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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154505
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】化合物半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20241024BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20241024BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20241024BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
H01L29/78 652K
H01L29/78 652M
H01L29/78 652J
H01L29/78 653A
H01L29/78 658F
H01L29/78 652T
H01L29/78 655A
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068330
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲本 拓朗
(72)【発明者】
【氏名】高島 信也
(72)【発明者】
【氏名】上野 勝典
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ゲート電極として金属層を有する、信頼性の高い化合物半導体装置を提供する。
【解決手段】化合物半導体装置100は、半導体層20と、半導体層の上方に設けられたゲート絶縁膜39と、ゲート絶縁膜と接して設けられたゲート電極56と、ゲート電極の上方に設けられた層間絶縁膜38と、を備え、層間絶縁膜の厚さは、500nm以上、3μm以下である。ゲート電極は、ゲート絶縁膜と接して設けられた第1金属層57と、第1金属層上に設けられた第2金属層58と、を有し、第1金属層は、融点が1000℃以上の単一元素の金属膜である。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体層と、
前記半導体層の上方に設けられたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜と接して設けられたゲート電極と、
前記ゲート電極の上方に設けられた層間絶縁膜と、
を備え、
前記ゲート電極は、
前記ゲート絶縁膜と接して設けられた第1金属層と、
前記第1金属層上に設けられた第2金属層と、
を有し、
前記第1金属層は、融点が1000℃以上の単一元素の金属膜であり、
前記層間絶縁膜の厚さは、500nm以上、3μm以下である
化合物半導体装置。
【請求項2】
前記ゲート電極のシート抵抗は、0.1Ω/sq以上、5Ω/sq以下である
請求項1に記載の化合物半導体装置。
【請求項3】
前記ゲート電極の厚さは、2nm以上、200nm以下である
請求項1に記載の化合物半導体装置。
【請求項4】
前記第1金属層の材料は、Cu、Au、Mo、W、Co、Ni、Fe、Pt、Cr、Pd、Ta、またはTiの少なくとも1つを含む
請求項1に記載の化合物半導体装置。
【請求項5】
前記第1金属層の厚さは、2nm以上、200nm以下である
請求項1に記載の化合物半導体装置。
【請求項6】
前記第2金属層の体積抵抗率は、前記第1金属層の体積抵抗率よりも低い
請求項1に記載の化合物半導体装置。
【請求項7】
前記第2金属層の厚さは、前記第1金属層の厚さよりも大きい
請求項1に記載の化合物半導体装置。
【請求項8】
前記第2金属層の厚さは、2nm以上、200nm以下である
請求項1に記載の化合物半導体装置。
【請求項9】
前記第2金属層のシート抵抗は、0.1Ω/sq以上、5Ω/sq以下である
請求項1に記載の化合物半導体装置。
【請求項10】
前記第2金属層の体積抵抗率は、1E-8Ωcm以上、5E-7Ωcm以下である
請求項1に記載の化合物半導体装置。
【請求項11】
前記第2金属層の材料は、Ag、Cu、Au、Al、Moまたはそれらの合金の少なくとも1つを含む
請求項1に記載の化合物半導体装置。
【請求項12】
前記ゲート絶縁膜は、酸化シリコン膜である
請求項1に記載の化合物半導体装置。
【請求項13】
前記ゲート絶縁膜のSiO比率は、50%以上、100%以下である
請求項12に記載の化合物半導体装置。
【請求項14】
前記層間絶縁膜のコンタクトホールに設けられた上面側電極を備える
請求項1に記載の化合物半導体装置。
【請求項15】
前記コンタクトホールは、予め定められた幅の下側コンタクトホールと、前記下側コンタクトホールよりも幅が大きい上側コンタクトホールとを有し、
前記上面側電極は、
前記下側コンタクトホールに設けられた下側コンタクト部と、
前記下側コンタクト部上において、前記上側コンタクトホールに設けられた上側コンタクト部と、
を有する
請求項14に記載の化合物半導体装置。
【請求項16】
前記ゲート電極は、
前記第1金属層上に前記第2金属層が設けられた積層領域と、
前記第1金属層上に前記第2金属層が設けられていない非積層領域と、
を有する
請求項15に記載の化合物半導体装置。
【請求項17】
前記非積層領域の上方には、前記上側コンタクト部が設けられている
請求項16に記載の化合物半導体装置。
【請求項18】
前記半導体層の上面に設けられたゲートトレンチ部を備え、
前記ゲートトレンチ部は、ゲートトレンチと、前記ゲートトレンチの内壁に設けられた前記ゲート絶縁膜と、前記ゲートトレンチにおいて、前記ゲート絶縁膜に囲まれた領域に設けられた前記ゲート電極とを有する
請求項1に記載の化合物半導体装置。
【請求項19】
前記半導体層は、GaN、SiCまたはGaの少なくとも1つを含む
請求項1に記載の化合物半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バンドギャップの大きな化合物材料を使用した半導体装置が知られている(例えば、特許文献1および2参照)。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 国際公開第2009/019837号明細書
[特許文献1] 特開2018-170425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ゲート電極として金属層を有する、信頼性の高い化合物半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、半導体層と、前記半導体層の上方に設けられたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜と接して設けられたゲート電極と、前記ゲート電極の上方に設けられた層間絶縁膜と、を備え、前記ゲート電極は、前記ゲート絶縁膜と接して設けられた第1金属層と、前記第1金属層上に設けられた第2金属層と、を有し、前記第1金属層は、融点が1000℃以上の単一元素の金属膜であり、前記層間絶縁膜の厚さは、500nm以上、3μm以下である化合物半導体装置を提供する。
【0005】
前記ゲート電極のシート抵抗は、0.1Ω/sq以上、5Ω/sq以下であってよい。
【0006】
前記ゲート電極の厚さは、2nm以上、200nm以下であってよい。
【0007】
前記第1金属層の材料は、Cu、Au、Mo、W、Co、Ni、Fe、Pt、Cr、Pd、Ta、またはTiの少なくとも1つを含んでよい。
【0008】
前記第1金属層の厚さは、2nm以上、200nm以下であってよい。
【0009】
前記第2金属層の体積抵抗率は、前記第1金属層の体積抵抗率よりも低くてよい。
【0010】
前記第2金属層の厚さは、前記第1金属層の厚さよりも大きくてよい。
【0011】
前記第2金属層の厚さは、2nm以上、200nm以下であってよい。
【0012】
前記第2金属層のシート抵抗は、0.1Ω/sq以上、5Ω/sq以下であってよい。
【0013】
前記第2金属層の体積抵抗率は、1E-8Ωcm以上、5E-7Ωcm以下であってよい。
【0014】
前記第2金属層の材料は、Ag、Cu、Au、Al、Moまたはそれらの合金の少なくとも1つを含んでよい。
【0015】
前記ゲート絶縁膜は、酸化シリコン膜であってよい。
【0016】
前記ゲート絶縁膜のSiO比率は、50%以上、100%以下であってよい。
【0017】
化合物半導体装置は、前記層間絶縁膜のコンタクトホールに設けられた上面側電極を備えてよい。
【0018】
前記コンタクトホールは、予め定められた幅の下側コンタクトホールと、前記下側コンタクトホールよりも幅が大きい上側コンタクトホールとを有し、前記上面側電極は、前記下側コンタクトホールに設けられた下側コンタクト部と、前記下側コンタクト部上において、前記上側コンタクトホールに設けられた上側コンタクト部と、を有してよい。
【0019】
前記ゲート電極は、前記第1金属層上に前記第2金属層が設けられた積層領域と、前記第1金属層上に前記第2金属層が設けられていない非積層領域と、を有してよい。
【0020】
前記非積層領域の上方には、前記上側コンタクト部が設けられていてよい。
【0021】
化合物半導体装置は、前記半導体層の上面に設けられたゲートトレンチ部を備え、前記ゲートトレンチ部は、ゲートトレンチと、前記ゲートトレンチの内壁に設けられた前記ゲート絶縁膜と、前記ゲートトレンチにおいて、前記ゲート絶縁膜に囲まれた領域に設けられた前記ゲート電極とを有してよい。
【0022】
前記半導体層は、GaN、SiCまたはGaの少なくとも1つを含んでよい。
【0023】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A】実施例1に係る化合物半導体装置100の構成の一例を示す。
図1B図1Aに示すゲート電極56近傍の部分拡大図を示す。
図2A】実施例2に係る化合物半導体装置100の構成の一例を示す。
図2B図2Aに示すコンタクトホール61近傍の部分拡大図を示す。
図3】実施例3に係る化合物半導体装置100の構成の一例を示す。
図4A】実施例1に係る化合物半導体装置100の製造方法の一例を示す。
図4B】実施例1に係る化合物半導体装置100の製造方法の一例を示す。
図4C】実施例1に係る化合物半導体装置100の製造方法の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0026】
本明細書においては半導体基板の深さ方向と平行な方向における一方の側を「上」、他方の側を「下」と称する。基板、層またはその他の部材の2つの主面のうち、一方の面を上面、他方の面を下面と称する。「上」、「下」の方向は、重力方向または半導体装置の実装時における方向に限定されない。
【0027】
本明細書では、X軸、Y軸およびZ軸の直交座標軸を用いて技術的事項を説明する場合がある。直交座標軸は、構成要素の相対位置を特定するに過ぎず、特定の方向を限定するものではない。例えば、Z軸は地面に対する高さ方向を限定して示すものではない。なお、+Z軸方向と-Z軸方向とは互いに逆向きの方向である。正負を記載せず、Z軸方向と記載した場合、+Z軸および-Z軸に平行な方向を意味する。
【0028】
本明細書では、半導体基板の上面および下面に平行な直交軸をX軸およびY軸とする。また、半導体基板の上面および下面と垂直な軸をZ軸とする。本明細書では、Z軸の方向を深さ方向と称する場合がある。また、本明細書では、X軸およびY軸を含めて、半導体基板の上面および下面に平行な方向を、水平方向と称する場合がある。
【0029】
本明細書において「同一」または「等しい」のように称した場合、製造ばらつき等に起因する誤差を有する場合も含んでよい。当該誤差は、例えば10%以内である。
【0030】
本明細書においてP+型またはN+型と記載した場合、P型またはN型よりもドーピング濃度が高いことを意味し、P-型またはN-型と記載した場合、P型またはN型よりもドーピング濃度が低いことを意味する。また、本明細書においてP++型またはN++型と記載した場合には、P+型またはN+型よりもドーピング濃度が高いことを意味する。本明細書の単位系は、特に断りがなければSI単位系である。本明細書において第1導電型がN型であり、第2導電型がP型の例を説明するが、第1導電型がP型であり、第2導電型がN型であってもよい。
【0031】
ドナー、アクセプタまたはネット・ドーピングの濃度分布がピークを有する場合、当該ピーク値を当該領域におけるドナー、アクセプタまたはネット・ドーピングの濃度としてよい。ドナー、アクセプタまたはネット・ドーピングの濃度がほぼ均一な場合等においては、当該領域におけるドナー、アクセプタまたはネット・ドーピングの濃度の平均値をドナー、アクセプタまたはネット・ドーピングの濃度としてよい。
【0032】
図1Aは、実施例1に係る化合物半導体装置100の構成の一例を示す。化合物半導体装置100は、半導体層20を備える。半導体層20は、化合物半導体装置100が動作した場合に、コレクタ電流、ドレイン電流またはアノードカソード間電流等の主電流が流れる領域である。図1Aは、半導体層20の一部を通過するXZ面である。本明細書で上面視と称した場合、半導体層20の上面101側から見ることを意味している。
【0033】
本例の化合物半導体装置100は、半導体層20の上面101と下面102との間で主電流が流れる縦型のMOSFETであり、プレーナ型のDMOS構造を有する。化合物半導体装置100は、半導体層20の上面101と平行な方向に主電流が流れる横型デバイスであってもよい。
【0034】
本明細書では、半導体層20にMOSトランジスタが設けられた例を説明するが、半導体層20にはIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が設けられていてもよい。この場合、本明細書における「MOSトランジスタ」を「IGBT」に、「ソース」を「エミッタ」に、「ドレイン」を「コレクタ」に読み替えてよい。半導体層20にIGBTが設けられている場合、半導体基板10の下面102の少なくとも一部には、P型のコレクタ領域が形成されている。半導体層20には、MOSトランジスタまたはIGBTと逆並列に接続された還流ダイオード(FWD)が形成されてもよい。
【0035】
本例の半導体層20は、半導体基板10、ドリフト層18、ソース領域12、ジャンクション領域13、ベース領域14、コンタクト領域15、およびシールド領域19を有する。半導体層20の上面101は、ソース領域12、ジャンクション領域13、ベース領域14、およびコンタクト領域15の上面に対応し、下面102は半導体基板10の下面に対応する。
【0036】
半導体基板10は、GaN、SiCまたはGaの少なくとも1つを含む半導体材料で形成された基板である。本例の半導体基板10は、GaN基板である。半導体基板10は、HVPE等の気相成長法または液相成長法等の任意の方法を用いて設けられてよい。半導体基板10は、エピタキシャル成長されたGaN層を切り出したものであってもよい。これらの化合物を用いることにより、出力の大きい化合物半導体装置100を得ることができる。
【0037】
ドリフト層18は、半導体基板10上にエピタキシャル成長された層である。一例において、ドリフト層18は、N-型のGaN層である。ドリフト層18のドーピング濃度は、1E15cm-3以上、1E17cm-3以下である。本例のドリフト層18のドーピング濃度は、1E16cm-3である。ドリフト層18の厚さは、5μm以上、20μm以下である。本例のドリフト層18の厚さは、10μmである。なお、本明細書における厚さ、深さ、および高さは、半導体層20の深さ方向(Z軸方向)における距離をいい、幅は、半導体層20の上面101に平行な一方向(X軸方向)における距離をいう。
【0038】
ソース領域12は、半導体層20の上面101に設けられた第1導電型の領域である。一例において、ソース領域12はN+型である。ソース領域12のドーピング濃度は、1E19cm-3以上、1E20cm-3以下である。本例のソース領域12のドーピング濃度は、1E20cm-3である。本例のソース領域12は、ベース領域14にN型のドーパントをイオン注入することにより設けられる。N型のドーパントは、半導体層20がGaNである場合に、SiまたはGeであってよい。
【0039】
ベース領域14は、ソース領域12の下方に設けられた第2導電型の領域である。一例において、ベース領域14はP型である。ベース領域14は、ドリフト層18と同一材料の層に、P型のドーパントをイオン注入することにより設けられてよい。P型のドーパントは、半導体層20がGaNである場合に、Mgであってよい。ベース領域14のドーピング濃度は、1E16cm-3以上、1E18cm-3以下である。本例のベース領域14のドーピング濃度は、1E17cm-3である。
【0040】
ジャンクション領域13は、半導体層20の上面101に設けられた第1導電型の領域である。ジャンクション領域13のドーピング濃度は、ドリフト層18のドーピング濃度よりも高く、ソース領域12のドーピング濃度よりも低い。一例において、ジャンクション領域13はN型である。ジャンクション領域13のドーピング濃度は、1E16cm-3以上、1E18cm-3以下である。本例のジャンクション領域13のドーピング濃度は、1E17cm-3である。
【0041】
本例のジャンクション領域13は、ベース領域14を貫通して、ドリフト層18の上面まで延伸して設けられている。あるいは、ジャンクション領域13は、ドリフト層18の内部にまで延伸して設けられてもよい。ジャンクション領域13は、ベース領域14の上面側からN型のドーパントをイオン注入することにより形成される。
【0042】
コンタクト領域15は、半導体層20の上面101に設けられた第2導電型の領域である。コンタクト領域15のドーピング濃度は、ベース領域14のドーピング濃度よりも高い。一例において、コンタクト領域15はP+型である。コンタクト領域15のドーピング濃度は、1E18cm-3以上、1E20cm-3以下である。本例のコンタクト領域15のドーピング濃度は、1E19cm-3である。
【0043】
本例のコンタクト領域15は、ソース領域12を貫通して、ベース領域14の内部にまで延伸して設けられている。コンタクト領域15は、X軸方向において、予め定められた間隔で繰り返し配列されてよい。あるいは、コンタクト領域15は、Y軸方向において、予め定められた間隔で繰り返し配列されてよい。コンタクト領域15は、ベース領域14の上面側からP型のドーパントをイオン注入することにより形成される。
【0044】
シールド領域19は、ベース領域14の下方に設けられた第2導電型の領域である。本例のシールド領域19は、ベース領域14とドリフト層18との間に設けられている。シールド領域19のドーピング濃度は、ベース領域14のドーピング濃度よりも高い。シールド領域19のドーピング濃度は、コンタクト領域15のドーピング濃度と同じであってよい。一例において、シールド領域19は、P+型である。シールド領域19のドーピング濃度は、1E18cm-3以上、1E20cm-3以下である。本例のシールド領域19のドーピング濃度は、1E19cm-3である。シールド領域19を設けることにより、耐圧を向上させ、高電圧印加時の通電を防止する。
【0045】
本例の化合物半導体装置100は、層間絶縁膜38と、ゲート絶縁膜39と、ドレイン電極24と、ゲート電極56と、ソース電極60と、コンタクト電極65とをさらに備える。ゲート電極56、ソース電極60、およびコンタクト電極65は、上面側電極の一例である。
【0046】
層間絶縁膜38は、半導体層20の上面101の上方に設けられている。層間絶縁膜38は、ゲート電極56をソース電極60から絶縁する。層間絶縁膜38には、ソース電極60を半導体層20と接続するためのコンタクトホール61が設けられてよい。層間絶縁膜38は、SiOを主成分とする酸化膜であってよい。層間絶縁膜38は、リンが添加されたシリケートガラス(PSG)またはリンおよびボロンが添加されたシリケートガラス(PBSG)等の絶縁膜であってもよい。
【0047】
ゲート絶縁膜39は、ベース領域14、ソース領域12およびジャンクション領域13の上方に設けられている。ゲート絶縁膜39は、ベース領域14の上方に設けられたゲート電極56と、ベース領域14およびジャンクション領域13との電気的な短絡を防止する。ゲート絶縁膜39には、ソース電極60を半導体層20と接続するためのコンタクトホール61が設けられてよい。
【0048】
本例のゲート絶縁膜39は、SiOを主成分とする酸化膜である。ゲート絶縁膜39は、SiN等を主成分とする窒化膜であってもよい。ゲート絶縁膜39のSiO比率は、50%以上、100%以下であってよい。このような高いSiO比率により、ゲート絶縁膜39は、安定した特性を有する。
【0049】
ソース電極60は、半導体層20の上面101の上方に設けられ、ドレイン電極24は、半導体層20の下面102に設けられている。ソース電極60およびドレイン電極24は、アルミニウム等の金属で形成されてよい。ソース電極60は、ゲート絶縁膜39および層間絶縁膜38に設けられたコンタクトホール61を通って、ソース領域12と接続する。
【0050】
ゲート電極56は、ドリフト層18の上方に設けられている。ゲート電極56とドリフト層18の間にはゲート絶縁膜39が設けられている。ゲート電極56は、ソース領域12、ジャンクション領域13、およびこれらの間に挟まれたベース領域14の部分の上方に設けられている。ゲート電極56にゲート電圧が印加されることで、ベース領域14の当該部分の表層がN型に反転してチャネルが形成される。
【0051】
コンタクト電極65は、コンタクトホール61内において、コンタクト領域15と接して設けられている。コンタクト電極65は、コンタクトホール61を介してソース電極60と接している。コンタクト電極65およびソース電極60は、予め定められたソース電位に設定されている。コンタクト電極65の材料は、Ni、Pd、TiN、TiまたはAlの少なくとも1つを含んでよい。本例のコンタクト電極65の材料は、Niである。
【0052】
図1Bは、図1Aに示すゲート電極56近傍の部分拡大図を示す。本明細書において、隣接するコンタクトホール61間の距離をセルピッチと称する。セルピッチWcellは、5μm~10μmである。本例のセルピッチWcellは、6μmである。セルピッチWcellを低減することにより、化合物半導体装置100のオン電圧を低下させることができる。
【0053】
層間絶縁膜38の厚さTildは、500nm以上、3μm以下である。本例の層間絶縁膜38の厚さTildは、1μmである。ゲート電極56は、層間絶縁膜38により、ソース電極60から少なくとも300nm~500nm離間している。これにより、リークが防止される。ゲート絶縁膜39の厚さTgdは、50nm以上、200nm以下である。本例のゲート絶縁膜39の厚さTgdは、100nmである。
【0054】
層間絶縁膜38の厚さTildが増大すると、スイッチング速度が上昇する。一方で、コンタクトホール61の高さHcntは、層間絶縁膜38の厚さTildおよびゲート絶縁膜39の厚さTgdの和に等しい。層間絶縁膜38の厚さTildが増大すると、コンタクトホール61のアスペクト比、すなわち、コンタクトホール61の幅Wcntに対する高さHcntの比率が大きくなり、ソース電極60の埋め込みが難しくなるおそれがある。
【0055】
本例のゲート電極56は、ゲート絶縁膜39と接して設けられた第1金属層57と、第1金属層57上に設けられた第2金属層58とを有する積層構造を有する。
【0056】
第1金属層57は、単一元素の金属膜である。融点が1000℃以上、3500℃以下である。第1金属層57の材料は、Cu、Au、Mo、W、Co、Ni、Fe、Pt、Cr、Pd、Ta、またはTiの少なくとも1つを含む。本例の第1金属層57は、W(タングステン)である。第1金属層57の厚さTは、2nm以上、200nm以下であってよい。本例の第1金属層57の厚さTは、100nmである。
【0057】
第2金属層58の体積抵抗率は、1E-8Ωcm以上、5E-7Ωcm以下であり、第2金属層58のシート抵抗は、0.1Ω/sq以上、5Ω/sq以下である。第2金属層58の材料は、Ag、Cu、Au、Al、Moまたはそれらの合金の少なくとも1つを含む。本例の第2金属層58は、Al(アルミニウム)である。第2金属層58の体積抵抗率は、第1金属層57の体積抵抗率よりも低い。第2金属層58の厚さTは、2nm以上、200nm以下であってよい。本例の第2金属層58の厚さTは、100nmである。第2金属層58の厚さTは、第1金属層57の厚さTよりも大きくてよい。
【0058】
本例のゲート電極56のシート抵抗は、0.1Ω/sq以上、5Ω/sq以下である。これにより、化合物半導体装置100は高速動作をすることができる。また、本例のゲート電極56の厚さT+Tは、2nm以上、200nm以下である。
【0059】
従来の半導体装置では、高速スイッチングのために、層間絶縁膜の厚さを大きくする必要があった。しかしながら、プロセスの微細化、デバイスの特性向上が要求されるようになり、層間絶縁膜の厚さを低減することが要求されている。
【0060】
金属のゲート電極は、従来のポリシリコンのゲート電極と比較して抵抗が低く、厚さを低減することができる。しかしながら、金属のゲート電極を用いた場合、ゲート電極形成後の熱処理でゲート電極の金属成分が拡散し、ゲート電極に接して設けられたゲート絶縁膜に入り込んで閾値電圧を変動させるおそれがある。これに対し、本例のゲート電極56は、高融点の金属膜である第1金属層57をゲート絶縁膜39に接する下層として有している。そのため、本例のゲート電極56は熱処理を施しても安定であり、金属成分がゲート絶縁膜39に拡散するおそれがない。
【0061】
さらに、本例のゲート電極56は、抵抗の低い第2金属層58を上層として有しており、全体としての抵抗を低くしつつ、厚さも低減することができる。ゲート電極56の厚さが低減すると、層間絶縁膜38の厚さTildも低減する。これにより、コンタクトホール61のアスペクト比の増大が抑制され、セルピッチWcellの増大によるチップサイズの増大を抑制することができる。
【0062】
図2Aは、実施例2に係る化合物半導体装置100の構成の一例を示す。図2Bは、図2Aに示すコンタクトホール61近傍の部分拡大図を示す。ここでは、実施例1に係る化合物半導体装置100との相違点を中心に説明する。図2Aおよび図2Bにおいて、実施例1に係る化合物半導体装置100と共通する要素には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0063】
本例のコンタクトホール61は、予め定められた幅の下側コンタクトホール61Aと、下側コンタクトホール61Aよりも幅が大きい上側コンタクトホール61Bとを有する。すなわち、本例のコンタクトホール61は、階段状の形状を有する。コンタクトホール61の形状に対応して、層間絶縁膜38は、下側層間絶縁膜38Aと、下側層間絶縁膜38Aよりも幅が小さい上側層間絶縁膜38Bとを有する。
【0064】
本例のソース電極60は、下側コンタクトホール61Aに設けられた下側コンタクト部60Aと、下側コンタクト部60A上において、上側コンタクトホール61Bに設けられた上側コンタクト部60Bとを有する。上側コンタクト部60Bの幅は、下側コンタクト部60Aの幅よりも大きい。本例のコンタクト電極65は、下側コンタクトホール61Aにおいて、下側コンタクト部60Aに囲まれて設けられている。
【0065】
本例の第2金属層58の幅は、第1金属層57の幅よりも小さい。すなわち、本例のゲート電極56は、上に凸の階段状の形状を有する。本例のゲート電極56は、第1金属層57上に第2金属層58が設けられていない非積層領域56Aと、第1金属層57上に第2金属層58が設けられた積層領域56Bとを有する。非積層領域56Aの厚さは、積層領域56Bの厚さよりも小さい。積層領域56Bの上方には上側層間絶縁膜38Bが設けられ、非積層領域56Aの上方には下側層間絶縁膜38Aが設けられている。
【0066】
本例の非積層領域56Aの上方には、上側コンタクト部60Bが設けられている。このように、本例のゲート電極56は、厚さの小さい非積層領域56Aを有することにより、コンタクトホール61上側の間口を拡大し、ソース電極60のコンタクトホール61内への埋め込みを促進することができる。
【0067】
図3は、実施例3に係る化合物半導体装置100の構成の一例を示す。ここでは、実施例1に係る化合物半導体装置100との相違点を中心に説明する。図3において、実施例1に係る化合物半導体装置100と共通する要素には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0068】
本例の化合物半導体装置100は、半導体層20の上面101に設けられたゲートトレンチ部40を備える。ゲートトレンチ部40は、半導体層20の上面101からドリフト層18まで貫通して設けられたゲートトレンチを有する。ゲートトレンチは、半導体層20の上面101の上方に設けられたゲート電極56の下方に設けられている。本例の化合物半導体装置100は、ジャンクション領域13を有さなくてよい。
【0069】
本例のゲート絶縁膜39は、ゲートトレンチの内壁を覆ってさらに設けられている。本例のゲート電極56は、ゲートトレンチ内において、ゲート絶縁膜39に囲まれた領域にさらに設けられている。ゲートトレンチ内において、本例の第1金属層57は、ゲート絶縁膜39に接して設けられ、第2金属層58は、第1金属層57に囲まれた領域を充填して設けられている。ゲート電極56に所定のゲート電圧が印加されると、ゲート絶縁膜39に接するベース領域14の表層がN型に反転してチャネルが形成される。
【0070】
セルピッチWcellは、3μm~8μmである。本例のセルピッチWcellは、4μmである。本例の化合物半導体装置100は、ゲートトレンチ部40を有することによってセルピッチWcellをさらに低減し、化合物半導体装置100のオン電圧をさらに低下させることができる。
【0071】
図4A図4B、および図4Cは、実施例1に係る化合物半導体装置100の製造方法の一例を示す。実施例2および実施例3に係る化合物半導体装置100の製造方法は、大部分の工程が実施例1に係る化合物半導体装置100の製造方法と共通するので、ここでは説明を省略し、実施例1に係る化合物半導体装置100の製造方法と相違する工程についてのみ言及する。
【0072】
まず段階S101において、半導体基板10の上面にドリフト層18を形成する。ドリフト層18はエピタキシャル成長により形成してよい。また、ドリフト層18の上面にソース領域12、ジャンクション領域13、ベース領域14、コンタクト領域15、およびシールド領域19を形成する。一例として、これらの領域は、シールド領域19、ベース領域14、ジャンクション領域13、ソース領域12、コンタクト領域15の順に、イオン注入により形成する。イオン注入された領域に熱処理を施して活性化することにより、半導体層20が形成される。あるいは、これらの領域は、エピタキシャル成長により形成してもよい。
【0073】
なお、実施例3の場合は、半導体層20の形成後に、ゲートトレンチをエッチングで形成してよい。この場合、段階S101において、ジャンクション領域13は形成しなくてよい。
【0074】
次に段階S102において、半導体層20の上面101にゲート絶縁膜39を形成する。ゲート絶縁膜39は、例えば原子層堆積法(ALD)または化学気相成長法(CVD)等により形成してよい。
【0075】
次に段階S103において、ゲート絶縁膜39の上面に第1金属層57および第2金属層58を形成する。第1金属層57および第2金属層58は、例えば化学気相成長法(CVD)等により形成してよい。例えば、第1金属層57は100nm厚のW膜、第2金属層58は100nm厚のAl膜である。
【0076】
次に、段階S104において、第1金属層57および第2金属層58をパターニングする。さらに、ゲート絶縁膜39をパターニングする。パターニングは、ドライエッチングで行われてよい。なお、実施例2の場合は、第1金属層57および第2金属層58がそれぞれ所定の幅となるようにパターニングしてよい。
【0077】
次に、段階S105において、層間絶縁膜38を形成し、層間絶縁膜38にコンタクトホール61を形成する。層間絶縁膜38は例えば化学気相成長法(CVD)等により形成してよい。コンタクトホール61は、ウェットエッチングまたはドライエッチングで形成する。
【0078】
次に、段階S106において、コンタクト電極65を形成する。例えば、コンタクト電極65は、50nm厚のNi膜である。コンタクト電極65は、ウェットエッチングでパターニングされてよい。
【0079】
次に、段階S107において、ソース電極60を形成する。ソース電極60は、蒸着法等により形成してよい。例えば、ソース電極60は、100/5000nm厚のTi/Al膜である。ソース電極60は、ウェットエッチングでパターニングされてよい。
【0080】
次に、段階S108において、ドレイン電極24を形成する。例えば、ドレイン電極24は、100/200nm厚のTi/Al膜である。この後、窒素雰囲気中での焼結工程を経て、化合物半導体装置100を製造できる。
【0081】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0082】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0083】
10・・・半導体基板、12・・・ソース領域、13・・・ジャンクション領域、14・・・ベース領域、15・・・コンタクト領域、18・・・ドリフト層、19・・・シールド領域、20・・・半導体層、24・・・ドレイン電極、38・・・層間絶縁膜、39・・・ゲート絶縁膜、40・・・ゲートトレンチ部、56・・・ゲート電極、57・・・第1金属層、58・・・第2金属層、60・・・ソース電極、61・・・コンタクトホール、65・・・コンタクト電極、100・・・化合物半導体装置、101・・・上面、102・・・下面
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C