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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154579
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】半導体装置の制御システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/00 20060101AFI20241024BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
H01L25/00 B
H01L25/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068476
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】附田 正則
(72)【発明者】
【氏名】大塚 翔瑠
(57)【要約】
【課題】本開示は、半導体モジュールの大型化を防ぐことが可能な半導体装置の制御システムを提供することを目的とする。
【解決手段】本開示による半導体装置の制御システムは、取得部と検出部と判断部と出力部とを備え、検出部は両面プリント基板に設けられたコイル構造、往路、および復路で構成され、コイル構造は両面プリント基板の表層および裏層と、内側貫通ビアおよび外側貫通ビアとを含み、往路および復路は表層または裏層において平面視で周回するように設けられ、内側貫通ビアおよび外側貫通ビアは周回に沿って等間隔に設けられ、往路または復路の一方は表層および裏層において、内側貫通ビアと外側貫通ビアとに接続されかつ内側貫通ビアまたは外側貫通ビアの周辺以外の少なくとも一部が平面視で重畳し、往路または復路の他方は内側貫通ビアまたは外側貫通ビアに対してコイル構造とは反対側において往路または復路の一方に沿うように設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PWM(Pulse Width Modulation)信号を取得する取得部と、
半導体装置を流れる電流の磁界信号を検出する検出部と、
前記取得部が取得した前記PWM信号と、前記検出部が検出した前記磁界信号とに基づいて、前記半導体装置を流れる電流を判断する判断部と、
前記判断部の判断結果に基づいて前記半導体装置を制御する制御信号を出力する出力部と、
を備え、
前記検出部は、両面プリント基板に設けられたコイル構造、往路、および復路で構成され、
前記コイル構造は、前記両面プリント基板の表層と、前記両面プリント基板の裏層と、前記両面プリント基板を貫通して前記表層と前記裏層とを接続する内側貫通ビアおよび外側貫通ビアとを含み、
前記往路および前記復路は、前記表層または前記裏層において平面視で周回するように設けられ、
前記内側貫通ビアおよび前記外側貫通ビアは、前記周回に沿って等間隔に設けられ、
前記往路または前記復路の一方は、前記表層および前記裏層において、前記内側貫通ビアと前記外側貫通ビアとに接続され、かつ前記内側貫通ビアまたは前記外側貫通ビアの周辺以外の少なくとも一部が平面視で重畳し、
前記往路または前記復路の他方は、前記内側貫通ビアまたは前記外側貫通ビアに対して前記コイル構造とは反対側において、前記往路または前記復路の一方に沿うように設けられている、半導体装置の制御システム。
【請求項2】
前記検出部が検出した前記磁界信号を積分演算する積分演算部をさらに備え、
前記判断部は、前記積分演算部が積分演算した信号と、前記取得部が取得した前記PWM信号とに基づいて、前記半導体装置を流れる電流を判断する、請求項1に記載の半導体装置の制御システム。
【請求項3】
前記両面プリント基板は、ゲートドライブ基板と同一の基板である、請求項1または2に記載の半導体装置の制御システム。
【請求項4】
前記両面プリント基板は、ゲートドライブ基板とは異なる基板である、請求項1または2に記載の半導体装置の制御システム。
【請求項5】
前記検出部は、2in1モジュールの直流端子または当該直流端子に接続された導体と磁気結合している、請求項1または2に記載の半導体装置の制御システム。
【請求項6】
前記検出部は、6in1モジュールの直流端子または当該直流端子に接続された導体と磁気結合している、請求項1または2に記載の半導体装置の制御システム。
【請求項7】
前記半導体装置は、マルチゲートIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、ゲート付きダイオード、RC(Reverse Conducting)-IGBT、マルチゲートRC-IGBT、およびSiC-MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)のうちのいずれかである、請求項1または2に記載の半導体装置の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体モジュールを流れる電流を測定する方法として、コイルを内蔵した電流センサチップを半導体モジュールに組み込む方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-180895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、電流センサチップを内蔵しているため、半導体モジュールが大型化するという問題があった。
【0005】
本開示は、このような問題を解決するためになされたものであり、半導体モジュールの大型化を防ぐことが可能な半導体装置の制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本開示による半導体装置の制御システムは、PWM(Pulse Width Modulation)信号を取得する取得部と、半導体装置を流れる電流の磁界信号を検出する検出部と、取得部が取得したPWM信号と、検出部が検出した磁界信号とに基づいて、半導体装置を流れる電流を判断する判断部と、判断部の判断結果に基づいて半導体装置を制御する制御信号を出力する出力部とを備え、検出部は、両面プリント基板に設けられたコイル構造、往路、および復路で構成され、コイル構造は、両面プリント基板の表層と、両面プリント基板の裏層と、両面プリント基板を貫通して表層と裏層とを接続する内側貫通ビアおよび外側貫通ビアとを含み、往路および復路は、表層または裏層において平面視で周回するように設けられ、内側貫通ビアおよび外側貫通ビアは、周回に沿って等間隔に設けられ、往路または復路の一方は、表層および裏層において、内側貫通ビアと外側貫通ビアとに接続され、かつ内側貫通ビアまたは外側貫通ビアの周辺以外の少なくとも一部が平面視で重畳し、往路または復路の他方は、内側貫通ビアまたは外側貫通ビアに対してコイル構造とは反対側において、往路または復路の一方に沿うように設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、半導体モジュールの大型化を防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る半導体装置の制御システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2】実施の形態1に係る検出部の構成の一例を示す平面図である。
図3】実施の形態1に係る検出部の構成の一例を示す断面図である。
図4】実施の形態1に係る検出部の表層の一例を示す平面図である。
図5】実施の形態1に係る検出部の裏層の一例を示す平面図である。
図6】実施の形態2に係る半導体装置の制御システムの構成の一例を示すブロック図である。
図7】従来技術に係る半導体モジュールとゲートドライブ基板との組み合わせの一例を示す平面図である。
図8】実施の形態3に係る半導体モジュールとゲートドライブ基板との組み合わせの一例を示す平面図である。
図9】実施の形態5に係る半導体装置の制御システムを適用した半導体モジュールとその回路図との関係を示す図である。
図10】実施の形態5に係るPWM信号および磁界信号に基づく電流の判定方法を説明するための図である。
図11】実施の形態5に係るPWM信号および磁界信号に基づく電流の判定方法を説明するための図である。
図12】実施の形態5に係るPWM信号および磁界信号に基づく電流の判定方法を説明するための図である。
図13】実施の形態5の変形例に係る半導体モジュールとゲートドライブ基板との組み合わせの一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1に係る半導体装置の制御システムの構成の一例を示すブロック図である。実施の形態1に係る半導体装置の制御システムは、取得部1と、検出部2と、判断部3と、出力部4とを備えている。なお、以下では、半導体装置はIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)であるものとして説明する。
【0010】
取得部1は、PWM(Pulse Width Modulation)信号を取得する。PWM信号は、図示しない半導体装置を制御する際に用いられる信号である。
【0011】
検出部2は、半導体装置を流れる電流(コレクタ電流)の磁界信号を検出する。検出部2の詳細は後述する。
【0012】
判断部3は、取得部1が取得したPWM信号と、検出部2が検出した磁界信号とに基づいて、半導体装置を流れる電流を判断する。具体的には、判断部3は、半導体装置を流れる電流の向きおよび大きさを判断する。
【0013】
出力部4は、判断部3の判断結果に基づいて半導体装置を制御する制御信号(ゲート信号)を出力する。
【0014】
図2は、実施の形態1に係る検出部2の構成の一例を示す平面図である。図3は、検出部2の構成の一例を示す断面図である。図4は、検出部2の表層11の一例を示す平面図である。図5は、検出部2の裏層12の一例を示す平面図である。
【0015】
検出部2は、両面プリント基板10に設けられたコイル構造、往路8、および復路9で構成されたロゴスキコイルである。
【0016】
コイル構造は、両面プリント基板10の表層11と、両面プリント基板10の裏層12と、両面プリント基板10を貫通して表層11と裏層12とを接続する内側貫通ビア6および外側貫通ビア7とを含む。また、両面プリント基板10は開口部5を有し、開口部5を通るように端子または配線が設けられている。端子または配線には、半導体装置を流れる電流が導通する。
【0017】
内側貫通ビア6は、両面プリント基板10の開口部5に沿って等間隔に周回するように設けられている。外側貫通ビア7は、内側貫通ビア6の外側を等間隔に周回するように設けられている。
【0018】
両面プリント基板10の表層11において、復路9は、一端が内側貫通ビア6に接続され、他端が当該内側貫通ビア6に対向する外側貫通ビア7(一端が接続された内側貫通ビア6の最近に設けられた外側貫通ビア7)の隣に設けられた外側貫通ビア7に接続されている(図2,3,4参照)。図2,4に示すように、復路9は、内側貫通ビア6から当該内側貫通ビア6の最近に設けられた外側貫通ビア7に向かう直線と、当該最近に設けられた外側貫通ビア7から隣の外側貫通ビア7に向かう直線とを含む。
【0019】
また、両面プリント基板10の裏層12において、復路9は、一端が内側貫通ビア6に接続され、他端が当該内側貫通ビア6に対向する外側貫通ビア7(一端が接続された内側貫通ビア6の最近に設けられた外側貫通ビア7)に接続されている(図2,3,5参照)。
【0020】
両面プリント基板10の表層11および裏層12に設けられた復路9は、外側貫通ビア7の周辺以外の一部が平面視で重畳している(図2,3参照)。すなわち、復路9は、両面プリント基板10の断面において環状であり、断面の中心を軸としたらせん状の経路となっている。
【0021】
両面プリント基板10の表層11において、往路8は、外側貫通ビア7に対してコイル構造とは反対側において、復路9に沿うように設けられている(図2参照)。具体的には、往路8は、外側貫通ビア7の外側に沿って設けられている。また、往路8は、一端のみが外側貫通ビア7に接続されている(図2参照)。
【0022】
図2に示すように、往路8は、外側貫通ビア7の外側を反時計回りに一周して外側貫通ビア7に接続されている。そして、復路9は、当該外側貫通ビア7から開口部5を時計回りに一周して往路8とともに引き出される。このように、往路8および復路9は一続きに設けられており、それぞれの一端が引き出される。この引き出された両端に、開口部5を通るように設けられた端子または配線を導通する電流に対応する電圧が誘起される。誘起された電圧は、電流の微分信号であり、検出部2が検出する磁界信号に相当する。
【0023】
上記より、両面プリント基板10でロゴスキコイルを構成することができるため、非常に安価であり、半導体モジュールの大型化を防ぐことが可能となる。また、復路9が等間隔に設けられ、表層11および裏層12において復路9の多くの部分が平面視で重畳し、かつ往路8と復路9との位置が近いため、開口部5を通るように設けられた端子または配線を導通する電流を高精度に検出することが可能となる。
【0024】
従って、実施の形態1に係る半導体装置の制御システムによれば、高精度に検出された電流に応じて半導体装置を最適に制御することが可能となり、半導体装置の大幅な低損失化および高信頼化を図ることができる。
【0025】
なお、飛躍的な低損失化が期待できながら従来のゲート制御では使いこなすことができなかった、チップの表裏にゲート構造を有する両面ゲートRC(Reverse Conducting)-IGBTを搭載した半導体装置についても、実施の形態1に係る半導体装置の制御システムを適用することが可能となる。
【0026】
<実施の形態2>
図6は、実施の形態2に係る半導体装置の制御システムの構成の一例を示すブロック図である。実施の形態2に係る半導体装置の制御システムは、検出部2と判断部3との間に積分演算部13を備えることを特徴としている。その他の構成は、実施の形態1に係る半導体装置の制御システムと同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0027】
積分演算部13は、検出部2が検出した磁界信号を積分演算する。上述の通り、磁界信号は電流の微分信号である。従って、積分演算部13が磁界信号を積分すると、当該磁界信号は電流に変換される。
【0028】
判断部3は、積分演算部13が積分演算した信号と、取得部1が取得したPWM信号とに基づいて、半導体装置を流れる電流を判断する。このとき、判断部3は、積分演算部13が積分演算した信号を用いているため、電流の大きさを判断しやすくなる。また、積分演算部13が積分演算を行うことによって、磁界信号の細かな変化が平均化されるため、磁界信号に含まれるノイズが除去される。
【0029】
なお、判断部3は、積分演算部13が積分演算した信号だけでなく、検出部2が検出した磁界信号も用いて判断してもよい。この場合、判断部3は、積分演算部13が積分演算した信号と、検出部2が検出した磁界信号と、取得部1が取得したPWM信号とに基づいて、半導体装置を流れる電流を判断することになる。
【0030】
<実施の形態3>
図7は、従来技術に係る半導体モジュールとゲートドライブ基板との組み合わせの一例を示す平面図である。図8は、実施の形態3に係る半導体モジュールとゲートドライブ基板との組み合わせの一例を示す平面図である。図7,8に示す半導体モジュールは、半導体装置としてIGBTを搭載しているが、これに限定されるものではない。
【0031】
図7に示す従来技術に係る半導体モジュールでは、直流端子(後述の図9に示す高電圧直流端子14,15および低電圧直流端子19,20)と、出力端子(後述の図9に示す出力端子16,17,18)との間にゲートドライブ基板(図中のハッチングが施された基板)が設けられている。
【0032】
一方、図8に示す実施の形態3に係る半導体モジュールでは、直流端子が通る開口部(図2に示す開口部5)を有する両面プリント基板10が設けられている。この両面プリント基板10は、ゲートドライブ基板と同一の基板である。すなわち、検出部2は、ゲートドライブ基板に形成されている。これにより、従来のゲートドライブ基板から大きく変更することなく半導体装置を制御することができる。また、両面プリント基板10とゲートドライブ基板とを一体にすることによって、取り扱いが容易となり、ノイズが少なく信頼性が高くなる。
【0033】
<実施の形態4>
実施の形態4に係る半導体装置の制御システムでは、両面プリント基板10は、ゲートドライブ基板とは異なる基板であることを特徴としている(図示せず)。すなわち、検出部2は、ゲートドライブ基板とは異なる別の基板に形成されている。その他の構成は、実施の形態1または2と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0034】
上記の構成は、例えば、従来のゲートドライブ基板に、半導体モジュールに内蔵したロゴスキコイルからの信号を入力するような場合に適用される。ゲートドライブ基板の形状に制約がある場合は、上記のように別個の基板とした方が、本開示に係る半導体装置の制御システムを適用しやすくなる可能性がある。また、両面プリント基板10とゲートドライブ基板とを別個にすることによって、従来のゲートドライブ基板からの変更を最小限に留めることができる。
【0035】
<実施の形態5>
図9は、実施の形態5に係る半導体装置の制御システムを適用した半導体モジュールとその回路図との関係を示す図である。図9では、半導体モジュールが2in1モジュールである場合を例示している。半導体装置は、図9に示すIGBTおよびダイオードを含む。
【0036】
図9に示すように、両面プリント基板10は、高電圧直流端子14,15および低電圧直流端子19,20のそれぞれが通る開口部(図1に示す開口部5)を有している。検出部2は、各開口部を取り囲むように形成されている(図2~5参照)。このような構成とすることによって、検出部2は、高電圧直流端子14,15および低電圧直流端子19,20のそれぞれと磁気結合する。高電圧直流端子14,15および低電圧直流端子19,20のそれぞれを流れる電流は、パルス状であり、出力端子16,17,18よりも大きな磁界信号を発生する。従って、検出部2は、磁界信号の検出が容易になる。
【0037】
なお、図9では、高電圧直流端子14,15および低電圧直流端子19,20のそれぞれが両面プリント基板10の開口部を通る場合を例示しているが、高電圧直流端子14,15および低電圧直流端子19,20のそれぞれに接続された導体(配線)が両面プリント基板10の開口部を通るようにしてもよい。
【0038】
図10~12は、実施の形態5に係るPWM信号および磁界信号に基づく電流の判定方法を説明するための図である。
【0039】
図10に示すように、任意の同じタイミングにおけるPWM信号(高電圧側ゲート電圧制御信号、低電圧側ゲート電圧制御信号)と磁気信号(高電圧側コレクタ電流信号、低電圧側コレクタ電流信号)とを参照すると、IGBTの動作では、PWM信号および磁気信号のそれぞれの変化が逆であり、このタイミングではIGBTに電流が流れていることが判る。
【0040】
一方、任意の同じタイミングにおけるPWM信号(高電圧側ゲート電圧制御信号、低電圧側ゲート電圧制御信号)と磁気信号(高電圧側コレクタ電流信号、低電圧側コレクタ電流信号)とを参照すると、ダイオードの動作では、PWM信号および磁気信号のそれぞれの変化が同じであり、このタイミングではダイオードに電流が流れていることが判る。
【0041】
上記のようにして、判断部3は、半導体装置を流れる電流の向きおよび大きさを判断する。すなわち、図12に示すように、判断部3は、PWM信号および磁界信号の変化が逆であれば半導体装置(IGBT)に順電流が流れていると判断し、PWM信号および磁界信号の同じであれば半導体装置(ダイオード)に逆電流が流れていると判断する。
【0042】
<実施の形態5の変形例>
図13は、実施の形態5の変形例に係る半導体モジュールとゲートドライブ基板との組み合わせの一例を示す平面図である。
【0043】
高電圧直流端子14,15と低電圧直流端子19,20とが近接して、高電圧直流端子14,15および低電圧直流端子19,20のそれぞれにロゴスキコイル(検出部2)を形成することができない場合がある。このような場合、図13に示すように、高電圧直流端子14,15および低電圧直流端子19,20をまとめて1つのロゴスキコイルを形成してもよい。具体的には、ロゴスキコイルは、高電圧直流端子14,15および低電圧直流端子19,20をまとめた周囲に形成される。
【0044】
上記の構成とした場合、ロゴスキコイルを形成しやすくなり信号強度が大きくなるが、IGBTおよびダイオードのそれぞれの電流を分離しにくくなる。
【0045】
<実施の形態6>
実施の形態6では、半導体モジュールが6in1モジュールであることを特徴としている。その他の構成は、実施の形態5と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0046】
半導体モジュールが6in1モジュールである場合、検出部2は、最も信号強度が高い直流端子を流れる電流の磁界信号を検出する。
【0047】
<実施の形態7>
実施の形態7では、本開示に係る半導体装置の制御システムを使用した場合に高い効果が得られる応用例について説明する。
【0048】
<半導体装置がRC-IGBTである場合>
RC-IGBTにおいて、ダイオード動作中では、ホール注入を促進するために、ゲートはオフ状態であることが望ましい。また、ダイオードの逆回復前では、ホール注入を抑制するために、ゲートはオン状態(デッドタイム無し)であることが望ましい。
【0049】
しかし、従来の半導体装置の制御システムでは、IGBTまたはダイオードのいずれを電流が流れているのかを判断することができないため、上記のような理想的なゲート制御を行うことができない。すなわち、従来の半導体装置の制御システムでは、ダイオード動作中ではゲートがオン状態となってホール注入が抑制され、ダイオードの逆回復前ではゲートがオフ状態となってホール注入が促進されるという、上記のような理想的なゲート制御とは正反対の状況であった。
【0050】
本開示に係る半導体装置の制御システムは、IGBTまたはダイオードのいずれに電流が流れているのかを検出し、電流の変化のタイミングを検出することができる。従って、上記のような理想的なゲート制御が可能となる。
【0051】
なお、デッドタイムを短くする方法としては、磁界信号をゲート信号のタイミングで用いる方法と、デッドタイムを従来よりも短く設定しておき、万が一の短絡発生時の保護信号として磁界信号を用いる方法とがある。
【0052】
<半導体装置が両面ゲートRC-IGBTである場合>
両面ゲートRC-IGBTは、IGBTとダイオードとで電流経路を共通化することができるため、チップの小型化が可能であり、瞬間的にホールを減らすことによってIGBTのターンオフ損失およびダイオードの逆回復損失を大幅に減らすことが可能である。
【0053】
しかし、両面ゲートRC-IGBTでは、表面ゲートがオン状態かつ裏面ゲートがオフ状態である場合にIGBTが動作するのに対して、表面ゲートがオフ状態かつ裏面ゲートがオン状態である場合にダイオードが動作するため正反対のゲート制御が必要となり、従来のゲート制御では使いこなすことができなかった。
【0054】
本開示に係る半導体装置の制御システムは、電流の方向、大きさ、および電流の変化のタイミングを検出することができるため、電流に応じたゲート制御パターンを用いたり、デッドタイムの最小化したりすることが可能となる。すなわち、本開示に係る半導体装置の制御システムによれば、両面ゲートRC-IGBTを搭載した半導体モジュールのゲート制御を行うことが可能となる。
【0055】
<半導体装置がSiC-MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である場合>
SiC-MOSFETは、本来は単体でも内蔵ダイオード(バイポーラダイオード)または同期整流ダイオードを用いることが可能である。しかし、ダイオード動作時、またはデッドタイムにバイポーラ動作することによって、結晶欠陥が拡がって損失が増加し、最悪の場合はSiC-MOSFETの破壊に至る。従って、SiC-MOSFETでは、外付けのダイオードを設けたり、ショットキーバリアダイオードを内蔵したりするなどの対策が取られている。
【0056】
本開示に係る半導体装置の制御システムでは、デッドタイムをなくすか最短化することによって、欠陥の拡張を影響のない範囲に抑えることができる可能性がある。
【0057】
<その他の半導体装置>
上記で例示した以外の半導体装置としては、シングルゲートIGBT、ゲート付きダイオード、マルチゲートIGBT、マルチゲートRC-IGBTなどが挙げられる。これらの半導体装置を本開示に係る半導体装置の制御システムに適用した場合であっても、電流に応じたゲート制御パターンを用いたり、デッドタイムを短縮したりすることによって、低損失化を図ることができる。
【0058】
なお、本開示の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【0059】
<付記>
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0060】
(付記1)
PWM(Pulse Width Modulation)信号を取得する取得部と、
半導体装置を流れる電流の磁界信号を検出する検出部と、
前記取得部が取得した前記PWM信号と、前記検出部が検出した前記磁界信号とに基づいて、前記半導体装置を流れる電流を判断する判断部と、
前記判断部の判断結果に基づいて前記半導体装置を制御する制御信号を出力する出力部と、
を備え、
前記検出部は、両面プリント基板に設けられたコイル構造、往路、および復路で構成され、
前記コイル構造は、前記両面プリント基板の表層と、前記両面プリント基板の裏層と、前記両面プリント基板を貫通して前記表層と前記裏層とを接続する内側貫通ビアおよび外側貫通ビアとを含み、
前記往路および前記復路は、前記表層または前記裏層において平面視で周回するように設けられ、
前記内側貫通ビアおよび前記外側貫通ビアは、前記周回に沿って等間隔に設けられ、
前記往路または前記復路の一方は、前記表層および前記裏層において、前記内側貫通ビアと前記外側貫通ビアとに接続され、かつ前記内側貫通ビアまたは前記外側貫通ビアの周辺以外の少なくとも一部が平面視で重畳し、
前記往路または前記復路の他方は、前記内側貫通ビアまたは前記外側貫通ビアに対して前記コイル構造とは反対側において、前記往路または前記復路の一方に沿うように設けられている、半導体装置の制御システム。
(付記2)
前記検出部が検出した前記磁界信号を積分演算する積分演算部をさらに備え、
前記判断部は、前記積分演算部が積分演算した信号と、前記取得部が取得した前記PWM信号とに基づいて、前記半導体装置を流れる電流を判断する、付記1に記載の半導体装置の制御システム。
(付記3)
前記両面プリント基板は、ゲートドライブ基板と同一の基板である、付記1または2に記載の半導体装置の制御システム。
(付記4)
前記両面プリント基板は、ゲートドライブ基板とは異なる基板である、付記1または2に記載の半導体装置の制御システム。
(付記5)
前記検出部は、2in1モジュールの直流端子または当該直流端子に接続された導体と磁気結合している、付記1から4に記載の半導体装置の制御システム。
(付記6)
前記検出部は、6in1モジュールの直流端子または当該直流端子に接続された導体と磁気結合している、付記1から4に記載の半導体装置の制御システム。
(付記7)
前記半導体装置は、マルチゲートIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、ゲート付きダイオード、RC(Reverse Conducting)-IGBT、マルチゲートRC-IGBT、およびSiC-MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)のうちのいずれかである、付記1から6に記載の半導体装置の制御システム。
【符号の説明】
【0061】
1 取得部、2 検出部、3 判断部、4 出力部、5 開口部、6 内側貫通ビア、7 外側貫通ビア、8 往路、9 復路、10 両面プリント基板、11 表層、12 裏層、13 積分演算部、14,15 高電圧直流端子、16,17,18 出力端子、19,20 低電圧直流端子、21,22,23,24,25,26,27,28 端子。
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