(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015459
(43)【公開日】2024-02-02
(54)【発明の名称】ダイヤフラムポンプ、電子機器、製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
F04B 43/02 20060101AFI20240126BHJP
【FI】
F04B43/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020204122
(22)【出願日】2020-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】松下 拓磨
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 洋志
(72)【発明者】
【氏名】川口 裕人
【テーマコード(参考)】
3H077
【Fターム(参考)】
3H077AA01
3H077AA11
3H077CC02
3H077CC09
3H077CC16
3H077DD06
3H077EE02
3H077EE34
3H077EE35
3H077FF06
3H077FF36
(57)【要約】
【課題】ダイヤフラムポンプの駆動の効率を向上させるこができる技術等を提供すること。
【解決手段】本技術に係るダイヤフラムポンプは、第1のダイヤフラムと、第2のダイヤフラムと、調整部とを具備する。前記第1のダイヤフラムは、第1の弾性部を含む第1の部材と、その駆動により前記第1の弾性部を弾性変形させる第1の駆動部とを有する。
前記第2のダイヤフラムは、第2の弾性部を含み、前記第1の部材との間で流体が流れる空間を形成する第2の部材と、前記第2の弾性部を弾性変形させる第2の駆動部とを有する。前記調整部は、前記第1のダイヤフラム又は前記第2のダイヤフラムのうち少なくとも一方に設けられ、前記第1のダイヤフラム又は前記第2のダイヤフラムのうち少なくとも一方の共振周波数を調整する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の弾性部を含む第1の部材と、その駆動により前記第1の弾性部を弾性変形させる第1の駆動部とを有する第1のダイヤフラムと、
第2の弾性部を含み、前記第1の部材との間で流体が流れる空間を形成する第2の部材と、前記第2の弾性部を弾性変形させる第2の駆動部とを有する第2のダイヤフラムと、
前記第1のダイヤフラム又は前記第2のダイヤフラムのうち少なくとも一方に設けられ、前記第1のダイヤフラム又は前記第2のダイヤフラムのうち少なくとも一方の共振周波数を調整するための調整部と
を具備するダイヤフラムポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載のダイヤフラムポンプであって、
前記調整部は、前記第1の駆動部及び前記第2の駆動部のうち少なくとも一方に設けられる
ダイヤフラムポンプ。
【請求項3】
請求項1に記載のダイヤフラムポンプであって、
前記調整部は、前記第1の弾性部及び前記第2の弾性部のうち少なくとも一方に設けられる
ダイヤフラムポンプ。
【請求項4】
請求項1に記載のダイヤフラムポンプであって、
前記第1の部材は、前記第1の弾性部の弾性変形を促進させる第1のバネ部を有し、
前記第2の部材は、前記第2の弾性部の弾性変形を促進させる第1のバネ部を有し、
前記調整部は、前記第1のバネ部及び前記第2のバネ部のうち少なくとも一方に設けられる
ダイヤフラムポンプ。
【請求項5】
請求項1に記載のダイヤフラムポンプであって、
前記調整部の弾性率は、前記調整部が設けられる部分の弾性率よりも高い
ダイヤフラムポンプ。
【請求項6】
請求項5に記載のダイヤフラムポンプであって、
前記調整部は、前記第1のダイヤフラム及び前記第2のダイヤフラムのうち、共振周波数が低い側のダイヤフラムに対して調整部が設けられる
ダイヤフラムポンプ。
【請求項7】
請求項1に記載のダイヤフラムポンプであって、
前記調整部の弾性率は、前記調整部が設けられる部分の弾性率よりも低い
ダイヤフラムポンプ。
【請求項8】
請求項7に記載のダイヤフラムポンプであって、
前記調整部の比重は、前記調整部が設けられる部分の比重よりも高い
ダイヤフラムポンプ。
【請求項9】
請求項7に記載のダイヤフラムポンプであって、
前記調整部は、前記第1のダイヤフラム及び前記第2のダイヤフラムのうち、共振周波数が高い側のダイヤフラムに設けられる
ダイヤフラムポンプ。
【請求項10】
請求項1に記載のダイヤフラムポンプであって、
複数のダイヤフラムの共振周波数がそれぞれ測定され、共振周波数が近い2つのダイヤフラムが前記第1のダイヤフラム及び前記第2のダイヤフラムとして選択される
ダイヤフラムポンプ。
【請求項11】
請求項1に記載のダイヤフラムポンプであって、
前記第1のダイヤフラム及び前記第2のダイヤフラムの共振周波数がそれぞれ測定され、第1のダイヤフラム及び前記第2のダイヤフラムのうち、どちらに調整部が設けられるが決定される
ダイヤフラムポンプ。
【請求項12】
請求項1に記載のダイヤフラムポンプであって、
前記第1のダイヤフラム及び前記第2のダイヤフラムの共振周波数がそれぞれ測定され、測定された共振周波数に基づいて、前記調整部の量が調整される
ダイヤフラムポンプ。
【請求項13】
請求項1に記載のダイヤフラムポンプであって、
前記第1のダイヤフラムは、前記第1の駆動部に電力を供給する第1の給電部を有し、
前記第2のダイヤフラムは、前記第2の駆動部に電力を供給する第2の給電部を有し、
前記調整部は、前記第1のダイヤフラム又は前記第2のダイヤフラムのうち少なくとも一方において、前記第1の給電部又は第2の給電部とのバランスを均一化するように設けられる
ダイヤフラムポンプ。
【請求項14】
請求項1に記載のダイヤフラムポンプであって、
前記第1の駆動部の入力信号の位相又は前記第2の駆動部の入力信号の位相うち少なくとも一方の位相が調整される位相制御が実行される
ダイヤフラムポンプ。
【請求項15】
請求項14に記載のダイヤフラムポンプであって、
第1のダイヤフラムポンプ及び第2のダイヤフラムポンプの振動の逆位相からの位相差が測定され、測定された位相差に基づいて前記位相制御が実行される
ダイヤフラムポンプ。
【請求項16】
請求項1に記載のダイヤフラムポンプであって、
前記第1の駆動部及び第2の駆動部は、それぞれ、圧電素子である
ダイヤフラムポンプ。
【請求項17】
請求項1に記載のダイヤフラムポンプであって、
前記調整部は、ポッティング加工により形成される
ダイヤフラムポンプ。
【請求項18】
第1の弾性部を含む第1の部材と、その駆動により前記第1の弾性部を弾性変形させる第1の駆動部とを有する第1のダイヤフラムと、
第2の弾性部を含み、前記第1の部材との間で流体が流れる空間を形成する第2の部材と、その駆動により前記第2の弾性部を弾性変形させる第2の駆動部とを有する第2のダイヤフラムと、
前記第1のダイヤフラム又は前記第2のダイヤフラムのうち少なくとも一方に設けられ、前記第1のダイヤフラム又は前記第2のダイヤフラムのうち少なくとも一方の共振周波数を調整するための調整部と
を有するダイヤフラムポンプを具備する電子機器。
【請求項19】
第1の弾性部を含む第1の部材と、その駆動により前記第1の弾性部を弾性変形させる第1の駆動部とを有する第1のダイヤフラムと、第2の弾性部を含み、前記第1の部材との間で流体が流れる空間を形成する第2の部材と、その駆動により前記第2の弾性部を弾性変形させる第2の駆動部とを有する第2のダイヤフラムとにおいて、前記第1のダイヤフラム又は前記第2のダイヤフラムのうち少なくとも一方の共振周波数を調整するための調整部を、前記第1のダイヤフラム又は前記第2のダイヤフラムのうち少なくとも一方に形成する調整部形成部
を具備するダイヤフラムポンプの製造装置。
【請求項20】
第1の弾性部を含む第1の部材と、その駆動により前記第1の弾性部を弾性変形させる第1の駆動部とを有する第1のダイヤフラムと、第2の弾性部を含み、前記第1の部材との間で流体が流れる空間を形成する第2の部材と、その駆動により前記第2の弾性部を弾性変形させる第2の駆動部とを有する第2のダイヤフラムとを用意し、
前記第1のダイヤフラム又は前記第2のダイヤフラムのうち少なくとも一方の共振周波数を調整するための調整部を、前記第1のダイヤフラム又は前記第2のダイヤフラムのうち少なくとも一方に形成する
ダイヤフラムポンプの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、ダイヤフラムポンプ等の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
小型化かつ薄型のポンプとして、ダイヤフラムを用いたダイヤフラムポンプが実用化されている(例えば、下記特許文献1参照)。ダイヤフラムポンプにおいては、ダイヤフラムの屈曲変形によってポンプ室の容積が大きくなることにより流体がポンプ室に吸入され、一方で、ポンプ室の容積が小さくなることにより流体がポンプ室から排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ダイヤフラムポンプの駆動の効率を向上させることができる技術が求められている。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本技術の目的は、ダイヤフラムポンプの駆動の効率を向上させることができる技術等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術に係るダイヤフラムポンプは、第1のダイヤフラムと、第2のダイヤフラムと、調整部とを具備する。
前記第1のダイヤフラムは、第1の弾性部を含む第1の部材と、その駆動により前記第1の弾性部を弾性変形させる第1の駆動部とを有する。
前記第2のダイヤフラムは、第2の弾性部を含み、前記第1の部材との間で流体が流れる空間を形成する第2の部材と、前記第2の弾性部を弾性変形させる第2の駆動部とを有する。
前記調整部は、前記第1のダイヤフラム又は前記第2のダイヤフラムのうち少なくとも一方に設けられ、前記第1のダイヤフラム又は前記第2のダイヤフラムのうち少なくとも一方の共振周波数を調整する。
【0007】
このように、本技術では、調整部が設けられているので、第1のダイヤフラム及び第2のダイヤフラムの共振周波数をできるだけ等しくすることができる。これにより、ダイヤフラムポンプの駆動の効率を向上させるこができる。
【0008】
本技術に係る電子機器は、ダイヤフラムポンプを具備する。
前記ダイヤフラムポンプは、第1のダイヤフラムと、第2のダイヤフラムと、調整部を有する。
前記第1のダイヤフラムは、第1の弾性部を含む第1の部材と、その駆動により前記第1の弾性部を弾性変形させる第1の駆動部とを有する。
前記第2のダイヤフラムは、第2の弾性部を含み、前記第1の部材との間で流体が流れる空間を形成する第2の部材と、その駆動により前記第2の弾性部を弾性変形させる第2の駆動部とを有する。
前記調整部は、前記第1のダイヤフラム又は前記第2のダイヤフラムのうち少なくとも一方に設けられ、前記第1のダイヤフラム又は前記第2のダイヤフラムのうち少なくとも一方の共振周波数を調整する。
【0009】
本技術の係るダイヤフラムポンプの製造装置は、調整部形成部を具備する。
前記調整部形成部は、第1の弾性部を含む第1の部材と、その駆動により前記第1の弾性部を弾性変形させる第1の駆動部とを有する第1のダイヤフラムと、第2の弾性部を含み、前記第1の部材との間で流体が流れる空間を形成する第2の部材と、その駆動により前記第2の弾性部を弾性変形させる第2の駆動部とを有する第2のダイヤフラムとにおいて、前記第1のダイヤフラム又は前記第2のダイヤフラムのうち少なくとも一方の共振周波数を調整するための調整部を、前記第1のダイヤフラム又は前記第2のダイヤフラムのうち少なくとも一方に形成する。
【0010】
本技術に係るダイヤフラムの製造方法は、第1の弾性部を含む第1の部材と、その駆動により前記第1の弾性部を弾性変形させる第1の駆動部とを有する第1のダイヤフラムと、第2の弾性部を含み、前記第1の部材との間で流体が流れる空間を形成する第2の部材と、その駆動により前記第2の弾性部を弾性変形させる第2の駆動部とを有する第2のダイヤフラムとを用意し、
前記第1のダイヤフラム又は前記第2のダイヤフラムのうち少なくとも一方の共振周波数を調整するための調整部を、前記第1のダイヤフラム又は前記第2のダイヤフラムのうち少なくとも一方に形成することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本技術の第1実施形態に係るダイヤフラムポンプを示す側方断面図である。
【
図3】ダイヤフラムポンプの動作を説明するための図である。
【
図4】ダイヤフラムポンプの動作を説明するための図である。
【
図5】第1の比較例に係るダイヤフラムポンプを示す模式図である。
【
図6】第2の比較例に係るダイヤフラムポンプを示す模式図である。
【
図7】第1実施形態に係るダイヤフラムポンプの製造装置を示す図である。
【
図8A】第1実施形態に係るダイヤフラムポンプにおける製造方法(製造工程)を示す図である。
【
図8B】第1実施形態に係るダイヤフラムポンプにおける製造方法(製造工程)を示す図である。
【
図9】第1のダイヤフラムの共振周波数と、第2のダイヤフラムの共振周波数を合わせる方法としての2種類のパターンを示す図である。
【
図10】各比較例に係るダイヤフラムポンプにおいて、位相制御が実行されない場合と、位相制御が実行された場合とのダイヤフラムの振動との関係を示す図である。
【
図11】第3の比較例~第5の比較例において、位相制御が実行されたときのどの程度の効果が得られるのかを示す図である。
【
図12】第2実施形態に係るダイヤフラムポンプの製造装置を示す図である。
【
図13A】第2実施形態に係るダイヤフラムポンプ10の製造方法を示す図である。
【
図13B】第2実施形態に係るダイヤフラムポンプ10の製造方法を示す図である。
【
図14】ダイヤフラムのバネ部に対して調整部が形成されたときの一例を示す図である。
【
図15】ダイヤフラムの弾性部に対して調整部が形成されたときの一例を示す図である。
【
図16】圧電素子に電力を供給するフレキシブル基板が弾性部に接続されたときの様子を示す図である。
【
図17】第1の圧電素子及び第2の圧電素子の両方に調整部が形成されたときの様子を示す図である。
【
図18】ダイヤフラムポンプのその他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本技術に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0013】
≪第1実施形態≫
<全体構成及び各部の構成>
図1は、本技術の第1実施形態に係るダイヤフラムポンプ10を示す側方断面図である。
図2は、ダイヤフラムポンプ10の上面図である。
【0014】
こられの図に示すように、ダイヤフラムポンプ10は、互いに対向して配置される第1のダイヤフラム1a及び第2のダイヤフラム1bを備えている。また、ダイヤフラムポンプ10は、第1のダイヤフラム1a及び第2のダイヤフラム1bにおける共振周波数(固有値)を調整するための調整部11をさらに備えている。
【0015】
ダイヤフラムポンプ10は、第1のダイヤフラム1a及び第2のダイヤフラム1bの駆動により流体を吸入及び排出可能に構成されている。なお、ダイヤフラムポンプ10に用いられる流体は、空気等の気体であってもよいし、水等の液体であってもよい。
【0016】
第1のダイヤフラム1aは、平板状の第1の板材2a(第1の部材)と、その駆動により第1の板材2a(第1の弾性部5a)を上下方向に屈曲変形させる第1の圧電素子3a(第1の駆動部)とを含む。第2のダイヤフラム1bは、第1の板材2aとの間で流体を保持する空間13を形成する平板状の第2の板材2b(第2の部材)と、その駆動により第2の板材2b(第2の弾性部5b)を上下方向に屈曲変形させる第2の圧電素子3b(第2の駆動部)とを含む。
【0017】
第1の圧電素子3a及び第2の圧電素子3bは、それぞれ、PZT等の圧電材料により構成される。第1の圧電素子3aは、第1の板材2aの上部において、第1の板材2aの中央付近に設けられており、第2の圧電素子3bは、第2の板材2bの下部において、第2の板材2bの中央近傍に設けられている。なお、第1の圧電素子3a、第2の圧電素子3bは、それぞれ、2層以上の積層構造とされていてもよい。
【0018】
ここでの例では、第1の圧電素子3a及び第2の圧電素子3bは、平面視で円形の形状を有しているが、平面視で、楕円形や、多角形等の形状により構成されていてもよく、環状に構成さていてもよい。
【0019】
第1のダイヤフラム1aにおける第1の板材2a、及び第2のダイヤフラム1bにおける第2の板材2bは、それぞれ、樹脂又は金属等の各種の材料により構成される。
図2に示す例では、第1の板材2a、第2の板材2bは、それぞれ平面視で矩形の形状とされているが、円形や、矩形以外の多角形等であってもよく、その形状について特に限定されない。
【0020】
第1の板材2aは、外周側に位置する第1の固定部4aと、第1の圧電素子3aに対応する位置において、第1の圧電素子3aの下側に設けられた第1の弾性部5aと、第1の固定部4a及び第1の弾性部5aの間に介在された第1のバネ部6aとを有している。
【0021】
同様に、第2の板材2bは、外周側に位置する第2の固定部4bと、第2の圧電素子3bに対応する位置において、第2の圧電素子3bの上側に設けられた第2の弾性部5bと、第2の固定部4b及び第1の弾性部5aの間に介在された第1のバネ部6aとを有している。
【0022】
第1の固定部4a及び第2の固定部4bは、固定端とされており、ダイヤフラムポンプ10が電子機器等の他の機器に取り付けられるとき、必要に応じて、一部又は全部がその取り付け位置に固定される。
【0023】
なお、ダイヤフラムポンプ10が搭載される電子機器としては、例えば、PC(Personal Computer)、携帯電話機(スマートフォンを含む)、ウェアラブルデバイス、ハプティクスデバイス等が挙げられるが、電子機器の種類は特に限定されない(例えば、ダイヤフラムポンプ10は冷却デバイスとして使用)。
【0024】
第1の弾性部5aは、弾性変形可能であり、第1の圧電素子3aにより上下方向に屈曲可能とされている。同様に、第2の弾性部5bは、弾性変形可能であり、第2の圧電素子3bにより上下方向に屈曲可能とされている。図に示す例では、第1の弾性部5a、第2の弾性部5bは、平面視で円形とされているが(第1の圧電素子3a、第2の圧電素子3bが円形とされているため)、多角形等であってもよく、その形状については特に限定されない。
【0025】
第1のバネ部6aは、第1の弾性部5aにおける弾性変形を促進させることが可能とされている。同様に、第2のバネ部6bは、第2の弾性部5bにおける弾性変形を促進することが可能とされている。
【0026】
第1のバネ部6aは、第1の板材2aの上側、かつ、第1の弾性部5aの周囲において、周方向に沿って設けられた第1の溝部7aにより構成されている。同様に、第2のバネ部6bは、第2の板材2bの下側かつ第2の弾性部5bの周囲において、周方向に沿って設けられた第2の溝部7bにより構成されている。なお、
図2に示す例では、第1の溝部7a、第2の溝部7bが周方向の全周に亘って設けられているが、第1の溝部7a、第2の溝部7bは、周方向に沿って一定の間隔を開けて間欠的に設けられていてもよい。
【0027】
また、
図2に示す例では、第1のバネ部6a及び第2のバネ部6bは、平面視で円形の環状とされているが(第1の圧電素子3a、第2の圧電素子3bが円形とされているため)、多角形等の環状であってもよく、その形状については特に限定されない。
【0028】
なお、本実施形態では、第1の板材2a自体が同一材料で構成されているので、第1の固定部4a、第1の弾性部5a、第1のバネ部6aは、本実施形態では、同一材料とされている。一方、第1の固定部4a、第1の弾性部5a、第1のバネ部6aは、それぞれ異なる材料により構成されていてもよい。
【0029】
例えば、第1の固定部4aは、第1の弾性部5a、第1のバネ部6aよりも剛性が高い材料により構成される。一方、第1の弾性部5aは、第1の固定部4aよりも弾性率が高い材料により構成され、また、第1のバネ部6aは、第1の弾性部5aよりもさらに弾性率が高い材料により構成されていてもよい。これについては、第2の固定部4b、第2の弾性部5b、第2のバネ部6bにおいて同様である。
【0030】
ダイヤフラムポンプ10は、流体を保持可能な空間13を内部に有する筐体12を備えている。筐体12は、第1のダイヤフラム1aにおける第1の板材2aと、第2のダイヤフラム1bにおける第2の板材2bと、第1の板材2aと第2の板材2bとの間に介在された筒体14とにより構成される。なお図示せずとも、筐体12には、第1のダイヤフラム1a及び第2のダイヤフラム1bを覆う蓋が設けられてもよい。
【0031】
筒体14は、外部から空間13内へ流体を流入させるための流入口15と、空間13内から外部へ流体を流出させるための流出口16とを有している。流入口15及び流出口16は、それぞれ、筒体14を水平方向に貫通するように設けられている。また、流入口15及び流出口16は、空間13を挟んで互いに反対側の位置に設けられている。
【0032】
筒体14において流入口15に対応する位置には、第1の逆止弁17が設けられており、一方で、流出口16に対応する位置には、第2の逆止弁18が設けられている。第1の逆止弁17は、筒体14の内周側に設けられており、一方で、第2の逆止弁18は、筒体14の外周側に設けられている。
【0033】
なお、本実施形態においては、ダイヤフラム1の振動方向に対して垂直な方向に流入口15及び流出口16が設けられているが、ダイヤフラム1の振動方向に対して平行な方向に流入口15及び流出口16が設けられていてもよい。この場合、例えば、流入口15及び流出口16は、例えば、第1のダイヤフラム1aの第1の固定部4a(あるいは、第2のダイヤフラム1bの第2の固定部4b)において、第1のダイヤフラム1a(あるいは、第2のダイヤフラム1b)を上下方向に貫通するように設けられる。
【0034】
本実施形態において、調整部11は、第1の圧電素子3a及び第2の圧電素子3bのうち一方にのみ設けられる。なお、調整部11は、第1の圧電素子3a及び第2の圧電素子3bの両方に設けられていてもよい。
【0035】
調整部11は、第1のダイヤフラム1a及び第2のダイヤフラム1bにおける共振周波数(固有値)を調整することが可能とされている。本実施形態では、この調整部11により、第1のダイヤフラム1a及び第2のダイヤフラム1bにおける共振周波数をできるだけ等しくすることによって、ダイヤフラムポンプ10の駆動の効率を向上させることとしている。
【0036】
調整部11は、例えば、ポッティング加工によるポッティング材により形成される。ポッティング材としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂などの各種の樹脂や、半田等の各種の金属が挙げられるが、これらに限定されない。なお、調整部11は、塗布やスクリーン印刷、スパッタリングなどの他の方法により形成されてもよい。この場合も同様に、調整部11は、各種の樹脂や各種の金属等により構成される。
【0037】
図に示す例では、調整部11は、第1の圧電素子3a上において、第1の圧電素子3aの全ての領域を覆うように設けられている。一方、調整部11は、第1の圧電素子3a上において、第1の圧電素子3aの一部の領域を覆うように設けられていてもよいし、複数に分離して点在するように設けられていてもよい。
【0038】
<動作説明>
次に、ダイヤフラムポンプ10の典型的な動作について説明する。
図3及び
図4は、ダイヤフラムポンプ10の動作を説明するための図である。なお、
図3及び
図4では、第1の圧電素子3a、第2の圧電素子3b、調整部11が省略して図示されている。
【0039】
図3に示すように、第1の圧電素子3a及び第2の圧電素子3bに逆位相の入力電圧(Sin波、三角波、矩形波、のこぎり波などをいい、以下、これらを総称してSin波等という)が印加されると、第1の弾性部5aが上方に向けて屈曲変形し、第2の弾性部5bが下方へ向けて屈曲変形する。このとき、第1のバネ部6aにより、第1の弾性部5aの変形が促進され、第1の弾性部5aは、上方に向けて大きく屈曲変形する。同様に、第2のバネ部6bにより、第2の弾性部5bの変形が促進され、第1の弾性部5aは、下方に向けて大きく屈曲変形する。
【0040】
第1の弾性部5aが上方へ屈曲変形し、かつ、第2の弾性部5bが下方へ屈曲変形すると、筐体12内部の空間13が膨張して、空間13内の圧力が外部よりも小さくなる。これにより、流体が流入口15を介して外部から空間13内へと流入する。なお、このとき、流入口15に設けられた第1の逆止弁17は、外部及び空間13内の圧力差により開放された状態となり、一方で、流出口16に設けられた第2の逆止弁18は、外部及び空間13内部の圧力差によりと閉じた状態となる。
【0041】
図3に示す状態から、第1の圧電素子3a及び第2の圧電素子3bに逆位相の入力電圧(Sin波等)が引き続き印加されると、第1の弾性部5aが下方に向けて屈曲変形し、第2の弾性部5bが上方へ向けて屈曲変形する。このとき、第1のバネ部6aにより、第1の弾性部5aの変形が促進され、第1の弾性部5aは、下方に向けて大きく屈曲変形する。同様に、第2のバネ部6bにより、第2の弾性部5bの変形が促進され、第1の弾性部5aは、上方に向けて大きく屈曲変形する。
【0042】
第1の弾性部5aが下方へ屈曲変形し、かつ、第2の弾性部5bが上方へ屈曲変形すると、筐体12内部の空間13が収縮して、空間13内の圧力が外部よりも大きくなる。これにより、流体が流出口16を介して空間13内部から外部へと流出する。なお、このとき、流入口15に設けられた第1の逆止弁17は、外部及び空間13内の圧力差により閉じた状態となり、一方で、流出口16に設けられた第2の逆止弁18は、外部及び空間13内部の圧力差によりと開いた状態となる。
【0043】
<本技術の基本的な考え方>
次に、本技術の基本的な考え方について説明する。
【0044】
図5は、第1の比較例に係るダイヤフラムポンプ21を示す模式図である。なお、
図5においては、ダイヤフラムポンプ21を簡略化して図示している。この第1の比較例は、本実施形態とは異なり、調整部11を有していない。
【0045】
また、この第1の比較例は、理論上の理想的なダイヤフラムポンプ21であり、第1のダイヤフラム1aの共振周波数と、第2のダイヤフラム1bの共振周波数が完全に一致している。例えば、第1の圧電素子3aの大きさ(XY方向)及び厚さt(Z方向)と、第2の圧電素子3bの大きさ及び厚さtが完全に一致しており、第1の板材2aの大きさ及び厚さと、第2の板材2bの大きさ及び厚さが完全に一致していることで、第1のダイヤフラム1a及び第2のダイヤフラム1bの共振周波数が完全に一致している。
【0046】
この第1の比較例に係るダイヤフラムポンプ21において、逆位相の入力電圧(Sin波等)が第1の圧電素子3a、第2の圧電素子3bに加えられたとする。この場合、出力において第1のダイヤフラム1a(第1の弾性部5a)及び第2のダイヤフラム1b(第2の弾性部5b)は、その屈曲変形による振動が理想的に逆位相となり、振幅の最大点となる時刻が同じ時刻となる。これにより、最大効率でダイヤフラムポンプ21を駆動させることができる。
【0047】
図6は、第2の比較例に係るダイヤフラムポンプ22を示す模式図である。なお、
図6においては、ダイヤフラムポンプ22を簡略化して図示している。この第2の比較例は、本実施形態とは異なり、調整部11を有していない。また、この第2の比較例では、第1のダイヤフラム1aの共振周波数と、第2のダイヤフラム1bの共振周波数とが一致していない。
【0048】
ここで、実際には、第1のダイヤフラム1a及び第2のダイヤフラム1bを完全に同一となるように製造することはできないので、通常、第1のダイヤフラム1aの共振周波数と、第2のダイヤフラム1bの共振周波数とは一致しない。
【0049】
例えば、製造時のバラつきにより、第1の圧電素子3a及び第2の圧電素子3bにおいて、その大きさ(XY方向)や、厚さ(Z方向)が異なってしまう場合がある。また、第1の板材2a及び第2の板材2bにおいて、その大きさや、厚さが異なってしまう場合がある。例えば、このようなことが原因で、第1のダイヤフラム1aの共振周波数と、第2のダイヤフラム1bの共振周波数とが異なってしまう場合がある。
【0050】
なお、
図6では、一例として、第1の圧電素子3aの第1の厚さt'が、第2の圧電素子3bの厚さtよりも厚くなってしまっているときの様子が示されている。
【0051】
この第2の比較例に係るダイヤフラムポンプ22において、逆位相の入力電圧(Sin波等)が第1の圧電素子3a、第2の圧電素子3bに加えられたとする。この場合、出力において第1のダイヤフラム1a(第1の弾性部5a)及び第2のダイヤフラム1b(第2の弾性部5b)は、その屈曲変形による振動の位相が逆位相からずれ、振幅の最大点となる時刻が異なる時刻となってしまう。これにより、ダイヤフラムポンプ10を効率よく駆動させることができない。
【0052】
このため、本実施形態では、第1のダイヤフラム1a及び第2のダイヤフラム1bのうち一方(両方でもよい)に対して、共振周波数を調整するための調整部11を設けることとしている。これにより、第1のダイヤフラム1aの共振周波数及び第2のダイヤフラム1bの共振周波数をできるだけ等しくするようにし、これにより、ダイヤフラムポンプ10の駆動の効率を向上させることとしている。
【0053】
<製造装置30及び製造方法>
次に、ダイヤフラムポンプ10の製造装置30及び製造方法について説明する。
【0054】
図7は、第1実施形態に係るダイヤフラムポンプ10の製造装置30を示す図である。
図8A及び
図8Bは、第1実施形態に係るダイヤフラムポンプ10における製造方法(製造工程)を示す図である。なお、
図8A及び
図8Bでは、ダイヤフラムポンプ10を簡略化して図示している。
【0055】
図7に示すように製造装置30は、ダイヤフラム生成部31と、第1の測定部32と、ペアリング部33と、組み立て部34と、第2の測定部35と、調整部形成部36と、制御装置37とを備えている。
【0056】
ダイヤフラム生成部31は、板材2の弾性部5に対応する位置に圧電素子3を形成し(例えば、圧電素子3を弾性部5に接着して固定)、これによりダイヤラム1を生成する(
図8Aの一番上及び上から2番目の図を参照)。そして、ダイヤフラム生成部31は、生成されたダイヤフラム1を第1の測定部32に順次受け渡す。
【0057】
なお、ダイヤフラム生成部31は、板材2に対して溝部7を形成して板材2に対してバネ部6を形成してもよい。バネ部6を形成する工程と、圧電素子3を形成する工程は、どちらが先に行われてもよい。
【0058】
第1の測定部32は、ダイヤフラム生成部31から受け渡されたダイヤフラム1の圧電素子3に対して、入力電圧(Sin波等)を印加して、ダイヤフラム1を振動させる。そして、第1の測定部32は、そのダイヤフラム1の周波数特性(共振周波数)及び振幅特性を測定する(
図8Aの上から3番目の図を参照)。
【0059】
また、第1の測定部32は、測定された周波数特性及び振幅特性の情報を制御装置37に対して出力する。そして、第1の測定部32は、測定が完了したダイヤフラム1をペアリング部33へと順次受け渡す。
【0060】
第1の測定部32は、例えば、ドップラー変位計等により構成されるが、ダイヤフラム1の周波数特性及び振幅特性を測定可能な装置であればどのような装置により構成されていてもよい。
【0061】
ペアリング部33は、第1の測定部32から受け渡されたダイヤフラム1を複数個(例えば、10個~100個程度:少なくとも3個以上)貯蔵可能とされている。このペアリング部33は、貯蔵された複数のダイヤフラム1の中から周波数特性(共振周波数)及び振幅特性の近い2個のダイヤフラム1のペアリングを行い、第1のダイヤフラム1a及び第2のダイヤフラム1bとして選択する(
図8Aの下から2番目の図を参照)。
【0062】
なお、ペアリング部33は、このペアリングの作業を、それぞれのダイヤフラム1の周波数特性及び振幅特性を記憶している制御装置37からの指令に応じて実行する。また、ペアリング部33は、ペアリングされた2個のダイヤフラム1を組み立て部34に対して順次受け渡す。
【0063】
組み立て部34は、ペアリング部33から受け渡された2個のダイヤフラム1のうち、一方のダイヤフラム1を筒体14の上面に固定し、他方のダイヤフラム1を筒体14の下面に固定することで、ダイヤフラムポンプ10を組み立てる(
図8Aの一番下側の図を参照)。そして、組み立て部34は、組み立てられたダイヤフラムポンプ10を第2の測定部35に対して順次受け渡す。
【0064】
第2の測定部35は、ダイヤフラム生成部31から受け渡されたダイヤフラムポンプ10について、第1の圧電素子3a及び第2の圧電素子3bに入力電圧(Sin波等)を印加し、第1のダイヤフラム1a及び第2のダイヤフラム1bを振動させる。そして、第1の測定部32は、第1のダイヤフラム1a及び第2のダイヤフラム1bについて、それぞれ周波数特性(共振周波数)及び振幅特性を測定する(
図8Bの上側の図を参照)。
【0065】
また、第2の測定部35は、測定された周波数特性及び振幅特性の情報を制御装置37に対して出力する。そして、第2の測定部35は、測定が完了したダイヤフラムポンプ10を調整部形成部36へと順次受け渡す。
【0066】
第2の測定部35は、例えば、ドップラー変位計等により構成されるが、ダイヤフラム1の周波数特性及び振幅特性を測定可能な装置であればどのような装置により構成されていてもよい。
【0067】
調整部形成部36は、第2の測定部35から受け渡されたダイヤフラムポンプ10について、制御装置37の指令に応じて、第1のダイヤフラム1a及び第2のダイヤフラム1b(第1の圧電素子3a及び第2の圧電素子3b)のうち、一方に対して調整部11を形成する。第1のダイヤフラム1a及び第2のダイヤフラム1b(第1の圧電素子3a及び第2の圧電素子3b)のうちうちどちらに調整部11が設けられるか、並びに、調整部11をどれくらいの量(厚さ)とするかについては、後に詳述する。
【0068】
制御装置37は、製造装置30の全体を統括的に制御する。制御装置37は、制御部と、記憶部とを有している。制御部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等により構成される。記憶部は、制御部の作業領域として用いられる揮発性のメモリと、各種のデータやプログラム等を記憶する不揮発性のメモリとを含む。制御装置37は、PC等の汎用の装置により構成されていてもよいし、この製造装置30に専用の装置により構成されていてもよい。
【0069】
制御装置37は、第1の測定部32から取得された、それぞれのダイヤフラム1の周波数特性(共振周波数)及び振幅特性に基づいて、周波数特性(共振周波数)及び振幅特性が近いダイヤフラム1がどれであるかを判断する。そして、制御装置37は、ペアリング部33に指令を出し、ペアリング部33に2個のダイヤフラム1のペアリングを実行させる。
【0070】
また、制御装置37は、第2の測定部35から取得された、第1のダイヤフラム1a及び第2のダイヤフラム1bの周波数特性(共振周波数)及び振幅特性に基づいて、第1のダイヤフラム1a及び第2のダイヤフラム1b(第1の圧電素子3a、第2の圧電素子3b)のうち、どちらにどれくらいの量の調整部11を形成するかを判断する。そして、制御部は、調整部形成部36に指令を出し、調整部形成部36により調整部11を形成させる。
【0071】
<どちらのダイヤフラム1にどの程度の量の調整部11を形成するか>
次に、第1のダイヤフラム1a及び第2のダイヤフラム1bのうちどちらのダイヤフラム1にどの程度の量の調整部11を形成するかについて説明する。
【0072】
まず、第1のダイヤフラム1aの共振周波数と、第2のダイヤフラム1bの共振周波数を合わせる方法として2種類のパターンがある。
図9は、第1のダイヤフラム1aの共振周波数と、第2のダイヤフラム1bの共振周波数を合わせる方法としての2種類のパターンを示す図である。
【0073】
図9の上側を参照して、1つ目のパターンは、第1のダイヤフラム1a及び第2のダイヤフラム1bのうち、低周波数側のダイヤフラム1の共振周波数を上げることで、低周波数側のダイヤフラム1の共振周波数を高周波数側のダイヤフラム1の共振周波数に合わせるといったパターンである。
【0074】
1つ目のパターンの場合、共振周波数が低い側のダイヤフラム1の圧電素子3に対して、調整部11が形成される。また、ダイヤフラム1の共振周波数を上げるため、調整部11に用いられる材料として、圧電素子の材料よりも弾性率が高い材料が用いられる。なお、シミュレーション結果からは、半田と同等の物性値を持つ材料で調整部11を構成することで、効果的かつ容易に共振周波数を上げることができるとの結果が得られている。
【0075】
図9の下側を参照して、2つ目のパターンは、第1のダイヤフラム1a及び第2のダイヤフラム1bのうち、高周波数側のダイヤフラム1の共振周波数を下げることで、高周波数側のダイヤフラム1の共振周波数を低周波数側のダイヤフラム1の共振周波数に合わせるといったパターンである。
【0076】
2つ目のパターンの場合、共振周波数が高い側のダイヤフラム1の圧電素子3に対して、調整部11が形成される。また、ダイヤフラム1の共振周波数を下げるため、調整部11の材料として、圧電素子の材料よりも弾性率が低く、かつ、比重が高い材料が用いられる。
【0077】
次に、調整部11の量(厚さ)について説明する。まず、予め、調整部11の量が変化されつつ、その量の調整部11が形成されたときにダイヤフラム1の共振周波数がどの程度変化するのかが測定される。これにより、調整部11の量と、ダイヤフラム1の共振周波数の変化率との関係が統計により集計される。
【0078】
そして、第1のダイヤフラム1aの共振周波数と、第2のダイヤフラム1bの共振周波数との間の差が計算され、この差を埋めるための調整部11の量が、上記関係に基づいて決定される。なお、第1のダイヤフラム1aの共振周波数と、第2のダイヤフラム1bの共振周波数との間の差が大きくなるほど、調整部11の量(厚さ)が増やされる。
【0079】
制御装置37の処理について一例を挙げて具体的に説明する。まず、1つ目のパターンについて説明する。制御装置37は、調整部11の量(厚さ)と、ダイヤフラム1の共振周波数の変化率との関係を予め記憶している。制御装置37は、第2の測定部35から第1のダイヤフラム1aの共振周波数(周波数特性)と、第2のダイヤフラム1bの共振周波数(周波数特性)とを取得すると、どちらのダイヤフラム1の共振周波数が小さいかを判定する。そして、共振周波数が小さい方のダイヤフラム1を、調整部11を形成するダイヤフラム1として決定する。
【0080】
次に、制御装置37は、第1のダイヤフラム1aの共振周波数と、第2のダイヤフラム1bの共振周波数の差を算出する。そして、制御装置37は、調整部11の量(厚さ)及び共振周波数の変化率の関係と、共振周波数の差とに基づいて、調整部11の量(厚さ)を決定する。そして、制御装置37は、どちらのダイヤフラム1に調整部11を形成するかの情報と、調整部11の量の情報とを調整部形成部36に通知し、調整部形成部16により調整部11を形成させる。なお、このときの調整部11は、圧電素子よりも弾性率が高い。
【0081】
次に、2つ目のパターンについて説明する。制御装置37は、調整部11の量(厚さ)と、ダイヤフラム1の共振周波数の変化率との関係を予め記憶している。制御装置37は、第2の測定部35から第1のダイヤフラム1aの共振周波数(周波数特性)と、第2のダイヤフラム1bの共振周波数(周波数特性)とを取得すると、どちらのダイヤフラム1の共振周波数が大きいかを判定する。そして、共振周波数が大きい方のダイヤフラム1を、調整部11を形成するダイヤフラム1として決定する。
【0082】
次に、制御装置37は、第1のダイヤフラム1aの共振周波数と、第2のダイヤフラム1bの共振周波数の差を算出する。そして、制御装置37は、調整部11の量(厚さ)及び共振周波数の変化率の関係と、共振周波数の差とに基づいて、調整部11の量(厚さ)を決定する。そして、制御装置37は、どちらのダイヤフラム1に調整部11を形成するかの情報と、調整部11の量の情報とを調整部形成部36に通知し、調整部形成部16により調整部11を形成させる。なお、このときの調整部11は、圧電素子よりも弾性率が低く、かつ、比重が高い。
【0083】
<作用等>
以上説明したように、本実施形態では、第1のダイヤフラム1a又は第2のダイヤフラム1bに対して調整部11が形成されることで、第1のダイヤフラム1aの共振周波数と、第2のダイヤフラム1bの共振周波数とをできるだけ等しくすることができる。これにより、第1のダイヤフラム1a及び第2のダイヤフラム1bの振動の位相を適切に逆位相とすることができ、振幅の最大点を同じ時刻とすることができる(例えば、
図5に示すような理想的なダイヤフラムポンプのように)。これにより、ダイヤフラムポンプ10の駆動の効率を向上させることができる。
【0084】
なお、調整部11形成前における第1のダイヤフラム1a及び第2のダイヤフラム1bにおける振動の周波数の差が600Hz(振動の周波数は、約20kHz)であったとき、一方のダイヤフラム1の圧電素子に0.1mm程度の調整部11を形成したところ、振動の周波数の差がほぼゼロになったといった実験結果が得られている。
【0085】
また、本実施形態では、複数のダイヤフラム1の中から、共振周波数が近い2つのダイヤフラム1が第1のダイヤフラム1a及び第2のダイヤフラム1bとして選択される。これにより、調整部11の量が少なくて済み、効率よく第1のダイヤフラム1a及び第2のダイヤフラム1bの共振周波数を合わせることができる。
【0086】
また、本実施形態では、一方のダイヤフラム1の共振周波数を上げて、第1のダイヤフラム1a及び第2のダイヤフラム1bの共振周波数を合わせる場合、調整部11の材料として圧電素子3よりも弾性率が高い材料が用いられる。これにより、ダイヤフラム1の共振周波数を適切に上昇させることができる。
【0087】
また、本実施形態では、一方のダイヤフラム1の共振周波数を下げて、第1のダイヤフラム1a及び第2のダイヤフラム1bの共振周波数を合わせる場合、調整部11の材料として圧電素子3よりも弾性率が低く、かつ、比重が高い材料が用いられる。これにより、ダイヤフラム1の共振周波数を適切に低下させることができる。
【0088】
また、本実施形態では、第1のダイヤフラム1a及び第2のダイヤフラム1b(組み立て後)の共振周波数(周波数特性)がそれぞれ測定され、この共振周波数に基づいて、調整部11の量(厚さ)が決定される。これにより、第1のダイヤフラム1aの共振周波数と、第2のダイヤフラム1bの共振周波数とを適切に一致させることができる。
【0089】
特に、本実施形態では、第1のダイヤフラム1a及び第2のダイヤフラム1bの共振周波数の差と、調整部11の量(厚さ)及びダイヤフラム1の共振周波数の変化率の関係とに基づいて、調整部11の量(厚さ)が決定される。これにより、第1のダイヤフラム1aの共振周波数と、第2のダイヤフラム1bの共振周波数とをさらに適切に一致させることができる。
【0090】
≪第2実施形態≫
次に、本技術の第2実施形態について説明する。ここで、上述の調整部11によれば、第1のダイヤフラム1aの共振周波数及び第2のダイヤフラム1bの共振周波数をできるだけ等しくすることができ、第1のダイヤフラム1a及び第2のダイヤフラム1bの振動における逆位相からの位相ずれも小さくなるが、多少の位相ずれが残る可能性がある。
【0091】
そこで、第2実施形態では、第1のダイヤフラム1a及び第2のダイヤフラム1bの振動の逆位相に対する位相差に基づいて、入力電圧(入力信号:Sin波等)の位相制御が実行される。これにより、第1のダイヤフラム1a及び第2のダイヤフラム1bの振動を限りなく逆位相に近づけることとしている。
【0092】
<基本的な考え方>
まず、第2実施形態の基本的な考え方について、比較例を挙げて説明する。
図10は、各比較例(第3の比較例~第5の比較例)に係るダイヤフラムポンプ23~25において、位相制御が実行されない場合と、位相制御が実行された場合とのダイヤフラム1の振動との関係を示す図である。なお、
図10においては、ダイヤフラムポンプ23~25を簡略化して図示している。また、
図10における比較例は、調整部11を有していない。
【0093】
まず、
図10の上側の図を参照して、第3の比較例に係るダイヤフラムポンプ23について説明する。この第3の比較例に係るダイヤフラムポンプ23では、第1の圧電素子3aの厚さt
Uが176μmであり、第2の圧電素子3bの厚さt
Lが166μmであるため、第1のダイヤフラム1a及び第2のダイヤフラム1bの共振周波数が一致していない。
【0094】
このため、第1の圧電素子3a及び第2の圧電素子3bに対して、(位相制御がされていない単純な)逆位相の入力電圧が印加されると、第1のダイヤフラム1aの振動の周波数と、第2のダイヤフラム1bの振動の周波数との間に200Hzの差(Δf)が生じる。なお、第1のダイヤフラム1a及び第2のダイヤフラム1bの振動の周波数は、約20kHz程度であり、また、第1のダイヤフラム1aの方が周波数が高い。
【0095】
また、第1のダイヤフラム1aの振動の位相と、第2のダイヤフラム1bの振動の位相とが適切に逆位相となっておらず、位相差(逆位相からのずれ量)が生じてしまっている。
【0096】
第3の比較例では、第2のダイヤフラム1bの振動の位相は、第1のダイヤフラム1aの振動の逆位相に対して、約50°進んでしまっている。このため、位相制御において、第2の圧電素子3bの入力電圧の位相を、第1の圧電素子3aの入力電圧の逆位相に対して、50°遅らせるといった処理が実行される。この位相制御により、第1のダイヤフラム1aの振動の位相と、第2のダイヤフラム1bの振動の位相とを適切に逆位相とすることができる。
【0097】
次に、
図10の中央の図を参照して、第4の比較例に係るダイヤフラムポンプ24について説明する。この第4の比較例に係るダイヤフラムポンプ24では、第1の圧電素子3aの厚さt
Uが186μmであり、第2の圧電素子3bの厚さt
Lが166μmであるため、第1のダイヤフラム1a及び第2のダイヤフラム1bの共振周波数が一致していない。
【0098】
このため、第1の圧電素子3a及び第2の圧電素子3bに対して(位相制御がされていない単純な)逆位相の入力電圧が印加されると、第1のダイヤフラム1aの振動の周波数と、第2のダイヤフラム1bの振動の周波数との間に400Hzの差(Δf)が生じる。なお、第1のダイヤフラム1a及び第2のダイヤフラム1bの振動の周波数は、約20kHz程度であり、また、第1のダイヤフラム1aの方が周波数が高い。
【0099】
また、第1のダイヤフラム1aの振動の位相と、第2のダイヤフラム1bの振動の位相とが適切に逆位相となっておらず、位相差(逆位相からのずれ量)が生じてしまっている。
【0100】
第4の比較例では、第2のダイヤフラム1bの振動の位相は、第1のダイヤフラム1aの振動の逆位相に対して、約80°進んでしまっている。このため、位相制御において、第2の圧電素子3bの入力電圧の位相を、第1の圧電素子3aの入力電圧の逆位相に対して、80°遅らせるといった処理が実行される。この位相制御により、第1のダイヤフラム1aの振動の位相と、第2のダイヤフラム1bの振動の位相とを適切に逆位相とすることができる。
【0101】
次に、
図10の下側の図を参照して、第5の比較例に係るダイヤフラムポンプ25について説明する。この第5の比較例に係るダイヤフラムポンプ25では、第1の圧電素子3aの厚さt
Uが206μmであり、第2の圧電素子3bの厚さt
Lが166μmであるため、第1のダイヤフラム1a及び第2のダイヤフラム1bの共振周波数が一致していない。
【0102】
このため、第1の圧電素子3a及び第2の圧電素子3bに対して(位相制御がされていない単純な)逆位相の入力電圧が印加されると、第1のダイヤフラム1aの振動の周波数と、第2のダイヤフラム1bの振動の周波数との間に1000Hzの差(Δf)が生じる。なお、第1のダイヤフラム1a及び第2のダイヤフラム1bの振動の周波数は、約20kHz程度であり、また、第1のダイヤフラム1aの方が周波数が高い。
【0103】
また、第1のダイヤフラム1aの振動の位相と、第2のダイヤフラム1bの振動の位相とが適切に逆位相となっておらず、位相差(逆位相からのずれ量)が生じてしまっている。
【0104】
第4の比較例では、第2のダイヤフラム1bの振動の位相は、第1のダイヤフラム1aの振動の逆位相に対して、約90°進んでしまっている。このため、位相制御において、第2の圧電素子3bの入力電圧の位相を、第1の圧電素子3aの入力電圧の逆位相に対して、90°遅らせるといった処理が実行される。この位相制御により、第1のダイヤフラム1aの振動の位相と、第2のダイヤフラム1bの振動の位相とを適切に逆位相とすることができる。
【0105】
なお、ここでの例では、位相制御において、第2の圧電素子3bの入力電圧の位相をずらす処理が実行される場合について説明したが、第1の圧電素子3aの入力電圧の位相がずらされてもよい。あるいは、第1の圧電素子3aの入力電圧の位相と、第2の入力電圧の位相との両方がずらされることで、位相制御が実行されてもよい。
【0106】
図11は、第3の比較例~第5の比較例において、位相制御が実行されたときのどの程度の効果が得られるのかを示す図である。
【0107】
図11の左側の図を参照して、この図の横軸は、第1のダイヤフラム1aの振動の周波数と、第2のダイヤフラム1bの振動の周波数との差(Δf)を表している。また、縦軸は、第1のダイヤフラム1a及び第2のダイヤフラム1bの振動における逆位相に対する位相差を示している。
【0108】
また、黒の線は、位相制御が実行されない場合のグラフを示しており、グレーの線は、位相制御が実行された場合のグラフを表している。
図11の左側の図から、第1のダイヤフラム1a及び第2のダイヤフラム1bの振動における逆位相からの位相差が25°以内に収まることが分かる。
【0109】
図11の右側の図を参照して、この図の横軸は、第1のダイヤフラム1aの振動の周波数と、第2のダイヤフラム1bの振動の周波数との差(Δf)を表している。また、縦軸は、第1のダイヤフラム1aが最大振幅となるタイミングでの第1のダイヤフラム1aの振幅と、第2のダイヤフラム1bの振幅との比(以下、有効振幅)を表している。
【0110】
また、黒の線は、位相制御が実行されない場合のグラフを示しており、グレーの線は、位相制御が実行された場合のグラフを表している。
図11の右側の図から、位相制御が実行されることで、有効振幅が最大で15%程度改善されることが分かる。
【0111】
<製造装置30及び製造方法>
次に、第2実施形態に係るダイヤフラムポンプ10の製造装置40及び製造方法について説明する。
【0112】
図12は、第2実施形態に係るダイヤフラムポンプ10の製造装置40を示す図である。
図13A及び
図13Bは、第2実施形態に係るダイヤフラムポンプ10の製造方法を示す図である。
【0113】
図12に示す第2実施形態に係る製造装置40は、調整部形成部36の後段に位相差測定部38がさらに付加されている点で、上述の第1実施形態(
図7)とは異なっている。また、
図13A及び
図13Bに示す第2実施形態に係る製造方法は、最後の工程に、位相差が測定される工程がさらに付加されている点で、上述の第1実施形態(
図8A及び
図8B)とは異なっている。その他の点は、第1実施形態と同様である。
【0114】
図12と、
図13Bの最も下側の図を参照して、位相差測定部38は、調整部形成部36からダイヤフラムポンプ10(調整部11形成済み)を受け取ると、第1の圧電素子3a及び第2の圧電素子3bに逆位相の入力電圧(Sin波等)を印加し、第1のダイヤフラム1a及び第2のダイヤフラム1bを振動させる。
【0115】
そして、位相差測定部38は、第1のダイヤフラム1a及び第2のダイヤフラム1bの振動の波形を測定し、第1のダイヤフラム1a及び第2のダイヤフラム1bの振動における逆位相からの位相差を測定する。なお、
図13Bの最も下側の図では、分かりやすく表示するために、第1のダイヤフラム1a及び第2のダイヤフラム1bの振動における逆位相からの位相差が大げさに表現されているが、実際は、調整部11が形成されることで位相差はあまりない状態となっている。
【0116】
なお、位相差測定部38は、測定された位相差の情報をそのダイヤフラムポンプ10固有の値として制御装置37へと出力する。この位相差の情報は、例えば、ダイヤフラムポンプ10に設けられたメモリチップ(不図示)等に記憶される。そして、ダイヤフラムポンプ10が電子機器などに搭載されて実際に使用されるときに、メモリチップから位相差の情報が読み取られ、位相制御の情報として用いられる。
【0117】
位相差測定部38は、例えば、ドップラー変位計等により構成されるが、第1のダイヤフラム1a及び第2のダイヤフラム1bの振動の波形を測定可能な装置であればどのような装置により構成されていてもよい。
【0118】
<作用等>
第2実施形態に係るダイヤフラムポンプ10では、位相差に基づく位相制御が実行されるため、第1のダイヤフラム1a及び第2のダイヤフラム1bの振動を限りなく逆位相に近づけることができる。これにより、ダイヤフラムポンプ10の駆動の効率をさらに向上させることができる。
【0119】
≪各種変形例≫
次に、本技術に係る各種の変形例について説明する。
【0120】
<調整部11の位置>
上述の各実施形態では、圧電素子3に対して調整部11が設けられる場合について説明した。一方、調整部11は、ダイヤフラム1において圧電素子3以外の位置に設けられてもよい。
【0121】
図14は、ダイヤフラム1のバネ部6に対して調整部11が形成されたときの一例を示す図である。
図14に示す例では、バネ部6における溝部7の内部に円形の調整部11が点在されている。なお、調整部11の形状については、円形に限られず適宜変更可能である。また、
図14に示す例では、調整部11の数が8つとされているが、調整部11の数についても適宜変更可能である。
【0122】
図14に示すように、バネ部6に対して調整部11が形成された場合でも、ダイヤフラム1の共振周波数を適切に調整することが可能であり、これにより、第1のダイヤフラム1aの共振周波数と、第2のダイヤフラム1bの共振周波数を適切に一致させることができる。
【0123】
ここで、低周波数側のダイヤフラム1の共振周波数を上げることで、2つのダイヤフラム1の共振周波数を合わせるパターンの場合、共振周波数が低い側のダイヤフラム1のバネ部6に対して、バネ部6よりも弾性率が高い材料の調整部11が形成される。
【0124】
また、高周波数側のダイヤフラム1の共振周波数を下げることで、2つのダイヤフラム1の共振周波数を合わせるパターンの場合、共振周波数が高い側のダイヤフラム1のバネ部6に対して、バネ部6よりも弾性率が低く、かつ、比重が高い材料の調整部11が形成される。
【0125】
図15は、ダイヤフラム1の弾性部5に対して調整部11が形成されたときの一例を示す図である。なお、
図15に示す例では、圧電素子3が円形の環状に形成されており、弾性部5の中央部分が外部に露出している。
図15では、弾性部において外部に露出している領域の中央の位置に、円形の調整部11が形成された場合の一例が示されている。
【0126】
なお、調整部11の形状については、円形に限られず適宜変更可能である。また、
図115に示す例では、調整部11の数が1つとされているが、調整部11の数についても適宜変更可能である。
【0127】
図15に示すように、弾性部5に対して調整部11が形成された場合でも、ダイヤフラム1の共振周波数を適切に調整することが可能であり、これにより、第1のダイヤフラム1aの共振周波数と、第2のダイヤフラム1bの共振周波数を適切に一致させることができる。
【0128】
ここで、低周波数側のダイヤフラム1の共振周波数を上げることで、2つのダイヤフラム1の共振周波数を合わせるパターンの場合、共振周波数が低い側のダイヤフラム1の弾性部5に対して、弾性部5よりも弾性率が高い材料の調整部11が形成される。
【0129】
また、高周波数側のダイヤフラム1の共振周波数を下げることで、2つのダイヤフラム1の共振周波数を合わせるパターンの場合、共振周波数が高い側のダイヤフラム1の弾性部5に対して、弾性部5よりも弾性率が低い(かつ、比重が高い)材料の調整部11が形成される。
【0130】
なお、調整部11がどの箇所に設けられる場合でも、調整部11がダイヤフラム1の中央(水平方向)に対して対称に形成されることで、共振周波数を適切に調整可能である。
【0131】
また、調整部11は、圧電素子3、バネ部6、弾性部5のうち2以上の箇所に設けられていてもよい。
【0132】
<フレキシブル基板(給電部)>
図16は、圧電素子3に電力を供給するフレキシブル基板19(給電部)が弾性部5に接続されたときの様子を示す図である。フレキシブル基板19は、第1のダイヤフラム1a側に設けられた第1のフレキシブル基板19a(第1の給電部)及び第2のダイヤフラム1b側に設けられた第2のフレキシブル基板19b(第2の給電部)を含む。
【0133】
図16に示す例では、圧電素子3が円形の環状に形成されており、弾性部5の中央部分が外部に露出している。
図15では、弾性部5において外部に露出している領域に、フレキシブル基板19が接続されている。また、弾性部5の外部に露出している領域において、フレキシブル基板19との間でバランスを均一化するように(平面方向)、円形の3つの調整部11が形成されている。
【0134】
なお、調整部11の形状については、円形に限られず適宜変更可能である。また、
図16に示す例では、調整部11の数が3つとされているが、調整部11の数についても適宜変更可能である。
【0135】
図16に示す例では、フレキシブル基板との間でバランスを均一化するように(平面方向)、調整部11が形成されているので、応力集中等による信頼性を向上させることができる。
【0136】
<第1のダイヤフラム1a側及び第2のダイヤフラム1b側の両方に調整部11>
以上の説明では、第1のダイヤフラム1a又は第2のダイヤフラム1bのうち一方にのみ調整部11が設けられる場合について説明した。一方、第1のダイヤフラム1a及び第2のダイヤフラム1bの両方に対して調整部11が設けられていてもよい。
【0137】
図17は、第1の圧電素子3a及び第2の圧電素子3bの両方に調整部11が形成されたときの様子を示す図である。なお、調整部11は、第1のバネ部6a及び第2のバネ部6bの両方に形成されていてもよいし、第1の弾性部5a及び第2の弾性部5bの両方に形成されていてもよい。
【0138】
なお、調整部11の材料として、調整部11が設けられる箇所(圧電素子、バネ部、弾性部)よりも弾性率が高い材料が用いられる場合、共振周波数が低い側のダイヤフラム1に設けられる調整部11の量が、共振周波数が高い側のダイヤフラム1に設けられる調整部11の量よりも多くされる。
【0139】
一方、調整部11の材料として、調整部11が設けられる箇所(圧電素子、バネ部、弾性部)よりも弾性率が低い(かつ、比重が高い)材料が用いられる場合、共振周波数が高い側のダイヤフラム1に設けられる調整部11の量が、共振周波数が低い側のダイヤフラム1に設けられる調整部11の量よりも多くされる。
【0140】
なお、調整部11は、第1のダイヤフラム1a及び第2のダイヤフラム1bにおいて、異なる箇所に形成されていてもよい。例えば、調整部11は、第1のダイヤフラム1a側において第1の圧電素子3aに設けられ、第2のダイヤフラム1b側において第2の弾性部5bに設けられていてもよい(組み合わせは自由)。
【0141】
さらに、調整部11は、第1のダイヤフラム1a側において、第1の圧電素子3a、第1のバネ部6a、第1の弾性部5aから選択された2以上の箇所に設けられ、第2のダイヤフラム1b側において、第2の圧電素子3b、第2のバネ部6b、第2の弾性部5bから選択された2以上の箇所に設けられていてもよい。
【0142】
<その他>
図18は、ダイヤフラムポンプ10のその他の例を示す図である。
図18に示す例では、第1のダイヤフラム1a及び第2のダイヤフラム1bが、それぞれ、3つの圧電素子3、3つのバネ部6、3つの弾性部5を有している。また、
図18に示す例では、3つの圧電素子3の全てに対して調整部11が形成されている。
【0143】
なお、
図18に示す例では、1つのダイヤフラム1につき、圧電素子3、バネ部6、弾性部5の数が3つとされているが、この数については2以上であればよい。また、
図18に示す例では、調整部11が3つの圧電素子3の全てに対して設けられているが、3つの圧電素子3のうち一部の圧電素子にのみ調整部11が設けられていてもよい。なお、調整部11は、3つのバネ部6に対して設けられていてもよいし(一部又は全部)、また、3つの弾性部5に対して設けられていてもよい(一部または全部。この場合は、圧電素子3は例えば円形の環状とされる)。
【0144】
本技術は以下の構成をとることもできる。
(1)第1の弾性部を含む第1の部材と、その駆動により前記第1の弾性部を弾性変形させる第1の駆動部とを有する第1のダイヤフラムと、
第2の弾性部を含み、前記第1の部材との間で流体が流れる空間を形成する第2の部材と、前記第2の弾性部を弾性変形させる第2の駆動部とを有する第2のダイヤフラムと、
前記第1のダイヤフラム又は前記第2のダイヤフラムのうち少なくとも一方に設けられ、前記第1のダイヤフラム又は前記第2のダイヤフラムのうち少なくとも一方の共振周波数を調整するための調整部と
を具備するダイヤフラムポンプ。
(2)上記(1)に記載のダイヤフラムポンプであって、
前記調整部は、前記第1の駆動部及び前記第2の駆動部のうち少なくとも一方に設けられる
ダイヤフラムポンプ。
(3)上記(1)又は(2)に記載のダイヤフラムポンプであって、
前記調整部は、前記第1の弾性部及び前記第2の弾性部のうち少なくとも一方に設けられる
ダイヤフラムポンプ。
(4) 上記(1)~(3)のうちいずれか1つに記載のダイヤフラムポンプであって、
前記第1の部材は、前記第1の弾性部の弾性変形を促進させる第1のバネ部を有し、
前記第2の部材は、前記第2の弾性部の弾性変形を促進させる第1のバネ部を有し、
前記調整部は、前記第1のバネ部及び前記第2のバネ部のうち少なくとも一方に設けられる
ダイヤフラムポンプ。
(5) 上記(1)~(4)のうちいずれか1つに記載のダイヤフラムポンプであって、
前記調整部の弾性率は、前記調整部が設けられる部分の弾性率よりも高い
ダイヤフラムポンプ。
(6) 上記(5)に記載のダイヤフラムポンプであって、
前記調整部は、前記第1のダイヤフラム及び前記第2のダイヤフラムのうち、共振周波数が低い側のダイヤフラムに対して調整部が設けられる
ダイヤフラムポンプ。
(7) 上記(1)~(4)のうちいずれか1つに記載のダイヤフラムポンプであって、
前記調整部の弾性率は、前記調整部が設けられる部分の弾性率よりも低い
ダイヤフラムポンプ。
(8)上記(7)に記載のダイヤフラムポンプであって、
前記調整部の比重は、前記調整部が設けられる部分の比重よりも高い
ダイヤフラムポンプ。
(9) 上記(7)又は(8)に記載のダイヤフラムポンプであって、
前記調整部は、前記第1のダイヤフラム及び前記第2のダイヤフラムのうち、共振周波数が高い側のダイヤフラムに設けられる
ダイヤフラムポンプ。
(10)上記(1)~(9)のうちいずれか1つに記載のダイヤフラムポンプであって、
複数のダイヤフラムの共振周波数がそれぞれ測定され、共振周波数が近い2つのダイヤフラムが前記第1のダイヤフラム及び前記第2のダイヤフラムとして選択される
ダイヤフラムポンプ。
(11)上記(1)~(10)のうちいずれか1つに記載のダイヤフラムポンプであって、
前記第1のダイヤフラム及び前記第2のダイヤフラムの共振周波数がそれぞれ測定され、第1のダイヤフラム及び前記第2のダイヤフラムのうち、どちらに調整部が設けられるが決定される
ダイヤフラムポンプ。
(12) 上記(1)~(11)のうちいずれか1つに記載のダイヤフラムポンプであって、
前記第1のダイヤフラム及び前記第2のダイヤフラムの共振周波数がそれぞれ測定され、測定された共振周波数に基づいて、前記調整部の量が調整される
ダイヤフラムポンプ。
(13)上記(1)~(12)のうちいずれか1つに記載のダイヤフラムポンプであって、
前記第1のダイヤフラムは、前記第1の駆動部に電力を供給する第1の給電部を有し、
前記第2のダイヤフラムは、前記第2の駆動部に電力を供給する第2の給電部を有し、
前記調整部は、前記第1のダイヤフラム又は前記第2のダイヤフラムのうち少なくとも一方において、前記第1の給電部又は第2の給電部とのバランスを均一化するように設けられる
ダイヤフラムポンプ。
(14)上記(1)~(13)のうちいずれか1つに記載のダイヤフラムポンプであって、
前記第1の駆動部の入力信号の位相又は前記第2の駆動部の入力信号の位相うち少なくとも一方の位相が調整される位相制御が実行される
ダイヤフラムポンプ。
(15) 上記(14)に記載のダイヤフラムポンプであって、
第1のダイヤフラムポンプ及び第2のダイヤフラムポンプの振動の逆位相からの位相差が測定され、測定された位相差に基づいて前記位相制御が実行される
ダイヤフラムポンプ。
(16) 上記(1)~(15)のうちいずれか1つに記載のダイヤフラムポンプであって、
前記第1の駆動部及び第2の駆動部は、それぞれ、圧電素子である
ダイヤフラムポンプ。
(17) 上記(1)~(16)のうちいずれか1つに記載のダイヤフラムポンプであって、
前記調整部は、ポッティング加工により形成される
ダイヤフラムポンプ。
(18) 第1の弾性部を含む第1の部材と、その駆動により前記第1の弾性部を弾性変形させる第1の駆動部とを有する第1のダイヤフラムと、
第2の弾性部を含み、前記第1の部材との間で流体が流れる空間を形成する第2の部材と、その駆動により前記第2の弾性部を弾性変形させる第2の駆動部とを有する第2のダイヤフラムと、
前記第1のダイヤフラム又は前記第2のダイヤフラムのうち少なくとも一方に設けられ、前記第1のダイヤフラム又は前記第2のダイヤフラムのうち少なくとも一方の共振周波数を調整するための調整部と
を有するダイヤフラムポンプを具備する電子機器。
(19) 第1の弾性部を含む第1の部材と、その駆動により前記第1の弾性部を弾性変形させる第1の駆動部とを有する第1のダイヤフラムと、第2の弾性部を含み、前記第1の部材との間で流体が流れる空間を形成する第2の部材と、その駆動により前記第2の弾性部を弾性変形させる第2の駆動部とを有する第2のダイヤフラムとにおいて、前記第1のダイヤフラム又は前記第2のダイヤフラムのうち少なくとも一方の共振周波数を調整するための調整部を、前記第1のダイヤフラム又は前記第2のダイヤフラムのうち少なくとも一方に形成する調整部形成部
を具備するダイヤフラムポンプの製造装置。
(20) 第1の弾性部を含む第1の部材と、その駆動により前記第1の弾性部を弾性変形させる第1の駆動部とを有する第1のダイヤフラムと、第2の弾性部を含み、前記第1の部材との間で流体が流れる空間を形成する第2の部材と、その駆動により前記第2の弾性部を弾性変形させる第2の駆動部とを有する第2のダイヤフラムとを用意し、
前記第1のダイヤフラム又は前記第2のダイヤフラムのうち少なくとも一方の共振周波数を調整するための調整部を、前記第1のダイヤフラム又は前記第2のダイヤフラムのうち少なくとも一方に形成する
ダイヤフラムポンプの製造方法。
【符号の説明】
【0145】
1…ダイヤフラム
2…板材
3…圧電素子
4…固定部
5…弾性部
6…バネ部
10…ダイヤフラムポンプ
11…調整部
30、40…製造装置