(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154555
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】グルコシルセラミド含有物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C11B 11/00 20060101AFI20241024BHJP
C07H 15/10 20060101ALI20241024BHJP
C07H 1/08 20060101ALI20241024BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20241024BHJP
A23L 33/115 20160101ALI20241024BHJP
【FI】
C11B11/00
C07H15/10
C07H1/08
A23L33/105
A23L33/115
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068424
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】596170550
【氏名又は名称】かどや製油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180275
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 倫太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161861
【弁理士】
【氏名又は名称】若林 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100194836
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 優一
(72)【発明者】
【氏名】山上 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】小野 恒平
(72)【発明者】
【氏名】秡川 紫乃
【テーマコード(参考)】
4B018
4C057
4H059
【Fターム(参考)】
4B018MD10
4B018MD27
4B018MD56
4B018ME07
4B018ME08
4B018ME14
4B018MF01
4C057AA06
4C057AA09
4C057BB02
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4C057JJ12
4H059BA01
4H059BA12
4H059BA26
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4H059BA33
4H059BA46
4H059BA47
4H059BB03
4H059BB15
4H059BB22
4H059BB45
4H059BC14
4H059CA04
4H059CA05
4H059CA13
4H059EA24
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ゴマ油の製造における脱色処理で得られる、色素成分が吸着した白土油滓を用いて、高濃度のグルコシルセラミドを含有する抽出物を効率的に製造する製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のグルコシルセラミド含有物の製造方法は、ゴマ油由来の白土油滓と無極性溶媒とを混合し、その後濾過した濾液から無極性用溶媒を除去してグルコシルセラミドを含む含有物を抽出する無極性溶媒抽出工程を有することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴマ油由来の白土油滓と無極性溶媒とを混合し、その後濾過した濾液から前記無極性用溶媒を除去してグルコシルセラミドを含む含有物を抽出する無極性溶媒抽出工程を有することを特徴とするグルコシルセラミド含有物の製造方法。
【請求項2】
前記無極性溶媒抽出工程の残渣とアルコールとを混合し、その後濾過した濾液から前記アルコールを除去してグルコシルセラミドを含む含有物を抽出するアルコール抽出工程を有することを特徴とする請求項1に記載のグルコシルセラミド含有物の製造方法。
【請求項3】
ゴマ油由来の白土油滓とアルコールとを混合し、その後濾過した濾液から前記アルコールを除去してグルコシルセラミドを含む含有物を抽出するアルコール抽出工程を有することを特徴とするグルコシルセラミド含有物の製造方法。
【請求項4】
前記白土油滓が、焙煎ゴマ油由来の白土油滓であることを特徴とする請求項1又は3に記載のグルコシルセラミド含有物の製造方法。
【請求項5】
前記白土油滓が、精製ゴマ油由来の白土油滓であることを特徴とする請求項1又は3に記載のグルコシルセラミド含有物の製造方法。
【請求項6】
前記無極性溶媒が、ヘキサンであることを特徴とする請求項1に記載のグルコシルセラミド含有物の製造方法。
【請求項7】
前記アルコールが、エタノールであることを特徴とする請求項2又は3に記載のグルコシルセラミド含有物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルコシルセラミド含有物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セラミド(Ceramide)とは、スフィンゴ脂質の一種であり、スフィンゴシンと脂肪酸がアミド結合したものである。また、グルコシルセラミド(GC:Glucosyl-Ceramide)は、セラミドの1位のヒドロキシ基にグルコースがβ-グリコシド結合した構造を有する。グルコシルセラミドは、例えば皮膚保湿効果、経口摂取による皮膚保湿効果、抗アトピー効果、抗腫瘍効果、メラニン生成抑制効果等がある。そのため、グルコシルセラミドは、健康食品、化粧品、医薬品などへの利用が期待されている。
【0003】
特許文献1には、植物および菌類から有機溶媒抽出を行なった抽出液に、水を加えた後、遠心分離をして沈殿物を回収してグルコシルセラミドを生成する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ゴマ油の製造過程で、ゴマ油の脱色処理で利用された白土油滓を用いて、高濃度のグルコシルセラミドを含有する抽出物を効率的に製造する製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するために、第1の本発明のグルコシルセラミド含有物の製造方法は、ゴマ油由来の白土油滓と無極性溶媒とを混合し、その後濾過した濾液から無極性用溶媒を除去してグルコシルセラミドを含む含有物を抽出する無極性溶媒抽出工程を有する。
【0007】
第2の本発明のグルコシルセラミド含有物の製造方法は、ゴマ油由来の白土油滓とアルコールとを混合し、その後濾過した濾液からアルコールを除去してグルコシルセラミドを含む含有物を抽出するアルコール抽出工程を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ゴマ油由来の白土油滓を用いて、高濃度のグルコシルセラミドを含有する抽出物を効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態におけるグルコシルセラミドを含む抽出物の製造方法を説明するフローチャートである。
【
図2】実施形態に係るゴマ油の製造工程における得られる白土油滓を説明する説明図である。
【
図3】第1の実施形態において、米由来グルコシルセラミドを用いたHPLC-CAD結果である。
【
図4】
図4(A)は、第1の実施形態による焙煎ゴマ油由来の白土油滓を用いた場合のヘキサン抽出物のHPLC-CAD結果であり、
図4(B)は、焙煎ゴマ油由来の白土油滓を用いた場合のエタノール抽出物のHPLC-CAD結果である。
【
図5】
図5(A)は、第1の実施形態による精製ゴマ油由来の白土油滓を用いた場合のヘキサン抽出物のHPLC-CAD結果であり、
図4(B)は、精製ゴマ油由来の白土油滓を用いた場合のエタノール抽出物のHPLC-CAD結果である。
【
図6】第2の実施形態におけるグルコシルセラミドを含む抽出物の製造方法を説明するフローチャートである。
【
図7】第2の実施形態において米由来グルコシルセラミド群のHPLC-CAD結果を示す図である。
【
図8】第2の実施形態による焙煎ゴマ油由来の白土油滓を用いた場合のエタノール抽出物のHPLC-CAD結果である。
【
図9】第2の実施形態による精製ゴマ油由来の白土油滓を用いた場合のエタノール抽出物のHPLC-CAD結果である。
【
図10】実施形態における前処理のフローチャートである。
【
図11】実施形態において、前処理前のサンプルのHPLC-CAD結果である。
【
図12】実施形態において、前処理後のサンプルのHPLC-CAD結果である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(A)第1の実施形態
以下に、本発明に係るグルコシルセラミド含有物の製造方法の第1の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0011】
(A-1)第1の実施形態のグルコシルセラミドを含む抽出物の製造方法
図1は、第1の実施形態のグルコシルセラミドを含む抽出物の製造方法を説明するフローチャートである。
【0012】
[白土油滓の準備]
まず、ゴマ油の製造過程で得られる白土油滓を原料として準備する(ステップS101)。
【0013】
図2は、ゴマ油の製造過程における白土油滓を説明する説明図である。
図2を参照して、ゴマ油の一般的な製造方法を簡単に説明すると共に、白土油滓を説明する。
【0014】
ゴマ種子を蒸煮し、蒸煮したゴマ種子を圧搾して搾油する。なお、ゴマ油には、大別して、焙煎ゴマ油と精製ゴマ油とがある。焙煎ゴマ油は、ゴマ種子を焙煎した後に蒸煮・圧搾して搾油したものをいい、精製ゴマ油は、焙煎せず、ゴマ種子を蒸煮・圧搾して搾油したものを精製処理したものいう。
【0015】
圧搾により搾油した油に脱色剤を投入して脱色処理を行ない、油に含まれる色素を取り除く。その際、脱色剤に色素成分が吸着して得られた脱色後の脱色剤を「白土油滓」とする。
【0016】
脱色剤は、例えば、活性炭、酸性白土などとすることができる。例えば、焙煎ゴマ油又は精製ゴマ油に、脱色剤として、例えば0.0~3.0wt程度の活性炭、例えば0.1~3.0wt程度の酸性白土を添加し、所定温度(例えば50~150℃程度)で所定時間(例えば10分~120分程度)静置して脱色する。原油に添加する脱色剤(活性炭、酸性白土など)の添加量は、焙煎ゴマ油の場合と、精製ゴマ油の場合とで変えてもよい。また、
図2の製造工程に限らず、例えば、焙煎ゴマ油又は精製ゴマ油は、脱色工程前にヘキサン抽出したものとしてもよい。
【0017】
この実施形態では、精製ゴマ油の製造過程で得られた白土油滓を「精製ゴマ油由来の白土油滓」と呼び、焙煎ゴマ油の製造過程で得られた白土油滓を「焙煎ゴマ油由来の白土油滓」と呼ぶ。この実施形態では、これらの白土油滓を原料として用いる。
【0018】
なお、脱色処理の際に得られた白土油滓であれば、上述した精製ゴマ油由来の白土油滓又は焙煎ゴマ油由来の白土油滓に限らない。
【0019】
[ヘキサン抽出工程]
次に、白土油滓にヘキサンを加えて攪拌して脱脂する(ステップS102)。そして、白土油滓にヘキサンを加えた溶液を濾過して(ステップS103)、これにより得た瀘液からヘキサンを除去するために、エバポレーターを用いて、瀘液からヘキサンを蒸発させる(ステップS104)。この脱溶剤処理で得たものを、ヘキサン抽出物とする(ステップS105)。ヘキサン抽出工程では、無極性溶媒であるヘキサンを用いて白土油滓を脱脂して、瀘液からヘキサンを除去することで得た抽出物を、ヘキサン抽出物と呼ぶ。つまり、ヘキサン抽出物は、無極性溶媒(ヘキサン)に溶け込んだ、例えばリグナン類、グルコシルセラミドなどの成分と言える。
【0020】
なお、この脱脂工程では、無極性のヘキサンを溶媒として用いるが、ヘキサンに限らず、無極性溶媒、若しくは低い極性の溶媒を用いてもよい。例えば、無極性溶媒であれば、ジエチルエーテル、酢酸エチル、シクロヘキサン、イソオクタン等を用いるようにしてもよい。また、極性溶媒であれば、水、酢酸、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メタノール、エタノール、2-プロパノール、アセトニトリル等を用いるようにしてもよい。
【0021】
また、ヘキサン抽出物として含まれるリグナンの種類は、例えば、セサミン、セサミノール、エピセサミン、エピセサミノール、セサモリン、2-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-6-(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)-3,7-ジオキサビシクロ[3,3,0]オクタン、2,6-ビス-(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)-3,7-ジオキサビシクロ[3,3,0]オクタン、又は2-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-6-(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェノキシ)-3,7-ジオキサビシクロ[3,3,0]オクタン、セサモール、3,4-メチレンジオキシフェノール、5-ヒドロキシ-1,2-メチレンジオキシベンゼン、1,3-ベンゾジオキソール-5-オール、3,4-(メチレンビスオキシ)フェノール、5-ヒドロキシ-1,3-ベンゾジオキソール等がある。
【0022】
[エタノール抽出工程]
ステップS103で濾過して得た残渣に、エタノールを加えて攪拌する(ステップS106)。
【0023】
そして、残渣にエタノールを加えた溶液を濾過して(ステップS107)、残渣を抽出する(ステップS110)と共に瀘液を得る。ステップS107の濾過で得た瀘液からエタノールを除去するために、エバポレーターを用いて、瀘液からエタノールを蒸発させる(ステップS108)。この脱溶剤処理で得たものを、エタノール抽出物とする(ステップS109)。エタノール抽出工程では、アルコールであるエタノールを用いて、アルコールに溶け込んだリグナン類、グルコシルセラミド等を含む抽出物を抽出する工程である。言い換えると、エタノール抽出物は、アルコールに溶け込んだ、例えばリグナン類、グルコシルセラミドなどの成分と言える。
【0024】
(A-2)焙煎ゴマ油由来の白土油滓を用いたときの結果
次に、
図1に例示する製造方法に従って、焙煎ゴマ油由来の白土油滓を用いたヘキサン抽出物、エタノール抽出物を得て、ヘキサン抽出物、エタノール抽出物のそれぞれに、グルコシルセラミドが含まれていることを分析した。
【0025】
以下において、白土油滓や残渣等の溶質に「1倍量の溶媒を加える」とは、1gの溶質に10mlの溶媒を加えることを意味する。例えば、白土油滓に1倍量のヘキサンを加えるとは、1gの白土油滓に10mlのヘキサンを加えることをいう。又例えば、白土油滓に5倍量のヘキサンを加えるとは、1gの白土油滓に、50mlのヘキサンを加えることをいう。このように、1gの溶質に10mlの溶媒を加えることを1倍量とし、X倍量の溶媒を加えることは、1gの溶質に、(10×X)mlの溶媒を加えることをいう。
【0026】
[ヘキサン抽出物の抽出工程]
図1に例示する製造方法に従って、焙煎ゴマ油由来の白土油滓を用いてヘキサン抽出物を得る。
【0027】
この例では、例えば、焙煎ゴマ油由来の白土油滓60gを準備し、5倍量のヘキサンを加えた。すなわち、60gの焙煎ゴマ油由来の白土油滓に、300mlのヘキサンを加え、温度25℃で30分攪拌した。なお、ここでは、歩留等を考慮して5倍量のヘキサンを加える場合を例示したが、ヘキサン量はこれに限らない。また、焙煎ゴマ油由来の白土油滓の質量、ヘキサン量、攪拌時の温度、攪拌時間は一例であり、上述したものに限らない。
【0028】
その後、ヘキサン溶液を濾過して、瀘液に含まれるヘキサンをエバポレーター等で除去してヘキサン抽出物を得た。ヘキサン除去後、7.3gのヘキサン抽出物を得た。
【0029】
[エタノール抽出物の抽出工程]
次に、上述のヘキサン溶液を濾過したときの残渣に対して、10倍量相当のエタノールを加えて、温度25℃で30分攪拌した。残渣の質量にもよるが、ここでは、10倍量のエタノールを残渣に加える場合を例示する。なお、ここでも、歩留等を考慮して、10倍量相当のエタノールを残渣に加える場合を例示したが、これに限らない。また、攪拌時の温度、攪拌時間は一例であり、これらに限らない。
【0030】
その後、エタノール溶液を濾過して、瀘液に含まれるエタノールをエバポレーターなどにより除去してエタノール抽出物を得た。この例では、2.7gのエタノール抽出物を得た。
【0031】
[分析処理]
<前処理>
ヘキサン抽出物とエタノール抽出物に含まれているグルコシルセラミドの定量分析の前に、ゴマ油由来のグルコシルセラミドの分子量に近い米由来グルコシルセラミドの標準品(Glucosylceramide,from Rice Wako 商品コード380-09631)をサンプルとした。
【0032】
そして、米由来グルコシルセラミドの極性を分析するため、薄膜クロマトグラフィーで米由来グルコシルセラミド群のRf値を導出した。
【0033】
図10は、実施形態における前処理のフローチャートである。
【0034】
2mlチューブに、米由来グルコシルセラミドを数mg~数重mgと(ステップS301)、イソプロピルアルコール(IPA)を200μlとを加えて(ステップS302)、20分間ソニケーションする(ステップS303)。
【0035】
そして、[ジクロロメタン:メタノール:水=65:16:2]を展開溶液として、薄膜クロマトグラフィーのガラスプレートに200μlを添着して(ステップS304)、薄層クロマトグラフィーで定性分析をする(ステップS305)。展開終了後、乾燥処理を行ない(ステップS306)、米由来グルコシルセラミドのRf値は0.52であるため、Rf値が0.46~0.71の成分を分取した(ステップS307)。
【0036】
50mlチューブに、分取した成分と、イソプロピルアルコール25mlとを加えて(ステップS308)、20分間ソニケーションする(ステップS309)。その後、溶液を濾過して(ステップS310)、50mlのナス型フラスコに瀘液を入れて、エバポレーターで乾固し(ステップS311)、イソプロピルアルコール1mlを加えて(ステップS312)、高速液体クロマトグラムシステム(HPLC)で分析した(ステップS313)。
【0037】
高速液体クロマトグラムシステム(HPLC)は、以下のように、荷電化粒子検出器(CAD:Charged Aerosol Detector)を用いたHPLC-CADで分析した。
【0038】
(分析条件)
HPLC-CAD(日立 高速液体クロマトグラフシステム クロムマスター+Thermo 荷電化粒子検出器corona veo)
カラム:Inertsil ODS-3 C18(5μm 4.6mm×250mm)
移動相:メタノール
流速:1.0ml/min
温度:25℃
注入量:20μl
図11は、前処理前のサンプルのHPLC-CAD結果であり、
図12は、前処理後のサンプルのHPLC-CAD結果である。
図11及び
図12の結果より、溶出時間(RT)14.5付近に現れるピークが、グルコシルセラミド群のうちの一成分が含まれているものとする。
【0039】
図11において、前処理前のサンプル(米由来グルコシルセラミド)のHPLC-CAD結果は、溶出時間(RT)14.5のピーク面積(AREA)が「7808387.0」であり、当該ピークの面積比(面積%)が「24.764」であった。
【0040】
他方、
図12に示すように、前処理後のサンプル(米由来グルコシルセラミド)のHPLC-CAD結果は、溶出時間(RT)14.7のピーク面積(AREA)が「4237410.5」であり、当該ピークの面積比(面積%)が「11.889」であった。
【0041】
したがって、前処理前のサンプルのHPLC-CAD結果のピーク面積が「7808387.0」であり、前処理後のサンプルのHPLC-CAD結果のピーク面積が「4237410.5」であるので、前処理によるサンプルの回収率は「54.2%」となる。つまり、米由来グルコシルセラミドから算出したHPLC-CAD分析濃度に0.542を割って、濃度を算出する。
【0042】
焙煎ゴマ油由来の白土油滓を用いたヘキサン抽出物とエタノール抽出物のそれぞれを添着して、Rf値が0.46~0.71の成分を分取した。ヘキサン抽出物中の分取物は9.7wt%、エタノール抽出物中の分取物は10.2wtであった。
【0043】
<定量分析>
焙煎ゴマ油由来の白土油滓を用いたヘキサン抽出物とエタノール抽出物のそれぞれを、荷電化粒子検出器(CAD)を用いた高速液体クロマトグラムシステム(HPLC-CAD)で、上述と同じ分析条件で分析した。
【0044】
図3は、第1の実施形態で、米由来グルコシルセラミド群のHPLC-CAD結果を示す図である。
【0045】
図4(A)は、焙煎ゴマ油由来の白土油滓を用いた場合のヘキサン抽出物のHPLC-CAD結果であり、
図4(B)は、焙煎ゴマ油由来の白土油滓を用いた場合のエタノール抽出物のHPLC-CAD結果である。
【0046】
ここでは、
図3の米由来グルコシルセラミド群のピークのうち、溶出時間(RT)が14.2程度付近に現れるピークをターゲットとする。
【0047】
図3より、米由来グルコシルセラミドを用いた場合、溶出時間(RT)14.2程度付近のピークの面積(AREA)は「125483594.5」であり、全体の面積に対する当該ピークの面積比(面積%)は「17.716」であり、面積比からサンプルに含まれるグルコシルセラミド含有量は「0.354mg/ml」とする。
【0048】
したがって、溶出時間14.2付近に現れるピークについて、1mg/mlの米由来グルコシルセラミドの場合、その面積(AREA)は「354473430.8」として、ヘキサン抽出物及びエタノール抽出物のそれぞれに含まれるグルコシルセラミド含有量を導出する。
【0049】
図4(A)に示すように、焙煎ゴマ油由来の白土油滓を用いた場合のヘキサン抽出物のサンプル量を30.3mg/mlとしてHPLC-CADで分析をした。
【0050】
図4(A)のHPLC-CAD結果より、溶出時間(RT)14.1にピークが現れた。このことから、焙煎ゴマ油由来の白土油滓を用いた場合のヘキサン抽出物には、グルコシルセラミド群のうち一成分が含まれていることが分かる。
【0051】
また、溶出時間(RT)のピークの面積(AREA)は「9319537.3」であり、当該ピークの面積比(面積%)は「15.695」であった。上述したように、1mg/mlの米由来グルコシルセラミドの場合、その面積(AREA)は「354473430.8」である。また、ヘキサン抽出物のサンプル量は30.3mg/mlである。したがって、ヘキサン抽出物のサンプルに含まれるグルコシルセラミドの質量%(wt%)は、「0.087wt%」であり、
図11及び
図12の結果より回収率54.2%で換算すると、焙煎ゴマ油由来の白土油滓を用いた場合、1gのヘキサン抽出物には、1.60mg相当のグルコシルセラミドが含まれていることが分かる。
【0052】
図4(B)に示すように、焙煎ゴマ油由来の白土油滓を用いた場合のエタノール抽出物のサンプル量を26.575mg/mlとしてHPLC-CADで分析をした。
【0053】
図4(B)のHPLC-CAD結果より、溶出時間(RT)14.1にピークが現れた。このことから、焙煎ゴマ油由来の白土油滓を用いた場合のエタノール抽出物には、グルコシルセラミド群のうち一成分が含まれていることが分かる。
【0054】
また、溶出時間(RT)のピークの面積(AREA)は「8103150.2」であり、当該ピークの面積比(面積%)は「16.658」であった。上述したように、1mg/mlの米由来グルコシルセラミドの場合、その面積(AREA)は「354473430.8」であり、エタノール抽出物のサンプル量は26.575mg/mlである。したがって、エタノール抽出物のサンプルに含まれるグルコシルセラミドの質量%(wt%)は、「0.086wt%」であり、
図11及び
図12の結果より回収率54.2%で換算すると、焙煎ゴマ油由来の白土油滓を用いた場合、1gのエタノール抽出物には、1.58mg相当のグルコシルセラミドが含まれていることが分かる。
【0055】
(A-3)精製ゴマ油由来の白土油滓を用いたときの結果
次に、
図1に例示する製造方法に従って、精製ゴマ油由来の白土油滓を用いたヘキサン抽出物及びエタノール抽出物を得て、ヘキサン抽出物及びエタノール抽出物のそれぞれに、グルコシルセラミドが含まれていることを分析した。
【0056】
なお、分析方法及び分析条件は、焙煎ゴマ油由来の白土油滓を用いた場合と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0057】
[ヘキサン抽出物の抽出工程]
精製ゴマ油由来の白土油滓60gを準備し、5倍量のヘキサンを加えた。すなわち、60gの精製ゴマ油由来の白土油滓に、300mlのヘキサンを加え、温度25℃で30分攪拌した。
【0058】
その後、ヘキサン溶液を濾過して、瀘液に含まれるヘキサンをエバポレーター等で除去してヘキサン抽出物を得た。ヘキサン除去後、12.1gのヘキサン抽出物を得た。
【0059】
[エタノール抽出物の抽出工程]
次に、上述のヘキサン溶液を濾過したときの残渣に対して、10倍量相当のエタノールを加えて、温度25℃で30分攪拌した。残渣の質量にもよるが、ここでは、10倍量のエタノールを残渣に加える場合を例示する。
【0060】
その後、エタノール溶液を濾過して、瀘液に含まれるエタノールをエバポレーターなどにより除去してエタノール抽出物を得た。この例では、2.2gのエタノール抽出物を得た。
【0061】
図5(A)は、精製ゴマ油由来の白土油滓を用いた場合のヘキサン抽出物のHPLC-CAD結果であり、
図5(B)は、精製ゴマ油由来の白土油滓を用いた場合のエタノール抽出物のHPLC-CAD結果である。
【0062】
ここでも、
図3の米由来グルコシルセラミド群のピークのうち、溶出時間(RT)が14.2程度付近に現れるピークをターゲットとする。
【0063】
図5(A)に示すように、精製ゴマ油由来の白土油滓を用いた場合のヘキサン抽出物のサンプル量を33.93mg/mlとしてHPLC-CADで分析をした。
【0064】
図5(A)のHPLC-CAD結果より、溶出時間(RT)14.1にピークが現れた。このことから、精製ゴマ油由来の白土油滓を用いた場合のヘキサン抽出物には、グルコシルセラミド群のうち一成分が含まれていることが分かる。
【0065】
また、溶出時間(RT)のピークの面積(AREA)は「8144160.8」であり、当該ピークの面積比(面積%)は「16.174」であった。上述したように、1mg/mlの米由来グルコシルセラミドの場合、その面積(AREA)は「354473430.8」であり、ヘキサン抽出物のサンプル量は33.93mg/mlである。したがって、ヘキサン抽出物のサンプルに含まれるグルコシルセラミドの質量%(wt%)は、「0.067wt%」であり、回収率54.2%で換算すると、精製ゴマ油由来の白土油滓を用いた場合、1gのヘキサン抽出物には、1.23mg相当のグルコシルセラミドが含まれていることが分かる。
【0066】
図5(B)に示すように、精製ゴマ油由来の白土油滓を用いた場合のエタノール抽出物のサンプル量を26.575mg/mlとしてHPLC-CADで分析をした。
【0067】
図5(B)のHPLC-CAD結果より、溶出時間(RT)14.1にピークが現れた。このことから、精製ゴマ油由来の白土油滓を用いた場合のエタノール抽出物には、グルコシルセラミド群のうち一成分が含まれていることが分かる。
【0068】
また、溶出時間(RT)のピークの面積(AREA)は「656939.2」であり、当該ピークの面積比(面積%)は「10.989」であった。上述したように、1mg/mlの米由来グルコシルセラミドの場合、その面積(AREA)は「354473430.8」であり、エタノール抽出物のサンプル量は26.575mg/mlである。したがって、エタノール抽出物のサンプルに含まれるグルコシルセラミドの質量%(wt%)は、「0.070wt%」であり、回収率54.2%で換算すると、精製ゴマ油由来の白土油滓を用いた場合、1gのエタノール抽出物には、1.29mg相当のグルコシルセラミドが含まれていることが分かる。
【0069】
(A-4)第1の実施形態の効果
以上のように、第1の実施形態によれば、ゴマ油の製造過程の一工程である脱色工程で得られた白土油滓に対して無極性溶媒で加えた溶液からグルコシルセラミドを含む抽出物を得ることができる。又さらに、上記残渣に対してアルコールを加えた溶液からグルコシルセラミドを含む抽出物を得ることができる。
【0070】
また、第1の実施形態によれば、焙煎ゴマ油由来の白土油滓を用いた、ヘキサン抽出物中のグルコシルセラミド含有量は0.087wt%、エタノール抽出物中のグルコシルセラミド含有量は0.086wt%であった。また、精製ゴマ油由来の白土油滓を用いた、ヘキサン抽出物中のグルコシルセラミド含有量は0.067wt%、エタノール抽出物中のグルコシルセラミド含有量は0.070wt%であった。
【0071】
一般的に、米由来グルコシルセラミドの一日当たりの有効摂取量は1.8mgと言われている。従って、第1の実施形態の結果より、白土油滓を用いた抽出物に換算すると、2.0~2.6gの摂取で、上述した有効摂取量に達する。
【0072】
言い換えると、第1の実施形態によれば、高濃度のグルコシルセラミドを効率的に抽出していることが分かる。
【0073】
(B)第2の実施形態
次に、本発明のグルコシルセラミド含有物の製造方法の第2の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0074】
(B-1)第2の実施形態のグルコシルセラミドを含む抽出物の製造方法
図6は、第2の実施形態におけるグルコシルセラミドを含む抽出物の製造方法を説明するフローチャートである。
【0075】
[白土油滓の準備]
まず、ゴマ油製造工程で得られる白土油滓を原料として準備する(ステップS201)。
【0076】
第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、精製ゴマ油由来の白土油滓と、焙煎ゴマ油由来の白土油滓との2種類の油滓のそれぞれを原料とする。
【0077】
[エタノール抽出工程]
次に、白土油滓にエタノールを加えて攪拌する(ステップS202)。そして、白土油滓にエタノールを加えた溶液を濾過して(ステップS203)、残渣を抽出する(ステップS206)と共に瀘液を得る。ステップS203の濾過で得た瀘液からエタノールを除去するために、エバポレーターを用いて、瀘液からエタノールを蒸発する(ステップS204)。この脱溶剤処理で得たものを、エタノール抽出物とする(ステップS205)。エタノール抽出工程では、アルコールであるエタノールを用いて、アルコールに溶け込んだゴマリグナン類含有物を抽出する工程である。
【0078】
(B-2)焙煎ゴマ油由来の白土油滓を用いたときの結果
次に、
図6に例示する製造方法に従って、焙煎ゴマ油由来の白土油滓を用いたエタノール抽出物を得て、エタノール抽出物に、グルコシルセラミドが含まれていることを分析した。
【0079】
[エタノール抽出物の抽出工程]
図6に例示する製造方法に従って、焙煎ゴマ油由来の白土油滓を用いてエタノール抽出物を得る。
【0080】
例えば、焙煎ゴマ油由来の白土油滓60gを準備し、10倍量のエタノールを加えた。すなわち、60gの焙煎ゴマ油由来の白土油滓に、600mlのエタノールを加え、温度25℃で30分攪拌した。なお、ここでは、歩留等を考慮して10倍量のエタノールを加える場合を例示したが、エタノール量はこれに限らない。また、焙煎ゴマ油由来の白土油滓の質量、エタノール量、攪拌時の温度、攪拌時間は一例であり、上述したものに限らない。
【0081】
その後、エタノール溶液を濾過して、瀘液に含まれるエタノールをエバポレーター等で除去してエタノール抽出物を得た。ヘキサン除去後、6.3gのヘキサン抽出物を得た。
【0082】
[分析処理]
<前処理>
この例でも、米由来グルコシルセラミドの標準品をサンプルとして、薄膜クロマトグラフィーで米由来グルコシルセラミド群のRf値を導出した。
【0083】
例えば、展開溶媒は、[ジクロロメタン:メタノール:水=65:16:2]とし、薄膜クロマトグラフィーのガラスプレートに、米由来グルコシルセラミドを添着し、米由来グルコシルセラミドのRf値は0.52である。そのため、焙煎ゴマ油由来の白土油滓を用いたエタノール抽出物のそれぞれを添着して、Rf値が0.46~0.62の成分を分取した。
【0084】
<定量分析>
第1の実施形態と同様に、焙煎ゴマ油由来の白土油滓を用いたエタノール抽出物を高速液体クロマトグラムシステム(HPLC-CAD)で分析した。そのときの分析条件は、第1の実施形態と同様である。
【0085】
図7は、第2の実施形態で、米由来グルコシルセラミド群のHPLC-CAD結果を示す図である。
【0086】
図7の米由来グルコシルセラミド群のピークのうち、溶出時間(RT)が14.4程度付近に現れるピークをターゲットとする。
【0087】
図7より、米由来グルコシルセラミドを用いた場合、溶出時間(RT)14.4程度付近のピークの面積(AREA)は「37176676.1」であり、全体の面積に対する当該ピークの面積比(面積%)は「21.998」であり、面積比からサンプルに含まれるグルコシルセラミド含有量は「219.98mg/ml」とする。
【0088】
したがって、溶出時間14.2付近に現れるピークについて、1mg/mlの米由来グルコシルセラミドの場合、その面積(AREA)は「84500127.51」として、エタノール抽出物に含まれるグルコシルセラミド含有量を導出する。
【0089】
図8は、第2の実施形態による焙煎ゴマ油由来の白土油滓を用いた場合のエタノール抽出物のHPLC-CAD結果である。
【0090】
図8に示すように、焙煎ゴマ油由来の白土油滓を用いた場合のエタノール抽出物のサンプル量を20mg/mlとしてHPLC-CADで分析をした。
【0091】
図8のHPLC-CAD結果より、溶出時間(RT)14.3にピークが現れた。このことから、焙煎ゴマ油由来の白土油滓を用いた場合のエタノール抽出物には、グルコシルセラミド群のうち一成分が含まれていることが分かる。
【0092】
また、溶出時間(RT)14.3のピークの面積(AREA)は「4017828.6」であり、当該ピークの面積比(面積%)は「10.563」であった。上述したように、1mg/mlの米由来グルコシルセラミドの場合、その面積(AREA)は「84500127.51」であり、エタノール抽出物のサンプル量は20mg/mlである。したがって、エタノール抽出物のサンプルに含まれるグルコシルセラミドの質量%(wt%)は、「0.23wt%」であり、
図11及び
図12の結果より回収率54.2%で換算すると、焙煎ゴマ油由来の白土油滓を用いた場合、1gのエタノール抽出物には、4.37mg相当のグルコシルセラミドが含まれていることが分かる。
【0093】
図9は、第2の実施形態による生成ゴマ油由来の白土油滓を用いた場合のエタノール抽出物のHPLC-CAD結果である。
【0094】
図9に示すように、精製ゴマ油由来の白土油滓を用いた場合のエタノール抽出物のサンプル量を20mg/mlとしてHPLC-CADで分析をした。
【0095】
図9のHPLC-CAD結果より、溶出時間(RT)14.3にピークが現れた。このことから、精製ゴマ油由来の白土油滓を用いた場合のエタノール抽出物には、グルコシルセラミド群のうち一成分が含まれていることが分かる。
【0096】
また、溶出時間(RT)14.3のピークの面積(AREA)は「4274436」であり、当該ピークの面積比(面積%)は「11.372」であった。上述したように、1mg/mlの米由来グルコシルセラミドの場合、その面積(AREA)は「84500127.51」であり、エタノール抽出物のサンプル量は20mg/mlである。したがって、エタノール抽出物のサンプルに含まれるグルコシルセラミドの質量%(wt%)は、「0.252wt%」であり、
図11及び
図12の結果より回収率54.2%で換算すると、精製ゴマ油由来の白土油滓を用いた場合、1gのエタノール抽出物には、4.64mg相当のグルコシルセラミドが含まれていることが分かる。
【0097】
(B-3)第2の実施形態の効果
以上のように、第2の実施形態によれば、ゴマ油の製造過程の一工程である脱色工程で得られた白土油滓に対してアルコールを加えた溶液からグルコシルセラミドを含む抽出物を得ることができる。
【0098】
また、第2の実施形態によれば、焙煎ゴマ油由来の白土油滓を用いたエタノール抽出物中のグルコシルセラミド含有量は0.23wt%であった。また、精製ゴマ油由来の白土油滓を用いたエタノール抽出物中のグルコシルセラミド含有量は0.252wt%であった。一般的に、米由来グルコシルセラミドの一日当たりの有効摂取量は1.8mgと言われているので、第2の実施形態の結果より、白土油滓を用いた抽出物に換算すると、0.71~0.75gの摂取で、上述した有効摂取量に達する。言い換えると、第2の実施形態によれば、高濃度のグルコシルセラミドを効率的に抽出していることが分かる。
【0099】
(C)他の実施形態
上述した実施形態で抽出したリグナン類含有物は、少なくとも、セサモール、セサミノール、セサミン、エピセサミン、セサモリンが含まれている。これらリグナンは、強力な抗酸化活性があり、コレステロール低下作用、アルコール代謝改善効果、抗高血圧作用、ビタミン増強調整作用、抗動脈硬化作用、糖尿病予防効果、抗ガン作用などがある。
【0100】
そのため、リグナン類抽出物を含む組成物は、医薬品、サプリメント等の健康食品(経口組成物)、化粧品などへの利用が期待されている。