(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015460
(43)【公開日】2024-02-02
(54)【発明の名称】表示装置及び表示システム
(51)【国際特許分類】
G09F 9/302 20060101AFI20240126BHJP
G02B 27/01 20060101ALI20240126BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
G09F9/302 Z
G02B27/01
G09F9/00 359
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020208457
(22)【出願日】2020-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】長田 浩二
【テーマコード(参考)】
2H199
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
2H199DA44
5C094AA01
5C094BA25
5C094BA43
5C094CA20
5C094CA24
5C094FA01
5G435AA01
5G435BB04
5G435BB12
5G435CC09
5G435EE12
5G435EE14
(57)【要約】
【課題】簡便に、曲面を有するスクリーンに、歪みを低減した画像を表示する。
【解決手段】表示装置は、曲面を有するスクリーンに画像光を出射する複数の表示エレメントであって、前記複数の表示エレメントが出射する前記画像光が前記曲面に反射することにより目標とする画像が表示されるように、前記複数の表示エレメント同士の間隔が不均一になるように配列された、複数の表示エレメントを具備する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲面を有するスクリーンに画像光を出射する複数の表示エレメントであって、前記複数の表示エレメントが出射する前記画像光が前記曲面に反射することにより目標とする画像が表示されるように、前記複数の表示エレメント同士の間隔が不均一になるように配列された、複数の表示エレメント
を具備する表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表示装置であって、
前記曲面が前記画像光を反射することにより、前記画像光の一部である第1の画像光により表示される画像の一部は、前記画像光の他の一部である第2の画像光により表示される前記画像の他の一部より、拡大して表示され、
前記第2の画像光を出射する複数の表示エレメント同士の間隔が、前記第1の画像光を出射する複数の表示エレメント同士の間隔より広くなるように、前記複数の表示エレメントが配列される
表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載の表示装置であって、
前記目標とする画像の形に配列された仮想的な複数の表示エレメントから仮想的な画像光を前記スクリーンに出射したときに前記仮想的な画像光が前記曲面に反射することにより表示される仮想的な画像と相似形に、前記複数の表示エレメントが配列される
表示装置。
【請求項4】
請求項1に記載の表示装置であって、
目標とする画像は長方形であり、
前記複数の表示エレメントが出射する前記画像光が前記曲面に反射することにより長方形の画像が表示されるように、前記複数の表示エレメントは、前記長方形の直交する2辺に相当する方向である第1の方向及び第2の方向に配列され、
前記第1の方向に複数列の表示エレメントが配列され、前記第1の方向に配列された各列に含まれる複数の表示エレメントの数は等しく、
前記第2の方向に複数列の表示エレメントが配列され、前記第2の方向に配列された各列に含まれる複数の表示エレメントの数は等しい
表示装置。
【請求項5】
請求項4に記載の表示装置であって、
前記第1の方向に配列され、前記長方形の1辺を表示するための画像光を出力する第1の列の表示エレメントの両端の表示エレメント同士の距離と、
前記第1の方向に配列され、前記1辺の対辺となる他の1辺を表示するための画像光を出力する第2の列の表示エレメントの両端の表示エレメント同士の距離と、
が異なるように、前記複数の表示エレメントが配列される
表示装置。
【請求項6】
請求項4に記載の表示装置であって、
前記複数の表示エレメントは、前記第1の方向及び前記第2の方向に分割された複数のブロックが組み合わせられることにより構成される
表示装置。
【請求項7】
請求項6に記載の表示装置であって、
前記複数のブロックの前記第2の方向の長さは全て等しい
表示装置。
【請求項8】
請求項6に記載の表示装置であって、
前記複数のブロックの前記第1の方向の長さは、前記複数のブロックに含まれる複数の表示エレメントが出射する画像光が反射する曲面の曲率に拠って異なる
表示装置。
【請求項9】
請求項6に記載の表示装置であって、
前記複数のブロックそれぞれに含まれる前記複数の表示エレメントの前記第1の方向の数は等しく、
前記複数のブロックそれぞれに含まれる前記複数の表示エレメントの前記第2の方向の数は等しい
表示装置。
【請求項10】
請求項6に記載の表示装置であって、
前記複数のブロックは、それぞれ扇形であり、
前記第1の方向は前記扇形の周方向であり、前記第2の方向は前記扇形の径方向である
表示装置。
【請求項11】
請求項6に記載の表示装置であって、
前記複数のブロックは、それぞれ台形であり、
前記第1の方向は前記台形の底辺方向であり、前記第2の方向は前記台形の斜辺方向である
表示装置。
【請求項12】
請求項1に記載の表示装置であって、
前記複数の表示エレメントは、複数のピクセルである
表示装置。
【請求項13】
請求項1に記載の表示装置であって、
前記複数の表示エレメントは、複数のサブピクセルである
表示装置。
【請求項14】
請求項1に記載の表示装置であって、
前記複数の表示エレメントを前記スクリーンに対して移動させて画像の位置を調節する移動機構
をさらに具備する表示装置。
【請求項15】
曲面を有するスクリーンに画像光を出射する複数の表示エレメントであって、前記複数の表示エレメントが出射する前記画像光が前記曲面に反射することにより目標とする画像が表示されるように、前記複数の表示エレメント同士の間隔が不均一になるように配列された、複数の表示エレメントを有する表示装置と、
画像描画データを生成し、前記表示装置に出力する表示制御装置と、
を具備する表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スクリーンに画像を表示(投影)する表示装置に関する。本開示は、さらに、表示装置と、画像の描画データを生成して表示装置に出力する表示制御装置とを有する表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のフロントガラスをスクリーンとして画像を表示(投影)する表示装置(ヘッドアップディスプレイシステム)が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
LCDや有機LED等の表示装置は、画素を効率よく配列するため、縦横に整列して画素が配列されている。一方、車両のフロントガラスは、自由曲面を有する。そのため、目標となる画像を補正せずにフロントガラスに表示すると、閲覧者にとっては画像が歪んで見える。例えば、直線を表示した際に直線に見えない。プロジェクタ方式のヘッドアップディスプレイシステムでは、自由曲面レンズによって歪みを補正している。一方、直接投影形式のヘッドアップディスプレイシステムは、例えばフラットなコンバイナを用いて歪みを低減する。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本開示の目的は、より簡便に、曲面を有するスクリーンに、歪みを低減した画像を表示することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態に係る表示装置は、曲面を有するスクリーンに画像光を出射する複数の表示エレメントであって、前記複数の表示エレメントが出射する前記画像光が前記曲面に反射することにより目標とする画像が表示されるように、前記複数の表示エレメント同士の間隔が不均一になるように配列された、複数の表示エレメントを具備する。
【0007】
本実施形態によれば、曲面を有するスクリーンに表示される画像が必ず歪む点に着目し、曲面を有するスクリーンに目標とする画像が表示されるように配列された表示エレメントを有する表示装置を実現する。具体的には、複数の表示エレメントは、目標とする画像が表示されるように、複数の表示エレメント同士の間隔が不均一になる(正方配列でない)ように配列される。複数の表示エレメントが出射する画像光がスクリーンに反射することにより、スクリーンに画像(虚像)が表示される。スクリーンは自由曲面を有するため、スクリーンに表示された画像は、複数の表示エレメントの配列と同じ形(相似形)ではなく、目標とする画像の形となる。これにより、本実施形態によれば、コンバイナやレンズ等の光学素子を用いずに、曲面を有するスクリーンに、目標とする画像を表示することができる。
【0008】
前記曲面が前記画像光を反射することにより、前記画像光の一部である第1の画像光により表示される画像の一部は、前記画像光の他の一部である第2の画像光により表示される前記画像の他の一部より、拡大して表示され、
前記第2の画像光を出射する複数の表示エレメント同士の間隔が、前記第1の画像光を出射する複数の表示エレメント同士の間隔より広くなるように、前記複数の表示エレメントが配列される。
【0009】
第2の画像光を出射する複数の表示エレメント同士の間隔が、第1の画像光を出射する複数の表示エレメント同士の間隔より広く配列される。一方、第1の画像光は第2の画像光より拡大して表示される。これにより、狭い配列の表示エレメントからの第1の画像光が、広い配列の表示エレメントからの第2の画像光よりも広がって表示される。これにより、第1の画像光により表示される画像の一部と、第2の画像光により表示される画像の他の一部が、同程度の大きさとなることにより、目標とする画像が表示される。
【0010】
前記目標とする画像の形に配列された仮想的な複数の表示エレメントから仮想的な画像光を前記スクリーンに出射したときに前記仮想的な画像光が前記曲面に反射することにより表示される仮想的な画像と相似形に、前記複数の表示エレメントが配列される。
【0011】
典型的には、表示エレメントの配列が目標とする画像の形であるところ、表示される画像が目標とする画像の形とは異なる形(歪んだ形)となった。この逆に、本実施形態では、表示エレメントの配列を目標とする画像の形とは異なる形(歪んだ形)に逆変換することで、表示される画像が目標とする画像の形となる。
【0012】
目標とする画像は長方形であり、
前記複数の表示エレメントが出射する前記画像光が前記曲面に反射することにより長方形の画像が表示されるように、前記複数の表示エレメントは、前記長方形の直交する2辺に相当する方向である第1の方向及び第2の方向に配列され、
前記第1の方向に複数列の表示エレメントが配列され、前記第1の方向に配列された各列に含まれる複数の表示エレメントの数は等しく、
前記第2の方向に複数列の表示エレメントが配列され、前記第2の方向に配列された各列に含まれる複数の表示エレメントの数は等しい。
【0013】
複数の表示エレメントは、目標とする画像(長方形)の一方向の辺に相当する方向である第1の方向と、直交する方向の辺に相当する方向である第2の方向にマトリクス状に間隔が不均一に配列される。これにより、複数の表示エレメントが出射する画像光がスクリーンの曲面に反射することにより長方形の画像が表示される。
【0014】
前記第1の方向に配列され、前記長方形の1辺を表示するための画像光を出力する第1の列の表示エレメントの両端の表示エレメント同士の距離と、
前記第1の方向に配列され、前記1辺の対辺となる他の1辺を表示するための画像光を出力する第2の列の表示エレメントの両端の表示エレメント同士の距離と、
が異なるように、前記複数の表示エレメントが配列される。
【0015】
具体的には、第2の列の表示エレメントの両端の表示エレメント同士の距離は、第1の列の表示エレメントの両端の表示エレメント同士の距離より長い。一方、第1の画像光により表示される画像(全体画像の一部)は、第2の画像光により表示される画像(全体画像の一部)より、拡大して表示される。具体的には、両端同士の距離が短い第1の列の表示エレメントの拡大率が最も大きく、両端同士の距離が長い第2の列の表示エレメントの拡大率が最も小さい。第2の画像光から第1の画像光までこのように連続的に拡大される。これにより、複数の表示エレメントから出射された画像光により表示される画像は、目標とする画像の形(長方形)となる。
【0016】
前記複数の表示エレメントは、前記第1の方向及び前記第2の方向に分割された複数のブロックが組み合わせられることにより構成される。
【0017】
また、例えば一部の表示エレメントの故障時に、その表示エレメントが含まれる1個のブロックを交換することで、簡便に故障に対処できる。一方、1個の基板に全ての表示エレメントが搭載されている場合、例えば一部の表示エレメントの故障時に、全ての表示エレメントが搭載された基板を交換しなければならない。このため、表示エレメントが搭載された複数のブロック(分割された基板)を組み合わせることで、経済的な観点からも有利である。異なる種類の複数のブロックを組み合わせることで、様々な異なる形(第1の方向の長さ、第2の方向の長さ、曲率が異なる形)の表示装置を作製することができる。
【0018】
前記複数のブロックの前記第2の方向の長さは全て等しい。
【0019】
各ブロックの第2の方向の長さは全て等しいため、異なる種類のブロックを第1の方向に隙間なく組み合わせることができる。
【0020】
前記複数のブロックの前記第1の方向の長さは、前記複数のブロックに含まれる複数の表示エレメントが出射する画像光が反射する曲面の曲率に拠って異なる。
【0021】
第1の方向の長さが異なる複数のブロックを用いることで、スクリーンの曲面の異なる曲率に対応可能である。具体的には、スクリーンの曲面の曲率が大きいほど、第1の方向の長さが短いブロックを用いることで、スクリーンの曲面の曲率が大きい場合でも、目標とする画像(長方形)に近い画像を表示することを図れる。スクリーンの曲面の曲率が小さいほど、第1の方向の長さが長いブロックを用いることで、スクリーンの曲面の曲率が小さい場合でも、目標とする画像(長方形)に近い画像を表示することを図れる。
【0022】
前記複数のブロックそれぞれに含まれる前記複数の表示エレメントの前記第1の方向の数は等しく、
前記複数のブロックそれぞれに含まれる前記複数の表示エレメントの前記第2の方向の数は等しい。
【0023】
異なるサイズのブロックそれぞれに含まれる複数の表示エレメントの数が等しいことから、結果的に、複数の表示エレメントの間隔がブロックごとに異なる。これにより、複数の表示エレメントの間隔が不均一な表示装置を、複数種類のブロックを組み合わせることで、簡便に作成できる。
【0024】
前記複数のブロックは、それぞれ扇形であり、
前記第1の方向は前記扇形の周方向であり、前記第2の方向は前記扇形の径方向でもよい。
【0025】
扇形のブロックを隙間無く扇形に組み合わせることで、扇形のマトリクス状に配列された表示装置を作製することができる。
【0026】
前記複数のブロックは、それぞれ台形であり、
前記第1の方向は前記台形の底辺方向であり、前記第2の方向は前記台形の斜辺方向でもよい。
【0027】
扇形のブロックの径である1対の線分の両端同士を直線で結ぶと、第1の方向が底辺方向となり第2の方向が斜辺方向となる台形(等脚台形)となる。このように構成された複数の台形のブロックを隙間無く扇形に組み合わせることで、扇形のマトリクス状に配列された表示装置を作製することができる。
【0028】
前記複数の表示エレメントは、複数のピクセルでもよい。
【0029】
前記複数の表示エレメントは、複数のサブピクセルもよい。
【0030】
前記複数の表示エレメントを前記スクリーンに対して移動させて画像の位置を調節する移動機構をさらに具備してもよい。
【0031】
本開示の一形態に係る表示システムは、
曲面を有するスクリーンに画像光を出射する複数の表示エレメントであって、前記複数の表示エレメントが出射する前記画像光が前記曲面に反射することにより目標とする画像が表示されるように、前記複数の表示エレメント同士の間隔が不均一になるように配列された、複数の表示エレメントを有する表示装置と、
画像描画データを生成し、前記表示装置に出力する表示制御装置と、
を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】LCD等を用いたヘッドアップディスプレイシステムの例を模式的に示し、(A)はスクリーンとしてのフロントガラスの正面図、(B)はダッシュボードに設置される表示装置の上面図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係るヘッドアップディスプレイシステムを模式的に示し、(A)はスクリーンとしてのフロントガラスの正面図、(B)はダッシュボードに設置される表示装置の上面図である。
【
図3】複数の表示エレメントを構成する複数のブロックを模式的に示す。
【
図4】複数のブロックの組み合わせの一例を模式的に示す。
【
図5】複数のブロックの組み合わせの別の一例を模式的に示す。
【
図7】表示装置を有する表示システムの構成を示す。
【
図8】複数のブロックのさらに別の変形例を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。
【0034】
本実施形態は、車両に搭載されるヘッドアップディスプレイシステムに関する。車両に搭載されるヘッドアップディスプレイシステムにおいて、ダッシュボード等に設置された表示装置が、スクリーンであるフロントガラスに向けて画像を表示(投影)する。閲覧者(運転者等の乗員)は、フロントガラスに表示(投影)された画像を見る。車両のフロントガラスは自由曲面を有する。このため、目標となる画像を補正せずにフロントガラスに表示(投影)すると、表示される画像は閲覧者にとって歪んだ形となる。フロントガラス上の画像の表示位置の違いと、画像を見る閲覧者の位置(運転席、助手席等)の違いとによって、フロントガラスの曲率に依存して画像の歪み方が異なる。
【0035】
1.ヘッドアップディスプレイシステム
【0036】
図1は、LCD(Liquid Crystal Display)や有機LED(Light Emitting Diode)を用いた代表的なヘッドアップディスプレイシステムを模式的に示している。(A)はスクリーンとしてのフロントガラスの正面図、(B)はダッシュボードに設置される表示装置(LCDや有機LED等)の上面図である。
図1のヘッドアップディスプレイシステムでは、LCDパネルあるいはLED素子(表示エレメント)からの光が、歪補正レンズや歪補正のミラーを介さずにスクリーンであるフロントガラスに直接照射される。ここでは説明のため、ダッシュボードの一部に表示装置を設置することにしたが、フロントウィンドウの幅の全域/ほぼ全域に表示できるように、ダッシュボード上にフロントウィンドウの幅と同じ/ほぼ同じ程度に表示装置を並べても良い。
【0037】
表示装置2は、直接投影形式であり、ダッシュボードDBに設置される。表示装置2は、画像光を出射する複数の表示エレメント(サブピクセル、又は、複数のサブピクセルにより構成されるピクセル。以下同じ)を有する。複数の表示エレメントは、直交する2軸(X軸及びY軸)方向に(即ち、長方形に)マトリクス状に配列される(所謂、正方配列)。複数の表示エレメントは、目標とする画像の形(即ち、歪みの無い画像の形)に配列される。複数の表示エレメントが出射する画像光がフロントガラスWSに反射することにより、フロントガラスWSに画像I2(虚像)が表示される。フロントガラスWSは自由曲面を有するため、フロントガラスWSに表示された画像I2は、目標とする画像の形(即ち、複数の表示エレメントの配列と同じ形(相似形)ではなく、歪んだ形となる。
【0038】
具体的には、表示装置2は、Y方向に並ぶ6列の複数の表示エレメントを有する。それぞれの列において、同数(16個)の表示エレメントがX方向(Y方向に直交)に配列される。フロントガラスWSから最も離れた列(第1の列)は、複数の表示エレメント(X1,Y1)~(X3,Y3)を含む。フロントガラスWSに最も近い列(第2の列)は、複数の表示エレメント(X2,Y2)~(X4,Y4)を含む。複数の表示エレメントからの出射光がフロントガラスWSの曲面に反射することにより、フロントガラスWSに画像I2が表示される。ダッシュボードDBから最も遠い位置に、第1の列の複数の表示エレメント(X1,Y1)~(X3,Y3)から出射された画像光(第1の画像光)(X1',Y1')~(X3',Y3')による画像が表示される。ダッシュボードDBから最も近い位置に、第2の列の複数の表示エレメント(X2,Y2)~(X4,Y4)から出射された画像光(第2の画像光)(X2',Y2')~(X4',Y4')による画像が表示される。
【0039】
フロントガラスWSの自由曲面の曲率及び表示装置2からの距離に依存して、第1の列の複数の表示エレメント(X1,Y1)~(X3,Y3)から出射された第1の画像光(X1',Y1')~(X3',Y3')により表示される画像の歪み方と、第2の列の複数の表示エレメント(X2,Y2)~(X4,Y4)から出射された第2の画像光(X2',Y2')~(X4',Y4')により表示される画像の歪み方は異なる。具体的には、第1の画像光(X1',Y1')~(X3',Y3')により表示される画像(全体画像の一部)は、第2の画像光(X2',Y2')~(X4',Y4')により表示される画像(全体画像の一部)より、拡大して表示される。具体的には、第1の画像光(X1',Y1')~(X3',Y3')は、表示エレメント単位で面積が大きくなり、且つ、隣り合う表示エレメントからの画像光同士の間隔が広がるように表示される。第2の画像光(X2',Y2')~(X4',Y4')から第1の画像光(X1',Y1')~(X3',Y3')までこのように連続的に拡大される。これにより、長方形に配列された複数の表示エレメントから出射された画像光により表示される画像は、扇形となる。本実施形態で、中心角部分の無い扇形(即ち、円錐台の側面の展開図の形)を、便宜的に、単に「扇形」と称する。
【0040】
典型的に、LCDや有機LED等の表示装置は、半導体と同じ思想で設計され、効率を重視して表示エレメントを縦横に(長方形に)等間隔に配列し、可能な限り多数の表示エレメントを高密度に詰め込む。ディスプレイを直視する場合や、フラットなディスプレイに投影(直接投影形式)する場合は、表示エレメントを等間隔に高密度に配列するのがよい。しかしながら、直接投影形式のディスプレイシステムにおいてスクリーンが曲面を有する場合、表示エレメントの配列に対して、表示される画像は必ず歪む。
【0041】
また、今後の自動運転の進展に伴って、運転席に座る閲覧者及び助手席に座る閲覧者の両方が、幅広で大画面の画像(例えば、インフォテイメントコンテンツの画像)を同時に見るニーズが高まる可能性がある。この場合、運転席に座る閲覧者及び助手席に座る閲覧者の両方にとって歪みの少ない画像を表示するのが望まれる。
【0042】
2.本開示の一実施形態に係るヘッドアップディスプレイシステム
【0043】
以上のような事情に鑑み、本実施形態では、曲面を有するスクリーンに表示される画像が必ず歪む点に着目し、曲面を有するスクリーンに目標とする画像が表示されるように配列された表示エレメントを有する表示装置を実現する。
【0044】
図2は、本開示の一実施形態に係るヘッドアップディスプレイシステムを模式的に示し、(A)はスクリーンとしてのフロントガラスの正面図、(B)はダッシュボードに設置される表示装置の上面図である。
図2のヘッドアップディスプレイシステムでは、LCDパネルあるいはLED素子(表示エレメント)からの光が、歪補正レンズや歪補正のミラーを介さずにスクリーンであるフロントガラスに直接照射される。ここでは説明のため、ダッシュボードの一部に表示装置を設置することにしたが、フロントウィンドウの幅の全域/ほぼ全域に表示できるように、ダッシュボード上にフロントウィンドウの幅と同じ/ほぼ同じ程度に表示装置を並べても良い。
【0045】
本実施形態では、フロントガラスWSに表示すべき目標とする画像を、長方形とする。即ち、目標とする画像の形は、
図1の例に係る表示装置2(
図1)の複数の表示エレメントの配列と同じ形である。そこで、本実施形態の表示装置1は、目標とする画像の形(長方形)に配列された仮想的な複数の表示エレメント(
図1の表示装置2の表示エレメント)から仮想的な画像光をフロントガラスWSに出射したときに仮想的な画像光がフロントガラスWSの曲面に反射することにより表示される仮想的な画像(
図1の画像I2)と相似形に、複数の表示エレメントが配列される。
【0046】
要するに、
図1の例では、表示エレメントの配列が目標とする画像の形であるところ、表示される画像が目標とする画像の形とは異なる形(歪んだ形)となった。この逆に、本実施形態では、表示エレメントの配列を目標とする画像の形とは異なる形(歪んだ形)に逆変換することで、表示される画像が目標とする画像の形となるようにする。具体的には、表示エレメントの配列を、目標とする画像の形(長方形)に配列された仮想的な複数の表示エレメント(
図1の表示装置2の表示エレメント)が表示する仮想的な画像(
図1の画像I2)の形とすることで、表示される画像が目標とする画像の形(長方形)となるようにする。
【0047】
表示装置1は、直接投影形式であり、ダッシュボードDBに設置される。表示装置1は、マイクロLEDパネル等の、微細なLED素子を光源とする。表示装置1は、画像光を出射する複数の表示エレメント(サブピクセル、又は、複数のサブピクセルにより構成されるピクセル。以下同じ)を有する。
図2でサブピクセルは、「R」、「G」、「B」、「G」のそれぞれを意味し、ピクセルは、「RGBG」のグループを意味する。複数の表示エレメントは、目標とする画像I1が表示されるように、複数の表示エレメント同士の間隔が不均一になる(正方配列でない)ように配列される。複数の表示エレメントが出射する画像光がフロントガラスWSに反射することにより、フロントガラスWSに画像I1(虚像)が表示される。フロントガラスWSは自由曲面を有するため、フロントガラスWSに表示された画像I1は、複数の表示エレメントの配列と同じ形(相似形)ではなく、目標とする画像の形となる。
【0048】
目標とする画像I1は、長方形である。複数の表示エレメントが出射する画像光がフロントガラスWSの曲面に反射することにより長方形の画像I1が表示されるように、複数の表示エレメントは、長方形の直交する2辺(XY)に相当する方向であるX'方向(第1の方向)及びY'方向(第2の方向)に配列される。具体的には、複数の表示エレメントは、扇形(正確には、円錐台の側面の展開図の形。中心角部分の無い扇形。)のマトリクス状に配列される。複数の表示エレメントは、目標とする画像I1(長方形)の直交する2辺であるX方向の辺に相当する方向であるX'方向(第1の方向)と、Y方向の辺に相当する方向であるY'方向(第2の方向)にマトリクス状に配列される。以下、便宜的に、扇形の径方向をX'方向(第1の方向)と称し、扇形の周方向をY'方向(第2の方向)と称する。
【0049】
具体的には、表示装置1は、Y'方向に並ぶ6列の複数の表示エレメントを有する。それぞれの列において、同数(16個)の表示エレメントがX'方向に配列される。フロントガラスWSから最も離れた列(第1の列)は、複数の表示エレメント(X1,Y1)~(X3,Y3)を含む。フロントガラスWSに最も近い列(第2の列)は、複数の表示エレメント(X2,Y2)~(X4,Y4)を含む。X'方向に配列された各列に含まれる複数の表示エレメントの数は等しい。図示の例で言えば、第1の列(X1,Y1)~(X3,Y3)に含まれる複数の表示エレメントの数と、第2の列(X2,Y2)~(X4,Y4)に含まれる複数の表示エレメントの数と、介在する全ての列に含まれる複数の表示エレメントの数とは、等しい。Y'方向に配列された各列に含まれる複数の表示エレメントの数は等しい。図示の例で言えば、左端の列(X1,Y1)~(X2,Y2)に含まれる複数の表示エレメントの数と、右端の列(X3,Y3)~(X4,Y4)に含まれる複数の表示エレメントの数と、介在する全ての列に含まれる複数の表示エレメントの数とは、等しい。全ての表示エレメントの形及びサイズは等しい。
【0050】
なお、
図1及び
図2では、表示エレメントを6×16個で図示しているが、図示の理解しやすさのためである。実際には、例えば、3個のサブピクセルを含む1ピクセルのサイズは約0.003平方ミリメートルである。例えば、扇形を長方形に換算して約40cm×約45cmの表示装置は、約115,200ピクセルを含む。
【0051】
第1の列の表示エレメント(X1,Y1)~(X3,Y3)は、X'方向に配列され、長方形の画像I1のX方向の1辺(X1',Y1')~(X3',Y3')を表示するための画像光を出力する。第2の列の表示エレメント(X2,Y2)~(X4,Y4)は、X'方向に配列され、長方形の画像I1のX方向の1辺(X1',Y1')~(X3',Y3')の対辺となる他の1辺(X2',Y2')~(X4',Y4')を表示するための画像光を出力する。第1の列の表示エレメントの両端の表示エレメント(X1,Y1)、(X3,Y3)同士の距離と、第2の列の表示エレメントの両端の表示エレメント(X2,Y2)、(X4,Y4)同士の距離とが異なるように、複数の表示エレメントが配列される。具体的には、第2の画像光を出射する複数の表示エレメント(X2,Y2)~(X4,Y4)同士の間隔が、第1の画像光を出射する複数の表示エレメント(X1,Y1)~(X3,Y3)同士の間隔より広くなるように、複数の表示エレメントが配列される。そのため、第2の列の表示エレメントの両端の表示エレメント(X2,Y2)、(X4,Y4)同士の距離は、第1の列の表示エレメントの両端の表示エレメント(X1,Y1)、(X3,Y3)同士の距離より長い。
【0052】
複数の表示エレメントからの出射光がフロントガラスWSの曲面に反射することにより、フロントガラスWSに画像I1が表示される。画像I1は、ダッシュボードDBから最も遠い位置に、第1の列の複数の表示エレメント(X1,Y1)~(X3,Y3)から出射された画像光(第1の画像光)(X1',Y1')~(X3',Y3')による画像が表示される。ダッシュボードDBから最も近い位置に、第2の列の複数の表示エレメント(X2,Y2)~(X4,Y4)から出射された画像光(第2の画像光)(X2',Y2')~(X4',Y4')による画像が表示される。
【0053】
フロントガラスWSの自由曲面の曲率及び表示装置1からの距離に依存して、第1の列の複数の表示エレメント(X1,Y1)~(X3,Y3)から出射された第1の画像光(X1',Y1')~(X3',Y3')により表示される画像の歪み方と、第2の列の複数の表示エレメント(X2,Y2)~(X4,Y4)から出射された第2の画像光(X2',Y2')~(X4',Y4')により表示される画像の歪み方は異なる。具体的には、第1の画像光(X1',Y1')~(X3',Y3')により表示される画像(全体画像の一部)は、第2の画像光(X2',Y2')~(X4',Y4')により表示される画像(全体画像の一部)より、拡大して表示される。具体的には、第1の画像光(X1',Y1')~(X3',Y3')は、表示エレメント単位でXY方向に面積が大きくなり、且つ、隣り合う表示エレメント同士の間隔がXY方向に広がるように表示される。第2の画像光(X2',Y2')~(X4',Y4')から第1の画像光(X1',Y1')~(X3',Y3')までこのように連続的に拡大される。
【0054】
上記のように、第2の列の表示エレメントの両端の表示エレメント(X2,Y2)、(X4,Y4)同士の距離は、第1の列の表示エレメントの両端の表示エレメント(X1,Y1)、(X3,Y3)同士の距離より長い。一方、第1の画像光(X1',Y1')~(X3',Y3')により表示される画像(全体画像の一部)は、第2の画像光(X2',Y2')~(X4',Y4')により表示される画像(全体画像の一部)より、拡大して表示される。具体的には、両端同士の距離が短い第1の列の表示エレメント(X1,Y1)~(X3,Y3)の拡大率が最も大きく、両端同士の距離が長い第2の列の表示エレメント(X2,Y2)~(X4,Y4)の拡大率が最も小さい。第2の画像光(X2',Y2')~(X4',Y4')から第1の画像光(X1',Y1')~(X3',Y3')までこのように連続的に拡大される。これにより、表示装置1の扇形に配列された複数の表示エレメントから出射された画像光により表示される画像I1は、長方形となる。
【0055】
言い換えれば、第2の画像光(X2',Y2')~(X4',Y4')を出射する複数の表示エレメント(X2,Y2)~(X4,Y4)同士の間隔が、第1の画像光(X1',Y1')~(X3',Y3')を出射する複数の表示エレメント(X1,Y1)~(X3,Y3)同士の間隔より広く配列される。一方、第1の画像光(X1',Y1')~(X3',Y3')は第2の画像光(X2',Y2')~(X4',Y4')より拡大して表示される。これにより、狭い配列の表示エレメント(X1,Y1)~(X3,Y3)からの第1の画像光(X1',Y1')~(X3',Y3')が、広い配列の表示エレメント(X2,Y2)~(X4,Y4)からの第2の画像光(X2',Y2')~(X4',Y4')よりも広がって表示される。これにより、第1の画像光(X1',Y1')~(X3',Y3')により表示される画像の一部と、第2の画像光(X2',Y2')~(X4',Y4')により表示される画像の一部が、同程度の大きさとなることにより、目標とする長方形の画像が表示される。
【0056】
3.表示エレメントの構成
【0057】
上記のように、表示装置1の複数の表示エレメントは、X'方向(径方向)とY'方向(周方向)にマトリクス状に配列された扇形である。X'方向に配列された各列に含まれる複数の表示エレメントの数は等しい。Y'方向に配列された各列に含まれる複数の表示エレメントの数は等しい。1個の基板に全ての表示エレメントが搭載されてもよい。しかしながら、本実施形態では、複数の表示エレメントを同数ずつのブロックに分割する。言い換えると、同数ずつの表示エレメントを含む複数のブロック(分割された基板)を組み合わせることで、表示装置1を構成する。
【0058】
図3は、複数の表示エレメントを構成する複数のブロックを模式的に示す。
【0059】
表示装置1に含まれる複数の表示エレメント(
図2と同じ)は、X'方向(周方向)及びY'方向(径方向)に4×3に分割された複数(12個)の扇形のブロックa、b、cが組み合わせられることにより構成される。4個のブロックaは合同、4個のブロックbは合同、4個のブロックcは合同である。扇形のブロックa、b、cの仮想的な中心角(不図示)の角度は等しい。各ブロックa、b、cのY'方向の長さYa、Yb、Ycは、全て等しい。ブロックbに対向するブロックaのX'方向の弧の長さと、ブロックaに対向するブロックbのX'方向の弧の長さとは、等しい。ブロックbに対向するブロックcのX'方向の弧の長さと、ブロックcに対向するブロックbのX'方向の弧の長さとは、等しい。上記のブロックa、b、cの形状により、複数(12個)の扇形のブロックa、b、cは隙間無く4×3の扇形(
図2の表示装置1の形)に組み合わせられる。
【0060】
各ブロックa、b、cは、複数の表示エレメントを含む。複数のブロックa、b、cそれぞれに含まれる複数の表示エレメントのX'方向の数は等しい。複数のブロックa、b、cそれぞれに含まれる複数の表示エレメントのY'方向の数は等しい。
図2及び
図3の例では、各ブロックa、b、cは、4×2(X'方向×Y'方向)=8個の表示エレメントを含む。各ブロックa、b、c内で、4個の表示エレメントがX'方向に等間隔に配列され、2個の表示エレメントがY'方向に等間隔に配列されるように、8個の表示エレメントが扇形のマトリクス状(4×2)に配列される。一方、各ブロックa、b、cのサイズは仮想的な中心角(不図示)からの距離(径の長さ)に依存して異なる。このため、各ブロックa、b、cの表示エレメントの配列は異なる。より具体的には、仮想的な中心角(不図示)に近い位置のブロック(例:ブロックc)ほど複数の表示エレメントのX'方向の間隔が狭くなり、仮想的な中心角(不図示)から遠い位置のブロック(例:ブロックa)ほど複数の表示エレメントのX'方向の間隔が広くなる。
【0061】
このように構成された複数の扇形のブロックa、b、cを隙間無く扇形に組み合わせることで、
図2の表示装置1(96個の表示エレメントが6×16(X'方向×Y'方向)の扇形のマトリクス状に配列された表示装置1)を作製することができる。異なるサイズのブロックa、b、cそれぞれに含まれる複数の表示エレメントの数(12個)が等しいことから、結果的に、複数の表示エレメントの間隔がブロックa、b、cごとに異なる。これにより、複数の表示エレメントの間隔が不均一な表示装置1を、複数種類のブロックa、b、cを組み合わせることで、簡便に作成できる。
【0062】
本実施形態によれば、同数(8個)ずつの表示エレメントが搭載された12個のブロックa、b、cを組み合わせることで、表示装置1を構成する。これにより、例えば一部の表示エレメントの故障時に、その表示エレメントが含まれる1個のブロックを交換することで、簡便に故障に対処できる。一方、1個の基板に全ての表示エレメントが搭載されている場合、例えば一部の表示エレメントの故障時に、全ての表示エレメントが搭載された基板を交換しなければならない。このため、表示エレメントが搭載された複数のブロック(分割された基板)を組み合わせることで、経済的な観点からも有利である。
【0063】
さらに、同数ずつの表示エレメントが搭載された異なる種類の複数のブロックを組み合わせることで、表示装置1とは異なる形の表示装置を作製することができる。
【0064】
図4は、複数のブロックの組み合わせの一例を模式的に示す。
【0065】
4個のブロックa及び4個のブロックb(
図3と同じ)を組み合わせて、表示装置1(
図2、
図3)と曲率が等しくサイズが異なる表示装置3を作製することができる。本例では、表示装置1の4×3=12個のブロックのY'方向の数を減らして4×2=8個のブロックを有する表示装置3を作製する。これに対して、ブロックのY'方向の数を増やしたり、ブロックのX'方向の数を増減したりすることにより、さらに異なる表示装置を作成することも可能である。
【0066】
図5は、複数のブロックの組み合わせの別の一例を模式的に示す。
【0067】
表示装置4に含まれる複数の表示エレメントが出射する画像光が反射するフロントガラスWSの曲面の曲率は、表示位置により異なる。例えば、サイドミラー付近のフロントガラスWSの曲面の曲率は、運転席の正面のフロントガラスWSの曲面の曲率よりも大きい(曲率がきつい)。このため、運転席の正面からサイドミラー付近にかけて幅広の画像を表示する場合、フロントガラスWSの曲面の曲率が途中で変化する。このようなケースでは、複数のブロックの曲率を変化させる。
【0068】
表示装置4は、複数のブロックa、b、c(
図3と同じ)及び複数のブロックdを有する。表示装置4のX1側(運転席の正面側)は、複数のブロックa、b、cを含み、組み合わせは
図3と同様である。一方、表示装置4のX2側(サイドミラー側)は、X1側と曲率が異なる。
【0069】
表示装置4のX1側に含まれる複数の表示エレメントは、X'方向(周方向)及びY'方向(径方向)に3×3に分割された複数(9個)の扇形のブロックa、b、cが組み合わせられることにより構成される。表示装置4のX2側に含まれる複数の表示エレメントは、X'方向(周方向)及びY'方向(径方向)に3×3に分割された複数(9個)の扇形のブロックb、c、dが組み合わせられることにより構成される。3個のブロックaは合同、6個のブロックbは合同、6個のブロックcは合同、3個のブロックdは合同である。扇形のブロックa、b、c、dの仮想的な中心角(不図示)の角度は等しい。各ブロックa、b、c、dのY'方向の長さYa、Yb、Yc、Ydは、全て等しい。ブロックbに対向するブロックaのX'方向の弧の長さと、ブロックaに対向するブロックbのX'方向の弧の長さとは、等しい。ブロックbに対向するブロックcのX'方向の弧の長さと、ブロックcに対向するブロックbのX'方向の弧の長さとは、等しい。ブロックdに対向するブロックcのX'方向の弧の長さと、ブロックcに対向するブロックdのX'方向の弧の長さとは、等しい。上記のブロックa、b、c、dの形状により、X1側の9個の扇形のブロックa、b、cは隙間無く3×3の扇形に組み合わせられ、X2側の9個の扇形のブロックb、c、dは隙間無く3×3の扇形に組み合わせられる。とりわけ、各ブロックa、b、c、dのY'方向の長さYa、Yb、Yc、Ydは、全て等しいため、異なる種類のブロック(例えば、ブロックa、b)をX'方向に隙間なく組み合わせることができる。これにより、X1側の端のブロックa、b、cと、X2側の端のブロックb、c、dとが、隙間無く組み合わせられる。
【0070】
このように、X'方向の長さが異なる複数のブロックを用いることで、フロントガラスWSの曲面の異なる曲率に対応可能である。具体的には、フロントガラスWSの曲面の曲率が大きい(曲率がきつい)ほど、X'方向の長さが短いブロックdを用いることで、フロントガラスWSの曲面の曲率が大きい場合でも、目標とする画像(長方形)に近い画像を表示することを図れる。
【0071】
【0072】
扇形の表示装置1を実現する複数のブロックの形は、扇形(
図3、
図4、
図5)に限定されない。ブロックの形は、多角形でもよい。例えば、ブロックの形は、台形でもよい。扇形のブロックの径である1対の線分の両端同士を直線で結ぶと、X'方向が底辺方向となりY'方向が斜辺方向となる台形(例:等脚台形)となる。例えば、表示装置1(
図3)の扇形のブロックa、b、cを全て上記の様に台形にすると、
図6の表示装置5となる。このように構成された複数の台形のブロックa、b、cを隙間無く扇形に組み合わせることで、
図2の表示装置1(96個の表示エレメントが6×16(X'方向×Y'方向)の扇形のマトリクス状に配列された表示装置1)を作製することができる。
また、扇形(
図3、
図4、
図5)の周方向の弧を線分で近似した多角形を用いても良い。ここでは、周方向の弧を線分で近似した多角形は台形も含むものとする。
図8は周方向の弧を線分で近似した多角形(矢羽形)を隙間無く扇形に組み合わせた表示装置6の例であって、台形と異なる多角形(矢羽形)の例である。
【0073】
ブロックが扇形である場合、異なるサイズの扇形のブロックの仮想的な中心角の角度は全て等しい。ブロックが台形や弧を線分で近似した多角形(台形も含む)の場合も同様である。異なるサイズの台形のブロックの1対の斜辺を仮想的に延ばした1対の直線が成す交点の角の角度は全て等しい。
また、ブロックが多角形(例:台形、線分で近似した多角形)で、
図5と同様に径の位置が同じで周方向に複数のブロックを並べる場合、弧に対応する線分の長さが異なる複数のブロックを用いることで、フロントガラスWSの曲面の異なる曲率に対応可能である。
【0074】
4.表示システムの構成
【0075】
図7は、表示装置を有する表示システムの構成を示す。
【0076】
表示システム100は、車両に搭載されるヘッドアップディスプレイシステムである。表示システム100は、表示制御装置10と、表示装置1とを含む。
【0077】
表示制御装置10は、コンテンツ生成システム30からコンテンツ(例えば、安全関係コンテンツ、ナビゲーションコンテンツ、インフォテイメントコンテンツ、速度等の車両情報コンテンツ等)のデータ(画像、メタデータ)を取得する。表示制御装置10は、ROMに記録された表示制御プログラムをRAMにロードしてCPUが実行することにより、コンテンツ取得部110、歪補正処理部120及び出力部130を実現する。表示制御装置10は、コンテンツの画像を取得し(コンテンツ取得部110)、補正した画像の描画データを生成し(歪補正処理部120)、描画データを表示装置1に出力する(出力部130)。例えば、歪補正処理部120は、フロントガラス上の画像が表示される位置(表示位置)と、閲覧者位置(運転席又は助手席、眼の位置(身長の高さ)等)とに基づき、フロントガラスの表示位置に表示される画像を閲覧者が閲覧者位置から見るときに画像の歪みが低減されるように、画像を補正する。
【0078】
表示装置1は、例えば、車両のダッシュボードに設置される。表示装置1は、表示デバイス制御部210と、表示デバイス220とを有する。表示デバイス220は、
図1等に図示した構成を有し、例えば、マイクロLEDパネル等の、微細なLED素子を光源とする。表示デバイス制御部210は、表示デバイス220を制御して、表示制御装置10から入力された描画データに基づき、スクリーンである車両のフロントガラスに向けて画像を表示(投影)する。閲覧者は、表示デバイス220から表示(投影)され、フロントガラスに反射する画像を見る。表示デバイス220(マイクロLEDパネル等)は、例えば、ダッシュボードの幅方向全域に亘って設置される。これにより、フロントガラスの幅方向全域に亘って画像が表示される。表示デバイス220は、ダッシュボードの幅方向全域に亘って連続する1個のパネルでもよいし、ダッシュボードの幅方向に分割された複数のパネルを有してもよい。
【0079】
コンテンツ生成システム30は、表示装置1に表示される画像のコンテンツを生成する互いに独立した複数の装置の総称である。コンテンツ生成システム30は、例えば、安全関係コンテンツ生成装置、ナビゲーション装置、インフォテイメント装置及び車両情報生成装置を含む。安全関係コンテンツ生成装置、ナビゲーション装置、インフォテイメント装置及び車両情報生成装置は、それぞれ、コンテンツのデータ(画像、メタデータ)を生成し、表示制御装置10に出力する。
【0080】
表示装置1は、複数の表示エレメントを含む表示デバイス220をフロントガラスに対して、フロントガラスの幅方向及び/又はフロントガラスに対して前後方向に移動させて画像(虚像)の位置を調節する移動機構を有してもよい。
【0081】
5.結語
【0082】
本実施形態によれば、曲面を有するスクリーンに表示される画像が必ず歪む点に着目し、曲面を有するスクリーンに目標とする画像が表示されるように配列された表示エレメントを有する表示装置を実現する。具体的には、複数の表示エレメントは、目標とする画像I1が表示されるように、複数の表示エレメント同士の間隔が不均一になる(正方配列でない)ように配列される。複数の表示エレメントが出射する画像光がフロントガラスWSに反射することにより、フロントガラスWSに画像I1(虚像)が表示される。フロントガラスWSは自由曲面を有するため、フロントガラスWSに表示された画像I1は、複数の表示エレメントの配列と同じ形(相似形)ではなく、目標とする画像の形となる。これにより、本実施形態によれば、コンバイナやレンズ等の光学素子を用いずに、曲面を有するフロントガラスWSに、目標とする画像を表示することができる。
【0083】
一方、車種によってフロントガラスWSの形状は異なる。このため、フロントガラスWSに最適な表示エレメントの配列は、車種毎に異なる。車種毎に異なった配列の表示装置を作製するのは経済的に現実的ではない。これに対して、本実施形態によれば、同数ずつの表示エレメントを含む複数のブロック(分割された基板)を組み合わせることで、表示装置1を構成する。各ブロックのY'方向の長さは全て等しく、隣り合うブロックのX'方向の長さは等しい。これにより、複数のブロックを隙間無く組み合わせることができる。また、X'方向の長さが異なる複数のブロックを用いることで、フロントガラスWSの曲面の異なる曲率に対応可能である。具体的には、フロントガラスWSの曲面の曲率が大きいほど、X'方向の長さが短いブロックを用いることで、フロントガラスWSの曲面の曲率が大きい場合でも、目標とする画像(長方形)に近い画像を表示することを図れる。フロントガラスWSの曲面の曲率が小さいほど、X'方向の長さが長いブロックを用いることで、フロントガラスWSの曲面の曲率が小さい場合でも、目標とする画像(長方形)に近い画像を表示することを図れる。
【0084】
また、例えば一部の表示エレメントの故障時に、その表示エレメントが含まれる1個のブロックを交換することで、簡便に故障に対処できる。一方、1個の基板に全ての表示エレメントが搭載されている場合、例えば一部の表示エレメントの故障時に、全ての表示エレメントが搭載された基板を交換しなければならない。このため、表示エレメントが搭載された複数のブロック(分割された基板)を組み合わせることで、経済的な観点からも有利である。異なる種類の複数のブロックを組み合わせることで、様々な異なる形(X'方向の長さ、Y'方向の長さ、曲率が異なる形)の表示装置を作製することができる。
また、各ブロックに含まれる表示エレメント数は同じとしたが、変えても良い。
また、各ブロックの径方向の長さYa,Yb,Ycは同じとしたが、Ya,Yb,Ycの長さを変えても良い。なお各ブロックの形状が等脚台形の場合は、各ブロックの径方向の長さYa,Yb,Ycの長さを変えて、各ブロックの形状は互いに相似となるようにしても良い。
【0085】
本開示は、以下の各構成を有してもよい。
【0086】
(1)
曲面を有するスクリーンに画像光を出射する複数の表示エレメントであって、前記複数の表示エレメントが出射する前記画像光が前記曲面に反射することにより目標とする画像が表示されるように、前記複数の表示エレメント同士の間隔が不均一になるように配列された、複数の表示エレメント
を具備する表示装置。
(2)
上記(1)に記載の表示装置であって、
前記曲面が前記画像光を反射することにより、前記画像光の一部である第1の画像光により表示される画像の一部は、前記画像光の他の一部である第2の画像光により表示される前記画像の他の一部より、拡大して表示され、
前記第2の画像光を出射する複数の表示エレメント同士の間隔が、前記第1の画像光を出射する複数の表示エレメント同士の間隔より広くなるように、前記複数の表示エレメントが配列される
表示装置。
(3)
上記(1)又は(2)に記載の表示装置であって、
前記目標とする画像の形に配列された仮想的な複数の表示エレメントから仮想的な画像光を前記スクリーンに出射したときに前記仮想的な画像光が前記曲面に反射することにより表示される仮想的な画像と相似形に、前記複数の表示エレメントが配列される
表示装置。
(4)
上記(1)乃至(3)の何れかに記載の表示装置であって、
目標とする画像は長方形であり、
前記複数の表示エレメントが出射する前記画像光が前記曲面に反射することにより長方形の画像が表示されるように、前記複数の表示エレメントは、前記長方形の直交する2辺に相当する方向である第1の方向及び第2の方向に配列され、
前記第1の方向に複数列の表示エレメントが配列され、前記第1の方向に配列された各列に含まれる複数の表示エレメントの数は等しく、
前記第2の方向に複数列の表示エレメントが配列され、前記第2の方向に配列された各列に含まれる複数の表示エレメントの数は等しい
表示装置。
(5)
上記(4)に記載の表示装置であって、
前記第1の方向に配列され、前記長方形の1辺を表示するための画像光を出力する第1の列の表示エレメントの両端の表示エレメント同士の距離と、
前記第1の方向に配列され、前記1辺の対辺となる他の1辺を表示するための画像光を出力する第2の列の表示エレメントの両端の表示エレメント同士の距離と、
が異なるように、前記複数の表示エレメントが配列される
表示装置。
(6)
上記(4)又は(5)に記載の表示装置であって、
前記複数の表示エレメントは、前記第1の方向及び前記第2の方向に分割された複数のブロックが組み合わせられることにより構成される
表示装置。
(7)
上記(6)に記載の表示装置であって、
前記複数のブロックの前記第2の方向の長さは全て等しい
表示装置。
(8)
上記(6)又は(7)に記載の表示装置であって、
前記複数のブロックの前記第1の方向の長さは、前記複数のブロックに含まれる複数の表示エレメントが出射する画像光が反射する曲面の曲率に拠って異なる
表示装置。
(9)
上記(6)乃至(8)の何れかに記載の表示装置であって、
前記複数のブロックそれぞれに含まれる前記複数の表示エレメントの前記第1の方向の数は等しく、
前記複数のブロックそれぞれに含まれる前記複数の表示エレメントの前記第2の方向の数は等しい
表示装置。
(10)
上記(6)乃至(9)に記載の表示装置であって、
前記複数のブロックは、それぞれ扇形であり、
前記第1の方向は前記扇形の周方向であり、前記第2の方向は前記扇形の径方向である
表示装置。
(11)
上記(6)乃至(9)に記載の表示装置であって、
前記複数のブロックは、それぞれ台形であり、
前記第1の方向は前記台形の底辺方向であり、前記第2の方向は前記台形の斜辺方向である
表示装置。
(12)
上記(1)乃至(11)に記載の表示装置であって、
前記複数の表示エレメントは、複数のピクセルである
表示装置。
(13)
上記(1)乃至(12)に記載の表示装置であって、
前記複数の表示エレメントは、複数のサブピクセルである
表示装置。
(14)
上記(1)乃至(13)に記載の表示装置であって、
前記複数の表示エレメントを前記スクリーンに対して移動させて画像の位置を調節する移動機構
をさらに具備する表示装置。
(15)
曲面を有するスクリーンに画像光を出射する複数の表示エレメントであって、前記複数の表示エレメントが出射する前記画像光が前記曲面に反射することにより目標とする画像が表示されるように、前記複数の表示エレメント同士の間隔が不均一になるように配列された、複数の表示エレメントを有する表示装置と、
画像描画データを生成し、前記表示装置に出力する表示制御装置と、
を具備する表示システム。
【0087】
本技術の各実施形態及び各変形例について上に説明したが、本技術は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0088】
1,2,3,4,5 表示装置
10 表示制御装置
100 表示システム
110 コンテンツ取得部
120 歪補正処理部
130 出力部
210 表示デバイス制御部
220 表示デバイス
30 コンテンツ生成システム
DB ダッシュボード
I1、I2 画像
WS フロントガラス
a、b、c、d ブロック