(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001545
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】セラミックコーティング方法及び同方法を用いたセラミック焼成用治具の製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 41/87 20060101AFI20231227BHJP
C04B 35/64 20060101ALI20231227BHJP
B28B 11/04 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
C04B41/87 P
C04B35/64
B28B11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100270
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】391028052
【氏名又は名称】共立エレックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114661
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 美洋
(72)【発明者】
【氏名】西山 研吾
(72)【発明者】
【氏名】光山 和磨
(72)【発明者】
【氏名】西山 祐吾
(72)【発明者】
【氏名】坂口 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】筒井 和也
(72)【発明者】
【氏名】江口 諒樹
【テーマコード(参考)】
4G055
【Fターム(参考)】
4G055AA08
4G055AC01
4G055BA35
4G055BA40
(57)【要約】
【課題】用途に応じて汎用性のあるセラミックコーティングしたセラミック基板を安価かつ容易に製造すること。
【解決手段】本発明では、セラミックコーティング方法及び同方法を用いてセラミック焼成用治具を製造する方法において、セラミック基板(2)の表面に印刷によってセラミックペーストを突起状に点在させ、セラミックペーストのレベリングによってセラミックペーストの上端を半球状に形成し、その後、セラミックペーストを焼成することによって、セラミック基板(2)の表面に複数の突起状のセラミック(突起4)をコーティングすることにした。また、前記セラミック基板(2)としてセラミックグリーンシートを用い、印刷したセラミックペーストを乾燥させて上端を半球状に硬化させた後に、セラミックグリーンシート及びセラミックペーストを同時に焼成することにした。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック基板の表面に印刷によってセラミックペーストを突起状に点在させ、セラミックペーストのレベリングによってセラミックペーストの上端を半球状に形成し、その後、セラミックペーストを焼成することによって、セラミック基板の表面に複数の突起状のセラミックをコーティングすることを特徴とするセラミックコーティング方法。
【請求項2】
前記セラミック基板としてセラミックグリーンシートを用い、印刷したセラミックペーストを乾燥させて上端を半球状に硬化させた後に、セラミックグリーンシート及びセラミックペーストを同時に焼成することを特徴とする請求項1に記載のセラミックコーティング方法。
【請求項3】
前記セラミック基板の表裏両面にセラミックペーストを突起状に印刷することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のセラミックコーティング方法。
【請求項4】
被焼成物を焼成する際にセッターとして使用するセラミック焼成用治具の製造方法において、
セラミック基板の表面に印刷によってセラミックペーストを突起状に点在させ、セラミックペーストのレベリングによってセラミックペーストの上端を半球状に形成し、その後、セラミックペーストを焼成することによって、セラミック基板の表面に複数の突起状のセラミックをコーティングしたセラミック焼成用治具を製造することを特徴とするセラミック焼成用治具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック基板の表面に複数の突起状のセラミックをコーティングするためのセラミックコーティング方法及び同方法を用いたセラミック焼成用治具の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、シート状(板状)に焼成されたセラミックスは、電子部品を実装するための回路基板や発光ダイオードから照射させる光を反射させるための反射板などの他に、被焼成物を焼成する際にセッターとして使用されるセラミック焼成用治具などに広く用いられている。
【0003】
従来のセラミック焼成用治具などにおいては、焼成時に被焼成物等から発生するガスを逃がすためなどを目的として、被焼成物に応じて焼成後のセラミック基板の表面の気孔率や表面粗さが好適となる素材や組成のセラミックグリーンシートを用いている(たとえば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記従来のセラミック焼成用治具などにおいては、被焼成物に応じて焼成後のセラミック基板の表面の気孔率や表面粗さが好適となる素材や組成のセラミックグリーンシートを用いているために、高価なセラミックグリーンシートを用いる必要があり、汎用性が無く、また、焼成後のセラミック基板の表面の気孔率や表面粗さだけでは、焼成時に被焼成物等から発生するガスを良好に逃がすことが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、請求項1に係る本発明では、セラミックコーティング方法において、セラミック基板の表面に印刷によってセラミックペーストを突起状に点在させ、セラミックペーストのレベリングによってセラミックペーストの上端を半球状に形成し、その後、セラミックペーストを焼成することによって、セラミック基板の表面に複数の突起状のセラミックをコーティングすることにした。
【0007】
また、請求項2に係る本発明では、前記請求項1に係る本発明において、前記セラミック基板としてセラミックグリーンシートを用い、印刷したセラミックペーストを乾燥させて上端を半球状に硬化させた後に、セラミックグリーンシート及びセラミックペーストを同時に焼成することにした。
【0008】
また、請求項3に係る本発明では、前記請求項1又は請求項2に係る本発明において、前記セラミック基板の表裏両面にセラミックペーストを突起状に印刷することにした。
【0009】
また、請求項4に係る本発明では、被焼成物を焼成する際にセッターとして使用するセラミック焼成用治具の製造方法において、セラミック基板の表面に印刷によってセラミックペーストを突起状に点在させ、セラミックペーストのレベリングによってセラミックペーストの上端を半球状に形成し、その後、セラミックペーストを焼成することによって、セラミック基板の表面に複数の突起状のセラミックをコーティングしたセラミック焼成用治具を製造することにした。
【発明の効果】
【0010】
そして、本発明では、以下に記載する効果を奏する。
【0011】
すなわち、本発明では、セラミックコーティング方法において、セラミック基板の表面に印刷によってセラミックペーストを突起状に点在させ、セラミックペーストのレベリングによってセラミックペーストの上端を半球状に形成し、その後、セラミックペーストを焼成することによって、セラミック基板の表面に複数の突起状のセラミックをコーティングすることにしているために、印刷によってセラミック基板の表面に様々なパターン(模様)の複数の突起状のセラミックを形成することができ、用途に応じて汎用性のあるセラミックコーティングしたセラミック基板を安価かつ容易に製造することができる。
【0012】
特に、前記セラミック基板としてセラミックグリーンシートを用い、印刷したセラミックペーストを乾燥させて上端を半球状に硬化させた後に、セラミックグリーンシート及びセラミックペーストを同時に焼成することにした場合には、焼成前のハンドリング(取扱い性)が良好となり、より一層、セラミックコーティングしたセラミック基板を安価かつ容易に製造することができる。
【0013】
また、前記セラミック基板の表裏両面にセラミックペーストを突起状に印刷することにした場合には、セラミック基板の表裏両面に様々なパターン(模様)の複数の突起状のセラミックを形成することができ、用途に応じて汎用性のあるセラミックコーティングしたセラミック基板を安価かつ容易に製造することができる。
【0014】
また、本発明では、被焼成物を焼成する際にセッターとして使用するセラミック焼成用治具の製造方法において、セラミック基板の表面に印刷によってセラミックペーストを突起状に点在させ、セラミックペーストのレベリングによってセラミックペーストの上端を半球状に形成し、その後、セラミックペーストを焼成することによって、セラミック基板の表面に複数の突起状のセラミックをコーティングしたセラミック焼成用治具を製造することにしているために、印刷によってセラミック基板の表面に様々なパターン(模様)の複数の突起状のセラミックを形成することができ、用途に応じて汎用性のあるセラミック焼成用治具を安価かつ容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】同部分拡大平面説明図(a)、同部分拡大A-A矢視断面説明図(b)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係るセラミックコーティング方法及び同方法を用いたセラミック焼成用治具の製造方法の具体的な構成について図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1に示すように、本発明に係るセラミック焼成用治具1は、被焼成物を焼成する際にセッターとして使用される治具であり、本発明に係るセラミックコーティング方法によってセラミック基板2の表面をセラミックでコーティングしたものである。
【0018】
ここでは、セラミック基板2として、焼成前のセラミックグリーンシートを用い、表面(上面)の所定領域(焼成時に被焼成物を載置するワーク領域3)にセラミックコーティングを施している。
【0019】
セラミックコーティングは、セラミック基板2の表面(ワーク領域3)にスクリーン印刷等の印刷によって所定のパターン(形状)でセラミックペーストを突起状に点在させる。
【0020】
印刷後に、セラミックペーストの粘性によってセラミック基板2の表面でセラミックペーストがレベリングされ、セラミックペーストの上端が半球状に形成される。なお、レベリングは、自然に施されるようにしてもよく、振動等で強制的に施してもよい。
【0021】
その後、印刷したセラミックペーストを乾燥させて、セラミック基板2の表面でセラミックペーストの上端を半球状に硬化させる。
【0022】
その後、セラミック基板2(セラミックグリーンシート)とセラミックペーストとを同時に所定温度で焼成する。
【0023】
これにより、セラミック基板2の表面に複数の突起状のセラミックをコーティングすることができ、
図2に示すように、セラミック基板2の表面に複数の上端が半球状のセラミックの突起4を形成したセラミック焼成用治具1を製造することができる。
【0024】
このようにして製造されたセラミック焼成用治具1では、セラミック基板2の表面に形成されたセラミックの突起4によって、焼成時に被焼成物等から発生するガスを良好に逃がすことができ、被焼成物の収縮を阻害することなく均等に収縮させることができ、被焼成物の全面をむらなく均一に焼成することができ、さらには、焼成後に被焼成物がセラミック焼成用治具1に付着することなく容易に離脱させることができるのでセラミック焼成用治具1の表面の剥離などが生ずることがなくセラミック焼成用治具1の長寿命化を図ることができる。
【0025】
上記セラミックコーティング方法においては、印刷に用いるスクリーン(孔版)によって突起状に点在させたセラミックペーストのパターン(形状)やサイズや高さなどを適宜設定することができる。
【0026】
セラミックペーストは、アルミナ99等のセラミック基板2と同一の素材及び組成のものを用いてもよく、ジルコニアやイットリア等のセラミック基板2とは異なる素材及び組成のものを用いてもよい。特に、セラミック焼成用治具1などにおいては、比較的安価な素材(たとえば、アルミナ等)のセラミック基板2を用いて、比較的高価なセラミック(たとえば、ジルコニア等)を突起状にコーティングすることができ、セラミック焼成用治具1などのコストを低減することができる。
【0027】
また、セラミックペーストは、レベリングによって上端が半球状の突起4が形成されればよく、セラミック基板2よりも粘性が高い粘度100~250Pasのものを用いるのが好ましい。なお、レベリング後の突起4の下端周辺部(裾野部分)が隣接する突起4の下端周辺部に接するようにしてセラミック基板2(ワーク領域3)の表面全体をセラミックでコーティングしてもよい。
【0028】
上記セラミックコーティング方法においては、セラミック基板2の表面だけにセラミックコーティングを施しているが、セラミック基板2の表裏両面にセラミックコーティングを施してもよく、その際に、グリーンシートの表面にセラミックペーストを印刷した後に、グリーンシートの裏面にセラミックペーストを印刷し、乾燥後にグリーンシートと表裏のセラミックペーストとを同時に焼成するようにしてもよい。
【0029】
特に、セラミック焼成用治具1においては、セラミック基板2の表裏両面に突起状のセラミックをコーティングすることで、被焼成物の焼成時にセラミック焼成用治具1の両面を使用することができ、セラミック焼成用治具1の寿命(使用回数)を伸ばすことができ、また、セラミック基板2の表裏の突起のパターンや高さやサイズなどを異ならせることで、被焼成物に応じてセラミック焼成用治具1の表裏を使い分けることができる。
【0030】
また、上記セラミックコーティング方法においては、セラミック基板2として焼成前のグリーンシートを用いてグリーンシートとセラミックペーストとを同時に焼成することで焼成工程が少なくなり製造コストを下げることができるが、これに限られず、焼成後のセラミック基板2に印刷を施してもよい。
【0031】
また、上記セラミックコーティング方法においては、表面(上面)の所定領域(ワーク領域3)にセラミックコーティングを施しているが、表面全面にセラミックコーティングを施してもよい。
【0032】
以上に説明したように、上記セラミックコーティング方法は、セラミック基板2の表面に印刷によってセラミックペーストを突起状に点在させ、セラミックペーストのレベリングによってセラミックペーストの上端を半球状に形成し、その後、セラミックペーストを焼成することによって、セラミック基板2の表面に複数の突起状のセラミック(突起4)をコーティングする構成となっている。
【0033】
そのため、上記構成のセラミックコーティング方法では、印刷によってセラミック基板2の表面に様々なパターン(模様)の複数の突起状のセラミックを形成することができ、用途に応じて汎用性のあるセラミックコーティングしたセラミック基板2を安価かつ容易に製造することができる。
【0034】
また、上記セラミックコーティング方法は、セラミック基板2としてセラミックグリーンシートを用い、印刷したセラミックペーストを乾燥させて上端を半球状に硬化させた後に、セラミックグリーンシート及びセラミックペーストを同時に焼成する構成となっている。
【0035】
そのため、上記構成のセラミックコーティング方法では、焼成前のハンドリング(取扱い性)が良好となり、より一層、セラミックコーティングしたセラミック基板2を安価かつ容易に製造することができる。
【0036】
また、上記セラミックコーティング方法は、セラミック基板2の表裏両面にセラミックペーストを突起状に印刷する構成となっている。
【0037】
そのため、上記構成のセラミックコーティング方法では、セラミック基板2の表裏両面に様々なパターン(模様)の複数の突起状のセラミック(突起4)を形成することができ、用途に応じて汎用性のあるセラミックコーティングしたセラミック基板2を安価かつ容易に製造することができる。
【0038】
さらに、上記セラミック焼成用治具1の製造方法は、セラミック基板2の表面に印刷によってセラミックペーストを突起状に点在させ、セラミックペーストのレベリングによってセラミックペーストの上端を半球状に形成し、その後、セラミックペーストを焼成することによって、セラミック基板2の表面に複数の突起状のセラミック(突起4)をコーティングしたセラミック焼成用治具1を製造する構成となっている。
【0039】
そのため、上記構成のセラミック焼成用治具1の製造方法では、印刷によってセラミック基板2の表面に様々なパターン(模様)の複数の突起状のセラミック(突起4)を形成することができ、用途に応じて汎用性のあるセラミック焼成用治具1を安価かつ容易に製造することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 セラミック焼成用治具
2 セラミック基板
3 ワーク領域
4 突起