(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154510
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】情報処理方法、プログラム、情報処理システム
(51)【国際特許分類】
G16H 50/20 20180101AFI20241024BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20241024BHJP
【FI】
G16H50/20
G06Q50/10
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068337
(22)【出願日】2023-04-19
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】522000762
【氏名又は名称】株式会社AiCAN
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼岡 昂太
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
5L099
【Fターム(参考)】
5L049CC11
5L050CC11
5L099AA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】基準数理モデルを用いて、身長や体重を含む発育関連パラメータを求める情報処理方法、プログラム及び情報処理システムを提供する。
【解決手段】利用者が操作する利用者端末と、当該利用者端末とネットワークを介して接続されるサーバと、で構成される情報処理システムにおいて、情報処理装置により実行される情報処理方法は、対象者の基本情報の登録を受け付ける基本情報登録ステップと、対象者の身長または体重の少なくとも何れか一方の測定値を含む測定値情報を登録する測定値情報登録ステップと、当該測定値情報に紐づく出生からの経過期間情報と、を少なくとも含む入力情報に対して基準数理モデルをフィッティングさせるフィッティング処理ステップと、前記フィッティング処理により得られる結果関数に含まれる一以上の発育関連パラメータを含む結果情報を出力する結果情報出力ステップと、を含む。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置により実行される情報処理方法であって、
対象者の身長または体重の少なくとも何れか一方の測定値を含む測定値情報と、当該測定値情報に紐づく出生からの経過期間情報と、を少なくとも含む入力情報に対して基準数理モデルをフィッティングさせるフィッティングステップと、
前記フィッティングにより得られる結果関数に含まれる一以上の発育関連パラメータを含む結果情報を出力する結果出力ステップを含む、
情報処理方法。
【請求項2】
前記発育関連パラメータは、出生時の身長または体重の少なくとも何れか一方の予測値を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記発育関連パラメータは、将来の所定のタイミングにおける身長または体重の少なくとも何れか一方の予測値を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記発育関連パラメータは、下記(1)~(18)の少なくともいずれかを含む、請求項1に記載の方法。
(1)出生時の成長速度、
(2)成長初速度の減衰率、
(3)基本成長速度、
(4)後期発育の発育速度上限値、
(5)後期発育の発育速度抑制量、
(6)後期発育の開始時期に関する情報、
(7)後期発育の亢進および抑制の速度に関する情報
(8)後期発育抑制開始時期の情報
(9)後期発育の進行率
(10)後期発育の抑制進行率、
(11)後期発育の加速度が最大となる時期、
(12)後期発育の減速度が最大となる時期、
(13)後期発育の進行から抑制までの時間差、
(14)後期発育の亢進速度を抑制速度が上回った時間、
(15)後期発育において最も成長速度が高い時期、
(16)後期発育の期間、
(17)後期成長の進行率に関する情報、
(18)個人要因、環境要因、介入要因の少なくともいずれかによる影響の大きさに関する情報
【請求項5】
情報処理装置において、
対象者の身長または体重の少なくとも何れか一方の測定値を含む測定値情報と、当該測定値情報に紐づく出生からの経過期間情報と、を少なくとも含む入力情報に対して基準数理モデルをフィッティングさせるフィッティングステップと、
前記フィッティングにより得られる結果関数に含まれる一以上の発育関連パラメータを含む結果情報を出力する結果出力ステップと、を含む情報処理方法を実行させるプログラム。
【請求項6】
制御部を有する情報処理装置であって、
前記制御部は、
対象者の身長または体重の少なくとも何れか一方の測定値を含む測定値情報と、当該測定値情報に紐づく出生からの経過期間情報と、を少なくとも含む入力情報に対して基準数理モデルをフィッティングさせるフィッティング部と、
前記フィッティングにより得られる結果関数に含まれる一以上の発育関連パラメータを含む結果情報を出力する結果出力部を備える、
情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理方法、プログラム、情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からヒトの発育評価は、例えば子どもであれば、小児医療、母子保健や学校保健、児童福祉、その他の様々な領域で取り扱われているものの、その一般的な方法は「標準身長・標準体重からの偏差(どれぐらい平均から外れているか)」を評価するにとどまることが多い。
【0003】
このような背景の中で、発育評価のための技術として、例えば、特許文献1において、複数の発育パターンを事前に登録しておき、子どもの発育状況データを分析して該当する発育パターンを決定して、決定した発育パターンに基づき体重等を予測する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されるように発育パターンを事前に記憶させておく手法には限界があり、精緻な評価を行うには大量の発育パターンを準備する必要が生じる。そして、より的確な発育評価を実現するためには、ある時点における身長や体重の予測や、発育状態の詳細を評価する指標の開発が求められている。
【0006】
そこで、本発明は、特に、基準数理モデルを用いて身長や体重を含む発育関連パラメータを求めることができる方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様における、情報処理装置により実行される情報処理方法であって、対象者の身長または体重の少なくとも何れか一方の測定値を含む測定値情報と、当該測定値情報に紐づく出生からの経過期間情報と、を少なくとも含む入力情報に対して基準数理モデルをフィッティングさせるフィッティングステップと、前記フィッティングにより得られる結果関数に含まれる一以上の発育関連パラメータを含む結果情報を出力する結果出力ステップを含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、特に、基準数理モデルを用いた新たな手法により、身長や体重を含む発育関連パラメータを求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る、情報処理システムを示すブロック構成図である。
【
図2】
図1のサーバ100を示す機能ブロック構成図である。
【
図4】
図1の利用者端末200を示す機能ブロック構成図である。
【
図5】サーバ100に格納される対象者データの一例を示す図である。
【
図6】サーバ100に格納される利用者データの一例を示す図である。
【
図7】本発明の第一実施形態に係る、情報処理方法に係るフローチャートの一例である。
【
図8】本発明の第一実施形態に係る、情報処理方法に係るフローチャートの他の一例である。
【
図9】利用者端末に表示される、アプリケーションの結果情報の出力のための画面例を示す図である。
【
図10】利用者端末に表示される、アプリケーションの結果情報の出力のための他の画面例を示す図である。
【
図11】利用者端末に表示される、アプリケーションの結果情報の出力のための他の画面例を示す図である。
【
図12】利用者端末に表示される、アプリケーションの結果情報の出力のための他の画面例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本開示の内容を不当に限定するものではない。また、実施形態に示される構成要素のすべてが、本開示の必須の構成要素であるとは限らない。そして、各実施形態で示される特徴は、互いに矛盾しない限り他の実施形態にも適用可能である。
【0011】
(実施形態1)
<構成>
図1は、本発明の第一実施形態に係る情報処理システムを示すブロック構成図である。本システム1は、本システム1を利用する利用者が操作する利用者端末200と、当該利用者端末200とネットワークNWを介して接続されるサーバ100と、により構成される。なお、本実施形態においては、利用者が利用者端末200を利用して、サーバ100に対する操作を行う構成として説明するが、サーバ100がスタンドアローンで構成され、サーバ100自身に、利用者が操作を行う機能を備えてもよい。
【0012】
サーバ100と、利用者端末200とは、ネットワークNWを介して接続される。ネットワークNWは、例えば、インターネット、イントラネット、無線LAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)等により構成される。
【0013】
サーバ100は、利用者端末200から登録された対象者(利用者を含む)に関する情報を管理し、登録された情報に基づいて、利用者端末200に対して、基準数理モデルを用いて対象者に関する発育関連パラメータを含む結果情報を出力する機能を少なくとも有するアプリケーションを提供する情報処理装置であり、例えば、ワークステーションやパーソナルコンピュータのような汎用コンピュータとしてもよいし、或いはクラウド・コンピューティングによって論理的に実現されてもよい。なお、本実施形態においては、説明の便宜上サーバとして1台を例示しているが、これに限定されず、複数台であってもよく、認証サーバやデータベースサーバなど役割の異なるサーバを有していてもよい。
【0014】
利用者端末200は、サーバ100により提供されるアプリケーションを利用する利用者が所有する、例えば、パーソナルコンピュータやタブレット端末等の情報処理装置であるが、スマートフォンや携帯電話、PDA等により構成してもよい。なお、本実施形態においては、説明の便宜上利用者端末として1台を例示しているが、これに限定されず、複数台であってもよい。
【0015】
図2は、
図1のサーバ100の機能ブロック構成図である。サーバ100は、通信部110と、記憶部120と、制御部130とを備える。
【0016】
通信部110は、ネットワークNWを介して利用者端末200と通信を行うための通信インターフェースであり、例えばTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)、閉域ネットワーク等の通信規約により通信が行われる。
【0017】
記憶部120は、各種制御処理や制御部130内の各機能を実行するためのプログラム、入力データ等を記憶するものであり、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等から構成される。また、記憶部120は、対象者に関連する各種データを格納する、対象者データ格納部121、数理モデルに関連する各種データを格納する、数理モデルデータ格納部122、利用者に関連する各種データを格納する、利用者データ格納部123等を有する。さらに、記憶部120は、利用者端末200と通信を行ったデータを一時的に記憶することもできる。なお、記憶部120に記憶される各種データは、記憶部120に代えて、または、加えて、サーバ100外に構築されるデータベース(図示せず)に格納されてもよい。また、記憶部120の各種格納部は例示であって、これらの様態に限定されるものではない。
【0018】
制御部130は、記憶部120に記憶されているプログラムを実行することにより、サーバ100の全体の動作を制御するものであり、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等から構成される。制御部130の機能として、受付部131と、データ管理部132と、フィッティング部133と、結果出力部134等を有する。この受付部131、データ管理部132、フィッティング部133、結果出力部134は、記憶部120に記憶されているプログラムにより起動されてコンピュータ(電子計算機)であるサーバ100により実行される。
【0019】
受付部131は、サーバ100が提供し、利用者端末200において、ウェブブラウザまたはアプリケーションを介して表示される画面等のユーザインターフェースを介して、利用者が、所定の入力を行ったとき、利用者端末200から通信部110を介して指示や各種情報を受け付ける。
【0020】
データ管理部132は、利用者に関連する各種対象者データ(発育関連パラメータなどの結果データを含む)や数理モデルデータ、利用者データなどの各種データを管理し、対応するデータ格納部への登録や読み出しなどの所定の処理を行う。
【0021】
フィッティング部133は、対象者の身長または体重の少なくとも何れか一方の測定値を含む測定値情報と、当該測定値情報に紐づく出生からの経過期間情報と、を少なくとも含む入力情報に対して基準数理モデルをフィッティングさせる。入力情報は、例えば、対象者が子どもである場合には、月齢6ヶ月(経過期間情報)で身長が65cm(測定値情報)や、7歳2ヶ月(経過期間情報)で身長が110cm(測定値情報)などの情報であり得る。
【0022】
測定値情報は、対象者の身長または体重の少なくとも何れか一方の測定値を含むものであって、例えば、対象者の身長のみ、対象者の体重のみ、対象者の身長及び体重のみであってもよい。また、測定値は、身長、体重に限定されるものではなく、その他の測定値を含んでいてもよい。
【0023】
経過期間情報は、出生から各測定値の測定時までの期間を示す情報であって、時間単位、日数単位、月単位、年単位などいずれの単位で表現されていてもよい。経過期間情報は、測定値情報に紐づけて記憶され、出生から当該測定値情報に対応する測定を実施したタイミングまでの期間を示す情報であり得る。
【0024】
なお、使用するデータ(情報)は、出生からの経過時間に対応した対象者の身長または体重の測定値である必要があるが、一人の対象者(例えば、子ども)のみであってもよく、性別や国籍、疾病や児童虐待の有無などの特徴に基づいて分けられた特定の集団のデータであってもよい。また、対象者の身長または体重に関する測定時期の単位は、年齢や月齢、出生からの経過日数などを問わず、出生から0秒以上経過し、満20歳ごろまでに測定された情報であって、正の値を持っていれば、測定時の年齢や測定回数、およびそれらの組み合わせの在り方に制限はない。加えて、測定される身長または体重の単位は問わない。
【0025】
基準数理モデルは、身長または体重の発育を表す成長曲線モデルを示す関数(f(t))である。本実施の形態においては、一例として、身長または体重の発育速度を表す関数(f’(t))を積分することで、成長曲線モデルを示す関数(f(t))を求めるが、これに限定されるものではない。以下、一例を示す。
【0026】
まず、対象者の身長または体重の発育速度を表す関数(f’(t))については、前期成長速度を表す関数(g(t))と後期成長速度を表す関数(h(t))の合成関数により表現できる。すなわち、下記式1のとおりに表現できる。ここで、プライム記号(’)は一階微分を示す。また、tは子どもの出生からの経過時間(年齢や月齢などの単位を問わない)を示す。なお、後期発育の仮定されない低年齢帯の子どものデータを用いて、パラメータの推定を実施する場合には、下記式1より後期発育に関する関数h(t)を除いた数理モデルを用いるなど、簡略化してもよい。
【0027】
【0028】
次に、前期成長速度を表す関数(g(t))の一例について示す。
【0029】
前期成長速度を表す関数g(t)は、出生直後の基本成長速度を表す項と、初期成長速度を表す項から構成される。基本成長速度を定数で例示し、初期成長速度を指数関数で例示した場合、前期成長速度を表す関数g(t)は次のとおりに表現できる。
【0030】
【0031】
ここで、aは定数で与えた場合の基本成長速度であり、ωktが指数関数で記述した場合の初期成長速度の一例である。ωは出生時の成長初速度、kは成長初速度の減衰係数を示す。なお、基本成長速度は定数で与えずともよく、時間(t)の関数であってもよい。また、初期成長速度は指数関数で記述せずともよく、時間経過に対して減少傾向を持つ、なめらかな関数であれば、例えば次のように双曲関数で記述してもよい。
【0032】
【0033】
次に、後期成長速度を表す関数(h(t))の一例について示す。
【0034】
後期成長速度を表す関数h(t)は、第二次性徴に伴う身長または体重の成長、いわゆる成長期に加算される成長速度を表す関数であり、後期成長の進行率i(t)と抑制率j(t)を表す関数から次のとおりに表現できる。
【0035】
【0036】
ここで、uは後期成長速度の上限値である。後期成長の進行率i(t)を表す関数をシグモイド関数で示した場合、次のように記述してもよい。
【0037】
【0038】
また、後期成長の抑制率j(t)を表す関数をシグモイド関数で示した場合、次のように記述してもよい。
【0039】
【0040】
ここで、αは後期成長の開始時期に関する情報を持ったパラメータであり、βは後期成長の進行速度に関する情報を持ったパラメータである。δは、後期成長の開始から抑制が生じるまでの期間(時間差)に関するパラメータである。なお、式5および式6に示した後期成長の進行率と抑制率を表す関数は、シグモイド関数の形式でなくともよく、他の、なめらかな正規化関数を用いてもよい。
【0041】
式2から式6までに例示した対象者の身長または体重の発育速度を表す関数f’(t)について、上述のとおり、基本成長速度を定数aとし、初期成長速度を指数関数で記述し、後期成長の進行率関数と抑制率関数をシグモイド関数で記述した場合、対象者の身長または体重の、出生からの時間経過に伴う増減傾向を示す関数f(t)(いわゆる成長曲線)は、f’(t)を積分した次式で表現される。
【0042】
【0043】
ここで、Cは積分定数である。また、出生時点(t=0)において、後期発育の影響は想定し難い。すなわち、e(-α)≪1であり、e(-(α+δ))≪1と仮定される。よって、当該仮定のもとで、上述のように、基本成長速度を定数aとし、初期成長速度を指数関数で記述し、後期成長の進行率関数と抑制率関数をシグモイド関数で記述した場合、式6より、少なくともt=0の時点において、後期成長に関する次の二つの項は0に近似する。
【0044】
【0045】
式7および式8より、出生時点(t=0)での対象者の身長または体重をΦとしたとき、上述のように基本成長速度を定数aとし、初期成長速度を指数関数で記述し、後期成長の進行率関数と抑制率関数をシグモイド関数で記述した場合における積分定数Cは、Φを用いて次のように近似してもよい。
【0046】
【0047】
なお、式7に示した関数f(t)は、月齢や年齢などの測定時期(経過期間)が離散的な区分で得られた場合、成長速度曲線f’(t)を用いて次のように近似してもよい。
【0048】
【0049】
また、対象者の身長または体重の発育速度を表す関数f’(t)は、それを微分することで、対象者の身長または体重の発育加速度を表す関数f''(t)に変換することもできる。上述のとおり、基本成長速度を定数aとし、初期成長速度を指数関数で記述し、後期成長の進行率関数と抑制率関数をシグモイド関数で記述した場合、子どもの身長または体重の発育加速度を表す関数f''(t)は次の通りとなる。
【0050】
【0051】
このような、身長または体重の発育を表す成長曲線モデルを示す関数(f(t))である基準数理モデルを、フィッティング部133により、対象者の身長または体重の少なくとも何れか一方の測定値を含む測定値情報と、当該測定値情報に紐づく出生からの経過期間情報と、を少なくとも含む入力情報に対してフィッティングさせる。
【0052】
なお、データからパラメータを推定する方法(すなわち、フィッティングの手法)については特段制約がなく、理論的あるいは実用的に適切な解が求まるのであれば、任意の目的関数に対して、それを最適化する任意の方法を用いてよい。例えば、マルコフ連鎖モンテカルロ法やハミルトニアンモンテカルロ法などを用いたベイズ推定法、非線形最小二乗法、変分推論、EMアルゴリズム、最尤推定法・MAP推定法などであり得る。フィッティングの適用方法についても、個人ごとに基準数理モデルをフィッティングさせてパラメータの推定と発育予測を行う方法に限らず、集団の単位でモデルをフィッティングさせて集団全体のパラメータの推定と発育予測を行う方法、個人と集団のパラメータを同時に推定し発育予測を行う方法(階層モデルと呼ばれる)など、目的に応じていずれの方法でも選択することができる。
【0053】
また、対象者の身長または体重のデータを用いて各種パラメータを推定する際には、確率分布を用いた次のような統計モデルでそれを実施してもよい。
【0054】
【0055】
ここで、Ytは、出生からの経過時間t時点における身長または体重の測定値(Y)であり、f(t)を平均とし、σを標準偏差とする正規分布に従うことが示されている。なお、仮定する確率分布は正規分布でなくともよく、他の確率分布を仮定してもよい。例えばガンマ分布を用いた場合は次のようになる。
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
このとき、確率分布の分散を規定するパラメータ(ここではσ)は、月齢や年齢など、出生からの経過時間に依存して変化することを仮定してもよい。
【0060】
結果出力部134は、フィッティング部133のフィッティングにより得られる結果関数に含まれる一以上の発育関連パラメータを含む結果情報を出力する。
【0061】
すなわち、上述のとおり、フィッティング部133により基準数理モデルをフィッティングすることにより得られた結果関数f(t)に基づき式1~式11から一以上の発育関連パラメータを抽出し、結果出力部134は、抽出した発育関連パラメータを含む結果情報を出力する。
【0062】
より具体的には、対象者の身長と体重の発育に関する発育関連パラメータは、式1~式11等を鑑み、例えば、(1)出生時の身長または体重の予測値およびその近似値、(2)出生時の成長初速度、(3)成長初速度の減衰率、(4)基本成長速度、(5)後期発育の発育速度上限値、(6)後期発育の発育速度抑制量、(7)後期発育の開始時間に関する情報、(8)後期発育の亢進および抑制の速度に関する情報、(9)後期発育抑制開始時期の情報、(10)後期発育の進行率、(11)後期発育の抑制進行率、(12)後期発育の加速度が最大となる時期、(13)後期発育の減速度が最大となる時期、(14)後期発育の進行から抑制までの時間差、(15)後期発育の亢進速度を抑制速度が上回った時間、(16)後期発育において最も成長速度が高い時期、(17)後期発育の期間、(18)後期成長の進行率に関する情報、(19)個人要因、環境要因、介入要因等による影響の大きさに関する情報、などを抽出してもよい。
図3に、発育関連パラメータを例示する。
【0063】
また、結果出力部134は、データから推定したパラメータと確率分布を用いて、対象者の身長または体重が測定された時点、または、測定がなされていない時点の推測情報を得る場合、推定平均値や推定最頻値などの代表値に加え、誤差の範囲等を表す区間情報を結果情報として出力してもよい。また、結果出力部134は、データから推定した値でなくとも、パラメータに仮想的な任意の値を所与して、対象者の身長または体重が測定された時点、または、測定がなされていない時点におけるシミュレーション情報(推定平均値や推定最頻値などの代表値および区間情報を含む)を結果情報として出力してもよい。さらに、結果出力部134は、これら身長と体重の予測値を用いて、例えば推定BMIのような合成指標(及び、その推定区間)を算出して結果情報として出力してもよい。
【0064】
また、結果出力部134は、これに加えて、予測を実施する単位は、子ども一人ひとりの個人の単位であってもよく、対象とする集団全体に対してであってもよい。より具体的には、結果出力部134は、例えば、国単位の群、日本国外・国内の地域単位の群、性別単位(対象者の自己申告によりトランスジェンダーを区別してもよい)の群、疾病種類単位(健常者含む)の群、児童虐待の経験者群、組織単位(企業・学校など)の群、シングルマザー・シングルファザー単位の各群または合算による群、対象者が参加しているスポーツの種別単位の群、などといったような対象者に関する対象者情報に基づく所定の属性単位に形成された集団(または任意に利用者に選択された集団)における複数の測定値に対して近似的に基準数理モデルをフィッティングしたり、当該集団における複数の測定値の集計値(代表値、平均値、最頻値、最高値、最低値などの所定の集計により導き出される値)に対して基準数理モデルをフィッティングしたりなどにより得られる結果関数から当該集団における一以上の発育関連パラメータを抽出してもよい。そして、このように所定の集団における一以上の発育関連パラメータが抽出され、記憶部120に記憶される場合には、結果出力部134は、対象者に関する測定値がない場合、上述の所定の集団における一以上の発育関連パラメータのうち該当するものを利用者端末200に提示してもよいし、もしくは、測定値の数が推定(基準数理モデルのフィッティング)のために十分でない場合には、対象者に関連する測定値に加えて所定の集団における一以上の集計値を補って用いて、これらに対して基準数理モデルをフィッティングしてもよい。
【0065】
また、結果出力部134は、抽出された一以上の発育関連パラメータと、記憶部130に記憶され、抽出された発育関連パラメータに対応する各基準値とを比較した比較結果及び評価基準情報に基づく評価を結果情報として出力してもよい。評価基準情報は、複数の評価を判定するための結果範囲を規定するものであり、例えば、数値が高いほうが成長が早い(すなわち、数値が低いほうが成長が遅い)ことを示す発育関連パラメータ(例えば、身長や体重など)である場合には、当該発育関連パラメータが基準値A(例えば、標準範囲の下限値)より低い場合には評価基準情報を参照し「成長が遅い」と判定され、基準値Aより高く基準値B(例えば、標準範囲の上限値)より低い場合には評価基準情報を参照し「成長が平均的である」と判定され、基準値Bより高い場合には評価基準情報を参照し「成長が早い」という評価を結果情報として出力してもよい。さらに、基準値として、上述の所定の属性単位に形成された集団の平均値や代表値などの集計値に基づく値を用いてもよい。また、結果出力部134は、抽出された一以上の発育関連パラメータと、所定の属性群における集計値と比較して、属性群における相対的な位置を提示する情報を結果情報として出力してもよい。
【0066】
また、結果出力部134は、発育関連パラメータを抽出したり、対象者の身長または体重の予測情報を出力したりする場合、それらの情報は、年齢や月齢等を横軸とし、身長や体重の測定単位を縦軸とするグラフ上に描画することができる。このとき、基準となる集団の情報(例えば、標準成長曲線や、未熟児出生だった児童の成長曲線情報など)や、実際の測定データと重ねて描画してもよい。また、横軸は、年齢や月齢、出生からの経過日数、それらを区分化した単位であってよく、身長や体重およびその予測値等に関しては、センチメートルやメートル、グラムやキログラムなど、どのような単位であってもよい。なお、これらの結果はグラフではなく表や文章の形式に整理してもよい。
【0067】
なお、式1から式11までに示された各パラメータに対しては、個人要因(遺伝や疾病などの情報)、環境要因(国籍や生活環境などの情報)、介入の実施(保健指導、生活指導、成長ホルモン剤投与などの医療的介入)からの影響を表す係数を与えてもよい。あるいは、個人要因、環境要因、介入実施などの情報を利用し、式1から式11までに示された各パラメータを予測する統計モデル(一般化線形モデル、一般化線形混合モデルなど)や機械学習モデル(深層学習モデルやニューラルネットワークモデルなど)を組み込んだ形式で定義してもよい。さらに、式1から式11までに示された関数に対しては、個人要因(遺伝や疾病などの情報)、環境要因(国籍や生活環境などの情報)、介入の実施(保健指導、成長ホルモン剤投与などの医療的介入)などからの影響を想定した新たな項(定数または関数)を、加算や減算の形式で追加してもよい。また、ここで追加される新たな項(定数または関数)に対して、統計モデルや機械学習モデルなどの予測モデルを組み込んでもよい。一例として、基本成長速度を定数aとし、個人要因、環境要因、介入実施などの情報をXとし、行列Xが有する情報の重みベクトルをwとしたとき、基本成長速度aを、一般化線形モデルの形式で(例えば、対数リンクを用いて)、次のように記述してもよい。
【0068】
【0069】
図4は、
図1の利用者端末200を示す機能ブロック構成図である。利用者端末200は、通信部210と、表示操作部220と、記憶部230と、カメラ240と、制御部250とを備える。
【0070】
通信部210は、ネットワークNWを介してサーバ100と通信を行うための通信インターフェースであり、例えばTCP/IP等の通信規約により通信が行われる。
【0071】
表示操作部220は、利用者が指示を入力し、制御部250からの入力データに応じてテキスト、画像等を表示するために用いられるユーザインターフェースであり、利用者端末200がパーソナルコンピュータで構成されている場合はディスプレイとキーボードやマウスにより構成され、利用者端末200がスマートフォンまたはタブレット端末で構成されている場合はタッチパネル等から構成される。この表示操作部220は、記憶部230に記憶されている制御プログラムにより起動されてコンピュータ(電子計算機)である利用者端末200により実行される。表示操作部を介して、利用者は、提供される適性試験に対して、キーボードの場合は、キーボードの押下、マウスの場合は、マウスによりカーソルの移動、タッチパネルの場合は、タップ、スワイプ、ピンチ操作等を行うことができる。
【0072】
記憶部230は、各種制御処理や制御部250内の各機能を実行するためのプログラム、入力データ等を記憶するものであり、RAMやROM等から構成される。また、記憶部230は、サーバ100との通信内容を一時的に記憶している。
【0073】
カメラ240は、例えば、対象者の身体の部位を撮像する機能を備えるものである。
【0074】
制御部250は、記憶部230に記憶されているプログラムを実行することにより、利用者端末200の全体の動作を制御するものであり、CPUやGPU等から構成される。
【0075】
なお、サーバ100に表示操作部の機能を備える構成としてもよく、この場合、利用者端末200を備えない構成としても良い。
【0076】
図5は、サーバ100に格納される対象者データの一例を示す図である。
【0077】
図5に示す対象者データ1000は、例えば対象者に関連する各種データを格納する。以下、対象者として、子どもを例に説明する。
図4において、説明の便宜上、一子ども(対象者ID「10001」で識別される子ども)の例を示すが、複数の対象者の情報を格納することができる。子どもに関連する各種データとして、例えば、子どもに関する子ども情報(子どもの氏名、住所、Eメールアドレス等の連絡先、性別、年齢、学校名、学年、担任名、通学状況、タグ情報等)、保護者情報(保護者の氏名、ID、住所、連絡先、性別等)、関係者情報(関係者の氏名、ID、住所、連絡先、性別等)、家族グループ情報(家族グループ名、ID、グループ名の説明、グループのメンバー(過去の婚姻関係、内縁の夫婦関係による保護者等も含む)、関係機関情報(関係機関名、ID、種別(医療機関、警察、教育機関等)、住所、連絡先)等を含むことができる。
【0078】
図6は、サーバ100に格納される利用者データの一例を示す図である。
【0079】
図6に示す利用者データ3000は、利用者に関連する各種データを格納する。
図6において、説明の便宜上、一利用者(利用者ID「30001」で識別される利用者)の例を示すが、複数の利用者の情報を格納することができる。利用者に関連する各種データとして、例えば、利用者に関する基本情報(利用者名、住所、Eメールアドレスまたは電話番号等の連絡先、所属先情報、役職情報、アクセス権限情報など)、利用者に関連する対象者情報(利用者にて対応する、または、対応した子どもID、受け入れた子ども情報に紐づく子どもID、提供した子ども情報に紐づく子どもIDなどであって、特に一覧情報)等を含むことができる。なお、利用者データは、職員等の利用機関所属者ごとに利用者ID(アカウント)が登録されていてもよいが、これに代えて、または、加えて、利用機関ごとに共通の利用者ID(アカウント)が登録されていてもよい。
【0080】
<処理の流れ>
図7を参照しながら、本実施形態の情報処理システム1が実行する情報処理方法の処理の流れについて説明する。本発明の第一実施形態に係る、情報処理方法に係るフローチャートの一例である。
【0081】
ここで、本システム1を利用するために、利用者(例えば、児童相談所の職員等)は、利用者端末200の各々のウェブブラウザまたはアプリケーション等を利用してサーバ100にアクセスし、初めてサービスを利用する場合は、新規利用者登録のために利用者データ3000の基本情報を登録し、利用者アカウントを取得する。既に利用者アカウントを取得済の場合は、例えばIDとパスワードを入力する等の所定の認証を受けてログインすることで、サービスが利用可能となる。この認証後、ウェブサイト、アプリケーション等を介して所定のユーザインターフェース画面が提供され、
図7に示すステップS101へ進む。
【0082】
まず、ステップS101の処理として、サーバ100の制御部130の受付部131は、通信部110を介して、利用者端末200から、対象者に関する対象者情報等の基本情報の登録を受け付ける。サーバ100の制御部130のデータ管理部132は、受け付けた基本情報を、記憶部120の対象者データ格納部121に、対象者データ1000として対象者IDに関連づけて格納する。
【0083】
ここで、
図8に例示するように、基本情報として、受付部131は、順不同であるが、例えば、子どもの氏名、住所、Eメールアドレス等の連絡先、性別、年齢、学校名、学年、担任名、通学状況、タグ情報等の、子どもに関する子ども情報の登録を受け付け(ステップS201)、保護者の氏名、ID、住所、連絡先、性別等の、保護者に関する保護者情報の登録を受け付け(ステップS202)、続いて、叔父、叔母、子どもの兄の友人、母親の交際相手等の関係者の氏名、ID、住所、連絡先、性別等の、子どもの関係者に関する関係者情報の登録を受け付け(ステップS203)、家族グループ名、ID、グループ名の説明、グループのメンバー(子ども、兄弟、過去の婚姻関係、内縁の夫婦関係による保護者等も含む)等の、家族グループに関する家族グループ情報の登録を受け付け(ステップS204)、また、関係機関名、ID、種別(医療機関、警察、教育機関等)、住所、連絡先等の、関係機関に関する関係機関情報の登録を受け付ける(ステップS205)ことができる。
【0084】
次に、ステップS102の処理として、受付部131は、利用者端末200から、測定値情報の登録を受け付ける。まず、利用者は、利用者端末200に表示されるアプリケーション画面上で、測定値情報及び経過期間情報の入力操作を行う。なお、入力操作は、利用者によるキーボード操作等による入力操作に限らず、連携するデータベースから対象者に関する測定値情報を取得して入力を行ってもよい。
【0085】
次に、ステップS103の処理として、制御部130のフィッティング部133は、対象者の身長または体重の少なくとも何れか一方の測定値を含む測定値情報と、当該測定値情報に紐づく出生からの経過期間情報と、を少なくとも含む入力情報に対して基準数理モデルをフィッティングさせる。
【0086】
次に、ステップS104の処理として、結果出力部134は、上記ステップにおいてフィッティング部133のフィッティングにより得られる結果関数に含まれる一以上の発育関連パラメータを含む結果情報を利用者端末200に送信し、利用者端末200のアプリケーションのユーザインターフェース画面に結果情報が所定のフォーマットで表示される。
【0087】
ここで、結果出力部134により、式1から式11までの各関数についてそれぞれグラフ形式で描画することができる。
図9に例示するように、年齢や月齢等の経過期間を横軸とし、身長や体重の測定値(測定データ)を縦軸とするグラフ上に、測定値や発育予想(結果関数)を描画することができる。このとき、基準となる集団の情報(例えば、標準成長曲線)を、実際の測定値と重ねて描画してもよい。
【0088】
また、
図10に例示するように、年齢や月齢等の経過期間を横軸とし、身長や体重の測定値(測定データや予測値を含む)を縦軸とするグラフや、及び
図11に例示するように、年齢や月齢等の経過期間を横軸、成長の速度を縦軸とするグラフ上に、測定値や発育予想(結果関数)を描画する際に、各発育関連パラメータを示す参照情報(説明文章や数式などの文字情報、矢印や点線などの図形情報など)を重ねて描画してもよい。
【0089】
また、
図12に例示するように、年齢や月齢等の経過期間を横軸とし、加速度を縦軸とするグラフ上に、成長加速度曲線を示す関数f''(t)を描画することができる。より具体的には、成長加速度曲線を示す関数f''(t)を描画する場合には、合成関数として関数f''(t)をそのまま描画することも可能であるが、
図11に例示するように、式11の右辺第2項(後期成長の進行率関数)と式11の右辺第3項(後期成長の抑制率関数)を別々に描画することも可能である。
【0090】
以上のように、本実施形態によれば、特に、基準数理モデルを用いた新たな手法により、身長や体重を含む発育関連パラメータを求めることができる。
【0091】
なお、どのような外的要因を考慮するか、あるいは、どのような対象者(集合)のデータを使用するかによって、出力できる対象者の身長または体重の予測結果と、各種発育関連パラメータは、次のような用途に利用することができる。
【0092】
(1)医療分野
(1-1)「発育不全の診断や、医療的介入判断に関わる検査結果報告」
発育関連パラメータとして、例えば、基本成長速度や後期発育の開始時期等を推定し、所定の属性群(例えば、国や性別などの群)の集計値との比較を実施し、当該集団の中での相対的な位置付けや比較結果(及び評価基準情報)に基づき、対象児童の発育不全や、その他の疾病等が併存する可能性を示唆する、リスク情報を送信するようにしてもよい。
【0093】
(1-2)「小児発達の疫学調査や、子どもの発育に関わる特定の疾病に関する医学系研究」
発育関連パラメータとして、例えば、基本成長速度や後期発育の開始時期等を、特定の疾病単位(例えばダウン症など疾病単位)の群で推定し、対象者に紐づく疫学的基礎情報の送信や特定の疾病に対する加療等の介入情報(特に介入を実施した時期情報を含む)を参照して、基本成長速度や後期発育の開始時期等の発育関連パラメータが介入の前後でどのように変化したかに関する介入効果評価情報を送信するようにしてもよい。
【0094】
(2)保健・福祉・教育分野
(2-1)「乳幼児健康診査等での発育評価」
発育関連パラメータとして、例えば、対象児童の将来の身長または体重を予測し、国や性別などの対象児童が属する所定の属性群の集計値との比較結果(及び評価基準情報)に基づき、将来の予測も含めた発育評価結果情報や、保健・生活指導等の介入の必要性を示唆する情報、医療的介入の必要性を示唆するリスク情報などを評価の結果(例えば、平均値や代表値などよりも低いことを示す評価の結果など)に応じて送信するようにしてもよい。
【0095】
(2-2)「児童虐待アセスメントや保健福祉的介入や指導の実施判断に関わる発育評価」
発育関連パラメータとして、例えば、対象児童の将来の身長または体重を予測し、国や性別などの対象児童が属する所定の属性群の集計値との比較結果や、児童虐待を受けた児童群(特に、例えば栄養失調等により死亡した群など)の集計値との比較結果(及び評価基準情報)に基づき、福祉的介入の必要性を示唆する情報や、医療的介入の必要性を示唆するリスク情報を評価の結果(例えば、平均値や代表値などよりも低いことを示す評価の結果など)に応じて送信するようにしても良い。
【0096】
(2-3)「学校健康診査等に関する発育評価」
発育関連パラメータとして、例えば、対象児童の将来の身長または体重を予測し、国や性別などの対象児童が属する所定の属性群の集計値との比較結果に基づき、将来の予測も含めた発育評価結果情報と、保健・生活指導等の介入の必要性を示唆する情報や、医療的介入の必要性を示唆するリスク情報を評価の結果(例えば、平均値や代表値などよりも低いことを示す評価の結果など)に応じて送信するようにしてもよい。また、測定がなされた年代別で、基本成長速度や後期発育の開始時期等の発育パラメータを互いに比較し、年代による標準的な発育状況の変遷に関する標準的な発育の変遷情報を送信するようにしてもよい。
【0097】
(2-4)「食育の介入効果評価」
発育関連パラメータとして、例えば、基本成長速度や後期発育の開始時期等を推定し、対象者に紐づく食育の介入情報(特に食育の介入を実施した時期情報を含む)を併せて参照することで、食育の介入前後等でどのように変化したか、または、食育の介入があった群と、なかった群で、上記発育関連パラメータがどのように異なるかに関する、差分を評価した介入効果評価情報を送信するようにしてもよい。
【0098】
(3)スポーツ・ファッション・その他
(3-1)「スポーツ分野における、食事管理やトレーニングメニューの設定(運動プログラムの設定)などの介入の効果の評価、介入による身長または体重の発育予測」
一例として、発育関連パラメータとして将来の身長または体重を予測し、所定のスポーツ分野における群(種目別群、スポーツ経験者単位、プロ単位群、アマチュア単位群、学生単位群、性別別群、年代別群などのいずれか一つの単位群または二つ以上の単位を組み合わせた群)の集計値との比較結果に基づき、評価を含む結果情報や、利用者端末へ目標発育関連パラメータに達するための介入手法を提案する介入手法提案情報、または、目標発育関連パラメータに達するための目標進捗との差分を評価した介入効果評価情報を含む結果情報を送信するようにしてもよい。
【0099】
(3-2)「服の販売等に関わる対象者(特に子ども)の発育予測」
発育関連パラメータとして将来の身長(または体重)を予測し、購入したサイズがサイズアウトして次のサイズを購入する際に、利用者端末へ予測に沿ったサイズに基づく購入推薦情報を送信するようにしてもよい。
【0100】
本発明の実施形態の内容を改めて列記して説明する。本発明の実施の形態による情報処理方法、プログラム、情報処理システムは、以下のような構成を備える。
[項目1]
情報処理装置により実行される情報処理方法であって、
対象者の身長または体重の少なくとも何れか一方の測定値を含む測定値情報と、当該測定値情報に紐づく出生からの経過期間情報と、を少なくとも含む入力情報に対して基準数理モデルをフィッティングさせるフィッティングステップと、
前記フィッティングにより得られる結果関数に含まれる一以上の発育関連パラメータを含む結果情報を出力する結果出力ステップを含む、
情報処理方法。
[項目2]
前記発育関連パラメータは、出生時の身長または体重の少なくとも何れか一方の予測値を含む、項目1に記載の方法。
[項目3]
前記発育関連パラメータは、将来の所定のタイミングにおける身長または体重の少なくとも何れか一方の予測値を含む、項目1または2のいずれかに記載の方法。
[項目4]
前記発育関連パラメータは、下記(1)~(18)の少なくともいずれかを含む、項目1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
(1)出生時の成長速度、
(2)成長初速度の減衰率、
(3)基本成長速度、
(4)後期発育の発育速度上限値、
(5)後期発育の発育速度抑制量、
(6)後期発育の開始時期に関する情報、
(7)後期発育の亢進および抑制の速度に関する情報
(8)後期発育抑制開始時期の情報
(9)後期発育の進行率
(10)後期発育の抑制進行率、
(11)後期発育の加速度が最大となる時期、
(12)後期発育の減速度が最大となる時期、
(13)後期発育の進行から抑制までの時間差、
(14)後期発育の亢進速度を抑制速度が上回った時間、
(15)後期発育において最も成長速度が高い時期、
(16)後期発育の期間、
(17)後期成長の進行率に関する情報、
(18)個人要因、環境要因、介入要因の少なくともいずれかによる影響の大きさに関する情報
[項目5]
情報処理装置において、
対象者の身長または体重の少なくとも何れか一方の測定値を含む測定値情報と、当該測定値情報に紐づく出生からの経過期間情報と、を少なくとも含む入力情報に対して基準数理モデルをフィッティングさせるフィッティングステップと、
前記フィッティングにより得られる結果関数に含まれる一以上の発育関連パラメータを含む結果情報を出力する結果出力ステップと、を含む情報処理方法を実行させるプログラム。
[項目6]
制御部を有する情報処理装置であって、
前記制御部は、
対象者の身長または体重の少なくとも何れか一方の測定値を含む測定値情報と、当該測定値情報に紐づく出生からの経過期間情報と、を少なくとも含む入力情報に対して基準数理モデルをフィッティングさせるフィッティング部と、
前記フィッティングにより得られる結果関数に含まれる一以上の発育関連パラメータを含む結果情報を出力する結果出力部を備える、
情報処理装置。
【0101】
以上、開示に係る実施形態について説明したが、これらはその他の様々な形態で実施することが可能であり、種々の省略、置換および変更を行なって実施することが出来る。これらの実施形態および変形例ならびに省略、置換および変更を行なったものは、特許請求の範囲の技術的範囲とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0102】
1 情報処理システム、
100 サーバ、
110 通信部、
120 記憶部、
130 制御部、
200 利用者端末、
NW ネットワーク
【手続補正書】
【提出日】2023-05-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置により実行される情報処理方法であって、
対象者の身長または体重の少なくとも何れか一方の測定値を含む測定値情報と、当該測定値情報に紐づく出生からの経過期間情報と、を少なくとも含む入力情報に対して
下記数1の式を積分して得られる基準数理モデルをフィッティングさせるフィッティングステップと、
前記フィッティングにより得られる結果関数に含まれる一以上の発育関連パラメータを含む結果情報を出力する結果出力ステップを含む、
情報処理方法。
【数1】
(ここで、f’(t)は、前記対象者の身長または体重の少なくとも何れか一方の発育速度を表す関数であり、前期成長速度を表す関数であるg(t)と、後期成長速度を表す関数であるh(t)の合成関数である。)
【請求項2】
前記後期成長速度を表す関数であるh(t)は、下記数2の式で表される、請求項1に記載の方法。
【数2】
(ここで、h(t)は、第二次性徴に伴う身長または体重の成長期に加算される成長速度を表す関数であり、i(t)は、後期成長の進行率を表す関数であり、j(t)は、抑制率を表す関数を表す関数であり、uは後期成長速度の上限値である。)
【請求項3】
前記基準数理モデルは、下記数3の式で表される、請求項1に記載の方法。
【数3】
(ここで、Φは、出生時点(t=0)での対象者の身長または体重の少なくともいずれかである。)
【請求項4】
前記発育関連パラメータは、下記(1)~(18)の少なくともいずれかを含む、請求項1に記載の方法。
(1)出生時の成長速度、
(2)成長初速度の減衰率、
(3)基本成長速度、
(4)後期発育の発育速度上限値、
(5)後期発育の発育速度抑制量、
(6)後期発育の開始時期に関する情報、
(7)後期発育の亢進および抑制の速度に関する情報
(8)後期発育抑制開始時期の情報
(9)後期発育の進行率
(10)後期発育の抑制進行率、
(11)後期発育の加速度が最大となる時期、
(12)後期発育の減速度が最大となる時期、
(13)後期発育の進行から抑制までの時間差、
(14)後期発育の亢進速度を抑制速度が上回った時間、
(15)後期発育において最も成長速度が高い時期、
(16)後期発育の期間、
(17)後期成長の進行率に関する情報、
(18)個人要因、環境要因、介入要因の少なくともいずれかによる影響の大きさに関する情報
【請求項5】
情報処理装置において、
対象者の身長または体重の少なくとも何れか一方の測定値を含む測定値情報と、当該測定値情報に紐づく出生からの経過期間情報と、を少なくとも含む入力情報に対して
下記数1の式を積分して得られる基準数理モデルをフィッティングさせるフィッティングステップと、
前記フィッティングにより得られる結果関数に含まれる一以上の発育関連パラメータを含む結果情報を出力する結果出力ステップと、を含む情報処理方法を実行させるプログラム。
【数1】
(ここで、f’(t)は、前記対象者の身長または体重の少なくとも何れか一方の発育速度を表す関数であり、前期成長速度を表す関数であるg(t)と、後期成長速度を表す関数であるh(t)の合成関数である。)
【請求項6】
制御部を有する情報処理装置であって、
前記制御部は、
対象者の身長または体重の少なくとも何れか一方の測定値を含む測定値情報と、当該測定値情報に紐づく出生からの経過期間情報と、を少なくとも含む入力情報に対して
下記数1の式を積分して得られる基準数理モデルをフィッティングさせるフィッティング部と、
前記フィッティングにより得られる結果関数に含まれる一以上の発育関連パラメータを含む結果情報を出力する結果出力部を備える、
情報処理装置。
【数1】
(ここで、f’(t)は、前記対象者の身長または体重の少なくとも何れか一方の発育速度を表す関数であり、前期成長速度を表す関数であるg(t)と、後期成長速度を表す関数であるh(t)の合成関数である。)
【手続補正書】
【提出日】2023-07-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置により実行される情報処理方法であって、
対象者の身長または体重の少なくとも何れか一方の測定値を含む測定値情報と、当該測定値情報に紐づく出生からの経過期間情報と、を少なくとも含む入力情報に対して下記数1の式を積分して得られる基準数理モデルをフィッティングさせるフィッティングステップと、
前記フィッティングにより得られる結果関数に含まれる一以上の発育関連パラメータを含む結果情報を出力する結果出力ステップを含む、
情報処理方法。
【数1】
(ここで、f’(t)は、前記対象者の身長または体重の少なくとも何れか一方の発育速度を表す関数であり、前期成長速度を表す関数であるg(t)と、後期成長速度を表す関数であるh(t)の合成関数である。
tは、対象者の出生からの経過時間を示す。)
【請求項2】
前記後期成長速度を表す関数であるh(t)は、下記数2の式で表される、請求項1に記載の方法。
【数2】
(ここで、h(t)は、第二次性徴に伴う身長または体重の成長期に加算される成長速度を表す関数であり、i(t)は、後期成長の進行率を表す関数であり、j(t)は、抑制率を表す関数を表す関数であり、uは後期成長速度の上限値である。)
【請求項3】
前記基準数理モデルは、下記数3の式で表される、請求項1に記載の方法。
【数3】
(ここで、Φは、出生時点(t=0)での対象者の身長または体重の少なくともいずれかである。)
【請求項4】
前記発育関連パラメータは、下記(1)~(18)の少なくともいずれかを含む、請求項1に記載の方法。
(1)出生時の成長速度、
(2)成長初速度の減衰率、
(3)基本成長速度、
(4)後期発育の発育速度上限値、
(5)後期発育の発育速度抑制量、
(6)後期発育の開始時期に関する情報、
(7)後期発育の亢進および抑制の速度に関する情報
(8)後期発育抑制開始時期の情報
(9)後期発育の進行率
(10)後期発育の抑制進行率、
(11)後期発育の加速度が最大となる時期、
(12)後期発育の減速度が最大となる時期、
(13)後期発育の進行から抑制までの時間差、
(14)後期発育の亢進速度を抑制速度が上回った時間、
(15)後期発育において最も成長速度が高い時期、
(16)後期発育の期間、
(17)後期成長の進行率に関する情報、
(18)個人要因、環境要因、介入要因の少なくともいずれかによる影響の大きさに関する情報
【請求項5】
情報処理装置において、
対象者の身長または体重の少なくとも何れか一方の測定値を含む測定値情報と、当該測定値情報に紐づく出生からの経過期間情報と、を少なくとも含む入力情報に対して下記数1の式を積分して得られる基準数理モデルをフィッティングさせるフィッティングステップと、
前記フィッティングにより得られる結果関数に含まれる一以上の発育関連パラメータを含む結果情報を出力する結果出力ステップと、を含む情報処理方法を実行させるプログラム。
【数1】
(ここで、f’(t)は、前記対象者の身長または体重の少なくとも何れか一方の発育速度を表す関数であり、前期成長速度を表す関数であるg(t)と、後期成長速度を表す関数であるh(t)の合成関数である。
tは、対象者の出生からの経過時間を示す。)
【請求項6】
制御部を有する情報処理装置であって、
前記制御部は、
対象者の身長または体重の少なくとも何れか一方の測定値を含む測定値情報と、当該測定値情報に紐づく出生からの経過期間情報と、を少なくとも含む入力情報に対して下記数1の式を積分して得られる基準数理モデルをフィッティングさせるフィッティング部と、
前記フィッティングにより得られる結果関数に含まれる一以上の発育関連パラメータを含む結果情報を出力する結果出力部を備える、
情報処理装置。
【数1】
(ここで、f’(t)は、前記対象者の身長または体重の少なくとも何れか一方の発育速度を表す関数であり、前期成長速度を表す関数であるg(t)と、後期成長速度を表す関数であるh(t)の合成関数である。
tは、対象者の出生からの経過時間を示す。)
【手続補正書】
【提出日】2023-08-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置により実行される情報処理方法であって、
対象者の身長または体重の少なくとも何れか一方の測定値を含む測定値情報と、当該測定値情報に紐づく出生からの経過期間情報と、
のセットを少なくとも
2つ以上含む入力情報に対して下記数1の式を積分して得られる基準数理モデルをフィッティングさせるフィッティングステップと、
前記フィッティングにより得られる結果関数に含まれる一以上の発育関連パラメータを含む結果情報を出力する結果出力ステップを含む、
情報処理方法。
【数1】
(ここで、f’(t)は、前記対象者の身長または体重の少なくとも何れか一方の発育速度を表す関数であり、前期成長速度を表す関数であるg(t)と、後期成長速度を表す関数であるh(t)の合成関数である。tは、対象者の出生からの経過時間を示す。)
【請求項2】
前記後期成長速度を表す関数であるh(t)は、下記数2の式で表される、請求項1に記載の方法。
【数2】
(ここで、h(t)は、第二次性徴に伴う身長または体重の成長期に加算される成長速度を表す関数であり、i(t)は、後期成長の進行率を表す関数であり、j(t)は、抑制率を表す関数を表す関数であり、uは後期成長速度の上限値である。)
【請求項3】
前記基準数理モデルは、下記数3の式で表される、請求項1に記載の方法。
【数3】
(ここで、Φは、出生時点(t=0)での対象者の身長または体重の少なくともいずれかである。)
【請求項4】
前記発育関連パラメータは、下記(1)~(18)の少なくともいずれかを含む、請求項1に記載の方法。
(1)出生時の成長速度、
(2)成長初速度の減衰率、
(3)基本成長速度、
(4)後期発育の発育速度上限値、
(5)後期発育の発育速度抑制量、
(6)後期発育の開始時期に関する情報、
(7)後期発育の亢進および抑制の速度に関する情報
(8)後期発育抑制開始時期の情報
(9)後期発育の進行率
(10)後期発育の抑制進行率、
(11)後期発育の加速度が最大となる時期、
(12)後期発育の減速度が最大となる時期、
(13)後期発育の進行から抑制までの時間差、
(14)後期発育の亢進速度を抑制速度が上回った時間、
(15)後期発育において最も成長速度が高い時期、
(16)後期発育の期間、
(17)後期成長の進行率に関する情報、
(18)個人要因、環境要因、介入要因の少なくともいずれかによる影響の大きさに関する情報
【請求項5】
情報処理装置において、
対象者の身長または体重の少なくとも何れか一方の測定値を含む測定値情報と、当該測定値情報に紐づく出生からの経過期間情報と、
のセットを少なくとも
2つ以上含む入力情報に対して下記数1の式を積分して得られる基準数理モデルをフィッティングさせるフィッティングステップと、
前記フィッティングにより得られる結果関数に含まれる一以上の発育関連パラメータを含む結果情報を出力する結果出力ステップと、を含む情報処理方法を実行させるプログラム。
【数1】
(ここで、f’(t)は、前記対象者の身長または体重の少なくとも何れか一方の発育速度を表す関数であり、前期成長速度を表す関数であるg(t)と、後期成長速度を表す関数であるh(t)の合成関数である。tは、対象者の出生からの経過時間を示す。)
【請求項6】
制御部を有する情報処理装置であって、
前記制御部は、
対象者の身長または体重の少なくとも何れか一方の測定値を含む測定値情報と、当該測定値情報に紐づく出生からの経過期間情報と、
のセットを少なくとも
2つ以上含む入力情報に対して下記数1の式を積分して得られる基準数理モデルをフィッティングさせるフィッティング部と、
前記フィッティングにより得られる結果関数に含まれる一以上の発育関連パラメータを含む結果情報を出力する結果出力部を備える、
情報処理装置。
【数1】
(ここで、f’(t)は、前記対象者の身長または体重の少なくとも何れか一方の発育速度を表す関数であり、前期成長速度を表す関数であるg(t)と、後期成長速度を表す関数であるh(t)の合成関数である。tは、対象者の出生からの経過時間を示す。)