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  • 特開-電源装置 図1
  • 特開-電源装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154500
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
H02M3/28 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068323
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】藤井 泰博
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA03
5H730AA15
5H730AS01
5H730BB42
5H730CC01
5H730EE02
5H730EE07
5H730EE19
5H730EE22
(57)【要約】
【課題】ロードスイッチを備えかつ低コスト化を実現可能な電源装置を提供する。
【解決手段】電源装置1は、トランスTの二次巻線t2に、当該二次巻線t2の誘起電圧に基づき発生した電流を制限する電流制限部(インダクタL1、ダイオードD1)とコンデンサC1を含む直列回路Xが並列に接続されている。直列回路Xにおいて、電流制限部は二次巻線t2の巻き始め側に位置し、コンデンサC1は二次巻線t2の巻き終わり側に位置している。電流制限部とコンデンサC2との中間点に、ダイオードD2が接続され、電流制限部を通ってコンデンサC1に蓄えられた電荷がダイオードD2を介してロードスイッチとして機能とするNPN型トランジスタQ1へ供給される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フライバック方式の電源装置において、
一次巻線および二次巻線を有するトランスと、
前記一次巻線に接続されたスイッチング回路と、
前記二次巻線に接続され、前記スイッチング回路のスイッチングにより前記二次巻線に発生した誘起電圧を直流化する直流化回路と、
前記直流化回路と負荷との間に介装された、NPN型トランジスタからなるロードスイッチと、
前記誘起電圧に基づき発生した電流を制限する電流制限部と、
前記電流制限部で制限された電流により充電される第1コンデンサと、
前記第1コンデンサに充電された充電電圧を前記ロードスイッチの制御端子に印加する電圧印加部と
を備えたことを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記電流制限部が前記二次巻線の巻き始め側に接続されるように前記電流制限部と前記第1コンデンサとからなる直列回路が前記二次巻線に並列に接続され、前記電流制限部と前記第1コンデンサとの接続点が前記電圧印加部を介して前記ロードスイッチの制御端子に接続されることを特徴とする請求項1記載の電源装置。
【請求項3】
前記電流制限部はインダクタと第1ダイオードを有し、前記第1ダイオードのアノード側が前記二次巻線の巻き始め側に接続されていることを特徴とする請求項2記載の電源装置。
【請求項4】
前記電圧印加部は第2ダイオードと第2コンデンサとを有し、前記第2ダイオードのアノードが前記第1コンデンサと前記電流制限部との接続点に接続され、前記第1コンデンサに充電された充電電圧が前記第2ダイオードを通じて前記第2コンデンサで平滑されて前記ロードスイッチの制御端子に印加されることを特徴とする請求項2記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NPN型トランジスタからなるロードスイッチを備えた電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の図4には、NPN型トランジスタである整流用MOS-FET(51)をロードスイッチとして用いた電源装置が開示されている。当該電源装置の動作の際に、主制御回路(8)内の駆動信号発生回路(10)から高電圧(H)レベルの主駆動信号(VG1)が出力されると、主MOS-FET(3)がオフからオンに切り換えられて、トランス(2)にエネルギが蓄積され、主MOS-FET(3)に流れる電流(IQ1)が直線的に増加する。一方、トランス(2)の2次巻線(2b)には、負極性の電圧が誘起されて、同期整流制御回路(52)内の極性検出用比較器(54)から図5に示す低電圧(L)レベルの同期制御信号(VSC)が出力され、パルス幅延長回路(55)内のRSフリップフロップ(65)のセット端子(S)に付与される。これと同時に、パルス幅延長回路(55)内の放電用MOS-FET(63)のゲートに低電圧(L)レベルの同期制御信号(VSC)が付与され、放電用MOS-FET(63)がオフに保持される。このとき、パルス幅延長回路(55)内のタイマ用コンデンサ(62)の電圧(VC5)は、駆動用電源(VCC2)から定電流回路(61)を通してタイマ用コンデンサ(62)に流れる一定の充電電流により、三角波発振回路(56)の三角波信号(VOS)の電圧よりも高い電圧に保持される。このため、変調用比較器(64)からRSフリップフロップ(65)のリセット端子(R)に高電圧(H)レベルのリセット信号(VCP4)が付与されて、RSフリップフロップ(65)がリセット状態に保持される。これにより、RSフリップフロップ(65)から整流用MOS-FET(51)のゲートに低電圧(L)レベルの同期駆動信号(VG2)が付与され、整流用MOS-FET(51)がオフに保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-312399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の図4に記載の電源装置においては、NPN型トランジスタである整流用MOS-FET(51)を駆動させるため、駆動用電源(VCC2)が設けられている。この場合、構成要素として駆動用電源(VCC2)となるため、コストアップが問題になり得る。また、特許文献1の図1に記載の電源装置でも、比較器(60)等を動作させるために、図示しない駆動用電源が必要となり、同様の問題が発生する。
【0005】
駆動用電源を設ける代わりに、トランスの2次巻線(2b)を巻き上げることで、整流用MOS-FET(51)の駆動用電圧を確保することも考えられる。しかしながら、2次巻線(2b)を巻き上げるためには、巻線を絡げるためのピンが必要となり、巻き上げる作業工程も追加される。したがって、この場合もコストアップを回避することは困難である。
【0006】
また、ロードスイッチとしてNPN型トランジスタではなくPNP型トランジスタを用いることで、駆動用電圧の確保を不要とし、コストアップを抑制することも考えられる。しかしながら、PNP型トランジスタは、NPN型トランジスタに比べて一般に部品コストが高いため、この場合もコストアップを回避することは困難である。
【0007】
本発明の目的は、ロードスイッチを備えかつ低コスト化を実現可能な電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電源装置は、フライバック方式の電源装置において、一次巻線および二次巻線を有するトランスと、前記一次巻線に接続されたスイッチング回路と、前記二次巻線に接続され、前記スイッチング回路のスイッチングにより前記二次巻線に発生した誘起電圧を直流化する直流化回路と、前記直流化回路と負荷の間に介装された、NPN型トランジスタからなるロードスイッチと、前記誘起電圧に基づき発生した電流を制限する電流制限部と、前記電流制限部で制限された電流により充電される第1コンデンサと、前記第1コンデンサに充電された充電電圧を前記ロードスイッチの制御端子に印加する電圧印加部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ロードスイッチとしてNPN型トランジスタを用いることで、ロードスイッチとしてPNP型トランジスタを用いる場合に比べ、コストアップを抑制できる。また、駆動用電源を設けたり、トランスの二次巻線をロードスイッチ用に巻き上げたりする必要がなく、駆動用電源を設けることや二次巻線を巻き上げることに伴うコストアップを抑制できる。したがって、本発明によれば、ロードスイッチを備えかつ低コスト化を実現可能な電源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る電源装置の構成を示す回路図である。
図2図1の電源装置の動作時における各部の電圧波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態に係る電源装置1は、図1に示すように、トランスTと、トランスTの一次側に設けられたフィルタ回路10、一次側整流平滑回路20およびスイッチング回路30と、トランスTの二次側に設けられた二次側整流平滑回路40、ロードスイッチ回路50および出力制御回路60とで構成された、フライバック方式のスイッチング電源装置である。
【0012】
フィルタ回路10は、入力端子に接続されている。入力端子には、商用交流系統等の交流電源(図示略)が接続される。フィルタ回路10は、入力端子に入力された交流電圧に重畳されるノイズを除去する。フィルタ回路10を介して入力された交流電圧は一次側整流平滑回路20により整流平滑され、整流平滑後の電圧がスイッチング回路30に入力される。スイッチング回路30は、トランスTの一次巻線t1に接続され、スイッチング回路30のスイッチング動作により、トランスTの二次巻線t2にスイッチングされた電圧を誘起する。二次巻線t2に誘起された電圧は、二次側整流平滑回路40(本発明の「直流化回路」に相当)により直流化(整流平滑)される。整流平滑後の電圧がロードスイッチ回路50を介して出力端子Out1に出力可能とされるととともに、出力端子Out2に出力される。出力端子Out1、Out2には、例えばモータ、AV機器、ポータブル機器等の負荷(図示略)が接続される。なお、スイッチング回路30は、出力電圧フィードバック回路(図示略)を通じて出力電圧の大きさに応じてスイッチング回路30(スイッチング回路30が備えるスイッチング素子)のスイッチング動作(オン/オフのタイミング)が制御される。
【0013】
ロードスイッチ回路50は、トランジスタQ1を備えている。出力制御回路60に入力される外部信号に応じてトランジスタQ1がオン/オフ制御されることで、出力端子Out1への電圧出力のオン/オフの切り替えが行われる。トランジスタQ1は、NPN型トランジスタであり、出力端子Out1に接続された負荷への電源供給のオン/オフ切り替えを行うロードスイッチとして機能する。トランジスタQ1の電流路は、二次側整流平滑回路40と出力端子Out1(負荷)との間に介装されている。トランジスタQ1は、NPN型FET(Nチャネル型FET)からなる。
【0014】
トランスTの二次巻線t2には、インダクタL1、ダイオードD1(本発明の「第1ダイオード」に相当)およびコンデンサC1(本発明の「第1コンデンサ」に相当)が直列接続された直列回路Xが並列に接続される。当該直列回路Xにおいて、インダクタL1およびダイオードD1は二次巻線t2の巻き始め側に位置し、コンデンサC1は二次巻線t2の巻き終わり側に位置している。インダクタL1とダイオードD1は、二次巻線t2の誘起電圧に基づき発生した電流を制限する、本発明の「電流制限部」として機能する。そして、電流制限部で制限された電流によりコンデンサC1が充電される。また、本実施形態では、インダクタL1がダイオードD1よりも二次巻線t2の巻き始め側に位置し、インダクタL1とコンデンサC1との間にダイオードD1が配置されている。インダクタL1およびダイオードD1の直列部と、コンデンサC1との中間点(本実施形態ではダイオードD1とコンデンサC1との接続点)とは、ダイオードD2のアノードに接続されている。
【0015】
インダクタL1は、一方端が二次巻線t2の巻き始め側に接続され、他方端がダイオードD1のアノードに接続されている。コンデンサC1は、一方端がダイオードD1のカソードに接続され、他方端が二次巻線t2の巻き終わり側に接続されるとともに二次側整流平滑回路40を構成するダイオードD3のアノードに接続されている。
【0016】
ダイオードD3は、二次巻線t2に直列に接続されており、二次巻線t2と出力端子Out2との間に設けられている。また、コンデンサC3がダイオードD3のカソードと二次巻線t2のグランド(巻き始め側)との間に接続されている。ダイオードD3とコンデンサC3とにより、二次側整流平滑回路40が構成される。二次側整流平滑回路40は、スイッチング回路30のスイッチングにより二次巻線t2に発生した誘起電圧を直流化する。
【0017】
ダイオードD2のカソードは、トランジスタQ1のゲート(制御端子)に接続されている。また、ダイオードD2のカソードとトランジスタQ1のゲートとを繋ぐ配線と、出力端子Out2に繋がる配線との間に、コンデンサC2(本発明の「第2コンデンサ」に相当)が接続されている。コンデンサC2は、ダイオードD2を介してトランジスタQ1のゲートに印加される電圧を平滑する。このように、ダイオードD2とコンデンサC2とが、コンデンサC1に充電された充電電圧をトランジスタQ1のゲートに印加する、本発明の「電圧印加部」として機能する。
【0018】
電源装置1は、インダクタL1およびダイオードD1を通ってコンデンサC1に蓄えられた電荷がダイオードD2を介してトランジスタQ1へ供給されるように構成されている。これにより、コンデンサC1の充電電圧がトランジスタQ1のゲートに安定して供給され、トランジスタQ1による、出力端子Out1に接続された負荷への電源供給のオン/オフ切り替えを確実に行うことができる。
【0019】
具体的には、NPN型のトランジスタQ1をロードスイッチとして用いる場合、出力端子Out1、Out2に接続された負荷への電圧供給に加え、トランジスタQ1を駆動させるための駆動用電圧を、トランジスタQ1に供給する必要がある。当該駆動用電圧を確保するため、駆動用電源を設けることや、二次巻線t2をロードスイッチ用に巻き上げることが考えられるが、これらの場合、コストアップが問題になり得る。この点、本実施形態では、駆動用電源を設けたり二次巻線t2をロードスイッチ用に巻き上げたりするのではなく、インダクタL1、ダイオードD1およびコンデンサC1を含む直列回路Xを設け、インダクタL1およびダイオードD1を通ってコンデンサC1に蓄えられた電荷がダイオードD2を介してトランジスタQ1へ供給されるように構成している。これにより、駆動用電源を設けたり二次巻線t2をロードスイッチ用に巻き上げたりしなくとも、トランジスタQ1の駆動用電圧が確保され、トランジスタQ1のロードスイッチとしての機能を十分に発揮させることができる。
【0020】
図2は、図1に示す電源装置1を動作させたときの各部の電圧波形を示す。波形W1は、ダイオードD2のアノードと、二次巻線t2のグランド(巻き始め側)間の電圧(すなわち、インダクタL1およびダイオードD1を通ってコンデンサ12に蓄えられた充電電圧)を示す。波形W2は、ダイオードD3のアノードと、二次巻線t2のグランド(巻き始め側)間の電圧(すなわち、二次巻線t2の両端の電圧)を示す。波形W3は、ダイオードD2のカソードと、二次巻線t2のグランド(巻き始め側)間の電圧(すなわち、トランジスタQ1のゲートへ供給される電圧)を示す。
【0021】
図2から、波形W1のようにコンデンサC1に蓄えられた電荷が、ダイオードD2により整流され、さらにコンデンサC2により平滑されて、波形W3のように安定した電圧がトランジスタQ1のゲートへ供給されることがわかる。
【0022】
本実施形態によれば、ロードスイッチとしてNPN型トランジスタを用いることで、ロードスイッチとしてPNP型トランジスタを用いる場合に比べ、コストアップを抑制できる。また、インダクタおよび第1ダイオードを通って第1コンデンサに蓄えられた電荷が第2ダイオードを介してロードスイッチへ供給されるように構成されているため、駆動用電源を設けたり、トランスの二次巻線をロードスイッチ用に巻き上げたりする必要がなく、駆動用電源を設けることや二次巻線を巻き上げることに伴うコストアップを抑制できる。したがって、本実施形態によれば、ロードスイッチを備えかつ低コスト化を実現可能な電源装置を提供することができる。
【0023】
<変形例>
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能である。
【0024】
上述の実施形態では、トランジスタQ1としてFETを例示したが、これに限定されない。例えば、トランジスタQ1はバイポーラトランジスタ等であってもよい。
【0025】
上述の実施形態では、インダクタL1がダイオードD1よりも二次巻線t2の巻き始め側に位置し、インダクタL1とコンデンサC1との間にダイオードD1が配置されているが、インダクタL1とダイオードD2との配置が逆であってもよい。すなわち、ダイオードD1がインダクタL1よりも二次巻線t2の巻き始め側に位置し、ダイオードD1とコンデンサC1との間にインダクタL1が配置されてもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 電源装置
C1 コンデンサ(第1コンデンサ)
C2 コンデンサ(第2コンデンサ、電圧印加部)
D1 ダイオード(第1ダイオード、電流制限部)
D2 ダイオード(第2ダイオード、電圧印加部)
D3 ダイオード(第3ダイオード、直流化回路)
L1 インダクタ(電流制限部)
Q1 トランジスタ(ロードスイッチ)
T トランス
t1 一次巻線
t2 二次巻線
X 直列回路
図1
図2