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特開2024-154570発熱体冷却用熱交換器及びこれを用いた発熱体冷却構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154570
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】発熱体冷却用熱交換器及びこれを用いた発熱体冷却構造
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20241024BHJP
   H01L 23/473 20060101ALI20241024BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
H01L23/36 D
H01L23/46 Z
H05K7/20 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068458
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】505113632
【氏名又は名称】ヴァレオ システム テルミク
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 学
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA03
5E322AA07
5E322AA10
5E322AA11
5E322AB01
5E322DA04
5E322DB06
5E322FA01
5F136BC07
5F136CB06
5F136DA50
5F136EA02
5F136EA40
5F136FA02
5F136FA52
(57)【要約】
【課題】バッテリ等の発熱体と発熱体冷却用熱交換器のチューブとの間に熱伝導性に優れたシート状部材を介在させる場合において、シート状部材を所定位置に位置ずれすることなく確実に配置させる機能を備えた発熱体冷却用熱交換器とこれを用いた発熱体冷却構造を提供する。
【解決手段】間隔を開けて並設され、第1面11aとこの第1面の裏側の第2面11bとを有する扁平状の複数のチューブ11と、チューブ11と設置部Fとの間に配置されると共にチューブ11の第1面11aに装着されて該チューブ11を保持する圧縮パッド20と、を備え、圧縮パッド20は、チューブ11に沿って延設されると共にチューブの第1面11aに装着されるチューブ保持部21と、隣り合うチューブ保持部21を連結する架橋部22とを有し、架橋部22に、隣り合うチューブ11間に突出するピン30を設け、ピン30の頂部30aをチューブ11の第2面11bよりも突出させる。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体(2)とこの発熱体(2)を設置する設置部(F)との間に配置されて前記発熱体(2)を冷却するための発熱体冷却用熱交換器(1)であって、
間隔(D)を開けて並設され、第1面(11a)とこの第1面(11a)の裏側の第2面(11b)とを有する扁平状の複数のチューブ(11)と、
前記チューブ(11)と前記設置部(F)との間に配置されるもので、前記チューブ(11)の第1面(11a)に装着されて該チューブ(11)を保持する圧縮パッド(20)と、を備え、
前記圧縮パッド(20)は、前記チューブ(11)に沿って延設されると共に前記チューブ(11)の第1面(11a)に装着されるチューブ保持部(21)と、隣り合う前記チューブ保持部(21)を連結する架橋部(22)とを有し、
前記架橋部(22)に、隣り合う前記チューブ(11)間に突出するピン(30)を設け、
前記ピン(30)の頂部(30a)を前記チューブ(11)の第2面(11b)よりも突出させたことを特徴とする発熱体冷却用熱交換器(1)。
【請求項2】
前記圧縮パッド(20)の最も外側の端部チューブ保持部(21a)には、さらに外側へ延設された延設部(25)を備え、この延設部(25)にも前記チューブ(11)の第2面(11b)よりも突出させたピン(30)が設けられていることを特徴とする請求項1記載の発熱体冷却用熱交換器(1)。
【請求項3】
前記圧縮パッド(20)の前記架橋部(22)は、前記チューブ(11)の延伸方向を基準として間隔を開けて複数設けられ、前記架橋部(22)のうち前記延伸方向の端にある端部架橋部(22a)に設けられる端部ピン(30e)は、前記発熱体(2)で覆われない部分に設けられることを特徴とする請求項1記載の発熱体冷却用熱交換器(1)。
【請求項4】
前記ピン(30)は、外力によって当該ピン(30)の延伸方向に収縮可能であることを特徴とする請求項1記載の発熱体冷却用熱交換器(1)。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の発熱体冷却用熱交換器(1)を用いた発熱体冷却構造であって、
前記発熱体(2)は、フィルム(42)に貼着された熱伝導シート(41)を介して前記チューブ(11)上に載置され、前記フィルム(42)は、前記熱伝導シート(41)と前記チューブ(11)との間に配置され、前記ピン(30)は、前記フィルム(42)に設けられた位置決め穴(43)に挿通されることを特徴とする発熱体冷却構造。
【請求項6】
前記フィルム(42)は、これに貼着される前記熱伝導シート(41)よりも大きく形成され、前記フィルム(42)が前記チューブ(11)の並設方向に複数設けられる場合には、隣り合う前記フィルム(42)は、部分的に重なり合うように配置され、重なり合う部分に前記位置決め穴(43)が設けられていることを特徴とする請求項5記載の発熱体冷却構造。
【請求項7】
前記発熱体(2)と前記熱伝導シート(41)との間および前記発熱体(2)と前記間隔(D)との間には、前記発熱体(2)の冷却領域の偏りを低減する均熱板(15)がさらに設けられていることを特徴とする請求項5記載の発熱体冷却構造。
【請求項8】
前記ピン(30)の前記圧縮パッド(20)からの突出量(D3)は、前記発熱体(2)を前記熱伝導シート(41)を介して前記チューブ(11)に固定した状態で、前記位置決め穴(43)を挿通し、前記発熱体(2)に接触しない量であることを特徴とする請求項5記載の発熱体冷却構造。
【請求項9】
前記位置決め穴(43)と対向する前記発熱体(2)の底部(2b)には、凹部(2c)が設けられていることを特徴とする請求項5記載の発熱体冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両に搭載されるモータ駆動用バッテリ等の発熱体を冷却するための発熱体冷却用熱交換器と、これを用いた発熱体冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
モータを駆動源とする車両には、モータを駆動させるためのバッテリを冷却するバッテリ冷却装置が搭載されている。このようなバッテリ冷却装置として、バッテリの下部に熱交換器を熱的に結合し、この熱交換器のチューブに冷媒を流し、この冷媒との熱交換によってバッテリを冷却する技術が知られている(特許公報1参照)。
【0003】
このような構成においては、チューブとバッテリとの間に隙間が存在すると、バッテリが十分に冷却されない虞がある。このため、熱交換器に結合して全体の温度を均一にするための均熱部(板状のアルミニウム又はアルミニウム合金)と、一方面側が均熱部に当接し、他方面側がバッテリに熱的に結合するシート状部材(例えば、TIM:Thermal Interface Materialsとして知られる熱伝導シート)とを備えたバッテリ冷却装置が提案されている。ここで、チューブとバッテリとの間の隙間を無くす観点からは、均熱部は敢えて設けなくてもよい。
【0004】
シート状部材は、熱伝導率の高い軟質の素材で形成され、バッテリを構成するそれぞれのバッテリセルとの当接面に密着して、バッテリセルやチューブ、均熱部の表面に意図せずに形成される僅かな凹凸を吸収するようにしている。バッテリセルやチューブ、均熱部の表面に凹凸が存在すると、それぞれの部材の表面同志を当接させたとき、界面に空気層が介在することとなり、熱の伝達量が十分に確保できないおそれがある。そこで、このようなシート状部材を介してバッテリを熱交換器のチューブに取り付けることで、空気層の介在を防止し、バッテリの放熱性能を向上させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2022/118828号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような冷却構造を形成するにあたって、チューブを備える熱交換器とバッテリとは別々に納品され、組立工場内で車体のバッテリ設置部(床面)に圧縮パットを介して熱交換器を設置し、この熱交換器のチューブ上にシート状部材を載置し、このシート状部材の上からバッテリを載置し固定する必要がある。
この際、シート状部材に設けられる熱伝導シートは、軟質の素材で形成されているので、この熱伝導シート上にバッテリを載置させる際や、載置させたバッテリを設置部に固定する際等に、シート状部材(熱伝導シート)が意図した位置からずれる虞がある。
【0007】
シート状部材がバッテリとチューブとの間の意図した位置からずれる場合には、バッテリとチューブとの熱的結合が不十分となり、バッテリの冷却能力が低下する不都合が懸念される。
そこで、バッテリとチューブとの間にシート状部材を介在させる場合には、格別な能力や経験を必要とすることなくシート状部材を意図した位置に確実に配置することが求められる。
【0008】
本発明は係る事情に鑑みてなされたものであり、バッテリ等の発熱体と冷却用熱交換器のチューブとの間に伝熱機能を有するシート状部材を介在させる場合において、シート状部材を所定位置に位置ずれすることなく確実に配置させることが可能な発熱体冷却用熱交換器と、これを用いた発熱体冷却構造を提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するために、本発明に係る発熱体冷却用熱交換器1は、
発熱体2とこの発熱体2を設置する設置部Fとの間に配置されて前記発熱体2を冷却するための発熱体冷却用熱交換器1であって、
間隔Dを開けて並設され、第1面11aとこの第1面11aの裏側の第2面11bとを有する扁平状の複数のチューブ11と、
前記チューブ11と前記設置部Fとの間に配置されるもので、前記チューブ11の第1面11aに装着されて該チューブ11を保持する圧縮パッド20と、を備え、
前記圧縮パッド20は、前記チューブ11に沿って延設されると共に前記チューブ11の第1面11aに装着されるチューブ保持部21と、隣り合う前記チューブ保持部21を連結する架橋部22とを有し、
前記架橋部22に、前記隣り合うチューブ11間に突出するピン30を設け、
前記ピン30の頂部30aを前記チューブ11の第2面11bよりも突出させたことを特徴としている。
【0010】
ここで、ピン30は、圧縮パッド20から突出する突出量が固定されているものであっても、圧縮パッド20から突出する突出量が可変するものであってもよい。
【0011】
したがって、圧縮パッド20の架橋部22にチューブ11の第2面11bよりも突出するピン30が設けられているので、チューブ11の発熱体側の表面にシート状部材40(熱伝導シートが貼着されたフィルム等)を配置させる場合に、ピン30によってシート状部材40の位置ずれを防止することが可能となる。
【0012】
また、上述の構成において、前記圧縮パッド20の最も外側の端部チューブ保持部21aには、さらに外側へ延設された延設部25を備え、この延設部25にも前記チューブ11の第2面11bよりも突出させたピン30を設けるようにしてもよい。
このような構成においては、端部チューブ保持部21aの両側にピン30を配設することが可能となり、チューブ11と発熱体2との間に介在させるシート状部材40の位置ずれをより確実に抑えることが可能となる。
【0013】
さらに、圧縮パッド20の架橋部22は、チューブ11の延伸方向を基準として間隔を開けて複数設けられ、架橋部22のうち延伸方向の端にある端部架橋部22aに設けられる端部ピン30eは、発熱体2で覆われない部分に設けられるようにしてもよい。
このような構成においては、圧縮パッド20のチューブ11の延伸方向の端にある端部架橋部22aに設けられる端部ピン30eが発熱体2で覆われない部分に配置されるので、端部ピン30eを発熱体2との干渉を気にすることなく(ピン30の厳格な寸法管理を行うことなく)、チューブ11と発熱体2との間に介在させるシート状部材40(熱伝導シート41が貼着されたフィルム42)に十分に挿通させることが可能となり、より確実にシート状部材40の位置ずれを抑えることが可能となる。
【0014】
なお、前記ピン30は、外力によって当該ピン30の延伸方向に収縮可能としてもよい。
このようにピン30を外力によって収縮可能とすることで、ピン30の頂部30aに発熱体や他部品が当接してもピン30は直ちに破損せず、シート状部材40の位置ずれを継続して抑えることができる。
【0015】
以上の発熱体冷却用熱交換器1を用いた発熱体冷却構造としては、前記発熱体2は、フィルム42に貼着された熱伝導シート41を介して前記チューブ11上に載置され、前記フィルム42は、前記熱伝導シート41と前記チューブ11との間に配置され、前記ピン30は、前記フィルム42に設けられた位置決め穴43に挿通されるようにするとよい。
このような冷却構造においては、圧縮パッド20に設けられたピン30をフィルムの位置決め穴43に挿通させることでフィルム42の位置を規定することができるので、熱伝導シート41をチューブ11と発熱体2との間にずれることなく配置させることが可能となる。
【0016】
ここで、フィルム42が、これに貼着される熱伝導シート41よりも大きく形成され、チューブ11の並設方向に複数設けられる場合には、隣り合うフィルム42は、部分的に重なり合うように配置され、重なり合う部分に前記位置決め穴43を設けるようにしてもよい。
熱交換器本体10よりも面積の小さなフィルム42が複数用いられる場合に、フィルム42の位置決めとして同一のピン30を共用することができ、フィルム42の大きさについて設計自由度を向上することが可能となる。
【0017】
以上の構成においては、前記発熱体2と前記熱伝導シート41との間および前記発熱体2と前記間隔Dとの間に、前記発熱体2の冷却領域の偏りを低減する均熱板15をさらに設けるようにしてもよい。
このような構成においては、発熱体2のうち熱伝導シート41と熱的に結合する領域だけでなく、チューブ11の間隔Dに対応する領域の熱についても、均熱板15によって熱伝導シート41に伝達することができるので、発熱体2をより均等に冷却することが可能となる。
【0018】
なお、前記ピン30の前記圧縮パッド20からの突出量D3は、前記発熱体2を前記熱伝導シート41を介して前記チューブ11に固定した状態で、前記ピンが前記位置決め穴43を挿通し、前記発熱体2に接触しない量にするとよい。
また、発熱体2と熱伝導シート41との間に均熱板15が設けられる場合には、前記ピン30は均熱板15に接触しない量にするとよい。
【0019】
また、位置決め穴43と対向する前記発熱体2の底部2bには、凹部2cを設けるようにしてもよい。
このような構成とすれば、ピン30が発熱体2に干渉することが無くなるので、ピン30を発熱体2との干渉を気にせずに、フィルム42の位置決め穴43に十分に挿通させることが可能となり、フィルム42(熱伝導シート41)の位置決めを確実に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
以上述べたように、本発明に係る発熱体冷却用熱交換器は、チューブと設置部との間に配置されると共に、チューブの第1面に装着されて該チューブを保持する圧縮パッド、を備え、この圧縮パッドを、チューブに沿って延設されると共にチューブの第1面に装着されるチューブ保持部と、隣り合うチューブ保持部を連結する架橋部と、を有して構成し、架橋部に、隣り合うチューブ間に突出するピンを設け、ピンの頂部をチューブの第2面よりも突出させるようにしたので、チューブの発熱体側の表面にシート状部材(熱伝導シートが貼着されたフィルム)を配置させる場合において(発熱体とチューブとの間にシート状部材を介在させる場合において)、ピンによってシート状部材の位置ずれを防止することが可能となる。
よって、シート状部材を現場において格別な能力や経験を要せずにチューブ上の意図した位置に確実に配置させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明に係る発熱体冷却用熱交換器を用いた冷凍サイクルの例を示す図である。
図2図2は、本発明に係る発熱体冷却用熱交換器を示す平面図であり、圧縮パッドをチューブ4つ分の大きさとした例を示す。
図3図3(a)は、図2で示す発熱体冷却用熱交換器の一部を示す分解斜視図であり、図3(b)は、図3(a)で示す部材を組み付けた状態を示す斜視図である。
図4図4は、本発明に係る発熱体冷却用熱交換器の熱交換器本体を示す図である。
図5図5は、本発明に係る発熱体冷却用熱交換器に用いられるピンを示す側面図である。
図6図6は、本発明に係る発熱体冷却用熱交換器を示す図であり、(a)は、図2及び図3(b)のA-A線から見た図、(b)は、図2及び図3(b)のB-B線から見た図である。
図7図7は、本発明に係る発熱体冷却用熱交換器にシート状部材(熱伝導シートが貼着されたフィルム)及び均熱板を介してバッテリを取り付ける前の状態を示す斜視図である。
図8図8は、バッテリの冷却構造を示す図であり、(a)は、バッテリを設置部に固定する前の状態をチューブの延伸方向から見た図であり、(b)は、バッテリを設置部に固定した後の状態をチューブの延伸方向から見た図である。
図9図9は、バッテリの冷却構造を示す図であり、(a)は、バッテリを設置部に固定する前の状態をチューブの延伸方向に直交する方向から見た図であり、(b)は、バッテリを設置部に固定した後の状態をチューブの延伸方向に直交する方向から見た図である。
図10図10は、圧縮パッドの最も外側の端部チューブ保持部にさらに外側へ延設された延設部を設け、この延設部にもピンを設けた構成例を示す発熱体冷却用熱交換器を示す平面図である。
図11図11は、図10で示す発熱体冷却用熱交換器の一部を示す分解斜視図である。
図12図12は、図10で示す発熱体冷却用熱交換器とバッテリとの間に配置させるシート状部材を示す斜視図である。
図13図13は、図10で示す発熱体冷却用熱交換器と図12で示すシート状部材とを用いたバッテリの冷却構造を示す図であり、(a)は、バッテリを設置部に固定する前の状態をチューブの延伸方向から見た図であり、(b)は、バッテリを設置部に固定した後の状態をチューブの延伸方向から見た図である。
図14図14は、バッテリを設置部に設置する他の発熱体冷却構造を示す図であり、(a)は、バッテリを設置部に固定する前の状態をチューブの延伸方向に直交する方向から見た図であり、(b)は、バッテリを設置部に固定した後の状態をチューブの延伸方向に直交する方向から見た図である。
図15図15は、発熱体(バッテリ)を設置部に設置する他の発熱体冷却構造を示す図であり、(a)は、バッテリを設置部に固定する前の状態をチューブの延伸方向から見た図であり、(b)は、バッテリを設置部に固定した後の状態をチューブの延伸方向から見た図である。
図16図16は、バッテリを設置部に設置する他の発熱体冷却構造を示す図であり、(a)は、バッテリを設置部に固定する前の状態をチューブの延伸方向から見た図であり、(b)は、バッテリを設置部に固定した後の状態をチューブの延伸方向から見た図である。
図17図17は、ピンの他の例を示す側面図であり、(a)はピンが収縮していない状態を示す図、(b)は外力によって延伸方向に収縮した状態を示す図である。
図18図18は、本発明に係る発熱体冷却用熱交換器の他の実施形態を示す平面図であり、圧縮パッドをチューブ2つ分の大きさのものと、チューブ4つ分の大きさのものと、を組み合わせた例を示す。
図19図19は、図18で示す発熱体冷却用熱交換器の一部を示す分解斜視図と、その上方に載置されるシート状部材とを示す斜視図である。
図20図20は、本発明に係る発熱体冷却用熱交換器の他の実施形態を示す平面図であり、圧縮パッドをチューブ2つ分の大きさのものを並設させた例を示す。
図21図21は、図20で示す発熱体冷却用熱交換器の一部を示す分解斜視図と、その上方に載置されるシート状部材とを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る発熱体冷却用熱交換器の実施形態を図面により説明する。
なお、以下の説明で用いられる図は、模式的はものであり、図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致しない。また、以下の例では、発熱体として車両に搭載されるモータ駆動用のバッテリを用いた場合を示す。
【0023】
[第1実施形態]
図1において、本発明に係る発熱体冷却用熱交換器1を用いた車載用冷却装置100が示されている。この車載用冷却装置100は、車両走行用の電力を蓄電可能とするバッテリ2を発熱体冷却用熱交換器1によって冷却可能とするバッテリ温度管理装置3と、車室へ供給する空気を冷却可能とする空気冷却用熱交換器4を備えた空調用ユニット5と、に冷媒を供給する冷凍サイクル101を有している。
【0024】
冷凍サイクル101は、具体的には、冷媒を圧縮する圧縮機6と、圧縮機6で圧縮された冷媒を放熱する放熱器7と、バッテリ2を冷却可能とする発熱体冷却用熱交換器1と、放熱器7で放熱された冷媒を減圧膨張して発熱体冷却用熱交換器1へ供給する冷媒量を調節する発熱体冷却用膨張装置8と、車室に送風される空気を冷却する空気冷却用熱交換器4と、放熱器7で放熱された冷媒を減圧膨張して空気冷却用熱交換器4へ供給する冷媒量を調節する空気冷却用膨張装置9と、を有して構成されている。
【0025】
発熱体冷却用熱交換器1と空気冷却用熱交換器4は、圧縮機6及び放熱器7に対して並列的に接続されている。放熱器7の下流側の冷媒管路102は、発熱体冷却用膨張装置8を介して発熱体冷却用熱交換器1へ向かう管路102aと空気冷却用膨張装置9を介して空気冷却用熱交換器4へ向かう管路102bとを分岐させる分岐点Bを備え、放熱器7から流出した冷媒を、分岐点Bを介して発熱体冷却用膨張装置8と空気冷却用膨張装置9へ導くようにしている。
【0026】
また、圧縮機6より上流側の冷媒の管路103は、発熱体冷却用熱交換器1から流出した冷媒の管路103aと空気冷却用熱交換器4から流出した冷媒の管路103bとを合流させる合流点Jを備え、発熱体冷却用熱交換器1から流出した冷媒を合流点Jを介して圧縮機6に戻し、また、空気冷却用熱交換器4から流出した冷媒を合流点Jを介して圧縮機6に戻すようにしている。
【0027】
ここで、空気冷却用膨張装置9は、空気冷却用熱交換器4から圧縮機6に向かう冷媒の温度、または冷媒の温度及び圧力を感知して放熱器7で放熱された冷媒の空気冷却用熱交換器4への供給流量を自律的に調節する機械式膨張弁で構成されているが、発熱体冷却用熱交換器1への供給流量を調節する発熱体冷却用膨張装置8は、外部からの制御信号で開度が制御される電子式膨張装置が用いられる。
【0028】
発熱体冷却用熱交換器1は、図2及び図3に示されるように、冷媒を流通させる熱交換器本体10と、この熱交換器本体10に装着されてこの熱交換器本体10を支持する圧縮パッド20と、この圧縮パッド20に取付けられるピン30とを有して構成されている。
【0029】
熱交換器本体10は、バッテリ2に熱的に結合させてバッテリ2を冷却するもので、特開2016-35378号公報で示される熱交換器と実質的に同様の構成を有している。すなわち、熱交換器本体10は、図4にも示されるように、所定の間隔Dを開けて並行に配置された複数の扁平状のチューブ11と、各々のチューブ11の両端部のそれぞれに配置された流入側ヘッダ12及び流出側ヘッダ13とを有して構成され、流入口12aを介して流入側ヘッダ12に流入された冷媒を各チューブ11に分配流通させ、その後、流出側ヘッダ13で集約された後に流出口13aから流出させるようにしている。バッテリ2は、この熱交換器本体10のチューブ11上に配置され、このチューブ11との間に介在される後述するシート状部材40を介して熱的に結合される。
ここで、各チューブ11において圧縮パッド20によって支持される側の平坦面を第1面11a、また、バッテリ2が載置される側の平坦面を第2面11bとする。
【0030】
圧縮パッド20は、熱交換器本体10のチューブ11とバッテリ2を設置する車両の床等に設けられた設置部F(図8図9参照)との間に配設されるもので、弾性を有しつつ熱交換器本体10のチューブ11を安定して保持できる硬質ゴム等の材質で構成されたシート状のもので、厚みは例えば6mm程度に設定されている。この圧縮パッド20は、熱交換器本体10の全チューブ11を保持する範囲で設置されるもので、全チューブ11を保持する1枚のシート状のものであっても、複数のシート状パッドを並設して全チューブを保持するものであってもよい。この例では、8本のチューブ11が併設されている熱交換器本体10に対して、4本のチューブ11を保持可能な大きさの圧縮パッド20を2枚並設させている。
【0031】
図3(a)を参照する。それぞれの圧縮パッド20は、チューブ11に沿って延設されると共にチューブ11の第1面11aに装着されるチューブ保持部21と、隣り合うチューブ保持部21を連結する架橋部22とを有している。架橋部22は、チューブ保持部21の延伸方向の両端部に設けられる端部架橋部22aとチューブ保持部21の中間部に設けられる中間架橋部22bとから構成され、圧縮パッド20は、チューブ保持部21と架橋部22とで囲まれた矩形状の開口部が縦横に複数形成されて全体が矩形格子状に形成されている。
なお、端部架橋部22a間に設けられる中間架橋部22bは、この例では1つであるが、間隔を開けて複数設けられるものであってもよい。あるいは、チューブ11の延伸方向の長さが十分に短い場合には、中間架橋部22bを有さないことでもよい。
【0032】
チューブ保持部21のチューブ11の延伸方向の長さは熱交換器本体10の一対のヘッダ間の長さに略等しいか、それよりも短くなっている。また、チューブ保持部21の並設方向での幅は、チューブ11の並設方向での幅に略等しいか、それよりも小さく形成されている。それぞれのチューブ保持部21は、熱交換器本体10を平面視した場合にチューブ11と重なり、チューブ11からはみ出た状態とならないようにしてある。
【0033】
圧縮パッド20のチューブ保持部21と熱交換器本体10のチューブ11の第1面11aは、例えば、一方又は双方に予め塗布又は貼着された粘着剤によって互いに装着(貼着)される。この貼着剤は、圧縮パッド20の熱交換器本体10と対向する側の面全体に設けられるものであっても(この場合には、架橋部22に設けられる貼着剤はチューブ11との接合に寄与しない)、チューブ11の第1面11aと対向するチューブ保持部21のみに設けられるものであってもよい。
【0034】
そして、それぞれの架橋部22の略中央には、ピン30を装着させるピン通孔23が形成され、このピン通孔23に隣り合うチューブ11間に突出可能なピン30が挿着されている。
このピン30は、金属製のものであっても、合成樹脂製のものであってもよく、圧縮パッド20の架橋部22に設けられたピン通孔23に後付けで取り付けられる。この例において、ピン30は、全長が所定長に固定され、図5に示されるように、圧縮パッド20のピン通孔23に挿通してこのピン通孔23の上端および下端の開口周縁に上方および下方から係止するフランジ部31a,31bが設けられた係合部31と、この係合部31から上方へ突出して先端部32aが半球状に形成されたロッド部32とが一体に形成されている。このロッド部32の先端部32aがピン30の頂部30aを成している。
【0035】
係合部31のフランジ部31a,31b間の幅は、圧縮パッド20の厚みD2に略等しく形成されており、したがって、圧縮パッド20のピン通孔23にピン30を挿入して係合部31に圧縮パッド20を配置させると、圧縮パッド20のピン通孔23の開口周縁にフランジ部31a,31bが係止された状態となり、ピン30は圧縮パッド20から抜けることなく係合された状態となる。また、ピン30の圧縮パッド20からの突出量(チューブ11の第1面11aと対峙する圧縮パッド20の面からの高さ)D3は、チューブ11の厚みD4よりも大きく設定されている(D3>D4)。
【0036】
そして、ピン30の係合部31を圧縮パッド20のピン通孔23に係合させ、この状態で架橋部22に設けられたピン30のロッド部32をチューブ11間に配置させつつ、圧縮パッド20のチューブ保持部21をチューブ11の第1面11aに貼着させると、図6にも示されるように、ピン30の頂部30aがチューブ11のバッテリ2が載置される側の平坦面(第2面11b)よりも突出した発熱体冷却用熱交換器1が形成される。
【0037】
あるいは、圧縮パッド20のチューブ保持部21をチューブ11の第1面11aに貼着させたのち、ピン30の係合部31を圧縮パッド20のピン通孔23に係合させることで、図6にも示されるように、ピン30の頂部30aがチューブ11のバッテリ2が載置される側の平坦面(第2面11b)よりも突出した発熱体冷却用熱交換器1を形成してもよい。
【0038】
このように形成された発熱体冷却用熱交換器1を用いて、車両に搭載されるバッテリ2を冷却させる冷却構造を車体上に構築するために、図7乃至図9に示されるように、発熱体冷却用熱交換器1を車両の床等の所定の設置部Fに圧縮パッド20を下にして設置し、熱交換器本体10のチューブ11の上部にバッテリ2の放熱性能を向上させるシート状部材40と、バッテリ2の冷却領域の偏りを低減するための均熱板15とを敷設し、その上方からバッテリ2を載置させる。
【0039】
ここで用いられるシート状部材40は、複数の熱伝導シート41が貼着されたフィルム42によって構成されている。熱伝導シート41は、熱伝導率の高い軟質の素材で形成され、TIM:Thermal Interface Materialsとして知られるエポキシ樹脂等からなるゴムシートが用いられ、チューブ11の第2面11bの形状に合わせて帯状に形成されている。そして、この熱伝導シート41をチューブ11の間隔に合せてフィルム42の表面上に複数並設させている。
【0040】
熱伝導シート41が貼着されているフィルム42は、可撓性を有すると共に、熱伝導シート41とチューブ11との位置関係が視認できるように透明または半透明に形成されていることが好ましい。この例では、フィルム42は、熱伝導シート41よりも面積が大きく形成され、また4本のチューブ11を覆うことが可能な大きさに形成されている。したがって、フィルム42上には、4つの熱伝導シート41がチューブ11と同間隔で並設されている。このようなシート状部材40は、フィルム42が、熱伝導シート41とチューブ11との間に配置されるよう、フィルム42をチューブ11の第2面11bに接触させるように取り付けられる。フィルム42の厚み寸法は特に指定しないが、薄いものであれば十分な熱伝導量を確保しやすく、好ましい。フィルム42は、例えば、厚さ寸法が75ミクロンから150ミクロンのものが用いられる。
そして、フィルム42の隣り合う熱伝導シート41間には、圧縮パッド20の架橋部22に設けられたピン30の位置に合せて位置決め穴43が形成され、ピン30は、このフィルム42に設けられた位置決め穴43に挿通可能となっている。
【0041】
また、均熱板15は、アルミニウム又はアルミニウム合金等の熱伝導の優れた素材で形成された板状のもので、バッテリ2の底面と同程度の大きさに形成され、また、シート状部材40のほぼ全体を覆うことができる程度の大きさに形成されている。
【0042】
したがって、発熱体冷却用熱交換器1、シート状部材40、及び均熱板15を用いて形成されるバッテリ冷却構造は、事前に組み立てられた発熱体冷却用熱交換器1、すなわち圧縮パッド20がチューブ11の第1面11aに装着され、この圧縮パッド20のピン通孔23にピン30が挿入された発熱体冷却用熱交換器1を、圧縮パッド20を下にして設置部Fに設置し、この発熱体冷却用熱交換器1のチューブ11の上面に、シート状部材40をフィルム42を下にして載置し、フィルム42に形成した位置決め穴43にピン30の頂部30aを挿通させる。そして、シート状部材40の上方に均熱板15を載置し、この均熱板15を介してバッテリ2をシート状部材40の熱伝導シート41上に配置させることで得られる。
【0043】
これにより、発熱体冷却用熱交換器1のチューブ11上に載置されたシート状部材40は、フィルム42の位置決め穴43にピン30が挿通されているので、均熱板15やバッテリ2をシート状部材40を介して発熱体冷却用熱交換器1のチューブ11上に載置させる際や、バッテリ2を設置部Fに固定する際にフィルム42(シート状部材40)が位置ずれすることがなくなり、熱伝導シート41をチューブ11上の所定箇所に配置させることが可能となる。このため、熱伝導シート41はチューブ11の第2面11bにずれることなく配置されて均熱板15に密着されるので、バッテリ2から均熱板15で受けた熱を熱伝導シート41を介して効率良く発熱体冷却用熱交換器1(チューブ11内の冷媒)で回収することが可能となる。
【0044】
また、シート状部材40とバッテリ2との間に均熱板15が配置されるので、
バッテリ2のうち熱伝導シート41と熱的に結合する領域だけでなく、隣り合うチューブ11の間隔Dに対応する領域の熱についても、均熱板15によって熱伝導シート41に伝達することができるので、バッテリ2をより均等に冷却することが可能となる(バッテリ2の冷却領域の偏りを低減することが可能となる)。
【0045】
また、均熱板15を設けずに、シート状部材40(熱伝導シート41)にバッテリ2を直接載置させた場合においても、バッテリ2は、熱伝導シート41に密着された状態でこの熱伝導シート41を介してチューブ11上に配置されるので、バッテリ2の熱を熱伝導シート41を介して効率よく発熱体冷却用熱交換器1(チューブ11内の冷媒)で回収することが可能となる。
【0046】
なお、発熱体冷却用熱交換器1のチューブ11上にシート状部材40を介してバッテリ2を載置した後は、バッテリ2を設置部Fに固定するためにバッテリ2に設けられた取付脚2aを設置部Fに設けられた受座部50にねじ留めする。
この際、バッテリ2や発熱体冷却用熱交換器1の製品誤差やねじ51の締付具合に応じて圧縮パッド20や熱伝導シート41の圧縮状態が変更されるが、規定の固定状態が形成された場合には、ピン30の頂部30aがフィルム42の位置決め穴43を通過するものの、バッテリ2に接触しないように(均熱板15が設けられる場合には、この均熱板15に接触しないように)ピン30の長さが設定されている。
【0047】
[変形例1]
以上においては、チューブ11間にピン30を配設するよう圧縮パッド20の架橋部22にピン30を設けるようにしているが、図10及び図11に示されるように、圧縮パッド20の最も外側のチューブ保持部21(端部チューブ保持部21a)に、さらに外側へ延設された延設部25を設け、この延設部25にもチューブ11の第2面11bよりも突出させたピン30を設けるようにしてもよい。
【0048】
延設部25は、圧縮パッド20の端部チューブ保持部21aにおいて、延伸方向について架橋部22と同じ位置にあり、且つ、架橋部22と反対側に局所的に突設されるものであっても、端部チューブ保持部21aを幅広に形成し、架橋部22と反対側へ全体的に突設させるものであってもよい(図10は前者を示す)。
そして、熱伝導シート41が貼着されたフィルム42においても、図12図13に示されるように、圧縮パッド20の延設部25をも覆うことができる程度の大きさに形成し、この延設部25を覆う部分であって延設部25に設けられたピン30と対峙する部位にも該ピン30を挿通させる位置決め穴43が設けられている。
【0049】
このような構成においては、圧縮パッド20の最も外側の端部チューブ保持部21aの両側にもピン30が配設されることになるので、チューブ11と熱交換器本体10との間に介在させるシート状部材40(熱伝導シート41が貼着されたフィルム42)の位置ずれをより確実に抑えることが可能となる。
【0050】
[変形例2]
以上の構成は、圧縮パッド20の架橋部22に設けられる全てのピン30がバッテリ2で覆われる場合を想定したものであったが、図14に示されるように、チューブ11の延伸方向を基準として間隔を開けて複数設けられた架橋部22のうち延伸方向の端にある端部架橋部22aに設けられる端部ピン30eについては、バッテリ2で覆われない部分に設けるようにしてもよい。
このような構成においては、圧縮パッド20のチューブ11の延伸方向の端にある端部架橋部22aに設けられる端部ピン30eがバッテリ2で覆われない部分に配置されるので、シート状部材40の取付状態を目視をもって確認し易くなり、シート状部材40の位置決めをし易いものとなる。
【0051】
また、圧縮パッド20に設けられるピン30がバッテリ2(又は、均熱板15)で覆われる場合には、ピン30がバッテリ2(又は、均熱板15)と干渉すると破損する虞があるため、ピン30の長さ寸法の選定や圧縮パッド20の圧縮量の厳格な寸法管理が必要となるが、端部ピン30eがバッテリ2で覆われない部分に配置される場合には、端部ピン30eのバッテリ2(又は、均熱板15)との干渉を気にする必要がなくなる(ピン30や圧縮パッド20の圧縮量の厳格な寸法管理が不要となる)。
このため、バッテリ2(又は、均熱板15)で覆われない端部ピン30eについては、相対的に長いピン30を用いることで、熱伝導シート41が貼着されたフィルム42に十分に挿通させることが可能となるので、より確実にシート状部材40の位置ずれを抑えることが可能となる。
そして、バッテリ2(又は、均熱板15)で覆われない部分に配置された端部ピン30eの上記効果を効率的に発揮するために、発熱体冷却用熱交換器1のピン30を、すべて端部ピン30eとしてもよい。シート状部材40の取付状態を、目視をもって確認し易くなる。ピン30や圧縮パッド20の圧縮量の厳格な寸法管理が不要となり、バッテリ2のチューブ11への押し付け力の調整が容易になる。長いピン30を用いることで、熱伝導シート41が貼着されたフィルム42に十分に挿通させることが可能となる。
【0052】
[変形例3]
以上までの構成においては、バッテリ2で覆われるピン30については、ピン30の厳格な寸法管理が必要となるものであったが、図15に示されるように、フィルム42の位置決め穴43(圧縮パッド20に設けられるピン30)と対向するバッテリ2の底部2bに凹部2cを設け、ピン30の頂部30aがバッテリ2に干渉する虞を無くすようにしてもよい。
このような構成においては、ピン30がバッテリ2に干渉することが無くなるので、寸法が長いピン30を用いた場合でも、ピン30とバッテリ2との干渉を気にする必要がなくなる(ピン30の厳格な寸法管理が不要となる)。このため、ピン30をフィルム42の位置決め穴43に十分に挿通させることが可能となり、フィルム42(熱伝導シート41)の位置決めを確実に行うことが可能となる。また、圧縮パッド20の圧縮量の厳格な寸法管理が不要となり、バッテリ2のチューブ11への押し付け力の調整が容易になる。
【0053】
[変形例4]
以上までの構成においては、所定長のピン30を用いた例を示したが、図16及び図17に示されるように、ピン30は、外力によって当該ピン30の延伸方向に収縮可能な構造としてもよい。例えば、同図に示されるように圧縮パッド20のピン通孔23に取付けられて、延伸方向に外力が加えられていない場合に伸長し、延伸方向に外力が加えられた場合に収縮するパンタグラフ式の伸縮ピン300を用いてもよい。このような伸縮ピン300は、例えば、バッテリ2がシート状部材40を介してチューブ11に載置される場合にピン30の頂部30aがバッテリ2に当接させた状態で取り付けられ、また、バッテリ2と熱伝導シート41との間に均熱板15が設けられる場合には、ピン30の頂部30aは均熱板15に当接させた状態で取り付けられる。
したがって、このような伸縮ピン300を用いる場合には、伸縮ピン300の頂部300aは、伸縮の前後でチューブの第2面11bよりも突出し状態となっている(伸縮ピン300の圧縮パッド20からの突出量(チューブ11の第1面11aと対峙する圧縮パッド20の面からの伸縮ピン300の突出量)D3は、チューブ11の厚みD4よりも大きく設定されている(D3>D4))。
このような構成によれば、延伸方向に収縮可能なピン300の頂部300aにバッテリ2や均熱板15が接した状態でも、伸縮ピン300は直ちに破損せず、シート状部材40の位置ずれを継続して抑えることが可能となる。また、ピン30(伸縮ピン300)や圧縮パッド20の圧縮量の厳格な寸法管理も不要となる。
【0054】
なお、伸縮ピン300の圧縮パッド20からの突出量D3が、チューブ11の厚みD4よりも大きく設定(D3>D4)されていれば、バッテリ2がシート状部材40を介してチューブ11に載置され、ねじ51によってバッテリ2の取付脚2aが受座部50にねじ留めされる前のとき、必ずしも伸縮ピン300の頂部300aがバッテリ2に当接されていなくともよい。同様に、バッテリ2と熱伝導シート41との間に均熱板15が設けられる場合、バッテリ2がシート状部材40を介してチューブ11に載置され、ねじ51によってバッテリ2の取付脚2aが受座部50にねじ留めされる前のとき、必ずしも伸縮ピン300の頂部300aは均熱板15に当接されていなくともよい。
【0055】
[第2実施形態]
図18及び図19において、発熱体冷却用熱交換器1の第2実施形態が示されている。
この例では、8本のチューブ11を有する熱交換器本体10に対して、異なる大きさの圧縮パッド20が装着されている。すなわち、8本のチューブ11のうち、外側から2本のチューブは、2つのチューブ保持部21が併設された圧縮パッド(2列パッド)20―2をチューブ11の第1面11aに装着し、中程の4本のチューブは、4つのチューブ保持部21が併設された圧縮パッド(4列パッド)20―4をチューブ11の第1面11aに装着している。
【0056】
それぞれの圧縮パッド20において、隣り合うチューブ保持部21が架橋部22で連結されている構成、架橋部22にピン30が設けられている構成は、第1実施形態と同様である。
発熱体冷却用熱交換器1の上部に敷設されるシート状部材40(熱伝導シート41が貼着されたフィルム42)は、第1実施形態と同様、チューブ11の第2面11bの大きさに合せて帯状に形成された複数の熱伝導シート41と、この複数の熱伝導シート41よりも大きく形成されたフィルム42とを備えている。
シート状部材40(フィルム42)は、チューブ11の並設方向で2枚設けられ、特にこの例においては、それぞれのシート状部材40のフィルム42は、チューブ11の並設方向で部分的に重なり合うように配置され、重なり合うフィルム42の部分には、互いに整合した位置にピン30を挿通可能な位置決め穴43が設けられている。
なお、他の構成は、第1実施形態と同様であるので、同一箇所に同一符号を付して説明を省略する。
【0057】
圧縮パッド20やシート状部材40はそれぞれ、熱交換器本体10のチューブ11の本数に合わせて設定されることが好ましい。一方、熱交換器本体10のチューブ11の本数は、バッテリ2の大きさに応じて変更されることがある。このため、熱交換器本体10の大きさに応じて、大きさの異なる圧縮パッド20やシート状部材40が、中間部材として生産されることがある。ここで、熱交換器本体10、圧縮パッド20、シート状部材40のそれぞれが、中間部材として、チューブ11の並ぶ方向において異なる大きさの部品の入手が容易であるとき、本実施形態を採用することで発熱体冷却用熱交換器1としての高い冷却作用を発揮することができ、生産性を向上することができる。また、フィルム42の重なり合う部分について、フィルム42の位置決めのために同一のピン30を共用することができるので、フィルム42の大きさについて設計自由度を向上させることが可能となる。
【0058】
このような発熱体冷却用熱交換器1とシート状部材40を用いた冷却構造においても、発熱体冷却用熱交換器1の上でのシート状部材40(熱伝導シート41)の位置ズレを防ぐことが可能となり、熱伝導シート41をチューブ11上にずれることなく所定の位置に配置させることが可能となる。そして、この熱伝導シート41上にバッテリ2を載置させることで、バッテリ2は、熱伝導シート41が密着された状態でこの熱伝導シート41を介してチューブ11上に配置されるので、バッテリ2の熱を熱伝導シート41を介して効率よく発熱体冷却用熱交換器1で回収することが可能となる。
【0059】
また、シート状部材40とバッテリ2との間に図示しない均熱板15が配置される場合には、バッテリ2のうち熱伝導シート41と熱的に結合する領域だけでなく、隣り合うチューブ11の間隔Dに対応する領域の熱についても、均熱板15によって熱伝導シート41に伝達することができるので、バッテリ2をより均等に冷却することが可能となる(バッテリ2の冷却領域の偏りを低減することが可能となる)。
【0060】
[第3実施形態]
図20及び図21において、発熱体冷却用熱交換器1の第3実施形態が示されている。
この例では、8本のチューブ11を有する熱交換器本体10に対して、2つのチューブ保持部21が併設された圧縮パッド(2列パッド)20―2を4つ用い、それぞれの圧縮パッド20-2を隣り合う2本のチューブを一組として順次装着させるようにしている。それぞれの圧縮パッド20-2において、隣り合うチューブ保持部21が架橋部22で連結されている構成、架橋部22にピン30が設けられている構成等は、第1実施形態と同様である。
【0061】
発熱体冷却用熱交換器1の上部に敷設されるシート状部材40(熱伝導シート41が貼着されたフィルム42)は、第1実施形態で用いたシート状部材40と同様のものであり、熱交換器本体10の複数のチューブ11を覆うことができる大きさのフィルム42にそれぞれのチューブ11に対応させた熱伝導シート41を貼着して構成されている。
なお、他の構成は、第1実施形態と同様であるので、同一箇所に同一符号を付して説明を省略する。
【0062】
このような構成においても、各シート状部材40が2つの圧縮パッド20に跨るように配置されるので、熱交換器本体10やシート状部材40と圧縮パッド20とのチューブ11の並び方向の大きさが異なったとしても、高い冷却作用を発揮できる発熱体冷却用熱交換器1を提供することができる。また、圧縮パッド20のチューブ保持部21が2本であるため、圧縮パッド20のチューブ11への装着作業を容易に行うことが可能となる。
【0063】
したがって、このような発熱体冷却用熱交換器1を用いた冷却構造においても、発熱体冷却用熱交換器1の上でのフィルム42(熱伝導シート41)の位置ズレを防ぐことが可能となり、熱伝導シート41をチューブ11上にずれることなく配置させることが可能となる。そして、この熱伝導シート41上にバッテリ2を載置させることで、バッテリ2は、熱伝導シート41が密着された状態でこの熱伝導シート41を介してチューブ11上に配置されるので、バッテリ2の熱を熱伝導シート41を介して効率よく発熱体冷却用熱交換器1で回収することが可能となる。
【0064】
また、シート状部材40とバッテリ2との間に図示しない均熱板15が配置される場合には、バッテリ2のうち熱伝導シート41と熱的に結合する領域だけでなく、隣り合うチューブ11の間隔Dに対応する領域の熱についても、均熱板15によって熱伝導シート41に伝達することができるので、バッテリ2をより均等に冷却することが可能となる(バッテリ2の冷却領域の偏りを低減することが可能となる)。
【0065】
なお、以上の各例では、発熱体2として車両に搭載されるモータ駆動用のバッテリを用いた場合について説明したが、モータ制御用の車載インバータ等の他の発熱体を冷却する場合にも同様の発熱体冷却用熱交換器1を用い、同様の冷却構造を採用することが可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 発熱体冷却用熱交換器
2 バッテリ(発熱体)
2c 凹部
10 熱交換器本体
11 チューブ
11a 第1面
11b 第2面
15 均熱板
20 圧縮パッド
21 チューブ保持部
21a 端部チューブ保持部
22 架橋部
22a 端部架橋部
23 ピン通孔
25 延設部
30 ピン
30a 頂部
30e 端部ピン
300 伸縮ピン
300a 伸縮ピンの頂部
40 シート状部材
41 熱伝導シート
42 フィルム
43 位置決め穴
F 設置部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21