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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154490
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】繊維製品用の液体洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 17/08 20060101AFI20241024BHJP
   C11D 1/72 20060101ALI20241024BHJP
   C11D 1/22 20060101ALI20241024BHJP
   C11D 3/33 20060101ALI20241024BHJP
   C11D 3/10 20060101ALI20241024BHJP
   D06M 13/256 20060101ALI20241024BHJP
   D06M 11/76 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C11D17/08
C11D1/72
C11D1/22
C11D3/33
C11D3/10
D06M13/256
D06M11/76
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068307
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】小熊 知美
(72)【発明者】
【氏名】西山 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】菊地 由希子
【テーマコード(参考)】
4H003
4L031
4L033
【Fターム(参考)】
4H003AB03
4H003AB19
4H003AC08
4H003BA12
4H003DA01
4H003EA03
4H003EA16
4H003EA21
4H003EB13
4H003EB36
4H003ED02
4H003FA16
4H003FA28
4H003FA34
4L031AB31
4L031BA14
4L031DA12
4L033AB04
4L033AC10
4L033BA28
(57)【要約】
【課題】除菌効果に優れ、かつ液体安定性に優れる繊維製品用の液体洗浄剤組成物。
【解決手段】A)成分:アルコールエトキシレートと、(B)成分:直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩から選ばれる1種以上と、(C)成分:アミノカルボン酸系キレート剤と、(D)成分:炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムから選ばれる1種以上と、(E)成分:水と、をそれぞれ特定の割合で有し、A/B比が特定の範囲で、かつpHが特定の範囲であることよりなる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:アルコールエトキシレートと、
(B)成分:直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩から選ばれる1種以上と、
(C)成分:アミノカルボン酸系キレート剤と、
(D)成分:炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムから選ばれる1種以上と、
(E)成分:水と、
を含み、
前記(A)成分の含有量は、繊維製品用の液体洗浄剤組成物の総質量に対して3質量%以上であり、
前記(B)成分の含有量は、繊維製品用の液体洗浄剤組成物の総質量に対して10質量%以上であり、
前記(D)成分の含有量は、繊維製品用の液体洗浄剤組成物の総質量に対して0.1~10質量%であり、
前記(E)成分の含有量は、繊維製品用の液体洗浄剤組成物の総質量に対して40質量%以上であり、
[(A)成分の含有量]/[(B)成分の含有量]で表され、前記(B)成分の含有量に対する前記(A)成分の含有量の質量比は、0.5以下であり、
pHが9~12である、繊維製品用の液体洗浄剤組成物。
【請求項2】
[(C)成分の含有量]/[(D)成分の含有量]で表され、前記(D)成分の含有量に対する前記(C)成分の含有量の質量比は、10以下である、請求項1に記載の繊維製品用の液体洗浄剤組成物。
【請求項3】
総界面活性剤量が、15~45質量%である、請求項1又は2に記載の繊維製品用の液体洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維製品用の液体洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
衛生意識の高まりから、繊維製品用の液体洗浄剤組成物には、被洗物に対する除菌効果が求められている。
例えば、特許文献1には、特定の第4級アンモニウム塩と、アルカリ剤と、キレート剤とを含む、繊維製品用の液体洗浄剤組成物が提案されている。特許文献1に記載の発明によれば、非エンベロープウィルスを不活化し、かつ優れた除菌効果の発揮を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-060787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、第4級アンモニウム塩を洗浄成分であるアニオン界面活性剤と共存させると、アニオン-カチオン複合体を形成して、両者の性能を抑制してしまう。加えて、各成分の水への溶解性を高めて、液体安定性を高めるために、ノニオン界面活性剤を用いると、除菌効果が低下するという問題があった。
そこで、本発明は、除菌効果に優れ、かつ液体安定性に優れる繊維製品用の液体洗浄剤組成物を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討した結果、アニオン界面活性剤である直鎖アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩と炭酸塩とを組み合わせ、かつpHを特定の範囲とすることで、除菌効果を高められることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は以下の態様を有する。
<1>
(A)成分:アルコールエトキシレートと、
(B)成分:直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩から選ばれる1種以上と、
(C)成分:アミノカルボン酸系キレート剤と、
(D)成分:炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムから選ばれる1種以上と、
(E)成分:水と、
を含み、
前記(A)成分の含有量は、繊維製品用の液体洗浄剤組成物の総質量に対して3質量%以上であり、
前記(B)成分の含有量は、繊維製品用の液体洗浄剤組成物の総質量に対して10質量%以上であり、
前記(D)成分の含有量は、繊維製品用の液体洗浄剤組成物の総質量に対して0.1~10質量%であり、
前記(E)成分の含有量は、繊維製品用の液体洗浄剤組成物の総質量に対して40質量%以上であり、
[(A)成分の含有量]/[(B)成分の含有量]で表され、前記(B)成分の含有量に対する前記(A)成分の含有量の質量比は、0.5以下であり、
pHが9~12である、繊維製品用の液体洗浄剤組成物。
<2>
[(C)成分の含有量]/[(D)成分の含有量]で表され、前記(D)成分の含有量に対する前記(C)成分の含有量の質量比は、10以下である、<1>に記載の繊維製品用の液体洗浄剤組成物。
<3>
総界面活性剤量が、15~45質量%である、<1>又は<2>に記載の繊維製品用の液体洗浄剤組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の繊維製品用の液炭洗浄剤組成物によれば、除菌効果に優れ、かつ液体安定性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(繊維製品用の液体洗浄剤組成物)
本発明の繊維製品用の液体洗浄剤組成物(以下、単に「液体洗浄剤組成物」ということがある)は、(A)~(E)成分を含有する組成物である。
【0009】
<(A)成分>
(A)成分は、アルコールエトキシレートである。液体洗浄剤組成物は、(A)成分を含むことで、低温(例えば5℃以下)での液体安定性を高め、皮脂に対する洗浄力を高められる。
【0010】
(A)成分としては、例えば、下記(a1)式で表されるアルコールエトキシレートが挙げられる。
【0011】
-O-(EO)-H ・・・(a1)
【0012】
[(a1)式中、Rは炭素数8~18の炭化水素基であり、EOはオキシエチレン基であり、nはオキシエチレン基の平均繰返し数を表す0~30の数である。]
【0013】
の炭化水素基は、直鎖でもよく、分岐鎖でもよく、環状の構造を含んでいてもよい。Rの炭化水素基は、脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、又は直鎖もしくは分岐鎖のアルケニル基がより好ましく、直鎖のアルキル基又は直鎖のアルケニル基がさらに好ましい。
【0014】
の炭素数は、8~18であり、10~16が好ましく、10~14がより好ましい。Rの炭素数が上記範囲内であると、洗浄力をより高められる。
【0015】
nは、オキシエチレン基の平均繰り返し数(即ち、エチレンオキシドの平均付加モル数)である。nは、0~30の数であり、3~20の数が好ましく、5~18の数がより好ましい。nが上記範囲内であると、液体安定性をより高められる。
なお、nは、オキシエチレン基の「平均」繰り返し数を表している。即ち、(A)成分は、オキシエチレン基の繰返し数が異なる分子の集合体である。また、Rの異なる分子の集合体であってもよい。
(A)成分は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
【0016】
(A)成分の含有量は、液体洗浄剤組成物の総質量に対して、3質量%以上であり、4質量%以上20質量%未満が好ましく、5質量%以上15質量%未満がより好ましい。(A)成分の含有量が上記下限値以上であると、(B)成分の析出を抑制して、低温での液体安定性を高められる。(A)成分の含有量が上記上限値以下であると、混合ミセル化を防止し、(B)成分による除菌効果をより高められる。
【0017】
<(B)成分>
(B)成分は、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩から選ばれる1種以上である。液体洗浄剤組成物は、(B)成分を含むことで、除菌効果を発揮する。
【0018】
(B)成分のアルキル鎖の炭素数は、8~18が好ましく、8~16がより好ましく、10~14がさらに好ましい。炭素数が上記範囲内であると、除菌効果をより高められる。
【0019】
(B)成分の塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アルカノールアミン塩等が挙げられる。
アルカリ金属塩としては、カリウム塩、ナトリウム塩等が挙げられる。
アルカリ土類金属塩としては、カルシウム塩、マグネシウム塩等が挙げられる。
アルカノールアミン塩としては、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等が挙げられる。
中でも、(B)成分としては、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(LAS-H)、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LAS-Na)、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸カリウム(LAS-K)が好ましい。
(B)成分は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
【0020】
(B)成分の含有量は、液体洗浄剤組成物の総質量に対して、10質量%以上であり、12~40質量%が好ましく、15~30質量%がより好ましい。(B)成分の含有量が上記下限値以上であると、洗浄液中での(B)成分の濃度が高まり、除菌効果をより高められる。(B)成分の含有量が上記上限値以下であると、低温における液体安定性がより高まる。
【0021】
(B)成分の含有量に対する(A)成分の含有量の質量比であり、[(A)成分の含有量]/[(B)成分の含有量]で表される質量比(A/B比)は、0.5以下であり、0.1~0.4がより好ましく、0.2~0.4がさらに好ましい。A/B比が上記下限値以上であると、(B)成分の析出を抑制し、低温での液体安定性をより高められる。A/B比が上記上限値以下であると、混合ミセル化を防止して、(B)成分による除菌性能を高められる。
【0022】
(A)成分と(B)成分との合計量(AB量)は、液体洗浄剤組成物の総質量に対して、15~40質量%が好ましく、18~35質量%がより好ましく、20~30質量%がさらに好ましい。AB量が上記下限値以上であると、洗浄力をより高められる。AB量が上記上限値以下であると、液体安定性をより高められる。
【0023】
<(C)成分>
(C)成分は、アミノカルボン酸系キレート剤である。液体洗浄剤組成物は、(C)成分を含有することで、高温(例えば、40℃以上)での液体安定性を高められる。
【0024】
(C)成分としては、メチルグリシンジ酢酸(MGDA)、メチルグリシンジ酢酸塩、L-グルタミン酸ジ酢酸(GLDA)、L-グルタミン酸ジ酢酸塩、ジエチレントリアミン5酢酸(DTPA)、ジエチレントリアミン5酢酸塩、エチレンジアミンコハク酸(EDDS)、エチレンジアミンコハク酸塩、3-ヒドロキシ-2,2’-イミノジコハク酸(HIDS)、3-ヒドロキシ-2,2’-イミノジコハク酸塩、L-アスパラギン酸-N,N-2酢酸(ASDA)、L-アスパラギン酸-N,N-2酢酸塩等が挙げられる。
アミノカルボン酸塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、モノエタノールアミン塩等が挙げられる。
これらの(C)成分の中でもMGDA又はその塩が好ましい。
(C)成分は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
【0025】
(C)成分の含有量は、液体洗浄剤組成物の総質量に対して、0.1質量%以上3質量%未満が好ましく、0.3質量%以上2質量%未満がより好ましい。(C)成分の含有量が上記下限値以上であると、(D)成分の析出を抑制して、高温での液体安定性をより高められる。(C)成分の含有量が上記上限値以下であると、低温での液体安定性をより高められる。これは、(C)成分が(B)成分との複合体を形成するためと考えられる。
【0026】
<(D)成分>
(D)成分は、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムから選ばれる1種以上である。液体洗浄剤組成物は、(D)成分を含有することで、除菌効果を高められる。
【0027】
(D)成分の含有量は、液体洗浄剤組成物の総質量に対して、0.1~10質量%であり、0.5~5質量%が好ましく、1~5質量%がより好ましい。(D)成分の含有量が上記下限値以上であると、洗浄液のpH緩衝能が高まり、除菌効果を高められる。(D)成分の含有量が上記上限値以下であると、(D)成分の析出を抑制して、高温での液体安定性を高められる。
【0028】
(D)成分の含有量に対する(C)成分の含有量の質量比であり、[(C)成分の含有量]/[(D)成分の含有量]で表される質量比(C/D比)は、10以下が好ましく、5以下がより好ましく、3以下がさらに好ましい。C/D比が上記上限値以下であると、(D)成分の析出を抑制して、高温での液体安定性をより高められる。C/D比の下限値は特に限定されないが、実質的に0.01である。
【0029】
<(E)成分>
(E)成分は、水である。(E)成分は、例えば、溶媒として機能する。
(E)成分としては、例えば、イオン交換水、純水、水道水、井水等のいずれでもよい。
【0030】
(E)成分の含有量は、液体洗浄剤組成物の総質量に対して、40質量%以上であり、50質量%以上がより好ましく、60~80質量%がさらに好ましい。(E)成分の含有量が上記下限値以上であると、液体洗浄剤組成物の流動性を高められる。(E)成分の含有量が上記上限値以下であると、(A)~(D)成分の含有量を高められる。
【0031】
<任意成分>
液体洗浄剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上述の(A)~(E)成分以外の他の成分(任意成分)を含んでもよい。
任意成分としては、高級脂肪酸及びその塩、(A)成分、(B)成分及び(E)成分以外の界面活性剤(任意界面活性剤)、水混和性溶媒、pH調整剤、水、抗菌剤、酵素、金属イオン捕捉剤、防腐剤、風合い向上剤、移染防止剤、再汚染防止剤、パール剤、ソイルリリース剤、ハイドロトロープ剤、着色剤、乳濁剤、蛍光剤、エキス等が挙げられる。
任意成分は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
【0032】
≪高級脂肪酸及びその塩≫
液体洗浄剤組成物は、高級脂肪酸(炭素数8~22の脂肪酸)及びその塩(即ち、石鹸)から選ばれる1種以上(以下、「高級脂肪酸(塩)」ということがある)を含んでもよい。液体洗浄剤組成物は、高級脂肪酸(塩)を含むことで、洗浄液の泡を速やかに消失する。
高級脂肪酸(塩)は、飽和脂肪酸でもよく、不飽和脂肪酸でもよく、これらの混合物でもよい。
高級脂肪酸(塩)の炭素数は、10~20が好ましく、12~18がより好ましい。
高級脂肪酸(塩)としては、ステアリン酸、リノール酸、オレイン酸、ヤシ脂肪酸等の単一脂肪酸又はその塩;ヤシ脂肪酸、牛脂脂肪酸等の混合脂肪酸又はその塩等が挙げられる。これらの高級脂肪酸(塩)は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0033】
高級脂肪酸(塩)の含有量は、液体洗浄剤組成物の総質量に対して、0.5~8質量%が好ましく、1~5質量%がより好ましい。高級脂肪酸(塩)の含有量が上記下限値以上であると消泡性をより高められる。高級脂肪酸(塩)の含有量が上記上限値以下であると、液体洗浄剤組成物の香気の劣化を良好に抑制できる。
【0034】
≪任意界面活性剤≫
任意界面活性剤としては、非石鹸系アニオン界面活性剤(但し、(A)成分を除く)、ノニオン界面活性剤(但し、(B)成分及び(C)成分を除く)、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、半極性界面活性剤等が挙げられる。
【0035】
非石鹸系アニオン界面活性剤は、石鹸(高級脂肪酸塩)を除くアニオン界面活性剤である。非石鹸系アニオン界面活性剤としては、α-オレフィンスルホン酸(炭素数8~24)又はその塩(AOS)、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル硫酸エステル(アルキル基の炭素数8~20)又はその塩(AS)、ポリオキシアルキレンアルキル(アルケニル)エーテル硫酸エステル(アルキル基又はアルケニル基の炭素数8~20)又はその塩(AES)、アルキル基を有するアルカンスルホン酸又はその塩、α-スルホ脂肪酸エステル又はその塩、内部オレフィンスルホン酸又はその塩(IOS)、ヒドロキシアルカンスルホン酸又はその塩(HAS)、アルキルエーテルカルボン酸又はその塩、ポリオキシアルキレンエーテルカルボン酸又はその塩、アルキルアミドエーテルカルボン酸又はその塩、アルケニルアミドエーテルカルボン酸又はその塩、アシルアミノカルボン酸又はその塩等のカルボン酸型アニオン界面活性剤;アルキルリン酸エステル又はその塩、ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル又はその塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルリン酸エステル又はその塩、グリセリン脂肪酸エステルモノリン酸エステル又はその塩等のリン酸エステル型アニオン界面活性剤等が挙げられる。
非石鹸系アニオン界面活性剤の塩の形態としては、例えばアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩等)、アルカノールアミン塩(モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩等)等が挙げられる。
【0036】
ノニオン界面活性剤としては、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルポリグリコシド等が挙げられる。
カチオン界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩等が挙げられる。第4級アンモニウム塩の形態としては、例えばアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩等)、アルカノールアミン塩(モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩等)等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばアルキルベタイン型、アルキルアミドベタイン型、イミダゾリン型、アルキルアミノスルホン型、アルキルアミノカルボン酸型、アルキルアミドカルボン酸型、アミドアミノ酸型、リン酸型両性界面活性剤等が挙げられる。
半極性界面活性剤としては、例えばアルキルアミンオキシド、アルキルアミドプロピルジメチルアミンオキシド等が挙げられる。
これらの任意界面活性剤は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
【0037】
総界面活性剤量((A)成分、(B)成分及び任意界面活性剤の合計量(但し、(C)成分の含有量は含まない))は、液体洗浄剤組成物の総質量に対して、15~45質量%が好ましく、18~40質量%がより好ましく、20~35質量%がさらに好ましい。界面活性剤量が上記下限値以上であると、洗浄力をより高められる。総界面活性剤量が上記上限値以下であると、消泡性をより高められる。
【0038】
≪水混和性有機溶剤≫
水混和性有機溶剤は、25℃の水1Lに25g以上溶解する有機溶剤である。
水混和性有機溶剤としては、例えばエタノール、グリセリン、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(ソルフィット、商品名)等のアルコール類;プロピレングリコール(PG)、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール類;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、分子量約200~1,000のポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のポリグリコール類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のアルキルエーテル類等が挙げられる。
水混和性有機溶剤の含有量は、液体洗浄剤組成物の総質量に対して、0.1~20質量%が好ましく、0.5~15質量%がより好ましく、1~10質量%がさらに好ましい。
【0039】
≪pH調整剤≫
pH調整剤(但し、(D)成分を除く)としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、パラトルエンスルホン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アンモニア等が挙げられる。
【0040】
なお、(A)~(E)成分及び任意成分の合計量は、100質量%を超えない。
【0041】
<物性>
液体洗浄剤組成物のpHは、25℃で9~12であり、9.5~11.5が好ましく、10~11がより好ましい。pHが上記下限値以上であると、除菌効果を高められる。pHが上記上限値以下であると、取り扱いが容易である。
pHは、30℃でpHメーター(製品名:HM-30G、東亜ディーケーケー社製)により測定される値である。
【0042】
液体洗浄剤組成物のB型粘度計で測定した25℃における粘度は、10~1,000mPa・sが好ましく、10~500mPa・sがより好ましい。粘度が上記範囲内であると、取り扱いが良好となる。
粘度は、ブルックフィールド型粘度計(B型粘度計)にて、ローターの回転数を60rpmに設定し、60秒後の測定値である。
【0043】
(製造方法)
本発明の液体洗浄剤組成物は、従来公知の液体洗浄剤組成物の製造方法に準じて製造することができる。例えば、水の一部に、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、及び必要に応じて任意成分を(E)成分の一部に加えて溶解させ、必要に応じてpH調整剤でpHを調整し、残りの(E)成分を加えることで、液体洗浄剤組成物を製造できる。
【0044】
(使用方法)
液体洗浄剤組成物の使用方法(即ち、繊維製品の洗濯方法)としては、例えば液体洗浄剤組成物を洗濯機の液体洗浄剤組成物の投入口に入れてから洗濯機を稼働させる方法、液体洗浄剤組成物を洗濯時に被洗物と一緒に水に投入する方法、液体洗浄剤組成物を予め水に溶解して調製される洗浄液に被洗物を浸漬する方法、液体洗浄剤組成物を被洗物に直接塗布して、例えば3分~24時間放置し、その後、通常の洗濯を行う方法等が挙げられる。
【0045】
また、近年実用化された洗剤自動投入装置を備えた洗濯機を使用することも好ましい。
洗剤自動投入装置は、液体洗浄剤組成物を収容したタンクから、タンクの底に設けられたゴミ取り用のフィルター、及び投入用配管を経由して、自動的に洗濯槽に液体洗浄剤組成物を投入する装置である。投入用配管の途中には、シリンジポンプ等の計量手段が設けられており、洗濯物の量等に応じて設定された一定量を、タンクから洗濯槽へと移送できるようになっている。
洗剤自動投入装置を利用すれば、計量の手間が省けるだけでなく、計量時に液体洗浄剤組成物が手に付着したり、こぼれて洗濯機や周囲を汚してしまったりすることを回避できる。
【0046】
また、自動で所定の量の液体を吐出できる自動ディスペンサーを使用することも好ましい。自動ディスペンサーを使用する場合も、少量の液体洗浄剤組成物でも正確に計量することができるため、充分な洗浄力を発揮しやすく、使いすぎによる無駄も回避できるので好ましい。
自動ディスペンサーの中には、赤外線センサ等を利用して、スイッチ等に触れなくとも自動的に吐出するものも市販されている。このような自動ディスペンサーを使用すれば、片手に保持した容器を差し出すだけで液体洗浄剤組成物を計量することができ、使用者の負担軽減効果が大きい。
【0047】
自動ディスペンサーを使用する場合、軟質容器に吐出された液体洗浄剤組成物を受け、その軟質容器をそのまま洗濯機に投入することも好ましい。これにより、吐出された液体洗浄剤組成物の全量を、確実に洗浄液中に溶解させることができる。
そのまま洗濯機に投入可能な軟質容器の材質としては、例えば、シリコ-ン樹脂、ポリ塩化ビニル、エラストマー、軟質ポリエステル、軟質ポリプロピレン、ポリウレタン等が挙げられる。
【0048】
被洗物の例としては、例えば衣類(衣料)、布巾、タオル類、シーツ、カーテン等の繊維製品等が挙げられる。繊維製品の素材は特に限定されず、綿、絹、羊毛等の天然繊維、ポリエステル、ポリアミド等の化学繊維等のいずれでもよい。
【0049】
洗浄液のpHは、8~11が好ましい。洗浄液のpHが上記下限値以上であると、除菌効果がより高まる。洗浄液のpHが上記上限値以下であると、取り扱いがより容易である。
液体洗浄剤組成物を水に溶解して洗浄液とする場合、例えば5~6,000倍(体積基準)に希釈することが好ましい。
被洗物あたりの水量である浴比(洗濯時の洗浄液の質量/被洗物の質量)は、ドラム型洗濯機であれば5以上、縦型洗濯機であれば10以上が好ましい。
【0050】
液体洗浄剤組成物は、繊維製品用の洗浄剤として好適であり、衣料用の洗浄剤としてより好適である。
【実施例0051】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
【0052】
(使用原料)
<(A)成分>
・AE-EO15:ポリオキシエチレンアルキルエーテル、商品名「LMAO-90」、(a1)中、Rが炭素数12の直鎖アルキル基であり、nが15である化合物、ライオン株式会社製。
・AE-EO7:ポリオキシエチレンアルキルエーテル(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製、商品名「レオックスCL-70」、(a1)式中、Rが炭素数12の直鎖アルキル基(C12)及び炭素数14の直鎖アルキル基(C14)であり(質量比でC12:C14=75:25)であり、nが7である化合物。
【0053】
<(B)成分>
・LAS:炭素数10~14のアルキル基を有する直鎖アルキルベンゼンスルホン酸、商品名「ライポンLH-200」、ライオン株式会社製。
【0054】
<(C)成分>
・MGDA:メチルグリシンジ酢酸三ナトリウム塩、商品名「Trilon M Max Flussig」、BASF社製。
・GLDA:L-グルタミン酸ジ酢酸四ナトリウム塩、商品名「DISSOLVAIN GL-47-S」、ヌーリオンジャパン製。
・HIDS:3-ヒドロキシ-2,2’-イミノジコハク酸四ナトリウム塩、商品名「生分解性キレート剤(HIDS(R))」、株式会社日本触媒製。
【0055】
<(C’)成分>
・クエン酸:商品名「無水クエン酸」、扶桑化学工業社製。
【0056】
<(D)成分>
・炭酸Na:炭酸ナトリウム、商品名「ソーダ灰デンス」、株式会社トクヤマ製。
・炭酸K:炭酸カリウム、商品名「液体炭酸カリ」、旭硝子社製。
【0057】
<(E)成分>
・水:イオン交換水。
【0058】
<任意成分>
・(E)成分:ヤシ油脂肪酸、日油株式会社製。
・NaOH:pH調整剤、商品名「水酸化ナトリウム」、鶴見曹達株式会社製。
・硫酸:pH調整剤、商品名「硫酸」、和光純薬株式会社製。
・PEG:ポリエチレングリコール、商品名「PEG#1000-60L」、ライオン株式会社製。
【0059】
(評価方法)
<除菌効果>
実際の洗濯を想定し、綿布に付着した大腸菌に対する除菌効果を、Journal of the Association of Official Analytical Chemists 52;836-842に記載されているA .N.Petrocci等の方法に準拠して実施した。以下に除菌効果の評価方法の手順を示す。
【0060】
≪綿布の前処理≫
除菌試験に供する綿布として金巾3号(JIS L0803準拠)を用い、試験前に以下に示す方法で前処理を行った。ポリソルベート80及び炭酸ナトリウムを各5g水に溶解し、希釈して1000mLとしたものを湿潤剤とし、この湿潤剤2.5g及び炭酸ナトリウム2.5gを水に溶解して5Lの洗浄液を調製した。そこに綿布を入れ約1時間煮沸した後、蒸留水に換えて約5分間煮沸した。さらに、5Lの冷蒸留水で約5分間攪拌し、風乾した(前処理)。
【0061】
≪試験布の裁断≫
前処理を施した綿布を裁断し、2.5cm×3.75cmの綿布と5.3cm×275cmの綿布とを作成した。5.3cm×275cmの綿布はJournal of the Association of Official Analytical Chemists 52;837に記載のステンレス製スピンドルに巻きつけて、試験液と綿布との量比を実洗濯に近づけるための負荷布とした。2.5cm×3.75cmの綿布は、以下に示す方法で菌液を添加して試験布とした。なお、これ以降の操作は、すべて121℃、10分間の滅菌処理を行った布、水、器具等を用いて実施した。
【0062】
≪菌液の添加≫
試験布を乾熱滅菌機にて110℃、1時間保持して乾燥した後、生理食塩水10μLを試験布上に添加した。続けて、生菌数が5.0×10~5.0×10cfu/mLとなるように調製した菌液1.9mLと、馬血清(invitrogen社製)0.1mLとの混合液を調製し、この混合液の20μLを試験布上に添加した。この試験布3枚を、ろ紙を敷いたシャーレに入れ、35℃恒温槽内の炭酸水素二ナトリウム飽和溶液入りデシケーター内で40分間保持した後、菌液を添加した試験布3枚を、スピンドルに巻きつけた負荷布の間に挿入した。
【0063】
≪除菌剤組成物水溶液(処理液)の調製≫
ガラス容器中に250gの水を加え、各例の液体洗浄剤組成物を833体積ppmとなるように添加し、処理液を調製した。
【0064】
≪除菌試験≫
調製した処理液を入れたガラス容器中に、試験布を挿入した負荷布を浸漬し、ガラス容器に蓋をして回転装置(マツシタ工業製)に装着して60回転/分の速度で10分間回転させた。回転終了後、ピンセットで試験布3枚を取り出し、SCDLP培地(日本製薬製Soybean-Casein Digest Broth with Lectin&Polysorbate 80)30mLを入れた50mL遠沈管内に浸漬させ、ボルテックスで3分間洗い出した。その抽出液を1.0mL採取し、9.0mLの生理食塩水に加え、10倍希釈液とした。同様の方法を繰り返して、各希釈液を得た。各希釈液から100μL採取し、標準寒天培地(株式会社アテクト製)に加え、コンラージ棒により均一に塗付したものを37℃恒温槽で1~2日培養した後、コロニー数をカウントすることにより生菌数を求めた。
【0065】
≪除菌効果評価≫
処理液の代わりに、対照試料としてポリソルベート80の500体積ppm水溶液を用いた以外は前記除菌試験と同様にして生菌数を求めた。それらの結果から、除菌効果を示す指標として、各処理液を用いた場合の生菌数と、対照試料を用いた場合の生菌数との対数差を算出した。この対数差が大きいほど、除菌効果が高かったことを示す。
【0066】
≪評価基準≫
〇:対数差が2.0以上。
△:対数差が1.5以上2.0未満。
×:対数差が1.5未満。
【0067】
<液体安定性(低温安定性)>
ガラス瓶に液体洗浄剤を入れ、低温(-5℃)と高温(50℃)で保存し、外観を目視にて観察して以下の評価基準に従って保存安定性を評価した。
≪評価基準≫
◎:一か月後も透明。
〇:二週間までは透明。
×:二週間以内に濁りや沈殿、析出物を生じる。
【0068】
(実施例1~11、比較例1~8)
表1~2に示す組成に従い、(A)~(D)成分及び任意成分を(E)成分に加え、混合して各例の液体洗浄剤を調製した。
表中の配合量は純分換算値である。
表中に配合量が記載されていない成分は、配合されていない。
表中、pH調整剤の組成の「適量」は、液体洗浄剤組成物を表中のpHとするのに必要な量である。表中、水の組成の「バランス」は、液体洗浄剤組成物の全体を100質量%とするのに必要な量である。
各例の液体洗浄剤組成物について、除菌効果及び液体安定性を評価し、その結果を表中に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
表1~2に示すように、本発明を適用した実施例1~11は、除菌効果、低温での液体安定性及び高温での液体安定性が「〇」又は「◎」であった。
(A)成分を欠く比較例1は低温での液体安定性が「×」であった。
A/B比が0.75である比較例2は、除菌効果が「×」であった。
(C)成分を欠く比較例3、(C’)成分を含む比較例4、(D)成分の含有量が12質量%である比較例6は、高温での液体安定性が「×」であった。
(D)成分を欠く比較例5、pHが7である比較例7は、除菌効果が「×」であった。
(C)成分を欠き、(B)成分の含有量が36質量%である比較例8は、低温及び高温での液体安定性が「×」であった。
以上の結果から、本発明を適用することで、被洗浄物の柔軟性を損なわずに、除菌効果に優れ、かつ液体安定性を良好にできることが確認された。