間に逆方向に設けられている。
【0048】
ダイオードD5,D6は、接続先が第1トランスTr1の二次巻線ではなく第2トランスTr2の二次巻線である点を除き、ダイオードD3,D4と共通している。ダイオードD7,D8も、接続先が第1トランスTr1の二次巻線ではなく第3トランスTr3の二次巻線である点を除き、ダイオードD3,D4と共通している。
【0049】
このように、ダイオードD3,D4,D5,D6,D7,D8は、三相LLCコンバータ部3Aの三相ダイオードブリッジ整流回路を構成している。
【0050】
出力コンデンサC2は、ダイオードD3,D4,D5,D6,D7,D8で構成された三相ダイオードブリッジ整流回路による整流後の電圧を平滑し得るように選定された平滑用コンデンサであり、出力端子T4に接続された一端と、出力端子T5に接続された他端とを有している。本実施例では、出力コンデンサC2として電解コンデンサを使用したが、これに代えてフィルムコンデンサを使用することもできる。
【0051】
不図示の制御部は、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等で構成されている。制御部は、中間電圧(ノードVp1-Vn1間の電圧)に基づいて、PFC部21A,22A,23Aを構成するスイッチング素子Q1,Q2、および三相LLCコンバータ部3Aを構成するスイッチング素子Q5,Q6,Q7,Q8,Q9,Q10をオンオフ制御するように構成されている。
【0052】
具体的には、制御部は、不図示の検出回路によって各PFC部21A,22A,23Aの入力電圧、すなわち入力端子T1,T2,T3の電圧と、各PFC部21A,22A,23Aの出力電圧、すなわち中間電圧Vp1-Vn1,Vp2-Vn2,Vp3-Vn3とを検出し、中間電圧が所望の電圧になるように、各相に120°の位相差を設けて、スイッチング素子Q1,Q2を背反にPWM制御する。このように制御することで、各相を同じデューティで制御することができ、制御を簡素化することができる。また、制御部は、不図示の検出回路によって三相LLCコンバータ部3Aの出力電圧(出力端子T4-T5間の電圧)と、負荷20に供給する出力電流とを検出し、出力電流が所望の電流値になるようにスイッチング素子Q5、Q6の組、スイッチング素子Q7,Q8の組およびスイッチング素子Q9,Q10の組を背反に、かつ各組に120°の位相差を設けて、各組を同一周波数で、デューティ50%で周波数変調制御する。三相LLCコンバータ部3Aは電流共振型であるため、制御部は、スイッチング素子Q1,Q2,Q5,Q6,Q7,Q8,Q9,Q10を10kHz~数100kHzの範囲内)の高い周波数で駆動することができる。
【0053】
前述の通り、中間電圧は、商用周波数に起因する低周波リップルを含み得る。言い換えると、中間電圧は、安定した直流電圧ではない。このため、制御部は、商用周波数の逓倍に対して十分に短い周期で中間電圧をサンプリングし、このサンプリングにより得られた数値群から算出した実効値に基づいて制御を行う。
【0054】
本実施例に係る三相AC/DC変換装置1Aにより、使用するコンデンサの容量を従来よりも小さく(究極的には、三相交流電源10の瞬時停電対策のためのものを除いて完全に電解コンデンサレスに)することができる理由は次の通りである。
【0055】
第1相に設けられた第1PFC部21Aに接続されたスイッチング素子Q5,Q6、第2相に設けられた第2PFC部22Aに接続されたスイッチング素子Q7,Q8および第3相に設けられた第3PFC部23Aに接続されたスイッチング素子Q9,Q10を商用周波数よりも十分に高い周波数でオンオフさせることで、発生する高周波スイッチングノイズを非平滑コンデンサC1で除去し、中間電圧に含まれる商用周波数の低周波リップルを、後段の三相ダイオードブリッジ整流回路(D3,D4,D5,D6,D7,D8)で6倍の高調波に変換する。高周波スイッチングノイズを除去するために必要な非平滑コンデンサC1の容量は、低周波リップルを除去するために必要な平滑コンデンサの容量よりも大幅に小さい。また、6倍に高周波化されたリップルを除去するために必要な出力コンデンサC2の容量は、PCF部21A,22A,23A内で低周波リップルを除去する場合に必要となる平滑コンデンサの容量よりも小さい。このため、三相AC/DC変換装置1A全体で使用されるコンデンサの容量は小さくなる。
【0056】
また、本実施例に係る三相AC/DC変換装置1Aにより、制御が簡単になる理由は次の通りである。
【0057】
3つのPFC部21A,22A,23Aが互いに中性点接続されているので、PFC部21A,22A,23Aにおける相間の不平衡が自律的に解消または緩和される。また、トランスTr1,Tr2,Tr3を構成する3つの一次側コイルおよび3つの二次側コイルがそれぞれ互いに中性点接続されているので、三相LLCコンバータ部3Aにおける相間の不平衡も自律的に解消または緩和される。このため、複雑な相毎の個別制御を行ったり、PFC部21A,22A,23Aおよび三相LLCコンバータ部3Aを連携させる特別な制御を行ったりする必要がない。
【0058】
[第2実施例]
図2に、本発明の第2実施例に係る三相AC/DC変換装置1Bを示す。三相AC/DC変換装置1Bは、PFC部21A,22A,23Aの代わりにPFC部21B,22B,23Bを備えている点において三相AC/DC変換装置1Aと相違しているが、他の点においては三相AC/DC変換装置1Aと共通している。
【0059】
第1PFC部21Bは、双方向の動作が可能で、しかも部品点数が少ないブリッジPWM整流(インバータ)方式のPFC回路で構成されており、コイルL1と、第1スイッチング素子Q1および第2スイッチング素子Q2と、非平滑コンデンサC1とを備えている。
【0060】
コイルL1は、入力端子T1に接続された一端と、スイッチング素子Q1,Q2に接続された他端とを有している。コイルL1の一端は、第1PFC部21Bの「入力端」であるといえる。
【0061】
スイッチング素子Q1,Q2は、IGBTで構成されている。スイッチング素子Q1,Q2にはFWDとしてのダイオードが逆並列接続されているが、これは、スイッチング素子Q1,Q2に内蔵されたものであってもよいし、外付けされたものであってもよい。
【0062】
第1スイッチング素子Q1は、ノードVp1に接続されたコレクタと、コイルL1の他端に接続されたエミッタとを有している。また、第2スイッチング素子Q2は、コイルL1の他端に接続されたコレクタと、ノードVn1に接続されたエミッタとを有している。つまり、スイッチング素子Q1,Q2は、直列に接続された状態でノードVp1-Vn1間に設けられている。なお、第2スイッチング素子Q2のエミッタは、第1PFC部21Bの「他の入力端」であるといえる。
【0063】
スイッチング素子Q1,Q2は、不図示の制御部により、商用周波数よりも十分に高い10kHz~数100kHzの範囲内の高い周波数でオンオフ制御される。
【0064】
非平滑コンデンサC1は、スイッチング素子Q1,Q2のオンオフ制御により生じる高周波スイッチングノイズを吸収し得るように選定されたコンデンサであり、ノードVp1に接続された一端と、ノードVn1に接続された他端とを有している。本実施例でも、非平滑コンデンサC1としてフィルムコンデンサを使用したが、これに代えてセラミックコンデンサ等を使用することもできる。非平滑コンデンサC1の両端は、第1PFC部21Bの「出力端」であるといえる。
【0065】
第2PFC部22Bおよび第3PFC部23Bは、接続先が入力端子T1ではなくT2,T3である点、および接続先がノードVp1,Vn1ではなくVp2,Vn2,Vp3,Vn3である点を除き、第1PFC部21Bと共通している。
【0066】
各PFC部21B,22B,23Bを構成する第2スイッチング素子Q2のエミッタ、すなわちノードVn1,Vn2,Vn3は、中性点Nにおいて互いに接続されている。つまり、PFC部21B,22B,23Bは、他の入力端において互いに中性点接続されている。
【0067】
本実施例に係る三相AC/DC変換装置1Bによれば、第1実施例と同様の作用効果が得られる。
【0068】
[第3実施例]
図3に、本発明の第3実施例に係る三相AC/DC変換装置1Cを示す。三相AC/DC変換装置1Cは、PFC部21A,22A,23Aの代わりにPFC部21C,22C,23Cを備えている点において三相AC/DC変換装置1Aと相違しているが、他の点においては三相AC/DC変換装置1Aと共通している。
【0069】
第1PFC部21Cは、2ステージ・インタリーブ方式のトーテムポール型PFC回路で構成されており、第1コイルL1および第2コイルL2と、第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、第3スイッチング素子Q3および第4スイッチング素子Q4と、第1ダイオードD1および第2ダイオードD2と、非平滑コンデンサC1とを備えている。
【0070】
第1コイルL1は、入力端子T1に接続された一端と、スイッチング素子Q1,Q2に接続された他端とを有している。また、第2コイルL2は、入力端子T1に接続された一端と、スイッチング素子Q3,Q4に接続された他端とを有している。コイルL1,L2の一端は、第1PFC部21Cの「入力端」であるといえる。
【0071】
スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4は、IGBTで構成されている。スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4にはFWDとしてのダイオードが逆並列接続されているが、これは、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4に内蔵されたものであってもよいし、外付けされたものであってもよい。
【0072】
第1スイッチング素子Q1は、ノードVp1に接続されたコレクタと、第1コイルL1の他端に接続されたエミッタとを有している。また、第2スイッチング素子Q2は、第1コイルL1の他端に接続されたコレクタと、ノードVn1に接続されたエミッタとを有している。つまり、スイッチング素子Q1,Q2は、直列に接続された状態でノードVp1-Vn1間に設けられている。
【0073】
第3スイッチング素子Q3は、ノードVp1に接続されたコレクタと、第2コイルL2の他端に接続されたエミッタとを有している。また、第4スイッチング素子Q4は、第2コイルL2の他端に接続されたコレクタと、ノードVn1に接続されたエミッタとを有している。つまり、スイッチング素子Q3,Q4は、直列に接続された状態でノードVp1-Vn1間に設けられている。
【0074】
スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4は、不図示の制御部により、商用周波数よりも十分に高い10kHz~数100kHzの範囲内の高い周波数でオンオフ制御される。
【0075】
第1ダイオードD1は、ノードVp1に接続されたカソードと、中性点Nに接続されたアノードとを有している。また、第2ダイオード素子D2は、中性点Nに接続されたカソードと、ノードVn1に接続されたアノードとを有している。つまり、ダイオードD1,D2は、直列に接続された状態でノードVp1-Vn1間に逆方向に設けられている。なお、ダイオードD1,D2の接続点は、第1PFC部21Cの「他の入力端」であるといえる。
【0076】
非平滑コンデンサC1は、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4のオンオフ制御により生じる高周波スイッチングノイズを吸収し得るように選定されたコンデンサであり、ノードVp1に接続された一端と、ノードVn1に接続された他端とを有している。本実施例でも、非平滑コンデンサC1としてフィルムコンデンサを使用したが、これに代えてセラミックコンデンサ等を使用することもできる。非平滑コンデンサC1の両端は、第1PFC部21Cの「出力端」であるといえる。
【0077】
第2PFC部22Cおよび第3PFC部23Cは、接続先が入力端子T1ではなくT2,T3である点、および接続先がノードVp1,Vn1ではなくVp2,Vn2,Vp3,Vn3である点を除き、第1PFC部21Cと共通している。
【0078】
各PFC部21C,22C,23Cを構成するダイオードD1,D2の接続点は、中性点Nにおいて互いに接続されている。つまり、PFC部21C,22C,23Cは、他の入力端において互いに中性点接続されている。
【0079】
前述の通り、第1実施例および第2実施例では、中間電圧が商用周波数に等しい周波数のリップルを含み得る。一方、PFC部21C,22C,23Cが2ステージ・インタリーブ方式のトーテムポール型PFC回路である本実施例では、中間電圧が商用周波数の2倍の周波数のリップルを含み得る。このため、本実施例では、三相ダイオードブリッジ整流回路(D3,D4,D5,D6,D7,D8)による整流後の電圧に商用周波数の12倍(=2×6倍)の高調波が重畳される。そして、この結果、本実施例に係る三相AC/DC変換装置1Cによれば、第1実施例および第2実施例で使用した出力コンデンサC2よりも小容量な出力コンデンサC2で低周波リップルを吸収することが可能となり、ひいては三相AC/DC変換装置1Cをより一層小型化することができる。
【0080】
[変形例]
以上、本発明に係る三相AC/DC変換装置の第1実施例、第2実施例および第3実施例について説明してきたが、本発明の構成はこれらに限定されるものではない。
【0081】
例えば、本発明に係る三相AC/DC変換装置は、図4に示す三相AC/DC変換装置1Dのように、三相LLCコンバータ部3Dの各トランスTr1,Tr2,Tr3を構成する一次巻線がΔ結線により中性点接続され、かつ各トランスTr1,Tr2,Tr3の二次巻線がΔ結線により中性点接続された三相LLCコンバータ部3Dを備えていてもよい。あるいは、本発明に係る三相AC/DC変換装置は、図5に示す三相AC/DC変換装置1Eのように、三相LLCコンバータ部3Eの各トランスTr1,Tr2,Tr3を構成する一次巻線がΔ-Cr結線により中性点接続され、かつ各トランスTr1,Tr2,Tr3の二次巻線がY結線により中性点接続された三相LLCコンバータ部3Eを備えていてもよい。つまり、本発明では、三相LLCコンバータ部のトランスTr1,Tr2,Tr3を構成する3つの一次巻線および3つの二次巻線を、それぞれ任意の方法で中性点接続することができる。
【0082】
また、三相LLCコンバータ部を構成する共振コイルLr1,Lr2,Lr3および共振コンデンサCr1,Cr2,Cr3は、一次側の任意に位置に配置されていてもよい。ただし、共振コイルLr1、共振コンデンサLr1および第1トランスTr1の一次巻線は、直列接続されていなければならない。共振コイルLr2,Lr3、共振コンデンサCr2,Cr3およびトランスTr2,Tr3についても同様である。
【0083】
また、三相LLCコンバータ部を構成する共振コイルLr1,Lr2,Lr3は、トランスTr1,Tr2,Tr3の漏れインダクタンスであってもよい。言い換えると、本発明では、トランスTr1,Tr2,Tr3の漏れインダクタンスを共振コイルLr1,Lr2,Lr3として利用することができる。
【0084】
また、三相LLCコンバータ部は、三相ダイオードブリッジ整流回路(D3,D4,D5,D6,D7,D8)の代わりに、スイッチング素子で構成された同期整流回路を備えていてもよい。あるいは、三相LLCコンバータ部は、ダイオードのいくつか(D3,D5,D7、あるいはD4,D6,D8)をスイッチング素子に置き替えたブースト制御回路を備えていてもよい。
【0085】
また、三相LLCコンバータ部を構成するスイッチング素子Q5,Q6,Q7,Q8,Q9,Q10は、部分共振のためのコンデンサが並列に外付けされたものであってもよい。
【0086】
また、第1PFC部、第2PFC部および第3PFC部は、高周波変換が可能なPFC回路(力率改善回路)と非平滑コンデンサとを組み合わせてなる任意の回路であってもよい。例えば、第1実施例のPFC部21A,22A,23Aを構成するスイッチング素子Q1およびダイオードD2は、位置が入れ替わっていてもよい。また、第3実施例のPFC部21C,22C,23Cは、3以上のステージ数のインタリーブ方式のPFC回路であってもよい。また、第1実施例のPFC部21A,22A,23Aおよび第3実施例のPFC部21C,22C,23Cは、ダイオードD1,D2の接続点と中性点Nとの間に位置するコイルをさらに備えていてもよい。
【0087】
また、第1PFC部、第2PFC部および第3PFC部は、中性点接続されていなくてもよい。例えば、第1PFC部、第2PFC部および第3PFC部の他の入力端は、三相交流電源の負極に接続されていてもよい。
【0088】
また、第1PFC部、第2PFC部、第3PFC部および三相LLCコンバータ部は、IGBT以外の任意のパワー半導体スイッチング素子(例えば、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)等)で構成されたスイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6,Q7,Q8,Q9,Q10を備えていてもよい。もちろん、本発明では、Si(Silicon)系以外の任意の種類(例えば、SiC(Silicon Carbide)系、GaN(Gallium Nitride)系等)のパワー半導体スイッチング素子を使用することもできる。
【0089】
また、制御部は、第1PFC部、第2PFC部、第3PFC部および三相LLCコンバータ部をまとめて制御する単一の制御部で構成されていてもよいし、これらを分担して制御する複数の制御部で構成されていてもよい。さらに、制御部は、第1PFC部、第2PFC部および第3PFC部を任意の方法で制御してもよい。例えば、制御部は、PWM方式でこれらを制御してもよいし、PFM方式でこれらを制御してもよい。
【0090】
また、制御部は、三相LLCコンバータ部の上アームを構成するスイッチング素子Q5,Q7,Q9をオンオフさせるタイミングと下アームを構成するスイッチング素子Q6,Q8,Q10をオンオフさせるタイミングとを所定の量だけずらす位相シフト制御により出力を増減させてもよいし、スイッチング素子Q5,Q6,Q7,Q8,Q9,Q10のデューティを変更することにより出力を増減させてもよい。
【0091】
また、制御部は、ローパスフィルタ回路を介して中間電圧を検出することにより中間電圧の実効値を取得してもよい。あるいは、制御部は、ピークホールド回路を介して検出した中間電圧のピーク値に基づいて中間電圧の実効値を算出してもよい。なお、ローパスフィルタ回路またはピークホールド回路に使用するコンデンサは、取り扱う信号が小信号なので、主回路(PFC部)の中間電圧を平滑するコンデンサに比べて十分に小容量で小型のものでよい。
【0092】
また、制御部は、各相の中間電圧の実効値ではなく、例えば、各相の中間電圧の時間平均値(つまり、3つの平均値)に基づいて制御を行ってもよいし、各相の中間電圧の時間平均値をさらに平均化したもの(つまり、1つの平均値)に基づいて制御を行ってもよい。
【0093】
また、制御部は、相間の不平衡が前述の不平衡解消(緩和)機能により解消(緩和)可能な範囲を超えそうな場合、または超えた場合に、各相のPFC部(例えば、第1実施例では第1PFC部21A、第2PFC部22Aおよび第3PFC部23A)の出力電圧を個別に制御し、これにより不平衡を解消(緩和)可能な程度とする機能を有していてもよい。
【0094】
また、図1図5に示された各素子は機能を表す記号にすぎず、例えば、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6,Q7,Q8,Q9,Q10は、同一の、または異なる複数の素子を直列に、または並列に接続したものであってもよい。また、トランスTr1,Tr2,Tr3のそれぞれは、単相巻きのトランスであってもよいし、直列または並列に接続された複数のトランスで構成されたものであってもよい。あるいは、トランスTr1,Tr2,Tr3は、三相コイルを有する1個または複数個のトランスで構成された結合トランスであってもよい。その他の素子についても同様である。
【0095】
また、本発明に係る三相AC/DC変換装置に電力を供給する三相交流電源は、200V系の商用交流電源に限定されない。例えば、三相交流電源は、200V系の他の交流電源であってもよいし、400V系等の交流電源であってもよい。
【0096】
また、本発明に係る三相AC/DC変換装置によって電力が供給される負荷は、電気自動車の駆動用バッテリに限定されない。例えば、負荷は、分散電源等における他の蓄電池であってもよいし、直流負荷等であってもよい。
【符号の説明】
【0097】
1A,1B,1C,1D,1E 三相AC/DC変換装置
21A,21B,21C 第1PFC部
22A,22B,22C 第2PFC部
23A,23B,23C 第3PFC部
3A,3D,3E 三相LLCコンバータ部
10 三相交流電源
20 負荷
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8