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特開2024-154561水溶性こんにゃく芋抽出物、およびその製造方法
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  • 特開-水溶性こんにゃく芋抽出物、およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154561
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】水溶性こんにゃく芋抽出物、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20241024BHJP
   A61K 36/888 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 31/7004 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20241024BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20241024BHJP
   A23L 19/00 20160101ALI20241024BHJP
【FI】
A23L33/105
A61K36/888
A61K31/7004
A61K8/9789
A61Q19/00
A61P17/00
A61P25/28
A23L19/00 102Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068443
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】500158410
【氏名又は名称】雪国アグリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 敏明
(72)【発明者】
【氏名】室井 文篤
【テーマコード(参考)】
4B016
4B018
4C083
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4B016LC07
4B016LG07
4B016LQ10
4B018LE01
4B018MD07
4B018MD08
4B018MD10
4B018MD18
4B018MD48
4B018ME14
4B018MF01
4C083AA111
4C083AC641
4C083AD201
4C083CC03
4C083EE12
4C083EE13
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA01
4C086EA10
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA16
4C086ZA89
4C088AB80
4C088AC12
4C088AC13
4C088BA08
4C088BA13
4C088MA52
4C088MA63
4C088NA14
4C088ZA16
4C088ZA89
(57)【要約】
【課題】
本発明は、より簡便な方法によって水溶性こんにゃく芋抽出物を提供することを目的とする。
【解決手段】
有機溶剤により抽出されたこんにゃく芋抽出物から脂肪酸エステルおよび植物ステロールを分離除去することで、脂肪酸エステルの含有量が500mg/100g以下であり、植物ステロールの含有量が5,000mg/100g以下であり、グルコシルセラミドの含有量が5,000mg/100g以上であり、かつステリルグルコシドを含む水溶性こんにゃく芋抽出物を提供することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪酸エステルの含有量が500mg/100g以下であり、植物ステロールの含有量が5,000mg/100g以下であり、グルコシルセラミドの含有量が5,000mg/100g以上であり、かつステリルグルコシドを含む水溶性こんにゃく芋抽出物。
【請求項2】
前記ステリルグルコシドの含有量が500mg/100g以上である請求項1に記載の水溶性こんにゃく芋抽出物。
【請求項3】
請求項1に記載の水溶性こんにゃく芋抽出物を含有する食品、化粧品又は医薬品。
【請求項4】
第1の有機溶剤を用いてこんにゃく芋の粉からこんにゃく芋抽出物を抽出する抽出工程と、
第2の有機溶剤を用いて前記こんにゃく芋抽出物から脂肪酸エステルおよび植物ステロールを除去することにより、水溶性こんにゃく芋抽出物を得る除去工程とを含み、
前記水溶性こんにゃく芋抽出物は脂肪酸エステルの含有量が500mg/100g以下であり、植物ステロールの含有量が5,000mg/100g以下であり、グルコシルセラミドの含有量が5,000mg/100g以上であり、かつステリルグルコシドを含み、及び
前記第1の有機溶剤及び前記第2の有機溶剤は、互いに異なる有機溶剤であり、かつ石油エーテル及びクロロホルムとは異なる有機溶剤である、水溶性こんにゃく芋抽出物の製造方法。
【請求項5】
前記第1の有機溶剤は、エタノールである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の有機溶剤は、アセトンである、請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性こんにゃく芋抽出物とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
こんにゃく芋は、日本の伝統的な農産物であり、食物繊維や有用成分を多く含むために注目されている食材である。板こんにゃくやしらたきの原料となるこんにゃく粉を製造する過程で、副産物としてこんにゃく飛粉が大量に生じる。こんにゃく飛粉には有用成分が多く含まれており、特にグルコシルセラミドに代表されるスフィンゴ糖脂質の含有量が非常に多い。こんにゃく飛粉からのスフィンゴ糖脂質などの製造方法はよく知られている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
【0003】
スフィンゴ糖脂質は、経口摂取により体内で消化及び吸収され、肌の保湿性を向上させる機能があり、機能性表示食品として販売されている。また、スフィンゴ糖脂質は、皮膚に直接塗布することによって皮膚の保湿性を向上し、乾燥肌、肌荒れ、アトピー性皮膚炎などの皮膚異常を改善することが知られている。最近ではアルツハイマー予防剤としてスフィンゴ糖脂質の新しい機能性が発見されており(例えば、特許文献4)、スフィンゴ糖脂質は、食品分野のみならず、医薬品分野及び化粧品分野においても注目されている。
【0004】
スフィンゴ糖脂質は、こんにゃく芋に加えて、小麦、米、とうもろこし、桃、パイナップルなどの様々な植物に含まれている。これまでにそれらの植物由来のスフィンゴ糖脂質が食品用途及び化粧品用途として販売されている。しかし、スフィンゴ糖脂質を含む植物抽出物は、そのままでは水に全く溶解しない。そこで、スフィンゴ糖脂質を含む植物抽出物を、ポリグリセリン脂肪酸エステルなどの乳化剤を利用して水溶性組成物とする方法が知られている(例えば、特許文献5)。こんにゃく芋から抽出されたスフィンゴ糖脂質を含むこんにゃく芋抽出物もまた、有機溶剤によって抽出する場合、そのままでは水にはすべてが溶解又は懸濁せずに、沈殿する。こんにゃく芋抽出物を水に安定に溶解させるために、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、酵素分解レシチンなどの乳化剤を利用することにより、こんにゃく芋抽出物を可溶化して、各種ドリンク剤、化粧品、医薬品などに配合することが可能となっていた。
【0005】
一方、こんにゃく芋からスフィンゴ糖脂質を含む抽出物を得る方法としては、こんにゃく芋の粗抽出物をメタノールに溶解して得た溶解液をカラムクロマトグラフィーに導入する方法(例えば、特許文献6)、こんにゃく芋の粗抽出物を石油エーテルに溶解して得た溶解液をカラムクロマトグラフィーに導入する方法(例えば、特許文献7~11)、こんにゃく芋の粗抽出物をアルカリ性メタノール及びクロロホルムを用いて溶媒抽出する方法(例えば、特許文献12)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3992425号公報
【特許文献2】特許第3650587号公報
【特許文献3】特許第4753476号公報
【特許文献4】再表2019-078005号公報
【特許文献5】特許第3395444号公報
【特許文献6】特開2003-221592号公報
【特許文献7】中国特許出願公開第102190689号明細書
【特許文献8】中国特許出願公開第102675139号明細書
【特許文献9】中国特許出願公開第108623492号明細書
【特許文献10】中国特許出願公開第102351730号明細書
【特許文献11】中国特許出願公開第108947864号明細書
【特許文献12】特開2011-195550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の通り、特許文献5に記載の方法では、こんにゃく芋抽出物を可溶化するために、乳化剤が併用されてきた。しかし、使用する乳化剤や乳化剤とその他の成分との組合せによっては、得られる水性組成物の乳化安定性が悪くなることがある。そこで、乳化剤を添加することなくこんにゃく芋抽出物を含む水性組成物の水溶性を確保できる方法が望まれる。
【0008】
一方、特許文献6~12に記載の方法によって得られるこんにゃく芋抽出物の水溶性は明らかにされていない。また、特許文献7~12に記載の方法は、我が国の食品添加物製造基準では抽出溶媒として認められていない石油エーテル(主としてペンタン)及びクロロホルムが用いられている。
【0009】
本発明は、スフィンゴ糖脂質のような有用成分を多く含有し、化粧品原料、健康食品素材及び医薬品素材として食品、化粧品及び医薬品といった水性組成物に利用することができる、こんにゃく芋抽出物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、こんにゃく飛粉からエタノールにより抽出したこんにゃく芋抽出物が難水溶性になることを確認した。そして、スフィンゴ糖脂質などの有用成分以外の成分を選択的に除去することによりこんにゃく芋抽出物を水溶性にできるのではないかと考えた。そこで、本発明者は、こんにゃく芋抽出物に含まれる有用成分を残しながら、水への溶解を妨げている成分を除去する方法を考えた。
【0011】
その結果、こんにゃく芋抽出物に含まれている植物ステロール及び脂肪酸エステルなどの中性脂質の含有量を低減することにより、こんにゃく芋抽出物の難水溶性が改善されて水へ容易に溶解することを見出した。本発明は、このような本発明者が得た知見及び成功例により完成したものである。
【0012】
即ち、本発明の一側面の各態様は、下記の通りである。
(1)脂肪酸エステルの含有量が1,000mg/100g以下である水溶性こんにゃく芋抽出物。
(2)植物ステロールの含有量が5,000mg/100g以下である(1)に記載の水溶性こんにゃく芋抽出物。
(3)グルコシルセラミドの含有量が5,000mg/100g以上である(1)または(2)に記載の水溶性こんにゃく芋抽出物。
(4)ステリルグルコシドの含有量が500mg/100g以上である(1)~(3)のいずれか一項に記載の水溶性こんにゃく芋抽出物。
(5)(1)~(4)のいずれか一項に記載の水溶性こんにゃく芋抽出物を含有する食品、化粧品、または、医薬品。
(6)有機溶剤を用いてこんにゃく芋の粉からこんにゃく芋抽出物を抽出する抽出工程および、カラムクロマトグラフィーにより前記こんにゃく芋抽出物から脂肪酸エステルおよび植物ステロールを分離することにより、脂肪酸エステルの含有量を1,000mg/100g以下、かつ、植物ステロールの含有量を5,000mg/100g以下とする分離工程を含む水溶性こんにゃく芋抽出物の製造方法。
(7)有機溶剤を用いてこんにゃく芋の粉からこんにゃく芋抽出物を抽出する抽出工程および、前記抽出工程で使用した有機溶剤と異なる有機溶剤を用いて前記こんにゃく芋抽出物から脂肪酸エステルおよび植物ステロールを除去することにより、脂肪酸エステルの含有量を1,000mg/100g以下、かつ、植物ステロールの含有量を5,000mg/100g以下とする除去工程を含む水溶性こんにゃく芋抽出物の製造方法。
【0013】
本発明の別の側面の各態様は、以下の通りである。
[1]脂肪酸エステルの含有量が500mg/100g以下であり、植物ステロールの含有量が5,000mg/100g以下であり、グルコシルセラミドの含有量が5,000mg/100g以上であり、かつステリルグルコシドを含む水溶性こんにゃく芋抽出物。
[2]前記ステリルグルコシドの含有量が500mg/100g以上である[1]に記載の水溶性こんにゃく芋抽出物。
[3][1]に記載の水溶性こんにゃく芋抽出物を含有する食品、化粧品又は医薬品。
[4]第1の有機溶剤を用いてこんにゃく芋の粉からこんにゃく芋抽出物を抽出する抽出工程と、
第2の有機溶剤を用いて前記こんにゃく芋抽出物から脂肪酸エステルおよび植物ステロールを除去することにより、水溶性こんにゃく芋抽出物を得る除去工程とを含み、
前記水溶性こんにゃく芋抽出物は脂肪酸エステルの含有量が500mg/100g以下であり、植物ステロールの含有量が5,000mg/100g以下であり、グルコシルセラミドの含有量が5,000mg/100g以上であり、かつステリルグルコシドを含み、及び
前記第1の有機溶剤及び前記第2の有機溶剤は、互いに異なる有機溶剤であり、かつ石油エーテル及びクロロホルムとは異なる有機溶剤である、水溶性こんにゃく芋抽出物の製造方法。
[5]前記第1の有機溶剤は、エタノールである、[4]に記載の方法。
[6]前記第2の有機溶剤は、アセトンである、[4]に記載の方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の効果は以下の通りである。
(1)の発明によれば、脂肪酸エステルの含有量が1,000mg/100g以下とすることによりこんにゃく芋抽出物を水溶性にすることが可能である。
(2)の発明によれば、植物ステロールの含有量が5,000mg/100g以下とすることによりこんにゃく芋抽出物を水溶性にすることが可能である。
(3)の発明によれば、グルコシルセラミドの含有量が5,000mg/100g以上とすることにより有用成分を含む水溶性こんにゃく芋抽出物が得られる。
(4)の発明によれば、ステリルグルコシドの含有量が500mg/100g以上とすることにより有用成分を含む水溶性こんにゃく芋抽出物が得られる。
(5)の発明によれば、乳化剤を使用せずとも食品、化粧品、医薬品に用いることができる。
(6)の発明によれば、カラムクロマトグラフィーによりこんにゃく芋抽出物に含まれる脂肪酸エステルの含有量を1,000mg/100g以下、植物ステロールの含有量を5,000mg/100g以下に低減させることで、水溶性が付与された水溶性こんにゃく芋抽出物の簡単な製造方法を提供できる。
(7)の発明によれば、抽出工程と異なる有機溶剤を用いた除去工程により、こんにゃく芋抽出物に含まれる脂肪酸エステルの含有量を1,000mg/100g以下、植物ステロールの含有量を5,000mg/100g以下に低減させることで、水溶性が付与された水溶性こんにゃく芋抽出物の簡単な製造方法を提供できる。
【0015】
本発明の一態様の水溶性こんにゃく芋抽出物は、スフィンゴ糖脂質のような有用成分を多く含有し、化粧品原料、健康食品素材及び医薬品素材として利用でき、これによりこんにゃく由来グルコシルセラミドを含む液体状組成物である食品、化粧品及び医薬品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、水溶性こんにゃく芋抽出物の製造方法を示すフロー図である。
図2図2は、後述する実施例に記載があるとおりの、被験試料(a)~(c)の水に対する溶解性を評価した結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、有機溶剤で抽出されたこんにゃく芋抽出物であって、水溶性が改善されたこんにゃく芋抽出物である。以下では、本発明のこんにゃく芋抽出物の実施形態について詳述する。ただし、以下の実施形態は、本発明を説明するための一例であり、本発明が当該実施形態のみに限定されるものではない。
【0018】
1.水溶性こんにゃく芋抽出物の原材料等
本実施形態で使用する原料のこんにゃく芋は、こんにゃく芋そのままでも良いし、乾燥、すりつぶし、粉砕、加熱などの操作によって加工されていても良い。また、こんにゃく芋は、こんにゃく精粉、こんにゃく微粉、こんにゃく中粉、こんにゃく荒粉、こんにゃく飛粉等でも良いし、食用として加工して市販されているこんにゃくでも良い。これらの中で好ましい例は、こんにゃく精粉、こんにゃく微粉、こんにゃく中粉等を製造する際に副産物として大量に生じ、後に廃棄されるものであり、安価に入手できることから、こんにゃく飛粉である。
【0019】
本実施形態で抽出に使用する有機溶剤(第1の有機溶剤)としては、グルコシルセラミド及びステリルグルコシドを溶解することができ、さらにこんにゃく芋中の有用成分と抽出中に反応するなどして、本発明の課題解決を損なうものでなければいかなるものでも使用でき、また、1種類の有機溶剤を単独で用いても、2種以上の複数の有機溶剤を混合して用いても良い。かかる第1の有機溶剤としては、たとえば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどの1価の1級アルコール類、2-ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのその他のアルコール類、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどの含酸素系極性有機溶剤、ジメチルホルムアミド、ピリジンなどの含窒素系極性有機溶剤、ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロルエチレンなどの含ハロゲン系極性有機溶剤、ヘキサン、イソオクタンなどの無極性又は低極性の有機溶剤が挙げられる。有機溶剤は、場合によっては、水が混合されていても良い。さらには、有機溶剤は、高圧液化状態又は超臨界状態にある二酸化炭素やエタン、トリフルオロメタンなどの高圧流体などを用いることも可能である。これらの中で、こんにゃく芋抽出物を食品や食品添加剤として使用する場合は、エタノールを用いることが好ましく、アセトン、ヘキサン、水、超臨界等の状態にある二酸化炭素を必要に応じて混合して用いることもできる。この場合、抽出に使用する第1の有機溶剤中におけるエタノールの含有量は70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましく、100%がなおさらに好ましい。例えば、第1の有機溶剤としてエタノールを用いて得られたこんにゃく芋抽出物を、こんにゃく芋エタノール抽出物とよんでもよい。
【0020】
2.水溶性こんにゃく芋抽出物の製造
本実施形態に係る水溶性こんにゃく芋抽出物を製造するにあたり、こんにゃく芋に対して有機溶剤を添加してこんにゃく芋における有用成分を抽出する抽出工程を行う。抽出に使用する有機溶剤の量は、原料のこんにゃく芋に対して1倍量~30倍量程度であり、好ましくは1倍量~20倍量程度であり、より好ましくは1倍量~10倍量程度である。
【0021】
抽出温度は、使用する有機溶剤の沸点にもよるが、好ましくは0℃~80℃であり、より好ましくは室温程度~60℃である。抽出時間は、好ましくは1時間~48時間であり、より好ましくは2時間~20時間である。
【0022】
抽出方法は、攪拌槽内でこんにゃく芋と上記の有機溶剤とを混合して1回のみの回分操作でも良いが、これに限定されるものではない。抽出後の残渣に再度新鮮な溶剤を添加し、抽出操作を行うこともできるし、有機溶剤を複数回抽出原料に接触させることも可能である。すなわち、抽出操作としては、回分操作、半連続操作、向流多段接触操作のいずれの方式も使用可能である。また、ソックスレー抽出などの公知の抽出方法を使用しても良い。
【0023】
次に、上記抽出工程で得られた抽出液から抽出残渣を分離除去する。分離の方法は特に限定されず、例えば、吸引ろ過、フィルタープレス、シリンダープレス、デカンター、遠心分離器、ろ過遠心機などの公知の方法を用いることができる。
【0024】
このようにして得られた抽出液は濃縮工程に送られる。濃縮方法は特に限定されず、例えば、エバポレーターのような減圧濃縮装置や遠心式薄膜真空蒸発装置を用いることにより、または加熱による溶剤除去により濃縮することができる。なお、抽出のための有機溶剤に超臨界流体を用いた場合では、抽出後に放圧操作を行うことのみにより、溶媒除去が行え、濃縮工程を省略することが可能である。
【0025】
本実施形態においては、こんにゃく芋抽出物を水に容易に溶解することができるように、各種植物ステロールを5,000mg/100g以下、好ましくは4,000mg/100g以下、より好ましくは3,500mg/100g以下まで低減し;及び/又は、各種脂肪酸エステルを1,000mg/100g以下、好ましくは500mg/100g以下、より好ましくは50mg/100g以下まで低減させる。植物ステロールは、シトステロール、カンペステロール、ブラシカステロール、スチグマステロール、シトスタノールなどを代表としたステロール類であり、それに脂肪酸が結合した植物ステロールを含む。さらに、脂肪酸エステルは、C16~C20の飽和脂肪酸及び/又は不飽和脂肪酸のカルボキシル基に、メチル基、エチル基、プロピル基などの官能基がエステル結合したものである。植物ステロール及び脂肪酸エステルは後述する実施例に記載の方法により定量されるものである。
【0026】
一方、有用成分を含む水溶性こんにゃく芋抽出物を食品、化粧品及び医薬品の用途として使用できるように、水溶性こんにゃく芋抽出物が有用成分であるグルコシルセラミド及びステリルグルコシドを含むことが好ましい。また、グルコシルセラミドの含有量は、水溶性こんにゃく芋抽出物の総量(100g)に対して、好ましくは5,000mg/100g以上であり、より好ましくは5,000mg/100g~50,000mg/100gであり、さらに好ましくは10,000mg/100g~40,000mg/100gであり、なおさらに好ましくは15,000mg/100g~30,000mg/100g又は20,000mg/100g~30,000mg/100gであり;及び/又は、ステリルグルコシドの含有量は、水溶性こんにゃく芋抽出物の総量(100g)に対して、好ましくは500mg/100g以上であり、より好ましくは500mg/100g~5,000mg/100gであり、さらに好ましくは1,000mg/100g~4,000mg/100であり、なおさらに好ましくは1,500mg/100g~3,500mg/100g又は2,000mg/100g~3,500mg/100gである。
【0027】
グルコシルセラミド及びステリルグルコシドは、難水溶性であり、むしろ脂溶性である。しかし、こんにゃく芋中には、ホスファチジルコリンなどのリン脂質が含有しており、これらが乳化剤として作用して、グルコシルセラミド及びステリルグルコシドの一部は水に溶解することができる。しかし、こんにゃく芋抽出物においては、グルコシルセラミド及びステリルグルコシドに加えて、脂肪酸エステル及び植物ステロールが一定濃度以上に存在する。これらはリン脂質の乳化剤としての作用を抑制して、こんにゃく芋抽出物中のグルコシルセラミド及びステリルグルコシドの水への溶解を阻害すると考えられる。本発明の一態様の水溶性こんにゃく芋抽出物は、こんにゃく芋抽出物に対して、グルコシルセラミド及びステリルグルコシドの含有量を高めるとともに、脂肪酸エステル及び植物ステロールの含有量を低減することにより、水溶性こんにゃく芋抽出物たり得る。
【0028】
食品の用途として考えた場合、水溶性こんにゃく芋抽出物の製造方法では、第1の有機溶剤及び第2の有機溶剤として、食品添加物製造基準に記載がある有機溶剤(アセトン、エタノール、グリセリン、酢酸エチル、酢酸メチル、ジエチルエーテル、シクロヘキサン、ジクロロメタン、1,1,2-トリクロロエテン、食用油脂、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1-ブタノール、2-ブタノール、2-ブタノン、1-プロパノール、2-プロパノール、プロピレングリコール、ヘキサン、メタノールなど)を用いることが好ましく、もってペンタンなどの石油エーテル及びクロロホルムを用いないことが好ましく、水溶性こんにゃく芋抽出物は実質的に石油エーテル及びクロロホルムを含まないものであることが好ましい。
【0029】
本発明の一態様の水溶性こんにゃく芋抽出物の製造方法は、植物ステロール及び脂肪酸エステルを低減できる方法である。本発明の一態様の水溶性こんにゃく芋抽出物の製造方法は、樹脂を用いる方法及び抽出工程とは異なった有機溶剤を用いる方法である。
【0030】
樹脂を用いた方法は、カラムクロマトグラフィーによりこんにゃく芋抽出物から植物ステロール及び脂肪酸エステルを分離する分離工程を実施する。分離工程は、有用成分であるグルコシルセラミド及びステリルグルコシドと、植物ステロール及び脂肪酸エステルとを分離出来る工程であれば、特に限定されない。分離工程は、例えば、シリカゲルやイオン交換樹脂、アフィニティー樹脂、ゲル濾過、疎水クロマトグラフィー樹脂、合成吸着剤などを用いた分離工程が挙げられる。
【0031】
抽出工程と異なる有機溶剤を用いる方法は、抽出工程と異なる有機溶剤(第2の有機溶剤)を用いることにより植物ステロール及び脂肪酸エステルをこんにゃく芋抽出物から除去する除去工程を実施する。除去工程は、有用成分であるグルコシルセラミド及びステリルグルコシドを溶解しにくく、植物ステロール及び脂肪酸エステルを溶解しやすい第2の有機溶剤を用いることが好ましい。そのような好ましい第2の有機溶剤としては、例えば、アセトン、ヘキサン、超臨界状態の二酸化炭素などとそれらの混合物などが挙げられるが、これらの中ではアセトンが好ましい。第2の有機溶剤におけるアセトンの含有量は、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましく、100%がなおさらに好ましい。
【0032】
抽出工程と異なる有機溶剤を用いる方法は、抽出工程で用いた有機溶剤とは異なる有機溶剤又は組成が異なる有機溶剤を使用することにより、効率的に植物ステロール及び脂肪酸エステルを除去することが可能となる。
【0033】
抽出工程後、抽出工程で用いた有機溶剤を除去したこんにゃく芋抽出物に対して、抽出工程と異なる有機溶剤を添加して植物ステロール及び脂肪酸エステルを除去する除去工程においては、抽出工程と同じようにこんにゃく芋抽出物を処理することが可能である。つまり、植物ステロール及び脂肪酸エステルの除去に使用する有機溶剤の量は、こんにゃく芋抽出物に対して、好ましくは1倍量~30倍量程度、より好ましくは5倍量~20倍量程度であり、さらに好ましくは5倍量~10倍量程度であり、撹拌などにより有機溶剤への溶解を促進させれば良い。操作を簡便にし、水溶性こんにゃく芋抽出物の収量を上げるために、抽出工程と除去工程とは連続的に実施することが好ましい。すなわち、本発明の方法の好ましい態様は、抽出工程を行って得たこんにゃく芋抽出物を、他の処理に供することなく、除去工程に用いることが好ましい。
【0034】
処理温度は、使用する溶剤の沸点にもよるが、好ましくは0℃~80℃、より好ましくは室温~60℃である。
【0035】
処理時間は、例えば、1時間~48時間、好ましくは2時間~20時間である。
【0036】
除去工程における処理は1回のみの回分操作で良いが、これに限定されるものではない。1回目の処理後の残渣に再度新鮮な有機溶剤を添加し、処理を繰り返すこともできるし、有機溶剤を複数回こんにゃく芋抽出物に接触させることも可能である。すなわち、操作方法としては、回分操作、半連続操作、向流多段接触操作のいずれの方式も使用可能である。また、ソックスレー抽出などの公知の処理方法を使用してもよい。
【0037】
有機溶剤による処理物(残渣)を分離除去する。分離の方法は特に限定されず、例えば、吸引ろ過、フィルタープレス、シリンダープレス、デカンター、遠心分離器、ろ過遠心機などの公知の方法を用いることができる。
【0038】
最終的に得られた水溶性こんにゃく芋抽出物は、カラムクロマトグラフィーなどで使用した有機溶剤などを必要に応じて除去すれば良いし、そのまま使用することも可能である。水溶性こんにゃく芋抽出物は、抽出工程で用いた有機溶剤により溶解しても良い。この後、有機溶剤を除去することにより、水溶性こんにゃく芋抽出物は固体状のものとして得ることができる。
【0039】
本発明の一態様の水溶性こんにゃく芋抽出物は、上述したような方法により得られるものであって、各種植物ステロールの含有量が5,000mg/100g以下であり;及び/又は、各種脂肪酸エステルの含有量が1,000mg/100g以下である。これらの含有量がそれぞれ5,000mg/100g及び/又は1,000mg/100gを超える場合は、こんにゃく芋抽出物は水には完全に溶解せず、溶け残りが存在して、時間と共に沈殿となって安定的に水に溶解させることが難しくなる。或いは、一旦は水に溶解したこんにゃく芋抽出物が時間の経過とともに沈殿となって水不溶性のこんにゃく芋抽出物の一部が析出する。こんにゃく芋抽出物中の植物ステロールを5,000mg/100g以下及び/又は脂肪酸エステルを1,000mg/100g以下にすることにより、水溶性こんにゃく芋抽出物は水に溶解して使用する形態の化粧品、食品、医薬品素材として利用することができる。
【0040】
本発明の一態様の水溶性こんにゃく芋抽出物は、皮膚の保湿や認知症などに重要な役割をするスフィンゴ糖脂質やステリルグルコシドを多量に含有することから、食品や化粧品に添加することによって優れた効果をもたらすものである。該食品としては、例えば、健康食品、健康飲料をはじめ、パン、うどん、そば、ご飯等主食となるもの、クッキー、ケーキ、ゼリー、プリン、キャンディー、チューインガム、ヨーグルトなどの菓子類、清涼飲料水、酒類、コーヒー、茶、牛乳などの飲料が挙げられる。該化粧品としては、例えば、化粧水、乳液、モイスチャークリーム、香水、リップクリーム、口紅等皮膚に塗布するもの、養毛料、育毛料、ポマード、セットローション、ヘアスプレー、染毛料、ヘアトニック、まつげ化粧料等毛髪に塗布するもの、洗顔クリーム、洗顔石鹸、シャンプー、リンス、トリートメントなど洗顔や洗髪に利用するもの、さらには浴用剤などが挙げられる。
【実施例0041】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本発明は、実施形態によって限定されることはなく、クレームの範囲によってのみ限定される。
【0042】
以下の実施例において用いた測定装置及び測定方法について説明する。
【0043】
(1)植物ステロール及び脂肪酸エステルの定量方法
植物ステロール及び脂肪酸エステルの定量にはガスクロマトグラフィー(GC)を用いた。アジレント・テクノロジー製HP 6890 Series GC Systemを用いた。各成分の検出には水素炎イオン化検出器(FID)を用いた。植物ステロールの分離には、アジレント・テクノロジー製HP-5MSカラム(長さ30m、直径0.25mm、膜厚0.25μm)を使用した。検出器温度は300℃、流速は1.0mL/分(キャリアーガス:He)、インジェクタ温度は150℃、インジェクション量は1μL、スプリット比は50:1とした。カラムオーブン温度は、開始温度を250℃とし、10℃/分で300℃まで昇温させ、300℃に到達後10分間保持させた。脂肪酸エステルの分離には、アジレント・テクノロジー製DB-WAX(長さ60m、直径0.25mm、膜厚0.25μm)を用いた。検出器温度280℃、流速1.0mL、スプリット比50:1とした。カラムオーブン温度は、開始温度を50℃とし、1分間保持させた後、25℃/分で200℃まで昇温させ、3℃/分で230℃まで昇温後、13分間保持させた。
【0044】
標準試薬として、β-シトステロール(タマ生化学製)、カンペステロール(タマ生化学製)、スティグマステロール(シグマ製)、リノール酸エチル(シグマ製)、パルミチン酸エチル(富士フィルム和光純薬製)及び定性用脂肪酸メチルエステルミックス(F.A.M.E.Mix,C4-C24)(シグマ製)を用いた。定性用脂肪酸エチルエステルミックスを、定性用脂肪酸メチルエステルミックスからエステル交換反応により調製した。これら標準試薬を使用して植物ステロール及び脂肪酸エステルを測定した。
【0045】
(2)グルコシルセラミド及びステリルグルコシドの定量方法
グルコシルセラミド及びステリルグルコシドの定量には高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた。島津製作所製LC-20A型HPLCを用いて、検出器は島津製作所製蒸発光散乱検出器ELSD-LTIIIを用いた。カラムはGLサイエンス社製Inertsil SIL100Aを用いた。溶媒はクロロホルム:メタノール=9:1(容量比)を用い、流速1.0mL/分で37℃で測定した。標準試薬として、こんにゃく芋由来グルコシルセラミド(長良サイエンス製)及びβ-シトステロール-3-O-グルコシド(富士フイルム和光純薬製)を用いて測定した。
【0046】
[参考例1]
こんにゃく飛粉1kgを攪拌槽に仕込み、そこにエタノール2Lを加え、常温で2時間攪拌した。その後、得られた混合物をろ過により抽出液と残渣とに分離した。抽出液をエバポレーターにより濃縮し、茶褐色の蝋状濃縮物(こんにゃく芋抽出物)10.7gを得た。この抽出物を上記の測定方法を用いて、植物ステロール、脂肪酸エステル、グルコシルセラミド及びステリルグルコシドについて分析を行った。その結果を表1に示す。また、このこんにゃく芋抽出物1gを70℃の温水1Lを入れたビーカー中で、10分間撹拌を行った後、室温に戻るまで放置した。その結果、こんにゃく芋抽出物は、蝋状の塊としてビーカーの下部に沈殿しており、すべては水に安定に溶解していない状態であった。なお、エタノールに代えてメタノールを用いた場合も茶褐色の蝋状濃縮物であるこんにゃく芋抽出物が得られた。しかし、このようにして得られたこんにゃく芋抽出物は、水に安定に溶解しないものであった。
【0047】
[実施例1]
参考例1において得られたこんにゃく芋抽出物10.0gを100mLのクロロホルムに溶解して得られた溶液を、シリカゲルを充填した300mL容量のガラスカラムに通液した。次いで、シリカゲルカラムをカラム容量の3倍量のクロロホルムで洗浄した後、カラム容量の1倍量のクロロホルム/メタノール(9/1)で洗浄した。さらに、シリカゲルカラムにカラム容量の2倍量のクロロホルム/メタノール(8/2)を通液することにより、吸着したこんにゃく芋抽出物をシリカゲルカラムから溶出した。溶出した溶液からエバポレーターでクロロホルム/メタノールの溶媒を除去すると、薄茶色のブロック状の固体(水溶性こんにゃく芋抽出物)3.2gが得られた。この水溶性こんにゃく芋抽出物について、参考例1と同様の分析を行った。その結果を表1に示す。また、この水溶性こんにゃく芋抽出物1gを70℃の温水1Lを入れたビーカー中で、10分間撹拌を行った後、室温に戻るまで放置した。その結果、水溶性こんにゃく芋抽出物は水に完全に溶解しており、沈殿の発生も全く観察されなかった。さらに、得られた水溶液を1週間、密封して40℃の恒温器中に放置したところ、沈殿の発生はなく、完全に水に溶解したままであった。
【0048】
[実施例2]
参考例1において得られたこんにゃく芋抽出物10.0gに対してアセトン100mL(10倍量)を添加して得られた混合物を、室温で2時間撹拌した後、ろ過によりアセトン溶解液と残渣とに分離した。残渣に対してエタノール100mLを添加して得られた混合物を撹拌溶解し、次いですぐにろ過して、エタノール溶解液を得た。このエタノール溶解物からエバポレーターでエタノールを溶媒除去すると、薄茶色のブロック状の固体(水溶性こんにゃく芋抽出物)4.6gが得られた。この水溶性こんにゃく芋抽出物について、参考例1と同様の分析を行った。その結果を表1に示す。また、この水溶性こんにゃく芋抽出物1gを70℃の温水1Lを入れたビーカー中で、10分間撹拌を行った後、室温に戻るまで放置した。その結果、水溶性こんにゃく芋抽出物は水に完全に溶解しており、沈殿の発生も全く観察されなかった。さらに、得られた水溶液を1週間、密封して40℃の恒温器中に放置したところ、沈殿の発生はなく、完全に水に溶解したままであった。
【0049】
【表1】
【0050】
[実施例3]
参考例1に記載の方法と同様に、こんにゃく飛粉から得られたこんにゃく芋抽出物10.0gに対してアセトン100mL(10倍量)を添加して得られた混合物を、室温で2時間撹拌した後、ろ過によりアセトン溶解液と残渣とに分離した。残渣に対してエタノール100mLを添加して得られた混合物を撹拌溶解することによりエタノール溶解液を得た。
【0051】
アセトン溶解液にはこんにゃく芋抽出物の水への溶解を妨げる脂肪酸エステルが抽出されていることから、上記アセトン溶解液の一定量を上記エタノール溶解液と合わせることにより、脂肪酸エステル含有量が320mg/100gであるこんにゃく芋抽出物(被験試料(b))、及び750mg/100gであるこんにゃく芋抽出物(被験試料(c))を調製した。得られたこんにゃく芋抽出物から溶媒を減圧留去した後、得られた薄茶色のブロック状固体の水に対する溶解性を評価した。実施例2の水溶性こんにゃく芋抽出物(脂肪酸エステル含有量が29mg/100g;被験試料(a))についても合わせて評価した。
【0052】
70℃の温水に濃度が1g/1Lとなるように被験試料を入れて撹拌した後、得られた混合物を室温に戻るまで放置した。溶液の様子を撮影した写真図を図2に示す。図2に示すように、被験試料(a)及び被験試料(b)は水に溶解して沈殿がほとんど見られなかったのに対して、被験試料(c)は水にほとんど溶解せずに凝集した沈殿物が生じた。
【0053】
したがって、脂肪酸エステル含有量が750mg/100g未満であるこんにゃく芋抽出物は、水に溶解する水溶性こんにゃく芋抽出物であることがわかった。
【0054】
[実施例4]
アセトンの量を5倍量(50mL)及び20倍量(200mL)にしたこと以外は実施例2と同様にして水溶性こんにゃく芋抽出物を得ることを試みた。その結果、アセトンの量を5倍量及び20倍量にした場合でも、実施例2と同様にして水溶性こんにゃく芋抽出物を得ることができた。
図1
図2