IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローム株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-サーマルプリントヘッド 図1
  • 特開-サーマルプリントヘッド 図2
  • 特開-サーマルプリントヘッド 図3
  • 特開-サーマルプリントヘッド 図4
  • 特開-サーマルプリントヘッド 図5
  • 特開-サーマルプリントヘッド 図6
  • 特開-サーマルプリントヘッド 図7
  • 特開-サーマルプリントヘッド 図8
  • 特開-サーマルプリントヘッド 図9
  • 特開-サーマルプリントヘッド 図10
  • 特開-サーマルプリントヘッド 図11
  • 特開-サーマルプリントヘッド 図12
  • 特開-サーマルプリントヘッド 図13
  • 特開-サーマルプリントヘッド 図14
  • 特開-サーマルプリントヘッド 図15
  • 特開-サーマルプリントヘッド 図16
  • 特開-サーマルプリントヘッド 図17
  • 特開-サーマルプリントヘッド 図18
  • 特開-サーマルプリントヘッド 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154531
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】サーマルプリントヘッド
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/335 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
B41J2/335 101C
B41J2/335 101J
B41J2/335 101G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068378
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲谷 吾郎
【テーマコード(参考)】
2C065
【Fターム(参考)】
2C065HA02
2C065HA05
(57)【要約】
【課題】歩留まりが改善し得るサーマルプリントヘッドを提供する。
【解決手段】サーマルプリントヘッド1は、シリコン基板10を備える。シリコン基板10は、主面11を有する。シリコン基板10は、主面11上に凸部14を有する。主面11に対して垂直な方向をz方向とする。凸部14は、頂点14pを有する。頂点14pは、主面11からz方向において最も離れた点である。z方向に沿ったシリコン基板10の断面において、頂点14pからz方向において200μm以内のシリコン基板10の領域A1における欠陥密度は0.02個/μm以下である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面を有するシリコン基板を備え、
前記シリコン基板は、前記主面上に凸部を有し、
前記主面に対して垂直な方向をz方向とすると、
前記凸部は、前記主面から前記z方向において最も離れた点である頂点を有し、
前記z方向に沿った前記シリコン基板の断面において、
前記頂点から前記z方向において200μm以内の前記シリコン基板の領域における欠陥密度が0.02個/μm以下である、サーマルプリントヘッド。
【請求項2】
前記断面において、
前記領域における欠陥密度が0.004個/μm以下である、請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項3】
前記断面において、
前記z方向における前記シリコン基板の中央部における欠陥密度が0.004個/μm以上である、請求項2に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項4】
前記シリコン基板は、前記主面上に凹部を有し、
前記凸部は、前記凹部を覆う充填剤によって構成されている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サーマルプリントヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2022-180152号公報(特許文献1)は、凸部を有する基板を備えるサーマルプリントヘッドを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-180152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、基板に起因する不良が発生する場合があり、サーマルプリントヘッドの歩留まりにおいて改善の余地がある。
【0005】
本開示の目的は、上記のような課題を解決するために成されたものであり、本開示の目的は、歩留まりが改善し得るサーマルプリントヘッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のサーマルプリントヘッドは、シリコン基板を備える。シリコン基板は、主面を有する。シリコン基板は、主面上に凸部を有する。主面に対して垂直な方向をz方向とする。凸部は、頂点を有する。頂点は、主面からz方向において最も離れた点である。z方向に沿ったシリコン基板の断面において、頂点からz方向において200μm以内のシリコン基板の領域における欠陥密度は0.02個/μm以下である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、歩留まりが改善し得るサーマルプリントヘッドが提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施の形態1のサーマルプリントヘッドの概略断面図である。
図2図2は、実施の形態1のサーマルプリントヘッドの概略平面図である。
図3図3は、実施の形態1のサーマルプリントヘッドの概略部分拡大平面図である。
図4図4は、実施の形態1のサーマルプリントヘッドの概略部分拡大断面図である。
図5図5は、実施の形態1のサーマルプリントヘッドの製造方法における一工程を示す概略部分拡大断面図である。
図6図6は、実施の形態1のサーマルプリントヘッドの製造方法における図5に示される工程の次工程を示す概略部分拡大断面図である。
図7図7は、実施の形態1のサーマルプリントヘッドの製造方法における図6に示される工程の次工程を示す概略部分拡大断面図である。
図8図8は、実施の形態1のサーマルプリントヘッドの製造方法における図7に示される工程の次工程を示す概略部分拡大断面図である。
図9図9は、実施の形態1のサーマルプリントヘッドの製造方法における図8に示される工程の次工程を示す概略部分拡大断面図である。
図10図10は、実施の形態1のサーマルプリントヘッドの製造方法における図9に示される工程の次工程を示す概略部分拡大断面図である。
図11図11は、実施の形態1のサーマルプリントヘッドの製造方法における図10に示される工程の次工程を示す概略部分拡大断面図である。
図12図12は、実施の形態1のサーマルプリントヘッドの製造方法における図11に示される工程の次工程を示す概略部分拡大断面図である。
図13図13は、実施の形態1のサーマルプリントヘッドの製造方法における図12に示される工程の次工程を示す概略部分拡大断面図である。
図14図14は、実施の形態1のサーマルプリントヘッドの製造方法における図13に示される工程の次工程を示す概略部分拡大断面図である。
図15図15は、実施の形態2のサーマルプリントヘッドの概略部分拡大断面図である。
図16図16は、実施の形態2のサーマルプリントヘッドの製造方法における一工程を示す概略部分拡大断面図である。
図17図17は、実施の形態2のサーマルプリントヘッドの製造方法における図16に示される工程の次工程を示す概略部分拡大断面図である。
図18図18は、実施の形態2のサーマルプリントヘッドの製造方法における図17に示される工程の次工程を示す概略部分拡大断面図である。
図19図19は、実施の形態2のサーマルプリントヘッドの製造方法における図18に示される工程の次工程を示す概略部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面に基づいて本開示の実施の形態の詳細について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。以下に記載する実施の形態の少なくとも一部の構成を任意に組み合わせてもよい。
【0010】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1のサーマルプリントヘッドの概略断面図である。図2は、実施の形態1のサーマルプリントヘッドの概略平面図である。図3は、実施の形態1のサーマルプリントヘッドの概略部分拡大平面図である。図4は、実施の形態1のサーマルプリントヘッドの概略部分拡大断面図である。
【0011】
サーマルプリントヘッド1は、複数の発熱部31(図3を参照)を選択的に発熱させることによって、感熱紙などの印刷媒体47に印字を施す電子デバイスである。サーマルプリントヘッド1は、シリコン基板10と、金属層16と、絶縁層15と、配線層20と、抵抗体層30と、保護層33と、駆動回路35と、導電ワイヤ36,37と、コネクタ40と、封止部材43と、ヒートシンク49とを主に備える。
【0012】
図4に示されるように、シリコン基板10は、主面11と、主面11とは反対側の裏面12とを有する。主面11と裏面12とは、各々、x方向と、x方向に垂直なy方向とに延在している。x方向は、シリコン基板10の長手方向であり、サーマルプリントヘッド1の主走査方向である。y方向は、シリコン基板10の短手方向であり、サーマルプリントヘッド1の副走査方向である。z方向は、シリコン基板10の厚さ方向である。主面11の法線方向は、x方向及びy方向に垂直なz方向である。主面11は、+z方向を向いている。裏面12は、-z方向を向いている。
【0013】
図3および図4に示されるように、シリコン基板10は主面11上に凸部14を有する。凸部14は、後述するように、たとえば水酸化カリウム(KOH)水溶液によるウェットエッチングを用いて形成される。凸部14の高さhは、例えば、175μmである。凸部14の高さhは、例えば、200μm以下である。凸部14の高さhは、150μm以下であってもよい。凸部14の高さhは、50μm以上であってもよい。本明細書において、凸部14の高さhは、主面11からの凸部14の最大高さである。主面11の平面視において、凸部14の長手方向はx方向であり、凸部14の短手方向はy方向である。凸部14の高さh方向は、z方向である。
【0014】
凸部14は、頂面14s1と一対の傾斜面14s2とを有する。頂面14s1は、主面11からz方向において最も離れた面である。頂面14s1は、頂点14pを有する。頂点14pは、z方向において、主面11から最も離れた点である。頂面14s1は、x方向とy方向とに延在していてもよい。頂面14s1の形状は、曲面であってもよい。一対の傾斜面14s2は、y方向に互いに離れて配置されている。一対の傾斜面14s2は、主面11と頂面14s1とを接続している。一対の傾斜面14s2は、主面11から頂面14s1にかけて互いに近づくように主面11に対して傾斜している。主面11に対する一対の傾斜面14s2の各々の傾斜角θは、たとえばいずれも54.7°である。
【0015】
凸部14を有するシリコン基板10は、珪素(Si)の単結晶を含む。シリコン基板10の結晶構造において、主面11および裏面12の面方位は、(100)面である。一対の傾斜面14s2の面方位は、(111)面である。
【0016】
図4に示されるように、金属層16はシリコン基板10の主面11上に配置されている。金属層16は、凸部14のみを覆ってもよいが、図4に示されるように凸部14および主面11の全体を覆ってもよい。金属層16を構成する材料は、たとえば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、あるいはプラチナ(Pt)のいずれかであってもよい。金属層16のz方向における厚みは、たとえば、0.05μm以上1.5μm以下である。金属層16は、スパッタリングあるいは化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法を用いて形成される。
【0017】
図3および図4に示されるように、絶縁層15は、主面11の少なくとも一部及び凸部14上に配置されており、主面11の少なくとも一部と凸部14とを覆っている。絶縁層15は、主面11の全体を覆ってもよい。絶縁層15を構成する材料は、例えば、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)を用いて形成された酸化膜(TEOS酸化膜)であってもよい。シリコン基板10は、絶縁層15により、抵抗体層30および配線層20に対して電気的に絶縁されている。
【0018】
プラズマCVD法を用いて、二酸化珪素の薄膜を複数回にわたって積層させることによって絶縁層15は形成され得る。当該二酸化珪素は、オルトケイ酸テトラエチルを原料ガスとして形成される。絶縁層15のz方向における厚みは、たとえば、1μm以上15μm以下である。
【0019】
抵抗体層30は、絶縁層15の上に形成されている。抵抗体層30は絶縁層に接続されている。抵抗体層30は、後述する配線層20よりも高い電気抵抗率を有する材料で形成されている。抵抗体層30を構成する材料は、たとえば、窒化タンタル(TaN)である。抵抗体層30は、スパッタリングを用いて形成される。抵抗体層30のz方向における厚みは、たとえば、0.02μm以上0.1μm以下である。抵抗体層30のz方向における厚みは、50nmであってもよい。
【0020】
図2から図4に示されるように、配線層20は、抵抗体層30と接続されている。配線層20は、抵抗体層30の複数の発熱部31に通電するための導電経路を構成している。配線層20は、複数の発熱部31に導通している。配線層20は、例えば、チタン(Ti)および銅(Cu)の少なくともいずれかを含む導電材料であってもよい。配線層20を構成する材料がチタンであるとき、配線層20のz方向における厚みは、150nmであってもよい。配線層20を構成する材料が銅であるとき、配線層20のz方向における厚みは、800nmであってもよい。
【0021】
配線層20は、共通配線21と、複数の個別配線25と、複数の引出配線29とを含む。複数の個別配線25は、共通配線21と複数の引出配線29とから離れている。複数の発熱部31を選択的に発熱させるために、共通配線21から複数の発熱部31を経由して複数の個別配線25に向けて電流が流れる。
【0022】
共通配線21は、複数の発熱部31に導通している。具体的には、図3及び図4に示されるように、共通配線21は、基部22と、複数の延出部23とを含む。主面11の平面視において、基部22は、抵抗体層30に対して、y方向の一方側(+y側)に配置されている。基部22の長手方向はx方向であり、基部22の短手方向はy方向である。基部22は、y方向において、抵抗体層30から離れている。複数の延出部23は、基部22から抵抗体層30に向けて-y方向に延びている。複数の延出部23は、x方向に沿って等間隔に配列されている。
【0023】
複数の個別配線25の各々は、複数の発熱部31のうち対応するものに導通している。具体的には、図3及び図4に示されるように、複数の個別配線25は、x方向に沿って配列されている。複数の個別配線25の各々は、端子部28と、延出部26とを含む。
【0024】
主面11の平面視において、端子部28は、抵抗体層30に対して、y方向の他方側(-y側)に配置されている。端子部28は、y方向において、抵抗体層30に対して、共通配線21の基部22とは反対側に配置されている。図1及び図3に示されるように、導電ワイヤ36は、端子部28と駆動回路35とにボンディングされている。端子部28は、導電ワイヤ36を通して、駆動回路35に電気的に接続されている。
【0025】
延出部26は、端子部28に接続されている。延出部26のうち端子部28とは反対側の端部27は、抵抗体層30に接触している。主面11の平面視において、延出部26の端部27は、凸部14に重なっている。
【0026】
図2に示されるように、主面11の平面視において、複数の引出配線29は、駆動回路35に対して、y方向の他方側(-y側)に配置されている。主面11の平面視において、複数の引出配線29は、駆動回路35に対して、抵抗体層30及び複数の個別配線25とは反対側に配置されている。導電ワイヤ37は、駆動回路35と複数の引出配線29とにボンディングされている。複数の引出配線29は、導電ワイヤ37を通して、駆動回路35に電気的に接続されている。複数の引出配線29は、コネクタ40に接続されている。
【0027】
図4に示されるように、抵抗体層30は、絶縁層15上に接続されている。主面11の法線方向(z方向)において、抵抗体層30は、絶縁層15に対して、シリコン基板10とは反対側に配置されている。主面11の平面視において、抵抗体層30の長手方向はx方向であり、抵抗体層30の短手方向はy方向である。主面11の平面視において、抵抗体層30は、共通配線21の複数の延出部23と、複数の個別配線25の延出部26の端部27とに交差している。抵抗体層30は、共通配線21の複数の延出部23と、複数の個別配線25の延出部26の端部27とを跨いでいる。
【0028】
抵抗体層30は、複数の発熱部31を含む。抵抗体層30のうち、共通配線21の複数の延出部26のいずれかにより覆われた部分と、x方向において当該部分の隣に位置する複数の個別配線25の端部27のいずれかにより覆われた部分とにより挟まれた領域が、複数の発熱部31のいずれかである。複数の発熱部31は、絶縁層15に接続している。複数の発熱部31は、x方向に沿って配列されている。主面11の平面視において、複数の発熱部31は、凸部14に重なっている。主面11の平面視において、抵抗体層30の短手方向(y方向)では、複数の発熱部31は凸部14の内側に配置されている。
【0029】
図4に示されるように、保護層33は、抵抗体層30と、配線層20、複数の発熱部31とを覆っている。保護層33は、抵抗体層30と、配線層20、複数の発熱部31とに接続している。配線層20のうち導電ワイヤ36,37がボンディングされる部分(例えば、端子部28など)は、保護層33から露出している。保護層33を構成する材料は、例えば、二酸化珪素、窒化珪素(SiN)、および炭化ケイ素(SiC)の少なくともいずれかであってもよい。保護層33は、CVD法で形成されてもよい。保護層33のz方向の厚みは、たとえば、3.2μmであってもよい。
【0030】
駆動回路35は、主面11上に実装されている。例えば、駆動回路35は、接着剤などの接合部材(図示せず)を用いて、絶縁層15に固定されている。駆動回路35は、シリコン基板10から分離された配線基板(図示せず)に搭載されてもよい。配線基板は、例えば、プリント回路基板(PCB)である。駆動回路35は、配線層20(具体的には、複数の個別配線25及び複数の引出配線29)に電気的に接続されている。駆動回路35は、複数の個別配線25を通して、複数の発熱部31に個別に電流を印加する。複数の発熱部31のうち電流が印加された発熱部31が、選択的に発熱する。
【0031】
図1及び図2に示されるように、コネクタ40は、y方向において、駆動回路35に対して抵抗体層30とは反対側に配置されている。コネクタ40は、例えば、y方向におけるシリコン基板10の端部に取り付けられている。コネクタ40は、配線層20(具体的には、複数の引出配線29)を通して駆動回路35に電気的に接続されている。例えば、コネクタ40は、複数のピン(図示せず)を含む。複数のピンの一部は、複数の引出配線29に導通している。複数のピンの別の一部は、共通配線21の基部22に導通する配線(図示せず)に導通している。コネクタ40は、サーマルプリンタに接続される。サーマルプリンタからコネクタ40を通して共通配線21に定電圧が印加される。
【0032】
図1及び図4に示されるように、封止部材43は、駆動回路35を覆っており、駆動回路35を封止している。封止部材43は、導電ワイヤ36,37をさらに覆っており、導電ワイヤ36,37をさらに封止している。封止部材43は、複数の個別配線25のうち保護層33から露出している部分(例えば、端子部28など)をさらに覆っている。封止部材43は、電気的絶縁性を有している。封止部材43は、例えば、エポキシ樹脂のような絶縁樹脂材料で形成されている。
【0033】
図1に示されるように、ヒートシンク49は、z方向において、シリコン基板10に対して絶縁層15及び抵抗体層30とは反対側に配置されている。ヒートシンク49は、ねじのような締結部材または接合部材(図示せず)によって、シリコン基板10の裏面12に取り付けられている。ヒートシンク49は、シリコン基板10を支持している。ヒートシンク49は、例えば、アルミニウム(Al)のような高熱伝導材料で形成されている。抵抗体層30の複数の発熱部31から発生した熱の一部は、シリコン基板10を通してヒートシンク49に伝わる。ヒートシンク49に伝わった熱は、サーマルプリントヘッド1の外部へと放熱される。ヒートシンク49は、シリコン基板10の過度な温度上昇を防止することができる。駆動回路35がシリコン基板10とは別の配線基板上に搭載されている場合、ヒートシンク49は、シリコン基板10と配線基板とを支持する。
【0034】
図1及び図4に示されるように、サーマルプリントヘッド1は、主面11上に形成されている突起45を含む。突起45は、凸部14と、絶縁層15と、配線層20と、複数の発熱部31と、保護層33とを含む。突起45では、凸部14、金属層16、絶縁層15、抵抗体層30、配線層20、複数の発熱部31及び保護層33が、主面11の法線方向(z方向)においてこの順に主面11上に積層されている。
【0035】
ここで、本実施の形態1に係るサーマルプリントヘッド1の特徴は、図4に示されるように、シリコン基板10の断面において、欠陥密度が0.02個/μm以下となる領域A1をシリコン基板10が有する点である。具体的には、頂点14pからz方向において、200μm以内のシリコン基板10の領域A1における欠陥密度が0.02個/μm以下である。なお、上記の様に頂点14pからz方向において200μm以内の領域A1について欠陥密度を規定したのは、凸部14の高さが最大で200μm程度と考えられるためである。領域A1における欠陥密度が大きいと、たとえば凸部14を形成する際に、当該凸部14の形状が歪になる恐れがある。具体的には、傾斜面14s2の断面形状が直線状でなくなり、凹凸形状を含むような形状になる恐れがある。その結果、当該サーマルプリントヘッド1の印字性能が低下する。領域A1における欠陥密度が0.02個/μm以下であれば、凸部14を形成する際に、当該凸部14の形状が歪になる頻度が抑制される。その結果、当該凸部を有するサーマルプリントヘッド1の製造において、歩留まりが向上する。
【0036】
領域A1における欠陥密度は、少なければよい。領域A1における欠陥密度は、0.004個/μm以下であってもよい。主面11近傍の欠陥密度が少なければよい。そのため、z方向におけるシリコン基板10の中央部における欠陥密度は多くてもよい。z方向におけるシリコン基板10の中央部における欠陥密度は、0.004個/μm以上であってもよい。
【0037】
(サーマルプリントヘッドの製造方法)
以下、本実施の形態のサーマルプリントヘッド1の製造方法を説明する。
【0038】
まず、シリコンウエハ10aを準備する工程(S1a)が実施される。この工程(S1a)では、図5に示されるように、半導体材料であるシリコン基板としてのシリコンウエハ10aを準備する。シリコンウエハ10aは、シリコンの単結晶を含む。シリコンウエハ10aのz方向における厚みは、たとえば625μmである。
【0039】
シリコンウエハ10aは、DZ-IG(Denuded Zone-Intrinsic Gettering)処理が施されてもよい。DZ-IG処理が施されたシリコンウエハ10aは、z方向におけるシリコンウエハ10aの中央部における欠陥密度が、シリコンウエハ10aの表面近傍における欠陥密度より高い。一方、DZ-IG処理が施されたシリコンウエハ10aの表面および裏面では欠陥密度が極めて低くなっている。そのため、DZ-IG処理が施されたシリコンウエハ10aは、後述する凸部14を形成する際に形状不良が発生し難く、好適なシリコンウエハである。なお、DZ-IG処理の条件を適宜調整することで、表面おより裏面での欠陥密度が低くされた、本実施の形態に係るサーマルプリントヘッド1に適用可能なシリコンウエハ10aを準備することができる。
【0040】
以下のようにして、DZ-IG処理をシリコンウエハ10aに施す。ランプアニール装置を用いて、シリコンウエハ10aを酸素雰囲気下でアニールする。具体的には、1280℃の温度で、0.2時間アニールする。その次に、550℃でランピング熱処理をする。その次に、1000℃の温度で、24時間析出熱処理をする。このようにして、DZ-IG処理をシリコンウエハ10aに施す。その結果、当該シリコンウエハ10aの表層(主面11a近傍および裏面12a近傍)に無欠陥領域(DZ層)が形成される。
【0041】
シリコンウエハ10aは、磁気チョクラルスキー法(MCZ:Magnetic Feild Applied Chochralski Method)を用いて製造されたシリコンウエハでもよい。MCZ法を用いることで、欠陥密度が抑制されたシリコンウエハ10aを得ることができる。
【0042】
シリコンウエハ10aは、フローティングゾーン法(FZ:Floating Zone Method)を用いて製造されたシリコンウエハでもよい。FZ法を用いることで、欠陥密度が更に抑制されたシリコンウエハ10aを得ることができる。
【0043】
シリコンウエハ10aは、エピタキシャル層が形成されたシリコンウエハでもよい。シリコンウエハ10aにエピタキシャル層を形成することで、欠陥密度が更に抑制されたシリコンウエハ10aを得ることができる。
【0044】
その次に、マスク層2を形成する工程(S2a)を実施する。この工程(S2a)では、図6に示されるように、主面11aにおいて凸部14を形成する領域にマスク層2を形成する。マスク層2を構成する材料は、たとえば、窒化珪素(SiN)または二酸化珪素(SiO)である。マスク層2は、CVD法またはスパッタリングを用いて形成される。
【0045】
その次に、エッチングする工程(S3a)を実施する。この工程(S3a)では、図7に示されるように、マスク層2をマスクとして用いてシリコンウエハ10aをウェットエッチングする。z方向からみた平面視において、マスク層2が配置されていない領域におけるシリコンウエハ10aが-z方向にエッチングされる。たとえば、水酸化カリウム(KOH)水溶液をエッチング液として、ウェットエッチングを実施する。当該エッチングは異方性である。-z方向におけるエッチングレートは、たとえば、45μm/時間であってもよい。この時、シリコンウエハ10aは、-z方向に175μmエッチングされてもよい。このようにすることで、シリコン基板10が形成される。また、マスク層2が形成されている領域において、シリコンウエハ10aはエッチングされない。そのため凸部14がシリコン基板10の主面11上に形成される。
【0046】
エッチング液として水酸化カリウム(KOH)水溶液などのアルカリ性水溶液を用いた時、シリコンウエハ10aの結晶面において、(111)面におけるエッチングレートが他面に比べて速い。(111)面は、シリコンウエハ10aの表面に対して57.5°傾斜している面である。そのため、主面11に対する傾斜面14s2の傾斜角θが54.7°となるように、シリコンウエハ10aがエッチングされる。図7に示される凸部14が形成された後、フッ化水素酸(HF)を用いたウェットエッチングによって、マスク層2を除去する。
【0047】
シリコンウエハ10aに欠陥が含まれている場合、当該欠陥が存在する領域におけるエッチングレートが、(111)面におけるエッチングレートと異なる。そのため、凸部14の形状が歪になる恐れがある。具体的には、傾斜面14s2の断面形状が直線状でなくなり、凹凸形状を含むような形状になる恐れがある。その結果、当該凹凸形状上に形成される配線層20などに形状不良が発生する。このため、当該サーマルプリントヘッド1の印字性能が低下する。
【0048】
DZ-IG処理が施されたシリコンウエハ10aを用いて、当該シリコン基板10が製造された場合、シリコン基板10の主面11および裏面12における欠陥密度が極めて低い。具体的には、頂点14pからz方向において、200μm以内のシリコン基板10の領域A1における欠陥密度が0.004個/μm以下となる。一方、z方向におけるシリコン基板10の中央部において、欠陥が集中する。具体的には、領域A1以外における欠陥密度は0.004個/μm以上となる。z方向におけるシリコン基板10の中央部における欠陥密度は、0.02個/μm以上、好ましくは、0.004個/μm以上であってもよい。
【0049】
MCZ法を用いて製造されたシリコンウエハ10aを用いて、当該シリコン基板10が製造された場合、シリコン基板10内の欠陥密度が全体的に低い。具体的には、領域A1に限らず、欠陥密度が0.02個/μm以下となる。
【0050】
FZ法を用いて製造されたシリコンウエハ10aを用いて、当該シリコン基板10が製造された場合、シリコン基板10内の欠陥密度が全体的に極めて低くなる。具体的には、領域A1に限らず、欠陥密度が0.004個/μm以下となる。
【0051】
エピタキシャル層が形成されたシリコンウエハ10aを用いて、当該シリコン基板10が製造された場合、シリコン基板10内の欠陥密度が全体的に極めて少なくなる。具体的には、領域A1に限らず、欠陥密度が0.004個/μm以下となる。
【0052】
次に、金属層16を形成する工程(S4a)を実施する。この工程(S4a)では、図8に示されるように、主面11の少なくとも一部と凸部とを覆う金属層16を形成する。具体的には、スパッタリングあるいはCVDを用いて、金属層16を形成する。金属層16を構成する材料は、たとえば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、あるいはプラチナ(Pt)のいずれかであってもよい。エッチングを用いて、金属層16にパターニングを行ってもよい。これにより、主面11の一部が露出される。
【0053】
次に、絶縁層15を形成する工程(S5a)を実施する。この工程(S5a)では、図9に示されるように、主面11の少なくとも一部と凸部14とを覆う絶縁層15を形成する。具体的には、プラズマCVD法を用いて、二酸化珪素の薄膜を複数回にわたって積層させることによって絶縁層15が形成される。当該二酸化珪素は、オルトケイ酸テトラエチルを原料ガスとして形成される。
【0054】
次に、抵抗体層30を形成する工程(S6a)を実施する。この工程(S6a)では、図10に示されるように、絶縁層15上に抵抗体層30を形成する。具体的には、抵抗体層30は、スパッタリングを用いて形成される。抵抗体層30を構成する材料は、たとえば、窒化タンタル(TaN)である。抵抗体層30は、複数の発熱部31を含む。
【0055】
次に、配線層20を形成する工程(S7a)を実施する。この工程(S7a)では、図11に示されるように、抵抗体層30上に配線層20を形成する。具体的には、配線層20はスパッタリングを用いて形成される。配線層20は、たとえばスパッタリングを用いて、銅の薄膜を複数回にわたって積層して形成してもよい。スパッタリングを用いて、チタンの薄膜を抵抗体層30上に積層させた後、銅の薄膜を複数回にわたって積層して配線層20が形成されてもよい。
【0056】
配線層20を形成した後に、リソグラフィパターニングを施して、配線層20の一部を除去する。具体的には、配線層20上にフォトリソグラフィ法を用いてマスク層を形成する。当該マスク層をマスクとして配線層20を部分的にエッチングにより除去する。配線層20に対するエッチングとしては、ウェットエッチングを用いることができる。ウェットエッチングでは、硫酸(HSO)および過酸化水素(H)の混合溶液を用いる。これにより、図3に示すように、共通配線21、および複数の個別配線25が、抵抗体層30の上に形成される。図11に示されるように、抵抗体層30の一部が配線層20から露出する。その次に、反応性イオンエッチングを用いて、抵抗体層30の一部をエッチングする。これによって、図3に示されるように凸部14上に絶縁層15が露出する。凸部14の頂面14s1上では、複数の発熱部31が露出する。
【0057】
その次に、保護層33を形成する工程(S8a)を実施する。具体的には、図12に示されるように、絶縁層15上と、複数の発熱部31上と、配線層20の一部上とに、プラズマCVDを用いて保護層33を形成する。保護層33は、窒化珪素の薄膜を積層させることで形成される。配線層20のうち導電ワイヤ36,37がボンディングされる部分(例えば、端子部28など)は、保護層33から露出している。
【0058】
次に、駆動回路35を実装する工程(S9a)を実施する。この工程(S9a)では、図13に示されるように、主面11上に駆動回路35を実装する。例えば、駆動回路35は、接着剤などの接合部材(図示せず)を用いて、絶縁層15に固定される。図13に示されるように、導電ワイヤ36,37をボンディングする。例えば、導電ワイヤ36は、ワイヤボンダ(図示せず)を用いて、駆動回路35と複数の個別配線25の端子部28とにボンディングされる。導電ワイヤ37は、ワイヤボンダ(図示せず)を用いて、駆動回路35と複数の引出配線29とにボンディングされる。
【0059】
次に、封止する工程(S10a)を実施する。この工程(S10a)では、図14に示されるように、駆動回路35を封止部材43で封止する。例えば、駆動回路35上に封止樹脂材料をポッティングする。その後、封止樹脂材料を硬化させる。こうして、封止部材43が形成される。
【0060】
次に、シリコン基板10にコネクタ40を取り付ける。コネクタ40は、複数のピン(図示せず)を含む。複数のピンの一部は、複数の引出配線29に導通している。複数のピンの別の一部は、共通配線21の基部22に導通する配線(図示せず)に導通している。
【0061】
次に、シリコン基板10にヒートシンク49を取り付ける。具体的には、ヒートシンク49は、ねじのような締結部材または接合部材(図示せず)によって、シリコン基板10の裏面12に取り付けられる。こうして、図1から図4に示される本実施の形態のサーマルプリントヘッド1が得られる。
【0062】
本実施の形態のサーマルプリントヘッド1の動作を説明する。
【0063】
図1に示されるように、突起45は、サーマルプリンタに含まれるプラテンローラ46に対向している。プラテンローラ46は、印刷媒体47をサーマルプリントヘッド1に向けて送り出す。プラテンローラ46が回転することにより、印刷媒体47が+y方向に送り出される。突起45とプラテンローラ46との間に、印刷媒体47が挟み込まれる。
【0064】
駆動回路35は、複数の個別配線25を通して、複数の発熱部31に個別に電流を印加する。複数の発熱部31のうち電流が印加された発熱部31が、選択的に発熱する。複数の発熱部31で発生した熱は、印刷媒体47に伝わる。こうして、サーマルプリントヘッド1を用いて、印刷媒体47に印字が施される。複数の発熱部31で発生した熱の一部は、絶縁層15に伝わる。絶縁層15に伝わった熱は、金属層16によって反射する。つまり、シリコン基板10を介した放熱を抑制することができる。複数の発熱部31で発生した熱の残りは、シリコン基板10及びヒートシンク49を通して、サーマルプリントヘッド1の外部に放出される。
【0065】
<作用効果>
本開示に従ったサーマルプリントヘッド1は、シリコン基板10を備える。シリコン基板10は、主面11を有する。シリコン基板10は、主面11上に凸部14を有する。主面11に対して垂直な方向をz方向とする。凸部14は、頂点14pを有する。頂点14pは、主面11からz方向において最も離れた点である。z方向に沿ったシリコン基板10の断面において、頂点14pからz方向において200μm以内のシリコン基板10の領域A1における欠陥密度は0.02個/μm以下である。
【0066】
このようにすれば、ウェットエッチングを用いて凸部14を形成するときに、当該凸部14の形状が歪になる可能性を低減できる。たとえば、DZ-IG処理が施されたシリコンウエハ10a、MCZ法を用いて製造されたシリコンウエハ10a、FZ法を用いて製造されたシリコンウエハ10a、あるいはエピタキシャル層が形成されたシリコンウエハ10aのいずれかを用いることで、頂点14pから-z方向において200μm以内のシリコン基板10の領域A1における欠陥密度が0.02個/μm以下となる。特に、MCZ法を用いて製造されたシリコンウエハ10aを用いることで、領域A1の欠陥密度が0.02個/μm以下となる。また、DZ-IG処理が施されたシリコンウエハ10aを用いることで、領域A1における欠陥密度が0.004個/μm以下となる。このようにして、シリコンウエハ10aにウェットエッチングした際に、凸部14の形状が歪になる可能性を低減できる。その結果、サーマルプリントヘッド1の製造において、歩留まりが改善される。
【0067】
上記サーマルプリントヘッド1は、断面において、領域A1における欠陥密度が0.004個/μm以下である。このようにすれば、ウェットエッチングを用いて凸部14を形成するときに、当該凸部14の形状が歪になる可能性を更に低減できる。たとえば、DZ-IG処理が施されたシリコンウエハ10a、FZ法を用いて製造されたシリコンウエハ10a、あるいはエピタキシャル層が形成されたシリコンウエハ10aを用いることで、領域A1における欠陥密度を0.004個/μm以下とすることができる。そのため、シリコンウエハ10aにウェットエッチングした際に、凸部14の形状が歪になる可能性を更に低減できる。その結果、サーマルプリントヘッド1の製造において、歩留まりが更に改善される。
【0068】
上記サーマルプリントヘッド1は、断面において、z方向におけるシリコン基板10の中央部における欠陥密度が0.004個/μm以上である。領域A1以外における欠陥密度が0.004個/μm以上であっても、ウェットエッチングによる凸部14を形成するときに、領域A1以外の領域における欠陥密度は当該凸部14の形状に対して大きな影響を及ぼさない。そのため、上記領域A1における欠陥密度が上記条件を満たしていれば、シリコンウエハ10aにウェットエッチングした際に、凸部14の形状が歪になる可能性を低減できる。このため、たとえばDZ-IG処理が施されたシリコンウエハであって、上記領域A1の欠陥密度の条件を満足するシリコンウエハ10aを用いることで、サーマルプリントヘッド1の製造において、歩留まりが改善される。
【0069】
(実施の形態2)
図15は、実施の形態2のサーマルプリントヘッド1の概略部分拡大断面図である。図15は、図4に対応する。図15に示されたサーマルプリントヘッド1は、基本的には図1から図4に示されたサーマルプリントヘッド1と同様の構成を備えるが、凸部14が充填剤によって構成されている点で異なる。具体的には、シリコン基板10は主面11上に凹部14rを有する。凹部14rの断面形状は、たとえばV字状である。凸部14は、凹部14rを覆う充填剤によって構成されている。
【0070】
凹部14rは、一対の側面14s3を有する。一対の側面14s3の上端は、それぞれ主面11と接続している。一対の側面14s3の下端は互いに接続されている。一対の側面14s3は、主面11から離れるに従って、互いに近づくように主面11に対して傾斜している。主面11に対する一対の側面14s3の各々の傾斜角は、いずれも54.7°である。
【0071】
充填剤の材料は、たとえば、低温同時焼成セラミック(LTCCセラミック)である。LTCCセラミックは、例えば、アルミナのようなセラミック粉末とガラス粉末とを含むLTCCスラリーを焼成することによって得られるセラミック材料である。
【0072】
頂点14pからz方向において200μm以内のシリコン基板10の領域A1における欠陥密度は0.02個/μm以下である。この場合、たとえばウェットエッチングにより凹部14rを形成するときに、結晶欠陥に起因して当該凹部14rの側面14s3の形状が歪になる可能性を低減できる。つまり、凸部14の想定される高さおよび凹部14rの想定される深さから、実質的に凹部14rの底部は領域A1内部に位置する。このため、当該凹部14rは欠陥密度の十分低い領域に形成されるため、上記の様に側面14s3の形状が歪になる可能性は極めて低い。その結果、サーマルプリントヘッド1の製造において、歩留まりが改善される。
【0073】
(サーマルプリントヘッドの製造方法)
以下、本実施の形態のサーマルプリントヘッド1の製造方法を説明する。
【0074】
シリコンウエハ10aを準備する工程(S1b)が実施される。この工程(S1b)では、図16に示されるように、半導体材料であるシリコンウエハ10aを準備する。シリコンウエハ10aは、シリコンの単結晶を含む。シリコンウエハ10aは、DZ-IG処理が施されたシリコンウエハ、MCZ法を用いて製造されたシリコンウエハ、FZ法を用いて製造されたシリコンウエハ、あるいはエピタキシャル層が形成されたシリコンウエハのいずれかである。
【0075】
その次に、マスク層2を形成する工程(S2b)を実施する。この工程(S2b)では、図17に示されるように、主面11aにおいて、凹部14r(図15参照)を形成する領域以外の領域にマスク層2を形成する。つまり、凹部14rを形成する領域には、マスク層2を形成しない。マスク層2を構成する材料は、たとえば、窒化珪素(SiN)または二酸化珪素(SiO)である。マスク層2は、CVD法またはスパッタリングを用いて形成される。
【0076】
その次に、エッチングする工程(S3b)を実施する。この工程(S3b)では、図18に示されるように、マスク層2をマスクとして用いてシリコンウエハ10aをウェットエッチングする。z方向からみた平面視において、マスク層2が配置されていない領域におけるシリコンウエハ10aが-z方向にエッチングされる。このようにして、主面11の一部に断面形状がV字状の凹部14rが形成される。
【0077】
エッチング液として水酸化カリウム(KOH)水溶液などのアルカリ性水溶液を用いた時、シリコンウエハ10aの結晶面において、(111)面におけるエッチングレートが他面に比べて速い。(111)面は、シリコンウエハ10aの表面に対して57.5°傾斜している面である。ここで、シリコンウエハ10aの主面11および裏面12の面方位は、(100)面である。そのため、主面11に対する側面14s3の傾斜角が54.7°となるように、シリコンウエハ10aがエッチングされる。凹部14rが形成された後、フッ化水素酸(HF)を用いたウェットエッチングによって、マスク層2を除去する。
【0078】
その次に、凸部14を形成する工程(S4b)を実施する。この工程(S4b)では、図19に示されるように、低温同時焼成セラミック(LTCCセミラック)で形成されている凸部14を形成する。具体的には、LTCCスラリーを凹部14rに塗布する。LTCCスラリーは、LTCCセミラック粉末と、ガラスと、バインダーと、溶剤とを含む。LTCCスラリーを焼成して、LTCCで形成されている凸部14を形成する。LTCCスラリーの焼成温度は、例えば、870℃以上900℃以下である。
【0079】
凸部14を形成する工程(S4b)の後に、図9図14に示された金属層16を形成する工程(S4a)から駆動回路35を実装する工程(S10a)が順次実施される。このようにして、本実施の形態2に係るサーマルプリントヘッド1が製造される。
【0080】
<作用効果>
上記サーマルプリントヘッド1において、シリコン基板10は、主面11上に凹部14rを有する。凸部14は、凹部14rを覆う充填剤によって構成されている。このようにすれば、頂点14pからz方向において200μm以内のシリコン基板10の領域A1における欠陥密度が0.02個/μm以下であれば、ウェットエッチングにより凹部14rを形成するときに、当該凹部14rの側面14s3の形状が歪になる可能性を低減できる。その結果、サーマルプリントヘッド1の製造において、歩留まりが改善される。
【0081】
(欠陥密度の測定方法)
欠陥密度の計測方法について説明する。図4あるいは図15に示されるシリコン基板10の断面に、ジルトルエッチ液を用いたエッチング処理を施すことによって、結晶欠陥が観察される。
【0082】
欠陥密度を計測する対象領域は、頂点14pからz方向において200μm以内のシリコン基板10の領域A1である。領域A1において、5視野分の欠陥密度を計測する。5視野おけるそれぞれの欠陥密度は、領域A1内において異なる位置で計測される。1視野として観察される領域は、50μm×50μmの領域である。欠陥密度は、5視野分の欠陥密度を算術平均した値である。本実施の形態1あるいは実施の形態2に係るサーマルプリントヘッド1において、領域A1内における5視野分の欠陥密度を算術平均した欠陥密度が0.02個/μm以下となる。
【0083】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
主面を有するシリコン基板を備え、
前記シリコン基板は、前記主面上に凸部を有し、
前記主面に対して垂直な方向をz方向とすると、
前記凸部は、前記主面から前記z方向において最も離れた点である頂点を有し、
前記z方向に沿った前記シリコン基板の断面において、
前記頂点から前記z方向において200μm以内の前記シリコン基板の領域における欠陥密度が0.02個/μm以下である、サーマルプリントヘッド。
(付記2)
前記断面において、
前記領域における欠陥密度が0.004個/μm以下である、付記1に記載のサーマルプリントヘッド。
(付記3)
前記断面において、
前記z方向における前記シリコン基板の中央部における欠陥密度が0.004個/μm以上である、付記2に記載のサーマルプリントヘッド。
(付記4)
前記シリコン基板は、前記主面上に凹部を有し、
前記凸部は、前記凹部を覆う充填剤によって構成されている、付記1から付記3のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッド。
【0084】
今回開示された実施の形態1及び実施の形態2はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の基本的な範囲は、上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【符号の説明】
【0085】
1 サーマルプリントヘッド、2 マスク層、10 シリコン基板、10a シリコンウエハ、11,11a 主面、12,12a 裏面、14 凸部、14s1 頂面、14s2 傾斜面、14s3 側面、14p 頂点、14r 凹部、15 絶縁層、16 金属層、20 配線層、21 共通配線、22 基部、23,26 延出部、25 個別配線、27 端部、28 端子部、29 引出配線、30 抵抗体層、31 発熱部、33 保護層、35 駆動回路、36,37 導電ワイヤ、40 コネクタ、43 封止部材、45 突起、46 プラテンローラ、47 印刷媒体、49 ヒートシンク、A1 領域、h 高さ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19