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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154484
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】防水構造およびワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/22 20060101AFI20241024BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
H02G3/22
H01B7/00 301
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068297
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦島 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】古屋 宏恭
(72)【発明者】
【氏名】菅原 裕
【テーマコード(参考)】
5G309
5G363
【Fターム(参考)】
5G309AA01
5G309AA09
5G363AA01
5G363BA01
5G363CB08
(57)【要約】
【課題】止水性を向上できる防水構造およびワイヤハーネスを提供する。
【解決手段】防水構造1は、電線2が挿入されるコルゲートチューブ3と、コルゲートチューブが挿入される第一筒部41を有し、かつコルゲートチューブを保持するグロメット4と、を備え、第一筒部は、第一筒部の中心軸線に向けて突出しており、かつコルゲートチューブの外周面に密着する第一シール部43と、中心軸線に向けて突出しており、かつコルゲートチューブの外周面に密着する第二シール部44と、第一シール部と第二シール部との間に配置され、かつ湾曲可能な可撓部45と、を有する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線が挿入されるコルゲートチューブと、
前記コルゲートチューブが挿入される第一筒部を有し、かつ前記コルゲートチューブを保持するグロメットと、
を備え、
前記第一筒部は、前記第一筒部の中心軸線に向けて突出しており、かつ前記コルゲートチューブの外周面に密着する第一シール部と、前記中心軸線に向けて突出しており、かつ前記コルゲートチューブの外周面に密着する第二シール部と、前記第一シール部と前記第二シール部との間に配置され、かつ湾曲可能な可撓部と、を有する
ことを特徴とする防水構造。
【請求項2】
前記コルゲートチューブの山部は、頂面を有し、
前記中心軸線の方向における前記第一シール部および前記第二シール部の長さは、前記コルゲートチューブにおける隣り合う二つの前記頂面を覆うことができる長さである
請求項1に記載の防水構造。
【請求項3】
前記グロメットは、パネルの貫通孔に対して嵌合する嵌合部を有し、かつ前記嵌合部は、前記第二シール部に対して前記第一シール部の側とは反対側に配置されており、
前記中心軸線の方向における前記第一シール部の長さは、前記第二シール部の長さよりも大きい
請求項2に記載の防水構造。
【請求項4】
前記可撓部は、蛇腹形状を有しており、かつ前記可撓部の最内径は、前記コルゲートチューブの外径よりも大きい
請求項1に記載の防水構造。
【請求項5】
前記可撓部と前記第一シール部との間には、肉厚が変化するテーパ部が設けられており、
前記テーパ部の肉厚は、前記中心軸線の方向に沿って前記第一シール部から遠ざかるに従って小さくなる
請求項1に記載の防水構造。
【請求項6】
電線と、
前記電線が挿入されるコルゲートチューブと、
前記コルゲートチューブが挿入される第一筒部を有し、かつ前記コルゲートチューブを保持するグロメットと、
を備え、
前記第一筒部は、前記第一筒部の中心軸線に向けて突出しており、かつ前記コルゲートチューブの外周面に密着する第一シール部と、前記中心軸線に向けて突出しており、かつ前記コルゲートチューブの外周面に密着する第二シール部と、前記第一シール部と前記第二シール部との間に配置され、かつ湾曲可能な可撓部と、を有する
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水構造およびワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コルゲートチューブに取り付けられるグロメットがある。特許文献1には、コルゲートチューブの外周側にシール状態で接続可能な筒状のコルゲート側端部と、コルゲート側端部の内周面において、コルゲートチューブの谷部に密着するように設けられた複数のシール用リップとを備えるグロメットが開示されている。
【0003】
特許文献2には、グロメット筒部と、内筒部と、外筒部と、結束部材組み付け部と、外筒側挟持部と、内筒側挟持部とを有するグロメットが開示されている。内筒部は、コルゲートチューブの端部からこの内部に挿入される。外筒部は、コルゲートチューブの端部から外部にかけて覆う部分に形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-225339号公報
【特許文献2】特開2021-13253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コルゲートチューブおよびグロメットを有する防水構造およびワイヤハーネスにおいて、止水性を向上できることが望ましい。例えば、コルゲートチューブが湾曲しながら配索される場合の止水性を向上できることが好ましい。
【0006】
本発明の目的は、止水性を向上できる防水構造およびワイヤハーネスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の防水構造は、電線が挿入されるコルゲートチューブと、前記コルゲートチューブが挿入される第一筒部を有し、かつ前記コルゲートチューブを保持するグロメットと、を備え、前記第一筒部は、前記第一筒部の中心軸線に向けて突出しており、かつ前記コルゲートチューブの外周面に密着する第一シール部と、前記中心軸線に向けて突出しており、かつ前記コルゲートチューブの外周面に密着する第二シール部と、前記第一シール部と前記第二シール部との間に配置され、かつ湾曲可能な可撓部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る防水構造において、グロメットの第一筒部は、第一筒部の中心軸線に向けて突出しており、かつコルゲートチューブの外周面に密着する第一シール部と、中心軸線に向けて突出しており、かつコルゲートチューブの外周面に密着する第二シール部と、第一シール部と第二シール部との間に配置され、かつ湾曲可能な可撓部と、を有する。本発明に係る防水構造によれば、止水性を向上できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る防水構造およびワイヤハーネスの斜視図である。
図2図2は、実施形態に係る防水構造およびワイヤハーネスの平面図である。
図3図3は、実施形態に係る防水構造の分解斜視図である。
図4図4は、実施形態に係るグロメットの断面図である。
図5図5は、実施形態に係るコルゲートチューブの断面図である。
図6図6は、実施形態に係る防水構造の断面図である。
図7図7は、実施形態に係る防水構造の断面図である。
図8図8は、実施形態に係る防水構造の断面図である。
図9図9は、湾曲変形したグロメットおよびコルゲートチューブの断面図である。
図10図10は、実施形態の第1変形例に係る防水構造およびワイヤハーネスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態に係る防水構造およびワイヤハーネスにつき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0011】
[実施形態]
図1から図9を参照して、実施形態について説明する。本実施形態は、防水構造およびワイヤハーネスに関する。図1は、実施形態に係る防水構造およびワイヤハーネスの斜視図、図2は、実施形態に係る防水構造およびワイヤハーネスの平面図、図3は、実施形態に係る防水構造の分解斜視図、図4は、実施形態に係るグロメットの断面図、図5は、実施形態に係るコルゲートチューブの断面図、図6は、実施形態に係る防水構造の断面図、図7は、実施形態に係る防水構造の断面図、図8は、実施形態に係る防水構造の断面図、図9は、湾曲変形したグロメットおよびコルゲートチューブの断面図である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態のワイヤハーネス100は、防水構造1および電線2を有する。ワイヤハーネス100は、例えば、自動車等の車両に搭載される。防水構造1は、コルゲートチューブ3、グロメット4、外装部材5、およびバンド部材6を有する。本実施形態の防水構造1は、コルゲートチューブ3とグロメット4との隙間からの水の浸入を適切に抑制することができる。
【0013】
図2に示すように、グロメット4は、パネル200に対して嵌合される。パネル200は、例えば、車両の車内空間210と外部空間220とを仕切る金属板である。パネル200は、グロメット4が挿入可能な貫通孔201を有している。グロメット4は、この貫通孔201に挿入されてパネルの壁面200aに密着する。本明細書では、グロメット4の軸方向を「第一方向X」と称する。グロメット4は、第一方向Xに沿ってパネル200を貫通する。
【0014】
コルゲートチューブ3は、可撓性の外装部材であり、蛇腹形状を有している。コルゲートチューブ3は、円筒形状を有しており、軸方向の両端が開放している。本実施形態のコルゲートチューブ3は、スリットを有していない。従って、軸方向と直交する断面におけるコルゲートチューブ3の断面形状は、無端の円形である。本実施形態の外装部材5は、コルゲートチューブ3と同様の部材であり、可撓性を有している。グロメット4は、防水部材であり、ゴム等の弾性変形可能な樹脂で成型される。グロメット4は、コルゲートチューブ3よりも高い柔軟性を有する。
【0015】
図3に示すように、グロメット4は、嵌合部40、第一筒部41、および第二筒部42を有する。嵌合部40は、パネル200に対して嵌合する部分である。第一筒部41は、コルゲートチューブ3が挿入される部分であり、第二筒部42は、外装部材5が挿入される部分である。例示された第一筒部41および第二筒部42は、円筒形状を有する。
【0016】
図4に示すように、嵌合部40は、環状の溝部40aおよび外側シール部40bを有する。溝部40aは、グロメット4の外周面に設けられている。溝部40aは、グロメット4の中心軸線C1に向けて、グロメット4の半径方向に沿って凹んでいる。パネル200は、溝部40aに嵌合する。外側シール部40bは、溝部40aに対して半径方向の外側に向けてフランジ状に突出している。外側シール部40bは、第一方向Xにおいてパネル200の壁面200aと対向し、かつ壁面200aに密着する。
【0017】
第一筒部41は、嵌合部40に対して第一方向Xの第一の側X1に配置されており、第二筒部42は、嵌合部40に対して第一方向Xの第二の側X2に配置されている。言い換えると、嵌合部40は、第一筒部41と第二筒部42との間に配置される。
【0018】
第一筒部41は、第一シール部43、第二シール部44、可撓部45、第一テーパ部46、および第二テーパ部47を有する。第一シール部43は、第一筒部41における嵌合部40から遠い側の端部に配置されている。第二シール部44は、第一シール部43と嵌合部40との間に配置されている。また、可撓部45は、第一シール部43と第二シール部44との間に配置されている。つまり、第一シール部43は、可撓部45に対して第一の側X1に配置され、第二シール部44は、可撓部45に対して第二の側X2に配置されている。第一テーパ部46は、第一シール部43と可撓部45との間に配置され、第二テーパ部47は、第二シール部44と可撓部45との間に配置されている。
【0019】
第一シール部43および第二シール部44は、コルゲートチューブ3の外周面に密着するように形成されている。第一シール部43および第二シール部44の形状は、円筒形状である。第一シール部43は、コルゲートチューブ3の外周面に密着するシール面43aを有する。第二シール部44は、コルゲートチューブ3の外周面に密着するシール面44aを有する。第一シール部43および第二シール部44は、第一筒部41の中心軸線C1に向けて突出している。
【0020】
より詳しくは、第一シール部43のシール面43aは、可撓部45の内周面45aに対して中心軸線C1の側に向けて突出している。第二シール部44のシール面44aは、可撓部45の内周面45aに対して中心軸線C1の側に向けて突出している。第一シール部43の内径D1の値は、例えば、第二シール部44の内径D2の値と等しい。可撓部45の内径D3の値は、内径D1,D2の値よりも大きい。
【0021】
シール面43aは、長さL1を有し、シール面44aは、長さL2を有する。長さL1,L2は、第一方向Xの長さである。本実施形態のグロメット4では、第一シール部43のシール面43aの長さL1が第二シール部44のシール面44aの長さL2よりも大きい。
【0022】
第一シール部43の外周面には、バンド部材6に対応する環状の溝43bが設けられている。溝43bは、第一シール部43における第一の側X1の端部に配置されている。溝43bの底面からシール面43aまでの厚さt3は、可撓部45の厚さt5よりも大きい。第二シール部44の外周面には、バンド部材6に対応する環状の溝44bが設けられている。溝44bの底面からシール面44aまでの厚さt4は、可撓部45の厚さt5よりも大きい。
【0023】
第一テーパ部46は、第一方向Xに沿って第一シール部43と可撓部45とをつないでいる。第一テーパ部46の肉厚t1は、第一方向Xに沿って第一シール部43から遠ざかるに従って小さくなる。第一テーパ部46の内径は、第一シール部43から可撓部45へ向かうに従って大きくなる。つまり、第一テーパ部46の内周面は、可撓部45から第一シール部43へ向かうに従って内径が小さくなるテーパ形状を有する。
【0024】
第二テーパ部47は、第一方向Xに沿って可撓部45と第二シール部44とをつないでいる。第二テーパ部47の肉厚t2は、第一方向Xに沿って第二シール部44から遠ざかるに従って小さくなる。第二テーパ部47の内径は、第二シール部44から可撓部45へ向かうに従って大きくなる。つまり、第二テーパ部47の内周面は、可撓部45から第二シール部44へ向かうに従って内径が小さくなるテーパ形状を有する。
【0025】
第二筒部42は、外装部材5が挿入可能な筒形状を有している。本実施形態の第二筒部42は、蛇腹形状の蛇腹部42aを有している。
【0026】
図5に示すように、コルゲートチューブ3は、複数の山部31および複数の谷部32を有する。山部31は、半径方向の外側に向けて突出している部分である。谷部32は、一つの山部31の裾と、他の一つの山部31の裾との間の部分である。コルゲートチューブ3では、山部31および谷部32が第一方向Xに交互に並んでいる。中心軸線C2に沿った断面における山部31の断面形状は、台形形状である。山部31は、頂面31aを有する。頂面31aは、コルゲートチューブ3の外周面である。コルゲートチューブ3は、外径D4を有している。外径D4は、頂面31aの直径である。外径D4の値は、以下の式(1)および式(2)により定められている。すなわち、コルゲートチューブ3の外径D4は、第一シール部43の内径D1以上であり、かつ第二シール部44の内径D2以上である。
D4≧D1 (1)
D4≧D2 (2)
【0027】
第一シール部43の内径D1、および第二シール部44の内径D2は、第一筒部41に永久的な圧縮歪みが生じた場合であってもシール面43a,44aがコルゲートチューブ3の外周面と密着できるように定められてもよい。この場合、内径D1,D2の値は、それぞれコルゲートチューブ3の外径D4よりも小さな値とされる。
【0028】
山部31は、ピッチP1で等間隔に配置されている。ピッチP1は、一つの谷部32の基準位置から、隣り合う谷部32の基準位置までの第一方向Xの距離である。基準位置は、例えば、谷部32と山部31との境界線である。
【0029】
コルゲートチューブ3は、第一の長さM1、第二の長さM2、および第三の長さM3を有する。長さM1,M2,M3は、何れもコルゲートチューブ3が直線状に延在しているときの第一方向Xの長さである。第一の長さM1は、第一方向Xにおける頂面31aの幅である。第二の長さM2は、隣り合う二つの頂面31aで決定される長さである。言い換えると、第二の長さM2は、一つの頂面31aにおける第一の側X1の端部から、隣り合う一つの頂面31aにおける第二の側X2の端部までの距離である。第三の長さM3は、連続する三つの頂面31aで決定される長さである。言い換えると、第三の長さM3は、一つの頂面31aにおける第一の側X1の端部から、二つ隣の頂面31aにおける第二の側X2の端部までの距離である。
【0030】
コルゲートチューブ3は、例えば、第一シール部43の側から第一筒部41に挿入される。コルゲートチューブ3は、少なくとも第二シール部44を貫通する位置までグロメット4に挿入される。
【0031】
図6には、第一シール部43に挿入されたコルゲートチューブ3が示されている。第一シール部43は、シール面43aが少なくとも隣り合う二つの頂面31aの全体と密着できるように形成されている。具体的には、第一シール部43のシール面43aの長さL1は、図5に示す第二の長さM2以上である。この場合、コルゲートチューブ3に対して第一シール部43が適切に位置決めされることで、シール面43aが隣り合う二つの頂面31aの全体と密着できる。本実施形態の長さL1は、第二の長さM2よりも大きい。シール面43aの長さL1は、図5に示す第三の長さM3以上であってもよい。この場合、シール面43aは、少なくとも二つの頂面31aの全体と密着でき、連続する三つの頂面31aの全体と密着することも可能である。
【0032】
図6に示すように、コルゲートチューブ3は、第一シール部43を弾性変形させながら第一シール部43に挿入されてもよい。この場合、第一シール部43の内径D1の値は、コルゲートチューブ3の外径D4の値よりも小さい。これにより、コルゲートチューブ3の外周面に対するシール面43aの密着度合いが大きくなる。
【0033】
図7には、第二シール部44に挿入されたコルゲートチューブ3が示されている。第二シール部44は、シール面44aが少なくとも隣り合う二つの頂面31aの全体と密着できるように形成されている。具体的には、第二シール部44のシール面44aの長さL2は、図5に示す第二の長さM2以上である。本実施形態の長さL2は、第二の長さM2よりも大きい。
【0034】
図7に示すように、コルゲートチューブ3は、第二シール部44を弾性変形させながら第二シール部44に挿入されてもよい。この場合、第二シール部44の内径D2の値は、コルゲートチューブ3の外径D4の値よりも小さい。これにより、コルゲートチューブ3の外周面に対するシール面44aの密着度合いが大きくなる。
【0035】
図8には、第一筒部41に対して締結されたバンド部材6が示されている。第一シール部43および第二シール部44は、コルゲートチューブ3の外周面に密着してコルゲートチューブ3を保持する。第一シール部43の溝43bには、バンド部材6Aが締結される。バンド部材6Aは、第一シール部43をコルゲートチューブ3に対して締め付け、シール面43aをコルゲートチューブ3の外周面に向けて押圧する。第二シール部44の溝44bには、バンド部材6Bが締結される。バンド部材6Bは、第二シール部44をコルゲートチューブ3に対して締め付け、シール面44aをコルゲートチューブ3の外周面に向けて押圧する。
【0036】
バンド部材6の幅は、コルゲートチューブ3の第一の長さM1よりも大きいことが好ましい。バンド部材6の幅は、コルゲートチューブ3のピッチP1よりも大きくてもよい。この場合、バンド部材6は、隣り合う二つの頂面31aに対してシール面43a,44aを押圧することが可能である。
【0037】
図8に示すように、可撓部45の内周面45aとコルゲートチューブ3の外周面との間には、隙間G1が設けられている。従って、可撓部45は、コルゲートチューブ3が湾曲変形する場合に、コルゲートチューブ3の変形に容易に追従して湾曲変形することができる。
【0038】
図9には、湾曲変形したコルゲートチューブ3およびグロメット4が示されている。第一シール部43は、コルゲートチューブ3の外周面に密着している。従って、第一シール部43は、グロメット4の外部から隙間G1への水の浸入を効果的に抑制することができる。第一シール部43は、バンド部材6Aによってコルゲートチューブ3に対して締め付けられている。よって、第一筒部41がコルゲートチューブ3の変形に追従するときのコルゲートチューブ3に対する第一シール部43のずれが抑制され、シール性の低下が抑制される。
【0039】
第二シール部44は、コルゲートチューブ3の外周面に密着している。従って、第二シール部44は、嵌合部40の側への水の浸入を効果的に抑制することができる。第二シール部44は、バンド部材6Bによってコルゲートチューブ3に対して締め付けられている。よって、第一筒部41がコルゲートチューブ3の変形に追従するときのコルゲートチューブ3に対する第二シール部44のずれが抑制され、シール性の低下が抑制される。
【0040】
このように、本実施形態の防水構造1は、外部空間220から車内空間210への水の浸入を二つのシール部43,44によって抑制する。また、二つのシール部43,44の間には、弾性変形可能な可撓部45が設けられている。よって、本実施形態の防水構造1は、コルゲートチューブ3の曲げ変形に対するグロメット4の追従性と、防水性能の確保とを両立させることができる。
【0041】
以上説明したように、本実施形態の防水構造1は、電線2が挿入されるコルゲートチューブ3と、グロメット4と、を有する。グロメット4は、コルゲートチューブ3が挿入される第一筒部41を有し、かつコルゲートチューブ3を保持する。第一筒部41は、第一シール部43と、第二シール部44と、湾曲可能な可撓部45と、を有する。第一シール部43および第二シール部44は、第一筒部41の中心軸線C1に向けて突出しており、かつコルゲートチューブ3の外周面に密着する。可撓部45は、第一シール部43と第二シール部44との間に配置される。本実施形態の防水構造1は、可撓部45の両側にシール部43,44を有することで、止水性を向上させることができる。
【0042】
本実施形態の防水構造1において、コルゲートチューブ3の山部31は、頂面31aを有する。中心軸線C1の方向における第一シール部43の長さL1および第二シール部44の長さL2は、隣り合う二つの頂面31aを覆うことができる長さである。本実施形態の第一シール部43は、隣り合う二つの頂面31aの全体を覆うことができ、かつ第二シール部44は、隣り合う二つの頂面31aの全体を覆うことができる。よって、本実施形態の防水構造1は、止水性を向上させることができる。
【0043】
本実施形態のグロメット4は、パネル200の貫通孔201に対して嵌合する嵌合部40を有する。嵌合部40は、第二シール部44に対して第一シール部43の側とは反対側に配置されている。第一シール部43の長さL1は、第二シール部44の長さL2よりも大きい。つまり、本実施形態の防水構造1は、嵌合部40から遠い側の第一シール部43において効果的に止水することができる。
【0044】
本実施形態の防水構造1において、可撓部45と第一シール部43との間には、肉厚が変化する第一テーパ部46が設けられている。第一テーパ部46の肉厚t1は、中心軸線C1の方向に沿って第一シール部43から遠ざかるに従って小さくなる。つまり、第一テーパ部46の剛性は、可撓部45から第一シール部43へ向かうに従って高くなる。よって、本実施形態の防水構造1は、コルゲートチューブ3の変形に対して可撓部45が追従して変形するときの第一シール部43のシール性低下を抑制することができる。
【0045】
本実施形態のワイヤハーネス100は、電線2と、上記の防水構造1と、を有する。よって、本実施形態のワイヤハーネス100は、グロメット4とコルゲートチューブ3との間への水の浸入を抑制し、止水性を向上させることができる。
【0046】
なお、第二筒部42に挿入される外装部材5は、スリットを有していないコルゲートチューブには限定されない。外装部材5は、例えば、スリットを有するコルゲートチューブであってもよく、ツイストチューブであってもよい。
【0047】
可撓部45の形状は、例示された円筒形状には限定されない。可撓部45の断面形状は、楕円形状であってもよく、その他の形状であってもよい。可撓部45の内径D3は、一定でなくてもよい。この場合、可撓部45の形状は、円錐のごとく第一方向Xに沿って内径D3が変化する形状であってもよい。
【0048】
[実施形態の第1変形例]
図10を参照して、実施形態の第1変形例について説明する。図10は、実施形態の第1変形例に係る防水構造およびワイヤハーネスを示す図である。図10では、グロメット4の断面が示されている。実施形態の第1変形例において、上記実施形態と異なる点は、例えば、第一筒部41が蛇腹部48を有する点である。
【0049】
図10に示すように、実施形態の第1変形例に係る可撓部45は、蛇腹部48を有する。蛇腹部48は、複数の山部48aおよび複数の谷部48bを有する。谷部48bの内径D5は、コルゲートチューブ3の外径D4よりも大きい。蛇腹部48を有する第一筒部41は、コルゲートチューブ3の変形に対する高い追従性を有する。第一筒部41は、コルゲートチューブ3の曲げ変形に対して、主として蛇腹部48を変形させて追従することができる。よって、第1変形例のグロメット4は、コルゲートチューブ3に対する第一シール部43のずれ、および第二シール部44のずれを適切に抑制することができる。
【0050】
以上説明したように、実施形態の第1変形例に係る可撓部45は、蛇腹形状の蛇腹部48を有する。可撓部45の最内径は、コルゲートチューブ3の外径D4よりも大きい。よって、実施形態の第1変形例に係る防水構造1は、コルゲートチューブ3の変形に対する可撓部45の追従性を向上させることができる。可撓部45の最内径は、谷部48bの内径D5であってもよく、蛇腹部48に隣接する部分の内径D6であってもよい。
【0051】
上記の実施形態および変形例に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。
【符号の説明】
【0052】
1:防水構造、 2:電線、 3:コルゲートチューブ、 4:グロメット
5:外装部材、 6,6A,6B:バンド部材
31:山部、 31a:頂面、 32:谷部
40:嵌合部、 40a:溝部、 40b:外側シール部
41:第一筒部、 42:第二筒部、 42a:蛇腹部
43:第一シール部、 43a:シール面、 43b:溝
44:第二シール部、 44a:シール面、 44b:溝
45:可撓部、 46:第一テーパ部、 47:第二テーパ部
200:パネル、 200a:壁面、 210:車内空間、 220:外部空間
D1:第一シール部の内径、 D2:第二シール部の内径、 D3:可撓部の内径
D4:コルゲートチューブの外径
G1:隙間
L1:第一シール部のシール面の長さ、 L2:第二シール部のシール面の長さ
M1:第一の長さ、 M2:第二の長さ、 M3:第三の長さ
P1:ピッチ
t1:第一テーパ部の肉厚、 t2:第二テーパ部の肉厚
X:第一方向、 X1:第一の側、 X2:第二の側
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2024-08-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線が挿入されるコルゲートチューブと、
前記コルゲートチューブが挿入される第一筒部を有し、かつ前記コルゲートチューブを保持するグロメットと、
を備え、
前記第一筒部は、前記第一筒部の中心軸線に向けて突出しており、かつ前記コルゲートチューブの外周面に密着する第一シール部と、前記中心軸線に向けて突出しており、かつ前記コルゲートチューブの外周面に密着する第二シール部と、前記第一シール部と前記第二シール部との間に配置され、かつ湾曲可能な可撓部と、を有し、
前記コルゲートチューブの山部は、頂面を有し、
前記中心軸線の方向における前記第一シール部および前記第二シール部の長さは、前記コルゲートチューブにおける隣り合う二つの前記頂面を覆うことができる長さであり、
前記グロメットは、パネルの貫通孔に対して嵌合する嵌合部を有し、かつ前記嵌合部は、前記第二シール部に対して前記第一シール部の側とは反対側に配置されており、
前記中心軸線の方向における前記第一シール部の長さは、前記第二シール部の長さよりも大きい
ことを特徴とする防水構造。
【請求項2】
前記可撓部は、蛇腹形状を有しており、かつ前記可撓部の最内径は、前記コルゲートチューブの外径よりも大きい
請求項1に記載の防水構造。
【請求項3】
前記可撓部と前記第一シール部との間には、肉厚が変化するテーパ部が設けられており、
前記テーパ部の肉厚は、前記中心軸線の方向に沿って前記第一シール部から遠ざかるに従って小さくなる
請求項1に記載の防水構造。
【請求項4】
電線と、
前記電線が挿入されるコルゲートチューブと、
前記コルゲートチューブが挿入される第一筒部を有し、かつ前記コルゲートチューブを保持するグロメットと、
を備え、
前記第一筒部は、前記第一筒部の中心軸線に向けて突出しており、かつ前記コルゲートチューブの外周面に密着する第一シール部と、前記中心軸線に向けて突出しており、かつ前記コルゲートチューブの外周面に密着する第二シール部と、前記第一シール部と前記第二シール部との間に配置され、かつ湾曲可能な可撓部と、を有する
ことを特徴とするワイヤハーネス。