(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154491
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/00 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
B60H1/00 102J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068308
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】505113632
【氏名又は名称】ヴァレオ システム テルミク
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】上野 生太
(72)【発明者】
【氏名】金森 亮介
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA02
3L211BA03
3L211BA26
3L211DA12
3L211EA28
(57)【要約】 (修正有)
【課題】アスピレータの外表面の結露を抑制できる車両用空調装置を提供すること。
【解決手段】車両用空調装置(10)のケース(20)の空気流出孔(29)には、空気流出孔(29)から流出する空気により空気流れを発生させるアスピレータ(13)が取り付けられている。空気流出孔(29)が貫通している方向に沿って見て、ドア(30,30A)の位置は、空気流出孔(29)からの空気の流出を許容する空気流出許容位置と、空気流出孔(29)からの空気の流出を抑制する空気流出抑制位置と、を含み、ドア(30)が空気流出抑制位置にあるとき、ベント吹出口(22)の開口割合が最も大きい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともデフロスタ吹出口(21)、ベント吹出口(22)、フット吹出口(23)を含む複数の吹出口(21~23)が形成されたケース(20)と、
前記ケース(20)の内部に回転可能に収納されているロータリ式のドア(30,30A)と、を備え、
前記ドア(30,30A)が回転してその位置が変化することにより、前記複数の吹出口(21~23)の開口割合は変化可能であり、
前記ケース(20)は、前記複数の吹出口(21~23)とは別に前記ケース(20)の内部の空気を前記ケース(20)の外部へ流出可能な空気流出孔(29)を有し、
前記空気流出孔(29)には、前記空気流出孔(29)から流出する空気により空気流れを発生させるアスピレータ(13)が取り付けられ、
前記空気流出孔(29)が貫通している方向に沿って見て、前記ドア(30,30A)の位置は、
前記空気流出孔(29)からの空気の流出を許容する空気流出許容位置と、
前記空気流出孔(29)からの空気の流出を抑制する空気流出抑制位置と、を含み、
前記ドア(30,30A)が前記空気流出抑制位置にあるとき、前記ベント吹出口(22)の開口割合が最も大きいベントモードにある、車両用空調装置(10,10A)。
【請求項2】
前記ドア(30,30A)は、回転軸(31)と、前記回転軸(31)から径方向外側へ広がる第1ドア側壁部(40,50)と、前記回転軸(31)の径方向外側に離れた位置に設けられた断面が円弧状のドア周壁部(34)と、を有し、
前記ケース(20)は、前記ドア(30,30A)の前記回転軸(31,32)を回転可能に支持すると共に前記空気流出孔(29)が形成された第1支持部(25)を有し、
前記第1支持部(25)は、前記第1ドア側壁部(40,50)に対向し、
前記第1ドア側壁部(40,50)は、前記回転軸(31)と前記ドア周壁部(34)とを接続しているドア接続部と、前記ドア接続部の内側と外側とを連通可能なドア連通部と、を有し、
前記空気流出孔(29)が貫通している方向に沿って見て、前記空気流出孔(29)と前記ドア連通部との重なる面積は、
前記吹出ドア(30,30A)が前記空気流出許容位置にあるときよりも、前記ドア(30,30A)が前記空気流出抑制位置にあるときのほうが小さい、請求項1に記載の車両用空調装置(10,10A)。
【請求項3】
前記ドア連通部は、前記ドア接続部のうち前記回転軸(31)から所定の径方向に離れた位置に形成された円弧状の吹出口(42)である、請求項2に記載の車両用空調装置(10)。
【請求項4】
前記ドア接続部は、前記ドア(30)が空気流出抑制位置にあるとき、前記アスピレータ(13)の上流側の端部14aよりも前記回転軸(31)側に位置する抑制補助リブ(43)を有する、請求項3に記載の車両用空調装置(10)。
【請求項5】
前記第1ドア側壁部(50)は、前記回転軸(31)と前記ドア周壁部(34)とを接続する棒状の複数のスポーク部(61,62,63,64,65)、を有し、
前記複数のスポーク部(61,62,63,64,65)は、互いに前記ドア(30A)の回転方向に離間し、
前記ドア接続部は、前記複数のスポーク部(61,62,63,64,65)、及び、前記複数のスポーク部(61,62,63,64,65)の少なくとも1つについて前記回転軸(31)と前記ドア周壁部(34)との間に設けられた吹出抑制リブ(600)であり、
前記ドア連通部は、前記複数のスポーク部(61,62,63,64,65)同士の間の空間(51,52,53,54)である、請求項2に記載の車両用空調装置(10A)。
【請求項6】
前記第1ドア側壁部(50)は、前記ドア(30A)が空気流出抑制位置にあるとき、前記アスピレータ(13)の上流側の端部(14a)よりも前記回転軸(31)側に位置する第1抑制補助リブ(601)と、前記アスピレータ(13)の上流側の端部(14a)よりも前記回転軸(31)から離間する側に位置する第2抑制補助リブ(602)を有する、請求項5に記載の車両用空調装置(10A)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスピレータを備えた車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用自動車等の車両の多くは、外気や内気を車室に取り込んで温度を調和するための、車両用空調装置を備えている。車両用空調装置に関する従来技術が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された車両用空調装置は、調和空気を吹き出し可能な複数の吹出口が形成されたケースと、ケースの内部に回転可能に収納されているロータリ式のドアと、を備え、ドアは吹出モードの切り替えが可能とされている。
【0004】
ドアの回転軸は中空であり、回転軸の先端はケースの外部に位置している。回転軸を介してケースの内部の空気をケースの外部へ流出可能である。ここで、ケースの内部の空気とは、冷却用熱交換器で冷却された冷風と加熱用熱交換器で加熱された温風とが混合する混合領域を流れる空気である。回転軸の先端には、回転軸から流出する空気により空気流れを発生させるアスピレータが取り付けられている。アスピレータにより車室内の空気を取り込み、取り込まれた空気の温度を温度センサにより測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ケース内部の混合領域を流れる空気は、ドアの位置に関わらず、回転軸とアスピレータとを通じて常に流出する。このため、混合領域に冷風のみを流入させるフルクールモードのとき、アスピレータには冷風が流れ、アスピレータの温度が低下する。
【0007】
アスピレータの外表面は、車室内の空気と接触している。フルクールモードのときは、概して車室内が高温多湿である。このため、アスピレータの温度が低下すると外表面に結露水が発生し、条件によってはアスピレータの下方に滴下するおそれがあった。
【0008】
本発明は、アスピレータにより車室内の温度を測定可能としつつ、アスピレータの外表面が結露することを抑制できる車両用空調装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下の説明では、本発明の理解を容易にするために添付図面中の参照符号を括弧書きで付記するが、それによって本発明は図示の形態に限定されるものではない。
【0010】
本発明によれば、少なくともデフロスタ吹出口(21)、ベント吹出口(22)、フット吹出口(23)を含む複数の吹出口(21~23)が形成されたケース(20)と、
前記ケース(20)の内部に回転可能に収納されているロータリ式のドア(30,30A)と、を備え、
前記ドア(30,30A)が回転してその位置が変化することにより、前記複数の吹出口(21~23)の開口割合は変化可能であり、
前記ケース(20)は、前記複数の吹出口(21~23)とは別に前記ケース(20)の内部の空気を前記ケース(20)の外部へ流出可能な空気流出孔(29)を有し、
前記空気流出孔(29)には、前記空気流出孔(29)から流出する空気により空気流れを発生させるアスピレータ(13)が取り付けられ、
前記空気流出孔(29)が貫通している方向に沿って見て、前記ドア(30,30A)の位置は、
前記空気流出孔(29)からの空気の流出を許容する空気流出許容位置と、
前記空気流出孔(29)からの空気の流出を抑制する空気流出抑制位置と、を含み、
前記ドア(30,30A)が前記空気流出抑制位置にあるとき、前記ベント吹出口(22)の開口割合が最も大きいベントモードにある、車両用空調装置(10,10A)が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、アスピレータにより車室内の温度を測定可能としつつ、アスピレータの外表面が結露することを抑制できる車両用空調装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1Aは、実施例1による車両用空調装置の斜視図である。
図1Bは、アスピレータが取り付けられたケースの水平方向の断面図であり、ドアが空気流出抑制位置にあるときを示す。
【
図2】ドアと、ドアの回転軸を支持する第1支持部の斜視図である。
【
図3】
図3Aは、デフモード(空気流出許容位置)にあるドア及びケースの断面図である。
図3Bは、デフ・フットモード(空気流出許容位置)にあるドア及びケースの断面図である。
図3Cは、フットモード(空気流出許容位置)にあるドア及びケースの断面図である。
【
図4】
図4Aは、バイレベルモード(空気流出許容位置)にあるドア及びケースの断面図である。
図4Bは、ベントモード(空気流出抑制位置)にあるドア及びケースの断面図である。
【
図5】
図5Aは、実施例1の車両用空調装置に関し、アスピレータが取り付けられたケースの上下方向の断面図であり、ドアが空気流出抑制位置にあるときを示す。
図5Bは、実施例1の変形例による車両用空調装置に関し、アスピレータが取り付けられたケースの上下方向の断面図であり、ドアが空気流出抑制位置にあるときを示す。
【
図6】
図6Aは、実施例2による車両用空調装置における、ドアと、ドアの回転軸を支持する第1支持部の斜視図である。
図6Bは、
図6Aの6B矢視図である。
【
図7】
図7Aは、デフモード(空気流出許容位置)にあるドア及びケースの断面図である。
図7Bは、デフ・フットモード(空気流出許容位置)にあるドア及びケースの断面図である。
図7Cは、フットモード(空気流出許容位置)にあるドア及びケースの断面図である。
【
図8】
図8Aは、ベント・フットモード(空気流出許容位置)にあるドア及びケースの断面図である。
図8Bは、ベントモード(空気流出抑制位置)にあるドア及びケースの断面図である
【
図9】
図9Aは、実施例2の車両用空調装置に関し、アスピレータが取り付けられたケースの上下方向の断面図であり、ドアが空気流出抑制位置にあるときを示す。
図9Bは、実施例2の変形例による車両用空調装置に関し、アスピレータが取り付けられたケースの上下方向の断面図であり、ドアが空気流出抑制位置にあるときを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施例>
添付図に基づいて実施例を説明する。また、図中Frは前、Rrは後、Leは左、Riは右、Upは上、Dnは下を示している。なお、これらの方向は、以下に説明する車両用空調装置の説明のために便宜的に使用するものであり、車両用空調装置が車両に搭載された際の向きを限定するものでない。
【0014】
<実施例1>
図1Aを参照する。車両用空調装置10は、例えば乗用車に搭載され、外気や内気を車室に取り込んで温度の調節を行う。車両用空調装置10は、吸い込んだ空気を送風する送風装置11と、送風装置11から送風された空気の温度調節を行い車室内に調和空気を吹き出す温調装置12と、を備えている。
【0015】
送風装置11は、電動モータ(図示なし)と、電動モータにより駆動されるインペラ(図示なし)と、を内部に備えている。インペラが回転すると、車室内、及び/又は、車室外の空気が、送風装置11内に吸い込まれる。
【0016】
温調装置12は、送風装置11から送られた空気が内部を流れる樹脂製のケース20を備えている。ケース20には、調和空気を吹き出し可能な吹出口21~23が形成されている。
【0017】
(吹出口)
吹出口21~23は、フロントガラスに向かって調和空気を送風しフロントガラス曇りを除去するデフロスタ吹出口21と、前席の乗員の上半身に向かって調和空気を送風するベント吹出口22,22と、前席の乗員の脚部に向かって調和空気を送風するフット吹出口23,23と、を含んでいる。なお、これらの吹出口に加えて、車室へ向かって調和空気を吹き出す別の吹出口をケース20に設けても良い。
【0018】
(空気流出孔、アスピレータ)
図1A及び
図1Bを参照する。ケース20は、吹出口とは別にケース20の内部の空気をケース20の外部へ流出可能な空気流出孔29を有している。空気流出孔29には、アスピレータ13が取り付けられている。
【0019】
アスピレータ13は、上流側の端部14aが空気流出孔29に差し込まれている第1筒部材14を備えている。第1筒部材14は、略L字状であり、下流側の端部14bは、前方を向いている。第1筒部材14には、第1筒部材14の内部と外部とを連通させるように第2筒部材15が一体的に形成されている。あるいは、図示しないが第1筒部材14に貫通孔が形成され、この貫通孔に対して第2筒部材15が差し込まれていてもよい。
【0020】
空気流出孔29から流出し上流側の端部14aに流れ込んだ空気(矢印(1)参照)は、下流側の端部14bから吹き出される(矢印(2)参照)。この空気の流れにより、第2筒部材15の内部には、第1筒部材14の外部から内部へ向かって空気流れが発生する(矢印(3)参照)。第2筒部材15にホースを取り付け、車室内の空気を取り込み、取り込まれた空気の温度を温度センサ(図示なし)により測定することができる。
【0021】
(ドア)
図2を参照する。ケース20は、その内部に樹脂製のロータリ式のドア30を回転可能に収納している。
図3A~
図4Bに示すように、ドア30が回転することにより、ドア30の位置が変化し、複数の吹出口21~23の開口割合が変化する。このため、ドア30は、吹出モードドアと呼ばれることがある。回転軸31,32を中心としたドア30の回転方向を基準として、デフロスタ吹出口21からフット吹出口23へ向かう方向を第1方向(以下、時計回りαとする)とし、フット吹出口23からデフロスタ吹出口21へ向かう方向を第2方向(以下、反時計回りβとする)とする。
【0022】
(回転軸、ドア側壁部、ドア周壁部)
図2を参照する。ドア30は、軸線AXが左右方向に延びている2つの回転軸31,32と、各々の回転軸31,32から径方向外側に広がる2つのドア側壁部40,33と、各々の回転軸31,32から径方向外側に離れた位置に設けられ断面が円弧状で2つのドア側壁部40,33を接続するドア周壁部34と、を有して構成され、ドア周壁部34は吹出口21~23(
図1参照)を開閉可能となっている。
【0023】
ドア周壁部34は、ドア30の内部と外部とを連通可能な開口部37を有している。開口部37は、左右方向を長手方向とし、左右方向全体に亘り略矩形状に形成されている。ドア周壁部34は、開口部37よりも反時計回りβ側に位置する前周壁部34fと、開口部37よりも時計回りα側に位置する後周壁部34rと、を有する。
【0024】
(ケース、第1支持部)
図1A及び
図2を参照する。ケース20は、左側の回転軸31を支持している支持孔24及び空気流出孔29が形成された第1支持部25を有している。第1支持部25は、厚みが一定の板状の部位である。
【0025】
ケース20は、支持孔24を境界として上下に分割されており、下ケース半体20aと、上ケース半体20bと、を備えている。下ケース半体20aは、支持孔24の内周面の下半分24aを有する下支持部26を備えている。上ケース半体20bは、支持孔24の内周面の上半分24bを有する上支持部27を備えている。空気流出孔29は、上支持部27に形成されている。上支持部27と、下支持部26とは、第1支持部25を構成する。なお、上支持部27と下支持部26とは一体化されていてもよい。
【0026】
ケース20は、右側の回転軸32を支持している第2支持部28を有している。第2支持部28の説明は省略する。
【0027】
(ドア側壁部、ドア接続部、ドア連通部)
2つのドア側壁部40,33のうち、第1支持部25と対向するものを第1ドア側壁部40とする。第1ドア側壁部40は、回転軸31と、この回転軸31とドア周壁部34とを接続している板状のドア接続部41と、ドア30の内部の調和空気がドア30の外部へ通過可能となるようにドア接続部41の内側と外側とを連通しているドア連通部42と、を有している。
【0028】
ドア連通部42は、例えば、ドア接続部41のうち回転軸31から所定の径方向外側に離れた位置に形成された円弧状の吹出口42である。
図2に示されるように、この実施例では、ドア連通部42(円弧上の吹出口)のうち第1方向の端部に吹出抑制部42nが設けられている。吹出抑制部42nは、吹出抑制部42nよりも第2方向に形成された吹出一般部42aに対し、回転軸31の径方向に沿う方向の寸法が小さく形成されている。
【0029】
(各種モード)
図3Aを参照する。車両用空調装置10は、デフロスタ吹出口21の開口割合が最も大きいデフモードにある。デフモードでは、前周壁部34fがベント吹出口22全体及びフット吹出口23全体を塞いでいる。デフロスタ吹出口21は全体が開いている。
【0030】
図3Bを参照する。車両用空調装置10は、デフロスタ吹出口21及びフット吹出口23が開いたデフ・フットモードにある。デフ・フットモードでは、前周壁部34fがデフロスタ吹出口21の一部及びベント吹出口22全体を塞ぎ、ドア30の開口部37がフット吹出口23の一部に重なっている。
【0031】
図3Cを参照する。車両用空調装置10は、フット吹出口23の開口割合が最も大きいフットモードにある。フットモードでは、前周壁部34fがデフロスタ吹出口21全体及びベント吹出口22全体を塞ぎ、開口部37がフット吹出口23に重なっている。
【0032】
図4Aを参照する。車両用空調装置10は、ベント吹出口22及びフット吹出口23が開いたベント・フットモードにある。ベント・フットモードは、バイレベルモードと呼ばれることもある。ベント・フットモードでは、前周壁部34fがデフロスタ吹出口21全体及びベント吹出口22の一部を塞ぎ、開口部37がベント吹出口22の一部及びフット吹出口23の一部に重なり、後周壁部34rがフット吹出口23の一部を塞いでいる。
【0033】
図4Bを参照する。車両用空調装置10は、ベント吹出口22の開口割合が最も大きいベントモードにある。ベントモードでは、前周壁部34fがデフロスタ吹出口21を塞ぎ、後周壁部34rがフット吹出口23を塞ぎ、開口部37がベント吹出口22に重なっている。ベントモードは、車室内の乗員の上半身に調和空気を供給する吹出モードであり、主として、車室内を冷房する際に選択される吹出モードである。よって、ベントモードのとき、ケース20の内部は冷却された空気のみが通過することが多い。あるいは、冷風と温風とが混合されて調和されたとしても、車室内よりも低温に調和された空気が通過することが多い。
【0034】
(空気流出許容位置)
図4Aを参照する。車両用空調装置10は、空気流出孔29からの空気の流出を許容する空気流出許容位置にある。空気流出孔29が貫通している方向(左右方向、軸線AXが延びている方向)に沿って見て(
図4Aに示す状態)、空気流出孔29の全体とドア連通部42(円弧状の吹出口)のうち吹出一般部42aとは重なっている。径方向におけるドア連通部42の吹出一般部42aの幅と、空気流出孔29の径は略等しい。
【0035】
なお、
図3A~
図3Cに示すドア30も空気流出孔29からの空気の流出を許容する空気流出許容位置にある。
図3A、および
図3Bを参照する。ドア30の回転方向を基準として、空気流出孔29はドア連通部42の中央よりも時計回り方向αに位置しているものの、ドア連通部42の吹出一般部42aと重複している。
図3Cを参照する。ドア30の回転方向を基準として、空気流出孔29はドア連通部42の回転位相の略中央に位置しており、ドア連通部42の吹出一般部42aと重複している。
【0036】
(空気流出抑制位置)
図4Bを参照する。ドア30は、空気流出孔29からの空気の流出を抑制する空気流出抑制位置にある。空気流出孔29が貫通している方向に沿って見て、空気流出孔29の一部とドア連通部42のうち吹出抑制部42nは重なっている。
【0037】
図5Aを参照する。ドア30は空気流出抑制位置にあるとき、吹出抑制部42nが、空気流出孔29と重なっている。従って、ケース20の内部の空気(ドア30の内部の空気)が空気流出孔29に流れることが抑制される。このとき、ケース20の内壁とドア30のドア接続部41のアスピレータ13側の外壁とには、隙間が存在する。このため、ケース20の内部の空気は、ドア30が空気流出抑制位置にあっても、空気流出孔29を介してアスピレータ13に流入する。しかしながら、ケース20の内壁とドア接続部41との隙間、あるいはアスピレータ13の上流側の端部14aとドア接続部41との隙間を十分に狭く設定することで、空気の流出を抑制することができる。アスピレータ13の上流側の端部14aとドア接続部41との隙間は、6ミリ以下とすることが好ましい。さらには、3ミリ以下とすることが好ましい。より確実に空気の流出を抑制することができる。
【0038】
<実施例1の変形例>
図5Aを参照する。ドア30は空気流出抑制位置にあるとき、吹出抑制部42nが、空気流出孔29と重なっている。従って、ケース20の内部の空気(ドア30の内部の空気)が空気流出孔29に流れることが抑制される。これに対し、
図5Bで示されるドア30は実施例1の変形例を示すもので、ドア接続部41のアスピレータ13側の外壁に、抑制補助リブ43が形成されている。抑制補助リブ43は、ドア30が空気流出抑制位置にあるとき、すなわちベント吹出モードのとき、アスピレータ13の上流側の端部14aよりも回転軸31側に位置するように、配置される。ベント吹出モードのとき、ケース20の内壁とドア接続部41のアスピレータ13側の外壁とに存在する隙間では、回転軸31側からベント吹出口22に向かって冷却された空気が流れるように圧力がかかっている。ここで、抑制補助リブ43をアスピレータ13の上流側の端部14aよりも回転軸31側に位置させることで、冷却された空気がアスピレータ13に流入することを効果的に抑制できる。
【0039】
空気流出孔29が貫通している方向に沿って見て、抑制補助リブ43の先端43aは、アスピレータ13の上流側の端部14aよりもケース20の内壁に近接していることが好ましい。アスピレータ13の上流側の端部14aと抑制補助リブ43の先端43aとによってラビリンス構造を形成することで、ケース20の内壁とドア接続部41のアスピレータ13側の外壁とに存在する隙間を流れる空気がアスピレータ13に流入することを、より確実に抑制することができる。
【0040】
<実施例2>
実施例1の車両用空調装置10と共通する構成については、実施例1と同一の符号を付すると共に説明は省略する。
図6Aを参照する。実施例2による車両用空調装置10Aのドア30Aは、各々の回転軸31,32から径方向外側に広がる2つのドア側壁部50,33を備える。
【0041】
2つのドア側壁部50,33のうち、第1支持部25と対向するものを第1ドア側壁部50とする。第1ドア側壁部50は、回転軸31とドア周壁部34とを接続しているドア接続部と、ドア接続部の内側と外側とを連通可能なドア連通部と、を有している。
【0042】
(スポーク部)
図6Bを参照する。第1ドア側壁部50は、回転軸31とドア周壁部34とを接続する棒状の複数のスポーク部61~65を有している。複数のスポーク部61~65は、ドア接続部である。複数のスポーク部61~65は、例えば5つであり、最も第2方向(反時計回りβ)に進んだ位置にある第1スポーク部61と、第1スポーク部61からドア30の第1方向(時計回りα)に離間している第2スポーク部62と、以降、同様に第1方向に離間している第3スポーク部63,第4スポーク部64,および第5スポーク部65と、を有している。
【0043】
第3スポーク部63と第4スポーク部64とは、回転軸31とドア周壁部34との間の所定の位置に、吹出抑制リブ600が形成されている。吹出抑制リブ600は、第3スポーク部63と第4スポーク部64とを連結するように、また、回転軸31からの距離が一定となるように、円弧状に形成されている。
【0044】
ドア30Aの回転方向を基準として、第3スポーク部63の先端63a(径方向外側の端部)は、開口部37の反時計回りβ側の縁37bと重なっている(回転方向についての位置が同一である)。ドア30Aの回転方向を基準として、第4スポーク部64部の先端64aは、開口部37の時計回りα側の縁37aと重なっている。
【0045】
(ドア連通部)
第1スポーク部61と第2スポーク部62との間の空間は、ドア接続部の内側と外側とを連通可能な第1ドア連通部51である。第2スポーク部62と第3スポーク部63との間の空間は、ドア接続部の内側と外側とを連通可能な第2ドア連通部52である。第3スポーク部63と第4スポーク部64との間の空間のうち、吹出抑制リブ600よりも回転軸31に近い空間は、ドア接続部の内側と外側とを連通可能な内側第3ドア連通部53aである。第3スポーク部63と第4スポーク部64との間の空間のうち、吹出抑制リブ600よりも回転軸31から遠い側の空間は、ドア接続部の内側と外側とを連通可能な外側第3ドア連通部53bである。内側第3ドア連通部53aと外側第3ドア連通部53bは、あわせて第3ドア連通部53を構成する。第4スポーク部64と第5スポーク部65との間の空間は、ドア接続部の内側と外側とを連通可能な第4ドア連通部54である。
【0046】
吹出抑制リブ600の、回転軸31からの距離は、空気流出孔29(
図8B参照)の位置に応じて設定される。詳細は、後述する。
【0047】
(各種モード)
図7Aを参照する。車両用空調装置10Aは、デフロスタ吹出口21の開口割合が最も大きいデフモードにある。
図7Bを参照する。車両用空調装置10Aは、デフロスタ吹出口21及びフット吹出口23が開いたデフ・フットモードにある。
図7Cを参照する。車両用空調装置10Aは、フット吹出口23の開口割合が最も大きいフットモードにある。
【0048】
図8Aを参照する。車両用空調装置10Aは、ベント吹出口22及びフット吹出口23が開いたベント・フットモードにある。ベント・フットモードは、バイレベルモードと呼ばれることもある。
図8Bを参照する。車両用空調装置10Aは、ベント吹出口22の開口割合が最も大きいベントモードにある。
【0049】
(空気流出許容位置)
図8Aを参照する。ドア30Aは、空気流出孔29からの空気の流出を許容する空気流出許容位置にある。空気流出孔29が貫通している方向(左右方向、軸線AXが延びている方向)に沿って見て、空気流出孔29の全体と第2ドア連通部52は重なっている。ドア30Aの回転方向を基準として、空気流出孔29は、第2ドア連通部52のなかで中央よりも時計回りα側に位置している。
図7A~
図7Cに示すドア30Aも、空気流出孔29からの空気の流出を許容する空気流出許容位置にある。
【0050】
図7Aを参照する。空気流出孔29の全体と第1ドア連通部51は重なっている。
図7Bを参照する。ドア30Aの回転方向を基準として、空気流出孔29は、第1ドア連通部51のなかで略中央に位置している。空気流出孔29の全体と第1ドア連通部51は重なっている。ドア30Aの回転方向を基準として、空気流出孔29は、第1ドア連通部51のなかで中央よりも時計回りα側に位置している。
図7Cを参照する。空気流出孔29の全体と第2ドア連通部52は重なっている。ドア30Aの回転方向を基準として、空気流出孔29は、第2ドア連通部52のなかで中央よりも反時計回りβ側に位置している。
【0051】
(空気流出抑制位置)
図8Bを参照する。ドア30Aは、空気流出孔29からの空気の流出を抑制する空気流出抑制位置にある。空気流出孔29が貫通している方向(左右方向、軸線AXが延びている方向)に沿って見て、空気流出孔29の一部は、吹出抑制リブ600と重なっている。吹出抑制リブ600は、空気流出孔29の一部と重なっている、と言うこともできる。この実施例の場合、吹出抑制リブ600は、空気流出孔29を2つに分割する位置に配置されている(
図8B)。しかしながら、図示しないが、吹出抑制リブ600は空気流出孔29の一部と重複すればよく、空気流出孔29のうち回転軸31と近接した領域と重複すること、あるいは空気流出孔29のうち回転軸31から離間した領域と重複することのいずれであってもよい。
【0052】
<実施例2の変形例>
図9Aを参照する。ドア30Aは空気流出抑制位置にあるとき、吹出抑制リブ600が、空気流出孔29と重なっている。従って、ケース20の内部の空気(ドア30Aの内部の空気)が空気流出孔29に流れることが抑制される。これに対し、
図9Bで示されるドア30は実施例2の変形例を示すもので、吹出抑制リブ600に加えて、第1ドア側壁部50のアスピレータ13側には、第1抑制補助リブ601と第2抑制補助リブ602とが形成されている。第1抑制補助リブ601と第2抑制補助リブ602はそれぞれ、吹出抑制リブ600と同様に第3スポーク部63と第4スポーク部64との間に円弧状に設けられた架橋部である。第1抑制補助リブ601は、ドア30Aが空気流出抑制位置にあるとき、すなわちベント吹出モードのとき、アスピレータ13の上流側の端部14aよりも回転軸31に近接する位置に、配置される。第2抑制補助リブ602は、ドア30Aが空気流出抑制位置にあるとき、すなわちベント吹出モードのとき、アスピレータ13の下流側の端部14aよりも回転軸31側から離間する位置に、配置される。
【0053】
図9Aで示されるように、ベント吹出モードのとき、ケース20から空気流出孔29には、矢印(4)で示される空気の他、矢印(5)及び矢印(6)で示される空気が流入する。ここで、
図9Bに示されるように、第1ドア側壁部50に第1抑制補助リブ601を設けることで矢印(5)の空気の流れを阻害し、第1ドア側壁部50に第2抑制補助リブ602を設けることで矢印(6)の空気の流れを阻害することで、冷却された空気がアスピレータ13に流入することを効果的に抑制できる。
【0054】
第1抑制補助リブ601と第2抑制補助リブ602は、吹出抑制リブ600とあわせて、抑制部と言うことができる。
【0055】
空気流出孔29が貫通している方向に沿って見て、第1抑制補助リブ601の先端601aは、アスピレータ13の上流側の端部14aよりもケース20の内壁に近接していることが好ましい。アスピレータ13の上流側の端部14aと第1抑制補助リブ601の先端601aとによってラビリンス構造を形成することで、
図9Aで示される矢印(5)の空気の流れを、より確実に抑制することができる。
【0056】
空気流出孔29が貫通している方向に沿って見て、第2抑制補助リブ602の先端602aは、アスピレータ13の上流側の端部14aよりもケース20の内壁に近接していることが好ましい。アスピレータ13の上流側の端部14aと第2抑制補助リブ602の先端602aとによってラビリンス構造を形成することで、
図9Aで示される矢印(6)の空気の流れを、より確実に抑制することができる。
【0057】
(第1の効果)
図1A及び
図1Bを参照する。ケース20は、複数の吹出口21~23とは別にケース20の内部の空気をケース20の外部へ流出可能な空気流出孔29を有している。空気流出孔29には、空気流出孔29から流出する空気により空気流れを発生させるアスピレータ13が取り付けられている。ドア30、30Aが回転してその位置が変化することにより、複数の吹出口21~23の開口割合は変化可能である。
【0058】
空気流出孔29が貫通している方向(軸線AXに沿う方向)に沿って見て、ドア30、30Aの位置は、空気流出孔29からの空気の流出を許容する空気流出許容位置(
図3A~
図3C,
図4A,
図7A~
図7C,
図8A参照)と、空気流出孔29からの空気の流出を抑制する空気流出抑制位置(
図4B,
図8B参照)と、を含んでいる。
【0059】
ドア30Aの位置に関わらずケース20の内部の空気が流出する先行技術と比較すると、アスピレータ13は、ケース20に取り付けられているため、回転しない。
【0060】
ベント吹出モード(
図4B、
図8Bを参照)のとき、空気流出孔29が貫通している方向(軸線AXに沿う方向)に沿って見て、ドア30、30Aによって空気流出孔29の一部が覆われるので、ケース20の内部の空気が空気流出孔29に流入する量(矢印(4)参照)が抑制される。ベント吹出モードのときは、ケース20の内部の空気は車室内を冷房するために冷風であることが多く、空気流出孔29に流入する量が抑制されることでアスピレータ13の温度が過度に低下することが防止され、アスピレータ13の結露が抑制される。
【0061】
(第2の効果)
図2を参照する。ドア連通部42(吹出口)は、ドア接続部41のうち回転軸31から所定の径方向に離れた位置に形成された円弧状の吹出口である。ドア連通部42は、空気流出孔29との位置を考慮して設けられた最小限の孔であり、ドア側壁部40の強度は高い。なお、ドア連通部42の位置・形状・個数は、適宜変更できる。
【0062】
(第3の効果)
図6A乃至
図8Bを参照する。第1ドア側壁部50は、回転軸31とドア周壁部34の一部の円弧とを接続する棒状で複数のスポーク部61~65と、を有している。
【0063】
複数のスポーク部61~65は、互いにドア30の回転方向に離間している。ドア接続部は複数のスポーク部61~65である。第1ドア連通部51、第2ドア連通部52、第3ドア連通部53および第4ドア連通部54は、ドア30の回転方向に隣り合う複数のスポーク部61~65同士の間の空間である。実施例2のドア30Aは、実施例1のドア30よりも軽い。
【0064】
なお、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例1,実施例2に限定されるものではない。例えば、ドア30、30Aが有する回転軸について互いに離れた2本の回転軸31,32を用いて説明したが、1本の回転軸が用いられてもよい。実施例2で示される複数のスポーク部は、4本であってもよく、6本以上であってもよい。実施例2で示される吹出抑制リブ600は2本のスポーク部を連結するものとして説明したが、1本のスポーク部から回転方向に延出するように構成されていてもよい。実施例2では、第4ドア連通部54を経由して空気流出孔29にケース20の空気が流れる形態を示していないが、ドア30Aを
図8Aで示した位置よりも第2方向に回転して、第4ドア連通部54を経由して空気流出孔29にケース20の空気を流すよう構成してもよい。
【符号の説明】
【0065】
10,10A…車両用空調装置
13…アスピレータ
20…ケース
21…デフロスタ吹出口
22…ベント吹出口
23…フット吹出口
25…第1支持部
29…空気流出孔
30,30A…ドア(吹出モードドア)
31…回転軸
32…回転軸
33…ドア側壁部
34…ドア周壁部
40…ドア側壁部(第1ドア側壁部)
41…ドア接続部
42…吹出口(ドア連通部)
42a…吹出一般部
42n…吹出抑制部
50…ドア側壁部(第1ドア側壁部)
51…第1ドア連通部
52…第2ドア連通部
53…第3ドア連通部
53a…内側第3ドア連通部
53b…外側第3ドア連通部
54…第4ドア連通部
61…第1スポーク部(ドア接続部)
62…第2スポーク部(ドア接続部)
63…第3スポーク部(ドア接続部)
64…第4スポーク部(ドア接続部)
65…第5スポーク部(ドア接続部)
600…吹出抑制リブ
601…第1抑制補助リブ
602…第2抑制補助リブ