IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 内山工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-密封装置 図1
  • 特開-密封装置 図2
  • 特開-密封装置 図3
  • 特開-密封装置 図4
  • 特開-密封装置 図5
  • 特開-密封装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154567
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】密封装置
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/3264 20160101AFI20241024BHJP
   F16J 15/447 20060101ALI20241024BHJP
   F16C 33/80 20060101ALI20241024BHJP
   F16C 33/78 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
F16J15/3264
F16J15/447
F16C33/80
F16C33/78 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068455
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000225359
【氏名又は名称】内山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】柴山 昌範
【テーマコード(参考)】
3J042
3J043
3J216
【Fターム(参考)】
3J042AA05
3J042AA09
3J042BA01
3J042CA02
3J042CA10
3J042DA10
3J043AA16
3J043CA05
3J043CA11
3J043CB13
3J043CB20
3J043DA07
3J043HA04
3J216AA02
3J216AA14
3J216AB03
3J216AB38
3J216BA16
3J216CA02
3J216CA04
3J216CB03
3J216CB04
3J216CB07
3J216CB18
3J216CB19
3J216CC03
3J216CC15
3J216CC16
3J216CC34
3J216CC41
3J216CC68
3J216DA01
3J216DA11
3J216DA30
(57)【要約】
【課題】低トルク化の要請に応えるとともに、泥水等の異物の侵入の抑制しつつ、異物が内部に侵入したとしてもスムーズに外部に排出することができる密封装置を提供する。
【解決手段】外側部材及び内側部材間に形成された環状空間Sの端部に装着される密封装置10であって、前記外側部材に装着される第1部材21と、フランジ部に装着される第2部材38とを備え、前記第1部材及び前記第2部材は、互いに非接触に対向して配され、前記第1部材は、軸方向の前記環状空間側から前記フランジ部側に向けて径方向の外側に傾斜した2以上の第1傾斜部32を備え、前記第2部材は、軸方向の前記フランジ部側から軸方向の前記環状空間側に向けて径方向の外側に傾斜して延びる第2傾斜部40を備え、前記第2傾斜部は、径方向において2つの前記第1傾斜部の間に配されるとともに、少なくとも先端部40aが2以上の前記第1傾斜部と径方向に重なって対向する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的に回転する外側部材及び内側部材間に形成された環状空間の端部に装着される密封装置であって、
前記内側部材は、次第に拡径して前記外側部材の軸方向の一方面と対向するフランジ部を有し、
前記外側部材に装着される第1部材と、前記フランジ部に装着される第2部材とを備え、
前記第1部材及び前記第2部材は、互いに非接触に対向して配され、
前記第1部材は、軸方向の前記環状空間側から前記フランジ部側に向けて径方向の外側に傾斜した2以上の第1傾斜部を備え、
前記第2部材は、軸方向の前記フランジ部側から軸方向の前記環状空間側に向けて径方向の外側に傾斜して延びる第2傾斜部を備え、
前記第2傾斜部は、径方向において2つの前記第1傾斜部の間に配されるとともに、少なくとも先端部が2以上の前記第1傾斜部と径方向に重なって対向することを特徴とする密封装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1部材は、内周面に前記第1傾斜部が設けられている第1円筒部と、該第1円筒部よりも径方向の内側に位置して径方向に延びる第1円輪部と、該第1円輪部から軸方向の前記フランジ部側に傾斜して突出し、前記第1傾斜部として構成されている第1突出部とを備えることを特徴とする密封装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記第1部材は、前記外側部材の軸方向の一方面に沿って径方向の外側に延びる第2円輪部と、前記第2円輪部から軸方向の前記フランジ側に向けて傾斜して突出し、前記第1傾斜部として構成されている第2突出部とを備えることを特徴とする密封装置。
【請求項4】
請求項2において、
前記第1部材は、前記外側部材の軸方向の一方面に沿って径方向の外側に延びる第2円輪部と、該第2円輪部に設けられた圧縮状態のシート体とを備え、
前記シート体は、水分に接触したことを契機として圧縮状態から厚さ方向に膨大化して復元する特性を有することを特徴とする密封装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項において、
前記フランジ部は、前記外側部材の前記内周面よりも径方向の内側の位置から段差状に形成された段差部を備え、
前記第2部材は、前記段差部に嵌合される第2円筒部と、該第2円筒部よりも径方向の外側に位置して径方向に延びる第3円輪部とを備え、
前記第2傾斜部は、前記第2円筒部から軸方向の前記環状空間側に向けて径方向の外側に傾斜して延びて形成されていることを特徴とする密封装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記第2部材は、前記第3円輪部から軸方向の前記環状空間側に向けて径方向の外側に傾斜する第3傾斜部を備えることを特徴とする密封装置。
【請求項7】
請求項5において、
前記第3円輪部は、前記外側部材の外周面よりも径方向の外側に延びて形成されて前記外側部材の軸方向の一方面との間に径方向に延びる隙間によるラビリンスシールを形成し、
前記第2部材は、前記第3円輪部の径方向の外側の端部から軸方向の前記環状空間側に延びて形成されて前記ラビリンスシールの開口部を覆う第3円筒部をさらに備えることを特徴とする密封装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項において、
前記内側部材の外周面には、径方向の外側に突出した堰部が配されており、
前記第1部材は、前記堰部との間に隙間によるラビリンスシールを形成することを特徴とする密封装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記内側部材の前記外周面に嵌合されて軸方向に延びる円筒部と、該円筒部の前記環状空間側の端部から径方向の外側に延びる円輪部とを有する第3部材をさらに備え、
前記堰部は、前記第3部材の前記円輪部であることを特徴とする密封装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対的に回転する外側部材及び内側部材間に形成された環状空間の端部に装着される密封装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車等の車輪の軸受装置には、外部からの泥水やダスト等の異物の侵入を抑制するために、上述のような外側部材と内側部材との間の環状空間の両端部を密封する密封装置が装着されている。環状空間のフランジ部側の端部に装着される密封装置では、下記特許文献1~3のように、各種部材間に形成された隙間によるラビリンスシールと、他の部材に摺接するシールリップとにより、泥水等の異物の侵入を抑止する構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-234748号公報
【特許文献2】特開2015-052350号公報
【特許文献3】特開2017-160960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1~3では、各部材間に形成された隙間によるラビリンスシールと、他の部材に摺接するシールリップとにより泥水等の異物の侵入を抑制する構造となっている。しかしながら、さらなる低トルク化の要請に応えるために他の部材に摺接するシールリップを備えないものが望まれている。
【0005】
ラビリンスシールは、経路の長い構造やジグザグ状等の経路の複雑な構造にすることによって、泥水等の異物の侵入をより抑制する傾向にある。そのため、上述の低トルク化の要請に応えるとともに異物の侵入を抑制するために、経路の長い構造や経路の複雑な構造のラビリンスシールにすることが考えられる。しかしながら、そのような構造のラビリンスシールの場合、ラビリンスシール内に一旦泥水等の異物が侵入してしまうと、長い経路や複雑な経路によってラビリンスシールの外に異物を排出するのが困難になるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、低トルク化の要請に応えるとともに、泥水等の異物の侵入の抑制しつつ、異物が内部に侵入したとしてもスムーズに外部に排出することができる密封装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の密封装置は、相対的に回転する外側部材及び内側部材間に形成された環状空間の端部に装着される密封装置であって、前記内側部材は、次第に拡径して前記外側部材の軸方向の一方面と対向するフランジ部を有し、前記外側部材に装着される第1部材と、前記フランジ部に装着される第2部材とを備え、前記第1部材及び前記第2部材は、互いに非接触に対向して配され、前記第1部材は、軸方向の前記環状空間側から前記フランジ部側に向けて径方向の外側に傾斜した2以上の第1傾斜部を備え、前記第2部材は、軸方向の前記フランジ部側から軸方向の前記環状空間側に向けて径方向の外側に傾斜して延びる第2傾斜部を備え、前記第2傾斜部は、径方向において2つの前記第1傾斜部の間に配されるとともに、少なくとも先端部が2以上の前記第1傾斜部と径方向に重なって対向することを特徴とする。
【0008】
上記密封装置において、前記第1部材は、内周面に前記第1傾斜部が設けられている第1円筒部と、該第1円筒部よりも径方向の内側に位置して径方向に延びる第1円輪部と、該第1円輪部から軸方向の前記フランジ部側に傾斜して突出し、前記第1傾斜部として構成されている第1突出部とを備えてもよい。
【0009】
また、上記密封装置において、前記第1部材は、前記外側部材の軸方向の一方面に沿って径方向の外側に延びる第2円輪部と、前記第2円輪部から軸方向の前記フランジ側に向けて傾斜して突出し、前記第1傾斜部として構成されている第2突出部とを備えてもよい。
【0010】
また、上記密封装置において、前記第1部材は、前記外側部材の軸方向の一方面に沿って径方向の外側に延びる第2円輪部と、該第2円輪部に設けられた圧縮状態のシート体とを備え、前記シート体は、水分に接触したことを契機として圧縮状態から厚さ方向に膨大化して復元する特性を有してもよい。
【0011】
また、上記密封装置において、前記フランジ部は、前記外側部材の前記内周面よりも径方向の内側の位置から段差状に形成された段差部を備え、前記第2部材は、前記段差部に嵌合される第2円筒部と、該第2円筒部よりも径方向の外側に位置して径方向に延びる第3円輪部とを備え、前記第2傾斜部は、前記第2円筒部から軸方向の前記環状空間側に向けて径方向の外側に傾斜して延びて形成されてもよい。
【0012】
また、上記密封装置において、前記第2部材は、前記第3円輪部から軸方向の前記環状空間側に向けて径方向の外側に傾斜する第3傾斜部を備えてもよい。
【0013】
また、上記密封装置において、前記第3円輪部は、前記外側部材の外周面よりも径方向の外側に延びて形成されて前記外側部材の軸方向の一方面との間に径方向に延びる隙間によるラビリンスシールを形成し、前記第2部材は、前記第3円輪部の径方向の外側の端部から軸方向の前記環状空間側に延びて形成されて前記ラビリンスシールの開口部を覆う第3円筒部をさらに備えてもよい。
【0014】
また、上記密封装置において、前記内側部材の外周面には、径方向の外側に突出した堰部が配されており、前記第1部材は、前記堰部との間に隙間によるラビリンスシールを形成してもよい。
【0015】
また、上記密封装置において、前記内側部材の前記外周面に嵌合されて軸方向に延びる円筒部と、該円筒部の前記環状空間側の端部から径方向の外側に延びる円輪部とを有する第3部材をさらに備え、前記堰部は、前記第3部材の前記円輪部であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の密封装置は、上述した構成とされているため、低トルク化の要請に応えるとともに、泥水等の異物の侵入の抑制しつつ、異物が内部に侵入したとしてもスムーズに外部に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】各実施形態に係る密封装置が装着される軸受装置の一例を示す概略的縦断面図である。
図2図1のX部の拡大図であって、第1実施形態に係る密封装置を模式的に示す概略的縦断面図である。
図3】第1実施形態の変形例を模式的に示す概略的縦断面図である。
図4】(a)は第2実施形態に係る密封装置を模式的に示す概略的縦断面図、(b)(c)は変形例の要部を示す説明図、(d)は(c)のシート体が復元した状態を示す説明図である。
図5】第3実施形態に係る密封装置を模式的に示す概略的縦断面図である。
図6】第4実施形態に係る密封装置を模式的に示す概略的縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本実施形態の密封装置20は、相対的に回転する外側部材及び内側部材間に形成された環状空間Sの端部に装着される。内側部材は、次第に拡径して外側部材の軸方向の一方面と対向するフランジ部を有する。密封装置20は、外側部材に装着される第1部材21と、フランジ部に装着される第2部材38とを備える。第1部材21及び第2部材38は、互いに非接触に対向して配される。第1部材21は、軸方向の環状空間側からフランジ部側に向けて径方向の外側に傾斜した2以上の第1傾斜部32を備える。第2部材38は、軸方向のフランジ部側から軸方向の環状空間側に向けて径方向の外側に傾斜して延びる第2傾斜部40を備える。第2傾斜部40は、径方向において2つの第1傾斜部32,32の間に配されるとともに、少なくとも先端部40aが2以上の第1傾斜部32と径方向に重なって対向する。
以下、詳しく説明する。なお、一部の図には他図に付している詳細な符号の一部を省略している。また、図2図6の各実施形態の密封装置20,20’,20A,20A’,20A’’,20B,20Cの説明において、軸Lに沿ってフランジ部側(ハブフランジ11側)に向く側(図1において車輪側に向く側、図2等において右側)を軸方向の一方側とする。また、その反対方向である環状空間S側に向く側(図1において車体側に向く側、図2等において左側)を軸方向の他方側とする。
【0019】
<軸受装置>
図1は、自動車の車輪(不図示)を軸回転可能に支持する軸受装置1を示す。この軸受装置1は、大略的に、上述の外側部材に相当する外輪2と、上述の内側部材に相当する内輪4と、外輪2と内輪4との間に介装される2列の転動体(ボール)15…とを含んで構成される。内輪4は、内輪部材5とハブ輪7とで回転部材として構成され、内輪部材5はハブ輪7の車体側に嵌合一体とされる。ハブ輪7にはドライブシャフト17が同軸的にスプライン嵌合され、ドライブシャフト17は等速ジョイント18を介して不図示の駆動源(駆動伝達部)に連結される。ドライブシャフト17はナット19によってハブ輪7と一体化され、ハブ輪7のドライブシャフト17からの脱落が防止されている。内輪4(内輪部材5及びハブ輪7)は、外輪2に対して、軸L回りに回転可能な回転部材とされ、外輪2と、内輪4とにより、相対的に回転する2部材が構成され、環状空間Sが形成される。環状空間S内には、2列の転動体15…が、リテーナ16に保持された状態で、外輪2の軌道輪3、内輪部材5及びハブ輪7の軌道輪6,8を転動可能に介装されている。ハブ輪7は、円筒形状のハブ輪本体9と、ハブ輪本体9より立上基部10を介して外径側に延出する上述のフランジ部に相当するハブフランジ11とを有し、ハブフランジ11にボルト14及び不図示のナットによって車輪が取付固定される。
【0020】
ハブフランジ11は、立上基部10を介して次第に拡径して、外輪2の軸方向の一方面2cと対向している。またハブフランジ11は、外輪2の内周面2bよりも径方向の内側の位置から段差状に形成された段差部12を備えている(図2図6参照)。段差部12は、ハブ輪7の外周面7aよりも外径側に位置している。
【0021】
また、ハブ輪7の外周面7aには、外径側に突出した堰部13が配されている(図2図6参照)。図2~4、図6の堰部13は、ハブ輪7の外周面7aから突出して形成されており、その断面形状が外径側に向けて先細りにした台形形状であって、軸方向と略平行な外周面13aと傾斜した壁面13bを備えている。堰部13は、ハブ輪7の外周面7aから外径側に突出して設けられていることで、ハブ輪7の外周面7aを伝って流れてきたグリースが密封装置20内に侵入して外部に漏出することを抑制する堰としての役割を有する。
【0022】
環状空間Sの軸方向に沿った両端部であって、外輪2とハブ輪7との間、及び、外輪2と内輪部材5との間には、密封装置20,50が装着され、環状空間Sの軸方向に沿った両端部が密封される。これによって、環状空間S内への泥水等の異物の浸入や環状空間S内に充填されている潤滑剤(グリース等)の外部への漏出が抑制される。次に、環状空間Sの軸方向の一方側の端部に装着される第1実施形態の密封装置20について、図2を参照しながら説明する。なお、図2中の符号Dは、泥水等の異物を示す。
【0023】
<第1実施形態>
図2に示す密封装置20は、外輪2に装着される第1部材21とハブフランジ11に装着される第2部材38とを備えている。第1部材21は、芯体部材22とシール部材29とを備えている。芯体部材22は、SPCC又はSUS等の鋼板をプレス加工して形成されている。芯体部材22は、外輪2の内周面2bに嵌合される芯体円筒部23を備えている。また、芯体部材22は、芯体円筒部23の軸方向の他方側の端部から内径方向に延びた第1芯体円輪部24を備えている。また、芯体部材22は、芯体円筒部23の軸方向の一方側の端部から外径側に延びて、外輪2の軸方向の一方面2cに当接する第2芯体円輪部25を備えている。第2芯体円輪部25は、軸方向の他方面の外径側の一部が軸方向の一方面側に凹んだ凹部26が形成されている。
【0024】
シール部材29は、ゴム材等の弾性材料によって構成され、基部30を介して芯体部材22に固着されている。シール部材29は、基部30が芯体部材22の軸方向の一方側の全面を覆っている。さらにシール部材29は、基部30が第1芯体円輪部24の内径側の端部を回り込んで第1芯体円輪部24の軸方向の他方面における内径側の一部と、第2芯体円輪部25の外径側の端部を回り込んで第2芯体円輪部25の凹部26とを覆っている。シール部材29は、基部30が第1芯体円輪部24の軸方向の他方面における内径側の一部と第2芯体円輪部25の凹部26とを覆っていることで、芯体部材22から剥離しにくくなっている。
【0025】
また、シール部材29は、第2芯体円輪部25の凹部26を覆っている基部30の部分から軸方向の他方側に突出した環状突部37が形成されている。図2に示す二点鎖線の環状突部37は、変形前の自然状態における形状を示している。環状突部37が第2芯体円輪部25と外輪2の軸方向の一方面2cとの間に圧縮状態で介在することによって、泥水等の異物が第2芯体円輪部25と外輪2の軸方向の一方面2cとの間から環状空間S内に侵入することを抑制することができる。
【0026】
シール部材29は、芯体円筒部23の内周面を覆う第1円筒部31を備えている。第1円筒部31は、その内周面31aが軸方向の他方側から軸方向の一方側に向けて外径側に傾斜していることで、第1傾斜部32として構成されている。これにより、第1部材21は、内周面31aに第1傾斜部32が設けられている第1円筒部31を備えている。第1円筒部31の内周面31aが軸方向の他方側から軸方向の一方側に向けて外径側に傾斜していることで、第1円筒部31の内周面31aに沿って泥水等の異物が排出される際に、異物の外部への排出を阻害しにくくなっている。
【0027】
シール部材29は、第1芯体円輪部24の軸方向の一方面を覆い、第1芯体円輪部24の内径側の端部よりも内径側に延びた第1円輪部33を備えている。これにより、第1部材21は、第1円筒部31よりも内径側に位置して径方向に延びる第1円輪部33を備えている。この第1円輪部33は、内径側の一部が堰部13と隙間を介して軸方向に重なって近接する。第1円輪部33において第1芯体円輪部24の内径側の端部よりも内径側に延びた部分の軸方向の他方面33aは、内径側に向かうにつれて軸方向の一方側に傾斜した傾斜面となっている。また、第1円輪部33は、内径側の端部がハブ輪7の外周面7aに隙間を介して近接する。これにより、泥水等の異物が環状空間S内に侵入することを抑制することができる。また、環状空間S内からのグリースが外部に漏出することを抑制することができる。
【0028】
また、シール部材29は、第1円輪部33の内径側の端部から軸方向の一方側に傾斜して突出した第1突出部34を備えている。第1突出部34は、軸方向の他方側から軸方向の一方側に向けて外径側に傾斜していることで、第1傾斜部32として構成されている。これにより、第1部材21は、第1円輪部33から軸方向の一方側に傾斜して突出し、第1傾斜部32として構成されている第1突出部34を備えている。第1突出部34は、軸方向の一方側に向けて外径側に傾斜していることで、第1円輪部33の軸方向の一方側の面と合わせて、泥水等の異物を受け止める領域s1が構成されている。第1部材21は、領域s1によって泥水等の異物を受け止め、第1突出部34の傾斜によって異物の勢いを弱めてそれ以上の侵入を抑制することができる。また、第1突出部34は、その先端部34aがハブフランジ11における段差部12よりも内径側の側壁面11aに近接することで、第1突出部34と側壁面11aとの間から泥水等の異物が環状空間S側に侵入することを抑制することができる。
【0029】
また、シール部材29は、第2芯体円輪部25の軸方向の一方面を覆い、外輪2の軸方向の一方面2cに沿って外径側に延びる第2円輪部35を備えている。また、第2円輪部35には、径方向の中途部分から軸方向の一方側に向けて傾斜して突出した第2突出部36が形成されている。第2円輪部35は、その外径側の端部35bが外輪2の外周面2aよりも外径側に延びており、外輪2の外周面2aを伝って流れてきた泥水等の異物の侵入を抑制する堰部としての役割を有する。第2突出部36は、その全体形状が軸方向の他方側から軸方向の一方側に向けて外径側に傾斜していることで、第1傾斜部32として構成されている。これにより、第1部材21は、外輪2の軸方向の一方面2cに沿って外径側に延びる第2円輪部35と、第2円輪部35から軸方向の一方側に向けて傾斜して突出し、第1傾斜部32として構成されている第2突出部36とを備えている。
【0030】
第2突出部36は、その先端部36a側がハブフランジ11に隙間を介して近接することで、第2突出部36とハブフランジ11との間の開口を小さくして泥水等の異物が密封装置20内に侵入することを抑制することができる。また、第2円輪部35の軸方向の一方面35aと第2突出部36の外周面36bとにより、泥水等の異物を受け止める領域s2が構成されている。密封装置20は、領域s2によって泥水等の異物を受け止め、第2突出部36の傾斜によって異物の勢いを弱めて異物のそれ以上の侵入を抑制することができる。また、第2突出部36を乗り越えて内部側に泥水等の異物が侵入したとしても、第2突出部36は、内周面36cが軸方向の一方側に向かうにつれて外径側に傾斜した傾斜面となっているので、内周面36cに沿って異物を外部に排出することができる。
【0031】
第1部材21は、芯体円筒部23が外輪2の内周面2bに嵌合されることで外輪2に装着される。第1部材21は、ハブ輪7の外周面7aに突出して形成された堰部13と隙間を介して対向することで、堰部13との間に隙間によるラビリンスシールR1を形成する。ラビリンスシールR1は、第1芯体円輪部24の内径側の端部を覆う部分の基部30と堰部13の外周面13aとの間に形成された軸方向に延びる隙間である。ラビリンスシールR1が形成されることで、環状空間S内に充填されたグリースが密封装置20内に侵入して外部へ漏出することをより抑制することができる。また、グリースがラビリンスシールR1を通過したとしても、第1円輪部33の内径側の一部が堰部13と隙間を介して軸方向に重なって近接していることで、グリースのそれ以上の侵入を抑制することができる。そして、内輪4の回転に伴う遠心力によって第1円輪部33の軸方向の他方面33aや堰部13の壁面13bの傾斜に沿って環状空間S側にグリースが戻されやすくなっている。
【0032】
ハブフランジ11に装着される第2部材38は、SPCC又はSUS等の鋼板をプレス加工して形成されている。第2部材38は、段差部12に嵌合される第2円筒部39を備えている。また、第2部材38は、第2円筒部39の軸方向の他方側の端部から延びる第2傾斜部40を備えている。第2傾斜部40は、軸方向の一方側から軸方向の他方側に向けて外径側に傾斜して延びて形成されている。
【0033】
また、第2部材38は、第2円筒部39よりも外径側に位置して径方向に延びる第3円輪部41を備えている。第3円輪部41は、第2円筒部39の軸方向の一方側の端部からハブフランジ11に沿って外径側に延びて形成されており、第2部材38がハブフランジ11に装着される際には、ハブフランジ11における段差部12よりも外径側の側壁面11bに当接する。第2部材38は、第2傾斜部40、第2円筒部39、第3円輪部41によって囲まれ、泥水等の異物を受け止める領域s3が形成されている。第2部材38は、領域s3によって泥水等の異物を受け止めて、第2傾斜部40の傾斜によって異物の勢いを弱めて異物のそれ以上の侵入を抑制することができる。この領域s3は、領域s1,s2よりも容積が大きく、領域s1,s2よりも多くの泥水等の異物を受け止めることができる。
【0034】
第1部材21が外輪2に装着され、第2部材38がハブフランジ11に設けられた段差部12に装着され、第1部材21及び第2部材38が互いに非接触に対向して配される。これにより、第1部材21と第2部材38との間で接触による摩擦がなく、回転トルクの増大を抑制することができる。また、密封装置20は、外輪2に装着された第1部材21が回転側である内輪4側の部材に接触せず、内輪4側に装着された第2部材38が固定側である外輪2側の部材に接触しないので、接触による摩擦がなく、回転トルクの増大を抑制することができる。
【0035】
第2部材38の第2傾斜部40の先端部40a側は、第1部材の2つの第1傾斜部32である第1突出部34と第1円筒部31の内周面31aとの間に配される。さらに第2傾斜部40は、少なくとも先端部40aが第1突出部34と第1円筒部31の内周面31aと径方向に重なっている。また、第2部材38の第3円輪部41は、第2突出部36の先端部36a側と径方向に重なっている。これにより、第1部材21と第2部材38とで構成された密封装置20内の構造は、図2の二点矢印Aに示すように、泥水等の異物が侵入するための経路がジグザグ状の複雑な経路となり、泥水等の異物の侵入を抑制することができる。また、第2傾斜部40の先端部40a側が第1突出部34の先端部34a側と径方向に重なっていることで、第1突出部34とハブフランジ11の側壁面11aとの間の隙間に泥水等の異物が直接侵入することが抑制される。
【0036】
第2突出部36の外周面36bに付着した泥水等の異物は、第2突出部36が軸方向の一方側に向けて外径側に傾斜しているため、領域s2内に滞留しやすくなる。また、第2突出部36を乗り越えて密封装置20内に異物が侵入したとしても、第2突出部36の先端部36aは、第2部材38の第3円輪部41よりも軸方向の一方側に位置している。そのため、第2突出部36を乗り越えた泥水等の異物は、直接領域s3内に侵入ができず、第3円輪部41に引っ掛かって勢いが弱まり、さらに第2傾斜部40によってそれ以上の侵入が抑制されて領域s3内に滞留しやすくなる。また、第2傾斜部40を乗り越えたり、第1円筒部31の内周面31aを伝って異物がそれ以上侵入をしたとしても、異物が第1突出部34によってそれ以上の侵入が抑制されて領域s1内に滞留しやすくなり、環状空間S内に侵入することが抑制される。
【0037】
第2部材38に付着した泥水等の異物や領域s3内に滞留した泥水等の異物は、内輪4の回転に伴う遠心力によって振り切られ、図2の二点矢印Bに示すように、第2部材38の第3円輪部41や第2傾斜部40に沿ってスムーズに外部空間側に排出される。また、第1部材21に付着した泥水等の異物や領域s1,s2内に滞留した泥水等の異物は、自重により第1部材21の各部の傾斜面に沿って下方に流れる。泥水等の異物は、図2の二点矢印Cに示すように、第2傾斜部40の傾斜面や第1円筒部31の内周面31a、第2突出部36の内周面36c等に沿ってスムーズに排出される。第2傾斜部40の傾斜面や第1円筒部31の内周面31a、第2突出部36の内周面36cは、泥水等の異物が自重により下方に流れて外部空間側にスムーズに排出されるように、外径側に傾斜して構成されている。なお、図2中の二点矢印A,B,Cは、符号Dによって示された泥水等の異物の経路の一例を示したものであって、二点矢印A,B,Cに示した経路に沿って異物が移動することに限定されるものではない。
【0038】
上述のように、密封装置20は、第2突出部36や領域s2によって密封装置20内に泥水等の異物が侵入することを抑制することができる。また、密封装置20は、内部に泥水等の異物が侵入したとしても、第2傾斜部40や第1突出部34、これらによって構成された領域s1,s3によって泥水等の異物のそれ以上の侵入を抑制し、環状空間S内に泥水等の異物が侵入することを抑制することができる。また、密封装置20は、第2突出部36と第3円輪部41と第2円輪部35とに囲まれた空間や、第2部材38と第1円筒部31とに囲まれた空間、第1突出部34と第1円輪部33と第2傾斜部40とに囲まれた空間が形成されている。これらの空間によって泥水等の異物が密封装置20内に滞留して環状空間S内に侵入することがより抑制される。
【0039】
そして、密封装置20は、環状空間S内への侵入を抑制した泥水等の異物を、第1傾斜部32を構成する各部の傾斜面や第2傾斜部40の傾斜面に沿って外部空間側にスムーズに排出することができる。また、密封装置20は、第1部材21及び第2部材38が互いに非接触であり、また、第1部材21は内輪4に対して非接触であり、第2部材38が外輪2に対して非接触であるので、回転トルクの増大を抑制することができる。
【0040】
<第1実施形態の変形例>
次に第1実施形態の変形例である密封装置20’について、図3を参照しながら説明する。なお、第1実施形態と共通する部分の構成及び効果の説明は省略する。
図3に示す密封装置20’は、第2部材38の第3円輪部41の外径側の端部から軸方向の他方側に向けて外径側に傾斜する第3傾斜部42を備えている。第2部材38が第3傾斜部42を備えていることで、ハブフランジ11を伝ってきた泥水等の異物の勢いを弱めて異物の侵入を抑制することができる。また、密封装置20’内に泥水等の異物が侵入したとしても、第3傾斜部42は先端部が外径側を向いて傾斜しているので、傾斜した内周面に沿って外部に排出され易くなっている。また、第3傾斜部42は、第2突出部36よりも内径側に位置している。これにより、第2突出部36と第3傾斜部42によって泥水等の異物の侵入経路が複雑になり、泥水等の異物の侵入を抑制することができる。また、第3傾斜部42は、第2円輪部35の軸方向の一方面35aに隙間を介して近接している。これにより、第3傾斜部42と第2円輪部35との間に径方向に開口した隙間によるラビリンスシールR2が形成され、泥水等の異物が侵入することをより抑制することができる。
【0041】
<第2実施形態>
次に、図4図6を参照しながら、他の実施形態に係る密封装置20A,20B,20Cについて説明する。なお、図2の第1実施形態と共通する部分の構成及び効果の説明は省略する。まず、図4を参照しながら、第2実施形態に係る密封装置20Aについて説明する。
【0042】
図4(a)に示す密封装置20Aは、第1実施形態とは異なり、第2部材38の第3円輪部41が外輪2の外周面2aよりも外径側に延びて形成されており、さらにこの第3円輪部41は、第1部材21の第2円輪部35よりも外径側に延びている。第2部材38は、第3円輪部41の外径側の端部から軸方向の他方側に延びる第3円筒部43を備えている。この第3円筒部43は、第2円輪部35よりも軸方向の他方側に延びている。また、第2円輪部35には、第1実施形態とは異なり第2突出部36が設けられていない構成となっている。
【0043】
第2部材38の第3円輪部41が外輪2の外周面2aよりも外径側に延びることで、第2円輪部35と第3円輪部41との間には、径方向に延びる隙間によるラビリンスシールR3が形成される。ラビリンスシールR3が形成されることで、泥水等の異物の侵入が抑制される。また、第3円筒部43は、軸方向の他方側に延びることでラビリンスシールR3の開口部及び第2円輪部35の外径側の端部35bを覆い、第2円輪部35と第2部材38の第3円筒部43との間に軸方向の延びる隙間によるラビリンスシールR4が形成される。第3円筒部43がラビリンスシールR3の開口部を覆うことで、ラビリンスシールR3の開口部から侵入する泥水等の異物を抑制することができる。また、第2円輪部35と第2部材38の第3円筒部43との間にラビリンスシールR4が形成されることで、泥水等の異物の侵入が抑制される。上述のラビリンスシールR3とラビリンスシールR4とが連通していることで、泥水等の異物の侵入経路となるラビリンスシール全体が長く屈曲したものとなり、泥水等の異物の侵入をより抑制することができる。また、ラビリンスシールR4の幅寸法を構成する第2円輪部35と第3円筒部43との間の隙間寸法を小さくすることにより、泥水等の異物の侵入を抑制することができる。また、本実施形態では、ラビリンスシールR4の隙間の幅寸法は、ラビリンスシールR3の幅寸法を構成する第2円輪部35と第3円輪部41との間の隙間寸法よりも小さく形成されており、これにより泥水等の異物の侵入をより抑制することができる。
【0044】
<第2実施形態の変形例>
次に、図4(b)(c)(d)を参照しながら、それぞれ第2実施形態の変形例である密封装置20A’,20A’’について説明する。密封装置20A’,20A’’は、図4(a)のY部の変形例であって、第2円輪部35の構成がそれぞれ図4(a)の密封装置20Aと異なっており、それ以外の構成は略同一である。
【0045】
図4(b)に示す密封装置20A’では、第2円輪部35に径方向の中途部分から軸方向の一方側に向けて外径側に傾斜し、その先端部36Aaが第3円輪部41に非接触に近接する第2突出部36Aが設けられている。この第2突出部36Aは、第1実施形態の第2突出部36と同様に、第1傾斜部32として構成されている。径方向に延びるラビリンスシールR3内に第2突出部36Aが設けられていることで、第2突出部36Aが設けられている箇所でラビリンスシールR3の隙間の幅寸法が小さくなり、泥水等の異物の侵入をより抑制することができる。また、第2突出部36Aの外周面36Abと第2円輪部35の軸方向の一方面35aとの間に領域s2が形成されているので、第2突出部36Aの傾斜によって泥水等の異物の勢いを弱めて、領域s2内に滞留させることができる。また、第2突出部36Aの内周面36Acが軸方向の一方側に向けて外径側に傾斜した傾斜面であることで、泥水等の異物の排出を阻害しにくくなっている。
【0046】
また、図4(c)(d)に示す密封装置20A’’では、第1部材21が、第2円輪部35の軸方向の一方面35aに設けられたシート体44を備えている。シート体44は、第2円輪部35の軸方向の一方面35aの略全面を覆っている。シート体44は、水分に接触したことを契機として圧縮状態から厚さ方向に膨大化して復元する特性を有している。このようなシート体44としては、例えば、セルロース系スポンジが用いられる。
【0047】
セルロース系スポンジは、パルプ由来のセルロースと、補強繊維として加えられた天然繊維(例えば、綿等)とからなる天然素材からなり、連続気泡型で優れた吸水性を有する。またセルロースは、親水基(OH)を有しており、化学的に水分になじみ易い性質を有する。セルロース系スポンジは、加圧した状態で乾燥させるとセルロース分子間が水素結合して圧縮状態に維持される一方、この状態から水分に晒されると水分子がセルロース分子間の水素結合を解離して圧縮状態から復元する特性を有する。そのため、セルロース系スポンジは、シート体44として好適である。また、シート体44としては、水分に接触して膨大化した際に、第2部材38に接触しない寸法及び形状を有するものが用いられる。シート体44が圧縮状態、膨大化した状態のいずれにおいても第2部材38に接触しないことで、回転トルクが増大することを抑制することができる。シート体44を圧縮状態から厚さ方向に膨大化して復元させる水分は、泥水等の異物に含まれる水分である。
【0048】
シート体44は、第2円輪部35と第3円輪部41との間、すなわち径方向に延びるラビリンスシールR3内に配置されている。シート体44は、泥水等の異物に含まれる水分に接触することで、図4(c)に示す圧縮状態から図4(d)に示すように膨大化して復元する。これにより、シート体44は、異物の侵入が始まった初期段階で第3円輪部41との間の隙間の寸法、すなわちラビリンスシールR3の隙間の幅寸法を小さくすることができ、異物の侵入を抑制することができる。
【0049】
なお、シート体44は、第2円輪部35の外径側の端部35bを覆い、第2円輪部35と第3円筒部43との間、すなわちラビリンスシールR4内に配置されてもよい。これにより、異物の侵入が始まった初期段階でラビリンスシールR4の隙間の幅寸法を小さくすることができ、異物の侵入を抑制することができる。また、シート体44は、第2円輪部35の軸方向の一方面35aと第2円輪部35の外径側の端部35bの両方を覆い、第2円輪部35と第3円輪部及び第3円筒部43との間、すなわちラビリンスシールR3及びラビリンスシールR4内に配置されてもよい。なお、いずれであっても、シート体44は、第2部材38に対して非接触の構成とする。
【0050】
<第3実施形態>
図5の第3実施形態に係る密封装置20Bでは、第1部材21及び第2部材38の構成は図2の第1実施形態のものと略同一である。図5のハブ輪7には、外周面7aから突出した堰部13が形成されていない構成となっている。密封装置20Bは、ハブ輪7の堰部13に代わる第3部材45を備えている。
【0051】
第3部材45は、SPCC又はSUS等の鋼板をプレス加工して形成されており、その断面形状は略L字状となっている。第3部材45は、ハブ輪7の外周面7aに嵌合されて軸方向に延びる第4円筒部46と、第4円筒部46の軸方向の他方側の端部から外径側に延びる第4円輪部47とを有している。第4円輪部47は、環状空間S内に充填されたグリースが密封装置20B内に侵入して外部に漏出することを抑制する堰部13として構成されている。また、第4円輪部47は、外径側に延びて第1部材21と非接触に構成されており、第1部材21との間に軸方向に延びる隙間によるラビリンスシールR1が形成される。第1部材21と第4円輪部47との間に軸方向に延びる隙間によるラビリンスシールR1が形成されることにより、環状空間S内に充填されたグリースが密封装置20B内に侵入して外部に漏出することをより抑制することができる。また、第3部材45が固定側である第1部材21側に非接触の構成であるので、密封装置20Bは、第3部材45がハブ輪7に設けられても回転トルクが増大しない構成となっている。
【0052】
また、第4円筒部46は、ハブ輪7の外周面7aに嵌合されることで外周面7aよりも外径側に突出して設けられており、第1突出部34を乗り越えてきた泥水等の異物を第4円筒部46の軸方向の一方側の端部で堰き止めることができる。また、第1円輪部33の内径側の一部は、第3部材45に対して隙間を介して近接することにより、泥水等の異物が環状空間S内に侵入することや、環状空間S内のグリースが外部に漏出することを抑制することができる。また、密封装置20Bが第3部材45を備えていることで、ハブ輪7に堰部13を設ける加工が不要となる。
【0053】
<第4実施形態>
図6の第4実施形態に係る密封装置20Cは、第1部材21の構成が図2の第1実施形態と異なっている。また、第2部材38は、図3の第2部材38と略同一の構成となっており、第2円筒部39、第2傾斜部40、第3円輪部41、第3傾斜部42を備えている。
【0054】
芯体部材22は、軸方向の他方側から軸方向の一方側にかけて、外径側に傾斜した第1芯体円筒部23Aを備えている。第1芯体円筒部23Aは、第1部材21が外輪2に装着されている状態において外輪2の内周面2bと隙間を介して径方向に対向する構成となっている。芯体部材22は、第1芯体円筒部23Aの軸方向の他方側の端部から内径側に延びる第1芯体円輪部24を備えている。また、芯体部材22は、第1芯体円筒部23Aの軸方向の一方側の端部から外径側に延びて外輪2の軸方向の一方面2cに沿う第2芯体円輪部25を備えている。また、芯体部材22は、第2芯体円輪部25の外径側の端部から軸方向の他方側に延びて、外輪2の外周面2aに嵌合する第2芯体円筒部27を備えている。第2芯体円筒部27は、その内周面の軸方向の他方側に、外径側に凹んだ凹部28が形成されている。
【0055】
シール部材29は、基部30が芯体部材22の軸方向の一方側の全面を覆っている。また、シール部材29は、基部30が第1芯体円輪部24の内径側の端部を回り込んで第1芯体円輪部24の軸方向の他方面における内径側の一部と、第2芯体円筒部27の外周面及び軸方向の他方側の端部を回り込んで凹部28とを覆っている。シール部材29は、基部30が第1芯体円輪部24の軸方向の他方面における内径側の一部と第2芯体円筒部27の凹部28とを覆っていることで、芯体部材22から剥離しにくくなっている。
【0056】
シール部材29は、第1芯体円筒部23Aの内周面を覆う第1円筒部31を備えている。第1円筒部31は、その内周面31aが軸方向の他方側から軸方向の一方側に向けて外径側に傾斜していることで、第1傾斜部32として構成されている。また、シール部材29は、第1芯体円輪部24の軸方向の一方面を覆い、第1芯体円輪部24の内径側の端部よりも内径側に延びた第1円輪部33を備えている。第1円輪部33において第1芯体円輪部24の内径側の端部よりも内径側に延びた部分の軸方向の他方面33aは、内径側に向かうにつれて軸方向の一方側に傾斜した傾斜面となっている。また、シール部材29は、第1円輪部33の内径側の端部から軸方向の一方側に傾斜して突出した第1突出部34を備えている。第1突出部34は、軸方向の他方側から軸方向の一方側に向けて外径側に傾斜していることで、第1傾斜部32として構成されている。
【0057】
シール部材29は、第2芯体円輪部25の軸方向の一方面を覆い、第2芯体円輪部25を介して外輪2の軸方向の一方面2cに沿って外径側に延びる第2円輪部35を備えている。また、シール部材29は、第2芯体円筒部27の外周面を覆う第5円筒部48を備えている。外輪2の外周面2aには、周方向に沿って内径側にわずかに窪んだ窪み2dが形成されており、第5円筒部48の軸方向の他方側の端部は、外輪2の窪み2dの軸方向の他方側の縁部に当接する。
【0058】
また、シール部材29は、第2円輪部35の外径側の端部35bから軸方向の一方側に突出する第2突出部36Bを備えている。第2突出部36Bは、その外周面が第5円筒部48の外周面と略面一に形成され、軸受装置1の軸Lに対して略平行に構成されている。また、第2突出部36Bは、先端部36Baがハブフランジ11に隙間を介して近接する。また、第2突出部36Bは、その内周面36Bcが軸方向の一方側に向けて外径側に傾斜した傾斜面となっており、内周面36Bcが第1傾斜部32として構成されている。第2突出部36Bは、傾斜した内周面36Bcに沿って、侵入した泥水等の異物を外部に排出することができる。
【0059】
密封装置20Cは、第1部材21が外輪2の内周面2bに嵌合するものではなく、上述したように外輪2の外周面2aに嵌合して外輪2の装着される構成にすることができる。また、密封装置20Cは、第1傾斜部32として構成された第2突出部36Bの内周面36Bc及び第1突出部34と、第2部材38の第2傾斜部40及び第3傾斜部42とを備えていることで、泥水等の侵入経路がジグザグ状の複雑な経路となる。これにより、泥水等の異物が環状空間S内に侵入することを抑制する。また、第3傾斜部42が第2円輪部35の軸方向の一方面35aに非接触に近接することで、隙間によるラビリンスシールR2を係止し、泥水等の異物の侵入をより抑制している。また、第1傾斜部32、第2傾斜部40、第3傾斜部42の傾斜面に沿って、密封装置20C内に侵入した泥水等の異物をスムーズに外部に排出することができる。
【0060】
なお、密封装置20Cは、第2突出部36Bに代わりまたは加えて、図6の二点鎖線で示すような、第2円輪部35の径方向の中途部分から軸方向の一方側に向けて外径側に傾斜した第2突出部36が設けられてもよい。
【0061】
上述した各実施形態における密封装置20~20Cは、上述した構成に限定されることはなく、各実施形態の構成を組み合わせたものや組み替えられたものであってもよい。また、芯体部材22、第2部材38、第3部材45は、SPCC又はSUS等の鋼板に限定されず、例えば、樹脂材料を射出成形したものや3Dプリンタ等で形成した金属材料、樹脂材料であってもよい。また、シール部材29もゴム材等の弾性材に限定されず、その他の樹脂材料等であってもよい。また、第1部材21は、シール部材29を備えない構成であってもよい。その場合は、芯体円筒部23の内周面を傾斜させて第1円筒部31として構成されてもよく、第1芯体円輪部24や第2芯体円輪部25が第1円輪部33や第2円輪部35として構成されてもよい。また、第1突出部34や第2突出部36が芯体部材22の端部から延びて形成されたものであってもよい。また、第1部材21は、図2図6に示す芯体部材22及びシール部材29が同一の材料によって一体に構成されたものでもよく、例えばその全体が樹脂材料によって射出成形されたものや3Dプリンタ等で形成した金属材料、樹脂材料であってもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 軸受装置
2 外輪(外側部材)
4 内輪(内側部材)
7 ハブ輪(内側部材)
7a 外周面
11 ハブフランジ(フランジ部)
12 段差部
13 堰部
20,20’ 密封装置
20A,20A’,20A’’ 密封装置
20B 密封装置
20C 密封装置
21 第1部材
31 第1円筒部
31a 内周面
32 第1傾斜部
33 第1円輪部
34 第1突出部
35 第2円輪部
36,36A 第2突出部
38 第2部材
39 第2円筒部
40 第2傾斜部
40a 先端部
41 第3円輪部
42 第3傾斜部
43 第3円筒部
44 シート体
45 第3部材
46 第4円筒部(第3部材の円筒部)
47 第4円輪部(第3部材の円輪部、堰部)
R1,R2,R3,R4 ラビリンスシール

図1
図2
図3
図4
図5
図6