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特開2024-154544故障ユニット特定システム、X線CT装置、及び故障ユニット特定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154544
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】故障ユニット特定システム、X線CT装置、及び故障ユニット特定方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20241024BHJP
   H05G 1/26 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
A61B6/03 333B
H05G1/26 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068406
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 尚史
【テーマコード(参考)】
4C092
4C093
【Fターム(参考)】
4C092AA01
4C092AB20
4C092AC17
4C092BB18
4C092CE01
4C092CF14
4C092DD26
4C093AA22
4C093CA36
4C093FA35
4C093GA07
(57)【要約】
【課題】X線管とその周辺機器における故障部位の切り分けを容易にする。
【解決手段】一実施形態に係る故障ユニット特定システムは、X線管に接続して前記X線管の故障検出が可能に構成された故障ユニット特定システムであって、一端が前記X線管の陽極に接続された第1の導線と、前記第1の導線とは異なる第2の導線であって、一端が前記X線管の前記陽極に接続された第2の導線と、前記第1の導線の他端が接続される第1の接続部と、前記第1の接続部と異なる第2の接続部であって、前記第2の導線の他端が接続される第2の接続部を有し、前記第1の導線に流れる第1の電流値と、前記第2の導線に流れる第2の電流値を、夫々独立に検出する電流検出器と、を備える。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線管に接続して前記X線管の故障検出が可能に構成された故障ユニット特定システムであって、
一端が前記X線管の陽極に接続された第1の導線と、
前記第1の導線とは異なる第2の導線であって、一端が前記X線管の前記陽極に接続された第2の導線と、
前記第1の導線の他端が接続される第1の接続部と、前記第1の接続部と異なる第2の接続部であって、前記第2の導線の他端が接続される第2の接続部を有し、前記第1の導線に流れる第1の電流値と、前記第2の導線に流れる第2の電流値を、夫々独立に検出する電流検出器と、
を備える故障ユニット特定システム。
【請求項2】
前記X線管は、前記陽極に接続される陽極コネクタを有するように構成され、
前記第1の導線の前記一端と、前記第2の導線の前記一端は、どちらも前記陽極コネクタを介して前記陽極に電気的に接続され、前記第1の導線及び前記第2の導線は、前記陽極コネクタから2つに分岐されて、前記電流検出器の前記第1の接続部及び前記第2の接続部に、夫々接続される、
請求項1に記載の故障ユニット特定システム。
【請求項3】
前記電流検出器は、前記第1の電流値を検出する第1の抵抗器と、前記第2の電流値を検出する第2の抵抗器とを備える、
請求項1に記載の故障ユニット特定システム。
【請求項4】
前記第1の電流値に関する第1の電流情報と、前記第2の電流値に関する第2の電流情報を、外部に出力するインターフェース、をさらに備える、
請求項1に記載の故障ユニット特定システム。
【請求項5】
前記第1の電流値に関する第1の電流情報と、前記第2の電流値に関する第2の電流
情報を、電流波形として表示可能なデータに夫々変換する表示制御部、をさらに備え、
前記インターフェースは、前記電流波形として表示可能なデータを外部に出力する、
請求項4に記載の故障ユニット特定システム。
【請求項6】
表示部、をさらに備え、
前記表示部は、前記第1の電流情報及び前記第2の電流情報を表示する、
請求項4に記載の故障ユニット特定システム。
【請求項7】
表示部、をさらに備え、
前記表示部は、前記電流波形を表示する、
請求項5に記載の故障ユニット特定システム。
【請求項8】
前記第1の電流値と前記第2の電流値とに基づいて、前記X線管及び、前記X線管と前記X線管に印加する高圧電源の正極との間に設けられる機器の故障の有無を判定する故障判定部、
をさらに備える、請求項1に記載の故障ユニット特定システム。
【請求項9】
前記故障判定部は、前記第1の電流値と前記第2の電流値の合計値が、所定の閾値以下のとき、前記X線管、または、前記X線管と前記X線管に印加する高圧電源の正極との間に設けられる機器のいずれかに故障が発生したと推定する、
請求項8に記載の故障ユニット特定システム。
【請求項10】
前記第1の電流値と前記第2の電流値とに基づいて、前記X線管及び、前記X線管と前記X線管に印加する高圧電源の正極との間に設けられる機器の故障部位を特定する故障部位特定部、
をさらに備える、請求項1に記載の故障ユニット特定システム。
【請求項11】
前記故障部位特定部は、前記第1の電流値と前記第2の電流値の合計値が、所定の閾値以下であり、かつ、前記第1の電流値と前記第2の電流値が略同じ値を示すときには、前記X線管に故障が発生したと推定する、
請求項10に記載の故障ユニット特定システム。
【請求項12】
前記故障部位特定部は、前記第1の電流値と前記第2の電流値の差が所定値よりも大きいときは、前記電流検出器、前記第1の導線、及び、前記第2の導線の少なくとも1つに故障が発生したと推定する、
請求項10に記載の故障ユニット特定システム。
【請求項13】
前記電流検出器と前記X線管に印加する高圧電源の正極とを電気的に接続する第3の導線をさらに備え、
前記電流検出器は、前記第3の導線に流れる第3の電流値をさらに検出し、
前記故障判定部は、前記第1の電流値、前記第2の電流値、及び、前記第3の電流値に基づいて、前記X線管及び、前記X線管と前記X線管に印加する高圧電源の正極との間に設けられる機器の故障の有無を判定する、
請求項8に記載の故障ユニット特定システム。
【請求項14】
前記電流検出器で検出される前記第1の電流値及び前記第2の電流値は、前記X線管、または、前記X線管と前記X線管に印加する高圧電源の正極との間に設けられる機器のいずれかで、グランドへの電流のリークが発生したときと、前記リークが発生していないときとで、異なる値を示す、
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の故障ユニット特定システム。
【請求項15】
X線管と、
一端が前記X線管の陽極に接続された第1の導線と、
前記第1の導線とは異なる第2の導線であって、一端が前記X線管の前記陽極に接続された第2の導線と、
前記第1の導線の他端が接続される第1の接続部と、前記第1の接続部と異なる第2の接続部であって、前記第2の導線の他端が接続される第2の接続部を有し、前記第1の導線に流れる第1の電流値と、前記第2の導線に流れる第2の電流値を、夫々独立に検出する電流検出器と、
を備えるX線CT装置。
【請求項16】
一端がX線管の陽極に接続され、他端が電流検出器の第1の接続部に接続された第1の導線に流れる第1の電流値を検出し、
前記第1の導線とは異なる第2の導線であって、一端が前記X線管の前記陽極に接続され、他端が前記電流検出器の前記第1の接続部とは異なる第2の接続部に接続された、第2の導線に流れる第2の電流値を検出し、
前記第1の電流値と前記第2の電流値とに基づいて、前記X線管及び、前記X線管と前記X線管に印加する高圧電源の正極との間に設けられる機器の故障部位を特定する、
故障ユニット特定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、故障ユニット特定システム、X線CT装置、及び故障ユニット特定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT(Computed Tomography)装置は、被検体にX線を照射することでX線検出器が検出したX線に基づいて、被検体の断層画像を生成する医用画像診断装置である。X線CT装置では、被検体の周りをX線管とX線検出器の対を高速で回転させながら被検体を連続的に撮影して多数の投影データを収集し、この多数の投影データを再構成することによって断層画像を生成している。
【0003】
X線管からX線を発生するには、X線管の陰極のフィラメントに電流を流して陰極を加熱し、加熱によって放出された熱電子を、陰極と陽極との間に印加した高電圧(管電圧とも呼ばれる)により加速して、陽極のターゲットに衝突させる。熱電子がターゲットに衝突することによって、X線が発生する。
【0004】
X線の強度は、X線管の陰極と陽極の間に流れる管電流に概ね比例する。したがって、管電流を調整することによって、X線の強度を調整することができる。一方、管電流は、フィラメントに流す電流(即ち、フィラメント電流)を調整することにより、増減する。
【0005】
そこで、例えば、X線CT装置では、管電流を検出し、検出した管電流を用いたフィードバック制御により、フィラメント電流を調整することによって、X線の強度が所望の値になるようにしている。
【0006】
一方、管電流をモニタし、X線管や、その周辺機器の故障を検出することも可能である。そこで、従来のX線CT装置には、管電流が所定の閾値を下回った場合に、X線管や、その周辺機器に何らかの故障が発生したものと判定する機能を有しているものがある。
【0007】
故障が発生したと判定された場合には、例えば、サービスエンジニアが当該X線CT装置の設置場所に出向いて、故障個所を特定し、故障したユニットを交換するといった作業を行う。
【0008】
しかしながら、従来のX線CT装置では、故障が発生したことは検出できるものの、どのユニット(或いは、どの部位)が故障したのかを特定すること、即ち、故障部位の切り分けまでは行っていない。このため、例えば、サービスエンジニアは、故障と思われるユニットを順番に交換していくことによって、故障ユニットを特定する作業を強いられることになり、作業時間が必要以上にかかることがあった。また、作業時間等の制約によって、正常なユニットを故障ユニットと誤って交換してしまう可能性もあった。
【0009】
このように、従来のX線CT装置や従来の故障特定方法では、X線管とその周辺機器の故障の修理に要する時間や費用に無駄が発生することがあり、更なる改善が要望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000-215997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の1つは、X線管とその周辺機器における故障部位の切り分けを容易にすることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限らない。後述する各実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置付けることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一実施形態に係る故障ユニット特定システムは、X線管に接続して前記X線管の故障検出が可能に構成された故障ユニット特定システムであって、一端が前記X線管の陽極に接続された第1の導線と、前記第1の導線とは異なる第2の導線であって、一端が前記X線管の前記陽極に接続された第2の導線と、前記第1の導線の他端が接続される第1の接続部と、前記第1の接続部と異なる第2の接続部であって、前記第2の導線の他端が接続される第2の接続部を有し、前記第1の導線に流れる第1の電流値と、前記第2の導線に流れる第2の電流値を、夫々独立に検出する電流検出器と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係るX線CT装置の構成例を示す概略図。
図2】従来のX線CT装置におけるX線管と、その周辺機器の構成を簡略化して示した図。
図3】従来のX線管周りの回路における、故障検出に関する課題を説明する図。
図4】実施形態のX線CT装置のX線管周りの構成、及び、故障ユニット特定システムの構成例を示すブロック図。
図5】故障(リーク)の発生と故障発生時の管電流を模式的に示す図。
図6】X線CT装置又は故障ユニット特定システムの動作例を示すフローチャート。
図7】電流検出器の各抵抗器に流れる電流の波形を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、実施形態に係る故障ユニット特定システム、及び、X線CT装置について詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行うこととする。
【0015】
図1は、実施形態に係るX線CT装置1の構成例を示す概略図である。図1に示すように、X線CT装置1は、架台装置10と、寝台装置30と、コンソール装置40とを有する。図1において、説明の便宜上、架台装置10を左側の上下に、向きを変えて複数描画しているが、実際の構成としては、架台装置10は1つである。
【0016】
なお、図1では、天板33の長手方向をz軸方向、z軸方向に直交し、床面に対して平行である軸方向をx軸方向、z軸方向に直交し、床面に対し垂直である軸方向をy軸方向と定義している。
【0017】
寝台装置30は、基台31、寝台駆動機構32、天板33及び支持フレーム34を備える。寝台装置30は、スキャン対象の被検体Pを載置する。基台31は、支持フレーム34を鉛直方向(y軸方向)に移動可能に支持する筐体である。天板33は、支持フレーム34の上面に設けられ、被検体Pが載置される板である。
【0018】
寝台駆動機構32は、被検体Pが載置された天板33を移動するモータ又はアクチュエータである。寝台駆動機構32により、天板33は、天板33の長手方向(z軸方向)、及び鉛直方向(y軸方向)に移動可能である。
【0019】
架台装置10は、X線管11、X線検出器12、回転フレーム13、X線高電圧装置14、架台基台19、及びデータ収集回路(DAS:Data Acquisition System)18を備える。
X線管11は、例えば、X線高電圧装置14から高電圧の電力供給を受けて陰極から陽極(ターゲット)に向けて熱電子を放出する。
【0020】
X線検出器12は、例えば、X線管11の焦点を中心として1つの円弧に沿ってチャネル方向に複数のX線検出素子が配列されたX線検出素子列を備え、X線管11から照射されて被検体Pを通過したX線を検出し、電気信号に変換してDAS18に出力する。
【0021】
回転フレーム13は、その中心を回転軸として回転自在に支持されており、コンソール装置40等からの制御に基づいて回転駆動され、X線管11、X線検出器12を架台装置10及び寝台装置30に対して回転させる。
【0022】
X線高電圧装置14は、トランス等の電気回路を備え、X線管11に印加される高電圧を発生する機能を有する高電圧発生回路を備える。X線高電圧装置14の具体的な構成については、後述する。
【0023】
架台基台19は、架台装置10の開口部を鉛直方向(y軸方向)に支持する筐体である。架台基台19は、寝台装置30に対向するその開口部を鉛直方向(y軸方向)から前方に又は後方にチルト可能にする架台チルト機構を備えていてもよい。
【0024】
DAS18は、X線検出器12の各X線検出素子から出力される電気信号をアナログ信号からデジタルデータに変換して、X線検出器12の各チャネルから出力されるデータの集合である投影データを、X線検出器12の回転角に関連付けて生成する。DAS18は、生成した投影データをコンソール装置40に送出する。
コンソール装置40は、メモリ41、ディスプレイ42、入力インターフェース43、及び、処理回路44を備える。
【0025】
メモリ41は、処理回路44において用いられる各種処理プログラムや、プログラムの実行に必要な各種のデータ、処理回路44で生成される断層画像等の画像データ等を記憶する。メモリ41は、磁気的若しくは光学的記憶媒体、又は、半導体メモリ等の、プロセッサにより読み取り可能な記憶媒体を含んだ構成を有する。
ディスプレイ42は、液晶ディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネル、有機ELパネル等の表示デバイスである。
【0026】
入力インターフェース43は、ユーザによって操作が可能な入力デバイスと、入力デバイスからの信号を入力する入力回路とを含む。入力デバイスは、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、操作面に触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等によって実現される。入力インターフェース43は、USBメモリ、メモリカード、磁気ディスク、光ディスク等のポータブルメモリを装着し、これらのポータブルメモリに記録されたデータを入力する回路を含む。
【0027】
処理回路44は、専用、又は、汎用のプロセッサを有し、メモリ41に記憶されているプログラムを実行することにより、各種の機能を実現するプロセッサである。例えば、処理回路44は、DAS18から送られてきた投影データに対して、逆投影法等を用いた再構成処理を行って、被検体Pの2次元または3次元のCT画像を生成したり、生成したCT画像に対して各種の画像処理を行ったりする。
【0028】
ここで、プロセッサという用語は、例えば、専用、又は、汎用のCPU(Central Processing Unit)の他、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサを含む。
【0029】
また、処理回路44は、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、或いは、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等のハードウェア素子を備えて構成されてもよい。処理回路44が、例えばASICで構成される場合、メモリ41にプログラムを保存するかわりに、当該プログラムに相当する機能がASIC内に論理回路として直接組み込まれる。処理回路44は、プロセッサを用いたソフトウェア処理と、ASIC等のハードウェア素子を用いたハードウェア処理とを組み合わせて各種機能を実現することもできる。
【0030】
処理回路44がプロセッサによって構成される場合、単一のプロセッサによって各機能を実現してもよいし、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサが各機能を実現してもよい。プロセッサが複数設けられる場合、プログラムを記憶するメモリ41は、プロセッサごとに個別に設けられてもよいし、1つのメモリ41が全てのプロセッサの機能に対応するプログラムを一括して記憶してもよい。
【0031】
実施形態の故障ユニット特定システム200の説明に先立って、従来のX線CT装置における、X線管と、X線管の周辺機器の故障検出に関する構成とその課題について簡単に説明しておく。
【0032】
図2は、従来のX線CT装置におけるX線管と、その周辺機器の構成を簡略化して示した図である。図2に示したように、X線管11には、X線高電圧装置14から高電圧が印加される。X線高電圧装置14は、例えば、高電圧発生回路140、電流検出器141、及び、管電圧/管電流制御回路147を有している。
【0033】
高電圧発生回路140では、例えば、交流の高電圧を整流器で整流するなどして直流の高電圧を生成するが、図2では、高電圧発生回路140を簡略化して、正極と負極とからなるバッテリの記号で表記している。
【0034】
X線管11は、フィラメントを有する陰極(カソード)110と、陽極(アノード)111とが真空容器内に収容されて構成されている。X線管11の陰極110には、高圧ケーブル148を介して、高電圧発生回路140から負の高電圧が印加されている。一方、X線管11の陽極111は、リターンケーブル20を介して、X線高電圧装置14の電流検出器141に接続されている。
【0035】
より具体的には、X線管11は陽極コネクタ112を有しており、陽極コネクタ112は、リターンケーブル20の一端のX線管側コネクタ201に接続されている。また、リターンケーブル20の他端の高圧電源側コネクタ202は、電流検出器141の検出器コネクタ143に接続されている。
【0036】
一方、電流検出器141には、直列接続された電流検出用の抵抗器A142と抵抗器B146とが設けられている。抵抗器A142の一端は検出器コネクタ143に接続され、他端は抵抗器Bの一端に接続されると共に、グランドの接地されている。また、抵抗器Bの他端は高電圧発生回路140の正極に接続されている。
【0037】
上記のような接続により、X線管11の陰極110と陽極111との間に流れる管電流ImAは、高電圧発生回路140、X線管11、及び、電流検出器141によって形成されるループを流れることになる。そして、この管電流ImAの値は、電流検出器141の抵抗器A142、抵抗器B146の両端の電圧を測定することによって検出することができる。
【0038】
管電圧/管電流制御回路147は、例えば抵抗器A142で検出された管電流ImAが、所望の電流値となるように、陰極のフィラメント電流を調整する等のフィードバック制御を行っている。
【0039】
図3は、上記のように構成された従来のX線管周りの回路における、故障検出に関する課題を説明する図である。なお、本明細書で取り扱う「故障」とは、何らかの原因で管電流ImAがグランドにリークする事象(以下、管電流リーク、或いは、単にリークと呼ぶ)のことを指すものとする。
【0040】
図3に例示したように、リークが発生すると、管電流ImAの一部がリーク電流Iとして、グランドに流れる。この結果、抵抗器A142に流れる電流値は減少する。一方、リーク電流Iは、グランドを経由して抵抗器B146に流入し、高電圧発生回路140の正極に戻る。そこで、従来は、抵抗器A142に流れる電流が所定値以下となった場合に、故障が発生した(即ち、リークが発生した)と判断するようにしていた。
【0041】
故障が発生したと判定された場合には、例えば、サービスエンジニアが当該X線CT装置の設置場所に出向いて、故障個所を特定し、故障したユニットを交換するといった作業を行うことになる。
【0042】
しかしながら、従来のX線CT装置では、故障が発生したことは検出できるものの、X線管11とその周辺機器のうち、どの機器でリークが発生したかを特定すること、即ち、故障部位の切り分けまではできていなかった。このため、例えば、サービスエンジニアは、故障と思われる機器を順番に交換していくことによって、故障機器を特定する作業を強いられることになり、作業時間が必要以上にかかることがあった。また、作業時間等の制約によって、正常な機器、例えば、正常なX線管11を誤って交換してしまう可能性もあった。
【0043】
実施形態のX線CT装置1、または、故障ユニット特定システム200は、このような不都合を解消することを狙ったものである。以下、実施形態のX線CT装置1、または、故障ユニット特定システム200の構成及び動作について説明する。
【0044】
図4は、実施形態のX線CT装置1のX線管周りの構成、及び、故障ユニット特定システム200の構成例を示すブロック図である。実施形態のX線CT装置1は、前述した従来のX線管周りの構成と同様に、X線管11と、X線管11に高電圧を印加するX線高電圧装置14を備えている。
【0045】
また、X線高電圧装置14は、例えば、高電圧発生回路140と管電圧/管電流制御回路147を有している。この他、X線高電圧装置14は、電流検出器141、第1リターンケーブル20、第2リターンケーブル21、表示データ生成回路150、及び、外部出力インターフェース160を備えている。
【0046】
なお、上記の構成のうち、電流検出器141、第1リターンケーブル20、第2リターンケーブル21、表示データ生成回路150、及び、外部出力インターフェース160を、X線CT装置1の構成ではなく、故障ユニット特定システム200の構成とすることもできる。この場合、故障ユニット特定システム200は、表示部170、及び故障検出端末180を、さらに備えてもよい。
【0047】
以下、上記の各構成について説明するが、X線管11及び高電圧発生回路140に関しては、実質的に図2で説明した従来のものと同じであるため、説明を省略する。
【0048】
実施形態のX線CT装置1が、図2に示した従来の回路構成と大きく異なる点は、X線管11の陽極111と、電流検出器141との間を接続するリターンケーブル20が、第1リターンケーブル20と、第2リターンケーブル21の2本の導線で構成されている点と、電流検出器141の中の抵抗器A142が、第1抵抗器A142と第2抵抗器A144の2つの抵抗器で構成されている点にある。
【0049】
図4に示されるように、第1リターンケーブル20と第2リターンケーブル21のX線管側の夫々の一端は、例えば、二股コネクタ230と、この二股コネクタ230に篏合する陽極コネクタ112を介して、X線管11の陽極111に接続されている。
【0050】
一方、第1リターンケーブル20の高圧電源側の他端は、高圧電源側第1コネクタ202と、この高圧電源側第1コネクタ212に篏合する検出器第1コネクタ143を介して、第1抵抗器A142に接続されている。同様に、第2リターンケーブル21の高圧電源側の他端は、高圧電源側第2コネクタ212と、この高圧電源側第1コネクタ212に篏合する検出器第2コネクタ145を介して、第2抵抗器A144に接続されている。
【0051】
また、第1リターンケーブル20及び第2リターンケーブル21は、夫々、外被シールド203及び外被シールド213を有しており、これらの外被シールド203、213は、グランドに接地されている。
【0052】
電流検出器141内の第1抵抗器A142及び第2抵抗器A144は、第1リターンケーブル20及び第2リターンケーブル21に流れる電流を、夫々独立に検出するために設けられている。
【0053】
表示データ生成回路150は、第1抵抗器A142で検出された第1の電流値に関する第1の電流情報と、第2抵抗器A144で検出された第2の電流値に関する第2の電流情報、さらには、抵抗器B146で検出された第3の電流値に関する第3の電流情報を、例えば、夫々、電流波形として表示可能なデータ(図7(a)-図7(c)参照)に変換する。
【0054】
外部出力インターフェース160は、表示データ生成回路150で変換された、上記の電流波形として表示可能なデータを外部に出力する。この他、外部出力インターフェース160は、第1、第2、第3の電流情報自体を、外部に出力してもよい。
表示部170は、外部出力インターフェース160から出力された、第1、第2、第3の電流情報、或いは、これらから変換された電流波形を表示する。
【0055】
故障検出端末180は、例えば、パーソナルコンピューター、スマートフォン、タブレット端末等の情報処理端末装置である。故障検出端末180は、例えば、外部出力インターフェース160との間で、有線または無線による通信が可能に構成されており、外部出力インターフェース160から出力されてくる、上述の第1、第2、第3の電流情報、或いは、これらから変換された電流波形に関するデータを受信する。
【0056】
故障検出端末180は処理回路181を有している。処理回路181は、例えば、専用、又は、汎用のプロセッサとメモリとを有し、メモリに記憶されているプログラムを実行することにより、各種の機能を実現する。例えば、処理回路181のプロセッサは、所定のプログラムを実行することにより、故障判定機能F01、及び故障部位特定機能F02を実現する。なお、表示部170は、故障検出端末180が備えるディスプレイであってもよい。
【0057】
表示部170、及び故障検出端末180は、故障ユニット特定システム200の構成として説明したが、これらの構成が実現する各機能を、X線CT装置1のコンソール装置40が具備するディスプレイ42、及び処理回路44の機能として実現してもよい。
【0058】
上記のように構成されたX線CT装置1、或いは、故障ユニット特定システム200の動作について、図5及び図7を参照しつつ、図6に示したフローチャートにしたがって説明する。
【0059】
まず、図6のステップST10で、一端が二股コネクタ230と陽極コネクタ112を介してX線管の陽極111に接続され、他端が高圧電源側第1コネクタ202を介して電流検出器141の検出器第1コネクタ143(第1の接続部)に接続された第1リターンケーブル20(第1の導線)に流れる第1の電流値を検出する。第1の電流値は、電流検出器141の第1抵抗器A142の両端の電圧に基づいて検出することができる。
【0060】
次に、ステップST20で、一端が二股コネクタ230と陽極コネクタ112を介してX線管の陽極111に接続され、他端が高圧電源側第2コネクタ212を介して電流検出器141の検出器第2コネクタ145(第2の接続部)に接続された第2リターンケーブル21(第2の導線)に流れる第2の電流値を検出する。第2の電流値は、電流検出器141の第2抵抗器A144の両端の電圧に基づいて検出することができる。
【0061】
次に、ステップST30で、第1、第2の電流値に関する電流情報を電流波形として表示可能なデータに変換して外部に(例えば、表示部170に)出力する。ステップST30の処理は、表示データ生成回路150、及び外部出力インターフェース160が行う。なお、ステップST30の処理において、さらに、抵抗器B146に流れる第3の電流値に関する電流情報を電流波形として表示可能なデータに変換して外部に出力してもよい。
【0062】
図7(a)-図7(c)は、このようにして出力された各データから生成された、第1抵抗器A142を流れる電流の波形、第2抵抗器A144を流れる電流の波形、及び、抵抗器B146を流れる電流の波形、を夫々模式的に示した図である。
【0063】
なお、ステップST30において、第1、第2、第3の電流値に関する電流情報を電流波形として表示可能なデータに変換して外部に出力することに替えて、或いは、これに加えて、第1、第2、第3の電流値に関する電流情報自体を外部に(例えば、故障検出端末180に)出力するようにしてもよい。
【0064】
次にステップST40で、第1、第2の電流値の合計は閾値以下か否かを判定する。第1、第2の電流値の合計は閾値以下であると判定された場合、ステップST50に進む。
【0065】
ステップST50では、X線管11、または、X線管11とX線管11に印加する高電圧発生回路140(高圧電源)の正極との間の機器のいずれかに故障(即ち、リーク)が発生したと推定する。ここで、X線管11とX線管11に印加する高電圧発生回路140(高圧電源)の正極との間の機器とは、例えば、リターンケーブルアセンブリ、及び、電流検出器141等の機器である。
【0066】
ここで、リターンケーブルアセンブリは、X線管側の二股コネクタ230、電流検出器141に接続される高圧電源側第1コネクタ202と高圧電源側第2コネクタ212、及び、第1リターンケーブル20と第2リターンケーブル21とで構成されるケーブルアセンブリである。また、電流検出器141は、第1抵抗器A142、第2抵抗器A144、抵抗器B146の他、検出器第1コネクタ143と検出器第2コネクタ145を含むユニットである。
【0067】
図5は、故障(リーク)の発生と故障発生時の管電流を模式的に示す図である。図5の示したように、陽極コネクタ112を含むX線管11、リターンケーブルアセンブリのどこかの部位、或いは、電流検出器141の検出器第1コネクタ143または検出器第2コネクタ145のいずれかの部位でリークが発生した場合、第1抵抗器A142及び第2抵抗器A144の少なくとも一方に流れる電流の値は減少する。この事象を利用して、第1の電流値と第2の電流値の合計が所定の閾値以下であると判定された場合、X線管11、または、X線管11とX線管11に印加する高電圧発生回路140(高圧電源)の正極との間の機器のいずれかに故障(即ち、リーク)が発生したと推定することができる。例えば、X線管11、リターンケーブルアセンブリ、及び、電流検出器141のいずれかの機器に故障が発生したと推定することができる。
【0068】
ステップST40で、第1の電流値と第2の電流値の合計が閾値以下ではないと判定されると、故障が無いと推定して、処理を終了する。
【0069】
なお、実施形態のX線CT装置1では、第1の電流値と第2の電流値の合計に基づいて、管電流ImAが所望の値になるようにフィードバック制御を行っている。このため、第1の電流値と第2の電流値の合計がリークの発生によって減少すると、フィードバック制御によって、管電流ImAは、リークが発生していない時の値よりも増加する。そして、増加分も含めて、管電流ImAの全体は、抵抗器B146を流れる第3の電流値として検出される。したがって、第3の電流値が所定の閾値以上になったとき、X線管11、リターンケーブルアセンブリ、及び、電流検出器141のいずれかの機器に故障が発生したと推定することもできる。
【0070】
ステップST40及びステップST50の処理は、例えば、故障検出端末180の処理回路181の故障判定機能F01が行う。なお、故障判定機能F01と同等の判定を、表示部170に表示された各電流波形と閾値とに基づいて、サービスエンジニア等のユーザが行うこともできる。
【0071】
次に、ステップST60で、第1の電流値と第2の電流値は略同一か否かを判定する。そして、第1の電流値と第2の電流値が略同一と判定された場合には、ステップST70にて、陽極コネクタ112を含むX線管11に故障(リーク)が発生したと推定する。何故なら、X線管11に故障(リーク)が発生した場合、X線管11と電流検出器141との間の2経路のうちの共通部分にリークが発生したことになるため、第1の電流値と第2の電流値とは、同程度に減少すると考えられるからである。
【0072】
この場合、故障部位がX線管11に特定されたことになり、ユーザ(例えば、サービスエンジニア)は、故障したX線管11を新しいX線管11に交換することにより、故障を修復することができる。
【0073】
一方、第1の電流値と第2の電流値が略同一ではないと判定された場合、即ち、第1の電流値と第2の電流値との差が所定値よりも大きいと判定された場合は、ステップST80にて、電流検出器141、第1リターンケーブル20(第1の導線)、及び、第2リターンケーブル21(第2の導線)の少なくとも1つに故障が発生したと推定する。
【0074】
何故なら、第1の電流値と第2の電流値との差が所定値よりも大きくなりうる場合としては、(a)高圧電源側第1コネクタ202を含む第1リターンケーブル20のいずれかの部分、(b)高圧電源側第1コネクタ202と篏合する電流検出器141の検出器第1コネクタ143、(c)高圧電源側第2コネクタ212を含む第2リターンケーブル21のいずれかの部分、(d)高圧電源側第2コネクタ212と篏合する電流検出器141の検出器第2コネクタ145、のいずれか1つで故障(リーク)が発生している可能性が高いからである。
【0075】
この場合、故障部位の対象からX線管11は取り除かれ、故障部位が電流検出器141、第1リターンケーブル20(第1の導線)、及び、第2リターンケーブル21(第2の導線)の少なくとも1つに特定されたことになる。したがって、ユーザ(例えば、サービスエンジニア)は、電流検出器141とリターンケーブルアセンブリとを、夫々、新しいものと交換することにより、故障を修復することができる。
【0076】
なお、リターンケーブルアセンブリは、目視等の簡易な方法によって比較的容易に故障の有無を確認できる場合がある。したがって、目視等の簡易な方法によってリターンケーブルアセンブリに故障がないと判断された場合には、電流検出器141だけを新しいものと交換すればよい。
【0077】
ステップST60、ステップST70、及び、ステップST80の処理は、例えば、故障検出端末180の処理回路181の故障部位特定機能F02が行う。なお、故障部位特定機能F02と同等の判定を、表示部170に表示された各電流波形と閾値とに基づいて、ユーザが行うこともできる。
【0078】
なお、実施形態の記載における第1リターンケーブル及び第2リターンケーブルは、夫々、特許請求の範囲の記載における第1の導線及び第2の導線の一例である。また、実施形態の記載における検出器第1コネクタ及び検出器第2コネクタは、夫々、特許請求の範囲の記載における第1の接続部及び第2の接続部の一例である。また、実施形態の記載における故障判定機能及び故障部位特定機能は、夫々、特許請求の範囲の記載における故障判定部及び故障部位特定部の一例である。
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、X線管とその周辺機器における故障部位の切り分けを容易にすることができる。
【0079】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0080】
1 X線CT装置
11 X線管
14 X線高電圧装置
20 第1リターンケーブル
21 第2リターンケーブル
110 陰極
111 陽極
140 高電圧発生回路
141 電流検出器
142 第1抵抗器A
144 第2抵抗器A
146 抵抗器B
150 表示データ生成回路
160 外部出力インターフェース
170 表示部
180 故障検出端末
181 処理回路
F01 故障版的機能
F02 故障部位特定機能
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7