(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154538
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】フィルム測定装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/06 20060101AFI20241024BHJP
G01B 21/08 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
G01B11/06 101Z
G01B21/08 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068398
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001096
【氏名又は名称】倉敷紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167988
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】横田 博
(72)【発明者】
【氏名】川村 勝三
(72)【発明者】
【氏名】永田 章
(72)【発明者】
【氏名】愛知 敦
【テーマコード(参考)】
2F065
2F069
【Fターム(参考)】
2F065AA30
2F065BB13
2F065BB15
2F065BB22
2F065BB23
2F065CC02
2F065CC31
2F065DD03
2F065FF46
2F065GG13
2F065GG23
2F065HH04
2F065HH15
2F065JJ01
2F065JJ23
2F065LL02
2F065MM03
2F065MM07
2F065MM08
2F065MM28
2F065PP03
2F065PP11
2F065QQ23
2F065UU03
2F065UU06
2F069AA46
2F069BB20
2F069BB34
2F069CC06
2F069DD19
2F069GG04
2F069GG07
2F069GG08
2F069GG63
2F069JJ06
2F069JJ13
2F069MM04
2F069PP06
(57)【要約】
【課題】流れ方向に搬送されるフィルムの物理量、物性または組成をより高い精度で測定可能な装置を提供する。
【解決手段】
フィルムFの幅方向に差し渡されるトラバースビーム11と、前記トラバースビームに支持され、一直線上に配置される複数のセンサ24、26と、前記複数のセンサを結ぶ直線が前記フィルムの流れ方向と成す角度を調整可能なセンサ位置調整手段と、前記複数のセンサを一体として前記フィルムの幅方向に移動させる幅方向移動手段と、前記複数のセンサの計測結果から前記フィルムの前記物理量、物性または組成を算出する演算部28とを有するフィルム測定装置10。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流れ方向に搬送されるフィルムの物理量、物性または組成を幅方向に測定するための装置であって、
前記フィルムの幅方向に差し渡されるトラバースビームと、
前記トラバースビームに支持され、一直線上に配置される複数のセンサと、
前記複数のセンサを結ぶ直線が前記フィルムの流れ方向と成す角度を調整可能なセンサ位置調整手段と、
前記複数のセンサを一体として前記フィルムの幅方向に移動させる幅方向移動手段と、
前記複数のセンサの計測結果から前記フィルムの前記物理量、物性または組成を算出する演算部と、
を有するフィルム測定装置。
【請求項2】
前記幅方向移動手段は、前記複数のセンサを前記トラバースビームに沿って走行させる手段である、
請求項1に記載のフィルム測定装置。
【請求項3】
前記複数のセンサを一体として前記フィルムの流れ方向に移動させる流れ方向移動手段をさらに有する、
請求項1または2に記載のフィルム測定装置。
【請求項4】
流れ方向に搬送されるフィルムの物理量、物性または組成を幅方向に測定するための装置であって、
互いに平行で、前記フィルムを挟んで前記フィルムの幅方向に差し渡される第1トラバースビームおよび第2トラバースビームと、
複数のセンサであって、前記第1トラバースビームもしくは前記第2トラバースビームに支持されるセンサ、または前記第1トラバースビームに支持された出射部と前記第2トラバースビームに支持されて前記出射部と対向する検出部から構成されるセンサが、一直線上に配置される複数のセンサと、
前記複数のセンサを結ぶ直線が前記フィルムの流れ方向と成す角度を調整可能なセンサ位置調整手段と、
前記複数のセンサを一体として前記フィルムの幅方向に移動させる幅方向移動手段と、
前記複数のセンサの計測結果から前記フィルムの前記物理量、物性または組成を算出する演算部と、
を有するフィルム測定装置。
【請求項5】
前記幅方向移動手段は、前記複数のセンサを前記第1トラバースビームおよび前記第2トラバースビームに沿って走行させる手段である、
請求項4に記載のフィルム測定装置。
【請求項6】
前記複数のセンサを一体として前記フィルムの流れ方向に移動させる流れ方向移動手段をさらに有する、
請求項4または5に記載のフィルム測定装置。
【請求項7】
前記フィルムの前記物理量、物性または組成には少なくとも当該フィルムの厚さ、または当該フィルムの表面に形成された薄膜の厚さを含む、
請求項1または4に記載のフィルム測定装置。
【請求項8】
前記複数のセンサが、互いに異なる波長の光またはX線の吸収を計測するセンサを含む、
請求項1または4に記載のフィルム測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流れ方向に搬送されるフィルムや当該フィルムの表面に形成された薄膜の物理量、物性や組成を、幅方向に測定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂フィルム等に照射した光の吸光度や干渉スペクトルを利用して、そのフィルムの厚さや、フィルム表面に形成された薄膜の厚さを測定することが行われている。例えば、特許文献1には、高分子フィルムに近赤外光を照射して、フィルムの吸収波長帯にある波長λ1と吸収波長帯の外にある波長λ2での透過率の比から、当該高分子フィルムの厚みを測定する方法が開示されている。特許文献2には、樹脂フィルムなどのウェブに白色光線を照射して、測定部が検出した表裏面からの干渉を含む波長強度分布から、当該ウェブの厚さを求める方法が開示されている。
【0003】
また、樹脂フィルムの押出成形時、延伸加工時、表面への薄膜成膜時などには、流れ方向に搬送されるフィルムについて、その厚さや表面の薄膜の厚さの幅方向の分布を測定することが行われている。例えば、特許文献3には、搬送されるラミネートフィルムの幅方向に、該ラミネートフィルムより広幅に非接触式厚み検知センサを定速で往復運動させることにより、該ラミネートフィルムの斜め方向に、ジグザグにトラバースして走査を行い、該ラミネートフィルムの幅方向の厚みを測定するラミネートフィルムの厚み測定方法が記載されている。特許文献4には、延伸、発泡などによって幅と厚みを変化させて製造される樹脂シートや発泡シートの製造ラインにおいて、幅方向における位置毎の厚みを測定する厚み計として、光学的にシート幅方向に走査して測定する厚み計が例示されている。特許文献5には、溶融した樹脂をシート状に吐出してシートを形成するシート製造装置において、形成されたシートの厚みを、その幅方向に沿ってスキャンしながら測定する厚み測定手段が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-074634号公報
【特許文献2】特開2002-277217号公報
【特許文献3】特開2003-181905号公報
【特許文献4】特開2020-203453号公報
【特許文献5】特開2013-095052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献3~5に記載された測定装置は、1個のセンサを幅方向に走査して、幅方向の厚さを測定するものであった。測定対象のフィルムの構造や表面の特性が均一であれば、1個のセンサによる測定結果から、その厚さを正確に求めることができる。しかし、フィルムが均一でなく、例えばフィルム表面に模様が形成されているような場合には、1個のセンサによる測定結果からは、正確な厚さが求められないことがあった。表面に模様を有するフィルム等に対しては、フィルム上の同じ位置を複数のセンサで測定して、複数の測定結果を演算することによって、フィルムの厚さをより正確に求められる場合がある。しかし、流れ方向に搬送されるフィルムでは、移動し続けるフィルム上の同じ位置を複数のセンサで測定すること自体が難しかった。
【0006】
本発明は、上記を考慮してなされたものであり、流れ方向に搬送されるフィルムに対して、複数のセンサでフィルム上の同じ位置を測定することにより、当該フィルムや、その表面に形成された薄膜の厚さ、温度などの物理量、物性、組成を、幅方向に、より高い精度で測定可能な装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のフィルム測定装置は、流れ方向に搬送されるフィルムの物理量、物性または組成を幅方向に測定するための装置であって、前記フィルムの幅方向に差し渡されるトラバースビームと、前記トラバースビームに支持され、一直線上に配置される複数のセンサと、前記複数のセンサを結ぶ直線が前記フィルムの流れ方向と成す角度を調整可能なセンサ位置調整手段と、前記複数のセンサを一体として前記フィルムの幅方向に移動させる幅方向移動手段と、前記複数のセンサの計測結果から前記フィルムの前記物理量、物性または組成を算出する演算部とを有する。
【0008】
ここで、測定対象であるフィルムには、フィルム、シート、テープなどと呼ばれる膜状または板状のものをすべて含む。また、フィルムには、その表面にコーティングなどの薄膜が形成されていてもよい。測定の目的となるフィルムの物理量には、上記フィルムまたは上記フィルムの表面に形成された薄膜の厚さや温度を含む。フィルムの物性には、上記フィルムまたは上記フィルムの表面に形成された薄膜の光学的特性を含む。フィルムの組成には、上記フィルムまたは上記フィルムの表面に形成された薄膜の組成を含む。なお、フィルムの物理量、物性または組成を測定することには、物理量、物性または組成のうち2以上のものを測定することを含む。
【0009】
好ましくは、前記幅方向移動手段は、前記複数のセンサを前記トラバースビームに沿って走行させる手段である。あるいは、好ましくは、前記幅方向移動手段は、前記トラバースビームを前記フィルムの幅方向に移動させる手段である。
【0010】
好ましくは、上記フィルム測定装置は、前記複数のセンサを一体として前記フィルムの流れ方向に移動させる流れ方向移動手段をさらに有する。より好ましくは、前記流れ方向移動手段は、前記トラバースビームが前記フィルムの流れ方向に対して停止した状態で、前記複数のセンサを前記フィルムの流れ方向に移動させる手段である。あるいは、より好ましくは、前記流れ方向移動手段は、前記トラバースビームを前記フィルムの流れ方向に移動させる手段である。
【0011】
さらに好ましくは、前記流れ方向移動手段は、前記複数のセンサの前記フィルムの流れ方向への移動速度を、前記フィルムの搬送速度と一致させるように制御して、前記複数のセンサを移動可能である。
【0012】
本発明の他のフィルム測定装置は、流れ方向に搬送されるフィルムの物理量、物性または組成を幅方向に測定するための装置であって、互いに平行で、前記フィルムを挟んで前記フィルムの幅方向に差し渡される第1トラバースビームおよび第2トラバースビームと、一直線上に配置される複数のセンサと、前記複数のセンサを結ぶ直線が前記フィルムの流れ方向と成す角度を調整可能なセンサ位置調整手段と、前記複数のセンサを一体として前記フィルムの幅方向に移動させる幅方向移動手段と、前記複数のセンサの計測結果から前記フィルムの前記物理量、物性または組成を算出する演算部とを有する。そして、前記複数のセンサの個々は、前記第1トラバースビームもしくは前記第2トラバースビームに支持されるか、または前記第1トラバースビームに支持された出射部と前記第2トラバースビームに支持されて前記出射部と対向する検出部から構成されるセンサである。
【0013】
ここでセンサの出射部と検出部が対向するとは、出射部と検出部が、出射部から出射され、フィルムを透過した電磁波が検出部に入射する位置関係にあることをいう。また、対向する出射部と検出部から構成されるセンサを移動させるとは、出射部と検出部が対向した状態を維持しながら、出射部と検出部を同時に移動させることをいう。
【0014】
本発明の他のフィルム測定装置において、好ましくは、前記幅方向移動手段は、前記複数のセンサを前記第1トラバースビームおよび前記第2トラバースビームに沿って走行させる手段である。あるいは、好ましくは、前記幅方向移動手段は、前記第1トラバースビームおよび前記第2トラバースビームを幅方向に移動させる手段である。
【0015】
本発明の他のフィルム測定装置において、好ましくは、上記フィルム測定装置は、前記複数のセンサを一体として前記フィルムの流れ方向に移動させる流れ方向移動手段をさらに有する。より好ましくは、前記流れ方向移動手段は、前記第1トラバースビームおよび前記第2トラバースビームが前記フィルムの流れ方向に対して停止した状態で、前記複数のセンサを前記フィルムの流れ方向に移動させる手段である。あるいは、より好ましくは、前記流れ方向移動手段は、前記第1トラバースビームおよび前記第2トラバースビームを前記フィルムの流れ方向に移動させる手段である。
【0016】
本発明の他のフィルム測定装置において、さらに好ましくは、前記流れ方向移動手段は、前記複数のセンサの前記フィルムの流れ方向への移動速度を、前記フィルムの搬送速度と一致させるように制御して、前記複数のセンサを移動可能である。
【0017】
上記いずれかのフィルム測定装置において、好ましくは、前記フィルムの前記物理量、物性または組成には少なくとも当該フィルムの厚さ、または当該フィルムの表面に形成された薄膜の厚さを含む。また、上記いずれかのフィルム測定装置において、好ましくは、前記複数のセンサが、互いに異なる波長の光またはX線の吸収を計測するセンサを含む。
【0018】
上記いずれかのフィルム測定装置において、好ましくは、前記複数のセンサが放射温度計を含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明のフィルム測定装置または本発明の他のフィルム測定装置によれば、流れ方向に搬送されるフィルムに対して、複数のセンサを同じ軌跡で幅方向に走査させることができる。これにより、複数のセンサでフィルム上の同じ位置を計測し、複数のセンサの計測結果を組み合わせて演算することにより、当該フィルムや、その表面に形成された薄膜の厚さその他の物理量、物性または組成を、幅方向に、より高い精度で測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態のフィルム測定装置の構成を示す図である。A:平面図、B:正面図。
【
図2】フィルム上のセンサの軌跡を説明するための図である。
【
図3】位置調整によって、第1センサと第2センサの軌跡が一致することを説明するための図である。
【
図4】第2実施形態のフィルム測定装置の構成を示す図である。A:平面図、B:左側面図。
【
図5】フィルム上のセンサの軌跡を説明するための図である。
【
図6】フィルム上のセンサの軌跡が流れ方向と直角になることを説明するための図である。
【
図7】第3実施形態のフィルム測定装置の構成を示す図である。A:平面図、B:正面図
【
図8】実験に用いたセンサ設置プレートにおけるセンサの配置を示す図である。
【
図9】A,B,C:実施例1の結果を説明するための図である。
【
図10】A,B:実施例1の結果を説明するための図である。
【
図11】A,B,C:実施例1の結果を説明するための図である。
【
図12】A,B:実施例1の結果を説明するための図である。
【
図14】A,B:実施例2の結果を説明するための図である。
【
図15】A:実施例2の結果を説明するための図、B:実施例2の測定結果である。
【
図16】A,B:実施例2の結果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の第1実施形態を、
図1~
図3に基づいて説明する。本実施形態では、樹脂フィルムに赤外線を照射して、その吸収に基づいてフィルムの厚さを測定する。
【0022】
図1を参照して、本実施形態のフィルム測定装置10は、流れ方向(
図1Aの上向き)に搬送されるフィルムFの幅方向に差し渡されるトラバースビーム11と、フィルムFのトラバースビーム11と反対側に設けられるミラー12と、第1センサ24と、第2センサ26とを有する。なお、以下において、単に「流れ方向」「幅方向」というときは、それぞれフィルムの流れ方向または幅方向を意味する。
【0023】
フィルムFの形状は、押出や延伸された帯状であってもよいし、枚葉状のものがコンベア等によって搬送されていてもよい。本実施形態では、フィルムの厚さを測定する場合について説明するが、測定の目的は、これには限られず、フィルム表面に形成された薄膜の厚さであってもよいし、温度などの厚さ以外の物理量であってもよいし、フィルムやフィルム表面に形成された薄膜の光学特性などの物性や、フィルムやフィルム表面に形成された薄膜の組成であってもよい。
【0024】
トラバースビーム11は、フィルムFの片側に、フィルム面と平行に、フィルムの全幅を横断するように差し渡される。
【0025】
第1センサ24および第2センサ26は、センサ設置プレート20、回転軸21、支持梁22を介してトラバースビーム11に支持される。第1センサ24および第2センサ26は、センサ設置プレートに形成された穴を貫通した状態で固定される。センサ設置プレート20は、フィルム面に平行に設けられ、フィルムFと反対側の面で回転軸に固定される。第1センサと第2センサは、センサ設置プレート上で、回転軸、第1センサおよび第2センサが一直線上にあるように配置される。3以上のセンサを用いる場合は、回転軸とすべてのセンサが一直線上にあるように配置される。センサの投受光部と電子回路部が分離している場合は、回転軸と各センサの投受光部が一直線上にあるように配置される。回転軸21は、支持梁に形成された穴を貫通して、支持梁のフィルムと反対側の面に固定されたステッピングモータ23に直結される。支持梁22はトラバースビームに支持される。ステッピングモータによって回転軸を回転させると、センサ設置プレート、第1センサおよび第2センサが回転軸を中心に回転する。これにより、第1センサと第2センサを結ぶ直線がフィルムの流れ方向と成す角度を任意の角度に調整可能となる。また、第1センサと第2センサを当該角度を調整した状態に固定して維持可能となる。
【0026】
第1センサ24は、図示しない光源と図示しない光ファイバによって接続され、フィルムFに向かって(
図1Bの下向きに)、ビーム状の赤外線を出射する。出射された赤外線はフィルムFを透過し、ミラー12で反射され、再びフィルムFを透過して、第1センサに戻る。第1センサは受光した光の強度を検出して、出射した光の強度との比からフィルムによる吸収を計測する。第2センサ26も同様である。ただし、第2センサは、第1センサと異なる波長の赤外線を用いる。
【0027】
演算部28は、第1センサ24による計測結果と第2センサ26による計測結果を組み合わせて演算することにより、フィルムFの厚さを算出する。演算方法の詳細は実施例に後述する。
【0028】
第1センサ24および第2センサ26は、センサ設置プレート20、回転軸21、支持梁22およびステッピングモータ23と一体となって、フィルムFの幅方向に移動可能である。第1センサおよび第2センサは、例えば、トラバースビーム11に設けられた軌道上を支持梁が走行することにより、フィルムの幅方向に移動する。これにより、フィルム測定装置10が占有する設置面積を小さくできる。
【0029】
あるいは、フィルムFの幅が狭い場合は、第1センサ24および第2センサ26をフィルムの幅方向に移動させるために、支持梁22がトラバースビーム11に固定された状態で、トラバースビームをフィルムの幅方向に移動させてもよい。トラバースビームをフィルムの幅方向に移動させるには、例えば、トラバースビームを支持する図示しない支柱が幅方向に敷かれたレール上を走行してもよいし、フィルムFが水平に搬送されている場合であれば当該支柱が床面を自走してもよい。トラバースビームを幅方向に移動させることにより、支持梁がトラバースビームに沿って走行する場合と比較して、より簡単な構造で幅方向移動手段を実現できる。
【0030】
制御部15は、センサ位置調整手段および幅方向移動手段の制御、測定の開始および終了の制御を含め、フィルム測定装置10の全体を制御する。
【0031】
次に、本実施形態のフィルム測定装置10の使用方法を説明する。
【0032】
測定を開始するに当たって、まず、第1センサと第2センサを結ぶ直線がフィルムの流れ方向と成す角度を調整する。
【0033】
図2を参照して、流れ方向に速度uで搬送されるフィルムFに対して、第1センサ24を幅方向に速度vで移動させると、フィルム上の測定点は流れ方向に対して角度φ(tanφ=v/u)で移動する。第1センサにフィルムの全幅を往復させることで、測定点はフィルム上にジグザグの軌跡を描く。例えば、特許文献3には、センサがラミネートフィルムの斜め方向にジグザグにトラバースして走査されることが記載されている。
【0034】
図3を参照して、第1センサ24と第2センサ26を結ぶ直線と流れ方向が成す角度θをθ=φとすれば、第1センサと第2センサの測定点はフィルム上で同じ軌跡を辿る。フィルムの搬送速度uは、フィルムの製造条件や加工条件の要請によって予め決まっていることが多いので、第1センサと第2センサの幅方向への移動速度vと角度θをtanθ=v/uとなるように決めることで、フィルム上の同じ位置を第1センサと第2センサの両方で測定できる。
【0035】
上記角度θを調整した後、第1センサ24と第2センサ26を一体としてフィルムFの幅方向に移動させながら、連続的に測定を行う。第1センサと第2センサは、異なる波長の赤外線をフィルムに出射して、ミラー12からの反射光の強度を検出する。両センサがフィルムの幅方向の一方の端から出発して、他方の端まで達したら、第1センサと第2センサを結ぶ直線と流れ方向が成す角度を反転させて、反対方向に速度(-v)で戻る。なお、フィルムの幅方向両端部(耳部)を製品として使用しない場合は、耳部を除いたフィルムの有効幅の部分を両センサに往復させればよい。
【0036】
なお、フィルムFの搬送速度uは一定であることが一般的であるが、フィルムの搬送速度が一定でなく変動する場合は、搬送速度uをリアルタイムで計測することにより、角度φが一定となるように、センサの幅方向への移動速度vを制御する。あるいは、速度vを一定として、搬送速度uと移動速度vから角度φを計算により求め、角度θが常に角度φに等しくなるようにリアルタイムでステッピングモータ23を制御する。
【0037】
以上のとおり、本実施形態のフィルム測定装置10によれば、流れ方向に搬送されるフィルムに対して、複数のセンサを同じ軌跡で幅方向に走査させることができる。これにより、複数のセンサでフィルム上の同じ位置を計測し、複数のセンサの計測結果を組み合わせて演算することにより、当該フィルムや、その表面に形成された薄膜の厚さその他の物理量、物性または組成を、幅方向に、より高い精度で測定することができる。また、複数のセンサが同一種のセンサである場合、フィルム上の同じ位置を計測することにより、複数センサ間の機差を補正することができる。
【0038】
本発明の第2実施形態を、
図4~6に基づいて説明する。本実施形態では、フィルム測定装置が、複数のセンサを一体として流れ方向に移動させる流れ方向移動手段をさらに有する点で第1実施形態と異なる。
【0039】
図4を参照して、本実施形態のフィルム測定装置30において、
図1と同じ符号を付した部材は第1実施形態と同じ構造および機能を有する。制御部15は、流れ方向移動手段の制御も行う。なお、
図4Bでは、制御部15および演算部28は省略した。
【0040】
本実施形態では、流れ方向に平行に設けられた支持梁32が、フィルムFの流れ方向に伸縮可能であることによって、第1センサ24および第2センサ26を流れ方向に移動させることができる。支持梁32は、リニアガイド33を介して結合する第1部材32aと第2部材32bからなる。第1部材32aはトラバースビーム11に支持されて、トラバースビーム11と反対側(
図4Bの上側)の面にリニアガイド33のガイドレール33aが設けられる。第2部材32bは、第1部材32a側(
図4Bの下側)の面に、リニアガイド33のキャリッジ33bが固定される。キャリッジ33bは、図示しないボールねじと回転モータによって、ガイドレール33a内を直線的に移動可能である。第2部材32bの先端部には、ステッピングモータ23が固定され、第1センサ24および第2センサ26は、センサ設置プレート20、回転軸21、ステッピングモータ23、支持梁32を介してトラバースビーム11に支持される。この構造により、ガイドレール33a内をキャリッジ33bが移動するにつれて、支持梁32が流れ方向に伸縮するので、第1センサ24および第2センサ26が流れ方向に移動する。第1センサ24および第2センサ26は、幅方向に加えて、流れ方向にも移動可能となる。
【0041】
流れ方向移動手段の構成は上記には限られず、例えば、支持梁32の第1部材32aと第2部材32bが、テレスコピックタイプのスライドレールによって結合していてもよい。リニアガイド33やスライドレールを用いて支持梁32を伸縮可能とすることにより、フィルム測定装置30が占有する設置面積を抑えながら、第1センサおよび第2センサを流れ方向に移動可能とできる。
【0042】
あるいは、流れ方向移動手段の構成は、支持梁として第1実施形態の支持梁22と同じものを用いて、トラバースビーム11を流れ方向に移動可能としてもよい。このとき、トラバースビーム11を支持する図示しない支柱が流れ方向に敷かれたレール上を走行するようにしてもよいし、当該支柱が幅方向に移動可能である場合は当該支柱を流れ方向にも移動可能としてもよい。トラバースビームを流れ方向に移動させることによって、より簡単な構造で幅方向移動手段を実現できる。
【0043】
次に、本実施形態のフィルム測定装置30の使用方法を説明する。
【0044】
図5を参照して、流れ方向に速度uで搬送されるフィルムFに対して、第1センサ24を幅方向に速度v、流れ方向に速度wで移動させると、フィルム上の測定点は流れ方向に対して角度φ(tanφ=v/(u-w))で移動する。そして、第1センサ24と第2センサ26の幅方向への移動速度v、流れ方向への移動速度w、および第1センサ24と第2センサ26を結ぶ直線と流れ方向が成す角度θをtanθ=v/(u-w)、すなわちθ=φとすることにより、第1センサと第2センサの測定点はフィルム上で同じ軌跡を辿る。
【0045】
このように、本実施形態では、第1センサ24と第2センサ26を幅方向および流れ方向に移動させながら測定を行うことによって、測定点の軌跡がフィルムFを横断する角度を広い範囲で変えることができる。さらに、
図6を参照して、流れ方向への移動速度wをフィルム搬送速度uと等しくすれば、上記角度θを90度として、フィルム上の測定点を流れ方向と直角の方向に移動させることができる。
【0046】
上記角度θを調整した後、第1センサ24と第2センサ26を一体としてフィルムFの幅方向および流れ方向に移動させながら、連続的に測定を行う。両センサがフィルムの幅方向の一方の端から出発して、他方の端まで達したら、支持梁32を測定開始時の長さに戻して両センサの流れ方向の位置を元の位置に戻し、回転軸21を回転させて第1センサと第2センサを結ぶ直線と流れ方向が成す角度θを反転させ、反対方向に幅方向の速度(-v)、流れ方向の速度wで戻る。なお、u=w、θ=90度とした場合は、センサ設置プレート20上の第1センサ24と第2センサ26を結ぶ直線が流れ方向と直交しており、第1センサと第2センサを結ぶ直線と流れ方向が成す角度θを反転させる操作は必要ないので、回転軸を固定したままでセンサに往復運動をさせればよい。
【0047】
なお、フィルムFの搬送速度uが一定でない場合は、第1実施形態と同様に、搬送速度uをリアルタイムで計測することにより、角度φが一定となるように、センサの幅方向への移動速度vおよび流れ方向への移動速度wを制御する。あるいは、幅方向への移動速度vおよび流れ方向への移動速度wを一定として、搬送速度uと移動速度vおよび移動速度wから角度φを計算により求めて、角度θが常に角度φに等しくなるようにリアルタイムでステッピングモータ23を制御する。
【0048】
本発明の第3実施形態を、
図7に基づいて説明する。本実施形態は、第1センサおよび第2センサがそれぞれ出射部と検出部からなり、出射部と検出部がフィルムを挟んで対向する点で第1実施形態と異なる。本実施形態については、上述した第1実施形態および第2実施形態との相違点を中心に説明する。
【0049】
図7を参照して、本実施形態のフィルム測定装置40は、流れ方向に搬送されるフィルムFの幅方向に差し渡される第1トラバースビーム41および第2トラバースビーム42と、第1出射部54と第1検出部64からなる第1センサと、第2出射部56と第2検出部66からなる第2センサとを有する。
【0050】
第1トラバースビーム41および第2トラバースビーム42は、フィルムFを挟んでフィルムの両側に、互いに平行に、フィルムの全幅を横断するように差し渡される。第1トラバースビームと第2トラバースビームは一方の端部(
図7の左側端部)同士が接続部材43で接続されてC型のフレームを構成している。フィルムの幅が広い場合は、第1トラバースビームと第2トラバースビームは両端部同士を接続部材で接続してO型のフレームを構成してもよい。
【0051】
第1センサは、第1トラバースビーム41に支持された第1出射部54と、第2トラバースビーム42に支持された第1検出部64からなる。同様に、第2センサは、第1トラバースビーム41に支持された第2出射部56と、第2トラバースビーム42に支持された第2検出部66からなる。第1出射部54および第2出射部56は、フィルム面に平行に設けられた出射部設置プレート50、第1回転軸51および第1支持梁52を介して第1トラバースビーム41に支持される。第1検出部64および第2検出部66は、フィルム面に平行に設けられた検出部設置プレート60、第2回転軸61および第2支持梁62を介して第2トラバースビーム42に支持される。
【0052】
第1出射部54および第2出射部56は、第1ステッピングモータ53によって第1回転軸51を中心に回転し、第1検出部64および第2検出部66は、第2ステッピングモータ63によって第2回転軸61を中心に回転する。これにより、第1出射部と第2出射部を結ぶ直線がフィルムの流れ方向と成す角度、および第1検出部と第2検出部を結ぶ直線がフィルムの流れ方向と成す角度を任意の角度に調整可能となる。第1回転軸と第2回転軸を常に同軸とし、第1ステッピングモータと第2ステッピングモータによる回転角度を合わせることによって、第1出射部54と第1検出部64、および第2出射部56と第2検出部66は、フィルムFを挟んで対向した状態を維持できる。出射部と検出部が対向するとは、出射部と検出部が、出射部から出射されてフィルムを透過した赤外線が検出部に入射する位置関係にあることをいう。
【0053】
第1センサの第1出射部54は、図示しない光源と図示しない光ファイバによって接続され、フィルムFに向かって赤外線ビームを出射する。出射された赤外線はフィルムFを透過し、第1検出部64に受光される。第1センサの第1検出部は受光した赤外線の強度を検出する。第2センサも同様である。ただし、第2センサは、第1センサと異なる波長の赤外線を用いる。
【0054】
演算部58は、第1センサによる計測結果と第2センサによる計測結果を組み合わせて演算することにより、フィルムFの厚さを算出する。演算方法の詳細は実施例に後述する。
【0055】
第1センサおよび第2センサは、一体となって、フィルムFの幅方向に移動可能である。第1センサおよび第2センサの幅方向移動手段は、第1支持梁52が第1トラバースビームに設けられた軌道上を、第2支持梁62が第2トラバースビームに設けられた軌道上を、同じ速度で走行するようにすればよい。また、第1トラバースビーム41と第2トラバースビーム42がC型フレームを構成する場合は、第1支持梁52を第1トラバースビームに、第2支持梁62を第2トラバースビームにそれぞれ固定した状態で、フレーム全体をフィルムの幅方向に移動させてもよい。
【0056】
また、
図7には示していないが、第1センサおよび第2センサは、一体となって、フィルムFの流れ方向にも移動可能であることが好ましい。第1センサおよび第2センサの流れ方向移動手段は、第1支持梁52と第2支持梁62をそれぞれ、第2実施形態の支持梁32と同じ構造によって伸縮可能とすることで実現できる。第1出射部54と第1検出部64、および第2出射部56と第2検出部66がフィルムFを挟んで対向した状態を維持しながら、第1支持梁と第2支持梁を伸縮させることによって、第1センサおよび第2センサを流れ方向にも移動させることができる。あるいは、流れ方向移動手段は、第1トラバースビーム41および第2トラバースビーム42を流れ方向に移動可能としてもよい。
【0057】
制御部45は、センサ位置調整手段、幅方向移動手段および流れ方向移動手段の制御、測定の開始および終了の制御を含め、フィルム測定装置40の全体を制御する。
【0058】
本実施形態のフィルム測定装置40の使用方法は、第1実施形態および第2実施形態と同様である。
【実施例0059】
実施例1として、電子回路を印刷した幅1mのPETフィルム上に水を90質量%含むエッチング水溶液の薄膜を形成し、その水溶液膜の厚さを測定した。実験に使用した装置は、水平に搬送されるフィルムに対して、フィルムの上方に、幅方向に差し渡されたトラバースビームと、フィルムの下方に設けられたミラーとを有し、トラバースビームに支持されたセンサ設置プレートをトラバースビームに沿って走行可能としたものである。フィルムは流れ方向に6cm/秒で搬送し、センサ設置プレートは幅方向に4.5cm/秒で移動させた。センサ設置プレート20には、
図8に示すように、第1センサ24、第2センサ26および放射温度計(第3センサ)71が7.5cm間隔で一直線上にあるように配置し、この直線が流れ方向と成す角度θを、tanθ=4.5/6に合わせて固定した。これにより、放射温度計71、第2センサ26、第1センサ24は、それぞれ約1秒ずつ遅れてフィルムを斜めに横断する同じ軌跡を辿る。また、比較のために比較センサ72を、センサ設置プレート20の中心を通る流れ方向に対して第1センサ24と線対称の位置に配置した。比較センサ72の軌跡は、第1センサ24、第2センサ26および放射温度計71のそれとは一致しない。各センサは光源に光ファイバで接続され、第1センサ24は波長1160nm、第2センサ26および比較センサ72は波長1100nmでの吸光度を計測した。フィルムに向けて赤外線を投射し、フィルムを透過してミラーから戻る光を受光し、投射した光との強度差から吸光度を求めた。波長1100nmは水による吸収がほぼない波長であり、1160nmは水による1540nm付近をピークとする吸収帯が立ち上がる領域にある。測定は、水溶液の薄膜がない状態とある状態で行い、約56msに1回、フィルムの全幅にわたる580点で行った。
【0060】
図9および
図10に、水溶液膜のないフィルムだけの測定結果を示す。各グラフの横軸はフィルムの幅方向の測定点を示す(以下の各図においても同じ)。
図9Aは第2センサ26、
図9Bは第1センサ24による吸光度、
図9Cは
図9Bの吸光度から
図9Aの吸光度を引いた差、
図10Aは比較センサ72による吸光度、
図10Bは
図9Bの吸光度から
図10Aの吸光度を引いた差である。なお、以下において、吸光度の差を「差吸光度」という。
【0061】
図9Aと
図9Bはよく似た吸光度分布を示している。
図9Cでは、
図9Aと
図9Bの吸光度の差はフィルムの全幅でゼロに近い。フィルム上には微細な配線が形成されているため、フィルムを通過する光はその位置によって屈折、反射、光干渉の状況が異なり、得られた吸光度は大きく変化する。そのため、
図9Aと
図9Bの吸光度は計測する位置によって大きく変動している。しかし、第1センサと第2センサはフィルム上の同じ位置を測定するため、両者の差吸光度を取った
図9Cでは変動が小さくなっている。
図9Cの差吸光度は、理論的にはゼロとなるが、ゼロからのずれは計測誤差によるものである。それでも、差吸光度を取ることによって、測定点の位置による変動は大幅に除去されていることが分かる。
【0062】
【0063】
【0064】
図11Aと
図11Bはよく似た吸光度分布を示しており、この大まかな形状はフィルムに起因するものである。
図11Cの差吸光度が水溶液膜のみによる吸収を表している。なお、
図11Cにおいて、中ほどにある大きな谷や右側にある大きな山は、水溶液膜に生じた泡の影響を受けたものである。
【0065】
これに対して、測定位置が一致しないことから、
図12Aの吸光度分布は、
図11Aおよび
図11Bのそれとは大きく異なる。
図12Bの差吸光度は大きく変動し、水溶液膜による吸収はその変動に埋もれて判別できない。
【0066】
次に、温度の影響について説明する。水溶液のOH結合による吸収には温度依存性があり、例えば、温度が20℃から40℃に上昇すると、1160nmでの吸光度は約3%大きくなる。そのため、フィルムの面内で温度が均一でない場合は、温度が高い部分ほど、厚さを過大に見積もることになる。本実験では、放射温度計71の測定結果から、フィルムの中央部より両端部の方が、温度が約2.5℃高かった。
【0067】
図13に、
図11Cの差吸光度を放射温度計71による測定結果で補正して求めた水溶液膜の厚さを示す。この厚さは、次式により求めた。
水溶液厚さ=p1×(第1センサによる1160nmで吸光度)
-p2×(第2センサによる1100nmでの吸光度)
-p3×(基準温度との温度差)
ここで、基準温度はフィルム中央部で計測された最低温度である。また、p1、p2、p3は、厚さの算出誤差が最小となる値を最小二乗法によるパラメータフィッティングで求めた係数である。
【0068】
図11Cの差吸光度にはフィルム中央部で低く、両端部で高い傾向がみられたのに対して、
図13では、水溶液膜の厚さは約700μmで、フィルムの幅方向での傾向はみられない。
以上の実施例1および実施例2で、流れ方向に搬送されるフィルムに対して複数のセンサを幅方向に同じ軌跡で走査させ、複数のセンサでフィルム上の同じ位置を計測し、その計測結果を組み合わせて演算することにより、フィルム上の水溶液膜の厚さや、絵柄等が印刷されたフィルムの厚さをより正確に測定可能であることが確認できた。
例えば、対象となるフィルムの材質は特に限定されず、合成樹脂の他、紙、金属などであってよい。また、センサが吸収を計測する電磁波も赤外線には限られず、フィルムの材質や厚さに応じて、紫外線、可視光線、X線、β線、γ線等を用いることができる。
また、例えば、測定の目的はフィルムの厚さには限定されない。測定の目的はフィルム表面に形成された薄膜の厚さであってもよいし、温度などの厚さ以外の物理量であってもよいし、フィルムやフィルム表面に形成された薄膜の透過率、反射率、吸収率、屈折率、リタデーション(複屈折性)などの光学特性であってもよいし、フィルムやフィルム表面に形成された薄膜の組成であってもよい。
また、例えば、上記実施形態のセンサはそれぞれ異なる特定波長での吸収を計測したがこれには限られず、2個のセンサのうち一方を分光器、他方を放射温度計として、演算部が分光スペクトルの複数の波長での吸光度や干渉縞からフィルムや薄膜の厚さを算出し、放射温度計の計測値を利用して温度補正を行ってもよい。物質による光の吸収には温度依存性があるため、同じ位置で吸光度と温度を測定することにより、温度による影響を補正して厚さを算出できる。同様に、物質の屈折率にも温度依存性があるため、同じ位置でスペクトルの干渉縞と温度を測定することにより、温度による影響を補正して光干渉に基づく厚さを算出できる。
また、例えば、それぞれ異なる波長帯を測定する分光器を組み合わせて使用してもよい。例えば1個目を紫外線分光器、2個目を可視光線分光器、3個目を近赤外線分光器、4個目を赤外線分光器とすることもできる。