(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154585
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】止水装置及び止水装置の設置方法
(51)【国際特許分類】
E06B 5/00 20060101AFI20241024BHJP
E04H 9/14 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
E04H9/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068484
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】上村 達也
(72)【発明者】
【氏名】安西 利樹
(72)【発明者】
【氏名】小縣 剛士
【テーマコード(参考)】
2E139
2E239
【Fターム(参考)】
2E139AA10
2E139AC19
2E239AC04
(57)【要約】
【課題】 止水板が扉側の部材等に干渉するのを防ぐ。
【解決手段】 扉体を縦枠の戸当たり面に当接又は近接して閉鎖するようにした開き戸に装着される止水装置であって、閉鎖状態の扉体15に対し厚さ方向に並ぶ補助縦枠30及び止水板40を具備し、補助縦枠30は、吊元側の縦枠11における戸当り面11aよりも閉鎖方向奥側の見込み面に、上下方向へわたって固定され、止水板40は、補助縦枠30と反吊元側の縦枠12との間に嵌り合う止水板本体部41と、閉鎖状態の扉体15と補助縦枠30の間に位置するフランジ部とを一体的に具備する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉体を縦枠の戸当たり面に当接又は近接して閉鎖するようにした開き戸に装着される止水装置であって、
閉鎖状態の前記扉体に対し厚さ方向に並ぶ補助縦枠及び止水板を具備し、
前記補助縦枠は、吊元側の前記縦枠における戸当たり面よりも閉鎖方向奥側の見込み面に、上下方向へわたって固定され、
前記止水板は、前記補助縦枠と反吊元側の前記縦枠との間に嵌り合う止水板本体部と、閉鎖状態の前記扉体と前記補助縦枠の間に位置するフランジ部とを一体的に具備することを特徴とする止水装置。
【請求項2】
前記補助縦枠は、吊元側の前記縦枠よりも高さ寸法が小さく、吊元側の前記縦枠の下部側に設けられていることを特徴とする請求項1記載の止水装置。
【請求項3】
前記補助縦枠は、略90度開放した場合の前記扉体よりも枠幅方向内側へ突出することを特徴とする請求項1記載の止水装置。
【請求項4】
前記フランジ部の枠幅方向の長さが、略90度開放した場合の前記扉体と、前記補助縦枠の枠幅方向内側の端面との間の寸法よりも小さいことを特徴とする請求項3記載の止水装置。
【請求項5】
前記補助縦枠は、略90度開放した場合の前記扉体の閉鎖方向側面よりも枠幅方向外側に位置することを特徴とする請求項1記載の止水装置。
【請求項6】
前記フランジ部が、前記止水板本体部の横幅方向の一端側に設けられた第一のフランジ部であり、
前記止水板本体部における横幅方向の他端側には、閉鎖状態の前記扉体と、反吊元側の前記縦枠との間に位置する第二のフランジ部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の止水装置。
【請求項7】
前記補助縦枠は、吊元側の前記縦枠の戸当たり面と略面一に設けられていることを特徴とする請求項1記載の止水装置。
【請求項8】
吊元側の前記縦枠と前記補助縦枠との間に、水密材が設けられていることを特徴とする請求項1記載の止水装置。
【請求項9】
吊元側の前記縦枠と前記補助縦枠との間に、上下方向へわたって閉鎖状態の前記扉体に対向するように凹部が設けられ、
前記水密材が、前記凹部内に設けられていることを特徴とする請求項8記載の止水装置。
【請求項10】
前記開き戸は、枠幅方向の一方側で開閉する親扉を備えるとともに、前記扉体を他方側で開閉する子扉とした親子扉であり、前記補助縦枠を子扉側に設けていることを特徴とする請求項1記載の止水装置。
【請求項11】
前記フランジ部には、前記扉体を回動するヒンジを通過可能な切欠部が設けられていることを特徴とする請求項1載の止水装置。
【請求項12】
請求項1記載の止水装置の設置方法であって、
開放状態にある前記扉体の戸尻部と前記補助縦枠との間に、枠幅方向に対し傾斜した前記止水板の横幅方向の一端側を挿入し、この後に、前記止水板の前記一端側と他端側を、それぞれ、前記補助縦枠と反吊元側の前記縦枠に嵌め合わせようにしたことを特徴とする止水装置の設置方法。
【請求項13】
ヒンジにより回動する扉体を左右の縦枠の戸当たり面に当接又は近接して閉鎖するようにした開き戸について、左右の前記縦枠の間の開口を止水板により塞ぐようにした止水装置であって、
前記止水板は、閉鎖状態の前記扉体と前記戸当たり面の間に位置するフランジ部を具備し、このフランジ部には、前記ヒンジを通過可能な切欠部が設けられていることを特徴とする止水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増水時に建物や地下道の開口部を止水板により閉鎖して水の侵入を阻む止水装置、及びこの止水装置の設置方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
台風や集中豪雨などによる増水が、開き戸により開閉される開口部に侵入すると、浸水による甚大な被害を及ぼすおそれがある。そこで、このような事態が想定される場合に、前記開口部の下端側において左右の縦枠間に止水板を嵌め込み、この止水板により水の浸入を阻むようにした従来技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術では、例えば
図18に例示するように、止水板140を左右の縦枠111,112間に設置する際に、止水板140がヒンジ17等の扉115,116(ドア)側の部材に干渉してしまう場合がある。このような場合には、止水板140がヒンジ17等に干渉しないように止水板140の高さ寸法を小さくして、止水板140の上端をヒンジ17よりも下側に配置する等の対処が必要になる。しかし、このようにすれば、止水板140による止水可能高さが低くなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題に鑑みて、本発明の一つは、以下の構成を具備するものである。
扉体を縦枠の戸当たり面に当接又は近接して閉鎖するようにした開き戸に装着される止水装置であって、閉鎖状態の前記扉体に対し厚さ方向に並ぶ補助縦枠及び止水板を具備し、前記補助縦枠は、吊元側の前記縦枠における戸当たり面よりも閉鎖方向奥側の見込み面に、上下方向へわたって固定され、前記止水板は、前記補助縦枠と反吊元側の前記縦枠との間に嵌り合う止水板本体部と、閉鎖状態の前記扉体と前記補助縦枠の間に位置するフランジ部とを一体的に具備することを特徴とする止水装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されているので、止水板を左右の縦枠間に設置する際に、止水板が扉側の部材等に干渉するのを防ぐことがきる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係る止水装置を装着した開き戸の一例を示す正面図であり、要部を切欠している。
【
図2】
図1における(II)-(II)線に沿う断面図である。
【
図3】
図1における(III)-(III)線に沿う断面図である。
【
図6】止水板を装着している様子を示す横断面であり、一方のフランジ部を一方の縦枠に係合した状態を示す。
【
図7】止水板を装着している様子を横断面であり、止水板を回動させて両フランジ部を両縦枠に係合した状態を示す。
【
図8】本発明に係る止水装置を装着した開き戸の他例(片開き)を示す横断面図である。
【
図9】本発明に係る止水装置を装着した開き戸の他例を示す要部横断面図である。
【
図10】本発明に係る止水装置を装着した開き戸の他例を示す要部横断面図である。
【
図11】本発明に係る止水装置を装着した開き戸の他例を示す要部横断面図である。
【
図12】本発明に係る止水装置を装着した開き戸の他例を示す要部横断面図である。
【
図13】同他例について、止水板を装着する様子を示す横断面であり、左右の縦枠間に、止水板の一端側を挿入する状態を示す。
【
図14】同他例について、止水板を装着している様子を示す横断面であり、止水板の横幅方向の一端側を、扉体の戸尻部と補助縦枠との間に挿入した状態を示す。
【
図15】同他例について、止水板を装着している様子を示す横断面であり、止水板の横幅方向の一端側と他端側を、それぞれ、扉体の戸尻部と戸当たり面の間に挿入した状態を示す。
【
図16】同他例について、止水板を装着している様子を示す横断面であり、止水板の両側のフランジ部をそれぞれ対応する縦枠のフランジ面に係合した状態を示す。
【
図17】本発明に係る止水装置を装着した開き戸の他例を示す要部横断面図である。
【
図18】従来の止水装置の装着構造を示す要部横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本発明に係る実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
以下の説明中、枠幅方向とは、左右の縦枠11,12間の横幅方向を意味する。この枠幅方向は、左右の縦枠間に装着されて閉鎖した状態の止水板の横幅方向と同じ方向である。
【0009】
また、枠幅方向外側とは、枠幅方向に沿って縦枠11,12間の外側へ向かう方向側を意味する。例えば、「左側の縦枠11よりも枠幅方向外側」とは、縦枠11よりも左側を意味する。
また、枠幅方向内側とは、枠幅方向に沿って左右の縦枠11,12間の内側へ向かう方向側を意味する。例えば、「左側の縦枠11よりも枠幅方向内側」とは、縦枠11よりも右側を意味する。
【0010】
<第1の実施形態>
図1は、本発明に係る止水装置の一例を具備した開き戸を示す。
この止水装置1は、扉体15,16を左右の縦枠11,12の戸当たり面11a,12aに当接又は近接して全閉するようにした開き戸X1に装着されて、枠体10内の開口Aにおける下側部分の水密性を高める。
【0011】
この開き戸X1は、矩形枠状の枠体10と、この枠体10の内側の開口Aを開閉する左右の扉体15,16と、左右の扉体15,16を枠体10に対し回動自在に支持するヒンジ17とを具備し、左右の扉体15,16をそれぞれ独立して回動する両開き(観音開き)式の開き戸装置を構成している。
【0012】
枠体10は、横幅方向に間隔を置いて立設された左右の縦枠11,12と、これら縦枠11,12の上端部間を連結する上枠13と、縦枠11,12の下端部間を連結する下枠14とを具備する。
【0013】
左側の縦枠11は、その見込み面を、奥側へ向かって開口Aの幅を狭める段状に形成することで、閉鎖状態の扉体15の奥側面に接触又は近接する戸当り面11aと、この戸当り面11aよりも奥側(
図3によれば屋内側)に位置する奥側見込み面11bと、戸当り面11aよりも手前側(開放方向側)に位置する手前側見込み面11cとを有する(
図2及び
図4参照)。
【0014】
戸当り面11aは、扉体15の戸尻寄りにおける閉鎖側の面を受ける面であり、閉鎖状態の扉体15における閉鎖側の面と略平行な平坦状に形成される。
【0015】
奥側見込み面11bは、戸当り面11aの枠幅方向内側の端部から閉鎖方向奥側へ延設された面であり、戸当り面11aと略直交する平坦面状に形成される(
図4参照)。
この奥側見込み面には、補助縦枠30が装着される。
【0016】
手前側見込み面11cは、戸当り面11aの枠幅方向外側の端部から手前側へ延設された面であり、戸当り面11aと略直交する平坦面状に形成される(
図4参照)。
この手前側見込み面11cには、ヒンジ17が設けられる。
【0017】
右側の縦枠12は、左側の縦枠11と左右対称の部材であり、戸当り面12a、奥側見込み面12b、手前側見込み面12cを有する。
【0018】
上枠13と下枠14も、それぞれ、縦枠11,12と略同様に、戸当り面13a,14a、奥側見込み面13b,14b、手前側見込み面13c、14cを有する(
図3参照)。
【0019】
また、扉体15と扉体16は、開口Aの左側部分と右側部分をそれぞれ開閉する親子扉を構成している。
図示例よれば、左側の扉体15は、右側の扉体16よりも横幅方向の全長が短い子扉であり、扉体16は親扉である。
【0020】
左側の扉体15は、開口Aの左部分を覆う略矩形板状に形成され、複数のヒンジ17によって左側の縦枠11に支持される。
同様に、右側の扉体16は、開口Aの右部分を覆う略矩形板状に形成され、複数のヒンジ17によって右側の縦枠12にし支持される。
【0021】
ヒンジ17は、片半部17a(
図6参照)に対し他半部17bを回動可能に支持する一般的な蝶番であり、片半部17aを縦枠11(又は12)に止着し。他半部17bを扉体15(又は16)に止着している。このヒンジ17には、例えば、平蝶番や旗蝶番を用いればよい。
【0022】
止水装置1は、閉鎖状態の扉体15,16に対し厚さ方向に並ぶ補助縦枠30及び止水板40を具備する。
【0023】
補助縦枠30は、扉体15(子扉)の吊元側に位置する縦枠11において、その奥側見込み面11bに、上下方向へわたって固定される。この補助縦枠30は、縦枠11よりも高さ寸法が小さく、縦枠11の下部側に位置する。
補助縦枠30は、縦枠11に対し先に止着される支持部材31と、この支持部材に止着される補助縦枠本体32とを備える(
図4参照)。
この補助縦枠30は、図示例によれば、中空柱状に構成され、その上端部は板状の天壁等により閉鎖されている。
【0024】
支持部材31は、奥側見込み面11bに沿って上下方向へ延設され、奥側見込み面11bの下側部分に対し、適宜な固定手段により不動に固定される。
この支持部材31は、図示例によれば、横面略コ字状であって、上下方向へわたる長尺状に形成される。この支持部材31の戸厚方向の寸法は、補助縦枠本体32の戸厚方向の寸法よりも小さい。
【0025】
補助縦枠本体32は、支持部材31に嵌り合って上下方向へ延設されている。
詳細に説明すれば、この補助縦枠本体32は、
図4に示すように、支持部材31に対し外側から略凹状に嵌り合あった嵌合部32aと、縦枠11との間に屋外側に開口して上下方向へ連続する溝状の凹部32bと、この凹部32bの枠幅方向内側に隣接する戸当り延長面32cとを有する。
【0026】
嵌合部32aは、支持部材31に対し、枠厚方向(閉鎖状態の扉体15の戸厚さ方向)に重なり合い、適宜な固定手段により不動に固定される。
【0027】
凹部32bには、上下方向にわたって連続するように、水密材33及びバックアップ材34が設けられる。
【0028】
戸当り延長面32cは、縦枠11との間に水密材33等を介在して、戸当り面11aと略面一になるように設けられた平坦状の面である。
【0029】
水密材33は、ゴムやエラストマー樹脂等の弾性材料から形成される。この水密材33は、縦枠11の奥側見込み面11bと、補助縦枠本体32の凹部32bとの間に挟まれるようにして設けられ、縦枠11と補助縦枠30の間の水密性を良好にする。
この水密材33は、凹部32bから屋外側へ膨出した場合、閉鎖する扉体15により押し戻されるため、容易に脱落することがない。
また、バックアップ材34は、補助縦枠本体32の充填深さを調整している。
【0030】
支持部材31を縦枠11に固定する手段、及び補助縦枠本体32を支持部材31に固定する手段は、例えば、ネジ止め等、着脱可能にする構成とするのが好ましい。この構成によれば、必要に応じて補助縦枠30を取り外して、開口Aの横幅を拡大することができる。
【0031】
上記構成の補助縦枠30は、略90度開放した場合の扉体15よりも枠幅方向内側へ突出する。
詳細に説明すれば、補助縦枠30は、その枠幅方向内側の端面32dが、略90度開放した場合の扉体15の閉鎖側面15aよりも、枠内方向内側(
図6によれば右側)に位置する。
この構成によれば、止水板40を開き戸X1に装着する際に、この止水板40が扉体15,16やヒンジ17等に干渉するのを効果的に防ぐことがきる。
【0032】
止水板40は、補助縦枠30と反吊元側の縦枠12との間に嵌り合う止水板本体部41と、閉鎖状態の扉体15と補助縦枠30の戸当り延長面32cとの間に位置する第一のフランジ部42と、閉鎖状態の扉体16と縦枠12の戸当たり面12aとの間に位置する第二のフランジ部43と、閉鎖状態の扉体15,16と下枠14の戸当り面14aとの間に位置する第三のフランジ部44(
図3参照)とを一体的に具備する。
ここで、前記反吊元側とは、補助縦枠30側の扉体15(子扉)の吊元側に対する反対側(
図2によれば右側)を意味する。
【0033】
止水板本体部41は、補助縦枠30と縦枠12の間の開口の下端寄り部分を閉鎖する正面視略矩形の板状に形成される。
この止水板本体部41は、例えば、金属材料から内部が中空の矩形板状に構成され、補助縦枠30の全高よりも若干低い(
図1及び
図3参照)。
【0034】
第一のフランジ部42、第二のフランジ部43及び第三のフランジ部44は、それぞれ、長尺なLアングル状の部材であり、その一片部42a,43a,44aを止水板本体部41に固定して、他片部42b,43b,44bを枠外方向(それぞれ左方向と右方向と下方)へ突出している。
【0035】
第一のフランジ部42の一片部42aと、これに対する補助縦枠30の対向面との間には、弾性材料からなる板状の水密材42cが挟まれる(
図2参照)。
第一のフランジ部42の他片部42bは、補助縦枠30の戸当り延長面32cに対し上下方向にわたって重なり合う。
【0036】
第一のフランジ部42における他片部42bは、その枠幅方向の長さw1が、略90度開放した場合の扉体15の閉鎖側面と、補助縦枠30の枠幅方向内側の端面32dとの間の寸法w2よりも小さい(
図6参照)。
この構成によれば、止水板40を開き戸X1に嵌め合わせる際に、他片部42bが扉体15やヒンジ17等に干渉するのを効果的に防ぐことができる。
【0037】
第二のフランジ部43の一片部43aと、この一片部43aに対向する縦枠12(詳細には奥側見込み面12b)の間には、弾性材料からなる板状の水密材43cが挟まれる(
図2参照)。
第二のフランジ部43の他片部43bは、縦枠12の戸当たり面12aに対し上下方向にわたって重なり合う。この他片部43bは、戸当たり面12aと、閉鎖した際の扉体16の屋内側面との間に位置する。
この第二のフランジ部43には、ヒンジ17を戸厚方向へ通過可能な切欠部43dが設けられる(
図1及び
図5参照)。
【0038】
なお、図示例によれば、第一のフランジ部42にも、第二のフランジ部43のものと略同様の切欠部42dが設けられる。この切欠部42dは、補助縦枠30の装着位置の左右勝手を逆にすることを可能にしている。
すなわち、この切欠部42dは、図示例以外の態様として、補助縦枠30を、子扉(扉体15)の吊元側の縦枠11に設けずに、親扉(扉体16)の吊元側の縦枠12に設けた場合に、第一のフランジ部42が子扉側のヒンジ17に干渉しないようにする。
【0039】
第三のフランジ部44の一片部44aと、この一片部44aに対向する下枠14(詳細には奥側見込み面14b)の間には、弾性材料からなる板状の水密材44cが挟まれる(
図3参照)。この水密材44cは、第三のフランジ部44の一片部44aの下面と、止水板本体部41の屋内側面の下端側とを覆う、縦断面略L字状に形成される(
図3参照)。
【0040】
第三のフランジ部44の他片部44bは、下枠14の戸当り面14aに対し左右方向にわたり重なり合う。この他片部44bは、戸当り面14aと、閉鎖した際の扉体15及び扉体16の屋内側面との間に位置する。
【0041】
なお、図中、符号45は、止水板本体部41の上端部に設けられた持ち手部である。
【0042】
<止水装置の設置手順>
次に、上記構成の止水装置1を開き戸X1に設置する手順について詳細に説明する。
止水装置1を設置する際、開き戸X1は、扉体15及び扉体16が、角度90度以上開かれた状態に保持される(
図6参照)。
【0043】
先ずは、止水板40の第二のフランジ部43を、対向する縦枠12の戸当たり面12aに係合する(
図6参照)。
この係合作業において、止水板40が多少横振れしたとしても、第二のフランジ部43がヒンジ17に干渉するのを、切欠部43dによって防ぐことができる。
【0044】
次に、第二のフランジ部43と戸当たり面12aとの接触箇所を支点にして、止水板40の第一のフランジ部42側を縦枠11側へ回動し、第一のフランジ部42を、戸当り延長面32cに接触又は近接させる(
図7参照)。
この際、第一のフランジ部42が扉体15やヒンジ17等に干渉することなく、止水板40をスムーズに回動させることができる。
【0045】
よって、上記構成の止水装置1によれば、止水板40を左右の縦枠11,12間に設置する際に、止水板40が扉側の部材等に干渉するのを効果的に防ぐことがきる。
特に図示する好ましい一例によれば、補助縦枠30を比較的開閉回数の少ない子扉(扉体15)の側に配設されるため、補助縦枠30が扉体の開閉動作性を低下したり、補助縦枠30が開閉する扉体に干渉したりするような機会を少なくすることができる。
【0046】
<第2の実施形態>
図8に示す第2の実施形態は、片開き式の開き戸X2に対し、上記構成の止水装置1を装着したものである。
【0047】
開き戸X2は、上記開き戸X1の構成を一部変更したものであり、枠体10と、この枠体10の内側の開口を開閉する片開きの扉体18と、この扉体18を、枠体10を構成する一方の縦枠11に対し回動自在に支持するヒンジ17とを具備する。
【0048】
扉体18は、縦枠11,12間の開口を覆う略矩形板状に形成され、複数のヒンジ17によって左側の縦枠11に支持される。
【0049】
この第2の実施形態において、止水装置1は、上述した第1の実施形態と略同様に補助縦枠30及び止水板40を備え、これらを、左右の縦枠11,12間で、閉鎖状態の扉体18に対し厚さ方向(図示例によれば屋内側)に並ぶように装着している。
【0050】
よって、
図8に示す第2の実施形態によれば、止水板40を左右の縦枠11,12間に設置する際に、止水板40の幅方向の一端側(
図8によれば左端側)が、ヒンジ17や扉体18の戸尻側の部材等に干渉するのを防ぐことがきる。
【0051】
<第3の実施形態>
図9に示す第3の実施形態は、扉体回りにパッキンを装着した開き戸X3に対し、上記構成の止水装置1を装着したものである。
開き戸X3は、矩形枠状の枠体10’と、この枠体10’の内側の開口Aを開閉する扉体15と、扉体15を枠体10’に対し回動自在に支持するヒンジ17とを具備する。この開き戸X3は、単数の扉体15により開口を開閉する片開きの開き戸としてもよし、扉体15を含む二つの扉体により開口を開閉する両開きの開き戸としてもよい。
【0052】
枠体10’を構成する上下左右の枠材は、それぞれ、略同様の断面構造を有する。例えば、左側の枠材である縦枠11’は、
図9に横断面を示すように、戸当り面に対応する部分に、パッキン19を嵌め合わせるための溝11d’を有する。
この溝11d’は、縦枠11’の上下方向の全長にわたって屋外側を開口した長尺状の凹溝である。
【0053】
パッキン19は、ゴムやエラストマー樹脂等の弾性材料からなる長尺状の部材である。
このパッキン19は、上下方向にわたって溝11d’に嵌め合わせられ、溝11d’から屋外側へ若干突出して、止水装置1の水密材33の近傍に位置する。
【0054】
このパッキン19は、閉鎖した際の扉体15の屋内側面(図示例によれば、戸尻側の角部分を含む屋内側面)に圧接されて弾性変形し、扉体15と縦枠11’の間の気密性及び水密性等を向上する。
【0055】
よって、
図9に示す第3の実施形態によれば、上記した他の実施形態と同様に、止水板40を左右の縦枠間に設置する際に、止水板40が、ヒンジ17や扉体15の戸尻側の部材等に干渉するのを防ぐことがきる。
また、止水装置1による止水時には、パッキン19と止水板40により良好な止水性を得ることができる。
【0056】
<第4の実施形態>
図10に示す開き戸X4は、上記開き戸X1に対し、異なる断面形状の枠体10”、異なる態様の水密材35、異なる断面形状の補助縦枠30’を有する。この開き戸X4は、片開き式と両開き式のいずれにも構成可能である。
【0057】
開き戸X1の枠体10”を構成する一方の縦枠11”は、その枠内側の横断面が、枠幅方向内側へ突出する凸部11a”を有し、その凸部11a”の屋外側に戸当り面11a1”及び手前側見込み面11c”を有し、凸状部分の屋内側に奥側見込み面11b”を有する。
枠体10”を構成する他方の縦枠、上枠、下枠も、略同様の断面形状を有する。
【0058】
補助縦枠30’は、縦枠11”に止着された支持部材31’と、この支持部材31’に止着された補助縦枠本体32’とから一体的に構成される。
【0059】
支持部材31’は、縦枠11”の凸部11a”から奥側見込み面11b”にわたって嵌り合い止着固定される。
補助縦枠本体32’は、支持部材31’に止着固定されて枠幅方向内側へ突出しており、縦枠11”の間に屋外側に開口して上下方向へ連続する溝状の凹部32b’を有する。
【0060】
水密材35は、凹部32b’の奥側に詰め込まれたバックアップ材や、その手前側に充填され硬化したシーリング材(例えば、常温で流動性を有するシリコン等)により構成される。
【0061】
よって、
図10に示す第4の実施形態によれば、上記した他の実施形態と同様に、止水板40を左右の縦枠間に設置する際に、止水板40が、ヒンジ17や扉体15の戸尻側の部材等に干渉するのを防ぐことがきる上、縦枠11”と補助縦枠30’の凹凸状の嵌り合いにより、補助縦枠30’の止着強度も良好である。
【0062】
<第5の実施形態>
図11に示す開き戸X5は、上記開き戸X4(
図10参照)に対し、上記開き戸X3(
図9参照)と同様に、パッキン19を設けたものである。
【0063】
この開き戸X5の枠体10”’を構成する縦枠11”’は、
図11に示すように、戸当り面に対応する部分に、パッキン19を嵌め合わせるための溝11d”’を有する。この溝11d”’には、上記開き戸X3と同様にして、パッキン19が設けられる。
【0064】
この開き戸X5によれば、上記した他の実施形態と同様に、止水板40を左右の縦枠間に設置する際に、止水板40が、ヒンジ17や扉体15の戸尻側の部材等に干渉するのを防ぐことがきる。
また、止水装置1による止水時には、パッキン19と止水板40により良好な止水性を得ることができる。
【0065】
<第6の実施形態>
図12~
図16に示す開き戸X6は、上記構成の開き戸X1に対し、止水装置2を設けたものである。
止水装置2は、上記止水装置1において、補助縦枠30を補助縦枠50に置換し、この補助縦枠50と縦枠11の間に水密材51を設けたものである。
【0066】
補助縦枠50は、金属等の硬質材料により、扉体15の厚さよりも薄く且つ上下方向へ長尺な帯状に形成される。この補助縦枠50は、縦枠11の奥側見込み面11bに対し水密材51を介して固定される。この固定手段は、例えば、ねじ止めやリベット止め等とすればよい。
【0067】
この補助縦枠50は、略90度開放した場合の扉体15の閉鎖方向側面よりも枠幅方向外側(
図13によれば左側)に位置する。
この補助縦枠50の屋外側の端面は、縦枠11の戸当り面11aを枠幅方向内側へ延長する戸当り延長面50aとして機能する。
【0068】
水密材51は、ゴムやエラストマー樹脂等の弾性材料から帯状に形成され、補助縦枠50と縦枠11の奥側見込み面11bとの間に挟まれて、これらの間の水密性を良好にする。
【0069】
上記構成の止水装置2について、止水板40の装着手順を詳細に説明すれば、先ず、開放状態にある扉体15の戸尻部と補助縦枠50との間に、枠幅方向に対し傾斜した止水板40の横幅方向の一端側を挿入する(
図13参照)。
【0070】
この後、止水板40の他端側を回動させて、この他端側の第一のフランジ部42を、開放状態にある扉体15(子扉)の戸尻部と補助縦枠50との間に挿入する(
図14参照)。
【0071】
次に、止水板40の前記一端側を回動させて、第二のフランジ部43、扉体16(親扉)の戸尻部と、縦枠12の戸当たり面12aとの間に挿入する(
図15参照)。
【0072】
そして、止水板40を屋内側へ移動して、第一のフランジ部42を補助縦枠50に嵌め合わせるとともに、第二のフランジ部43を反吊元側の縦枠12に嵌め合わせる(
図16参照)。
【0073】
この後、左右の扉体15,16を閉鎖して、これら扉体15,16の閉鎖側面(屋内側面)を、第一のフランジ部42及び第二のフランジ部43に接触又は近接させる(
図12参照)。
【0074】
よって、
図12~
図16に示す止水装置2及び設置方法によれば、止水板40が設置作業中にヒンジ17や扉体15の等に干渉するのを防ぐことができる。
しかも、補助縦枠50を薄肉状に形成しているため、縦枠11,12間の開口を比較的広く確保することができる。
【0075】
<第7の実施形態>
図17に示す開き戸X7は、上記開き戸X6(
図12参照)について、上記開き戸X5(
図11参照)と同様にして、パッキン19を設けたものである。
【0076】
この開き戸X7によれば、上記開き戸X6と同様に、止水板40を左右の縦枠間に設置する際に、止水板40が、ヒンジ17や扉体15の戸尻側の部材等に干渉するのを防ぐことがきる。
また、止水装置2による止水時には、パッキン19と止水板40により良好な止水性を得ることができる。
【0077】
<その他の変形例>
上記構成の補助縦枠は、上記縦枠に対し不動に固定されるが、この補助縦枠の好ましい他例としては、上記縦枠に対し着脱可能に装着するようにしてもよい。
この場合の着脱手段は、例えば、上記補助縦枠を着脱可能なネジやボルト等の止着具により上記縦枠に装着した態様や、上記補助縦枠を嵌合構造におり上記縦枠に対し着脱可能に装着した態様、上記補助縦枠をマグネットにより上記縦枠に対し着脱可能に装着した態様、これらを適宜に組み合わせた態様が挙げられる。
【0078】
上記実施形態によれば、縦枠11と補助縦枠30の間に凹部32bを設け、この凹部32bに水密材33を設けたが(
図4参照)、他例としては、凹部32bを省いて、戸当り面11aと戸当り延長面32cが略連続する構成とすることも可能である。この場合、例えば、縦枠11の奥側見込み面11bと、補助縦枠30の支持部材31との間に、水密材を挟み込んで水密性を確保すればよい。
【0079】
上記実施形態によれば、特に好ましい一例として、上記補助縦枠を、縦枠11の上下方向範囲においてその下部側に部分的に設けたが、この補助縦枠の他例としては、縦枠11の上下方向の略全長にわたって設けることも可能である。
【0080】
上記実施形態によれば、特に好ましい態様として、ヒンジ17を通過可能な切欠部42d,43dを、第一のフランジ部42及び第二のフランジ部43の両方に設けたが、この切欠部は、何れか一方のフランジ部のみに設けるようにしてもよい。
【0081】
上記実施形態によれば、特に好ましい態様として、補助縦枠30を備えた止水装置1においてその止水板40の第一のフランジ部42及び第二のフランジ部43にそれぞれ切欠部42d,43dを設けたが、この切欠部は、補助縦枠30を備えない止水装置に設けることも可能である。
すなわち、この止水装置は、例えば、上記止水装置1において、補助縦枠30を省き、第一のフランジ部42を、
図5に示す第二のフランジ部43と同様に、直接、縦枠11の戸当り面11aに近接又は接触させ、この第一のフランジ部42に、ヒンジ17を貫通可能な切欠部42dを設ける。
この構成によれば、第一のフランジ部42を戸当り面11aに近接又は接触させる際に、第一のフランジ部42がヒンジ17に干渉するのを、切欠部42dによって防ぐことができる。
【0082】
また、本発明は上述した具体的構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【0083】
<総括>
以上のとおり、上記実施形態では以下の発明を開示している。
(1)
扉体を縦枠の戸当たり面に当接又は近接して閉鎖するようにした開き戸に装着される止水装置であって、閉鎖状態の前記扉体に対し厚さ方向に並ぶ補助縦枠及び止水板を具備し、前記補助縦枠は、吊元側の前記縦枠における戸当たり面よりも閉鎖方向奥側の見込み面に、上下方向へわたって固定され、前記止水板は、前記補助縦枠と反吊元側の前記縦枠との間に嵌り合う止水板本体部と、閉鎖状態の前記扉体と前記補助縦枠の間に位置するフランジ部とを一体的に具備することを特徴とする止水装置(
図1~
図17参照)。
(2)
前記補助縦枠は、吊元側の前記縦枠よりも高さ寸法が小さく、吊元側の前記縦枠の下部側に設けられていることを特徴とする(1)に記載の止水装置(
図1及び
図3参照)。
(3)
前記補助縦枠は、略90度開放した場合の前記扉体よりも枠幅方向内側へ突出することを特徴とする(1)または(2)に記載の止水装置(
図6参照)。
(4)
前記フランジ部の枠幅方向の長さが、略90度開放した場合の前記扉体と、前記補助縦枠の枠幅方向内側の端面との間の寸法よりも小さいことを特徴とする(3)に記載の止水装置(
図6参照)。
(5)
前記補助縦枠は、略90度開放した場合の前記扉体の閉鎖方向側面よりも枠幅方向外側に位置することを特徴とする(1)または(2)に記載の止水装置(
図13参照)。
(6)
前記フランジ部が、前記止水板本体部の横幅方向の一端側に設けられた第一のフランジ部であり、前記止水板本体部における横幅方向の他端側には、閉鎖状態の前記扉体と、反吊元側の前記縦枠との間に位置する第二のフランジ部が設けられていることを特徴とする(1)~(5)のいずれかに記載の止水装置(
図1~
図2、
図6~
図8、及び
図13~
図16参照)。
(7)
前記補助縦枠は、吊元側の前記縦枠の戸当たり面と略面一に設けられていることを特徴とする(1)~(6)のいずれかに記載の止水装置(
図2及び
図4等参照)。
(8)
吊元側の前記縦枠と前記補助縦枠との間に、水密材が設けられていることを特徴とする(1)~(7)いずれかに記載の止水装置(
図4、
図9~
図12及び
図17等参照)。
(9)
吊元側の前記縦枠と前記補助縦枠との間に、上下方向へわたって閉鎖状態の前記扉体に対向するように凹部が設けられ、前記水密材が、前記凹部内に設けられていることを特徴とする(8)に記載の止水装置(
図4、
図9~
図11及び
図17等参照)。
(10)
前記開き戸は、枠幅方向の一方側で開閉する親扉を備えるとともに、前記扉体を他方側で開閉する子扉とした親子扉であり、前記補助縦枠を子扉側に設けていることを特徴とする(1)~(9)のいずれかに記載の止水装置(
図1、
図2、
図6~
図7、
図13~
図16等参照)。
(11)
前記フランジ部には、前記扉体を回動するヒンジを通過可能な切欠部が設けられていることを特徴とする(1)~(10)のいずれかに記載の止水装置(
図1及び
図5参照)。
(12)
(1)~(11)のいずれかに記載の止水装置の設置方法であって、開放状態にある前記扉体の戸尻部と前記補助縦枠との間に、枠幅方向に対し傾斜した前記止水板の横幅方向の一端側を挿入し、この後に、前記止水板の前記一端側と他端側を、それぞれ、前記補助縦枠と反吊元側の前記縦枠に嵌め合わせようにしたことを特徴とする止水装置の設置方法。(
図13~
図16参照)
(13)
ヒンジにより回動する扉体を左右の縦枠の戸当たり面に当接又は近接して閉鎖するようにした開き戸について、左右の前記縦枠の間の開口を止水板により塞ぐようにした止水装置であって、前記止水板は、閉鎖状態の前記扉体と前記戸当たり面の間に位置するフランジ部を具備し、このフランジ部には、前記ヒンジを通過可能な切欠部が設けられていることを特徴とする止水装置(
図5参照)。
【符号の説明】
【0084】
1,2:止水装置
10:枠体
11,11’,11”11”’,12:縦枠
13:上枠
14:下枠
15:扉体(子扉)
16:扉体(親扉)
17:ヒンジ
18:扉体
19:パッキン
30,30’,50:補助縦枠
31,31’:支持部材
32,32’:補助縦枠本体
33,35,51:水密材
40:止水板
41:止水板本体部
X1~X7:開き戸