(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154519
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】駅舎電源装置、回生判定方法、および回生判定プログラム
(51)【国際特許分類】
B60M 3/06 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
B60M3/06 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068354
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】三宅 教仁
(57)【要約】
【課題】架線に接続された列車の回生動作によって発生する回生電力を確実に取り込むことを可能とする駅舎電源装置を得ること。
【解決手段】駅舎電源装置10は、架線2の電圧である架線電圧を検出する架線電圧検出部14と、変電所4から架線2へ出力される電圧および電流の情報を含む出力情報を取得する出力情報取得部16と、変電所4から架線2へ出力される電圧と電流との関係である変電所特性の情報と、取得された出力情報とに基づいて、架線2に接続された列車1が回生動作を行っているか否かの閾値である動作閾値を算出する閾値算出部19と、架線電圧と、動作閾値とに基づいて、列車1が回生動作をしているか否かを判定する回生動作判定部20と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変電所から電力が供給される架線に接続された駅舎電源装置であって、
前記架線の電圧である架線電圧を検出する架線電圧検出部と、
前記変電所から前記架線へ出力される電圧および電流の情報を含む出力情報を取得する出力情報取得部と、
前記変電所から前記架線へ出力される電圧と電流との関係である変電所特性の情報と、取得された前記出力情報とに基づいて、前記架線に接続された列車が回生動作を行っているか否かの閾値である動作閾値を算出する閾値算出部と、
前記架線電圧と、前記動作閾値とに基づいて、前記列車が回生動作をしているか否かを判定する回生動作判定部と、を備える
ことを特徴とする駅舎電源装置。
【請求項2】
前記架線には複数の前記変電所から電力が供給され、
前記出力情報取得部は、前記架線に沿って、前記駅舎電源装置が接続された箇所である測定点の隣の位置に接続されている少なくとも1つの前記変電所である隣接変電所の前記出力情報を取得し、
前記閾値算出部は、前記隣接変電所の前記変電所特性と前記隣接変電所の前記出力情報とに基づいて前記動作閾値を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の駅舎電源装置。
【請求項3】
前記隣接変電所には、前記架線に沿って前記測定点から最寄りの位置に接続されている前記変電所が含まれる
ことを特徴とする請求項2に記載の駅舎電源装置。
【請求項4】
前記隣接変電所には、前記測定点から前記架線に沿って一方の側において隣の位置に接続されている1つ以上の前記変電所と、前記測定点から前記架線に沿って他方の側において隣の位置に接続されている1つ以上の前記変電所と、の少なくとも一方が含まれる
ことを特徴とする請求項3に記載の駅舎電源装置。
【請求項5】
前記測定点に対し、前記架線に沿って一方の側に複数の前記変電所が接続されており、
前記隣接変電所には、前記一方の側において前記測定点の隣に位置する1つ以上の前記変電所が含まれる
ことを特徴とする請求項3に記載の駅舎電源装置。
【請求項6】
前記架線電圧に含まれるリップル成分の電圧であるリップル電圧を検出するリップル電圧検出部を備え、
前記閾値算出部は、前記変電所特性と前記出力情報とに基づいて、前記動作閾値である第1の動作閾値と、前記列車が回生動作を行っているか否かの閾値である第2の動作閾値とを算出し、
前記回生動作判定部は、前記架線電圧と前記第1の動作閾値との比較、および、前記架線電圧と前記リップル電圧との比である回生判定指標値と前記第2の動作閾値との比較によって、前記列車が回生動作をしているか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の駅舎電源装置。
【請求項7】
前記回生動作判定部は、さらに、前記架線電圧および前記出力情報に基づいて、前記列車が回生動作をしているか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の駅舎電源装置。
【請求項8】
前記閾値算出部は、
取得された前記出力情報を含む推論用データを取得するデータ取得部と、
前記変電所特性の情報を含む特徴量と前記動作閾値とを学習させた学習済モデルを用いて、前記推論用データから、前記回生動作判定部による判定に使用される前記動作閾値を推論する推論部と、を備える
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の駅舎電源装置。
【請求項9】
前記特徴量には、前記駅舎電源装置が設置されている環境に関する環境情報が含まれる
ことを特徴とする請求項8に記載の駅舎電源装置。
【請求項10】
前記変電所特性の情報を含む特徴量と算出された前記動作閾値とを含む学習用データを取得するデータ取得部と、
前記回生動作判定部による判定に使用される前記動作閾値の推論に使用される学習済モデルを、前記学習用データを学習することによって生成するモデル生成部と、を有する学習装置を備える
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の駅舎電源装置。
【請求項11】
前記特徴量には、前記駅舎電源装置が設置されている環境に関する環境情報が含まれる
ことを特徴とする請求項10に記載の駅舎電源装置。
【請求項12】
変電所から電力が供給される架線に接続された列車が回生動作をしているか否かをコンピュータにより判定する回生判定方法であって、
前記架線の電圧である架線電圧を検出するステップと、
前記変電所から前記架線へ出力される電圧および電流の情報を含む出力情報を取得するステップと、
前記変電所から前記架線へ出力される電圧と電流との関係である変電所特性の情報と、取得された前記出力情報とに基づいて、前記列車が回生動作を行っているか否かの閾値である動作閾値を算出するステップと、
前記架線電圧と、前記動作閾値とに基づいて、前記列車が回生動作をしているか否かを判定するステップと、を含む
ことを特徴とする回生判定方法。
【請求項13】
変電所から電力が供給される架線の電圧である架線電圧を検出するステップと、
前記変電所から前記架線へ出力される電圧および電流の情報を含む出力情報を取得するステップと、
前記変電所から前記架線へ出力される電圧と電流との関係である変電所特性の情報と、取得された前記出力情報とに基づいて、前記架線に接続された列車が回生動作を行っているか否かの閾値である動作閾値を算出するステップと、
前記架線電圧と、前記動作閾値とに基づいて、前記列車が回生動作をしているか否かを判定するステップと、をコンピュータに実行させる
ことを特徴とする回生判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、列車の回生電力を駅舎へ供給する駅舎電源装置、回生判定方法、および回生判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、架線に接続された列車が発生する回生電力を取り込み、取り込まれた回生電力を駅舎設備へ供給する駅舎電源装置が知られている。回生電力は、例えば、列車が減速した場合などに発生し、列車で回生電力が発生すると架線の電圧が上昇する。駅舎電源装置は、架線の電圧を閾値と比較し、架線の電圧が閾値以上であるときに回生電力を取り込む動作を実行し得る。
【0003】
特許文献1には、架線へ電力を供給する変電所の出力電圧値および出力電流値に基づいて無負荷電圧の値を推定し、回生電力を取り込む動作を実行するか否かを決定するための閾値を無負荷電圧の値に基づいて決定する駅舎電源装置が開示されている。無負荷電圧は、架線から列車への電力供給および列車から架線への電力供給がいずれも行われていない状態である無負荷状態での架線の電圧である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されている技術では、架線の負荷変動の影響について考慮されていないため、無負荷電圧の値の推定精度が低下する場合がある。この場合、回生電力を取り込む動作を開始するときの電圧値が無負荷電圧の値を下回ることを防ぐためには、推定された無負荷電圧の値よりも閾値が高くなるように閾値に裕度を持たせるといった措置が必要となる。閾値に裕度を持たせる必要があると、回生電力が発生しているにもかかわらず回生電力の取り込みが開始されない場合があるため、回生電力を確実に取り込むことが困難となる。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、架線に接続された列車の回生動作によって発生する回生電力を確実に取り込むことを可能とする駅舎電源装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示にかかる駅舎電源装置は、変電所から電力が供給される架線に接続された駅舎電源装置である。本開示にかかる駅舎電源装置は、架線の電圧である架線電圧を検出する架線電圧検出部と、変電所から架線へ出力される電圧および電流の情報を含む出力情報を取得する出力情報取得部と、変電所から架線へ出力される電圧と電流との関係である変電所特性の情報と、取得された出力情報とに基づいて、架線に接続された列車が回生動作を行っているか否かの閾値である動作閾値を算出する閾値算出部と、架線電圧と、動作閾値とに基づいて、列車が回生動作をしているか否かを判定する回生動作判定部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示にかかる駅舎電源装置は、架線に接続された列車の回生動作によって発生する回生電力を確実に取り込むことができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1にかかる駅舎電源装置と駅舎電源装置に接続される設備の例とを示す模式図
【
図2】実施の形態1にかかる駅舎電源装置の構成例と、駅舎電源装置に接続される設備の構成例とを示す図
【
図3】実施の形態1にかかる架線電圧の変化の例を示す図
【
図4】実施の形態1にかかる架線電圧の変化と、リップル電圧の変化と、回生判定指標値の変化との関係の例を示す図
【
図5】実施の形態1にかかる変電所特性について説明するための図
【
図6】実施の形態1にかかる駅舎電源装置の回生動作判定部による回生判定処理の例を示すフローチャート
【
図7】実施の形態1において、複数の変電所が接続されている架線の端部に駅舎電源装置が接続される場合の例を示す図
【
図8】実施の形態2にかかる閾値算出部の構成例を示す図
【
図9】実施の形態1または2にかかる駅舎電源操作盤のハードウェア構成例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、実施の形態にかかる駅舎電源装置、回生判定方法、および回生判定プログラムを図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる駅舎電源装置10と駅舎電源装置10に接続される設備の例とを示す模式図である。レール3を走行する列車1は、列車1のパンタグラフが架線2に接触することにより、架線2に接続される。架線2には複数の変電所4から電力が供給される。駅舎電源装置10は、架線2に接続されている列車1の回生動作によって架線2に発生した回生電力を取り込む。駅舎電源装置10は、回生電力を直流電力から交流電力へ変換して駅舎7へ供給する。
図1には、駅舎電源装置10と、架線2を介して駅舎電源装置10に接続されている複数の変電所4のうちの2つと、駅舎電源装置10に接続されている駅舎7とを示す。なお、架線2に接続される変電所4の数は任意であるものとする。
【0012】
駅舎電源装置10は、架線2の電圧である架線電圧を検出する架線電圧検出処理と、架線電圧検出処理によって検出された架線電圧に含まれるリップル成分の電圧であるリップル電圧を検出するリップル電圧検出処理とを実行する。駅舎電源装置10は、架線電圧検出処理によって検出された架線電圧とリップル電圧検出処理によって検出されたリップル電圧との比である回生判定指標値を算出する。
【0013】
駅舎電源装置10は、変電所4から架線2へ出力される電圧および電流の情報を含む出力情報を取得する出力情報取得処理を実行する。駅舎電源装置10は、出力情報取得処理により、複数の変電所4のうち1または2以上の変電所4の出力情報を取得する。
【0014】
駅舎電源装置10は、1または2以上の変電所4についての、変電所特性と出力情報とに基づいて、架線2に接続された列車1が回生動作を行っているか否かの閾値である動作閾値を算出する閾値算出処理を実行する。変電所特性は、変電所4から架線2へ出力される電圧と電流との関係である。駅舎電源装置10は、架線電圧と、回生判定指標値と、動作閾値とに基づいて、列車1が回生動作をしているか否かを判定する回生動作判定処理を実行する。
【0015】
駅舎電源装置10は、回生動作判定処理で列車1が回生動作をしていると判定した場合に、架線2に発生した回生電力を直流電力から交流電力へ変換して駅舎7へ出力する電力変換処理を実行する。
【0016】
次に、駅舎電源装置10の構成と、駅舎電源装置10に接続される設備の構成とについて説明する。
図2は、実施の形態1にかかる駅舎電源装置10の構成例と、駅舎電源装置10に接続される設備の構成例とを示す図である。
図2には、駅舎電源装置10と、レール3を走行する列車1と、駅舎電源装置10に接続される設備である変電所4および駅舎7と、変電所4および駅舎7に接続される高圧配電系統5とを示す。
【0017】
変電所4は、変圧器31と、整流器32と、電圧測定部33と、電流測定部34と、変電所装置35とを備える。なお、架線2に接続される複数の変電所4の各々は、互いに同様の構成を備える。
【0018】
整流器32は、3相電圧を整流するnパルス整流器である。nは、例えば、6の倍数であり、6または12であるが、18または24であってもよい。6パルス整流器は、例えば、3相全波整流を行う3相全波整流器を含む。また、12パルス整流器は、例えば、結線の異なる2つの変圧器と、2つの変圧器のうち対応する変圧器に各々接続される2つの3相全波整流器とを含む。12パルス整流器は、2つの変圧器によって30度の位相差を有する2つの3相交流電圧を生成し、生成した2つの3相交流電圧の各々を対応する3相全波整流器で3相全波整流を行う。
【0019】
変電所4には、高圧配電系統5から送電線6を介して6600V系の交流電圧が供給される。変圧器31は、高圧配電系統5から供給される6600V系の交流電圧を降圧する。整流器32は、変圧器31から出力される交流電圧を整流することにより、変圧器31から出力される交流電圧を1500V系の直流電圧へ変換する。整流器32は、1500V系の直流電圧を、不図示のき電線を介して架線2へ供給する。
【0020】
電圧測定部33は、整流器32から出力される電圧を測定し、測定結果を変電所装置35へ出力する。電流測定部34は、整流器32から出力される電流を測定し、測定結果を変電所装置35へ出力する。変電所装置35は、駅舎電源装置10との間における無線通信を行う無線通信機器36を備える。無線通信機器36は、電圧測定部33により測定された電圧の情報と電流測定部34により測定された電流の情報とである出力情報を、不図示のネットワークを介して駅舎電源装置10へ送信する。なお、変電所装置35は、無線通信機器36を備えるものに限られない。変電所装置35は、有線通信によって、駅舎電源装置10へ出力情報を送信することとしてもよい。
【0021】
駅舎7は、変圧器41と、駅負荷42とを備える。駅負荷42は、複数の駅舎設備43を備える。各駅舎設備43は、駅舎7に設置された電気設備である。変圧器41は、高圧配電系統5から供給される6600V系の交流電圧を210V系の交流電圧へ変換し、210V系の交流電圧を各駅舎設備43へ供給する。各駅舎設備43は、例えば、空調機器、照明機器、または昇降機といった電気設備である。
【0022】
駅舎電源装置10は、列車1の減速などにより架線2に発生した回生電力を直流電力から交流電力へ変換して駅舎7へ出力する主回路部11と、主回路部11を制御する駅舎電源操作盤12とを備える。
【0023】
主回路部11は、電力変換部13と、架線電圧検出部14と、リップル電圧検出部15と、出力情報取得部16とを備える。電力変換部13は、架線2に発生した回生電力を直流電力から交流電力へ変換する。
図2に示す例では、電力変換部13は、架線2に発生した回生電力をDC(Direct Current)1500V系の直流電力からAC(Alternating Current)210V系の交流電力へ変換して駅舎7へ出力する。なお、架線2の電圧は、DC1500V系以外の電圧であってもよく、駅舎7の電圧は、AC210V系以外の電圧であってもよい。
【0024】
駅舎電源装置10は、架線2上の測定点Pに接続されている。架線電圧検出部14は、測定点Pにおける架線電圧を測定し、架線電圧の情報を出力する。
図2に示す例では、測定点Pは、互いに隣り合う2つの変電所4のうちの一方と架線2とが接続される位置と、当該2つの変電所4のうちの他方と架線2とが接続される位置との間の位置である。架線電圧検出部14は、架線2とレール3との間の電圧、すなわち架線電圧をあらかじめ設定された周期Tsで検出する。架線電圧検出部14は、検出された架線電圧の瞬時値である架線電圧値を出力する。なお、架線電圧検出部14は、ノイズを除去するフィルタなどを有する。架線電圧検出部14は、ノイズが除去された架線電圧を検出する。架線電圧検出部14は、ノイズが除去された架線電圧の情報を駅舎電源操作盤12へ出力する。以下、架線電圧を架線電圧Vsと記載する場合がある。
【0025】
リップル電圧検出部15は、架線電圧Vsに含まれるリップル成分の電圧であるリップル電圧を検出し、リップル電圧の情報を駅舎電源操作盤12へ出力する。リップル電圧検出部15は、架線電圧検出部14で架線電圧Vsがあらかじめ設定された周期Tsで検出されるたびに、架線電圧検出部14で検出された架線電圧Vsに基づいてリップル電圧を検出し、検出したリップル電圧の情報を出力する。リップル電圧検出部15は、架線電圧検出部14で検出される架線電圧Vsの周波数成分の解析を行う。具体的には、リップル電圧検出部15は、高圧配電系統5から出力される6600V系の交流電圧の周波数である電源周波数のn次の周波数について周波数成分の解析を行う。リップル電圧検出部15は、例えば、時間離散フーリエ変換または高速フーリエ変換などを行うフーリエ変換処理またはウェーブレット変換などによって周波数成分の解析を行う。
【0026】
例えば、リップル電圧検出部15は、各変電所4の整流器32が6パルス整流器であり、かつ各変電所4の場所が電源周波数50Hzの地域の場合、6次の周波数である300Hzについて、リップル電圧を算出する。リップル電圧検出部15は、算出したリップル電圧の情報であるリップル情報を出力する。リップル電圧は、リップル成分の谷からリップル成分の頂点までの電圧値、リップル成分の振幅、またはリップル成分の実効電圧値で表される。リップルの谷は、ボトムと呼ばれ、リップルの頂点はピークとも呼ばれる。なお、リップル電圧は、リップル成分の電圧の大きさを示す値であればよく、上述した例に限定されない。以下、リップル電圧をリップル電圧Vnと記載する場合がある。
【0027】
また、リップル電圧検出部15は、各変電所4の整流器32が12パルス整流器であり、かつ各変電所4の場所が電源周波数50Hzの地域の場合、12次の周波数である600Hzについて、リップル電圧Vnを算出し、算出したリップル電圧Vnの情報であるリップル情報を出力する。
【0028】
なお、リップル電圧検出部15は、6次の周波数におけるリップル電圧Vnの大きさと12次の周波数におけるリップル電圧Vnの大きさとに基づいて、変電所4の整流器32が6パルス整流器であるか12パルス整流器であるかを判定することができる。リップル電圧検出部15は、判定した結果に基づいて、n次の周波数におけるリップル電圧Vnの情報であるリップル情報を出力することができる。
【0029】
出力情報取得部16は、変電所4の無線通信機器36との間における無線通信を行う無線通信機器である。出力情報取得部16は、無線通信機器36から送信される出力情報を、不図示のネットワークを介して受信する。これにより、出力情報取得部16は、変電所4から架線2へ出力される電圧の値と、変電所4から架線2へ出力される電流の値とである出力情報を取得する。
図2に示す例では、出力情報取得部16は、
図2に示す2つの変電所4の各々から送信される出力情報を取得する。
図2に示す2つの破線矢印の各々は、無線通信機器36から出力情報取得部16へ出力情報が送信されることを表している。出力情報取得部16は、取得された出力情報を駅舎電源操作盤12へ出力する。なお、出力情報取得部16は、有線通信によって出力情報を受信する通信機器でもよい。
【0030】
駅舎電源操作盤12は、記憶処理部17と、記憶部18と、閾値算出部19と、回生動作判定部20と、制御部24と、表示部25とを備える。回生動作判定部20は、指標値算出部21と、比較部22と、判定結果出力部23とを備える。
【0031】
指標値算出部21は、架線電圧検出部14により周期Tsで検出された架線電圧Vsの情報と、リップル電圧検出部15により周期Tsで検出されたリップル電圧Vnの情報とを取得する。指標値算出部21は、架線電圧Vsとリップル電圧Vnとの比である回生判定指標値を算出する。回生判定指標値は、例えば、架線電圧Vsのリップル電圧Vnに対する比である。以下、回生判定指標値を回生判定指標値Vrと記載する場合がある。指標値算出部21は、回生判定指標値Vrの情報を出力する。
【0032】
なお、リップル電圧Vnがゼロである場合、指標値算出部21は、リップル電圧検出部15によって検出されたリップル電圧Vnのうち最後にゼロでない値が検出されたときのリップル電圧Vnを用いて回生判定指標値Vrを算出する。
【0033】
比較部22は、架線電圧検出部14から出力される架線電圧Vsの情報と、指標値算出部21から出力される回生判定指標値Vrとを取得する。また、比較部22は、閾値算出部19から出力される第1の動作閾値の情報および第2の動作閾値の情報を取得する。第1の動作閾値および第2の動作閾値の各々である動作閾値は、架線2に接続された列車1が回生動作を行っているか否かの閾値である。第1の動作閾値は、架線電圧Vsの閾値である。第2の動作閾値は、回生判定指標値Vrの閾値である。以下、第1の動作閾値を、第1の動作閾値Vs_thと記載する場合がある。また、第2の動作閾値を、第2の動作閾値Vr_thと記載する場合がある。比較部22は、架線電圧Vsと第1の動作閾値Vs_thとを比較する。比較部22は、回生判定指標値Vrと第2の動作閾値Vr_thとを比較する。比較部22は、架線電圧Vsと第1の動作閾値Vs_thとの比較結果と、回生判定指標値Vrと第2の動作閾値Vr_thとの比較結果とを、判定結果出力部23へ出力する。
【0034】
比較部22は、出力情報取得部16から出力される出力情報を取得する。ここで、
図2に示す2つの変電所4を、第1の変電所および第2の変電所とする。
図2に示す例では、比較部22は、第1の変電所の出力情報と第2の変電所の出力情報とを取得する。第1の変電所および第2の変電所の各々は、架線2に沿って、駅舎電源装置10が接続された箇所である測定点Pの隣の位置に接続されている変電所4である隣接変電所である。第1の変電所は、測定点Pから架線2に沿って一方の側において隣の位置に接続されている隣接変電所である。第2の変電所は、測定点Pから架線2に沿って他方の側において隣の位置に接続されている隣接変電所である。
図2において、例えば、測定点Pの左隣に接続されている変電所4が第1の変電所であって、測定点Pの右隣に接続されている変電所4が第2の変電所であるものとする。
【0035】
また、第1の変電所から架線2へ出力される電圧を出力電圧VA、第1の変電所から架線2へ出力される電流を出力電流IA、第2の変電所から架線2へ出力される電圧を出力電圧VB、および、第2の変電所から架線2へ出力される電流を出力電流IBとする。比較部22は、第1の変電所の出力情報である出力電圧VAの情報および出力電流IAの情報と、第2の変電所の出力情報である出力電圧VBの情報および出力電流IBの情報とを取得する。比較部22は、出力電流IAおよび出力電流IBの各々がゼロ未満であるか否かを判定する。比較部22は、出力電圧VAおよび出力電圧VBの各々と架線電圧Vsとを比較する。比較部22は、出力電流IAおよび出力電流IBの各々がゼロ未満であるか否かを判定した結果と、出力電圧VAおよび出力電圧VBの各々と架線電圧Vsとの比較結果とを、判定結果出力部23へ出力する。
【0036】
判定結果出力部23は、比較部22からの比較結果および判定結果に基づいて、列車1が回生動作をしているか否かを判定する。ここで、架線電圧Vsが第1の動作閾値Vs_th以上、かつ、回生判定指標値Vrが第2の動作閾値Vr_th以上であることを、第1の条件とする。また、出力電流IAおよび出力電流IBの各々がゼロ未満であって、かつ、出力電圧VAおよび出力電圧VBの各々が架線電圧Vs以上であることを、第2の条件とする。判定結果出力部23は、第1の条件を満足し、かつ第2の条件を満足する場合に、列車1が回生動作をしていると判定する。一方、第1の条件と第2の条件との少なくとも一方を満足しない場合に、列車1が回生動作をしていないと判定する。判定結果出力部23は、列車1が回生動作をしているか否かについての判定結果を電力変換部13へ出力する。
【0037】
このように、回生動作判定部20は、架線電圧Vsと第1の動作閾値Vs_thとの比較、および、回生判定指標値Vrと第2の動作閾値Vr_thとの比較によって、列車1が回生動作をしているか否かを判定する。すなわち、回生動作判定部20は、架線電圧Vsと、回生判定指標値Vrと、動作閾値である第1の動作閾値Vs_thおよび第2の動作閾値Vr_thとに基づいて、列車1が回生動作をしているか否かを判定する。
【0038】
また、回生動作判定部20は、出力電流IAおよび出力電流IBに基づいて、列車1が回生動作をしているか否かを判定する。さらに、回生動作判定部20は、出力電圧VAおよび出力電圧VBの各々と架線電圧Vsとの比較によって、列車1が回生動作をしているか否かを判定する。すなわち、回生動作判定部20は、架線電圧Vsと、第1の変電所の出力情報と、第2の変電所の出力情報とに基づいて、列車1が回生動作をしているか否かを判定する。
【0039】
電力変換部13は、列車1が回生動作をしていることを示す判定結果が入力された場合に、架線2に発生した回生電力を交流電力に変換して駅舎7へ出力する電力変換処理を実行する。
【0040】
記憶処理部17は、架線電圧検出部14から出力される架線電圧Vsの情報と、出力情報取得部16から出力される出力情報と、指標値算出部21から出力される回生判定指標値Vrの情報とを取得する。記憶処理部17は、架線電圧Vsの情報、出力情報、および回生判定指標値Vrの情報を時刻の情報に関連付けた検出情報を、あらかじめ設定された周期Tsで生成する。また、記憶処理部17は、回生動作が行われていると判定されたときにおける、架線電圧Vsの情報、出力情報、および回生判定指標値Vrの情報を時刻の情報に関連付けた検出情報を生成する。検出情報に関連付けられる時刻の情報は、例えば、架線電圧検出部14で架線電圧Vsが検出された時刻の情報、または、記憶処理部17で検出情報を生成する時刻の情報である。記憶処理部17は、生成した検出情報を記憶部18に記憶させる。記憶部18には、周期Tsで生成された検出情報と、回生動作が行われていると判定されたときに生成された検出情報とが蓄積される。
【0041】
回生動作判定部20は、比較部22での比較に使用された第1の動作閾値Vs_thの情報と、比較部22での比較に使用された第2の動作閾値Vr_thの情報とを記憶処理部17へ出力する。記憶処理部17は、第1の動作閾値Vs_thの情報と第2の動作閾値Vr_thの情報とを記憶部18に記憶させる。記憶部18には、第1の動作閾値Vs_thの情報と第2の動作閾値Vr_thの情報とが蓄積される。
【0042】
閾値算出部19は、記憶部18に蓄積された検出情報に基づいて、比較部22での比較に使用される動作閾値である第1の動作閾値Vs_thおよび第2の動作閾値Vr_thを算出する。駅舎電源操作盤12には、第1の動作閾値Vs_thの初期値と、第2の動作閾値Vr_thの初期値とがあらかじめ設定されている。閾値算出部19は、第1の動作閾値Vs_thを初期値から補正することによって、比較部22での比較に使用される第1の動作閾値Vs_thを算出する。閾値算出部19は、第2の動作閾値Vr_thを初期値から補正することによって、比較部22での比較に使用される第2の動作閾値Vr_thを算出する。
【0043】
検出情報に含まれる、架線電圧Vs、出力情報、および回生判定指標値Vrは、第1の動作閾値Vs_thおよび第2の動作閾値Vr_thの各々を算出するための特徴量とする。変電所4から架線2へ出力される電圧と電流との関係である変電所特性は、記憶部18に蓄積された変電所4ごとの出力情報によって表すことができる。記憶部18に蓄積された第1の変電所の出力情報は、第1の変電所の変電所特性の情報であるものといえる。記憶部18に蓄積された第2の変電所の出力情報は、第2の変電所の変電所特性の情報であるものといえる。
【0044】
閾値算出部19は、記憶部18に蓄積された特徴量と記憶部18に蓄積された第1の動作閾値Vs_thとの関係を求めておき、当該関係と、第1の動作閾値Vs_thを算出するときに取得された検出情報に含まれる特徴量とに基づいて、第1の動作閾値Vs_thを算出する。閾値算出部19は、記憶部18に蓄積された特徴量と記憶部18に蓄積された第2の動作閾値Vr_thとの関係を求めておき、当該関係と、第2の動作閾値Vr_thを算出するときに取得された検出情報に含まれる特徴量とに基づいて、第2の動作閾値Vr_thを算出する。
【0045】
このように、閾値算出部19は、記憶部18に蓄積された特徴量である、第1の変電所の変電所特性の情報、第2の変電所の変電所特性の情報、架線電圧Vs、および回生判定指標値Vrと、動作閾値を算出するときに取得された特徴量である、第1の変電所の出力情報、第2の変電所の出力情報、架線電圧Vs、および回生判定指標値Vrとに基づいて、動作閾値を算出する。なお、閾値算出部19により第1の動作閾値Vs_thおよび第2の動作閾値Vr_thの各々を算出する閾値算出処理の具体例については、後述する実施の形態2において説明する。
【0046】
閾値算出部19は、算出された第1の動作閾値Vs_thの情報と、算出された第2の動作閾値Vr_thの情報とを、比較部22へ出力する。比較部22には、閾値算出部19により算出された第1の動作閾値Vs_thと、閾値算出部19により算出された第2の動作閾値Vr_thとが設定される。
【0047】
制御部24は、閾値算出部19と回生動作判定部20とを制御する。また、制御部24は、回生動作判定部20による判定結果と、記憶部18に記憶された情報とを取得する。制御部24は、回生動作判定部20による判定結果を表示部25に表示させる処理と、記憶部18に記憶された情報を表示部25に表示させる処理とを実行する。表示部25は、回生動作判定部20による判定結果と、記憶部18に記憶された情報とを表示する。
【0048】
次に、架線電圧Vsとリップル電圧Vnとの関係について説明する。
図3は、実施の形態1にかかる架線電圧の変化の例を示す図である。
図3において、横軸は時間を表し、縦軸は架線2の電圧である架線電圧Vs[V]を表す。
図3に示すグラフは、無負荷状態から、列車1が加速などを行う力行動作の状態、無負荷状態、列車1が減速などを行う回生動作の状態、および無負荷状態の順に推移しているときの架線電圧Vsの変化を示している。無負荷状態は、架線2から列車1への電力供給および列車1から架線2への電力供給がいずれも行われていない状態である。
【0049】
図3に示す架線電圧Vsの大きさは、各状態での瞬時値を示しており、無負荷状態では、実際には架線電圧Vsにリップル成分が含まれている。無負荷状態のときの波形を枠A内に示す。架線2には、変電所4から電力が供給されており、変電所4の整流器32の影響によって架線電圧Vsにはリップル成分が含まれる。
【0050】
架線2において列車1が無負荷状態から回生動作の状態に推移するとき、列車1が発生する回生電力によって架線電圧Vsが上昇する。架線電圧Vsが上昇することによって、リップル成分の谷の部分が押し上げられて浅くなっていく。無負荷状態から回生動作に遷移している状態の波形を枠B内に示す。さらに、架線電圧Vsが大きくなると、架線電圧Vsとリップル成分の頂点とが同じ電圧になる。このときの状態を枠C内に示す。回生動作によってさらに架線電圧Vsが大きくなると、リップル成分の頂点よりも架線電圧Vsが大きくなる。
【0051】
次に、回生判定指標値Vrについて説明する。
図4は、実施の形態1にかかる架線電圧の変化と、リップル電圧の変化と、回生判定指標値の変化との関係の例を示す図である。
図4において、横軸は時間を表し、縦軸は架線電圧Vs[V]、リップル電圧Vn[V]、または回生判定指標値Vrを表す。
図4に示す例では、回生判定指標値Vrは、架線電圧Vsのリップル電圧Vnに対する比で表される値である。すなわち、回生判定指標値Vrは、架線電圧Vsをリップル電圧Vnで除算した値である。
【0052】
図4に示すように、力行動作の状態では、無負荷状態のときよりも架線電圧Vsが低くなり、回生動作の状態では、無負荷状態のときよりも架線電圧Vsが高くなる。また、力行動作の状態では、無負荷状態のときよりもリップル電圧Vnが高くなり、回生動作の状態では、無負荷状態のときよりもリップル電圧Vnが低くなる。そのため、架線電圧Vsのリップル電圧Vnに対する比である回生判定指標値Vrは、力行動作の状態では無負荷状態のときよりも小さくなり、回生動作の状態では無負荷状態のときよりも大きくなる。
【0053】
駅舎電源装置10で検出される架線電圧Vsの変動とリップル電圧Vnの変動とは、負荷変動に対して互いに連動するものではない。このため、架線電圧Vsとリップル電圧Vnとから無負荷電圧を推定することとした場合に、負荷変動の影響により無負荷電圧の値の推定精度が低下することとなる。
【0054】
実施の形態1では、変電所4の出力情報が、第1の動作閾値Vs_thおよび第2の動作閾値Vr_thを算出する際における特徴量の1つとされている。変電所4の出力情報は、負荷変動に連動する。このため、駅舎電源装置10は、変電所4の出力情報が特徴量の1つとされることによって、負荷変動に応じた第1の動作閾値Vs_thおよび第2の動作閾値Vr_thを自動的に算出することが可能となる。
【0055】
駅舎電源装置10は、負荷変動に応じた第1の動作閾値Vs_thの補正によって、第1の動作閾値Vs_thを、無負荷状態における架線電圧Vsの値に近づけることが可能となる。また、駅舎電源装置10は、負荷変動に応じた第2の動作閾値Vr_thの補正によって、第2の動作閾値Vr_thを、無負荷状態における回生判定指標値Vrの値に近づけることが可能となる。これにより、駅舎電源装置10は、回生電力が発生しているか否かを精度良く判定することができ、回生電力を確実に取り込むことが可能となる。駅舎電源装置10は、回生電力の取り込みが開始されるときの架線電圧Vsが無負荷電圧を下回ることを防ぐことができる。
【0056】
次に、変電所4から架線2へ出力される電圧および電流の関係である変電所特性について説明する。
図5は、実施の形態1にかかる変電所特性について説明するための図である。
図5において、横軸は、変電所4の整流器32が架線2へ出力する電流[A]を表し、縦軸は、変電所4の整流器32が架線2へ出力する電圧[V]を表す。
図5において、縦軸よりも右側に示す破線の各グラフは、力行状態における電流および電圧の関係の例、すなわち、力行状態における変電所特性の例を表す。
図5において、縦軸よりも左側に示す実線は、回生電力が生じているときの電圧および電流の関係を表す。
図5において、電流がゼロであるときにおける電圧の値が、回生動作が開始されるときにおける電圧の値、すなわち第1の動作閾値Vs_thであるものとする。
【0057】
力行状態における変電所特性は、負荷変動の影響により変動する。
図5において、力行状態における変電所特性を表す複数のグラフは、変電所特性が変動することを表している。
図5に示す例では、互いに向かい合う矢印同士の間の範囲において、変電所特性が変動するものとする。閾値算出部19により算出される第1の動作閾値Vs_thは、変電所特性の変動に伴って変動する。変電所4の出力情報、すなわち変電所特性の情報が記憶部18に常時記憶されることによって、記憶部18には、変電所特性が時々刻々と変動する場合における変電所特性を示す情報が蓄積される。
【0058】
図5において、第1の動作閾値Vs_thを表す実線の下に示す複数の点線は、変電所特性の変動に伴って第1の動作閾値Vs_thが変動することを表している。閾値算出部19は、記憶部18に蓄積された特徴量である変電所特性の情報に基づいて、第1の動作閾値Vs_thを補正する。閾値算出部19は、記憶部18に蓄積されている情報に示される変電所特性の中から、第1の動作閾値Vs_thを算出するときの変電所特性に近い変電所特性に基づいて、第1の動作閾値Vs_thを算出することができる。これにより、閾値算出部19は、負荷変動に応じた第1の動作閾値Vs_thを算出することができる。
【0059】
閾値算出部19は、第2の動作閾値Vr_thについても、第1の動作閾値Vs_thの場合と同様に、記憶部18に蓄積された特徴量である変電所特性の情報に基づいて補正可能である。閾値算出部19は、記憶部18に蓄積されている情報に示される変電所特性の中から、第2の動作閾値Vr_thを算出するときの変電所特性に近い変電所特性に基づいて、第2の動作閾値Vr_thを算出することができる。これにより、閾値算出部19は、負荷変動に応じた第2の動作閾値Vr_thを算出することができる。
【0060】
このように、駅舎電源装置10は、変電所特性の情報に基づいて補正された第1の動作閾値Vs_thおよび第2の動作閾値Vr_thが算出される。このため、例えば、整流器32の更新により変電所特性が変更された場合において、駅舎電源装置10は、変更後の変電所特性に応じて第1の動作閾値Vs_thおよび第2の動作閾値Vr_thを自動的に設定することができる。これにより、第1の動作閾値Vs_thおよび第2の動作閾値Vr_thを設定するための試験に要するコストを削減できる。
【0061】
駅舎電源装置10において記憶部18に蓄積された情報は、駅舎電源装置10が設置されている路線で活用可能な回生量の分析に活用することとしてもよい。記憶部18に蓄積された情報は、エネルギー削減の検討などにおいて活用することができる。
【0062】
なお、上記説明では、第1の動作閾値Vs_thおよび第2の動作閾値Vr_thの各々を算出するための特徴量を、架線電圧Vs、出力情報、および回生判定指標値Vrとしたが、これに限られないものとする。特徴量には、少なくとも出力情報が含まれていればよいものとする。また、特徴量には、架線電圧Vs、出力情報、および回生判定指標値Vr以外の情報が含まれることとしてもよい。
【0063】
無負荷電圧は、季節または時間帯によって変動し得る。特徴量には、時刻の情報、または日付の情報などが含められてもよい。または、特徴量には、天気または気温といった、気象情報が含められてもよい。ここでは、時刻情報、日付情報、および気象情報などを、環境情報と称する。環境情報は、駅舎電源装置10が設置されている環境に関する情報であるものとする。
【0064】
例えば、気温の低下により列車1が暖房を使用する場合、架線2に発生した回生電力が列車1によって消費され得る。このため、列車1が暖房を使用する状況と列車1が暖房を使用しない状況とでは、無負荷電圧が変動し得る。無負荷電圧を変動させる条件となり得る環境情報が特徴量に含められることによって、閾値算出部19は、負荷変動に応じて精度良く第1の動作閾値Vs_thおよび第2の動作閾値Vr_thを補正することが可能となる。
【0065】
次に、フローチャートを用いて回生動作判定部20による処理を説明する。
図6は、実施の形態1にかかる駅舎電源装置10の回生動作判定部20による回生判定処理の例を示すフローチャートである。回生動作判定部20は、
図6に示す処理を繰り返し実行する。
【0066】
ステップS1において、回生動作判定部20は、架線電圧Vsの情報、リップル電圧Vnの情報、出力電圧VA,VBの情報、および出力電流IA,IBの情報を取得する。すなわち、回生動作判定部20は、架線電圧Vsの情報、リップル電圧Vnの情報、第1の変電所の出力情報、および第2の変電所の出力情報を取得する。
【0067】
ステップS2において、回生動作判定部20は、架線電圧Vsをリップル電圧Vnで除算することによって回生判定指標値Vrを算出する。ステップS3において、回生動作判定部20は、架線電圧Vsの情報、回生判定指標値Vrの情報、出力電圧VA,VBの情報、および出力電流IA,IBの情報を記憶部18に記憶する。
【0068】
ステップS4において、回生動作判定部20は、第1の動作閾値Vs_thの情報と第2の動作閾値Vr_thの情報とを取得する。閾値算出部19は、第1の動作閾値Vs_thを初期値から補正することによって、第1の動作閾値Vs_thを算出する。閾値算出部19は、第2の動作閾値Vr_thを初期値から補正することによって、第2の動作閾値Vr_thを算出する。閾値算出部19は、第1の動作閾値Vs_thの情報と第2の動作閾値Vr_thの情報とを回生動作判定部20へ出力する。これにより、回生動作判定部20は、第1の動作閾値Vs_thの情報と第2の動作閾値Vr_thの情報とを取得する。
【0069】
ステップS5において、回生動作判定部20は、第1の条件を満たすか否か、すなわち、「Vs≧Vs_thかつVr≧Vr_th」を満たすか否かを判定する。「Vs≧Vs_thかつVr≧Vr_th」を満たす場合(ステップS5,Yes)、回生動作判定部20は、ステップS6へ手順を進める。一方、「Vs≧Vs_thかつVr≧Vr_th」を満たさない場合(ステップS5,No)、回生動作判定部20は、
図6に示す回生判定処理を終了する。
【0070】
ステップS6において、回生動作判定部20は、第2の条件を満たすか否か、すなわち、「I
A<0またはI
B<0」を満たし、かつ、「Vs≧V
AおよびVs≧V
B」を満たすか否かを判定する。「I
A<0またはI
B<0」を満たし、かつ、「Vs≧V
AおよびVs≧V
B」を満たす場合(ステップS6,Yes)、回生動作判定部20は、ステップS7へ手順を進める。一方、「I
A<0またはI
B<0」、および、「Vs≧V
AおよびVs≧V
B」の少なくとも一方を満たさない場合(ステップS6,No)、回生動作判定部20は、
図6に示す回生判定処理を終了する。
【0071】
ステップS7において、回生動作判定部20は、回生動作が行われていると判定し、判定結果を電力変換部13へ出力する。すなわち、回生動作判定部20は、第1の条件および第2の条件を満たす場合に、回生動作が行われていると判定する。
【0072】
ステップS8において、回生動作判定部20は、回生動作が行われていると判定されたときにおける、架線電圧Vsの情報、回生判定指標値Vrの情報、出力電圧V
A,V
Bの情報、および出力電流I
A,I
Bの情報を記憶部18に記憶する。ステップS8を終えることにより、回生動作判定部20は、
図6に示す回生判定処理を終了する。
【0073】
なお、上記説明では、回生動作判定部20は、第1の条件および第2の条件を満たす場合に、回生動作が行われていると判定するものとしたが、第2の条件を適宜変更してもよい。例えば、第2の条件のうち「Vs≧VAおよびVs≧VB」は、第1の変電所の設置場所による電圧降下を考慮して、または、第2の変電所の設置場所による電圧降下を考慮して、変更されてもよい。または、例えば、第2の条件のうち「Vs≧VAおよびVs≧VB」は、第1の変電所と第2の変電所との間における力行状態の列車1の位置と、第1の変電所と第2の変電所との間において回生動作を行っている列車1の位置とに応じて場合分けされてもよい。このように、変電所4の設置場所に応じて、または列車1の位置に応じて、第2の条件を適宜変更することによって、回生動作判定部20は、回生動作が行われているか否かを、さらに精度良く判定することが可能となる。
【0074】
または、回生動作判定部20は、第2の条件についての判定を省いてもよい。すなわち、回生動作判定部20は、第1の条件を満たす場合に、回生動作が行われていると判定することとしてもよい。この場合、回生動作判定部20は、変電所4の設置場所によらず、または列車1の位置によらず第2の条件が一律に適用されることによって判定の精度が低下することを回避することができる。また、この場合、回生動作判定部20は、第1の条件についての判定と第2の条件についての判定とを行う場合に比べて、回生判定処理を簡易なものとすることができる。
【0075】
上記説明では、出力情報取得部16は、測定点Pから架線2に沿って一方の側において隣の位置に接続されている第1の変電所と、測定点Pから架線2に沿って他方の側において隣の位置に接続されている第2変電所との各々から、出力情報を取得することとした。この場合、出力情報取得部16は、当該一方の側の1つの変電所4の出力情報と、当該他方の側の1つの変電所4の出力情報とを取得する。出力情報取得部16は、当該一方の側の2つ以上の変電所4の出力情報を取得することとしてもよく、または、当該他方の側の2つ以上の変電所4の出力情報を取得することとしてもよい。すなわち、出力情報を取得する対象とする隣接変電所には、測定点Pから架線2に沿って一方の側において隣の位置に接続されている1つ以上の変電所4と、測定点Pから架線2に沿って他方の側において隣の位置に接続されている1つ以上の変電所4とを含めることができる。
【0076】
または、出力情報取得部16は、第1の変電所と第2変電所との一方のみから出力情報を取得することとしてもよい。この場合、出力情報取得部16は、第1の変電所と第2変電所とのうち、架線2に沿って測定点Pから最寄りの位置に接続されている一方から、出力情報を取得する。
図2に示す例では、測定点Pの左隣に接続されている第1の変電所が、架線2に沿って測定点Pから最寄りの位置に接続されている変電所4である。このため、
図2に示す例の場合、出力情報取得部16は、第1の変電所のみから出力情報を取得することとしてもよい。このように、出力情報取得部16は、架線2に沿って測定点Pの隣の位置に接続されている少なくとも1つの変電所4である隣接変電所の出力情報を取得すればよい。
【0077】
架線2に沿って測定点Pから最寄りの位置に接続されている変電所4は、駅舎電源装置10にとって、負荷変動に最も大きな影響を及ぼし得る。駅舎電源装置10は、架線2に沿って最寄りの位置の隣接変電所から出力情報を取得することによって、負荷変動の影響がより反映された動作閾値を設定することが可能となる。これにより、駅舎電源装置10は、回生電力が発生しているか否かを精度良く判定することができ、回生電力を確実に取り込むことが可能となる。
【0078】
このように、隣接変電所には、測定点Pから架線2に沿って一方の側において隣の位置に接続されている1つ以上の変電所4と、測定点Pから架線2に沿って他方の側において隣の位置に接続されている1つ以上の変電所4と、の少なくとも一方が含まれていればよい。これにより、駅舎電源装置10は、負荷変動に影響を及ぼし得る変電所4の出力情報を取得することができ、負荷変動の影響が反映された動作閾値を設定することができる。
【0079】
ここまで、駅舎電源装置10が接続される測定点Pが、2つの変電所4の間に設けられる場合について説明した。次に、複数の変電所4が接続されている架線2の端に測定点Pが設定される場合について説明する。
図7は、実施の形態1において、複数の変電所4が接続されている架線2の端部に駅舎電源装置10が接続される場合の例を示す図である。
図7では、駅舎電源装置10と、駅舎電源装置10に接続される設備とを模式的に示す。
【0080】
図7に示す架線2のうち、
図7における左端が、架線2の1つの端部であるものとする。
図7に示す例では、測定点Pは、架線2の当該端部に設けられている。
図7に示す例では、
図7において測定点Pよりも右側に複数の変電所4が接続されている。すなわち、測定点Pに対し、測定点Pから架線2に沿って一方の側に複数の変電所4が接続されている。
図7では、駅舎電源装置10と、架線2を介して駅舎電源装置10に接続される複数の変電所4のうちの2つと、駅舎電源装置10に接続される駅舎7とを示す。なお、架線2に接続される変電所4の数は任意であるものとする。
【0081】
図7に示す例では、測定点Pの右隣に接続されている変電所4は、架線2に沿って測定点Pから最寄りの位置に接続されている変電所4である。出力情報取得部16は、測定点Pの右隣に接続されている1つの変電所4から出力情報を取得する。出力情報取得部16は、測定点Pの右隣に接続されている2つ以上の変電所4から出力情報を取得してもよい。
【0082】
このように、架線2の端部に駅舎電源装置10が接続される場合、隣接変電所には、測定点Pから架線2に沿って一方の側において隣に位置する1つ以上の変電所4が含まれていればよい。これにより、駅舎電源装置10は、負荷変動に影響を及ぼし得る変電所4の出力情報を取得することができ、負荷変動の影響が反映された動作閾値を設定することができる。
【0083】
実施の形態1によると、駅舎電源装置10は、変電所特性の情報と取得された出力情報とに基づいて、第1の動作閾値Vs_thおよび第2の動作閾値Vr_thを算出する。駅舎電源装置10は、列車1が回生動作をしているか否かを、架線電圧Vsおよび第1の動作閾値Vs_th、ならびに、回生判定指標値Vrおよび第2の動作閾値Vr_thに基づいて判定する。駅舎電源装置10は、負荷変動の影響に応じて補正された第1の動作閾値Vs_thおよび第2の動作閾値Vr_thを算出することができることによって、回生電力が発生しているか否かを精度良く判定することができ、回生電力を確実に取り込むことが可能となる。以上により、駅舎電源装置10は、架線2に接続された列車1の回生動作によって発生する回生電力を確実に取り込むことができる、という効果を奏する。
【0084】
実施の形態2.
実施の形態2では、閾値算出部19による閾値算出処理の具体例として、機械学習の手法を用いて動作閾値を算出する例を説明する。実施の形態2において、駅舎電源装置10は、
図2に示す構成を備えるものとする。
【0085】
図8は、実施の形態2にかかる閾値算出部19の構成例を示す図である。閾値算出部19は、学習装置51と、推論装置52とを備える。学習装置51は、第1の動作閾値Vs_thおよび第2の動作閾値Vr_thの各々である動作閾値と特徴量との関係を学習する。学習装置51には、特徴量が入力される。入力される特徴量は、架線電圧Vs、出力情報、および回生判定指標値Vrであるものとする。特徴量は、駅舎電源操作盤12により取得される検出情報に含まれている。検出情報に含まれる出力情報は、1または2以上の変電所4の各々から取得される出力情報である。特徴量として学習装置51へ入力される出力情報は、変電所4ごとの変電所特性の情報でもある。
【0086】
学習装置51は、データ取得部53と、モデル生成部54と、モデル記憶部55とを備える。データ取得部53は、架線電圧Vsの情報、出力情報、および回生判定指標値Vrの情報が互いに対応付けられた検出情報と、動作閾値の情報とを、記憶部18から取得する。データ取得部53は、架線電圧Vsの情報、出力情報、回生判定指標値Vrの情報、および動作閾値の情報をまとめ合わせた学習用データを作成する。すなわち、データ取得部53は、架線電圧Vsの情報、変電所特性の情報、および回生判定指標値Vrの情報を含む特徴量と動作閾値とを含む学習用データを取得する。
【0087】
モデル生成部54は、学習用データを学習することによって学習済モデルを生成する。学習済モデルは、回生動作判定部20による判定に使用される動作閾値の推論に使用されるモデルである。モデル記憶部55は、モデル生成部54によって生成された学習済モデルを記憶する。モデル生成部54は、モデル記憶部55から学習済モデルを読み出し、学習用データに従った再学習により学習済モデルを更新してもよい。
【0088】
モデル生成部54が用いる学習アルゴリズムとしては、教師あり学習、教師なし学習、または強化学習等の公知のアルゴリズムを用いることができる。実施の形態2では、一例として、モデル生成部54が用いる学習アルゴリズムに強化学習(Reinforcement Learning)が適用されるものとする。強化学習は、ある環境内におけるエージェントである行動主体が、現在の状態を観測し、取るべき行動を決定する、というものである。エージェントは行動を選択することで環境から報酬を得て、一連の行動を通じて報酬が最も多く得られるような方策を学習する。強化学習の代表的な手法として、Q学習(Q-Learning)およびTD学習(TD-Learning)などが知られている。
【0089】
なお、モデル生成部54が用いる学習アルゴリズムには、強化学習以外の学習が適用されてもよい。モデル生成部54は、強化学習以外の公知の学習アルゴリズム、例えば、深層学習(Deep Learning)、ニューラルネットワーク、遺伝的プログラミング、帰納論理プログラミングまたはサポートベクターマシンといった学習アルゴリズムを用いて機械学習を実行してもよい。
【0090】
推論装置52は、特徴量を含む推論用データから動作閾値を推論する。推論装置52は、データ取得部56と推論部57とを備える。データ取得部56には、架線電圧Vsの情報、出力情報、および回生判定指標値Vrの情報が互いに対応付けられた検出情報が、推論用データとして入力される。推論部57は、モデル記憶部55から学習済モデルを読み出す。推論部57は、学習済モデルを用いて、回生動作判定部20による判定に使用される動作閾値を推論用データから推論する。推論部57は、学習済モデルへ推論用データを入力することによって、推論結果である動作閾値を出力する。このようにして、推論装置52は、補正された動作閾値を算出する。推論装置52は、算出された動作閾値の情報を比較部22へ出力する。
【0091】
なお、上記説明では、学習装置51のデータ取得部53が取得する学習用データには、架線電圧Vsの情報、変電所特性の情報、および回生判定指標値Vrの情報を含む特徴量と動作閾値とが含まれることとしたが、これに限られないものとする。学習用データには、少なくとも、変電所特性の情報を含む特徴量と動作閾値とが含まれていればよい。また、推論用データには、少なくとも、変電所特性の情報を含む特徴量が含まれていればよい。
【0092】
学習用データに含まれる特徴量には、架線電圧Vs、変電所特性の情報、および回生判定指標値Vr以外の情報が含まれてもよい。推論用データに含まれる特徴量には、架線電圧Vs、変電所特性の情報、および回生判定指標値Vr以外の情報が含まれてもよい。
【0093】
例えば、学習用データに含まれる特徴量には、時刻情報、日付情報、および気象情報などの環境情報が含まれてもよい。環境情報は、駅舎電源装置10が設置されている環境に関する情報である。また、推論用データに含まれる特徴量には、環境情報が含まれてもよい。無負荷電圧を変動させる条件となり得る環境情報が特徴量に含められることによって、学習装置51は、負荷変動に応じてより精度良く動作閾値を補正することが可能となる。
【0094】
図8に示す例では、学習装置51は、閾値算出部19の内部の装置である。学習装置51は、閾値算出部19の外部の装置であってもよい。学習装置51は、駅舎電源操作盤12に備えられてもよく、駅舎電源操作盤12の外部に備えられてもよい。学習装置51が駅舎電源操作盤12の外部の装置である場合、学習装置51は、ネットワークを介して駅舎電源操作盤12に接続可能な装置であってもよい。学習装置51は、クラウドサーバ上に存在する装置でもよい。
【0095】
実施の形態2によると、駅舎電源装置10は、学習装置51での学習によって学習済モデルを生成し、学習済モデルを用いて動作閾値を推論する。これにより、駅舎電源装置10は、負荷変動の影響に応じて補正された動作閾値を算出することができ、回生電力が発生しているか否かを精度良く判定することが可能となる。以上により、駅舎電源装置10は、架線2に接続された列車1の回生動作によって発生する回生電力を確実に取り込むことができる、という効果を奏する。
【0096】
なお、上記説明では、機械学習の手法を用いて動作閾値を算出することとしたが、閾値算出部19は、機械学習以外の手法を用いて動作閾値を算出することとしてもよい。
【0097】
次に、実施の形態1または2にかかる駅舎電源操作盤12のハードウェア構成について説明する。
図9は、実施の形態1または2にかかる駅舎電源操作盤12のハードウェア構成例を示す図である。駅舎電源操作盤12は、プロセッサ61およびメモリ62を有する処理回路60と、入出力インタフェース63と、ディスプレイ64とを備えるコンピュータを含む。
【0098】
プロセッサ61、メモリ62、入出力インタフェース63、およびディスプレイ64は、例えば、バス65によって互いに情報の送受信が可能である。記憶部18は、メモリ62によって実現される。表示部25は、ディスプレイ64によって実現される。
【0099】
記憶処理部17、閾値算出部19、回生動作判定部20、および制御部24は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアまたはファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ62に格納される。処理回路60では、メモリ62に記憶されたプログラムをプロセッサ61が読み出して実行することにより、記憶処理部17、閾値算出部19、回生動作判定部20、および制御部24の機能が実現される。すなわち、処理回路60は、記憶処理部17、閾値算出部19、回生動作判定部20、および制御部24の処理が結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリ62を備える。このプログラムは、駅舎電源操作盤12の手順および方法をコンピュータに実行させるプログラムといえる。メモリ62は、プロセッサ61が各種処理を実行する際の一時メモリにも使用される。
【0100】
プロセッサ61は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、およびシステムLSI(Large Scale Integration)のうちの1つ以上を含む。メモリ62は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、およびEEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)のうちの1つ以上を含む。また、メモリ62は、コンピュータが読み取り可能なプログラムが記録された記録媒体を含む。かかる記録媒体は、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルメモリ、光ディスク、コンパクトディスク、およびDVD(Digital Versatile Disc)のうちの1つ以上を含む。なお、駅舎電源操作盤12は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)およびFPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路を含んでいてもよい。
【0101】
以上の各実施の形態に示した構成は、本開示の内容の一例を示すものである。各実施の形態の構成は、別の公知の技術と組み合わせることが可能である。各実施の形態の構成同士が適宜組み合わせられてもよい。本開示の要旨を逸脱しない範囲で、各実施の形態の構成の一部を省略または変更することが可能である。
【0102】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0103】
(付記1)
変電所から電力が供給される架線に接続された駅舎電源装置であって、
前記架線の電圧である架線電圧を検出する架線電圧検出部と、
前記変電所から前記架線へ出力される電圧および電流の情報を含む出力情報を取得する出力情報取得部と、
前記変電所から前記架線へ出力される電圧と電流との関係である変電所特性の情報と、取得された前記出力情報とに基づいて、前記架線に接続された列車が回生動作を行っているか否かの閾値である動作閾値を算出する閾値算出部と、
前記架線電圧と、前記動作閾値とに基づいて、前記列車が回生動作をしているか否かを判定する回生動作判定部と、を備える
ことを特徴とする駅舎電源装置。
(付記2)
前記架線には複数の前記変電所から電力が供給され、
前記出力情報取得部は、前記架線に沿って、前記駅舎電源装置が接続された箇所である測定点の隣の位置に接続されている少なくとも1つの前記変電所である隣接変電所の前記出力情報を取得し、
前記閾値算出部は、前記隣接変電所の前記変電所特性と前記隣接変電所の前記出力情報とに基づいて前記動作閾値を算出する
ことを特徴とする付記1に記載の駅舎電源装置。
(付記3)
前記隣接変電所には、前記架線に沿って前記測定点から最寄りの位置に接続されている前記変電所が含まれる
ことを特徴とする付記2に記載の駅舎電源装置。
(付記4)
前記隣接変電所には、前記測定点から前記架線に沿って一方の側において隣の位置に接続されている1つ以上の前記変電所と、前記測定点から前記架線に沿って他方の側において隣の位置に接続されている1つ以上の前記変電所と、の少なくとも一方が含まれる
ことを特徴とする付記3に記載の駅舎電源装置。
(付記5)
前記測定点に対し、前記架線に沿って一方の側に複数の前記変電所が接続されており、
前記隣接変電所には、前記一方の側において前記測定点の隣に位置する1つ以上の前記変電所が含まれる
ことを特徴とする付記3に記載の駅舎電源装置。
(付記6)
前記架線電圧に含まれるリップル成分の電圧であるリップル電圧を検出するリップル電圧検出部を備え、
前記閾値算出部は、前記変電所特性と前記出力情報とに基づいて、前記動作閾値である第1の動作閾値と、前記列車が回生動作を行っているか否かの閾値である第2の動作閾値とを算出し、
前記回生動作判定部は、前記架線電圧と前記第1の動作閾値との比較、および、前記架線電圧と前記リップル電圧との比である回生判定指標値と前記第2の動作閾値との比較によって、前記列車が回生動作をしているか否かを判定する
ことを特徴とする付記1から5のいずれか1つに記載の駅舎電源装置。
(付記7)
前記回生動作判定部は、さらに、前記架線電圧および前記出力情報に基づいて、前記列車が回生動作をしているか否かを判定する
ことを特徴とする付記1から6のいずれか1つに記載の駅舎電源装置。
(付記8)
前記閾値算出部は、
取得された前記出力情報を含む推論用データを取得するデータ取得部と、
前記変電所特性の情報を含む特徴量と前記動作閾値とを学習させた学習済モデルを用いて、前記推論用データから、前記回生動作判定部による判定に使用される前記動作閾値を推論する推論部と、を備える
ことを特徴とする付記1から7のいずれか1つに記載の駅舎電源装置。
(付記9)
前記特徴量には、前記駅舎電源装置が設置されている環境に関する環境情報が含まれる
ことを特徴とする付記8に記載の駅舎電源装置。
(付記10)
前記変電所特性の情報を含む特徴量と算出された前記動作閾値とを含む学習用データを取得するデータ取得部と、
前記回生動作判定部による判定に使用される前記動作閾値の推論に使用される学習済モデルを、前記学習用データを学習することによって生成するモデル生成部と、を有する学習装置を備える
ことを特徴とする付記1から7のいずれか1つに記載の駅舎電源装置。
(付記11)
前記特徴量には、前記駅舎電源装置が設置されている環境に関する環境情報が含まれる
ことを特徴とする付記10に記載の駅舎電源装置。
(付記12)
変電所から電力が供給される架線に接続された列車が回生動作をしているか否かをコンピュータにより判定する回生判定方法であって、
前記架線の電圧である架線電圧を検出するステップと、
前記変電所から前記架線へ出力される電圧および電流の情報を含む出力情報を取得するステップと、
前記変電所から前記架線へ出力される電圧と電流との関係である変電所特性の情報と、取得された前記出力情報とに基づいて、前記列車が回生動作を行っているか否かの閾値である動作閾値を算出するステップと、
前記架線電圧と、前記動作閾値とに基づいて、前記列車が回生動作をしているか否かを判定するステップと、を含む
ことを特徴とする回生判定方法。
(付記13)
変電所から電力が供給される架線の電圧である架線電圧を検出するステップと、
前記変電所から前記架線へ出力される電圧および電流の情報を含む出力情報を取得するステップと、
前記変電所から前記架線へ出力される電圧と電流との関係である変電所特性の情報と、取得された前記出力情報とに基づいて、前記架線に接続された列車が回生動作を行っているか否かの閾値である動作閾値を算出するステップと、
前記架線電圧と、前記動作閾値とに基づいて、前記列車が回生動作をしているか否かを判定するステップと、をコンピュータに実行させる
ことを特徴とする回生判定プログラム。
【符号の説明】
【0104】
1 列車、2 架線、3 レール、4 変電所、5 高圧配電系統、6 送電線、7 駅舎、10 駅舎電源装置、11 主回路部、12 駅舎電源操作盤、13 電力変換部、14 架線電圧検出部、15 リップル電圧検出部、16 出力情報取得部、17 記憶処理部、18 記憶部、19 閾値算出部、20 回生動作判定部、21 指標値算出部、22 比較部、23 判定結果出力部、24 制御部、25 表示部、31,41 変圧器、32 整流器、33 電圧測定部、34 電流測定部、35 変電所装置、36 無線通信機器、42 駅負荷、43 駅舎設備、51 学習装置、52 推論装置、53,56 データ取得部、54 モデル生成部、55 モデル記憶部、57 推論部、60 処理回路、61 プロセッサ、62 メモリ、63 入出力インタフェース、64 ディスプレイ、65 バス、P 測定点。