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特開2024-154562ナトリウム冷却金属燃料高速炉用の燃料集合体、炉心、及び燃料集合体の製造方法
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  • 特開-ナトリウム冷却金属燃料高速炉用の燃料集合体、炉心、及び燃料集合体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154562
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】ナトリウム冷却金属燃料高速炉用の燃料集合体、炉心、及び燃料集合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G21C 3/328 20060101AFI20241024BHJP
   G21C 1/02 20060101ALI20241024BHJP
   G21C 5/18 20060101ALI20241024BHJP
   G21C 3/60 20060101ALI20241024BHJP
   G21C 21/02 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
G21C3/328 200
G21C1/02
G21C5/18
G21C3/60
G21C21/02 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068445
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】藤村 幸治
(72)【発明者】
【氏名】三輪 順一
(57)【要約】
【課題】炉心に装荷するMAの重量を従来に比べて増やして、より多くのMAを核変換することが可能なナトリウム冷却金属燃料高速炉用の燃料集合体、炉心、及び燃料集合体の製造方法を提供する。
【解決手段】内側炉心燃料集合体2、外側炉心燃料集合体3における上部軸方向ブランケット燃料204、下部軸方向ブランケット燃料205と径方向ブランケット燃料集合体4における径方向ブランケット燃料212とのうちいずれか一方以上が、炉心燃料203よりもPu富化度が低い低Pu富化度のU-Pu-MA-Zr合金であって、MA富化度及びPu富化度が0wt%<MA富化度≦Pu富化度の関係を満たす。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属燃料を用いるナトリウム冷却金属燃料高速炉用の燃料集合体のうち、炉心燃料集合体あるいは径方向ブランケット燃料集合体であって、
前記炉心燃料集合体における軸方向ブランケット燃料と前記径方向ブランケット燃料集合体におけるブランケット燃料とのうちいずれか一方以上が、炉心燃料よりもPu富化度が低い低Pu富化度のU-Pu-MA-Zr合金であって、MA富化度及びPu富化度が0wt%<MA富化度≦Pu富化度の関係を満たす
燃料集合体。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料集合体において、
前記軸方向ブランケット燃料と前記ブランケット燃料のうちいずれか一方以上の前記MA富化度及び前記Pu富化度が0wt%<MA富化度≦Pu富化度≦12wt%の関係を満たす
燃料集合体。
【請求項3】
請求項1に記載の燃料集合体において、
前記炉心燃料集合体のうち、内側炉心燃料集合体の軸方向中央領域に、前記U-Pu-MA-Zr合金であって、前記MA富化度及び前記Pu富化度が0wt%<MA富化度≦Pu富化度の関係を満たす内部ブランケット燃料を用いた
燃料集合体。
【請求項4】
請求項1に記載の燃料集合体が装荷されたナトリウム冷却金属燃料高速炉の炉心。
【請求項5】
金属燃料を用いるナトリウム冷却金属燃料高速炉用の燃料集合体の製造方法であって、
炉心燃料集合体における軸方向ブランケット燃料と径方向ブランケット燃料集合体におけるブランケット燃料とのうちいずれか一方以上を、
炉心燃料よりもPu富化度が低い低Pu富化度のU-Pu-MA-Zr合金であって、MA富化度とPu富化度が0wt%<MA富化度≦Pu富化度の関係を満たすように製造する
燃料集合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイナーアクチニド(MA)の核変換量を増大して、放射性廃棄物の有害度の低減と地層処分場の合理化に資するナトリウム冷却金属燃料高速炉用の燃料集合体、炉心、及び燃料集合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、マイナーアクチニド(MA)を含む金属燃料を燃料被覆管内に封入した燃料要素は、横断面中央部金属燃料と横断面中央部金属燃料の外周部を囲む外周部金属燃料からなる2層構造の燃料物質領域を有し、横断面中央部金属燃料は、マイナーアクチニド含有率の高い棒状燃料であり、外周部金属燃料はマイナーアクチニド含有率の低い又はマイナーアクチニドを含有しない粒子状又は円筒状の金属燃料であり、燃料要素は、多孔質の中間端栓と下部端栓との間に燃料被覆管の内面により画定されるガスプレナム領域を備える、ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-26372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、高速増殖炉では、原子炉容器内に炉心を配置しており、冷却材である液体ナトリウムを原子炉容器内に充填している。その炉心に装荷される燃料集合体は、プルトニウムを富化した劣化ウラン(U-238)を封入した複数の燃料棒、束ねられた複数の燃料棒を取り囲むラッパ管、これらの燃料棒の下端部及び燃料棒の下方に位置する中性子遮へい体を支持するエントランスノズル、及び燃料棒の上方に位置する冷却材流出部を有する。
【0005】
高速増殖炉の炉心は、内側炉心領域とこの内側炉心領域を取り囲む外側炉心領域とを有する炉心燃料領域、炉心燃料領域を取り囲むブランケット燃料領域、及びブランケット領域を取り囲む遮へい体領域を有する。
【0006】
標準的な均質炉心の場合、外側炉心領域に装荷される燃料集合体のPu富化度は、内側炉心領域に装荷される燃料集合体のPu富化度よりも高くなっている。この結果、炉心の半径方向における出力分布が平坦化される。
【0007】
燃料集合体の各燃料棒に収納される核燃料物質の形態としては、金属燃料、窒化物燃料及び酸化物燃料がある。これらのうち、酸化物燃料が最も実績が豊富である。Pu及び劣化ウランのそれぞれの酸化物を混合した混合酸化物燃料、すなわち、MOX(Mixed Oxide Fuel)燃料のペレットが燃料棒内で軸方向の中央部において80~100cm程度の高さに充填される。更に、燃料棒内には、劣化ウランで作られた複数の二酸化ウランペレットを充填した軸方向ブランケット領域が、MOX燃料の充填領域の鉛直方向上方及び下方にそれぞれ配置されている。
【0008】
内側炉心領域に装荷される内側炉心燃料集合体及び外側炉心領域に装荷される外側炉心燃料集合体は、MOX燃料の複数のペレットを充填した複数の燃料棒を有する。外側炉心燃料集合体のPu富化度は、内側炉心燃料集合体のそれよりも高くなっている。
【0009】
炉心燃料領域を取り囲むブランケット燃料領域には、劣化ウランで作られた複数の二酸化ウランペレットを充填した複数の燃料棒を有するブランケット燃料集合体が装荷される。
【0010】
炉心燃料領域に装荷された燃料集合体内で生じる核分裂反応で発生した中性子のうち、炉心燃料領域から漏れた中性子がブランケット燃料領域に装荷されたブランケット燃料集合体の各燃料棒内のU-238に吸収される。この結果、ブランケット燃料集合体の各燃料棒内で核分裂性核種であるPu-239が新たに生成される。
【0011】
高速増殖炉の起動時、停止時及び原子炉出力の調節時には、制御棒が用いられる。制御棒は、炭化ホウ素(BC)ペレットをステンレス製の被覆管に封入した複数の中性子吸収棒を有し、これらの中性子吸収棒を、内側炉心燃料集合体及び外側炉心燃料集合体と同様に横断面が正六角形をしたラッパ管に収納されて構成される。制御棒は、主炉停止系及び後備炉停止系の独立した2系統の構成となっており、主炉停止系及び後備炉停止系のいずれか一方のみで高速増殖炉の緊急停止が可能になる。
【0012】
さて、原子炉の使用済燃料の再処理で発生する高レベル放射性廃棄物(HLW:High Level Radioactive Waste)のうち、アメリシウム(Am)、キュリウム(Cm)等のマイナーアクチニド(MA:Minor Actinide)は長期間放射能を有している。
【0013】
このMAをHLWから分離回収して高速炉で核変換することによってHLWの有害度を減らし、かつ崩壊熱を数百年で減衰させることによって、地層処分場を合理化し、環境負荷低減を図る研究が行われている。このような技術の一例として、特許文献1に記載のような技術がある。
【0014】
ここで、ナトリウム冷却金属燃料高速炉を用いて軽水炉の使用済燃料の再処理で発生するHLWに含まれるMAを核変換して地層処分場の更なる合理化を実現するためには、ボイド反応度の制限内で炉心に装荷するMAを更に増加させて核変換量の増大を図ることが必要となる。
【0015】
本発明の目的は、炉心に装荷するMAの重量を従来に比べて増やして、より多くのMAを核変換することが可能なナトリウム冷却金属燃料高速炉用の燃料集合体、炉心、及び燃料集合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、金属燃料を用いるナトリウム冷却金属燃料高速炉用の燃料集合体のうち、炉心燃料集合体あるいは径方向ブランケット燃料集合体であって、前記炉心燃料集合体における軸方向ブランケット燃料と前記径方向ブランケット燃料集合体におけるブランケット燃料とのうちいずれか一方以上が、炉心燃料よりもPu富化度が低い低Pu富化度のU-Pu-MA-Zr合金であって、MA富化度及びPu富化度が0wt%<MA富化度≦Pu富化度の関係を満たす。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、炉心に装荷するMAの重量を従来に比べて増やして、より多くのMAを核変換することができる。上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例1の高速炉の炉心の水平断面図である。
図2】実施例1の高速炉の炉心燃料集合体の水平断面図である。
図3】実施例1の高速炉の径方向ブランケット燃料集合体の水平断面図である。
図4】実施例1の高速炉の炉心燃料集合体の縦断面図である。
図5】実施例1の高速炉の径方向ブランケット燃料集合体の縦断面図である。
図6】実施例1の高速炉における炉心の縦断面図である。
図7】実施例2の高速炉におけるPu富化度とMA富化度の関係を示す図である。
図8】実施例3の高速炉における炉心の縦断面図である。
図9】実施例3の高速炉の内側炉心燃料集合体の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明のナトリウム冷却金属燃料高速炉用の燃料集合体、炉心、及び燃料集合体の製造方法の実施例を、図面を用いて説明する。なお、本明細書で用いる図面において、同一のまたは対応する構成要素には同一、または類似の符号を付け、これらの構成要素については繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0020】
<実施例1>
本発明のナトリウム冷却金属燃料高速炉用の燃料集合体、炉心、及び燃料集合体の製造方法の実施例1について図1乃至図6を用いて説明する。
【0021】
最初に、ナトリウム冷却金属燃料高速炉の炉心の概要について図1を用いて説明する。図1は1/2炉心の水平断面を示す図である。
【0022】
図1に示すナトリウム冷却金属燃料高速炉の炉心1は、内側炉心燃料集合体2が装荷される内側炉心燃料領域と、この内側炉心燃料領域を取り囲む領域であり、外側炉心燃料集合体3が装荷される外側炉心燃料領域と、この外側炉心燃料領域を取り囲む領域であり、径方向ブランケット燃料集合体4が装荷される径方向ブランケット燃料領域と、更に径方向ブランケット燃料領域を取り囲む反射体集合体5と、炉心燃料領域に配置される制御棒集合体6と、から構成される。
【0023】
図2に本実施例における内側炉心燃料集合体2及び外側炉心燃料集合体3、図3に径方向ブランケット燃料集合体4のそれぞれ水平断面図をそれぞれ示す。
【0024】
図2に示す内側炉心燃料集合体2及び外側炉心燃料集合体3は、六角形状のステンレス鋼製のラッパ管9の内部にU-Pu-MA-Zr合金を内包する炉心燃料集合体燃料棒7を三角ピッチ稠密配置して構成される。
【0025】
ラッパ管9内側の炉心燃料集合体燃料棒7同士の間の領域は内側炉心燃料集合体2や外側炉心燃料集合体3の下方から上流に流れる冷却材ナトリウム10で満たされている。内側炉心燃料集合体2や外側炉心燃料集合体3同士のピッチは、例えば161.4mmで、炉心燃料集合体燃料棒7の被覆管の直径は7.4mm、内包する炉心燃料集合体燃料棒7の直径は5.5mmである。
【0026】
図では簡略化しているが、1体の内側炉心燃料集合体2や外側炉心燃料集合体3が備える炉心燃料集合体燃料棒7の本数は217本である。
【0027】
炉心燃料集合体の金属燃料U-Pu-MA-Zr合金のPu富化度は内側炉心燃料集合体2では20.8wt%、外側炉心燃料集合体3では25.0wt%である。MA富化度は、内側炉心燃料集合体2と外側炉心燃料集合体3のいずれも5wt%である。
【0028】
一方、図3に示す径方向ブランケット燃料集合体4の水平断面の仕様は、上記した内側炉心燃料集合体2や外側炉心燃料集合体3と略同じであるが、後述する様に、燃料の富化度と高さ方向の燃料構成が異なる。
【0029】
燃料集合体の高さ方向の構造を図4及び図5を用いて説明する。図4は炉心燃料集合体の縦断面図、図5は径方向ブランケット燃料集合体の縦断面図である。
【0030】
図4に示す、内側炉心燃料集合体2及び外側炉心燃料集合体3に装荷された燃料棒201は、円筒形状のU-Pu-MA-Zr合金が装荷される炉心燃料203と、低Pu富化度のU-Pu-MA-Zr合金が装荷される上部軸方向ブランケット燃料204、及び低Pu富化度のU-Pu-MA-Zr合金が装荷される下部軸方向ブランケット燃料205が、ステンレス製の円筒形状の燃料被覆管202の内部に液体状のボンドナトリウム207に浸漬された状態で収納され、気体状の核分裂生成物FPを保持するガスプレナム206がそれらの上部に形成され、上部端栓208と下部端栓209を溶接して封入されている。
【0031】
通常、MOX燃料炉心においてブランケット燃料領域にMAを装荷してMA核変換量を増大する場合、ブランケット燃料としてはUとMAとを混合した酸化物である(U,MA)Oが用いられるが、金属燃料の場合、UとMAのみを混合して安定な原子炉用の燃料を製造することができない。
【0032】
そこで、本実施例では、上記した内側炉心燃料集合体2、外側炉心燃料集合体3における上部軸方向ブランケット燃料204、下部軸方向ブランケット燃料205には、炉心燃料203よりもPu富化度が低い低Pu富化度のU-Pu-MA-Zr合金を用いる。更に、燃料製造上の観点から、MA富化度及びPu富化度が0wt%<MA富化度≦Pu富化度の関係を満足させる必要がある。
【0033】
例えば、炉心燃料203の縦方向の長さは1000mm、上部軸方向ブランケット燃料204及び下部軸方向ブランケット燃料205の縦方向の長さはいずれも200mmで、合計は1400mmである。
【0034】
これに対し、図3及び図5に示す、径方向ブランケット燃料集合体4の構造や寸法、径方向ブランケット燃料集合体燃料棒8の主な構造や寸法は、内側炉心燃料集合体2や外側炉心燃料集合体3と基本的にほぼ同じであるが、異なる点は以下である。
【0035】
図5に示す燃料棒211のうち、径方向ブランケット燃料212は、上記した上部軸方向ブランケット燃料204、下部軸方向ブランケット燃料205と同様に、炉心燃料203よりもPu富化度が低い低Pu富化度のU-Pu-MA-Zr合金を用いる。更に、燃料製造上の観点から、MA富化度及びPu富化度が0wt%<MA富化度≦Pu富化度の関係を満足させる必要がある。
【0036】
径方向ブランケット燃料212の縦方向の長さは、内側炉心燃料集合体2や外側炉心燃料集合体3の炉心燃料203、上部軸方向ブランケット燃料204、下部軸方向ブランケット燃料205料の合計の長さである1400mmである。
【0037】
例えば、図2の内側炉心燃料集合体2及び外側炉心燃料集合体3における上下の軸方向ブランケット燃料と、図3の径方向ブランケット燃料集合体4の径方向ブランケット燃料で用いるU-Pu-MA-Zr合金のMA富化度はいずれも10wt%であり、Pu富化度はいずれも13wt%である。
【0038】
図6に、炉心1の縦断面を示す。図6に示すように、内側及び外側炉心燃料領域は、内側炉心燃料領域32と外側炉心燃料領域33、上部軸方向ブランケット燃料領域34及び下部軸方向ブランケット燃料領域35より構成される。また、炉心燃料領域を取り囲む径方向ブランケット燃料領域36と、さらにそれを取り囲む反射体領域37と、から周辺側の外側炉心燃料領域は構成される。
【0039】
このうち、上部軸方向ブランケット燃料領域34、下部軸方向ブランケット燃料領域35、及び径方向ブランケット燃料領域36が、炉心燃料よりもPu富化度が低い低Pu富化度のU-Pu-MA-Zr合金を用いる。更に、燃料製造上の観点から、MA富化度及びPu富化度が0wt%<MA富化度≦Pu富化度の関係を満足させる必要がある。
【0040】
本実施例における金属燃料高速炉では、例えばその電気出力は311MWe、熱出力は840MWで、炉心燃料の取出平均燃焼度は約100GWd/tである。
【0041】
一般に、高速炉において、炉心燃料領域にMAが装荷されると、中性子スペクトルの硬化やMA核種の高速核分裂効果等によって、ボイド反応度が増加するが、炉心の周辺の軸方向ブランケット燃料領域及び径方向ブランケット燃料領域は、中性子の漏れが大きいので、ボイド反応度が負の領域である。
【0042】
従って、炉心燃料領域に加えて、上部軸方向ブランケット燃料204、下部軸方向ブランケット燃料205及び径方向ブランケット燃料212の各領域にもMAが装荷される本実施例のボイド反応度は、炉心燃料領域のみに富化度5wt%のMAを添加したU-Pu-MA-Zr合金が装荷される金属燃料炉心と同じ7ドルで、制限値より低い値である。
【0043】
MAの核変換量は、炉心燃料領域のみに富化度5wt%のMAを添加する場合の約80kg/GWe-Yに対して、本実施例の金属燃料炉心のMA核変換量は1.8倍の約140kg/GWe-Yに増大できる。
【0044】
表1に炉心燃料集合体の仕様を示す。
【0045】
【表1】
【0046】
次に、本実施例に係る金属燃料を用いるナトリウム冷却金属燃料高速炉用の内側炉心燃料集合体2、外側炉心燃料集合体3、径方向ブランケット燃料集合体4の製造方法について簡単に説明する。
【0047】
本実施例の燃料集合体の製造方法では、内側炉心燃料集合体2、外側炉心燃料集合体3における上部軸方向ブランケット燃料204、下部軸方向ブランケット燃料205と径方向ブランケット燃料集合体4における径方向ブランケット燃料212とのうちいずれか一方以上を、炉心燃料よりもPu富化度が低い低Pu富化度のU-Pu-MA-Zr合金であって、MA富化度とPu富化度が0wt%<MA富化度≦Pu富化度の関係を満たすように製造する、点に特徴があり、その他の構造、材料、及びその製造方法などについては、公知の手法が採用される。
【0048】
次に、本実施例の効果について説明する。
【0049】
上述した本発明の実施例1の金属燃料を用いるナトリウム冷却金属燃料高速炉用の内側炉心燃料集合体2、外側炉心燃料集合体3、径方向ブランケット燃料集合体4のうち、内側炉心燃料集合体2、外側炉心燃料集合体3における上部軸方向ブランケット燃料204、下部軸方向ブランケット燃料205と径方向ブランケット燃料集合体4における径方向ブランケット燃料212とのうちいずれか一方以上が、炉心燃料よりもPu富化度が低い低Pu富化度のU-Pu-MA-Zr合金であって、MA富化度及びPu富化度が0wt%<MA富化度≦Pu富化度の関係を満たす。
【0050】
これによって、炉心燃料のみにMAを添加する場合と比べて、ボイド反応度を増加させずにより多くのMAを装荷することができるため、従来に比べてMAの核変換量を増大することができる。
【0051】
<実施例2>
本発明の実施例2のナトリウム冷却金属燃料高速炉用の燃料集合体、炉心、及び燃料集合体の製造方法について図7を用いて説明する。
【0052】
本実施例では、上部軸方向ブランケット燃料204、下部軸方向ブランケット燃料205と径方向ブランケット燃料212に用いるU-Pu-MA-Zr合金のPu富化度及びMA富化度の値を除き、炉心及び燃料集合体の構成や寸法、炉出力などの仕様は、実施例1の高速炉と同じである。
【0053】
図7は、実施例1に示した金属燃料高速炉の炉心における、軸方向および径方向ブランケット燃料に用いるU-Pu-MA-Zr合金におけるPu富化度62とMA富化度63の関係を示す図である。
【0054】
図7中、直線64はPu富化度とMA富化度が同じとなる勾配が45°の直線を示す。U-Pu-MA-Zr合金が製造可能な領域は、MA富化度≦Pu富化度となる、直線64の下側の領域である。
【0055】
超ウラン元素TRUの燃料組成として、金属燃料炉心で多重リサイクルした場合の、下記の(1)式で示す燃料組成を想定し、国内における高速炉の標準的な核計算手法を用い、実績が豊富な核データライブラリJENDL-4.0に基づく高速炉用の核データセットを用いて、実施例1で示した、軸方向および径方向ブランケット領域において、Puの消費量よりも生成量が上回り、所謂、内部転換比が1を超えるためのPu富化度の条件を炉心解析で評価した。
【0056】
Pu238/Pu239/Pu240/Pu241/Pu242/Np237/Am241/Am243/Cm244/Cm245
= 1.1/ 66.0/ 25.2/ 2.4/ 2.4/ 0.4/ 1.6/ 0.5/ 0.4/ 0.1 wt% …(1)
その結果、Pu富化度が12wt%以下のときに内部転換比が1を超える事が分かった。
【0057】
従って、実施例1で示した金属燃料高速炉の炉心の増殖比が1を超えて、燃料増殖が可能となるためには、上記したU-Pu-MA-Zr合金の製造可能な領域と併せると、図7の範囲65に示す三角形の範囲、すなわち、Pu富化度とMA富化度が(2)式で示す関係を有する必要がある。
【0058】
0wt%<MA富化度≦Pu富化度≦12wt% … (2)
実施例1と同様に、内側炉心燃料のPu富化度が20.8wt%、外側炉心燃料のPu富化度が25.0wt%で、いずれもMA富化度が5wt%の時に、炉心燃料集合体の上部および下部軸方向ブランケット燃料と径方向ブランケット燃料集合体の径方向ブランケット燃料のU-Pu-MA-Zr合金において、式(2)の条件を満たす、MA富化度が炉心燃料と同じ5wt%で、Pu富化も同じ5wt%の場合、MA核変換量は96kg/GWe-Yで、炉心燃料領域のみに富化度5wt%のMAを添加した場合の約1.2倍まで低下するが、炉心の増殖比は1を超え、燃料増殖が可能となる。
【0059】
その他の構成・動作は前述した実施例1のナトリウム冷却金属燃料高速炉用の燃料集合体、炉心、及び燃料集合体の製造方法と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0060】
本発明の実施例2のナトリウム冷却金属燃料高速炉用の燃料集合体、炉心、及び燃料集合体の製造方法においても、前述した実施例1のナトリウム冷却金属燃料高速炉用の燃料集合体、炉心、及び燃料集合体の製造方法とほぼ同様な効果が得られる。
【0061】
<実施例3>
本発明の実施例3のナトリウム冷却金属燃料高速炉用の燃料集合体、炉心、及び燃料集合体の製造方法について図8及び図9を用いて説明する。図8は本実施例の炉心の縦断面を示す図、図9は内側炉心燃料集合体の縦断面を示す図である。
【0062】
図8に示す本実施例の炉心と、図6に示した実施例1の金属燃料高速炉の炉心との違いは、内側炉心燃料集合体2Aの高さ方向中央領域に、内部ブランケット燃料領域44を配置した、軸方向で非均質な炉心の構成である点である。その他の上部内側炉心燃料領域42や下部内側炉心燃料領域43は内側炉心燃料領域32と略同じである。
【0063】
図9に示すように、内側炉心燃料集合体2Aの燃料棒52は、円筒形状のU-Pu-MA-Zr合金が装荷される上部炉心燃料53と下部炉心燃料54、それらの間の低Pu富化度のU-Pu-MA-Zr合金が装荷される内部ブランケット燃料55、上部軸方向ブランケット燃料204、及び下部軸方向ブランケット燃料205が、ステンレス製の円筒形状の燃料被覆管202の内部に液体状のボンドナトリウム207に浸漬された状態で収納され、気体状の核分裂生成物FPを保持するガスプレナム206がそれらの上部に形成され、上部端栓208と下部端栓209を溶接して封入されている。
【0064】
上部軸方向ブランケット燃料204及び下部軸方向ブランケット燃料205で用いるU-Pu-MA-Zr合金のMA富化度は、実施例1と同様にいずれも10wt%であり、Pu富化度はいずれも13wt%である。
【0065】
また、内部ブランケット燃料55は、U-Pu-MA-Zr合金であって、MA富化度及びPu富化度が0wt%<MA富化度≦Pu富化度の関係を満たすものであるが、例えば、低Pu富化度のU-Pu-MA-Zr合金を用い、Pu富化度とMA富化度は同じ5wt%であり、縦方向の長さは200mmである。上部炉心燃料53及び下部炉心燃料54はPu富化度25.0wt%、MA富化度5wt%のU-Pu-MA-Zr合金であり、縦方向の高さはいずれも400mmである。
【0066】
その他の構成・動作は前述した実施例1のナトリウム冷却金属燃料高速炉用の燃料集合体、炉心、及び燃料集合体の製造方法と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0067】
本発明の実施例3のナトリウム冷却金属燃料高速炉用の燃料集合体、炉心、及び燃料集合体の製造方法においても、前述した実施例1のナトリウム冷却金属燃料高速炉用の燃料集合体、炉心、及び燃料集合体の製造方法とほぼ同様な効果が得られる。
【0068】
また、内側炉心燃料集合体2Aの軸方向中央領域に、U-Pu-MA-Zr合金であって、MA富化度及びPu富化度が0wt%<MA富化度≦Pu富化度の関係を満たす内部ブランケット燃料55を用いたことにより、炉心に装荷されるMAの装荷量が変わらないため、MA核変換量は実施例1と同じであるが、内側炉心燃料の軸方向中央に、Pu富化度が5wt%と低い内部ブランケット燃料が配置されているため、実施例1の金属燃料高速炉の炉心と比べると、軸方向の出力ピーキング及び最高燃焼度が抑制され、燃料の健全性に対する余裕が増大し、また燃焼反応度が約20%低減するため、スクラム失敗制御棒誤引抜事象(UTOP:Unprotected Transient Over Power)時の安全余裕が増大する。
【0069】
<その他>
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0070】
また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【0071】
例えば、以上の実施例では、冷却材をナトリウムとしていたが、鉛や鉛-ビスマスとしても同様の効果が達成できる。
【0072】
また、燃料を金属燃料としたが、MOX燃料または窒化物燃料としても同様の効果が得られる。
【0073】
さらに、上記のそれぞれの冷却材とそれぞれの燃料の任意の組合せに対しても同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0074】
1…炉心
2,2A…内側炉心燃料集合体
3…外側炉心燃料集合体
4…径方向ブランケット燃料集合体
5…反射体集合体
6…制御棒集合体
7…炉心燃料集合体燃料棒
8…径方向ブランケット燃料集合体燃料棒
9…ラッパ管
10…冷却材ナトリウム
32…内側炉心燃料領域
33…外側炉心燃料領域
34…上部軸方向ブランケット燃料領域
35…下部軸方向ブランケット燃料領域
36…径方向ブランケット燃料領域
37…反射体領域
42…上部内側炉心燃料領域
43…下部内側炉心燃料領域
44…内部ブランケット燃料領域
52…燃料棒
53…上部炉心燃料
54…下部炉心燃料
55…内部ブランケット燃料
62…Pu富化度
63…MA富化度
64…Pu富化度がMA富化度と同じとなる直線
65…MA含有金属燃料の製造可能で燃料増殖が可能となる範囲を示す領域
201…燃料棒
202…燃料被覆管
203…炉心燃料
204…上部軸方向ブランケット燃料
205…下部軸方向ブランケット燃料
206…ガスプレナム
207…ボンドナトリウム
208…上部端栓
209…下部端栓
211…燃料棒
212…径方向ブランケット燃料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9