(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154564
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】ネスティング装置、及びネスティング方法
(51)【国際特許分類】
G05B 19/4093 20060101AFI20241024BHJP
B23K 26/38 20140101ALN20241024BHJP
【FI】
G05B19/4093 J
B23K26/38 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068451
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(72)【発明者】
【氏名】玉村 仁
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 伸二
【テーマコード(参考)】
3C269
4E168
【Fターム(参考)】
3C269AB09
3C269AB11
3C269BB08
3C269CC01
3C269EF59
3C269PP02
3C269QA06
3C269QB02
4E168AD07
4E168EA17
4E168FB01
4E168HA05
4E168HA06
(57)【要約】
【課題】切断線を共通化させる場合においても、安定した加工を実現させるとともに、加工時間の増大を抑制させること。
【解決手段】ネスティング装置は、板材と、複数の部品との寸法を示す寸法データを取得する取得部と、寸法データをもとに複数の部品について隙間を空けずに板材に配置する際、輪郭部に孔部が生じることを条件として、孔部を構成する対象の部品同士については隙間を空けて配置する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板材に複数の部品を配置するネスティング装置であって、
前記板材と、前記複数の部品との寸法を示す寸法データを取得する取得部と、
前記寸法データをもとに前記複数の部品について隙間を空けずに前記板材に配置する際、輪郭部に孔部が生じることを条件として、前記孔部を構成する対象の部品同士については隙間を空けて配置するネスティング部と、
を有するネスティング装置。
【請求項2】
前記ネスティング部は、所定形状の前記孔部については前記条件から除外する、請求項1に記載のネスティング装置。
【請求項3】
前記ネスティング部は、所定面積未満の前記孔部については前記条件から除外する、請求項1又は請求項2に記載のネスティング装置。
【請求項4】
前記ネスティング部は、前記板材の枠外に前記部品が配置される場合、警告を出力する、請求項1又は請求項2に記載のネスティング装置。
【請求項5】
前記ネスティング部は、前記板材の枠外に前記部品が配置される場合、警告を出力する、請求項3に記載のネスティング装置。
【請求項6】
前記ネスティング部は、配置変更の指示をもとに前記部品を再配置する、請求項1又は請求項2に記載のネスティング装置。
【請求項7】
前記ネスティング部は、配置変更の指示をもとに前記部品を再配置する、請求項3に記載のネスティング装置。
【請求項8】
前記ネスティング部は、配置変更の指示をもとに前記部品を再配置する、請求項4に記載のネスティング装置。
【請求項9】
前記ネスティング部は、配置変更の指示をもとに前記部品を再配置する、請求項5に記載のネスティング装置。
【請求項10】
板材に複数の部品を配置するネスティング方法であって、
前記板材と、前記複数の部品との寸法を示す寸法データを取得することと、
前記寸法データをもとに前記複数の部品について隙間を空けずに前記板材に配置する際、輪郭部に孔部が生じることを条件として、前記孔部を構成する対象の部品同士については隙間を空けて配置することと、
を含むネスティング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネスティング装置、及びネスティング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
板金加工では、1枚の板を切断して複数の部品を取得するために、1枚の板に複数の部品を配置するネスティングが実施される。ネスティングにおいては、どのように部品を配置するかが重要であり、1枚の板を有効活用して歩留まり率を向上させることが求められる。歩留まり率の向上は、例えば、複数の部品について隙間を空けずに配置し、加工装置による切断時に、部品間で接する箇所を共通の切断線として加工させることにより実現する。このような切断線の共通化に対して、特許文献1では、板金の剛性低下による加工精度の低下を抑制するために、部品の大きさに基づいて切断線(切断線に沿って生じる切り取り代)の共通化を部分的に行わない技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
加工装置では、剣山によって支えられた板に対し、切断線に基づく加工が実施される場合がある。但し、加工装置では、切断線の共通化に伴って配置される部品に切り欠き等による孔部が含まれる場合、孔部の箇所の加工についてはスラグとして剣山の間から落とすための細断が実施される。このため、切断線の共通化は、発生する孔部の細断によりスラグ処理を要するため加工時間が増大する可能性があり、また、スラグが剣山にひっかかってしまう不具合が生じる可能性がある。特許文献1は、部品の大きさに基づいて切断線の共通化を部分的に行わない技術に過ぎず、切断線の共通化に伴って配置される部品に孔部が含まれる場合、同様に、加工時間が増大してしまう可能性があるし、スラグが剣山にひっかかってしまう可能性がある。
【0005】
本発明は、切断線を共通化させる場合においても、安定した加工を実現させるとともに、加工時間の増大を抑制させることができるネスティング装置、及びネスティング方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に係るネスティング装置は、板材に複数の部品を配置するネスティング装置であって、板材と、複数の部品との寸法を示す寸法データを取得する取得部と、寸法データをもとに複数の部品について隙間を空けずに板材に配置する際、輪郭部に孔部が生じることを条件として、孔部を構成する対象の部品同士については隙間を空けて配置するネスティング部と、を有する。
【0007】
本発明の態様に係るネスティング方法は、板材に複数の部品を配置するネスティング方法であって、板材と、複数の部品との寸法を示す寸法データを取得することと、寸法データをもとに複数の部品について隙間を空けずに板材に配置する際、輪郭部に孔部が生じることを条件として、孔部を構成する対象の部品同士については隙間を空けて配置することと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明の態様に係るネスティング装置、及びネスティング方法によれば、加工装置による孔部に対する細断処理を削減することで、スラグが剣山等にひっかかることを抑制するので、安定した加工を実現させるとともに、加工時間の増大を抑制させることができる。
【0009】
また、上記態様のネスティング装置において、ネスティング部が、所定形状の孔部については条件から除外してもよい。この態様によれば、予め決定された所定形状の孔部については条件から除外するので、部品を再配置する等のユーザによる操作の手間を削減することができる。また、上記態様のネスティング装置において、ネスティング部が、所定面積未満の孔部については条件から除外してもよい。この態様によれば、剣山等にひっかかることがない孔部に対する細断処理を省略するので、加工時間の増大を抑制させることができる。また、上記態様のネスティング装置において、ネスティング部が、板材の枠外に部品が配置される場合、警告を出力してもよい。この態様によれば、ネスティング結果に応じた加工が困難になってしまうことを抑制することができる。また、上記態様のネスティング装置において、ネスティング部が、配置変更の指示をもとに部品を再配置してもよい。この態様によれば、加工時間をより短縮する部品の再配置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係るネスティング装置の機能構成の例を示すブロック図である。
【
図2】第1実施形態に係る加工装置の例を示す図である。
【
図3】第1実施形態に係るネスティングの例を説明する図である。
【
図4】第1実施形態に係るネスティングの例を説明する図である。
【
図5】第1実施形態に係るネスティングの例を説明する図である。
【
図6】第1実施形態に係るネスティングの例を説明する図である。
【
図7】第1実施形態に係るネスティングの例を説明する図である。
【
図8】第1実施形態に係るネスティングの例を説明する図である。
【
図9】第1実施形態に係るネスティング処理の流れの例を示すフローチャートである。
【
図10】第2実施形態に係るネスティング装置の機能構成の例を示すブロック図である。
【
図11】第2実施形態に係る部品の再配置の例を説明する図である。
【
図12】第2実施形態に係る部品の再配置の例を説明する図である。
【
図13】第2実施形態に係る警告出力処理の例を示すフローチャートである。
【
図14】第2実施形態に係る再配置処理の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。本発明は、以下で説明する形態に限定されない。図面では、実施形態を説明するために、一部分を拡大、縮小、又は強調して記載する等、縮尺を適宜変更して表現される場合がある。XYZ直交座標系では、水平方向をX方向、Y方向とし、鉛直方向をZ方向とする。X方向、Y方向、及びZ方向のそれぞれは、図中の矢印の指す方向が+方向であり、矢印の指す方向とは反対の方向が-方向であるとして説明する。
【0012】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係るネスティング装置の機能構成の例を示すブロック図である。
図1に示すように、ネスティング装置100は、取得部110と、ネスティング部120と、生成部130とを有する。ネスティング装置100には、入力装置11と、表示装置12とが接続される。入力装置11は、マウスやキーボード等の入力デバイスであり、操作入力された情報を信号として受け付けて、ネスティング装置100に出力する。表示装置12は、液晶ディスプレイ等の表示出力装置であり、入力装置11等からの指令に応じて各種情報を表示出力する。なお、入力装置11と表示装置12とは、これらが一体に構成されたタッチパネル等で実現されてもよい。
【0013】
ネスティング装置100は、CAM(Computer-Aided Manufacturing)等であり、入力データ20をもとに板材に複数の部品を配置するネスティングを行い、加工装置30において加工を開始する座標の指示や加工を行う際の座標の移動の指示、加工の速度の設定等を含むNCデータを生成し、加工装置30に出力する。入力データ20は、板材と、板材に配置される複数の部品との寸法を示す寸法データを含む。例えば、入力データ20の一部は、CAD(Computer-Aided Design)等の設計装置から取得される。加工装置30は、レーザ加工機やパンチプレス等の加工装置であり、ネスティング装置100から取得したNCデータをもとに板材に切断加工を施す。
【0014】
ここで、
図2を用いて、第1実施形態に係る加工装置30の例を説明する。
図2は、第1実施形態に係る加工装置30の例を示す図である。上述したように、加工装置30はレーザ加工機やパンチプレス等の加工装置であるが、
図2ではレーザ加工機を例に挙げて説明する。
【0015】
図2に示すように、レーザ加工機としての加工装置30は、レーザ光Lを出射して板状のワークWを切断加工する。加工装置30は、板状のワークWを支持する加工パレット50を有する。加工パレット50は、板状のワークWを載置して該ワークWを加工装置30内の加工領域に配置する。加工パレット50は、例えば、図示しない駆動装置により、板状のワークWを載置した状態でX方向等に移動可能であってもよい。加工パレット50は、支持プレート52を有する。支持プレート52は、加工パレット50に複数並んだ状態で設けられ、板状のワークWの下面(-Z側の面)Wbを支持する。各支持プレート52は、鋸歯状に形成された複数の上端部52aを有し、各上端部52aの高さが同一となるように形成される。
【0016】
複数の上端部52aには、板状のワークWが載置される。上端部52aが鋸歯状に形成されるため、上端部52aと板状のワークWとの間の接触面積が小さくなる。なお、上端部52aは、鋸歯状とされることに限定されず、例えば、剣山状や波形状とされてもよい。板状のワークWは、支持プレート52に載置された状態で切断加工され、細断されたスラグは、複数の支持プレート52間の隙間を介してスラグ排出部60に落下して板状のワークWから除去される。なお、本実施形態において、加工パレット50を用いるか否かは任意である。例えば、加工パレット50に代えて、加工装置30内の加工領域に剣山状等のワーク載置部が設けられてもよい。
【0017】
加工装置30は、レーザヘッド31を備える。レーザヘッド31は、板状のワークWに対して上面Wa側からレーザ光Lを照射して、板状のワークWを切断加工する。レーザヘッド31は、ヘッド本体32と、ノズル33とを有する。ヘッド本体32は、加工装置30内の加工領域に載置された板状のワークWの上方に配置され、X方向、Y方向、及びZ方向に移動可能である。ヘッド本体32は、板状のワークWに対して相対的に移動してもよい。また、板状のワークWに対してヘッド本体32が移動することに限定されず、例えば、ヘッド本体32に対して板状のワークWが移動する構成であってもよいし、ヘッド本体32及び板状のワークWの双方が移動する構成であってもよい。
【0018】
ノズル33は、ヘッド本体32の-Z側(下方側)に取り付けられる。ノズル33は、-Z方向(下方)に向けられており、ヘッド本体32からのレーザ光Lを-Z方向に向けて射出する。また、ノズル33は、ガス供給管等を介して、レーザ光Lを照射する領域に向けてアシストガスGを板状のワークWに供給する。
【0019】
レーザヘッド31は、光ファイバ34等の光伝送体を介してレーザ光源に接続される。レーザ光源としては、例えば、炭酸ガスレーザ光源又は固体レーザ光源等が用いられる。レーザヘッド31は、図示しない照射光学系を備え、レーザ発振器からのレーザ光Lを照射光学系によって集束して、ノズル33から出射する。レーザヘッド31は、板状のワークW上に所定径のスポットLSを形成するようにレーザ光Lを照射する。スポットLSの径は、例えば、照射光学系の光学素子の一部を移動させることにより調整可能である。
【0020】
図1の説明に戻り、取得部110は、板材と、板材に配置する複数の部品との寸法を示す寸法データを取得する。具体的には、取得部110は、入力装置11からの指令等をもとに、CAD等の設計装置から、板材と、板材に配置する複数の部品との寸法を示す寸法データ等を含む入力データ20を取得する。例えば、寸法データは、板材の素材や厚みや大きさや形状、各部品の大きさや形状を認識できるデータを指す。
【0021】
ネスティング部120は、寸法データをもとに複数の部品について隙間を空けずに板材に配置する。このとき、ネスティング部120は、部品の輪郭部に孔部が生じることを条件として、孔部を構成する対象の部品同士については隙間を空けて板材に配置する。ここで、
図3から
図5を用いて、第1実施形態に係るネスティングの例を説明する。
図3から
図5は、第1実施形態に係るネスティングの例を説明する図である。
【0022】
図3に示すように、ネスティング部120は、複数の部品70(部品70a~部品70hの8つ)について隙間を空けずに板材(ワークW)に配置する。この状況において、
図4に示すように、板材(ワークW)には、表面から裏面まで突き抜けて空いている空所である孔部80、孔部90が含まれる。孔部80a及び孔部80bは、部品70aの輪郭部Wcではない箇所に存在する。孔部80c及び孔部80dは、部品70bの輪郭部Wcではない箇所に存在する。各孔部80は、加工装置30によって細断等が元からなされる性質を有する。なお、各孔部80は、複数の支持プレート52間の隙間を介してスラグ排出部60に落下する大きさや形状であれば、加工装置30による細断を要しない。輪郭部Wcとは、各部品70の外枠に相当し、加工装置30による切断の際には切断線となり得る。
【0023】
これに対して、孔部90(孔部90a~孔部90r)は、複数の部品70について隙間を空けずに板材(ワークW)に配置することによって生じる。すなわち、各孔部90は、加工装置30によって細断等が元からなされる性質を有しない。各孔部90は、一つの態様として、部品70において切り欠き形状となる場合がある。ネスティング部120は、輪郭部Wcに孔部90が生じることを条件として、孔部90を構成する対象の部品70同士については隙間を空けて板材(ワークW)に配置するネスティングを実施する。
【0024】
図4及び
図5に示すように、ネスティング部120は、部品70bと部品70cとの輪郭部Wcに孔部90(例えば、孔部90a)が生じることから、該孔部90を構成する対象の部品70bと部品70cとについては隙間を空けて板材(ワークW)に配置する。同様に、ネスティング部120は、部品70cと部品70dとの輪郭部Wcに孔部90(例えば、孔部90j)が生じることから、該孔部90を構成する対象の部品70cと部品70dとについては隙間を空けて板材(ワークW)に配置する。また、ネスティング部120は、部品70dと部品70eとの輪郭部Wcに孔部90(例えば、孔部90q)が生じることから、該孔部90を構成する対象の部品70dと部品70eとについては隙間を空けて板材(ワークW)に配置する。
【0025】
また、ネスティング部120は、部品70bと部品70fとの輪郭部Wcに孔部90(例えば、孔部90d)が生じることから、該孔部90を構成する対象の部品70bと部品70fとについては隙間を空けて板材(ワークW)に配置する。また、ネスティング部120は、部品70fと部品70gとの輪郭部Wcに孔部90(例えば、孔部90i)が生じることから、該孔部90を構成する対象の部品70fと部品70gとについては隙間を空けて板材(ワークW)に配置する。また、ネスティング部120は、部品70gと部品70hとの輪郭部Wcに孔部90(例えば、孔部90p)が生じることから、該孔部90を構成する対象の部品70gと部品70hとについては隙間を空けて板材(ワークW)に配置する。
【0026】
また、ネスティング部120は、部品70cと部品70fとの輪郭部Wcに孔部90(例えば、孔部90g)が生じることから、該孔部90を構成する対象の部品70cと部品70fについては隙間を空けて板材(ワークW)に配置する。また、ネスティング部120は、部品70dと部品70gとの輪郭部Wcに孔部90(例えば、孔部90n)が生じることから、該孔部90を構成する対象の部品70dと部品70gとについては隙間を空けて板材(ワークW)に配置する。なお、ネスティング部120は、輪郭部Wcに生じる孔部90の全てを確認することを要しない。例えば、部品70bの輪郭部Wcに生じる孔部90aと孔部90bとは、何れも部品70cの輪郭部Wcにも生じる孔部90である。このため、ネスティング部120は、孔部90aが条件を満たすことを確認した時点で、部品70bと部品70cとを対象の部品70として隙間を空けて板材(ワークW)に配置することが確定するため、(部品70cの輪郭部Wcにも生じる)孔部90bについては確認しなくてもよい。さらに、ネスティング部120は、部品70cについて、輪郭部Wcに生じる孔部90aと孔部90bについては、既に部品70bの輪郭部Wcに生じる孔部90の条件で確認済みであるため、確認しなくてもよい。
【0027】
これらにより、
図5に示すように、ネスティング装置100は、孔部90を構成する対象の部品70同士については隙間を空けて配置するネスティングを実施する。また、ネスティング結果は、表示装置12に表示出力されてもよい。ネスティング装置100によるネスティングにより空けられた隙間の部分は、板材(ワークW)における共通の桟(スケルトン)として除去される。このため、ネスティング装置100は、孔部90の細断を要しない加工装置30による加工を実現するので、安定した加工を実現させるとともに、加工時間の増大を抑制させることができる。
【0028】
次に、
図6から
図8を用いて、第1実施形態に係るネスティングの他の例を説明する。
図6から
図8は、第1実施形態に係るネスティングの例を説明する図である。
【0029】
図6に示すように、ネスティング部120は、複数の部品70(部品70i~部品70pの8つ)について隙間を空けずに板材(ワークW)に配置する。この状況において、
図7に示すように、板材(ワークW)には、孔部90(孔部90s~孔部90uの3つ)が含まれる。孔部90s、孔部90t、及び孔部90uは、複数の部品70について隙間を空けずに板材(ワークW)に配置することによって生じる。このように、部品70の輪郭部Wcに生じる孔部90は、部品70において切り欠き形状とならない場合もある。かかる場合においても、ネスティング部120は、輪郭部Wcに孔部90が生じることを条件として、孔部90を構成する対象の部品70同士については隙間を空けて板材(ワークW)に配置するネスティングを実施する。
【0030】
図7及び
図8に示すように、ネスティング部120は、部品70i、部品70j、部品70m、及び部品70nの輪郭部Wcに孔部90sが生じることから、該孔部90sを構成する対象の部品70i、部品70j、部品70m、及び部品70nについては隙間を空けて板材(ワークW)に配置する。同様に、ネスティング部120は、部品70j、部品70k、部品70n、及び部品70oの輪郭部Wcに孔部90tが生じることから、該孔部90tを構成する対象の部品70j、部品70k、部品70n、及び部品70oについては隙間を空けて板材(ワークW)に配置する。また、ネスティング部120は、部品70k、部品70l、部品70o、及び部品70pの輪郭部Wcに孔部90uが生じることから、該孔部90uを構成する対象の部品70k、部品70l、部品70o、及び部品70pについては隙間を空けて板材(ワークW)に配置する。
【0031】
これらにより、
図8に示すように、ネスティング装置100は、孔部90を構成する対象の部品70同士については隙間を空けて配置するネスティングを実施する。また、ネスティング結果は、表示装置12に表示出力されてもよい。ネスティング装置100によるネスティングにより開けられた隙間の部分は、板材(ワークW)における共通の桟(スケルトン)として除去される。このため、ネスティング装置100は、孔部90の細断を要しない加工装置30による加工を実現するので、安定した加工を実現させるとともに、加工時間の増大を抑制させることができる。
【0032】
また、部品70の輪郭部Wcに孔部90が生じるという条件については、除外する対象が設けられてもよい。ネスティング部120は、所定形状の孔部については条件から除外してもよい。例えば、ユーザの運用によっては所定形状の孔部90であれば条件から除外したいといった要求がある。このために、ユーザは、入力装置11等を用いて、所定形状の孔部90を予め登録する。これにより、ネスティング部120は、予め登録された所定形状の孔部90に関する情報を確認して、該当する孔部90が含まれる場合に条件から除外しつつ、ネスティング処理を実行する。
【0033】
また、ネスティング部120は、所定面積未満の孔部については条件から除外してもよい。例えば、加工装置30による加工において、複数の支持プレート52間の隙間を介してスラグ排出部60に落下させられるのであれば、孔部90が生じていても細断を要しない。よって、ネスティング部120は、所定面積未満の孔部90が含まれる場合に条件から除外しつつ、ネスティング処理を実行する。なお、所定面積は、支持プレート52の構成に応じて決定される。また、条件から除外する対象は、これらの何れか又は双方が適用されてもよい。
【0034】
図1の説明に戻り、生成部130は、NCデータを生成する。具体的には、生成部130は、ネスティング部120からのネスティング結果をもとに、加工装置30で実行可能な形式のNCデータを生成する。ネスティング装置100は、生成されたNCデータを加工装置30に送信する。これらにより、加工装置30は、ネスティング装置100から取得したNCデータをもとに板材(ワークW)に切断加工を施す。
【0035】
図9は、第1実施形態に係るネスティング処理の流れの例を示すフローチャートである。
図9に示すように、取得部110は、寸法データを取得する(ステップS101)。具体的には、取得部110は、入力装置11からの指令等をもとに、CAD等の設計装置から、板材(ワークW)と、板材(ワークW)に配置する複数の部品70との寸法を示す寸法データ等を含む入力データ20を取得する。
【0036】
ネスティング部120は、寸法データをもとに複数の部品について隙間を空けずに配置する(ステップS102)。具体的には、ネスティング部120は、取得部110によって取得された寸法データをもとに、複数の部品70について隙間を空けずに板材(ワークW)に配置する。このとき、ネスティング部120は、輪郭部に孔部が生じる場合に(ステップS103:YES)、対象の部品同士については隙間を空けて配置する(ステップS104)。具体的には、ネスティング部120は、輪郭部Wcに孔部90が生じることを条件として、孔部90を構成する対象の部品70同士については隙間を空けて板材(ワークW)に配置するネスティングを実施する。また、ネスティング部120は、輪郭部に孔部が生じない場合に(ステップS103:NO)、処理を終了する。具体的には、ネスティング部120は、輪郭部Wcに孔部90が生じる条件を満たさなければ、そのまま処理を終了する。
【0037】
上述したように、ネスティング装置100は、輪郭部Wcに孔部90が生じることを条件として、孔部90を構成する対象の部品70同士については隙間を空けて板材(ワークW)に配置するネスティングを実現するので、加工装置30による孔部90に対する細断処理を削減するとともに、スラグ等が剣山等にひっかかることを抑制するので、安定した加工を実現させるとともに、加工時間の増大を抑制させることができる。また、ネスティング装置100は、所定形状の孔部90については条件から除外するので、部品70を再配置する等のユーザによる操作の手間を削減することができる。また、ネスティング装置100は、所定面積未満の孔部90については条件から除外するので、剣山等にひっかかることがない孔部90に対する細断処理を省略することができ、加工時間の増大を抑制させることができる。
【0038】
[第2実施形態]
第2実施形態では、上述した実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、同様の構成についての詳細な説明を省略する場合がある。
【0039】
図10は、第2実施形態に係るネスティング装置の機能構成の例を示すブロック図である。
図10に示すように、ネスティング装置100aは、取得部110と、ネスティング部120aと、生成部130とを有する。
【0040】
ネスティング部120aは、板材の枠外に部品が配置される場合、警告を出力する。上記実施形態で説明したように、ネスティング部120aは、輪郭部Wcに孔部90が生じることを条件として、孔部90を構成する対象の部品70同士については隙間を空けて板材(ワークW)に配置する。隙間の空け具合は、板材(ワークW)の大きさや種類等によって予め決定されればよい。ここで、例えば、板材(ワークW)や部品70の大きさ、板材(ワークW)への部品70の配置の程度によっては、隙間を空けることで板材(ワークW)に部品70が収まりきらない場合が発生し得る。このため、ネスティング部120aは、板材(ワークW)の枠外に部品70が配置される場合、表示装置12等を介して警告を出力する。ユーザは、出力された警告をもとに、表示装置12に表示されたネスティング結果を確認し、入力装置11を用いて部品70を再配置する操作を行う。
【0041】
また、ネスティング部120aは、配置変更の指示をもとに部品を再配置する。例えば、ユーザは、表示装置12に表示されたネスティング結果を確認し、部品を再配置したい場合に、入力装置11を用いて部品70を再配置することができる。これにより、ネスティング部120aは、入力装置11を介して配置変更の指示を受け付けた場合に、板材(ワークW)に配置された部品70の再配置を実行する。なお、部品70の再配置は、警告が出力されたときに実施されることに限定されず、任意のタイミングで実施することができる。
【0042】
図11及び
図12は、第2実施形態に係る部品の再配置の例を説明する図である。
図11及び
図12は、
図8に示したネスティング結果に対して部品を再配置した例である。
図8に示したネスティング結果は、各部品70について隙間が設けられた状況となっている。各部品70について隙間を設けるネスティング処理が実施される場合、部品70が板材(ワークW)の枠外に配置されてしまう可能性がある。また、各部品70について隙間を設けるネスティング処理が実施される場合、加工装置30による加工時間をより短縮できる可能性がある。
【0043】
図11及び
図12に示すように、ネスティング部120aは、入力装置11を介して配置変更の指示を受け付けた場合に、板材(ワークW)に配置された部品70の再配置を実行する。
図11では、部品70i及び部品70j、部品70j及び部品70k、部品70k及び部品70l、部品70m及び部品70n、部品70n及び部品70o、部品70o及び部品70pのそれぞれについて、隙間を空けずに配置されている。
図12では、部品70i及び部品70m、部品70j及び部品70n、部品70k及び部品70o、部品70l及び部品70pのそれぞれについて、隙間を空けずに配置されている。これにより、隙間を空けずに配置された箇所については共通して切断することとなるため、加工時間をより短縮することが可能となる。また、板材(ワークW)のスペースに他の部品を配置できるようになる可能性もある。
【0044】
図13は、第2実施形態に係る警告出力処理の例を示すフローチャートである。
図13に示すように、ネスティング部120aは、輪郭部に孔部が生じることで(ステップS103:YES)、対象の部品同士については隙間を空けて板材に配置した後(ステップS104)、板材の枠外に部品が配置されたかを判定する(ステップS201)。このとき、ネスティング部120aは、板材の枠外に部品が配置されている場合に(ステップS201:YES)、警告を出力する(ステップS202)。一方、ネスティング部120aは、板材の枠外に部品が配置されていない場合に(ステップS201:NO)、処理を終了する。具体的には、ネスティング部120aは、輪郭部Wcに孔部90が生じることを条件として、孔部90を構成する対象の部品70同士については隙間を空けて板材(ワークW)に配置するネスティングを実施する。このとき、ネスティング部120aは、板材(ワークW)の枠外に部品70が配置されている場合、表示装置12等を介して警告を出力する。これにより、ユーザは、出力された警告をもとに、表示装置12に表示されたネスティング結果を確認し、入力装置11を用いて部品70を再配置する操作を行える。一方、ネスティング部120aは、板材(ワークW)の枠外に部品70が配置されていなければ、警告等を出力することなく処理を終了する。
【0045】
図14は、第2実施形態に係る再配置処理の例を示すフローチャートである。
図14に示すように、ネスティング部120aは、配置を変更する指示を受け付けた場合に(ステップS301:YES)、受け付けた指示に従って再配置する(ステップS302)。一方、ネスティング部120aは、配置を変更する指示を受け付けていない場合に(ステップS301:NO)、配置を変更する指示の受け付け待ちの状態となる。具体的には、ネスティング部120aは、入力装置11を介して配置変更の指示を受け付けた場合に、板材(ワークW)に配置された部品70の再配置を実行する。一方、ネスティング部120aは、入力装置11を介した配置変更の指示を受け付けていない場合、配置変更の指示の受け付け待ちの状態となる。
【0046】
上述したように、ネスティング装置100aは、板材(ワークW)の枠外に部品70が配置される場合に警告を出力するので、ネスティング結果に対するNCデータをもとにした加工装置30による加工が困難となってしまうことを抑制することができる。また、ネスティング装置100aは、ネスティング結果に対して、配置変更の指示をもとに部品70を再配置するので、ユーザの希望通りの加工を実現するとともに、加工時間をより短縮する部品の再配置を実現することができる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に限定されない。上述した実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることは当業者において明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。上述した実施形態等で説明した要件の1つ以上は、省略されることがある。また、上述した実施形態等で説明した要件は、適宜組み合わせることができる。また、本実施形態において示した各処理の実行順序は、前の処理の出力を後の処理で用いるものでない限り、任意の順序で実現可能である。また、上述した実施形態における動作に関して、便宜上「まず」、「次に」、「続いて」等を用いて説明したとしても、この順序で実施することが必須ではない。また、法令で許容される限りにおいて、上述した実施形態等で引用した全ての文献の開示を援用して本文の記載の一部とする。
【符号の説明】
【0048】
11・・・入力装置
12・・・表示装置
20・・・入力データ
30・・・加工装置
100・・・ネスティング装置
110・・・取得部
120・・・ネスティング部
130・・・生成部