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  • -インクジェット印刷装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154578
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】インクジェット印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241024BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
B41J2/01 121
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41M5/00 132
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068475
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】増田 秀太
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
【Fターム(参考)】
2C056EB49
2C056EB58
2C056EC14
2C056HA41
2H186AB01
(57)【要約】
【課題】被印刷物に印刷する画像の印字率に応じて、吐出不良を解消するとともに画像のつぶれのような画像劣化の発生を防止する。
【解決手段】被印刷物に対して、所定の画像をインクジェット印刷により印刷するインクジェットヘッドと、インクジェットヘッドにより印刷される被印刷物の領域を、所定の印字率以上の領域と、所定の印字率未満の領域に切り分ける切り分け部22と、所定の印字率以上の領域に対して、インクジェット印刷による着弾ドットの濡れ性を等方的に拡げる前処理を、インクジェットヘッドによる印刷の前に実行する前処理部23と、を備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷物に対して、所定の画像をインクジェット印刷により印刷する印刷手段と、
前記印刷手段により印刷される前記被印刷物の領域を、所定の印字率以上の領域と、前記所定の印字率未満の領域に切り分ける切り分け手段と、
前記所定の印字率以上の領域に対して、インクジェット印刷による着弾ドットの濡れ性を等方的に拡げる前処理を、前記印刷手段による印刷の前に実行する前処理手段と、
を備えることを特徴とするインクジェット印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被印刷物に対して、所定の画像をインクジェット印刷により印刷するインクジェット印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被印刷物に対して、所定の画像をインクジェット印刷により印刷するインクジェット印刷装置が良く知られている。
【0003】
このようなインクジェット印刷装置において、吐出不良のノズルが存在するヘッドを用いて印刷した場合、白スジが入り画像劣化するという問題がある。
【0004】
特許文献1には、インクジェットヘッド装置のインク印刷用の被印刷物を前処理することで、インク印刷点が異方的に拡がるように、拡がり特性に影響を与え、吐出不良の影響を低減する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-018571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示した技術では、インク滴が異方的に広がるような処理を行うことでその影響を低減する提案のため、インク液滴の着弾精度が出せない可能性や、インク液滴を等方的に拡げることができなく白筋が発生したままの場合がある。
【0007】
一方、全ての印刷画像に対して、吐出不良を解消するようなインク印刷点の拡がり処理を行うと、例えば、細字画像のような場合には、つぶれが生じてしまい画像品質の劣化につながってしまう。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、被印刷物に印刷する画像の印字率に応じて、吐出不良を解消するとともに画像のつぶれのような画像劣化が生じないようにインクジェット印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係るインクジェット印刷装置の特徴は、
被印刷物に対して、所定の画像をインクジェット印刷により印刷する印刷手段と、
前記印刷手段により印刷される前記被印刷物の領域を、所定の印字率以上の領域と、前記所定の印字率未満の領域に切り分ける切り分け手段と、
前記所定の印字率以上の領域に対して、インクジェット印刷による着弾ドットの濡れ性を等方的に拡げる前処理を、前記印刷手段による印刷の前に実行する前処理手段と、
を備えることにある。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るインクジェット印刷装置の特徴によれば、被印刷物に印刷する画像の印字率に応じて、吐出不良を解消するとともに画像のつぶれのような画像劣化の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るインクジェット印刷装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係るインクジェット印刷装置による切り分け部および前処理部の処理内容を模式的に説明した説明図である。(a)は、入力画像データの一例を示した図であり、(b)は、吐出不良のノズルが存在するインクジェットヘッドを用いて印刷した場合における被印刷物(基材)の印刷状態を示したであり、(c)は、前処理部による前処理を実行する領域を示した図であり、(d)は、吐出不良のノズルが存在するインクジェットヘッドを用いて印刷した場合において、前処理が実行された被印刷物(基材)の印刷状態を示したである。
図3】本発明の一実施形態に係るインクジェット印刷装置におけるプラズマ処理を説明した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一若しくは同等の部位や構成要素には、同一若しくは同等の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0013】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係るインクジェット印刷装置1のハードウェア構成を示すブロック図である。本図に示すように、インクジェット印刷装置1は、画像生成部10と、データ処理部20と、インクジェットヘッド制御部30とを備えている。
【0015】
画像生成部10は、アプリケーションソフトウェアなどを用いてカラーまたはモノクロの入力画像を生成する。
【0016】
データ処理部20は、画像生成部10により生成された入力画像データに対して、インクジェットヘッドの吐出不良を解消するとともに印刷された画像のつぶれのような画像劣化が生じないような出力画像データを生成する。
【0017】
インクジェットヘッド制御部30は、データ処理部20から出力された出力画像データに基づいて図示しないインクジェットヘッドを制御することで印刷を実行する。
【0018】
データ処理部20は、画像入力部21と、切り分け部22と、前処理部23と、画像出力部24とを備える。
【0019】
画像入力部21は、画像生成部10により生成された入力画像データを受信する。
【0020】
切り分け部22は、インクジェットヘッドのノズルからUVインクが吐出されることにより印刷される被印刷物(基材)の領域を、所定の印字率以上の領域である第1領域と、所定の印字率未満の領域である第2領域とに切り分ける。
【0021】
前処理部23は、第1領域に対して、インクジェット印刷による着弾ドットの濡れ性を等方的に拡げる前処理を、インクジェットヘッドによる印刷の前に実行することにより出力画像データを生成する。
【0022】
画像出力部24は、前処理部23による前処理が実行された後に、出力画像データをインクジェットヘッド制御部30へ出力し、インクジェットヘッド制御部30に印刷させる。
【0023】
図2は、本発明の一実施形態に係るインクジェット印刷装置1による切り分け部22および前処理部23の処理内容を模式的に説明した説明図である。図2(a)は、入力画像データの一例を示した図であり、(b)は、吐出不良のノズルが存在するインクジェットヘッドを用いて印刷した場合における被印刷物(基材)の印刷状態を示したであり、(c)は、前処理部23による前処理を実行する領域を示した図であり、(d)は、吐出不良のノズルが存在するインクジェットヘッドを用いて印刷した場合において、前処理が実行された被印刷物(基材)の印刷状態を示したである。
【0024】
図2(a)に示した例では、入力画像G11は、所定の印字率以上の領域である第1領域G111(ここでは、ベタ画像)と、所定の印字率未満の領域である第2領域G112(ここでは、文字画像のみが含まれる画像)とを有する。ここで、所定の印字率は、例えば、80%のようにしてベタ領域と文字領域とが2分割できるようにする。
【0025】
吐出不良のノズルが存在するインクジェットヘッドを用いて、図2(a)に示す出力画像データを印刷すると、図2(b)の画像G12に示すように、吐出不良のノズルが存在するインクジェットヘッドを用いて印刷した場合、吐出不良のノズルの位置に対応して、被印刷物(基材)の搬送方向に沿った白スジG12a,G12b,G12cが発生している。
【0026】
白スジG12a,G12b,G12cは、第1領域G111と、第2領域G112との両方に発生しているが、第1領域G111はベタ画像であるので、より白スジが目立つことになる。
【0027】
そこで、図2(c)の画像G13に示すように、前処理部23は、入力画像G11のまま印刷すると白スジが目立つ第1領域G131を前処理の対象領域として指定し、指定した第1領域G131に対して、インクジェット印刷による着弾ドットの濡れ性を等方的に拡げる前処理を実行する。前処理の処理内容については後述する。
【0028】
前処理部23が前処理を実行した結果、図2(d)の画像G14に示すように、第1領域G141においては、インクジェットヘッドから吐出されたUVインクが着弾した着弾ドットが広がることで、白スジG14a,G14b,G14cは、図2(b)に現れる白スジG12a,G12b,G12cと比較して線幅が約半分程度まで細くなり目立ち難くなっている。
【0029】
一方、第2領域G142においては、前処理が実行されることなく、図2(b)と同様に、文字がつぶれることなく良好に文字を印刷することができている。
【0030】
<前処理の処理内容>
前処理部23による前処理として、コロナ放電処理やプラズマ処理を用いることができる。コロナ放電処理は、絶縁された誘電体を有する電極と接地された導電体間に高周波、高電圧を印加し、空気を絶縁破壊してイオン化し、コロナ放電を発生させ、このコロナ放電中を被印刷物を通過することによって被印刷物表面を処理する方法である。
【0031】
プラズマ処理は、2対の電極間に高電圧を印加し、大気中の空気を放電させて極めて高いエネルギーの高いプラズマ状態とし、被印刷物表面に照射することにより処理する方法である。ここでは、プラズマ処理について説明する。
【0032】
プラズマ処理をインクジェットヘッドからのインク吐出前に被印刷物(基材)に行うことにより、被印刷物表面の汚れの除去、被印刷物が樹脂の場合は表面の分子結合膜を分解、金属の場合は表面の活性度の低い分子層を分解する。このように処理された被印刷物上にインクジェットヘッドよりUVインクを吐出することにより、被印刷物とUVインクとの濡れ性を向上させることができ、さらにUV照射機によりUVインクを紫外線硬化させることにより、被印刷物とUVインクとの密着性を向上させることが可能となる。また、被印字物表面の処理レベルを調整することにより、被印字物上でのインク滴の広がりを調整することができ、この状態でインクを紫外線硬化させることにより高品質の印字品質を得ることができる。
【0033】
具体的には、図3に示すように、被印刷物(基材)P上でプラズマ状態とし、被印刷物表面に照射することにより官能基を導入する処理を行い、被印刷物(基材)P自体の表面張力γs、もしくは被印刷物(基材)PとUVインク間の界面張力γlsを変化させ、被印刷物(基材)に着弾したインク滴を等方的に広げる。
【0034】
このように、本発明の一実施形態に係るインクジェット印刷装置1によれば、インクジェットヘッドにより印刷される被印刷物Pの領域を、所定の印字率以上の領域と、所定の印字率未満の領域に切り分ける切り分け部22と、所定の印字率以上の領域に対して、インクジェット印刷による着弾ドットの濡れ性を等方的に拡げる前処理を、インクジェットヘッドによる印刷の前に実行する前処理部23とを備えているので、被印刷物Pに印刷する画像の印字率が高いベタ画像領域には、着弾ドットの濡れ性の等方的拡がりで吐出不良を解消し、印字率の低い文字画像のような画像領域には、つぶれのような画像劣化が生じないようなインクジェット印刷装置を提供できる。
【0035】
具体的には、前処理により着弾ドットの濡れ性の等方的拡がりを実現することで、着弾位置などにより副走査方向(搬送方向)に不都合な白スジを目立たなくすることができる。
【0036】
また、前処理としてプラズマ処理を実行することになり、荷電粒子により被印刷物の表面エネルギー(表面の官能基など)を変化させることで、インク滴を広げることができる。
【0037】
さらに、等方的な前処理とすることで、高電圧や高電流のスイッチングを高速にせずにすみ、低コストに実現可能となると共に、高速で周期的な駆動が不要であることから低ノイズで機能の実現が可能となる。
【0038】
所定の印字率以上の領域としてベタ領域に前処理を行い、所定の印字率未満の領域として細字などの精細な文字領域には前処理を行うことなく印刷を実行できるので、等方的な前処理を実行したとしても、ベタ領域以外ではたとえば細字のつぶれが生じないため、高精細な印刷が可能となる。
【0039】
(付記)
本出願は、以下の発明を開示する。
【0040】
(付記1)
被印刷物に対して、所定の画像をインクジェット印刷により印刷する印刷手段と、
前記印刷手段により印刷される前記被印刷物の領域を、所定の印字率以上の領域と、前記所定の印字率未満の領域に切り分ける切り分け手段と、
前記所定の印字率以上の領域に対して、インクジェット印刷による着弾ドットの濡れ性を等方的に拡げる前処理を、前記印刷手段による印刷の前に実行する前処理手段と、
を備えることを特徴とするインクジェット印刷装置。
【0041】
これにより、被印刷物に印刷する画像の印字率が高いベタ画像領域には、着弾ドットの濡れ性の等方的拡がりで吐出不良を解消し、印字率の低い文字画像のような画像領域には、つぶれのような画像劣化が生じないようなインクジェット印刷装置を提供できる。
【符号の説明】
【0042】
1 画像処理装置
1 インクジェット印刷装置
10 画像生成部
20 データ処理部
21 画像入力部
22 切り分け部
23 前処理部
24 画像出力部
30 インクジェットヘッド制御部
図1
図2
図3