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特開2024-154522回転型冷却装置及びそれを備えた超電導磁石装置並びに磁気冷凍装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154522
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】回転型冷却装置及びそれを備えた超電導磁石装置並びに磁気冷凍装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 21/00 20060101AFI20241024BHJP
   H01F 6/04 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
F25B21/00 A
H01F6/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068359
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(71)【出願人】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】和久田 毅
(72)【発明者】
【氏名】青木 学
(72)【発明者】
【氏名】沼澤 健則
(72)【発明者】
【氏名】神谷 宏治
(57)【要約】      (修正有)
【課題】真空中に設置されている被冷却物(例えば、超電導磁石)を励磁状態のまま回転させることができること。
【解決手段】本発明の回転型冷却装置は、真空断熱容器の内部に設置されている被冷却物(例えば、超電導磁石)を回転させながら冷却する回転型冷却装置であって、前記回転型冷却装置は、前記真空断熱容器に固定された冷凍機の固定冷却ヘッドに熱交換を行うための固定側熱交換フィンが設置されていると共に、前記被冷却物を冷却するための回転冷却ヘッドに熱交換を行うための回転側熱交換フィンが設置され、前記固定側熱交換フィンと前記回転側熱交換フィンの間には熱交換するための熱交換媒体が充填され、かつ、前記真空断熱容器と隔離するために前記熱交換媒体が封入されている熱交換媒体封入容器を備え、前記熱交換媒体封入容器は、固定された前記真空断熱容器の隔壁に対して気密性を保ったまま回転可能なシール構造を有していることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空断熱容器の内部に設置されている被冷却物を回転させながら冷却する回転型冷却装置であって、
前記回転型冷却装置は、前記真空断熱容器に固定された冷凍機の固定冷却ヘッドに熱交換を行うための固定側熱交換フィンが設置されていると共に、前記被冷却物を冷却するための回転冷却ヘッドに熱交換を行うための回転側熱交換フィンが設置され、前記固定側熱交換フィンと前記回転側熱交換フィンの間には熱交換するための熱交換媒体が充填され、かつ、前記真空断熱容器と隔離するために前記熱交換媒体が封入されている熱交換媒体封入容器を備え、
前記熱交換媒体封入容器は、固定された前記真空断熱容器の隔壁に対して気密性を保ったまま回転可能なシール構造を有していることを特徴とする回転型冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回転型冷却装置であって、
前記回転型冷却装置は、前記真空断熱容器に固定された前記冷凍機を備え、前記冷凍機の前記固定冷却ヘッドには熱交換を行なうための前記固定側熱交換フィンが設置されていると共に、前記被冷却物に対して冷熱を供給するための前記回転冷却ヘッドを備え、
前記回転冷却ヘッドには熱交換を行なうための前記回転側熱交換フィンが備え付けられており、前記固定側熱交換フィンと前記回転側熱交換フィンは、空間距離を保った状態で嵌合され、かつ、回転軸に対して互いに回転可能に構成され、
前記固定側熱交換フィンと前記回転側熱交換フィンとの間で熱交換可能なように気体若しくは液体から成る前記熱交換媒体が充填され、前記熱交換媒体は真空中に漏洩しないように前記熱交換媒体封入容器に封入されており、
前記固定冷却ヘッド、前記固定側熱交換フィン及び前記回転側熱交換フィンは、前記熱交換媒体封入容器内に収納されて回転熱交換器を構成し、前記熱交換媒体封入容器は、真空領域を構成するために形成された真空境界面に対して気密性を保ったまま回転可能なシール構造を有していることを特徴とする回転型冷却装置。
【請求項3】
請求項2に記載の回転型冷却装置であって、
前記冷凍機はフランジにマウントされて前記真空断熱容器に取り付けられおり、前記回転冷却ヘッドと前記熱交換媒体封入容器は、気密性を持つように一体化されていると共に、前記熱交換媒体封入容器と前記フランジとの間には、磁性流体シール又は弾性体シールが設置されていることを特徴とする回転型冷却装置。
【請求項4】
請求項2に記載の回転型冷却装置であって、
前記真空断熱容器と前記熱交換媒体封入容器との取り合い部に軸受けが設置され、前記軸受けで、前記真空断熱容器の内部に設置されている前記被冷却物が回転可能なように支持されていることを特徴とする回転型冷却装置。
【請求項5】
請求項2に記載の回転型冷却装置であって、
前記固定側熱交換フィンと、前記回転側熱交換フィンと、前記固定側熱交換フィンと前記回転側熱交換フィンの間に充填された前記熱交換媒体によって熱交換器を構成し、前記固定側熱交換フィンと前記回転側熱交換フィンの間の対流による前記熱交換媒体の移動による高温側との熱交換を抑制するための対流抑制体を備えていることを特徴とする回転型冷却装置。
【請求項6】
請求項5に記載の回転型冷却装置であって、
前記対流抑制体は、バッフル板を、複数枚上下方向にギャップを介して配置して構成するか、熱伝導率の小さい発泡断熱材、ガラスウール又は真空断熱材の1つを隙間なく配置して構成するか、若しくは真空保持容器を配置して構成していることを特徴とする回転型冷却装置。
【請求項7】
請求項1に記載の回転型冷却装置であって、
前記回転型冷却装置は、前記真空断熱容器に固定された少なくとも1つの前記冷凍機を備え、前記冷凍機の固定冷却ヘッドは第1及び第2の固定冷却ヘッドから成ると共に、前記被冷却物に対して冷熱を供給するための前記回転冷却ヘッドは温度の異なる第1及び第2の回転冷却ヘッドから成り、
前記第1の固定冷却ヘッドには熱交換を行なうための第1及び第2の固定側熱交換フィンが、前記第1の回転冷却ヘッドには熱交換を行なうための第1及び第2の回転側熱交換フィンが、それぞれ備え付けられており、
前記第1及び第2の固定側熱交換フィンと前記第1及び第2の回転側熱交換フィンは、空間距離を保った状態で嵌合され、かつ、回転軸に対して互いに回転可能に構成され、
前記第1及び第2の固定側熱交換フィンと前記第1及び第2の回転側熱交換フィンとの間で熱交換可能なように気体若しくは液体から成る前記熱交換媒体が充填され、前記熱交換媒体は真空中に漏洩しないように前記熱交換媒体封入容器に封入されており、
前記第1の固定冷却ヘッド、前記第1及び第2の固定側熱交換フィンと前記第1及び第2の回転側熱交換フィンは、前記熱交換媒体封入容器内に収納されて第1の回転熱交換器を構成し、
前記第2の固定冷却ヘッドには熱交換を行なうための第3及び第4の固定側熱交換フィンが、前記第2の回転冷却ヘッドには熱交換を行なうための第3及び第4の回転側熱交換フィンが、それぞれ備えけられており、
前記第3及び第4の固定側熱交換フィンと前記第3及び第4の回転側熱交換フィンは、空間距離を保った状態で嵌合され、かつ、回転軸に対して互いに回転可能に構成され、
前記第3及び第4の固定側熱交換フィンと前記第3及び第4の回転側熱交換フィンとの間で熱交換可能なように気体若しくは液体から成る前記熱交換媒体が充填され、前記熱交換媒体は真空中に漏洩しないように前記熱交換媒体封入容器に封入されており、
前記第2の固定冷却ヘッド、前記第3及び第4の固定側熱交換フィンと前記第3及び第4の回転側熱交換フィンは、前記熱交換媒体封入容器内に収納されて第2の回転熱交換器を構成し、前記熱交換媒体封入容器は、真空領域を構成するために形成された真空境界面に対して気密性を保ったまま回転可能なシール構造を有することを特徴とする回転型冷却装置。
【請求項8】
請求項7に記載の回転型冷却装置であって、
前記冷凍機はフランジにマウントされて前記真空断熱容器に取り付けられおり、前記第1及び第2の回転冷却ヘッドと前記熱交換媒体封入容器は、気密性を持つように一体化されていると共に、前記熱交換媒体封入容器と前記フランジとの間には、磁性流体シール又は弾性体シールが設置されていることを特徴とする回転型冷却装置。
【請求項9】
請求項7に記載の回転型冷却装置であって、
前記真空断熱容器と前記熱交換媒体封入容器との取り合い部に軸受けが設置され、前記軸受けで、前記真空断熱容器の内部に設置されている前記被冷却物が回転可能なように支持されていることを特徴とする回転型冷却装置。
【請求項10】
請求項7に記載の回転型冷却装置であって、
前記第1及び第2の固定側熱交換フィンと、前記第1及び第2の回転側熱交換フィンと、前記第1及び第2の固定側熱交換フィンと前記第1及び第2の回転側熱交換フィンの間に充填された前記熱交換媒体によって第1の熱交換器を構成し、前記第1及び第2の固定側熱交換フィンと前記第1及び第2の回転側熱交換フィンの間の対流による前記熱交換媒体の移動による高温側との熱交換を抑制するための第1の対流抑制体を備え、
前記第3及び第4の固定側熱交換フィンと、前記第3及び第4の回転側熱交換フィンと、前記第3及び第4の固定側熱交換フィンと前記第3及び第4の回転側熱交換フィンの間に充填された前記熱交換媒体によって第2の熱交換器を構成し、前記第3及び第4の固定側熱交換フィンと前記第3及び第4の回転側熱交換フィンの間の対流による前記熱交換媒体の移動による高温側との熱交換を抑制するための第2の対流抑制体を備えていることを特徴とする回転型冷却装置。
【請求項11】
請求項10に記載の回転型冷却装置であって、
前記第1及び第2の対流抑制体は、バッフル板を、複数枚上下方向にギャップを介して配置して構成するか、熱伝導率の小さい発泡断熱材、ガラスウール又は真空断熱材の1つを隙間なく配置して構成するか、若しくは真空保持容器を配置して構成していることを特徴とする回転型冷却装置。
【請求項12】
請求項1に記載の回転型冷却装置であって、
前記冷凍機は、GM冷凍機又はパルスチューブ冷凍機を含む気体圧縮膨張式冷凍機であることを特徴とする回転型冷却装置。
【請求項13】
請求項1に記載の被冷却物は回転型超電導磁石であり、前記回転型超電導磁石を有する請求項1乃至12のいずれか1項に記載の回転型冷却装置を備えていることを特徴とする超電導磁石装置。
【請求項14】
請求項13に記載の超電導磁石装置であって、
前記回転型超電導磁石を有する回転型超電導磁石ユニットは、超電導コイル支持円板に超電導コイルが複数個設置された回転円板ユニットを複数枚積層した積層回転円板ユニットの端部に、鉄製のエンドリングが配置されて構成されていることを特徴とする超電導磁石装置。
【請求項15】
請求項14に記載の超電導磁石装置を備えていることを特徴とする磁気冷凍装置。
【請求項16】
請求項15に記載の磁気冷凍装置であって、
前記磁気冷凍装置を構成する磁気冷凍磁性体ユニットは、回転型超電導磁石ユニットの回転に伴う磁場の印加及び除去に対して温度差が生じるように設置された配管内を作動流体が流れるように構成されており、前記磁気冷凍磁性体ユニットに対して作動流体を供給、移動させるための配管及び前記磁気冷凍磁性体ユニットからの熱をくみ上げるための排熱ユニットが前記真空断熱容器内に設置されていることを特徴とする磁気冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転型冷却装置及びそれを備えた超電導磁石装置並びに磁気冷凍装置に係り、例えば、超電導磁石を冷却する冷却装置であって、その超電導磁石は励磁された状態のまま回転可能とするものに好適な回転型冷却装置及びそれを備えた超電導磁石装置並びに磁気冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気熱量効果を利用した高効率の水素液化が脚光を浴びている。磁気熱量効果とは、磁性体のエントロピーと温度の依存性から生じる性質である。一定温度で磁性体に磁場を印加すると、磁性体の磁気モーメントが磁場によって整列しエントロピーが減少する。
【0003】
一方、断熱状態にして磁場を取り除くと、外部から熱を吸収して磁気モーメントはランダムになる。これをカルノーサイクル的に運転すれば、断熱消磁による冷却となる。
【0004】
磁気熱量効果を利用した磁気冷凍装置では、磁気作業物質に対して磁場を印加したり、或いは取り去るということを繰り返すこと及び磁気作業物質と熱交換をする作業流体の制御が必要である。
【0005】
例えば、非特許文献1には、能動的蓄冷式磁気冷凍(AMR:Active Magnetic Regenerative)について記載されている。
【0006】
このAMRの動作は4つのステップ、即ち、1)磁場を磁気作業物質に印加すること、2)作業流体を一方向から流入し熱交換すること、3)磁場を取り除くこと、4)作業流体を逆方向に流し冷熱を回収すること、が行なわれる。
【0007】
非特許文献1では、固定された永久磁石に対して、磁気作業物質を詰め込んだユニットが、永久磁石がつくる磁場空間を往復運動することによって、磁気作業物質に対し磁場の印加と除去を繰り返している。
【0008】
一方、特許文献1及び特許文献2では、固定された磁気作業物質に対して磁界発生装置が回転することによって、磁場の印加と除去を繰り返している。
【0009】
また、磁気冷凍機を用いた水素液化機については、同じく非特許文献1に多段のAMRと水素凝縮用のカルノーサイクル磁気冷凍機(CMR:Carnot Magnetic Refrigerator)を組み合わせた液化装置が開示されている。
【0010】
水素の貯蔵、運搬を液体水素で担おうとするならば、液化効率のみならず十分な液化生産の能力が必要となる。磁気冷凍装置では、磁気作業物質の体積で熱交換量が制限されることから、磁気作業物質を大量に配置し、高い頻度で強い磁場の印加と除去を行う必要がある。
【0011】
そのような磁場発生源としては、特許文献3に開示されているように、複数の超電導コイルを、ギャップを設けて積層したユニットを回転させる方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006-308197号公報
【特許文献2】特開2007-147209号公報
【特許文献3】特開2022-136671号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】TEION KOGAKU (J. Cryo. Super. Soc. Jpn.) Vol.50 No.2 (2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
通常、超電導状態を維持するためには、超電導磁石は所定の温度以下に冷却することが必要であり、超電導磁石の冷却方法としては、液体冷媒中に超電導磁石を構成する超電導巻線を浸す浸漬冷却方式や冷却ガスを循環させるガス冷却方式、或いは、冷凍機からの冷熱を固定伝熱材料を介して供給する伝導冷却方式が知られている。
【0015】
静止した超電導磁石であれば、どの方式を用いても冷却は可能であるが、回転する超電導磁石の場合には、固定された冷凍機を用いて固体伝導冷却をすることは不可能である。浸漬冷却方式やガス冷却方式であれば、回転する超電導磁石を冷却することは可能である。
【0016】
磁気冷凍用の回転型超電導磁石を考えるとき、狭いギャップが形成された回転型超電導磁石のギャップ部に、磁気冷凍のためのユニットを挿入する必要がある。回転型超電導磁石の運転温度と磁気冷凍ユニットの温度は異なっており、ガス冷却方式などで回転型超電導磁石を冷却する場合には、磁気冷凍ユニットは断熱されている必要がある。
【0017】
しかしながら、回転型超電導磁石の作る磁場空間を有効に使うためには、超電導巻線部と磁気冷凍ユニットの隙間は小さい必要があり、磁気冷凍ユニットをガス冷却から完全に断熱することは極めて困難である。
【0018】
超電導巻線部と磁気冷凍ユニットは、熱的に完全に分離されることが必須であり、両者ともに真空中に配置されることになるため、真空中に配置された回転型超電導磁石を励磁状態のまま冷却することが求められている。
【0019】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、真空中に設置されている被冷却物(例えば、超電導磁石)を励磁状態のまま回転させることができる回転型冷却装置及びそれを備えた超電導磁石装置並びに磁気冷凍装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の回転型冷却装置は、上記目的を達成するために、真空断熱容器の内部に設置されている被冷却物を回転させながら冷却する回転型冷却装置であって、前記回転型冷却装置は、前記真空断熱容器に固定された冷凍機の固定冷却ヘッドに熱交換を行うための固定側熱交換フィンが設置されていると共に、前記被冷却物を冷却するための回転冷却ヘッドに熱交換を行うための回転側熱交換フィンが設置され、前記固定側熱交換フィンと前記回転側熱交換フィンの間には熱交換するための熱交換媒体が充填され、かつ、前記真空断熱容器と隔離するために前記熱交換媒体が封入されている熱交換媒体封入容器を備え、前記熱交換媒体封入容器は、固定された前記真空断熱容器の隔壁に対して気密性を保ったまま回転可能なシール構造を有していることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の超電導磁石装置は、上記構成の回転型冷却装置を備えていることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の磁気冷凍装置は、上記超電導磁石装置を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、真空中に設置されている被冷却物(例えば、超電導磁石)を励磁状態のまま回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の回転型冷却装置の実施例1であり、冷却ステージが1段の例の回転型冷却装置を示す概念図である。
図2】本発明の回転型冷却装置の実施例2であり、冷却ステージが2段の例の回転型冷却装置を示す概念図である。
図3】本発明の回転型冷却装置に採用される熱交換器の構成の一例を示す斜視図である。
図4】本発明の回転型冷却装置に採用される熱交換器の構成の他の例を示す斜視図である。
図5】本発明の回転型冷却装置の実施例2における回転型超電導磁石への電流供給について説明する図である。
図6】本発明の回転冷却装置に2段の冷却ステージを有する超電導磁石装置を備えた磁気冷凍装置を示す概念図である。
図7】本発明の回転型冷却装置に採用される超電導磁石装置を構成する回転型超電導磁石ユニットを示す平面図である。
図8図7の回転型超電導磁石ユニットを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図示した実施例に基づいて本発明の回転型冷却装置及びそれを備えた超電導磁石装置並びに磁気冷凍装置を説明する。なお、各図において、同一構成部品には同符号を使用する。
【0026】
本発明の回転型冷却装置は、真空断熱容器に固定された冷凍機の固定冷却ヘッドに熱交換を行うための固定側熱交換フィンが設置されていると共に、被冷却物を冷却するための回転冷却ヘッドに熱交換を行うための回転側熱交換フィンが設置され、前記固定側熱交換フィンと前記回転側熱交換フィンの間には熱交換するための熱交換媒体が充填され、かつ、前記真空断熱容器と隔離するために前記熱交換媒体が封入されている熱交換媒体封入容器を備え、前記熱交換媒体封入容器は、固定された前記真空断熱容器の隔壁に対して気密性を保ったまま回転可能なシール構造を有していることを特徴とする。
【0027】
冷凍機としては、気体圧縮膨張式冷凍機を採用することが好ましく、ギフォード・マクマホン型冷凍機(GM冷凍機)、パルスチューブ冷凍機、スターリング冷凍機、ブレイトン冷凍機またはターボブレイトン冷凍機などの各種の冷凍機を用いることができる。
【0028】
以下、具体的に説明する。
【実施例0029】
図1に、本発明の回転型冷却装置の実施例1を示し、冷却ステージが1段。の例の回転型冷却装置である。
【0030】
図1に示すように、本実施例の回転型冷却装置は、真空断熱容器3に固定された冷凍機(GM冷凍機)1を備え、冷凍機(GM冷凍機)1の固定冷却ヘッド(冷凍機コールドヘッド)11には熱交換を行なうための固定側熱交換フィン12が設置されていると共に、被冷却物である回転型超電導磁石7に対して冷熱を供給するための回転冷却ヘッド4を備えている。
【0031】
回転冷却ヘッド4には熱交換を行なうための回転側熱交換フィン13が備え付けられており、固定側熱交換フィン12と回転側熱交換フィン13は、空間距離を保った状態で嵌合され、かつ、回転軸に対して互いに回転可能に構成されている。
【0032】
固定側熱交換フィン12と回転側熱交換フィン13との間で熱交換可能なように気体若しくは液体から成る熱交換媒体31が充填され、この熱交換媒体31は真空中に漏洩しないように熱交換媒体封入容器5に封入されている。
【0033】
そして、固定冷却ヘッド11と固定側熱交換フィン12及び回転側熱交換フィン13は、熱交換媒体封入容器5内に収納されて回転型の熱交換器9を構成し、熱交換媒体封入容器5は、真空領域を構成するために形成された真空境界面に対して気密性を保ったまま回転可能なシール構造(磁性流体シール6)を有している。
【0034】
更に、詳細に説明すると、冷凍機(GM冷凍機)1が、フランジ2にマウントされて真空断熱容器3に取り付けられており、回転冷却ヘッド4と熱交換媒体封入容器5は、気密性を持つように一体化され、熱交換媒体封入容器5とフランジ2との間には磁性流体シール6が設置され、熱交換媒体封入容器5は、気密性を保ったまま回転可能となっている。回転冷却ヘッド4には、被冷却物である回転型超電導磁石7が熱的に結合(熱が良く伝わるように密着して結合)されて固定されている。
【0035】
真空断熱容器3及び熱交換媒体封入容器5との取り合い部には軸受け8が備え付けられ、この軸受け8で回転型超電導磁石7を回転可能なように支持している。真空断熱容器3、フランジ2、磁性流体シール6、熱交換媒体封入容器5及び回転冷却ヘッド4によって真空境界が形成されている。
【0036】
また、熱交換媒体封入容器5の内部には、熱交換器9と冷凍機(GM冷凍機)1及び対流抑制体10などが配置されている。
【0037】
熱交換器9は、固定冷却ヘッド(冷凍機コールドヘッド)11に取り付けられた固定側熱交換フィン12と、回転冷却ヘッド4に取り付けられた回転側熱交換フィン13と、固定側熱交換フィン12と回転側熱交換フィン13の間に充填された熱交換媒体31によって構成されている。
【0038】
固定側熱交換フィン12と回転側熱交換フィン13の間の熱の輸送は、充填された熱交換媒体31が担うが、対流などによる熱交換媒体31の移動によって高温側、例えば、フランジ部との熱交換を抑制するために対流抑制体10が設置されている。
【0039】
従って、熱交換媒体封入容器5の内部には、熱交換器部で熱を交換するために最小限に熱交換媒体31が封入されている。なお、熱交換媒体封入容器5の内部に熱交換媒体31を注排気やメンテナンスを行なうためのポートなどは、図示を省略している。
【0040】
次に、熱交換器9について説明する。
【0041】
上述した固定側熱交換フィン12と回転側熱交換フィン13は、互いに小さなギャップ(望ましくは1mm以下)を介して対向して配置されている。これら固定側熱交換フィン12と回転側熱交換フィン13の材質は、熱伝導率の高い、例えば、銅やアルミで形成されている。
【0042】
熱交換媒体封入容器5が回転可能なように、固定側熱交換フィン12と回転側熱交換フィン13は、互いに回転方向には干渉しないように隙間が形成されており、図3に示すように、固定側熱交換フィン12と回転側熱交換フィン13を構成する板材12A(13A)は、回転中心軸に対して同心形状となっている。
【0043】
固定側熱交換フィン12と回転側熱交換フィン13のフィン1枚に着目すると、完全な円筒状である必要はなく、フィンの表面積を増やすために、細い柱状フィン12B(13B)を同心状に並べてもよい(図4参照)。
【0044】
また、固定側熱交換フィン12と回転側熱交換フィン13は、回転方向だけではなく、上下方向(回転軸方向)にも相対位置をずらすことができる構造になっている。固定側熱交換フィン12と回転側熱交換フィン13を回転軸方向にスライドさせることによって、真空境界を構成するための構造及び組み立て方法が簡略化されることに加えて、冷凍機(GM冷凍機)1と熱交換媒体封入容器5の熱収縮差による軸方向のずれを吸収することが可能となっている。
【0045】
なお、固定側熱交換フィン12と回転側熱交換フィン13は、熱交換量に合わせて十分な熱交換面積となるように設計する。
【0046】
また、固定側熱交換フィン12は冷凍機(GM冷凍機)1の固定冷却ヘッド11に、回転側熱交換フィン13は熱交換媒体封入容器5に一体化された回転冷却ヘッド4に、それぞれ熱的に良好に固定されている。熱交換媒体31は、固定冷却ヘッド(冷凍機コールドヘッド)11の温度に依存し、液体若しくは気体状態であるものとする。例えば、20K以下の場合には、ヘリウムガスを利用することができる。
【0047】
次に、対流抑制体10について説明する。
【0048】
熱交換媒体31が気体の場合には、対流によってフランジ2側と回転冷却ヘッド4の間で熱輸送、即ち、高温のフランジ2側から熱が流入する。上述した対流抑制体10は、この熱輸送を抑止するために設置されている。
【0049】
具体的には、対流抑制体10は、バッフル板(小さな穴の空いた隔壁)を、複数枚上下方向にギャップを介して配置して構成したり、熱伝導率の小さい発泡断熱材、ガラスウールや真空断熱材を隙間なく配置して構成したり、若しくは真空保持容器を配置して構成している。
【0050】
次に、熱交換媒体封入容器5について説明する。
【0051】
上述した熱交換媒体封入容器5は、真空断熱容器3中への熱交換媒体31の漏洩、拡散を防止するために気密性のある容器であり、回転冷却ヘッド4と気密性を保つように一体化されている。室温側の熱交換媒体封入容器5は、軸受け8や磁性流体シール6に熱的に結合されていることから、回転冷却ヘッド4への熱侵入を最小にするために熱伝導率の小さい材料、例えば、ステンレスによって形成されている。
【0052】
次に、磁性流体シール6について説明する。
【0053】
真空隔壁を構成しつつ熱交換媒体封入容器5を回転可能とするために、熱交換媒体封入容器5とフランジ2の間には、磁性流体シール6が設置されている。この磁性流体シール6は、真空(大気圧)を機密するのに十分であればよく、磁性流体シール6の他に弾性体シール(Xリング)などを使用することができ、更に、磁性流体シール6や弾性体シール(Xリング)は、摺動性能が損なわれないように適切な温度環境(高温側)に設置されている。
【0054】
次に、軸受け8について説明する。
【0055】
熱交換媒体封入容器5と一体化される構造物は、真空断熱容器3に設置された軸受け8によって回転支持されている。この軸受け8は、重量を支えるためのスラスト軸受けと、回転ブレを抑えるためのラジアル軸受けと、によって構成されている。軸受け部は、真空境界よりも内側に配置され、軸受け部での気密性は不要となる。
【0056】
このような本実施例の構成とすることにより、真空中に設置されている回転型超電導磁石7を励磁状態のまま回転させることができる。
【0057】
次に、回転型超電導磁石7の励磁について説明する。
【0058】
ここまで説明した実施例1の回転型冷却装置では、冷凍機(GM冷凍機)1の先端の固定冷却ヘッド(冷凍機コールドヘッド)11からのみ冷熱を供給する冷却ステージが1段の構成となっている。
【0059】
一般に、超電導磁石の冷却には2段冷凍機が使われており、2段冷凍機には1stステージと呼ばれる高温側の冷却ヘッドと、2ndステージと呼ばれる低温側の冷却ヘッドと、が備え付けらえている。
【0060】
通常、静止状態の超電導磁石は、超電導コイルを超電導状態にするために低温側の2ndステージに熱的に結合されており、この低温側の2ndステージの冷却ヘッドは、通常は、10K以下となるように運転される。高温側の1stステージは、超電導コイルへ電流を供給する電流リードの冷却と輻射シールドの冷却のために使われている。
【0061】
回転型超電導磁石7の励磁するためには、真空断熱容器3の外(室温)から電流を導入する必要があるが、室温から1stステージ温度の間の電流リードは、熱侵入量(熱伝導率)とジュール発熱(電気抵抗率)をバランスさせた最適設計を行なって熱侵入量を最小限とする形状となっており、リン脱酸銅のような素材で構成されている。
【0062】
また、1stステージと2ndステージの間の温度領域には、熱伝導率が低くジュール発熱を生じない超電導電流リードが用いられる。
【0063】
従って、本実施例の回転型冷却装置においても、超電導コイルに通電するためには2段の冷却ステージが必要となる。
【実施例0064】
2段の冷却ステージを有する本発明の回転型冷却装置の実施例2を、図2に示す。本実施例の回転型冷却装置の基本的なコンセプトは、図1に示した実施例1の冷却ステージが1段の回転型冷却装置と同じである。本実施例の固定側熱交換フィンは、第1の固定側熱交換フィン12a及び第2の固定側熱交換フィン12bに分離されている。
【0065】
図2に示すように、本実施例の回転型冷却装置は、真空断熱容器3に固定された少なくとも1つの冷凍機(GM冷凍機)1を備え、この冷凍機(GM冷凍機)1の固定冷却ヘッドは、第1の固定冷却ヘッドである1stステージ固定冷却ヘッド11a及び第2の固定冷却ヘッドである2ndステージ固定冷却ヘッド11bから成ると共に、被冷却物である回転型超電導磁石7に対して冷熱を供給するための回転冷却ヘッドは、温度の異なる第1の回転冷却ヘッドである1stステージ回転冷却ヘッド16及び第2の回転冷却ヘッドである2ndステージ回転冷却ヘッド17から構成されている。
【0066】
1stステージ固定冷却ヘッド11aには熱交換を行なうための第1の固定側熱交換フィン12a及び第2の固定側熱交換フィン12bが、1stステージ回転冷却ヘッド16には熱交換を行なうための第1の回転側熱交換フィン13a及び第2の回転側熱交換フィン13bが、それぞれ備え付けられており、第1の固定側熱交換フィン12a及び第2の固定側熱交換フィン12bと第1の回転側熱交換フィン13a及び第2の回転側熱交換フィン13bは、空間距離を保った状態で嵌合され、かつ、回転軸に対して互いに回転可能に構成されている。
【0067】
第1の固定側熱交換フィン12a及び第2の固定側熱交換フィン12bと第1の回転側熱交換フィン13a及び第2の回転側熱交換フィン13bとの間で熱交換可能なように気体若しくは液体から成る熱交換媒体31が充填され、この熱交換媒体31は真空中に漏洩しないように熱交換媒体封入容器5に封入されている。
【0068】
そして、1stステージ固定冷却ヘッド11a、第1の固定側熱交換フィン12a及び第2の固定側熱交換フィン12bと第1の回転側熱交換フィン13a及び第2の回転側熱交換フィン13bは、熱交換媒体封入容器5内に収納されて第1の回転型熱交換器である回転型の1stステージ熱交換器14を構成している。
【0069】
また、2ndステージ固定冷却ヘッド11bには熱交換を行なうための第3の固定側熱交換フィン12c及び第4の固定側熱交換フィン12dが、2ndステージ回転冷却ヘッド17には熱交換を行なうための第3の回転側熱交換フィン13c及び第4の回転側熱交換フィン13dが、それぞれ備えけられており、第3の固定側熱交換フィン12c及び第4の固定側熱交換フィン12dと第3の回転側熱交換フィン13c及び第4の回転側熱交換フィン13dは、空間距離を保った状態で嵌合され、かつ、回転軸に対して互いに回転可能に構成されている。
【0070】
第3の固定側熱交換フィン12c及び第4の固定側熱交換フィン12dと第3の回転側熱交換フィン13c及び第4の回転側熱交換フィン13dとの間で熱交換可能なように気体若しくは液体から成る熱交換媒体31が充填され、この熱交換媒体31は真空中に漏洩しないように熱交換媒体封入容器5に封入されている。
【0071】
そして、2ndステージ固定冷却ヘッド11b、第3の固定側熱交換フィン12c及び第4の固定側熱交換フィン12dと第3の回転側熱交換フィン13c及び第4の回転側熱交換フィン13dは、熱交換媒体封入容器5内に収納されて第2の回転熱交換器である回転型の2ndステージ熱交換器15を構成し、熱交換媒体封入容器5は、真空領域を構成するために形成された真空境界面に対して気密性を保ったまま回転可能なシール構造(磁性流体シール6)を有している。
【0072】
更に、詳細に説明すると、冷凍機(GM冷凍機)1の1stステージ及び2ndステージから冷熱を引き出すために、それぞれ1stステージ熱交換器14及び2ndステージ熱交換器15が設置され、熱交換媒体31を介して1stステージ回転冷却ヘッド16及び2ndステージ回転冷却ヘッド17に冷熱が輸送される。
【0073】
1stステージの温度は凡そ60K、2ndステージの温度は凡そ10K程度で運転されるため、両者に温度差があることから、1stステージと2ndステージとの間で熱交換媒体31によって熱交換がされないように、1stステージ対流抑制体10a及び2ndステージ対流抑制体10bが設置されている。
【0074】
また、1stステージ回転冷却ヘッド16を露出させること及び組み立て性の観点から、熱交換媒体封入容器5は分割して構成され、1stステージ回転冷却ヘッド16と2ndステージ回転冷却ヘッド17との間での熱のやり取りの抑制するために、熱交換媒体封入容器5は、例えば、ステンレスなどの熱伝導率の低い材料が使われる。
【0075】
以上のようにして、回転型超電導磁石7を運転することが可能な2段の冷却ステージを有する回転型冷却装置を構成することができる。
【0076】
次に、実施例2における回転型超電導磁石7への電流供給について説明する。
【0077】
通常、超電導磁石を励磁するためには、電流が供給されなくてはならない。超電導磁石の運転方法として、永久電流モード運転と電源ドライブモード運転の2種類がある。
【0078】
永久電流モード運転は、超電導磁石に電源から電流を供給した後に、超電導磁石を超電導スイッチ(PCS:Persistent Current Switch)を用いて短絡し、超電導の閉回路を構成した後に電源を切り離す運転である。
【0079】
ここで言う電源を切り離すとは、超電導の閉回路が形成された後に、通電している電流をゼロにし、更に、超電導磁石に電流を供給する経路のパワーリード自体も物理的に取り除くことを言う。電源から切り離された永久電流モード磁石は、あたかも永久磁石のように取り扱うことができる。
【0080】
磁気冷凍装置を運転する前に回転型超電導磁石7を静止させ、フランジ部からパワーリード28(図5参照)を挿入して、超電導コイルとの接続点にパワーリード28を結合することによって、励磁を行なうことが可能である。
【0081】
一方、後者の電源ドライブモード運転の場合には、回転型超電導磁石7が回転している状態で電流を供給し続ける必要がある。その場合には、図5に示すように、熱交換媒体封入容器5の外部にスリップリング30を設置し、このスリップリング30を介して電流を供給することとなる。スリップリング30及びカーボンブラシ29の設置位置は任意であるが、メンテナンス性を考慮して、フランジ2からアクセスできる位置にあることが望ましい。
【0082】
また、スリップリング30とカーボンブラシ29の摺動によりゴミが発生するが、真空断熱容器3の内部を汚染しないように配慮することが望ましい。
【0083】
スリップリング30から超電導コイルまでの機内配線(図示せず)は、電気的な絶縁を適切に施した上で熱交換媒体封入容器5に固定され、常電導の機内配線は1stステージ回転ヘッド16でサーマルアンカーが取られた後に、超電導電流リード(図示せず)に受け替えられ超電導コイルに接続される。
【実施例0084】
上述した実施例2の2段の冷却ステージを有する回転型冷却装置を備えた超電導磁石装置及び超電導磁石装置を備えた磁気冷凍装置を、図6図7及び図8を用いて説明する。
【0085】
図6に、実施例2の2段の冷却ステージを有する超電導磁石装置を備えた磁気冷凍装置の概念図を、図7に、回転型冷却装置を備えた超電導磁石装置を構成する回転型超電導磁石ユニットの平面図を、図8に、回転型超電導磁石ユニットの斜視図を、それぞれ示す。
【0086】
図6に示すように、真空断熱容器3の上部には2段回転型冷却装置18が備え付けられ、この2段回転型冷却装置18の2ndステージ回転冷却ヘッド17の下側には、良好に熱接触させた回転型超電導磁石ユニット19が取り付けられている。
【0087】
回転型超電導磁石ユニット19は、図7に示すように、超電導コイル支持円板20に超電導コイル21が両面に合計8個設置された回転円板ユニット22を、図8に示すように、複数枚積層した積層回転円板ユニット23の端部に、鉄製のエンドリング24を配置して構成したものである。
【0088】
回転型超電導磁石ユニット19の中心には、冷熱を超電導コイル21に配分するための無酸素銅製の伝熱シャフト25が備え付けられており、2段回転冷却装置18の2ndステージ回転冷却ヘッド17と伝熱シャフト25は熱的に結合され、これを通じて超電導磁石全体が冷却されている。
【0089】
積層回転円板ユニット23の超電導コイル21間には、軸方向にギャップが設けられており、磁気熱量効果をもつ磁性体を封入した磁気冷凍磁性体ユニット26が、このギャップに挿入されている。
【0090】
磁気冷凍磁性体ユニット26は、回転型超電導磁石ユニット19の回転に伴う磁場の印加及び除去に対して温度差を生じるように適切に配管が設置されて、この配管内を適切に作動流体が流れるように構成されており、磁気冷凍磁性体ユニット26に対して作動流体を供給、移動させるための配管及び磁気冷凍磁性体ユニット26からの熱をくみ上げるための排熱ユニット27が真空断熱容器3内に設置されている。また、回転型超電導磁石ユニット19の回転に同期させて作動流体を移動させるための操作バルブ(図示せず)が、真空断熱容器3の外部に配置されている。
【0091】
なお、回転型超電導磁石ユニット19を回転させるための機構については、何ら限定されるものではなく、適切に構成すればよい。例えば、回転型超電導磁石ユニット19を回転させるための駆動源となるモータは、真空断熱容器3の外部に配置され、モータからの回転力が断熱トルクチューブを介して真空断熱容器3の内部に伝達され、チェーンとスプロケットを組合せることによって回転型超電導磁石ユニット19を回転させることができる。
【0092】
このような実施例2の2段回転型冷却装置18によって、固定された冷凍機(GM冷凍機)1を用いて固体伝導冷却によって回転する回転型超電導磁石ユニット19を冷却、運転することができ、磁気冷凍磁性体ユニット26を駆動するための磁場の印加・除去を連続的に繰り返し行なうことが可能となる。
【0093】
なお、上述した各実施例では、冷凍機1としてGM冷凍機を例にして説明したが、GM冷凍機に代えてパルスチューブ冷凍機を含む気体圧縮膨張式冷凍機であっても構わない。
【0094】
また、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換える事が可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加える事も可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をする事が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の回転型冷却装置及びそれを備えた超電導磁石装置は,磁気熱量効果を利用した磁気冷凍装置に適用でき液体水素の液化装置等に利用することができる。
【符号の説明】
【0096】
1…冷凍機(GM冷凍機),2…フランジ,3…真空断熱容器、4…回転冷却ヘッド、5…熱交換媒体封入容器、6…磁性流体シール、7…回転型超電導磁石、8…軸受け、9…熱交換器、10…対流抑制体、10a…1stステージ対流抑制体、10b…2ndステージ対流抑制体、11…固定冷却ヘッド(冷凍機コールドヘッド)、11a…1stステージ固定冷却ヘッド、11b…2ndステージ固定冷却ヘッド、12…固定側熱交換フィン、12A…固定側熱交換フィンを構成する板材、12a…第1の固定側熱交換フィン、12b…第2の固定側熱交換フィン、12c…第3の固定側熱交換フィン、12d…第4の固定側熱交換フィン、12B、13B…柱状フィン、13…回転側熱交換フィン、13A…回転側熱交換フィンを構成する板材、13a…第1の回転定側熱交換フィン、13b…第2の回転側熱交換フィン、13c…第3の回転定側熱交換フィン、13d…第4の回転側熱交換フィン、14…1stステージ熱交換器、15…2ndステージ熱交換器、16…1stステージ回転冷却ヘッド、17…2ndステージ回転冷却ヘッド、18…2段回転冷却装置、19…回転超電導磁石ユニット、20…超電導コイル支持円板、21…超電導コイル、22…回転円板ユニット、23…積層回転円板ユニット、24…エンドリング、25…伝熱シャフト、26…磁気冷凍磁性体ユニット、27…排熱ユニット、28…パワーリード、29…カーボンブラシ、30…スリップリング、31…熱交換媒体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8