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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015448
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/62 20060101AFI20240125BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20240125BHJP
   A47C 7/02 20060101ALI20240125BHJP
   A47C 7/40 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
A47C7/62 Z
B60N2/90
A47C7/02 Z
A47C7/40
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023212984
(22)【出願日】2023-12-18
(62)【分割の表示】P 2018192290の分割
【原出願日】2018-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小澤 英俊
(57)【要約】
【課題】 パネルに支持されたパッドを有する乗物用シートにおいて、パッドの裏面側にセンサから延びるハーネスを配置する。
【解決手段】 乗物用シート1であって、パネル4と、パネルに支持されたパッド11、51と、パッドの表面を覆う表皮材12、52と、パッドの表面と表皮材との間に設けられた、着座者に関する情報を取得するセンサ32とを有し、パッドは、パッドの表面から裏面に貫通する貫通孔35、58と、パッドの裏面に凹設され、貫通孔に接続した凹部45、61とを有し、センサに接続されたハーネスは、貫通孔及び凹部内を延びている。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物用シートであって、
上下方向を向く面を備えたパネルと、
前記パネルの上面に支持されたパッドと、
前記パッドの表面を覆う表皮材と、
前記パッドの表面と前記表皮材との間に設けられた、着座者に関する情報を取得するセンサとを有し、
前記パッドは、前記パッドの表面から裏面に貫通する貫通孔と、前記パッドの裏面に凹設され、前記貫通孔に接続した凹部とを有し、
前記センサに接続されたハーネスは、前記貫通孔及び前記凹部内を延び、
前記パッドに、裏面から表面に延びる空気通路が形成され、
前記パッド及び前記表皮材はシートクッションを構成し、
前記パネルには、前後に延び、後端において前記空気通路の前記パッドの裏面側の端部に接続し、前端において車室内の空間に接続する通気溝が凹設されていることを特徴とする乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
シートクッションに着座センサを設けた乗物用シートが公知である(例えば、特許文献1)。着座センサは、シートクッションパッドの表面(上面)に配置されたフィルム形の圧力センサを有する。圧力センサは、シートクッションパッドを上下に貫通する貫通孔を通過してシートクッションパッドの裏面側に延びたハーネスによって制御装置と接続されている。この構成によれば、ハーネスを着座者に接触し難い位置に配置することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-65659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、リヤシートの場合には、シートクッション及びシートバックを構成するパッドは車体パネル上に支持されるため、パッドの裏面側にハーネスを配置するためのスペースを確保することが難しい。
【0005】
本発明は、以上の背景を鑑み、パネルに支持されたパッドを有する乗物用シートにおいて、パッドの裏面側にセンサから延びるハーネスを配置することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、乗物用シート(1)であって、パネル(4)と、前記パネルに支持されたパッド(11、51)と、前記パッドの表面を覆う表皮材(12、52)と、前記パッドの表面と前記表皮材との間に設けられた、着座者に関する情報を取得するセンサ(32)とを有し、前記パッドは、前記パッドの表面から裏面に貫通する貫通孔(35、58)と、前記パッドの裏面に凹設され、前記貫通孔に接続した凹部(45、61)とを有し、前記センサに接続されたハーネスは、前記貫通孔及び前記凹部内を延びていることを特徴とする。
【0007】
この態様によれば、パッドがパネルに支持された乗物用シートにおいて、凹部によってパネルとパッドの裏面との間に空間を形成することができ、この空間にハーネスを配置することができる。
【0008】
上記の発明において、前記凹部は、前記貫通孔から前記パッドの裏面における縁部に延びているとよい。
【0009】
この態様によれば、パッドの裏面に配置されたハーネスをパッドの側方に引き出すことができる。
【0010】
上記の発明において、前記パネル(5)の面は上下を向き、前記パッド(11)は後端部を中心(X1)として回動可能に前記パネルの上面に配置され、前記凹部は前記貫通孔から後方に延びているとよい。或は、前記パネル(6)の面は前後を向き、前記パッド(51)は下端部を中心(X2)として回動可能に前記パネルの前面に配置され、前記凹部は前記貫通孔から下方に延びているとよい。
【0011】
これらの態様によれば、ハーネスはパッドの裏面を貫通孔から回動軸側に延びているため、パッドがパネルに対して回動するときにハーネスの端部とパネルとの距離が変動し難くなり、ハーネスが引っ張られることを抑制することができる。
【0012】
上記の発明において、前記パッドは、材質が異なる複数の部材(14、15)を含み、前記貫通孔は複数の前記部材の1つに形成されているとよい。
【0013】
この態様によれば、貫通孔を容易に形成することができる。
【0014】
上記の発明において、前記パッドに裏面から表面に延びる空気通路(37)が形成され、前記貫通孔は前記空気通路を避けて形成されているとよい。また、前記パッドの表面にチャイルドシートを固定するための係止部(41)が形成され、前記貫通孔は前記係止部を避けて形成されているとよい。また、前記パッドの表面にヒータ線を有するヒータ布(43)が設けられ、前記貫通孔は前記ヒータ布を避けた位置に開口しているとよい。
【0015】
これらの態様によれば、他の要素がハーネスに与える影響を小さくすることができる。
【0016】
上記の発明において、前記貫通孔の一端は、前記パッドの表面において着座者の荷重が直接に加わる領域として設定された受圧領域(30)を避けた位置に設けられているとよい。また、前記パネルの面は上下を向き、前記パッドは前記パネルの上面に配置され、前記貫通孔は前記受圧領域の後方に設けられているとよい。
【0017】
この態様によれば、着座者の荷重がハーネスに加わり難くすることができる。
【発明の効果】
【0018】
上記の態様によれば、パッドがパネルに支持された乗物用シートにおいて、パッドの裏面に設けられた凹部によってパネルとパッドの裏面との間に空間を形成することができ、この空間にハーネスを配置することができる。
【0019】
凹部が貫通孔からパッドの裏面における縁部に延びている態様によれば、パッドの裏面に配置されたハーネスをパッドの側方に引き出すことができる。
【0020】
パネルの面が上下を向き、パッドが後端部を中心として回動可能にパネルの上面に配置され、凹部が貫通孔から後方に延びている態様、或はパネルの面が前後を向き、パッドが下端部を中心として回動可能にパネルの前面に配置され、凹部が貫通孔から下方に延びた態様によれば、パッドがパネルに対して回動するときにハーネスの端部とパネルとの距離が変動し難くなり、ハーネスが引っ張られることを抑制することができる。
【0021】
パッドが、材質が異なる複数の部材を組み合わされて形成され、貫通孔が複数の部材の1つに形成されている態様によれば、貫通孔を容易に形成することができる。
【0022】
パッドに裏面から表面に延びる空気通路が形成され、貫通孔が空気通路を避けて形成されている態様や、パッドの表面にチャイルドシートから延びるアームが通過する溝部が形成され、貫通孔が溝部を避けて形成されている態様、パッドの表面にヒータ線を有するヒータ布が設けられ、貫通孔がヒータ布を避けた位置に開口している態様によれば、他の要素がハーネスに与える影響を小さくすることができる。
【0023】
貫通孔が、パッドの表面において着座者の荷重が直接に加わる領域として設定された受圧領域を避けた位置に開口している態様や、パネルの面が上下を向き、パッドがパネルの上面に配置され、貫通孔が受圧領域の後方において開口している態様によれば、着座者の荷重がハーネスに加わり難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1実施形態に係るシートの斜視図
図2】第1実施形態に係るシートクッションパッドの断面図
図3】第1実施形態に係るシートクッションパッドの分解斜視図
図4】第1実施形態に係るシートクッションパッドの平面図
図5】第1実施形態に係るシートクッションパッドの底面図
図6】第2実施形態に係るシートクッションパッドの平面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の乗物用シートを自動車のリヤシートに適用した第1実施形態について説明する。以下の説明では、シートに着座した乗員を基準にして左右を定める。
【0026】
図1に示すように、シート1は3人が着座可能なベンチシートである。シート1は、シートクッション2と、シートクッション2の後端から上方に延びたシートバック3とを有する。図2に示すように、シート1は、自動車の車体を形成する車体パネル4に支持されている。車体パネル4は、鋼板をプレス成形することによって形成され、面が上下を向くフロア部5と、フロア部5の後端から上方に延び、面が前後を向く壁部6とを有する。壁部6は、車室と荷室とを区画する。シートクッション2はフロア部5の上面に支持され、シートバック3は壁部6の前面に支持されている。
【0027】
シートクッション2は、フロア部5に支持されたシートクッションパッド11と、シートクッションパッド11の表面(上面)を覆う表皮材12とを有する。図2及び図3に示すように、シートクッションパッド11は、材質が異なる複数の部材を組み合わされて形成されている。シートクッションパッド11は、その裏側部分(下部)の外周を構成する硬質部14と、その表側部分(上部)及び下部の中央部を構成する軟質部15とを有する。軟質部15は、硬質部14より高い可撓性を有し、硬質部14に結合されている。硬質部14は例えばEPP(発泡ポリプロピレン)であり、軟質部15は例えば発泡ウレタンである。軟質部15が硬質部14に支持された構造によって、シートクッションパッド11は形状を維持している。他の実施形態では、シートクッションパッド11の形状を維持するために、軟質部15及び硬質部14の少なくとも一方の内部にワイヤ等の補強材が設けられてもよく、軟質部15を支持するフレームを有してもよい。
【0028】
シートクッションパッド11は、その後端部において左右に延びる回動軸X1を中心としてフロア部5に回動可能に支持されている。シートクッションパッド11は、フロア部5に設けられたブラケットに、回動可能に支持されているとよい。シートクッションパッド11は、回動軸X1を中心として回動し、その裏面(下面)がフロア部5の上面に接触し、着座可能になる通常位置と、通常位置に対して前部が上方に位置するチップアップ位置とを取り得る。通常位置において、シートクッションパッド11の前端はフロア部5に係止されているとよい。
【0029】
図3及び図4に示すように、シートクッションパッド11の表面(上面)には、表皮材12を吊り込むための吊り込み溝20が形成されている。吊り込み溝20内には、表皮材12の裏面に設けられたフックを引っ掛けるためのワイヤが設けられている。ワイヤは、軟質部15に埋め込まれ、吊り込み溝20内において外部に露出している。左側席に対応したシートクッションパッド11の左部の表面には、吊り込み溝20を構成する左右の縦溝21、22と、前後の横溝23、24とが形成されている。
【0030】
左右の縦溝21、22は、互いに左右に間隔をおいて平行に前後に延びている。左右の縦溝21、22の間隔は、一般的な成人男性の股関節間の距離よりも大きく設定されているとよい。左右の縦溝21、22の前端は、シートクッションパッド11の前縁に到達している。前側の横溝23は、適正着座位置における着座者の股関節の位置よりも前方を左右に延びて左右の縦溝21、22に接続している。前側の横溝23は、シートクッションパッド11の表面の前後方向における中央部に設けられている。後側の横溝24は、適正着座位置における着座者の股関節の位置よりも後方を左右に延びて左右の縦溝21、22に接続している。後側の横溝24は、シートクッションパッド11の表面の前後方向における後端から全体の10%~30%の範囲に設けられている。
【0031】
シートクッションパッド11の表面には、左側の縦溝21より左側部分に左方に向けて上方に傾斜した左傾斜部26と、右側の縦溝22より右側部分に右方に向けて上方に傾斜した右傾斜部27と、後側の横溝24より後側部分に後方に向けて上方に傾斜した後傾斜部28とが設けられている。シートクッションパッド11の表面において、着座者の荷重が直接に加わる領域を受圧領域30として設定する。本実施形態では、受圧領域30は左右の縦溝21、22及び後側の横溝24に囲まれた領域に対応する。
【0032】
図2及び図4に示すように、シートクッションパッド11の表面と表皮材12との間には、着座者に関する情報を取得するセンサ32が設けられている。センサ32は、着座者の荷重を検出する荷重センサ(圧力センサ)や、着座者の血圧を検出する血圧センサ、着座者の脈拍を検出する脈拍センサ、着座者の汗を検出する汗センサ、着座者の匂いを検出する匂いセンサ、着座者の体温を検出する体温センサ等であってよい。センサ32は、膜形に形成され、シートクッションパッド11の表面に沿うことが好ましい。
【0033】
本実施形態では、センサ32は着座者の荷重を検出する荷重センサである。センサ32は、可撓性を有するフィルム32Aと、フィルム32A上に設けられた薄膜状の検出部32Bとを有する。検出部32Bは、例えば圧電素子や、隙間をおいて2枚の金属板を対向させ、荷重が加わったときに2枚の金属板が撓んで、互いに接触することによって導通する薄膜状のスイッチであってよい。フィルム32Aは、シートクッションパッド11の表面に沿って設けられている。フィルム32Aは、受圧領域30から後側の横溝24の上方を通過して後傾斜部28に延びている。表皮材12は、フィルム32Aとの干渉を避けるために、フィルム32Aの左右側方において後側の横溝24に吊り込まれている。フィルム32Aの前端は左右両側方に分岐して延びている。検出部32Bは、フィルム32Aの前端の左右両端に設けられ、受圧領域30に配置されている。フィルム32Aには、検出部32Bからの延びる信号線が設けられている。フィルム32Aは、フレキシブルプリント基板等であってよい。センサ32のフィルム32Aの後端には、検出部32Bからの検出信号を伝達するためのハーネス33が接続されている。
【0034】
シートクッションパッド11には、表面から裏面に貫通する貫通孔であるハーネス通路35が形成されている。センサ32に接続されたハーネス33は、シートクッションパッド11の表面側からハーネス通路35を通過してシートクッションパッド11の裏面側に延びる。ハーネス通路35の表面側の開口端は、受圧領域30を避けた位置に設けられている。本実施形態では、ハーネス通路35の表面側の開口端は、後傾斜部28に設けられている。ハーネス通路35は、軟質部15のみに形成されてもよく、軟質部15と硬質部14とに形成されてもよい。硬質部14を避けて、軟質部15のみにハーネス通路35を形成することによって、ハーネス通路35の形成が容易になる。本実施形態では、ハーネス通路35は、上下に延びて軟質部15及び硬質部14を貫通し、裏面側の開口端は硬質部14に形成されている。ハーネス通路35の硬質部14に形成された部分35Aの直径は、ハーネス通路35の軟質部15に形成された部分35Bの直径より大きく形成されている。すなわち、ハーネス通路35は、表面側の部分35Bに対して裏面側の部分35Aが段違いに拡径した段付き孔である。他の実施形態では、ハーネス通路35は、上下方向に対して傾斜してもよい。ハーネス通路35を斜めに傾斜させることによって、硬質部14を避けて軟質部15のみにハーネス通路35を形成することができる。
【0035】
シートクッションパッド11には、裏面から表面に延びる空気通路37が形成されている。空気通路37は、裏面に開口した集合部37Aと、集合部37Aから分岐して表面にそれぞれ開口した分岐部37Bとを有する。集合部37Aの開口端には、ブロア38が設けられている。車体パネル4のフロア部5には、集合部37Aの開口端に対応する位置に通気溝39が凹設されている。通気溝39は、前後に延び、後端において集合部37Aの開口端に接続し、前端において車室内の空間に接続している。表皮材12は、通気性を有する。ブロア38が回転することによって、車室内の空気が通気溝39、集合部37A、分岐部37Bを順に通過して流れ、表皮材12を通過してシートクッション2の上方に放出される。ハーネス通路35は、空気通路37を避けて形成されている。他の実施形態では、ハーネス通路35は、空気通路37と少なくとも一部が重なっていてもよい。通気溝39は、フロア部5に代えて、シートクッションパッド11の裏面に凹設されてもよい。
【0036】
シートクッションパッド11の表面の後端部には、左右一対のチャイルドシートを固定するための係止部41が形成されている。係止部41は、シートクッションパッド11に凹設された溝部と、溝部の内部に設けられたストライカとを有する。係止部41は、国際標準規格ISO-FIXに適合した形状であるとよい。ハーネス通路35は、それぞれの係止部41を避けて形成されている。
【0037】
図2及び図5に示すように、シートクッションパッド11の裏面には、ハーネス通路35の裏面側の開口端に接続した凹部45が凹設されている。凹部45と車体パネル4のフロア部5とは、それらの間にハーネス33を受容可能な空間を形成する。凹部45は、溝形をなし、ハーネス通路35から後方に延びている。すなわち、凹部45はハーネス通路35からシートクッションパッド11の回動軸X1側に延びている。凹部45の後端は、シートクッションパッド11の後縁部に到達してもよい。凹部45は、ハーネス33のコネクタや、ハーネス33が接続されるマイコン等の電子部品を受容可能な大きさに形成されてもよい。
【0038】
ハーネス33は、シートクッションパッド11の表面に設けられたセンサ32から、シートクッションパッド11の表面上を後方に延び、ハーネス通路35を通過してシートクッションパッド11の裏面側に到達し、凹部45を通過してシートクッションパッド11の後縁に到達する。
【0039】
図2に示すように、シートバック3は、車体パネル4の壁部6に支持されたシートバックパッド51と、シートバックパッド51の表面(前面)を覆う表皮材52とを有する。シートバックパッド51は、シートクッションパッド11と同様に、硬質部53及び軟質部54を有する。
【0040】
シートバックパッド51は、その下端部において左右に延びる回動軸X2を中心として壁部6に回動可能に支持されている。シートバックパッド51は、壁部6に設けられたブラケットによって、回動軸X2を中心として回動可能に支持されているとよい。シートバックパッド51は、回動軸X2を中心として回動し、その裏面(後面)が壁部6の前面に接触した通常位置と、通常位置に対して上部が前方に位置する前傾位置とを取り得る。通常位置において、シートバックパッド51の上端は壁部6に係止されているとよい。他の実施形態においてシートバックパッド51は、壁部6に代えてシートクッションパッド11に回動可能に支持されてもよい。
【0041】
シートバックパッド51の表面には、シートクッションパッド11と同様に吊り込み溝が形成されている。シートバックパッド51の表面と表皮材52との間には、着座者に関する情報を取得するセンサ57が設けられている。センサ57は、シートクッションパッド11に設けられるセンサ32と同様のものであってよい。
【0042】
シートバックパッド51には、表面から裏面に貫通するハーネス通路58が形成されている。センサ57に接続されたハーネス59は、シートバックパッド51の表面側からハーネス通路58を通過してシートクッションパッド11の裏面側に延びる。ハーネス通路58の位置は、シートクッションパッド11におけるハーネス通路35の位置を援用することができる。
【0043】
シートバックパッド51の裏面には、ハーネス通路58の裏面側の開口端に接続した凹部61が凹設されている。凹部61と車体パネル4の壁部6とは、それらの間にハーネス59を受容可能な空間を形成する。凹部61は、溝形をなし、ハーネス通路58から下方に延びている。すなわち、凹部61はハーネス通路58からシートバックパッド51の回動軸X2側に延びている。凹部61の下端は、シートバックパッド51の下縁に到達してもよい。
【0044】
実施形態に係るシート1の効果について説明する。シートクッションパッド11の裏面に設けられた凹部45によって、車体パネル4のフロア部5とシートクッションパッド11の裏面との間に空間を形成することができ、この空間にハーネス33を配置することができる。同様に、シートバックパッド51の裏面に設けられた凹部61によって、車体パネル4の壁部6とシートバックパッド51の裏面との間に空間を形成することができ、この空間にハーネス59を配置することができる。
【0045】
シートクッションパッド11において、凹部45がハーネス通路35から後方、すなわちシートクッションパッド11の回動軸X1側に延びているため、シートクッションパッド11がフロア部5に対して回動するときにハーネス33とフロア部5との距離が変動し難くなり、ハーネス33が引っ張られることを抑制することができる。同様に、シートバックパッド51において、凹部61がハーネス通路58から下方、すなわちシートバックパッド51の回動軸X2側に延びているため、ハーネス59が引っ張られることを抑制することができる。
【0046】
ハーネス通路35が、シートクッションパッド11の表面において受圧領域30を避けた位置(後傾斜部28)に開口しているため、着座者の荷重をハーネス33に加わり難くすることができる。シートバック3についても同様である。
【0047】
次に、第2実施形態に係るシート70について説明する。図6に示すように、第2実施形態に係るシート70は、第1実施形態に係るシート1に対して、空気通路37を有さず、かつヒータ布72を有する点が異なる。第2実施形態に係るシート70の他の構成については、第1実施形態に係るシート1と同じであるため、同じ構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0048】
シートクッションパッド11の表面と表皮材12との間には、ヒータ線73を有するヒータ布72が設けられている。ヒータ布72は、受圧領域30に配置される略長方形の本体部72Aと、本体部72Aの後縁の左右両端から後方に延びる左右一対の接続部72Bとを有する。ヒータ布72は、横溝23、24においてその内部に進入し、表皮材12の下側を通過している。左右一対の接続部72Bは、シートクッションパッド11の後端部に沿って表面側から裏面側に延びている。
【0049】
ヒータ布72の本体部72Aは、センサ32の検出部32B及びフィルム32Aの前部と重なる位置に配置されている。一方、ハーネス通路35の表面側の開口端はヒータ布72を避けた位置に配置されている。ハーネス通路35の表面側の開口端は、本体部72Aの後縁と、左右の接続部72Bとによって画定された領域に配置されている。
【0050】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、凹部45は、シートクッションパッド11の裏面に代えて、フロア部5に設けてもよい。すなわち、凹部45はシートクッションパッド11の裏面及びフロア部5の一方に設けられるとよい。同様に、凹部45はシートバックパッド51の裏面及び壁部6の一方に設けられるとよい。
【0051】
ハーネス通路35の表面側の開口端は、吊り込み溝の内部に設けられてもよい。ハーネス通路35の表面側の開口端は、左右の縦溝、前後の横溝のいずれに設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1、70 :シート
2 :シートクッション
3 :シートバック
4 :車体パネル
5 :フロア部
6 :壁部
11 :シートクッションパッド
12 :表皮材
14 :硬質部
15 :軟質部
20 :吊り込み溝
28 :後傾斜部
30 :受圧領域
32 :センサ
33 :ハーネス
35 :ハーネス通路
37 :空気通路
41 :係止部
45 :凹部
51 :シートバックパッド
52 :表皮材
57 :センサ
58 :ハーネス通路
59 :ハーネス
61 :凹部
72 :ヒータ布
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-01-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッション及びシートバックを備えた乗物用シートであって、
前記シートクッションが、
パッドと、
前記パッドの表面を覆う表皮材と、
前記パッドの表面と前記表皮材との間に設けられた、着座者に関する情報を取得するセンサとを有し、
前記パッドは、前記パッドの表面から裏面に貫通する貫通孔と、前記パッドの裏面に凹設され、前記貫通孔に接続した凹部とを有し、
前記センサに接続されたハーネスは、前記貫通孔及び前記凹部内を延び、
前記パッドの表面には、前記表皮材を吊り込むための吊り込み溝が設けられ、
前記貫通孔は前記吊り込み溝の後方に設けられている乗物用シート。
【請求項2】
前記吊り込み溝は左右方向に延在する横溝を含み、
前記パッドの表面後部には後方に向かって上方に傾斜する後傾斜部が設けられ、
前記後傾斜部は前記横溝の後方に位置し、
前記貫通孔は前記後傾斜部に設けられている請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記吊り込み溝は、それぞれが前後方向に延在し、左右に並ぶ左右一対の縦溝と、それぞれが左右方向に延在し、前後に並ぶ前後一対の横溝とを含み、
前記横溝はそれぞれ左右の前記縦溝を接続し、
前記センサは、前後方向において前後一対の前記横溝の間、且つ、左右方向において左右一対の前記縦溝の間に位置する検出部を備える請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記貫通孔は、後側の前記横溝より後方に位置する請求項3に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記パッドは、硬質部と、前記硬質部よりも高い可撓性を有する軟質部とを含み、
前記貫通孔は前記軟質部及び前記硬質部を貫通し、
前記軟質部は、前記硬質部よりも上方に位置し、
前記凹部は、前記貫通孔の開口部から後方に向かって延びている請求項1~請求項4のいずれか1つの項に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記凹部は、前記硬質部に形成されている請求項5に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記貫通孔を画定する前記硬質部に形成された壁面の一部は、前記貫通孔を画定する前記軟質部に形成された壁面に比べて後方に位置する請求項5又は請求項6に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記貫通孔の前記硬質部における径の最大値は、前記貫通孔の前記軟質部における径の最小値よりも大きい請求項5~請求項7のいずれか1つの項に記載の乗物用シート。
【請求項9】
前記硬質部は、前記軟質部を受け入れる受入貫通孔を有し、
前記凹部の左右方向に沿った幅は、前記硬質部に形成された前記受入貫通孔の左右方向に沿った幅よりも大きい請求項5~請求項8のいずれか1つの項に記載の乗物用シート。
【請求項10】
前記パッドは空気通路を画定するべく裏面から表面に延びる通気孔を有し、
前記貫通孔は前記通気孔の後方に位置している請求項1~請求項9のいずれか1つの項に記載の乗物用シート。
【請求項11】
前記パッドは、上下方向を向く面を備えたパネルによって下側から支持されている請求項10に記載の乗物用シート。
【請求項12】
前記パネルには、前後に延び、後端において前記空気通路の前記パッドの裏面側の端部に接続し、前端において車室内の空間に接続する通気溝が凹設されている請求項11に記載の乗物用シート。