(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154493
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】光変調器
(51)【国際特許分類】
G02F 1/025 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
G02F1/025
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068313
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】三澤 太一
(72)【発明者】
【氏名】田中 啓二
【テーマコード(参考)】
2K102
【Fターム(参考)】
2K102BA02
2K102BB01
2K102BB04
2K102BC04
2K102CA05
2K102DA05
2K102DA08
2K102DB04
2K102DB08
2K102DD03
2K102EA03
2K102EA12
2K102EA17
(57)【要約】
【課題】屈曲部において光信号と電気信号との間の位相整合が可能な光変調器を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る光変調器は、第1導波路部と、第2導波路部と、第1導波路部を第2導波路部に光学的に結合するように屈曲する第3導波路部と、を含む光導波路と、光導波路を駆動するための第1信号線および第2信号線を含む差動信号路と、を備える。差動信号路は、第3導波路部を含む屈曲部において、それぞれ第1方向に延在する第1信号線および第2信号線によって構成される第1伝送路と、それぞれ第1方向および第2方向の双方に交差する方向である第3方向に延在する第1信号線および第2信号線によって構成される第2伝送路と、第1伝送路および第2伝送路を互いに接続する交差導体部と、を含む。第1伝送路および第2伝送路の少なくともいずれかは、スローウェーブ線路を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延在する第1導波路部と、前記第1方向とは異なる方向である第2方向に延在する第2導波路部と、前記第1導波路部を前記第2導波路部に光学的に結合するように屈曲する第3導波路部と、を含む光導波路と、
前記光導波路を駆動するための第1信号線および第2信号線を含む差動信号路と、
を備え、
前記差動信号路は、前記第3導波路部を含む屈曲部において、それぞれ前記第1方向に延在する前記第1信号線および前記第2信号線によって構成される第1伝送路と、それぞれ前記第1方向および前記第2方向の双方に交差する方向である第3方向に延在する前記第1信号線および前記第2信号線によって構成される第2伝送路と、前記第1伝送路および前記第2伝送路を互いに接続する交差導体部と、を含み、
前記第1伝送路および前記第2伝送路の少なくともいずれかは、スローウェーブ線路を含む、
光変調器。
【請求項2】
前記第1伝送路は、前記第1方向に延在する前記第1信号線および前記第2信号線と、前記第3方向に延在するとともに平面視において前記第1信号線および前記第2信号線と重複する部分を有する第1交差配線と、を有する、
請求項1に記載の光変調器。
【請求項3】
前記第1伝送路は、複数の前記第1交差配線を有し、
複数の前記第1交差配線は、前記第1方向に沿って一定間隔で配置されており、それぞれ電気的にフローティングとされている、
請求項2に記載の光変調器。
【請求項4】
前記第1伝送路を構成する前記第1信号線および前記第2信号線は、平面視において前記第1導波路部を間に挟むように配置されている、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光変調器。
【請求項5】
前記第2伝送路は、前記第3方向に延在する前記第1信号線および前記第2信号線と、前記第1方向に延在するとともに平面視において前記第1信号線および前記第2信号線と重複する部分を有する第2交差配線と、を有する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光変調器。
【請求項6】
前記第2伝送路は、複数の前記第2交差配線を有し、
複数の前記第2交差配線は、前記第3方向に沿って一定間隔で配置されており、それぞれ電気的にフローティングされている、
請求項5に記載の光変調器。
【請求項7】
前記第2伝送路を構成する前記第1信号線および前記第2信号線は、平面視において前記第3導波路部を間に挟むように配置されている、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光変調器。
【請求項8】
前記第1伝送路の前記第1信号線は、前記第1伝送路の前記第2信号線に向かって延びる櫛歯状の第1櫛歯部を有し、
前記第1伝送路の前記第2信号線は、前記第1伝送路の前記第1信号線に向かって延びる櫛歯状の第2櫛歯部を有し、
前記第1伝送路は、前記第1櫛歯部と前記第2櫛歯部との間にキャパシタンスを有する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光変調器。
【請求項9】
前記第1櫛歯部の前記第3方向の長さと前記第2櫛歯部の前記第3方向の長さとの和は、前記第1伝送路における前記第1信号線と前記第2信号線との間隔よりも大きい、
請求項8に記載の光変調器。
【請求項10】
前記第2伝送路の前記第1信号線は、前記第2伝送路の前記第2信号線に向かって延びる櫛歯状の第3櫛歯部を有し、
前記第2伝送路の前記第2信号線は、前記第2伝送路の前記第1信号線に向かって延びる櫛歯状の第4櫛歯部を有し、
前記第2伝送路は、前記第3櫛歯部と前記第4櫛歯部との間にキャパシタンスを有する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光変調器。
【請求項11】
前記第3櫛歯部の前記第2方向の長さと前記第4櫛歯部の前記第2方向の長さとの和は、
前記第2伝送路における前記第1信号線と前記第2信号線との間隔よりも大きい、
請求項10に記載の光変調器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光変調器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、マッハツェンダ変調器が記載されている。マッハツェンダ変調器は、第1アーム導波路と、第2アーム導波路と、差動信号路とを備える。第1アーム導波路および第2アーム導波路のそれぞれは、第1軸の方向に延在する第1導波路部、第2軸の方向に延在する第2導波路部、および第1導波路部を第2導波路部に光学的に結合するように屈曲する第3導波路部を含む。差動信号路は、第1信号線、第2信号線および基準電位線を含む。第1信号線の第1交差導体部、および第2信号線の第2交差導体部は上側導体層および下側導体層を含む。上側導体層は、下側導体層から離隔している。上側導体層および下側導体層において第1信号線および第2信号線は互いに交差している。
【0003】
特許文献2には、半導体マッハツェンダ光変調器が記載されている。半導体マッハツェンダ光変調器は、入力導波路と、入力導波路と光学的に結合された複数光導波路と、出力導波路と、光導波路上に形成された複数の進行波型電極とを有する。各進行波型電極は、各光導波路に対してそれぞれ逆相の電圧を印加する。各進行波型電極は、インピーダンス整合、および、光変調器内の光波と電気波との速度整合を行うコプレーナストリップ線路を形成するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-56881号公報
【特許文献2】特開2015-148711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光変調器において、電気線路および光導波路を屈曲させる部分である屈曲部を有する場合、屈曲部の入力部と出力部とで電気と光の位相を揃えることが必要となりうる。屈曲部において、光信号の伝搬時間が電気信号の伝搬時間より長い場合、屈曲部の出力部において光信号と電気信号との間で位相のずれが生じることがある。したがって、屈曲部の出力部において位相のずれが生じないようにする位相整合が求められうる。
【0006】
本開示は、屈曲部において光信号と電気信号との間の位相整合が可能な光変調器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る光変調器は、第1方向に延在する第1導波路部と、第1方向とは異なる方向である第2方向に延在する第2導波路部と、第1導波路部を第2導波路部に光学的に結合するように屈曲する第3導波路部と、を含む光導波路と、光導波路を駆動するための第1信号線および第2信号線を含む差動信号路と、を備える。差動信号路は、第3導波路部を含む屈曲部において、それぞれ第1方向に延在する第1信号線および第2信号線によって構成される第1伝送路と、それぞれ第1方向および第2方向の双方に交差する方向である第3方向に延在する第1信号線および第2信号線によって構成される第2伝送路と、第1伝送路および第2伝送路を互いに接続する交差導体部と、を含む。第1伝送路および第2伝送路の少なくともいずれかは、スローウェーブ線路を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、屈曲部において光信号と電気信号との間の位相整合が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る光変調器の光導波路および差動信号路を示す平面図である。
【
図4】
図4は、スローウェーブ線路の例を示す平面図である。
【
図6】
図6は、変形例に係る光変調器の光導波路および差動信号路を示す平面図である。
【
図8】
図8は、
図6の差動信号路を構成する櫛歯部を示す平面図である。
【
図9】
図9は、
図7のC-C線断面およびD-D線断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示に係る光変調器の実施形態を列記して説明する。一実施形態に係る光変調器は、(1)第1方向に延在する第1導波路部と、第1方向とは異なる方向である第2方向に延在する第2導波路部と、第1導波路部を第2導波路部に光学的に結合するように屈曲する第3導波路部と、を含む光導波路と、光導波路を駆動するための第1信号線および第2信号線を含む差動信号路と、を備える。差動信号路は、第3導波路部を含む屈曲部において、それぞれ第1方向に延在する第1信号線および第2信号線によって構成される第1伝送路と、それぞれ第1方向および第2方向の双方に交差する方向である第3方向に延在する第1信号線および第2信号線によって構成される第2伝送路と、第1伝送路および第2伝送路を互いに接続する交差導体部と、を含む。第1伝送路および第2伝送路の少なくともいずれかは、スローウェーブ線路を含む。
【0011】
この光変調器は光導波路と差動信号路とを備え、光導波路は、第1方向に延在する第1導波路部と、第2方向に延在する第2導波路部と、第1導波路部および第2導波路部を互いに光学的に結合する第3導波路部とを含む。差動信号路は、第1伝送路と、第2伝送路と、交差導体部とを含む。差動信号路は、屈曲部において第1方向に延在する第1信号線および第2信号線によって構成される第1伝送路と、第3方向に延在する第1信号線および第2信号線によって構成される第2伝送路と、第1伝送路および第2伝送路を互いに接続する交差導体部とを含む。第1伝送路および第2伝送路の少なくともいずれかは、スローウェーブ線路を含む。第1伝送路および第2伝送路の少なくともいずれかがスローウェーブ線路を含むことにより、スローウェーブ線路において電気信号の速度を低下させることができる。屈曲部に設けられたスローウェーブ線路によって、屈曲部において光信号と電気信号との間の位相整合を行うことができる。その結果、屈曲部の出力部において位相のずれが生じないようにすることができる。
【0012】
(2)上記(1)において、第1伝送路は、第1方向に延在する第1信号線および第2信号線と、第3方向に延在するとともに平面視において第1信号線および第2信号線と重複する部分を有する第1交差配線と、を有してもよい。この場合、第1伝送路がスローウェーブ線路を有し、このスローウェーブ線路は第1交差配線によって構成される。したがって、屈曲部の入力部に相当する第1伝送路において電気信号の速度を低下させることができる。
【0013】
(3)上記(2)において、第1伝送路は、複数の第1交差配線を有してもよい。複数の第1交差配線は、第1方向に沿って一定間隔で配置されており、それぞれ電気的にフローティングとされていてもよい。この場合、第1伝送路のスローウェーブ線路において電気的にフローティングとされた複数の第1交差配線が設けられている。したがって、第1伝送路において電気信号の速度をより確実に低下させることができる。
【0014】
(4)上記(1)から(3)のいずれかにおいて、第1伝送路を構成する第1信号線および第2信号線は、平面視において第1導波路部を間に挟むように配置されていてもよい。
【0015】
(5)上記(1)から(4)のいずれかにおいて、第2伝送路は、第3方向に延在する第1信号線および第2信号線と、第1方向に延在するとともに平面視において第1信号線および第2信号線と重複する部分を有する第2交差配線と、を有してもよい。この場合、第2伝送路がスローウェーブ線路を有し、このスローウェーブ線路は第2交差配線によって構成される。したがって、屈曲部に位置する第2伝送路において電気信号の速度を低下させることができる。
【0016】
(6)上記(5)において、第2伝送路は、複数の第2交差配線を有してもよい。複数の第2交差配線は、第3方向に沿って一定間隔で配置されており、それぞれ電気的にフローティングされていてもよい。この場合、第2伝送路のスローウェーブ線路において電気的にフローティングとされた複数の第2交差配線が設けられている。したがって、第2伝送路において電気信号の速度をより確実に低下させることができる。
【0017】
(7)上記(1)から(6)のいずれかにおいて、第2伝送路を構成する第1信号線および第2信号線は、平面視において第3導波路部を間に挟むように配置されていてもよい。
【0018】
(8)上記(1)から(7)のいずれかにおいて、第1伝送路の第1信号線は、第1伝送路の第2信号線に向かって延びる櫛歯状の第1櫛歯部を有してもよい。第1伝送路の第2信号線は、第1伝送路の第1信号線に向かって延びる櫛歯状の第2櫛歯部を有してもよい。第1伝送路は、第1櫛歯部と第2櫛歯部との間にキャパシタンスを有してもよい。この場合、第1伝送路において、第1信号線は第1櫛歯部を有し、第2信号線は第2櫛歯部を有する。第1櫛歯部と第2櫛歯部との間にキャパシタンスが形成されているので、第1伝送路において電気信号の速度を低下させることができる。
【0019】
(9)上記(8)において、第1櫛歯部の第3方向の長さと第2櫛歯部の第3方向の長さとの和は、第1伝送路における第1信号線と第2信号線との間隔よりも大きくてもよい。
【0020】
(10)上記(1)から(9)のいずれかにおいて、第2伝送路の第1信号線は、第2伝送路の第2信号線に向かって延びる櫛歯状の第3櫛歯部を有してもよい。第2伝送路の第2信号線は、第2伝送路の第1信号線に向かって延びる櫛歯状の第4櫛歯部を有してもよい。第2伝送路は、第3櫛歯部と第4櫛歯部との間にキャパシタンスを有してもよい。この場合、第2伝送路において、第1信号線は第3櫛歯部を有し、第2信号線は第4櫛歯部を有する。第3櫛歯部と第4櫛歯部との間にキャパシタンスが形成されているので、第2伝送路において電気信号の速度を低下させることができる。
【0021】
(11)上記(10)において、第3櫛歯部の第2方向の長さと第4櫛歯部の第2方向の長さとの和は、第2伝送路における第1信号線と第2信号線との間隔よりも大きくてもよい。
【0022】
[本開示の実施形態の詳細]
実施形態に係る光変調器の例を以下で図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下の例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示され、特許請求の範囲と均等の範囲における全ての変更が含まれることが意図される。図面の説明において、同一または相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化または誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0023】
図1は、実施形態に係る光変調器1を示す平面図である。光変調器1は、マッハツェンダ変調器である。光変調器1は、光導波路10と、差動信号路20とを備える。光導波路10は、第1方向D1に延在する第1導波路部11と、第1方向D1とは異なる方向である第2方向D2に延在する第2導波路部12と、第1導波路部11を第2導波路部12に光学的に結合するように屈曲する第3導波路部13とを含む。第3導波路部13は、U字状を呈する。光変調器1は、第3導波路部13を含む領域に形成された屈曲部Pと変調器部Mとを有する。
【0024】
第1導波路部11は第1方向D1に沿って直線状に延在しており、第2導波路部12は第2方向D2に沿って直線状に延在している。第2方向D2は、例えば、第1方向D1の反対方向である。すなわち、本実施形態では、第1方向D1と第2方向D2との成す角度は180度である。しかしながら、第1方向D1と第2方向D2との成す角度は、180度以下の角度、例えば、45度、90度、120度または150度であってもよく、特に限定されない。屈曲部Pは、第1方向D1と第2方向D2との成す角度に応じて構成される。例えば、当該角度が90度の場合、第3導波路部13は、U字状ではなく、90度曲げられた形状を呈する。
【0025】
第3導波路部13は、第1導波路部11および第2導波路部12を互いに光学的に結合する部位である。第3導波路部13は、例えば、第1方向D1および第2方向D2の双方に交差する第3方向D3に延在する第1部分13bと、第1導波路部11から第1部分13bまで延びる第2部分13cと、第1部分13bから第2導波路部12まで延びる第3部分13dとを有する。第1部分13bは直線状に延在しており、第2部分13cおよび第3部分13dのそれぞれは曲線状に延在している。例えば、第2部分13cおよび第3部分13dのそれぞれは円弧状を呈する。第2部分13cおよび第3部分13dのそれぞれは、単調に曲がる形状を呈していてもよい。なお、第1部分13bは、省略されてもよい。例えば、第1方向D1と第2方向D2との成す角度が90度以下である場合、第2部分13cと第3部分13dとは互いに直接接続されていてもよい。
【0026】
例えば、光導波路10は第1アーム導波路10Aおよび第2アーム導波路10Bを含む。第1アーム導波路10Aおよび第2アーム導波路10Bのそれぞれが第1導波路部11、第2導波路部12および第3導波路部13を有する。第1アーム導波路10Aは、第2アーム導波路10Bの外側を延在している。より具体的には、第1方向D1、第2方向D2および第3方向D3に交差する第4方向D4に沿って見た場合(例えば平面視)において、第1アーム導波路10Aの第3導波路部13は、第2アーム導波路10Bの第3導波路部13の外側において屈曲している。
【0027】
光変調器1は、第1光カプラ14および第2光カプラ15を有する。第1光カプラ14および第2光カプラ15は、例えば、マルチモード干渉器である。第1光カプラ14には、第1アーム導波路10Aの第1導波路部11、および第2アーム導波路10Bの第1導波路部11のそれぞれが接続されている。第2光カプラ15には、第1アーム導波路10Aの第2導波路部12、および第2アーム導波路10Bの第2導波路部12のそれぞれが接続されている。第1光カプラ14は光変調器1の外部から入力光ビームを受ける。第1光カプラ14から第1導波路部11に伝搬する光ビームは、屈曲する第3導波路部13において伝搬方向を変えられる。第3導波路部13において伝搬方向を変えられた光ビームは、第2導波路部12および第2光カプラ15に伝搬する。第2光カプラ15に伝搬した光ビームは出力光ビームとして光変調器1の外部に出力される。
【0028】
光変調器1は、例えば、進行波型の差動信号路20を有する。差動信号路20は、第1信号線21、第2信号線22および基準電位線23を備える。第1信号線21および第2信号線22のそれぞれは、第1アーム導波路10Aおよび第2アーム導波路10Bに印加される電気信号(光変調器の駆動信号ともいう)を伝送する。基準電位線23は、差動信号路20の基準電気面を提供する。第1信号線21は、例えば、第1導体部21b、第2導体部21cおよび第1交差導体部21d(交差導体部)を含む。第1導体部21bは第1方向D1に延在するとともに第1アーム導波路10Aの第1導波路部11に接続される。第2導体部21cは第2方向D2に延在するとともに第1アーム導波路10Aの第2導波路部12に接続される。第1交差導体部21dは、第1導体部21bに第2導体部21cを接続する。
【0029】
第2信号線22は、第1導体部22b、第2導体部22cおよび第2交差導体部22d(交差導体部)を含む。第1導体部22bは、第2アーム導波路10Bの第1導波路部11に沿って第1方向D1に延在するとともに第2アーム導波路10Bの第1導波路部11に接続される。第2導体部22cは、第2アーム導波路10Bの第2導波路部12に沿って第2方向D2に延在するとともに第2アーム導波路10Bの第2導波路部12に接続される。第2交差導体部22dは、第1導体部22bに第2導体部22cを接続する。第1信号線21の第1交差導体部21d、および第2信号線22の第2交差導体部22dは、第4方向D4に互いに離隔する部分を有し、当該部分において第1信号線21および第2信号線22は互いに立体的に交差する。
【0030】
光変調器1において、第1アーム導波路10Aおよび第2アーム導波路10Bは、第1アーム導波路10Aの第1導波路部11、および第2アーム導波路10Bの第1導波路部11のそれぞれを、第1アーム導波路10Aの第2導波路部12、および第2アーム導波路10Bの第2導波路部12のそれぞれに光学的に結合するように屈曲している。第1アーム導波路10Aの第1導波路部11、および第2アーム導波路10Bの第1導波路部11のそれぞれに接続される第1信号線21および第2信号線22は、第1交差導体部21dおよび第2交差導体部22dにおいて互いに立体的に交差する。第1信号線21および第2信号線22の交差により、第1アーム導波路10Aおよび第2アーム導波路10Bのルーティングにおける外回りおよび内回りの配置から独立して第1信号線21および第2信号線22をルーティングできる。この独立したルーティングにより、第1アーム導波路10Aおよび第2アーム導波路10Bの外回りおよび内回りに起因して第1信号線21を伝搬する電気信号、および第2信号線22を伝搬する電気信号の間に生じるスキューを低減できる。
【0031】
基準電位線23は、第1導体部23b、第2導体部23cおよび交差導体部23dを含む。第1導体部23bは、第3方向D3において、第1信号線21の第1導体部21bと、第2信号線22の第1導体部22bとの間に位置する。交差導体部23dは、第1信号線21の第1交差導体部21d、および第2信号線22の第2交差導体部22dのそれぞれと立体的に交差している。
【0032】
第1信号線21において、第2導体部21cは、第1アーム導波路10Aの第2導波路部12に接続される。第2導体部21cは、第1アーム導波路10Aの第2導波路部12に沿って第2方向D2に延在する。第2信号線22において、第2導体部22cは、第2アーム導波路10Bの第2導波路部12に接続される。第2導体部22cは、第2アーム導波路10Bの第2導波路部12に沿って第2方向D2に延在する。
【0033】
図2は、
図1のA-A線断面図である。
図2に示されるように、光変調器1では、半導体メサ31が絶縁体に埋め込まれており、この絶縁体は樹脂体32およびシリコン系無機絶縁膜33,34,35を含む。絶縁体によって埋め込まれた半導体メサ31上を下側導体層36が延在している。下側導体層36は、半導体メサ31の上面に接触している。下側導体層36とは別に絶縁体上を上側導体層37が延在している。半導体メサ31は、第3方向D3に沿って並ぶ第1半導体メサ31bおよび第2半導体メサ31cを含む。第1半導体メサ31bの上方に位置する下側導体層36および上側導体層37が第1信号線21を構成する。第2半導体メサ31cの上方に位置する下側導体層36および上側導体層37が第2信号線22を構成する。第1信号線21と第2信号線22との間には、上側導体層37からなる基準電位線23が形成されている。光変調器1は、基板SUBの上に形成されている。
【0034】
図3は、光変調器1の差動信号路20を示す平面図である。
図3に示されるように、差動信号路20は、屈曲部Pにおいて、それぞれ第1方向D1に延在する第1信号線21および第2信号線22によって構成される第1伝送路20Aと、それぞれ第3方向D3に延在する第1信号線21および第2信号線22によって構成される第2伝送路20Bとを含む。第2伝送路20Bは、変調器部Mの差動信号路20の特性インピーダンスと同一の特性インピーダンスを有するとともに、変調器部Mの差動信号路20の伝搬速度より大きい伝搬速度を有する。さらに、差動信号路20は、それぞれ第2方向D2に延在する第1信号線21および第2信号線22によって構成される第3伝送路20Cを含む。第1交差導体部21dおよび第2交差導体部22dのそれぞれは、第1伝送路20Aおよび第2伝送路20Bを互いに接続するとともに、第2伝送路20Bおよび第3伝送路20Cを互いに接続する。
【0035】
差動信号路20は、スローウェーブ線路40を有する。「スローウェーブ線路」とは、差動信号路を構成する伝送線路のうち、インダクタおよびキャパシタ(容量)の分布定数回路で表したときに容量が増加する構成とされた伝送線路である。例えば、差動信号路20は複数のスローウェーブ線路40を有する。複数のスローウェーブ線路40は、第1伝送路20Aに形成された第1スローウェーブ線路40Aと、第2伝送路20Bに形成された第2スローウェーブ線路40Bと、第3伝送路20Cに形成された第3スローウェーブ線路40Cとを含む。
【0036】
第1伝送路20Aは、それぞれ第1方向D1に延在する第1信号線21および第2信号線22と、第3方向D3に延在するとともに平面視において第1信号線21および第2信号線22と重複する部分41b,41cを有する第1下層導体41とを有する。第1伝送路20Aを構成する第1信号線21および第2信号線22は、平面視において光導波路10の第1導波路部11を間に挟むように配置される。第1下層導体41によって第1スローウェーブ線路40Aが構成されている。第1下層導体41は電気的にフローティングとされている。第1下層導体41は、例えば、下側導体層36によって構成されてもよい。
【0037】
平面視において第1信号線21と重なる第1下層導体41の部分41bは、第1下層導体41の第3方向D3とは反対方向(あるいは外側)の端に位置する。平面視において第2信号線22と重なる第1下層導体41の部分41cは、第1下層導体41の第3方向D3(あるいは内側)の端に位置する。第1下層導体41の幅(第1方向D1の長さ)は、例えば、第1信号線21の幅(第3方向D3の長さ)より狭く、かつ第2信号線22の幅(第3方向D3の長さ)よりも狭い。第1伝送路20Aは複数の第1下層導体41を有し、複数の第1下層導体41は第1方向D1に沿って一定間隔で配置されている。一例として、第1下層導体41の数は2本である。しかしながら、第1下層導体41の数は特に限定されない。
【0038】
第2伝送路20Bは、それぞれ第3方向D3に延在する第1信号線21および第2信号線22と、第1方向D1に延在するとともに平面視において第1信号線21および第2信号線22と重複する部分42b,42cを有する第2下層導体42とを有する。第2伝送路20Bを構成する第1信号線21および第2信号線22は、平面視において光導波路10の第3導波路部13を間に挟むように配置される。第2下層導体42によって第2スローウェーブ線路40Bが構成されている。第2下層導体42は電気的にフローティングとされている。第2下層導体42は、例えば、下側導体層36によって構成されてもよい。なお、第2伝送路20Bは、第3導波路部13に接続されないため、第3導波路部13を挟むように配置されていなくてもよい。例えば、第3導波路部13は、第2伝送路20Bと変調器部Mとの間に配置されていてもよい。あるいは、第2伝送路20Bは、第3導波路部13と変調器部Mとの間に配置されていてもよい。このように、第1方向D1(あるいは第2方向D2)における第3導波路部13と第2伝送路20Bとの位置関係を調整することにより、屈曲部Pにおける電気信号と光信号との間の位相差を調整することができる。
【0039】
平面視において第1信号線21と重なる第2下層導体42の部分42bは、第2下層導体42の第1方向D1とは反対方向(あるいは内側)の端に位置する。平面視において第2信号線22と重なる第2下層導体42の部分42cは、第2下層導体42の第1方向D1(あるいは外側)の端に位置する。第2下層導体42の幅(第3方向D3の長さ)は、例えば、第1信号線21の幅(第1方向D1の長さ)より狭く、かつ第2信号線22の幅(第1方向D1の長さ)よりも狭い。第2下層導体42の幅は、例えば、第1下層導体41の幅よりも狭い。第2伝送路20Bは複数の第2下層導体42を有し、複数の第2下層導体42は第3方向D3に沿って一定間隔で配置されている。一例として、第2下層導体42の数は3本である。しかしながら、第2下層導体42の数は特に限定されない。
【0040】
第3伝送路20Cは、それぞれ第2方向D2に延在する第1信号線21および第2信号線22と、第3方向D3に延在するとともに平面視において第1信号線21および第2信号線22と重複する部分43b,43cを有する第3下層導体43とを有する。第3伝送路20Cを構成する第1信号線21および第2信号線22は、平面視において光導波路10の第2導波路部12を間に挟むように配置される。第3下層導体43によって第3スローウェーブ線路40Cが構成されている。第3下層導体43は電気的にフローティングとされている。第3下層導体43は、例えば、下側導体層36によって構成されてもよい。
【0041】
平面視において第1信号線21と重なる第3下層導体43の部分43bは、第3下層導体43の第3方向D3(あるいは外側)の端に位置する。平面視において第2信号線22と重なる第3下層導体43の部分43cは、第3下層導体43の第3方向D3とは反対方向(あるいは内側)の端に位置する。第3下層導体43の幅(第2方向D2の長さ)は、例えば、第1信号線21の幅(第3方向D3の長さ)より狭く、かつ第2信号線22の幅(第3方向D3の長さ)よりも狭い。例えば、第3下層導体43の幅は、第1下層導体41の幅と同一である。第3伝送路20Cは複数の第3下層導体43を有し、複数の第3下層導体43は第2方向D2に沿って一定間隔で配置されている。一例として、第3下層導体43の数は2本である。しかしながら、第3下層導体43の数は特に限定されない。
【0042】
図4は、変形例に係るスローウェーブ線路50を示す平面図である。
図5は、
図4のB-B線断面図である。スローウェーブ線路50は、第1伝送路20Aにおいて第1スローウェーブ線路40Aに代えて設けられる。ただし、スローウェーブ線路50は、第2伝送路20Bにおいて第2スローウェーブ線路40Bに代えて設けられてもよいし、第3伝送路20Cにおいて第3スローウェーブ線路40Cに代えて設けられてもよい。スローウェーブ線路50は、第1信号線21から第2信号線22まで延びる5本の下層導体51を有する。下層導体51は、第1信号線21および第2信号線22から第4方向D4に離隔している。より具体的には、下層導体51は、第1信号線21および第2信号線22が延在する方向(例えば第1方向D1)に直交する平面に沿った断面において、第1信号線21および第2信号線22よりも下方に位置する。したがって、下層導体51は、第1信号線21および第2信号線22と基板SUBとの間に位置する。下層導体51は、前述した第1下層導体41等と同様、電気的にフローティングとされている。下層導体51は、例えば、下側導体層36によって構成されてもよい。
【0043】
スローウェーブ線路50における特性インピーダンスZ
0と電気信号の速度である伝搬速度v
pとの関係について説明する。まず、特性インピーダンスZ
0は以下の式(1)によって求められる。
【数1】
Rは伝送線路の単位長さ当たりの抵抗、Lはインダクタンス、Gはコンダクタンス、Cはキャパシタンスである。そして、伝搬定数γが以下の式(2)によって求められる。
【数2】
αは減衰定数、βは位相定数である。伝搬速度v
pは以下の式(3)によって求められる。
【数3】
ここで、RとGが十分に小さい(R<<jωLおよびG<<jωCである)場合、特性インピーダンスZ
0および伝搬速度v
pは以下の式(4)および式(5)によって求められる。例えば、電気信号の周波数fが10GHz以上になると、角周波数ω=2πfが十分に大きくなり、式(4)および式(5)によって扱うことができる。
【数4】
【数5】
【0044】
式(4)および式(5)に示されるように、特性インピーダンスZ0および伝搬速度vpのいずれも、インダクタンスLおよびキャパシタンスCに依存し、伝送線路の形状によって決まる。スローウェーブ線路50は、下層に短冊状の下層導体51を有する構造を備える。これにより、特性インピーダンスZ0および伝搬速度vpのそれぞれを独立に制御できる。例えば、下層導体51の間隔を狭めて配線密度を密にしたり、第1信号線21の信号線幅Wを太くすることによってキャパシタンスCを増加できる。また、第1信号線21と第2信号線22の間隔dを大きくすることによってLを増加できる。式(4)および式(5)によれば、L/C(LとCの比)を一定にしつつ、LおよびCの双方を増加させることにより、特性インピーダンスZ0を一定にするとともに伝搬速度vpを低下させることができる。スローウェーブ線路50が設けられることにより、特性インピーダンスZ0および伝搬速度vpのそれぞれを独立に制御できるので、特性インピーダンスZ0の整合と伝搬速度vpの整合との両立を実現できる。
【0045】
スローウェーブ線路50では、下層導体51が配置されることにより、下層導体51を介して第1信号線21と第2信号線22との間の容量が付加され、第1信号線21と第2信号線22との間のキャパシタンスを増加させることができる。以下では、スローウェーブ線路50を有する第1信号線21および第2信号線22(以下では、実施例と称する)、ならびにスローウェーブ線路50を有しない第1信号線21および第2信号線22(以下では比較例と称する)における特性インピーダンスZ
0と伝搬速度v
pとの関係のシミュレーションについて説明する。このシミュレーションでは、第1信号線21の長さ、および第2信号線22の長さを200μm、第1信号線21と第2信号線22との間隔dを100μm、信号線幅Wを40μm、下層導体51の幅wfを5μm、互いに隣接する2本の下層導体51の間隔dfを29μmとした。このシミュレーションの結果を以下の表1に示す。
【表1】
スローウェーブ線路50を有する実施例の場合、第1信号線21と第2信号線22との間隔dを広げることによってインダクタンスLとキャパシタンスCを同じ割合で増加できる。よって、インピーダンスZ
0を100Ω程度に維持しつつ、遅延時間を1.38psから2.14psと約1.5倍増加できることが分かる。そして、伝搬速度vpを1/1.5倍に低下できることが分かる。
【0046】
次に、本実施形態に係る光変調器1から得られる作用効果について説明する。光変調器1は光導波路10と差動信号路20とを備え、光導波路10は、第1方向D1に延在する第1導波路部11と、第2方向D2に延在する第2導波路部12と、第1導波路部11および第2導波路部12を互いに光学的に結合する第3導波路部13とを含む。差動信号路20は、第1伝送路20Aと、第2伝送路20Bと、交差導体部(第1交差導体部21dおよび第2交差導体部22d)とを含む。差動信号路20は、屈曲部Pにおいて第1方向D1に延在する第1信号線21および第2信号線22によって構成される第1伝送路20Aと、第3方向D3に延在する第1信号線21および第2信号線22によって構成される第2伝送路20Bと、第1伝送路20Aおよび第2伝送路20Bを互いに接続する上記の交差導体部とを含む。第1伝送路20Aおよび第2伝送路20Bは、スローウェーブ線路40を含む。第1伝送路20Aおよび第2伝送路20Bがスローウェーブ線路40を含むことにより、スローウェーブ線路40において電気信号の速度を低下させることができる。屈曲部Pに設けられたスローウェーブ線路40によって、屈曲部Pにおいて光信号と電気信号との間の位相整合を行うことができる。その結果、屈曲部Pの出力部において位相のずれが生じないようにすることができる。
【0047】
本実施形態において、第1伝送路20Aは、第1方向D1に延在する第1信号線21および第2信号線22と、第3方向D3に延在するとともに平面視において第1信号線21および第2信号線22と重複する部分41b,41cを有する第1下層導体41と、を有してもよい。この場合、第1伝送路20Aが第1スローウェーブ線路40Aを有し、第1スローウェーブ線路40Aは第1下層導体41によって構成される。したがって、屈曲部Pの入力部に相当する第1伝送路20Aにおいて電気信号の速度を低下させることができる。
【0048】
上記の入力部は、屈曲部Pに光信号および電気信号が入る部分を示している。一方、出力部は、屈曲部Pから光信号および電気信号が出る部分を示している。入力部から出力部に伝搬する時間を伝搬時間とすると、電気信号の伝搬時間teは光信号の伝搬時間toと等しくなるように設定されている。すなわち、光信号の伝搬時間toと等しくなるように、第1伝送路20Aにおける電気信号の伝搬速度vp1、第2伝送路20Bにおける電気信号の伝搬速度vp2、および第3伝送路20Cにおける電気信号の伝搬速度vp3が設定されている。より具体的には、第1伝送路20Aの長さをLe1、第2伝送路20Bの長さをLe2、第3伝送路20Cの長さをLe3、とすると、
te=(Le1/vp1)+(Le2/vp2)+(Le3/vp3)=to
の関係を満たすように、伝搬速度vp1,vp2,vp3が設定されている。ここで「等しい」とは、実用上許容できる範囲内で値が異なっていてもよい。許容できる範囲は、例えば、相対誤差で5%以内である。
【0049】
本実施形態において、第1伝送路20Aは、複数の第1下層導体41を有してもよい。複数の第1下層導体41は、第1方向D1に沿って一定間隔で配置されており、それぞれ電気的にフローティングとされていてもよい。この場合、第1伝送路20Aの第1スローウェーブ線路40Aにおいて電気的にフローティングとされた複数の第1下層導体41が設けられている。したがって、第1伝送路20Aにおいて電気信号の速度をより確実に低下させることができる。
【0050】
本実施形態において、第2伝送路20Bは、第3方向D3に延在する第1信号線21および第2信号線22と、第1方向D1に延在するとともに平面視において第1信号線21および第2信号線22と重複する部分42b,42cを有する第2下層導体42と、を有してもよい。この場合、第2伝送路20Bが第2スローウェーブ線路40Bを有し、第2スローウェーブ線路40Bは第2下層導体42によって構成される。したがって、屈曲部Pに位置する第2伝送路20Bにおいて電気信号の速度を低下させることができる。
【0051】
本実施形態において、第2伝送路20Bは、複数の第2下層導体42を有してもよい。複数の第2下層導体42は、第3方向D3に沿って一定間隔で配置されており、それぞれ電気的にフローティングされていてもよい。この場合、第2伝送路20Bの第2スローウェーブ線路40Bにおいて電気的にフローティングとされた複数の第2下層導体42が設けられている。したがって、第2伝送路20Bにおいて電気信号の速度をより確実に低下させることができる。
【0052】
次に、変形例に係る光変調器61について
図6を参照しながら説明する。光変調器61の一部の構成は、前述した光変調器1の一部の構成と同一である。よって、以下では、既出の説明と同一の説明については同一の符号を付して適宜省略する。光変調器61は、前述したスローウェーブ線路40およびスローウェーブ線路50とは異なるスローウェーブ線路70を有する。例えば、差動信号路20は、複数のスローウェーブ線路70を有する。複数のスローウェーブ線路70は、第1伝送路20Aに形成された第1スローウェーブ線路70Aと、第2伝送路20Bに形成された第2スローウェーブ線路70Bと、第3伝送路20Cに形成された第3スローウェーブ線路70Cとを含む。
【0053】
図7は、光変調器61の差動信号路20を示す平面図である。第1伝送路20Aの第1信号線21は、第1伝送路20Aの第2信号線22に向かって延びる櫛歯状の第1櫛歯部71を有する。第1スローウェーブ線路70Aは複数の第1櫛歯部71を有し、複数の第1櫛歯部71は第1方向D1に沿って並んでいる。第1櫛歯部71の幅(第1方向D1の長さ)は、例えば、第1信号線21の幅(第3方向D3の長さ)、および第2信号線22の幅(第3方向D3の長さ)よりも狭い。一例として、第1櫛歯部71の数は2本である。しかしながら、第1櫛歯部71の数は特に限定されない。
【0054】
第1伝送路20Aの第2信号線22は、第1伝送路20Aの第1信号線21に向かって延びる櫛歯状の第2櫛歯部72を有する。第1伝送路20Aは、第1櫛歯部71と第2櫛歯部72との間にキャパシタンスを有する。第1櫛歯部71および第2櫛歯部72は第1スローウェーブ線路70Aを構成する。第1櫛歯部71の第3方向D3の長さL1と、第2櫛歯部72の第3方向D3の長さL2との和は、第1伝送路20Aにおける第1信号線21と第2信号線22との間隔d1よりも大きい。第2櫛歯部72の第3方向D3の長さL2は、第1櫛歯部71の第3方向D3の長さL1と同一であってもよい。
【0055】
第1スローウェーブ線路70Aは複数の第2櫛歯部72を有し、複数の第2櫛歯部72は第1方向D1に沿って並んでいる。第1櫛歯部71および第2櫛歯部72は第1方向D1に沿って交互に並んでいる。第2櫛歯部72の幅(第1方向D1の長さ)は、例えば、第1信号線21の幅、および第2信号線22の幅よりも狭い。一例として、第2櫛歯部72の数は3本である。しかしながら、第2櫛歯部72の数は特に限定されない。第1スローウェーブ線路40Aは、例えば、第1下層導体41を構成するために下側導体層36を使用する。それに対して、第1スローウェーブ線路70Aは、第1櫛歯部71および第2櫛歯部72が第1信号線21および第2信号線と同じ上側導体層37によって構成されるため、第1スローウェーブ線路40Aよりも容易に構成することができる。同様に、第2スローウェーブ線路70Bおよび第3スローウェーブ線路70Cも上側導体層37のみで構成することができる。
【0056】
図8は、第2スローウェーブ線路70Bを拡大した平面図である。
図7および
図8に示されるように、第2伝送路20Bの第1信号線21は、第2伝送路20Bの第2信号線22に向かって延びる櫛歯状の第3櫛歯部73を有する。第2伝送路20Bの第2信号線22は、第2伝送路20Bの第1信号線21に向かって延びる櫛歯状の第4櫛歯部74を有する。第2スローウェーブ線路70Bは複数の第3櫛歯部73を有し、複数の第3櫛歯部73は第3方向D3に沿って並んでいる。第3櫛歯部73の幅(第3方向D3の長さ)は、例えば、第1信号線21の幅(第1方向D1の長さ)、および第2信号線22の幅(第1方向D1の長さ)よりも狭い。一例として、第3櫛歯部73の数は2本である。しかしながら、第3櫛歯部73の数は特に限定されない。
【0057】
第2伝送路20Bの第2信号線22は、第2伝送路20Bの第1信号線21に向かって延びる櫛歯状の第4櫛歯部74を有する。第2伝送路20Bは、第3櫛歯部73と第4櫛歯部74との間にキャパシタンスを有する。
図9は、
図7のC-C線断面図、および
図7のD-D線断面図を示している。
図9に示されるように、第3櫛歯部73および第4櫛歯部74はともに基準電位線23から離隔している。例えば、第3櫛歯部73および第4櫛歯部74は基準電位線23の上方に位置する。第3櫛歯部73および第4櫛歯部74では、櫛歯幅Eまたは長さL3,L4を大きくすることによってキャパシタンスCを増加させることができる。そして、第1信号線21と第2信号線22との間隔d2を長くすることによってインダクタンスLを増加させることができる。したがって、前述した実施形態と同様、特性インピーダンスZ
0および伝搬速度v
pのそれぞれを独立に制御できる。ただし、長さL3,L4は、スタブとしての悪影響を避けるため、高周波信号の波長λの1/4以下であることが望ましい。第1櫛歯部71および第2櫛歯部72、ならびに後述する第5櫛歯部75および第6櫛歯部76も同様である。
【0058】
図7および
図8に示されるように、第3櫛歯部73および第4櫛歯部74は第2スローウェーブ線路70Bを構成する。第3櫛歯部73の第2方向D2の長さL3と、第4櫛歯部74の第2方向D2の長さL4との和は、第2伝送路20Bにおける第1信号線21と第2信号線22との間隔d2よりも大きい。第4櫛歯部74の第2方向D2の長さL4は、第3櫛歯部73の第2方向D2の長さL3と同一であってもよい。第2スローウェーブ線路70Bは複数の第4櫛歯部74を有し、複数の第4櫛歯部74は第3方向D3に沿って並んでいる。第3櫛歯部73および第4櫛歯部74は第3方向D3に沿って交互に並んでいる。第4櫛歯部74の幅(第3方向D3の長さ)は、例えば、第1信号線21の幅、および第2信号線22の幅よりも狭い。一例として、第4櫛歯部74の数は3本である。しかしながら、第4櫛歯部74の数は特に限定されない。
【0059】
第3伝送路20Cの第1信号線21は、第3伝送路20Cの第2信号線22に向かって延びる櫛歯状の第5櫛歯部75を有する。第3スローウェーブ線路70Cは複数の第5櫛歯部75を有し、複数の第5櫛歯部75は第2方向D2に沿って並んでいる。第5櫛歯部75の幅(第2方向D2の長さ)は、例えば、第1信号線21の幅(第3方向D3の長さ)、および第2信号線22の幅(第2方向D2の長さ)よりも狭い。一例として、第5櫛歯部75の数は2本である。しかしながら、第5櫛歯部75の数は特に限定されない。
【0060】
第3伝送路20Cの第2信号線22は、第3伝送路20Cの第1信号線21に向かって延びる櫛歯状の第6櫛歯部76を有する。第3伝送路20Cは、第5櫛歯部75と第6櫛歯部76との間にキャパシタンスを有する。第5櫛歯部75および第6櫛歯部76は第3スローウェーブ線路70Cを構成する。第5櫛歯部75の第3方向D3の長さL5と、第6櫛歯部76の第3方向D3の長さL6との和は、第3伝送路20Cにおける第1信号線21と第2信号線22との間隔d3よりも大きい。第6櫛歯部76の第3方向D3の長さL6は、第5櫛歯部75の第3方向D3の長さL5と同一であってもよい。
【0061】
第3スローウェーブ線路70Cは複数の第6櫛歯部76を有し、複数の第6櫛歯部76は第2方向D2に沿って並んでいる。第5櫛歯部75および第6櫛歯部76は第2方向D2に沿って交互に並んでいる。第6櫛歯部76の幅(第2方向D2の長さ)は、例えば、第1信号線21の幅、および第2信号線22の幅よりも狭い。一例として、第6櫛歯部76の数は3本である。しかしながら、第6櫛歯部76の数は特に限定されない。
【0062】
以上、変形例に係る光変調器61において、第1伝送路20Aの第1信号線21は、第1伝送路20Aの第2信号線22に向かって延びる櫛歯状の第1櫛歯部71を有し、第1伝送路20Aの第2信号線22は、第1伝送路20Aの第1信号線21に向かって延びる櫛歯状の第2櫛歯部72を有する。第1伝送路20Aは、第1櫛歯部71と第2櫛歯部72との間にキャパシタンスを有する。この場合、第1伝送路20Aにおいて、第1信号線21は第1櫛歯部71を有し、第2信号線22は第2櫛歯部72を有する。第1櫛歯部71と第2櫛歯部72との間にキャパシタンスが形成されているので、第1信号線21において電気信号の速度を低下させることができる。第1櫛歯部71と第2櫛歯部72との間のキャパシタンスは、例えば、第1信号線21および第2信号線22と同じ上側導体層37で構成することができる。
【0063】
光変調器61において、第2伝送路20Bの第1信号線21は、第2伝送路20Bの第2信号線22に向かって延びる櫛歯状の第3櫛歯部73を有し、第2伝送路20Bの第2信号線22は、第2伝送路20Bの第1信号線21に向かって延びる櫛歯状の第4櫛歯部74を有する。第2伝送路20Bは、第3櫛歯部73と第4櫛歯部74との間にキャパシタンスを有する。この場合、第2伝送路20Bにおいて、第1信号線21は第3櫛歯部73を有し、第2信号線22は第4櫛歯部74を有する。第3櫛歯部73と第4櫛歯部74との間にキャパシタンスが形成されているので、第2伝送路20Bにおいて電気信号の速度を低下させることができる。第3櫛歯部73と第4櫛歯部74との間のキャパシタンスは、例えば、第1信号線21および第2信号線22と同じ上側導体層37で構成することができる。
【0064】
以上、本開示に係る実施形態および変形例について説明した。しかしながら、本発明は、前述の実施形態または変形例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した要旨の範囲内において適宜変更可能である。また、本開示に係る光変調器は、前述の実施形態および変形例のうちの複数の例が組み合われたものであってもよい。例えば、本開示に係る光変調器の各部の構成、形状、大きさ、材料、数および配置態様は、前述した実施形態または変形例に限られず適宜変更可能である。
【0065】
例えば、前述の実施形態では、第1伝送路20Aが第1スローウェーブ線路40Aを有し、第2伝送路20Bが第2スローウェーブ線路40Bを有し、さらに第3伝送路20Cが第3スローウェーブ線路40Cを有する例について説明した。しかしながら、第1伝送路20A、第2伝送路20Bおよび第3伝送路20Cの一部のみがスローウェーブ線路を有していてもよい。前述の実施形態では、第1信号線21、第2信号線22および基準電位線23を有する差動信号路20について説明した。しかしながら、差動信号路20によって一対の相補信号を有する差動信号を伝送する場合、基準電位線23は省略することが可能であり、第1信号線および第2信号線のみを有する差動信号路であってもよい。例えば、差動信号は、正相成分(正相信号)および逆相成分(逆相信号)を有し、逆相信号は、正相信号の位相と180°異なる位相を有する。差動信号路20は、伝送線路を構成し、差動信号の伝送に関して特性インピーダンスを有する。
【符号の説明】
【0066】
1…光変調器
10…光導波路
10A…第1アーム導波路
10B…第2アーム導波路
11…第1導波路部
12…第2導波路部
13…第3導波路部
13b…第1部分
13c…第2部分
13d…第3部分
14…第1光カプラ
15…第2光カプラ
20…差動信号路
20A…第1伝送路
20B…第2伝送路
20C…第3伝送路
21…第1信号線
21b…第1導体部
21c…第2導体部
21d…第1交差導体部(交差導体部)
22…第2信号線
22b…第1導体部
22c…第2導体部
22d…第2交差導体部(交差導体部)
23…基準電位線
23b…第1導体部
23c…第2導体部
23d…交差導体部
31…半導体メサ
31b…第1半導体メサ
31c…第2半導体メサ
32…樹脂体
33,34,35…シリコン系無機絶縁膜
36…下側導体層
37…上側導体層
40…スローウェーブ線路
40A…第1スローウェーブ線路
40B…第2スローウェーブ線路
40C…第3スローウェーブ線路
41…第1下層導体(第1交差配線)
41b,41c…部分
42…第2下層導体(第2交差配線)
42b,42c…部分
43…第3下層導体
43b,43c…部分
50…スローウェーブ線路
51…下層導体
61…光変調器
70…スローウェーブ線路
70A…第1スローウェーブ線路
70B…第2スローウェーブ線路
70C…第3スローウェーブ線路
71…第1櫛歯部
72…第2櫛歯部
73…第3櫛歯部
74…第4櫛歯部
75…第5櫛歯部
76…第6櫛歯部
M…変調器部
P…屈曲部
SUB…基板