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特開2024-154604ストレージシステム、および、ストレージシステムにおけるデータバックアップ処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154604
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】ストレージシステム、および、ストレージシステムにおけるデータバックアップ処理方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/06 20060101AFI20241024BHJP
   G06F 13/10 20060101ALI20241024BHJP
   G06F 11/14 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
G06F3/06 304F
G06F3/06 301X
G06F13/10 340A
G06F3/06 301Z
G06F11/14 664
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068518
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】524132520
【氏名又は名称】日立ヴァンタラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】弘中 和衛
(72)【発明者】
【氏名】新井 政弘
(72)【発明者】
【氏名】出口 彰
(57)【要約】
【課題】オンプレミスに設置されたストレージ装置の格納データを、パブリッククラウドが提供するストレージサービスへ、より確実にかつ効率的にバックアップする。
【解決手段】本発明のストレージシステムは、第1の記憶ボリュームLDEV13A-1~103A-nを有するストレージ装置10Aと、第2の記憶ボリュームLDEV13B-1~103B- nを有するストレージ装置10Bとを備える。そして、第1の論理ボリュームの格納データと第2の論理ボリュームの格納データとが同期しているとき、ストレージ装置10Aからパブリッククラウドへの転送経路204A、および、ストレージ装置10Bからパブリッククラウドへの転送経路204Bにおけるネットワーク状況を把握し、当該ネットワーク状況に基づいて、第1の論理ボリュームまたは第2の論理ボリュームをバックアップ元として選択する。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の論理ボリュームを有する第1のストレージ装置と、
前記第1の論理ボリュームとリモートレプリケーションペアを構成する第2の論理ボリュームを有する第2のストレージ装置と、
前記第1のストレージ装置および前記第2のストレージ装置を管理する統合管理装置と
を備え、
前記第1の論理ボリュームの格納データまたは前記第2の論理ボリュームの格納データを、パブリッククラウドが提供するストレージサービスへバックアップするストレージシステムであって、
前記統合管理装置または前記第1のストレージ装置は、前記第1の論理ボリュームの格納データと前記第2の論理ボリュームの格納データとが同期しているとき、前記第1のストレージ装置から前記パブリッククラウドへの転送経路、および、前記第2のストレージ装置から前記パブリッククラウドへの転送経路におけるネットワーク状況に基づいて、前記第1の論理ボリュームまたは前記第2の論理ボリュームをバックアップ元として選択する
ストレージシステム。
【請求項2】
前記統合管理装置は、前記第1のストレージ装置から前記パブリッククラウドへの転送経路、および、前記第2のストレージ装置から前記パブリッククラウドへの転送経路における転送コストに基づいて、前記第1の論理ボリュームまたは前記第2の論理ボリュームをバックアップ元として選択する
請求項1に記載のストレージシステム。
【請求項3】
前記第2のストレージ装置は、前記パブリッククラウドと同一のネットワークに接続されたクラウド上に設置されている
請求項2に記載のストレージシステム。
【請求項4】
第1の論理ボリュームを有する第1のストレージ装置と、
前記第1の論理ボリュームとリモートレプリケーションペアを構成する第2の論理ボリュームを有する第2のストレージ装置と
を備えるストレージシステムにおいて、
前記第1の論理ボリュームの格納データまたは前記第2の論理ボリュームの格納データを、パブリッククラウドが提供するストレージサービスへバックアップするデータバックアップ処理方法であって、
前記第1の論理ボリュームの格納データと前記第2の論理ボリュームの格納データとが同期しているとき、前記第1のストレージ装置から前記パブリッククラウドへの転送経路、および、前記第2のストレージ装置から前記パブリッククラウドへの転送経路におけるネットワーク状況を把握し、
前記ネットワーク状況に基づいて、前記第1の論理ボリュームまたは前記第2の論理ボリュームをバックアップ元として選択する
ストレージシステムにおけるデータバックアップ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレージシステム、および、ストレージシステムにおけるデータバックアップ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、データセンタなどに設置したオンプレミスのITシステムと、パブリッククラウドと呼ばれるクラウドベンダがIaaS(Infrastructure-as-a-Service)型で提供するサービスとの両方を組み合わせたハイブリッドクラウドと呼ばれるITシステムの構築方法が注目されている。
【0003】
ハイブリッドクラウドは、オンプレミスに構築した従来型のITシステムを活かしつつ、ハイブリッドクラウドで提供されるクラウドサービスを適材適所で活用することで、ITインフラの柔軟性の向上や、IT運用コストの低減などが期待されている。
【0004】
また、クラウドベンダは、ハイブリッドクラウドを効率的に利用するための通信手段として、非特許文献1で開示されているような、オンプレミスのデータセンタとクラウドベンダが運営するデータセンタとの間を直接接続する専用線での接続サービスを提供している。
【0005】
また、ストレージシステムにおいては、SDS(Software Defined Storage)と呼ばれる従来型のストレージ装置と同等の機能を有するソフトウエアで実装されたストレージ装置が製品化されている。SDSは、ソフトウエアで実装されていることから、前述のパブリッククラウドでも稼働させることができる。このSDSの導入により、オンプレミスに設置した従来のストレージ装置と同等のストレージ機能をパブリッククラウド上で実現することができる。
【0006】
SDSを利用するユーザは、従来型のストレージ装置が提供する各種のストレージ機能との互換性を重視している。そして、ITシステムの可用性や信頼性、柔軟性を高める目的で、特許文献1に挙げたようなリモートレプリケーション機能などのストレージ機能を用いて、オンプレミスのストレージ装置とパブリッククラウドに構築したSDSとの間で格納データを同期して利用するレプリケーション環境を構築することがある。リモートレプリケーション機能を利用することで、オンプレミスとパブリッククラウドとの間で同一の格納データを同期しながら利用することができ、特に、ハイブリッドクラウドを構築する場合においては有用である。
【0007】
また、企業では、増加し続けるITシステムのデータに対処するため、ユーザは安価なデータ格納手段、特に、長期に亘って保管する必要があるバックアップデータを安価に保管する手段に対して高い関心がある。特に、ハイブリッドクラウドを活用するユーザにおいては、長期に亘るデータのバックアップやアーカイブの手段として、非特許文献2に示したようなパブリッククラウドが提供するストレージサービスの活用が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第7152079号明細書
【特許文献2】国際公開第2017/064770号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】https://aws.amazon.com/jp/directconnect/
【非特許文献2】https://aws.amazon.com/s3/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、パブリッククラウドが提供するストレージサービスへのアクセス手段としては、一般的に、インターネットが利用されている。オブジェクトストレージと呼ばれる特に安価なストレージサービスでは、HTTP(Hyper Text Transport Protocol)などのアクセス技術を利用した通信プロトコルを利用してサービスが提供されている。
【0011】
しかしながら、インターネットを利用したデータ伝送は、公衆ネットワークを経由することから、データセンタ間を直接接続する専用線などと比べて帯域の保証などがなく、安定性や信頼性の面で劣っている。また、HTTPを利用した通信プロトコルは、データ転送に特化した通信プロトコルではないため、データ転送に係るオーバヘッドが大きくなる傾向にあり、大容量データの伝送に最適化されていない。
【0012】
このため、例えば、オンプレミスに設置されたストレージ装置の格納データを、前述のパブリッククラウドが提供するストレージサービスへバックアップするケースでは、利用できるインターネットの帯域や混雑具合によって、バックアップに要する時間が長時間となって想定時間内に完了しないことが起こり得る。あるいは、過度な通信遅延の増大によってバックアップ自体が失敗してしまうことが起こり得る。
【0013】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、オンプレミスに設置されたストレージ装置の格納データを、パブリッククラウドが提供するストレージサービスへ、より確実にかつ効率的にバックアップすることができるストレージシステム、および、当該ストレージシステムにおけるデータバックアップ処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための本発明のストレージシステムは、第1の論理ボリュームを有する第1のストレージ装置と、第1の論理ボリュームとリモートレプリケーションペアを構成する第2の論理ボリュームを有する第2のストレージ装置と、第1のストレージ装置および第2のストレージ装置を管理する統合管理装置とを備え、第1の論理ボリュームの格納データまたは第2の論理ボリュームの格納データを、パブリッククラウドが提供するストレージサービスへバックアップするストレージシステムである。そして、統合管理装置または第1のストレージ装置は、第1の論理ボリュームの格納データと第2の論理ボリュームの格納データとが同期しているとき、第1のストレージ装置からパブリッククラウドへの転送経路、および、第2のストレージ装置からパブリッククラウドへの転送経路におけるネットワーク状況に基づいて、第1の論理ボリュームまたは第2の論理ボリュームをバックアップ元として選択する。
【0015】
また、上記課題を解決するための本発明のデータバックアップ処理方法は、第1の論理ボリュームを有する第1のストレージ装置と、第1の論理ボリュームとリモートレプリケーションペアを構成する第2の論理ボリュームを有する第2のストレージ装置とを備えるストレージシステムにおいて、第1の論理ボリュームの格納データまたは第2の論理ボリュームの格納データを、パブリッククラウドが提供するストレージサービスへバックアップするデータバックアップ処理方法である。そして、第1の論理ボリュームの格納データと第2の論理ボリュームの格納データとが同期しているとき、第1のストレージ装置からパブリッククラウドへの転送経路、および、第2のストレージ装置からパブリッククラウドへの転送経路におけるネットワーク状況を把握し、このネットワーク状況に基づいて、第1の論理ボリュームまたは第2の論理ボリュームをバックアップ元として選択する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、オンプレミスに設置されたストレージ装置の格納データを、パブリッククラウドが提供するストレージサービスへ、より確実にかつ効率的にバックアップすることができる。
【0017】
上記した以外の課題、構成、および、効果は、以下の発明を実施するための形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係るストレージシステムの構成の一例を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態に係るストレージシステムの管理情報の構成例を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る統合管理装置におけるインベントリ情報の構成例を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係るストレージ装置の管理情報におけるLDEV管理テーブルの構成例を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係るストレージ装置の管理情報におけるリモートストレージ管理テーブルの構成例を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係るストレージ装置の管理情報におけるレプリケーション管理テーブルの構成例を示す図である。
図7】本発明の実施形態に係るストレージ装置の管理情報におけるバックアップデータ管理テーブルの構成例を示す図である。
図8】本発明の実施形態に係るストレージ装置の管理情報における経路管理テーブルの構成例を示す図である。
図9】本発明の実施形態に係るストレージ装置の管理情報におけるストレージ装置管理テーブルの構成例を示す図である。
図10】クラウドで提供されるオブジェクトストレージへのデータバックアップの例を模式的に示す図である。
図11】本発明の実施形態における実施例1に係るリモートレプリケーションを用いたクラウドサービスへのデータバックアップについて模式的に示す図である。
図12】本発明の実施形態における実施例2に係るリモートレプリケーションを用いたクラウドサービスへのデータバックアップについて模式的に示す図である。
図13】本発明の実施形態に係るデータバックアップ処理方法の処理フローの一例を示すフローチャート(その1)である。
図14】本発明の実施形態に係るデータバックアップ処理方法の処理フローの一例を示すフローチャート(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態と記述する)について、添付図面を参照して説明する。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能または構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0020】
なお、以下に説明する実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、実施形態の中で説明されている要素の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。また、以下の説明では、「xxxテーブル」、「xxxリスト」等の表現で各種の情報を説明することがあるが、各種情報はテーブル、リスト等以外のデータ構造で表現されていてもよい。そのため、データ構造に依存しないことを示すため、「xxxテーブル」、「xxxリスト」等を「xxx情報」と称することがある。
【0021】
さらに、以下の本発明の実施形態に係るストレージシステムについては、汎用コンピュータ上で稼動するソフトウエアで実装してもよいし、専用ハードウエアまたはソフトウエアとハードウエアの組み合わせで実装してもよい。
【0022】
さらに、以下の実施形態の説明では、「プログラム」を主語として処理を説明することがあるが、プログラムは、プロセッサ(例えば、CPU:Central Processing Unit)によって実行されることにより、定められた処理を記憶資源(例えば、メモリ)、通信インターフェース(I/F)、ポートを用いて処理を実行するために、プロセッサを主語として説明してもよい。
【0023】
さらに、以下の実施形態の説明において、「ボリューム(VOL)」は、ストレージ装置の記憶領域を示し、物理的な記憶デバイス、または、論理的な記憶デバイスによって実装されていてよい。また、VOLは、実体的なVOL(RVOL)であってもよいし、仮想的なVOL(VVOL)であってもよい。
【0024】
「RVOL」は、そのRVOLを有するストレージ装置が有する物理的な記憶資源(例えば、1以上のRAID(Redundant Array of Independent Disk)グループ)に基づくVOLでよい。「VVOL」は、外部接続VOL(EVOL)、容量拡張VOL(TPVOL)、および、スナップショットVOL(SSVOL)のうちのいずれでもよい。また、EVOLは、外部のストレージ装置の記憶空間(例えば、VOL)に基づいており、ストレージ仮想化技術に従うVOLでよい。また、TPVOLは、複数の仮想領域(仮想的な記憶領域)で構成されており、容量仮想化技術(典型的には、Thin Provisioning)に従うVOLでよい。また、SSVOLは、あるTPVOLのある時点におけるスナップショットデータを保持したVOLでよい。
【0025】
また、以下の実施形態の説明において、ストレージシステムがホストに提供し、ホストから認識されるVOLのことを「LDEV」と呼ぶ。「LDEV」の実態は、VVOLまたはRVOLである。
【0026】
また、以下の実施形態の説明において、「PVOL(Primary VOL)」はバックアップ、レプリケーション、スナップショットの元ボリュームとなるLDEVのことであり、「SVOL(Secondary VOL)」はバックアップ、レプリケーション、スナップショット先となるLDEVのことでよい。
【0027】
また、以下の実施形態の説明において、スナップショットは、VOLのある任意時点のデータを保持したSSVOLまたは論理的な記憶領域でもよい。スナップショットの実現方式は、ある時点からある時点までにVOLに対して行われたデータ更新差分を一括して記録する方式のスナップショットで実現されてよいし、VOLに行われた全てのデータ更新をデータ更新の時系列で記録するジャーナリング方式、または、CDP(Continious Data Protection)方式で実現されてよい。
【0028】
また、以下の実施形態の説明において、リモートレプリケーションは、2以上のペア関係にあるストレージにおいてVOLのデータを同期する機能のことであり、例えば、レプリケーション元のストレージにあるPVOLへのデータ更新を、ペア関係にあるレプリケーション先のストレージにあるSVOLにも反映されることで実現されて良い。SVOLへのデータ反映は、PVOLへのデータ更新と同期的に行われるSYNC方式で実現されても良いし、PVOLへのデータ更新とは非同期的に行われるASYNC方式で実現されても良い。
【0029】
<本発明の実施形態>
本発明の実施形態に係るストレージシステムは、リモートレプリケーション構成の典型例である。リモートレプリケーションは、ストレージ装置に格納されたデータを別のストレージ装置に複製する技術である。
【0030】
[ストレージシステムの構成例]
図1は、本発明の実施形態に係るストレージシステムの構成の一例を示すブロック図である。本実施形態に係るストレージシステムは、リモートレプリケーションを構成するため、複数のサイト、例えば、プライマリサイト1とセカンダリサイト2とを備えている。プライマリサイト1とセカンダリサイト2とは、リモートレプリケーションを構築している。
【0031】
プライマリサイト1は、ストレージ装置10A、ホストインターフェースデバイス12、1以上のホスト14、ホストネットワーク15、管理システム18A、および、管理ネットワーク19を有している。ストレージ装置10Aは、制御プログラム11、ホストインターフェースデバイス12、記憶ボリュームLDEV13A-1~103A-n、レプリケーションインタフェースデバイス16、および、マネージメントインターフェースデバイス17を有している。なお、ストレージ装置10Aは、特許請求の範囲に記載の第1のストレージ装置の一例である。
【0032】
セカンダリサイト2は、ストレージ装置10B、ホストインターフェースデバイス12、1以上のホスト14、ホストネットワーク15、管理システム18B、および、管理ネットワーク19を有している。ストレージ装置10Bは、制御プログラム11、ホストインターフェースデバイス12、記憶ボリュームLDEV13B-1~103B-n、レプリケーションインタフェースデバイス16、および、マネージメントインターフェースデバイス17を有している。なお、ストレージ装置10Bは、特許請求の範囲に記載の第2のストレージ装置の一例である。
【0033】
プライマリサイト1およびセカンダリサイト2において、同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付して図示している。リモートレプリケーション構成のプライマリサイト1およびセカンダリサイト2では、同一の構成のストレージ装置10A,10Bを用いて構築する場合が多いが、リモートレプリケーションを構築する上では、ストレージ装置10A,10Bの構成を揃える必要はなく、また、セカンダリサイト2側に必ずしもホスト14が存在しなくてもよい。
【0034】
ストレージ装置10Aとストレージ装置10Bとは、レプリケーションネットワーク32を介して互いに接続されている。レプリケーションネットワーク32としては、典型的には、専用線ネットワークやVPN(Virtual Private Network)技術を用いたネットワークを用いることができる。
【0035】
プライマリサイト1およびセカンダリサイト2において、ホストインターフェースデバイス12は、ストレージ装置10A,10Bとホストネットワーク15とを接続する。ストレージ装置10A,10Bには、ホストネットワーク15を介して1以上のホスト14が接続されている。
【0036】
ここで、ホストは、ホストシステムの略であり、典型的には、仮想的または物理的なサーバやメインフレームなどの計算機である。また、ホストインターフェースデバイス12は、例えば、HBA(Host Bus Adapter)またはNIC(Network Interface Card)である。また、ホストネットワーク15は、例えば、FC(Fibre Channel)やiSCSI(Internet Small Computer System Interface)である。
【0037】
レプリケーションインタフェースデバイス16は、ストレージ装置10A,10Bとレプリケーションネットワーク32とを接続する。これにより、ストレージ装置10Aとストレージ装置10Bとは、レプリケーションネットワーク32を介して互いに接続される。レプリケーションインタフェースデバイス16は、例えば、HBAまたはNICである。
【0038】
マネージメントインターフェースデバイス17は、ストレージ装置10A,10Bと管理ネットワーク19とを接続する。これにより、ストレージ装置10Aおよびストレージ装置10Bに対して、管理ネットワーク19を介して管理システム18A,18Bが接続される。マネージメントインターフェースデバイス17は、例えば、NICである。また、管理ネットワーク19は、例えば、Ethernet(登録商標)である。
【0039】
ストレージ装置10A,10Bは、典型的には、ハードウエアによって実現される物理的な装置であるが、前述したとおり、同等の機能をソフトウエア的に実現したSDSであってもよい。また、SDSが実行されるプラットフォームは、仮想的または物理的なサーバなどの計算機であってもよい。
【0040】
ストレージ装置10A,10Bにおいて、ホスト14は、ホストネットワーク15を介して、ストレージ装置10A,10Bの論理的な記憶ボリュームLDEV13A-1~13A-n,13B-1~13B-nにアクセスする。
【0041】
また、ストレージ装置10A,10Bの制御プログラム11は、例えば、ストレージ装置に搭載された中央演算処理装置(CPU)で実行されるプログラムとして実装されてもよいし、ストレージ装置10A,10BがSDSであれば、SDSが実行されるプラットフォームの計算資源で実行されるプログラムとして実装されてもよい。
【0042】
制御プログラム11は、例えば、I/O制御プログラム111、構成制御プログラム112、コピー・レプリケーション制御プログラム113、スナップショット制御プログラム114、バックアップタスク制御プログラム115、および、データ形式変換プログラム116などを含んでいる。これらのプログラムは、ストレージ装置10A,10B内の管理情報117を用いて制御される。
【0043】
この制御プログラム11において、I/O制御プログラム111は、ホスト14からの要求に応じてストレージ装置10A,10Bに格納されたデータの入出力を制御するプログラムである。構成制御プログラム112は、管理システム18A,18Bの要求に応じてストレージ装置10A,10Bの構成や状態を制御するプログラムである。コピー・レプリケーション制御プログラム113は、ある論理ボリュームのデータコピーの制御(レプリケーション)を行うプログラムである。
【0044】
スナップショット制御プログラム114は、ある論理ボリュームの格納データ形式を、例えばファイルシステム上の単一ファイルに変換したり、ある論理ボリュームのある時点でのデータ静止点を保持するスナップショットを作成したり、スナップショットからデータ復元を行ったりするプログラムである。バックアップタスク制御プログラム115は、論理ボリュームの内容を、スナップショットなどを用いて計画的にバックアップするタスクを制御するプログラムである。データ形式変換プログラム116は、データをオブジェク単位で取り扱うオブジェクトストレージのオブジェクトへ変換するといったデータ格納形式の相互変換を行うプログラムである。
【0045】
管理システム18A,18Bは、ストレージ装置10A,10Bの構成や状態を管理するための管理機能を有する。そして、管理システム18A,18Bは、制御プログラム11に対してストレージ装置10A,10Bの構成を操作するための命令を送信したり、ストレージ装置10A,10Bからの応答を受信したりすることで、ストレージ装置10A,10Bの構成や状態の管理を行う。
【0046】
本実施形態に係るストレージシステムは、ストレージ装置10A,10Bの他に、クラウド3などで稼働する統合管理装置20を備えている。統合管理装置20は、インターネット31を介してストレージ装置10A,10Bの管理システム18A,18Bと接続されている。
【0047】
統合管理装置20は、ストレージ管理者4が管理するストレージ装置10A,10Bを統合的に監視・管理するための装置である。具体的には、統合管理装置20は、ストレージ管理者4の操作要求に応じて、各々のサイト(データセンタ)やクラウド3に接続されたストレージ装置10A,10Bの構成設定や状態を各々のストレージ装置10A,10Bの管理システム18A,18Bを介して収集・指示し、運用管理を行う機能を有する装置である。
【0048】
統合管理装置20は、自身の管理するストレージ装置10A,10Bの種類や設置されているロケーション情報、稼働情報やペア管理情報などの各種の管理情報をインベントリ情報21として管理している。
【0049】
統合管理装置20は、管理制御指示部22およびデータ転送経路計画部23を有している。管理制御指示部22は、バックアップ経路計画のための情報を収集する。データ転送経路計画部23は、データ転送経路計画のための情報を収集する。
【0050】
管理システム18A,18Bや統合管理装置20は、サーバやパーソナルコンピュータ上で実行されるソフトウエアとして実装されてよい。また、管理システム18A,18Bや統合管理装置20は、ストレージ装置10A,10B内や、ストレージ装置10A,10Bに設置されている同一のサイト内に設置されるサーバなどの計算機上で実行されてもよいし、クラウド3上に実装されてもよい。
【0051】
ここで、ストレージ装置10Aとストレージ装置10Bとが、各ストレージ装置に格納されたデータを別のストレージ装置に複製する技術であるリモートレプリケーションを構成する場合を考える。
【0052】
このリモートレプリケーションでは、データの複製元があるストレージ装置10Aのあるサイトをプライマリサイト1とし、データの複製先があるストレージ装置10Bのあるサイトをセカンダリサイト2としている。プライマリサイト1については、正サイトまたはローカルサイトと呼ぶこともできるし、セカンダリサイト2については、副サイトまたはリモートサイトと呼ぶこともできる。
【0053】
また、プライマリサイト1にあるデータの複製元のLDEV13A-1~13A-nのことをプライマリボリュームPVOL300と呼び、セカンダリサイト2にあるデータの複製先のLDEV13B-1~13B-nのことをセカンダリボリュームSVOL301と呼ぶ。さらに、このPVOL300とSVOL301との関係のことをペアと呼ぶ。
【0054】
例えば、LDEV13A-2とLDEV13B-2とがペアの関係にある場合、ストレージ装置10Aのコピー・レプリケーション制御プログラム113は、LDEV13A-2にホスト14から格納されたデータを、レプリケーションネットワーク32を介してストレージ装置10B-2へ送信する。そして、ストレージ装置10Bのコピー・レプリケーション制御プログラム113は、LDEV13A-2とペア関係にあるLDEV13B-2にデータを格納する。
【0055】
このようにして、LDEV13A-2のデータがLDEV13B-2に複製されることにより、プライマリサイト1とセカンダリサイト2との間でリモートレプリケーションが実現される。
【0056】
(管理情報の構成例)
図2は、本発明の実施形態に係るストレージ装置10A,10Bの管理情報117の構成例を示す図である。
【0057】
管理情報117は、ストレージ装置10A,10B内の制御プログラム11A,11Bが利用する複数の管理テーブルで構成される。複数の管理テーブルは、例えば、LDEV管理テーブル1171、リモートストレージ管理テーブル1172、レプリケーション管理テーブル1173、バックアップデータ管理テーブル1174、および、経路管理テーブル1175などのテーブルである。
【0058】
LDEV管理テーブル1171は、ストレージ装置10A,10B内の論理ボリュームLDEV13A-1~13A-n,13B-1~13B-nに関する情報を保持する。リモートストレージ管理テーブル1172は、ストレージ装置10Aと接続する他のストレージ装置10Bの情報を管理する。レプリケーション管理テーブル1173は、LDEV13A-1~13A-n,13B-1~13B-nのレプリケーション関係の情報を管理する。バックアップデータ管理テーブル1174は、LDEV13A-1~13A-n,13B-1~13B-nのバックアップ情報を管理する。経路管理テーブル1175は、LDEV13のバックアップ経路情報を管理する。
【0059】
(統合管理装置におけるインベントリ情報の構成例)
図3は、本発明の実施形態に係る統合管理装置20におけるインベントリ情報21の構成例を示す図である。
【0060】
インベントリ情報21は、統合管理装置20が利用する複数の管理テーブルで構成される。複数の管理テーブルは、例えば、ストレージ装置管理テーブル211およびストレージ装置稼働情報テーブル212などのテーブルである。
【0061】
ストレージ装置管理テーブル211は、管理・監視対象のストレージ装置10A,10Bの情報を保持する。ストレージ装置稼働情報テーブル212は、管理・監視対象のストレージ装置10A,10Bの稼働情報を保持する。
【0062】
(管理情報におけるLDEV管理テーブルの構成例)
図4は、本発明の実施形態に係るストレージ装置10A,10Bの管理情報117におけるLDEV管理テーブル1171の構成例を示す図である。
【0063】
LDEV管理テーブル1171は、ストレージ装置10A,10Bが管理する論理ボリュームLDEV13(13A-1~13A-n,13B-1~13B-n)毎にエントリ(レコード)を有する。各エントリが格納する情報は、LDEV番号501、LDEV容量502、VOL種別503、および、プール番号504である。
【0064】
LDEV番号501は、LDEV13の識別番号を表す。LDEV容量502は、当該エントリのLDEV13の容量を表す。VOL種別503は、当該エントリのLDEV13の種別を表し、例えば、RVOL、TPVOL、SSVOL、JNLVOLなどである。プール番号504は、当該エントリのLDEV13が関連付けられている容量プールの識別番号を表す。プール番号504が関連付けられている容量プール内の領域から当該LDEV13のデータ格納領域が割り当てられる。
【0065】
(管理情報におけるリモートストレージ管理テーブルの構成例)
図5は、本発明の実施形態に係るストレージ装置10A,10Bの管理情報117におけるリモートストレージ管理テーブル1172の構成例を示す図である。
【0066】
リモートストレージ管理テーブル1172は、ストレージ装置10A,10B間でリモートレプリケーションやクラウドへのバックアップを構成する場合に、宛先となるストレージ装置10A,10Bの関係情報を管理するテーブルである。
【0067】
リモートストレージ管理テーブル1172は、宛先の装置ごとにエントリ(レコード)を有する。各エントリが格納する情報は、宛先ID601、利用可能602、ペアストレージID603、ストレージ種別604、ストレージ機種605、ロケーション情報606、接続ポート607、接続プロトコル608、および、アドレス609といった情報である。
【0068】
宛先ID601は、ストレージ装置10A,10Bがリモートレプリケーションやバックアップの宛先として管理する識別番号である。利用可能602は、前述の宛先として利用可能か否かを識別するフラグであり、例えば、利用可能であれば「可」、利用不可能であれば「不」などである。ペアストレージID603は、宛先関係となるストレージ装置10A,10Bを識別する識別番号である。
【0069】
ストレージ種別604は、宛先関係となるストレージ装置10A,10Bの種別を識別する情報であり、例えば、一般的なブロックストレージであれば「Block」、ネットワークアタッチストレージであれば「NAS」、SDS型のブロックストレージであれば「SDS-Block」、オブジェクトストレージであれば「Object」である。
【0070】
ストレージ機種605は、宛先関係となるストレージ装置10A,10Bの機種を識別する情報である。ロケーション情報606は、宛先関係となるストレージ装置10A,10Bが設置されているデータセンタ(サイト)やクラウドなどのロケーションを識別する情報である。接続ポート607は、宛先関係となるストレージ装置10A,10Bがどの接続インターフェースと接続されているかを示す情報である。
【0071】
接続プロトコル608は、宛先関係となるストレージ装置10A,10Bとの通信で用いるプロトコル情報であり、例えば、Fibre Channelプロトコルであれば「FC」、iSCSIプロトコルであれば「iSCSI」、HTTPを用いたオブジェクトストレージ用プロトコルであれば「S3」などである。アドレス609は、宛先関係となるストレージ装置10A,10Bへアクセスするためのアドレス情報である。
【0072】
(管理情報におけるレプリケーション管理テーブルの構成例)
図6は、本発明の実施形態に係るストレージ装置10A,10Bの管理情報117におけるレプリケーション管理テーブル1173の構成例を示す図である。
【0073】
レプリケーション管理テーブル1173は、異なるストレージ装置10A,10B間で構成したリモートレプリケーションや、単一のストレージ装置10A/10B内で構成したローカルレプリケーションを管理するテーブルである。
【0074】
レプリケーション管理テーブル1173は、レプリケーションのLDEV13A,13Bのペア毎にエントリ(レコード)を有する。各エントリが格納する情報は、レプリケーション番号701、レプリケーション種別702、前述の宛先ID601、PVOL番号703、SVOL番号704、同期方式705、および、ペア状態706といった情報である。
【0075】
レプリケーション番号701は、レプリケーションを識別する識別番号である。レプリケーション種別702は、当該レプリケーションの種別を表すものである。例えば、異なるストレージ装置10A,10B間で構成したリモートレプリケーションであれば「Remote」であり、単一のストレージ装置10A/10B内で構成したローカルレプリケーションであれば「Local」である。
【0076】
宛先ID601は、当該レプリケーションで用いる宛先を識別するIDである。PVOL番号703は、レプリケーションのペア関係となるPVOL300のLDEV13A-1~13A-nの番号である。SVOL番号704は、レプリケーションのペア関係となるSVOL301のLDEV13B-1~13B-nの番号である。
【0077】
同期方式705は、レプリケーションのPVOL300の格納データとSVOL301の格納データとを同期させる方式であり、例えば、PVOL300の更新に対してSVOL301を非同期的に同期する場合は「ASYNC」であり、PVOL300の更新に対してSVOL301を同期的に同期する場合は「SYNC」である。
【0078】
ペア状態706は、レプリケーションのPVOL300とSVOL301との同期状態を表しており、例えば、PVOL300とSVOL301とが同期状態にあれば「PAIR」であり、PVOL300とSVOL301とが非同期状態にあれば「PSUS」である。
【0079】
(管理情報におけるバックアップデータ管理テーブルの構成例)
図7は、本発明の実施形態に係るストレージ装置10A,10Bの管理情報117におけるバックアップデータ管理テーブル1174の構成例を示す図である。
【0080】
バックアップデータ管理テーブル1174は、LDEV番号501のリスト801と、前述のLDEV番号501毎のスナップショットデータを管理するバックアップデータ管理サブテーブル802とを有する。
【0081】
バックアップデータ管理サブテーブル802は、対象のLDEV13におけるバックアップの管理情報をタイムスタンプ803毎にエントリを有する。バックアップ種別804は、バックアップ方法を示す種別である。例えば、当該LDEV13の格納データを別のLDEV13にフルコピーで格納した場合は「フルコピー」であり、スナップショットとしてSSVOLに差分データのみを格納した場合は「スナップショット」であり、オブジェクトストレージにオブジェクトとして格納した場合は「オブジェクト」である。
【0082】
宛先ID601は、バックアップ先としてストレージ装置10A/10Bを識別するIDである。LDEV番号501は、バックアップ先のストレージ装置10A/10Bの番号である。バケットID805は、バックアップ先がオブジェクトストレージの場合のバックアップ先のバケットを識別するIDである。
【0083】
(管理情報における経路管理テーブルの構成例)
図8は、本発明の実施形態に係るストレージ装置10A,10Bの管理情報117における経路管理テーブル1175の構成例を示す図である。
【0084】
経路管理テーブル1175は、ストレージ装置10A,10Bがリモートバックアップやリモートレプリケーションを行う場合に、宛先ID601で指定されたストレージ装置10A/10Bへのアクセスに利用できる経路を管理するテーブルである。
【0085】
経路管理テーブル1175は、宛先ID601毎にエントリ(レコード)を持ち、1つの宛先ID601に対して1以上の経路情報を保持する。経路ID901は、宛先ID601の示すストレージ装置10A/10Bまでの経路情報を識別するための識別IDである。利用可能602は、当該経路が利用可能か否かを示すフラグである。
【0086】
公称データ転送速度902は、当該経路の理論的なデータ転送速度値である。実績データ転送速度903は、当該経路を使用した過去の実績から求められる実績のデータ転送速度値である。公称データ転送速度902に対して実績データ転送速度903の達成度が所定の閾値以下であれば、当該転送経路は転送経路のサービスレベルが低いことを示す。また、実績データ転送速度903は、当該経路利用時に随時更新することで、実績的なデータ転送速度性能値を得る。データ転送コスト904は、当該経路を用いてデータ転送を行う際のコスト単価である。
【0087】
(管理情報におけるストレージ装置管理テーブルの構成例)
図9は、本発明の実施形態に係るストレージ装置10A,10Bの管理情報117におけるストレージ装置管理テーブル211の構成例を示す図である。
【0088】
ストレージ装置管理テーブル211は、統合管理装置20のインベントリ情報21が管理する情報である。すなわち、ストレージ装置管理テーブル211は、統合管理装置20の監視・管理対象であるストレージ装置10A,10Bの情報を管理する。
【0089】
ストレージ管理者4は、当該テーブルに管理対象のストレージ装置10A,10Bを登録することで、統合管理装置20により一元的に異なる拠点に設置されている複数のストレージ装置10A,10Bを監視・管理することが可能となる。
【0090】
ストレージ装置管理テーブル211は、ストレージ装置10A,10B毎にエントリ(レコード)を持つ。ストレージID1001は、監視対象のストレージ装置10A,10Bを識別するIDである。ストレージ種別604は、監視対象のストレージ装置10A,10Bの種別を識別する情報である。例えば、一般的なブロックストレージであれば「Block」であり、ネットワークアタッチストレージであれば「NAS」であり、SDS型のブロックストレージであれば「SDS-Block」であり、オブジェクトストレージであれば「Object」である。
【0091】
ストレージ機種605は、監視対象のストレージ装置10A,10Bの機種を識別する情報である。ロケーション情報606は、監視対象のストレージ装置10A,10Bが設置されているデータセンタ(サイト)やクラウドなどのロケーションを識別する情報である。管理システムアドレス1002は、管理システム18A,18Bのアドレスを示す情報である。
【0092】
[クラウド上のストレージサービスにデータバックアップを行う例]
図10は、クラウドで提供されるオブジェクトストレージへのデータバックアップの例を模式的に示す図である。図10では、ストレージシステムRVOLにおいて、その格納データをクラウドベンダが運営するクラウド3A(パブリッククラウド)にあるオブジェクトストレージ200へバックアップする様子を示している。
【0093】
オブジェクトストレージ200は、概して、格納データをオブジェクト201という単位で管理することを特徴とする記憶装置やサービスであり、格納データをオブジェクト201という単位で識別するIDおよびメタデータを付与して管理する。また、オブジェクトストレージ200では、複数のオブジェクト201をバケット202(202A,202B)という単位で管理する。
【0094】
クラウドベンダが提供するオブジェクトストレージ200では、一般的に、格納データの容量制限がないことから、大容量のデータを安価に格納することに適しており、データのバックアップやアーカイブ用途でも注目されている。
【0095】
ストレージ管理者4などが統合管理装置20を操作することで、統合管理装置20からバックアップ指示205がストレージ装置10Aに対して発せられる。このバックアップ指示205を受けて、ストレージ装置10Aの制御プログラム11は、LDEV13をオブジェクトストレージ200のバケット202Aにバックアップする処理を開始する。
【0096】
具体的には、ストレージ装置10Aの制御プログラム11は、まず、バックアップ対象のLDEV13のバックアップ時点での格納データを保持したスナップショットをSSVOL206として作成し、このSSVOL206を対象にオブジェクトストレージ200のバケット202Aに対してバックアップ処理を開始する。
【0097】
また、ストレージ装置10AのLDEV13やSSVOL206など、論理ボリュームに格納されたデータをオブジェクトストレージ200にバックアップするには、格納データを1以上のオブジェクト201に分割して格納するデータ形式の変更処理が必要である。このデータ変換処理は、処理経路203を通して行われる。
【0098】
この処理経路203を通してのデータ変換処理は、例えば、制御プログラム11のデータ形式変換プログラム116によって行われ、SSVOL206の格納データがオブジェクト201に変換される。また、別の実装方式として、データ形式変換プログラム116は、ストレージ装置10Aに接続されたホスト14上で実行されることで、SSVOL206の格納データがオブジェクト201に変換される方式も考えられる。さらに、近年では、NICなどのネットワークインターフェース上に搭載されたDPU(Data Processing Unit)などを用いてデータ形式変換プログラム116を実行することにより、ネットワーク上でデータ変換処理を行う実装方式も考えられる。
【0099】
1以上のオブジェクト201に変換されたSSVOL206の格納データは、制御プログラム11のコピー・レプリケーション制御プログラム113によって転送され、オブジェクトストレージ200の格納先のバケット202(本例では、202A)へ格納する。この転送処理については、前述したDPUによってコピー・レプリケーション制御プログラム113を実行して行われてもよい。
【0100】
ストレージ装置10Aとクラウド3Aとの間は、インターネット31により接続されているため、転送経路204Aのようにインターネット31を用いたデータ転送を行う必要がある。また、オブジェクトストレージ200では、HTTPアクセスを用いたREST(Representational State Transfer)などの操作API(Application Programing Interface)が提供されていることが一般的なため、オブジェクト201のデータの転送にはHTTPを用いたアクセスプロトコルが用いられる。
【0101】
ストレージ装置10Aとクラウド3Aとの間のデータ転送は、利用するインターネット31の状況によっては混雑により利用できる帯域が想定外に少なかったり、あるいは、バックアップ中に通信レスポンスが悪化したりすることがあり、前述のバックアップ処理にかかる時間に影響が出ることが想定される。特に、エンタープライズ用途の大容量データのバックアップを行うようなユースケースでは、あらかじめ、予定されたバックアップ処理時間内にバックアップにかかる処理を終える必要があるため、運用に支障が出ることが想定される。
【0102】
続いて、リモートレプリケーションを用いたクラウドサービスへのデータバックアップの具体的な実施例について説明する。
【0103】
[実施例1]
図11は、本発明の実施形態における実施例1に係るリモートレプリケーションを用いたクラウドサービスへのデータバックアップについて模式的に示す図である。
【0104】
図11では、プライマリサイト1に設置されたストレージ装置10Aと、クラウド3Bに設置されたストレージ装置10Bとが、専用線を用いたレプリケーションネットワーク32を介して接続されている。
【0105】
ここで、例えば、ストレージ装置10Bは、クラウド3B上で稼働するSDSとして運用されており、ストレージ装置10Aと同等のストレージ機能を有している。
【0106】
また、ストレージ装置10AのPVOL300とストレージ装置10BのSVOL301との間でリモートレプリケーション303を構成している。ホスト14からPVOL300に更新されたデータは、ペア関係にあるSVOL301にレプリケーションネットワーク32を介して、同期的または非同期的にコピーされることによってレプリケーションが行われている。
【0107】
また、クラウド3Aとクラウド3Bとは、例えば同一のクラウド事業者により運営されている。このため、クラウド3Aとクラウド3Bとの間は、クラウド間ネットワークを介して同一のネットワークに接続されている。
【0108】
クラウド間ネットワークは、一般的に、地理的に同一または異なるクラウド間を接続するためのネットワークである。そして、データ通信に利用できるネットワーク帯域や通信レイテンシは、ネットワークのQoS(Quality of Service)制御などの技術により、サービスレベル補償(SLA:Service Level Assuerance)がなされている。
【0109】
ここで、ホスト14が接続されているストレージ装置10AのPVOL300のデータを、クラウドベンダが運営するパブリッククラウド(クラウド3A)にあるオブジェクトストレージ200のバケット202Aへバックアップする場合を考える。
【0110】
図10の場合と同様に、ストレージ管理者4などが統合管理装置20を操作することにより、統合管理装置20は、バケット202AへのPVOL300のバックアップ処理を開始する。
【0111】
このとき、統合管理装置20は、インベントリ情報21からストレージ装置10Aが設置されているプライマリサイト1の情報、および、ストレージ装置10Aとペア関係にあるストレージ装置10Bが稼働しているクラウド3Bの情報を参照する。
【0112】
次に、統合管理装置20は、PVOL300とリモートレプリケーション303のペア関係にあるSVOL301の存在を特定する。
【0113】
次に、統合管理装置20は、PVOL300とSVOL301とのペア状況を判断する。この判断は、例えば、PVOL300とSVOL301とがペアの関係にあったとしても、PVOL300への更新データは非同期的または同期的にSVOL301へ反映されるため、タイミングによってはデータが同期されているとは限らないためである。そのため、SVOL301にPVOL300のデータが完全に同期されているか否かを判断する。
【0114】
ここで、SVOL301にバックアップ対象時点のPVOL300のデータが反映されており、同期されていれば、SVOL301をバックアップ元として利用しても差し支えないことを判断する。つまり、統合管理装置20は、バックアップ指示205をストレージ装置10Bに対して行い、SVOL301をバケット202Aにバックアップさせることでも、結果的に、PVOL300をバケット202Aにバックアップした場合と同等の結果を得ることができる。
【0115】
また、リモートレプリケーションにおいて、ある時点までのPVOL300の更新データとSVOL301の格納データとが同期した時点で、PVOL300とSVOL301とが同期したスナップショットを取得する周知の技術(例えば、特許文献2参照)を用いて、PVOL300のスナップショットSSVOL206aとSVOL301のスナップショットSSVOL206bを取得する。
【0116】
次に、統合管理装置20は、プライマリサイト1またはクラウド3Bのうち、バックアップ先であるクラウド3Aまでのデータ転送手段として、ネットワーク状況や経路選択ポリシーに基づいたデータ転送コスト904(図8参照)が低いものを判断する。例えば、図10のデータ転送手段としては、転送経路204Aと転送経路204Bとの2つの選択肢がある。転送経路204Aは、SSVOL206aをバックアップ元とし、インターネット31を経由してクラウド3Aにあるバケット202Aにアクセスする。これに対し、転送経路204Bは、SSVOL206bをバックアップ元とし、クラウド3Aとクラウド3Bとの間を接続するクラウド間ネットワーク302を経由してクラウド3Aのバケット202Aへアクセスする。
【0117】
ここで、ネットワーク状況とは、具体的には、転送経路(通信経路)において、現時点で実際に利用可能なネットワーク帯域および通信レイテンシの少なくとも一方、好ましくは両方である。また、データ転送コスト904とは、具体的には、ネットワーク状況とバックアップデータの量に応じたデータ転送時間およびネットワーク利用料の少なくとも一方、好ましくは両方である。経路選択ポリシーは、具体的には、バックアップ時間を優先するか、通信コスト低減を優先するか、または、その両方を優先するかなどである。
【0118】
具体的には、バックアップ時間を優先する場合は、転送経路204Aは、インターネット31を経由するため、利用できるデータ帯域が高々10Gbpsだとする。転送経路204Bは、クラウド間ネットワーク302を経由するため、利用できるデータ帯域が100GbpsでかつQoSによる帯域補償があるとした場合、統合管理装置20は、転送経路204Bを選択する方がバックアップ処理に要する時間を短縮できると判断する。そして、統合管理装置20は、ストレージ装置10Bに対してバックアップ指示205を行うことで、バックアップ処理に要する時間を短縮できる。
【0119】
また、統合管理装置20は、例えば、クラウド間ネットワーク302の利用料金が転送データ量に応じて変化する場合は、転送経路204Aを選択する方がバックアップ処理に要する金銭的コストを低減できると判断する。そして、統合管理装置20は、ストレージ装置10Aに対して転送経路204Aでのバックアップ処理のバックアップ指示205を行う。これにより、バックアップ処理に要する金銭的コストを削減できる。これは、例えば、クラウド3Aとクラウド3Bとが違うクラウドベンダによる提供で、クラウド間ネットワーク302はあるが、利用料が高額になる場合は、転送経路204Bよりも転送経路204Aを用いた方が望ましい場合もあると考えられる。
【0120】
また、転送経路204Aと転送経路204Bとを組み合わせるという場合があってもよい。具体的には、バックアップの対象が複数のLDEV13であり、処理対象のLDEV13によって転送経路204Aと転送経路204Bとを使い分けるケースも考えられる。
【0121】
以上のように、実施例1に係るリモートレプリケーションを用いたクラウドサービスへのデータバックアップでは、統合管理装置20による制御の下に、リモートレプリケーション303のペア関係を用いてクラウド3Aへのデータバックアップが行われる。これにより、より安定かつより高速なバックアップ処理を実現することができる。
【0122】
[実施例2]
図12は、本発明の実施形態における実施例2に係るリモートレプリケーションを用いたクラウドサービスへのデータバックアップについて模式的に示す図である。
【0123】
前述の実施例1では、統合管理装置20がバックアップに利用する転送経路204A/204Bを決定し、バックアップ指示205をストレージ装置10A/10Bに対して行っている。これに対して、実施例2は、同様の転送経路204A/204Bの決定をストレージ装置10Aが主体となって行う例である。
【0124】
実施例2において、ストレージ装置10Aは、統合管理装置20からバックアップ指示205aを受信する。このバックアップ指示205aを受けて、ストレージ装置10Aの制御プログラム11Aは、管理情報117から自身のストレージ装置10Aとペア関係にあるストレージ装置10Bを特定するとともに、バックアップ対象のPVOL300とペア関係にあるSVOL301を特定する。
【0125】
次に、制御プログラム11Aは、PVOL300とSVOL301とのペア状況を確認し、SVOL301にPVOL300のデータが完全に同期されているか否かを判断し、次いで、自身のストレージ装置10A、および、ペア関係にあるストレージ装置10Bのどちらがクラウド3Aに対する通信において通信コストが低いかを判断する。
【0126】
この通信コストの重みづけについては、事前に定性的に決定しておいてもよいし、あるいは、ストレージ装置10Aおよびストレージ装置10Bにおいて、実際にクラウド3Aと通信を行い、その測定結果に基づいた重み付けであってもよい。
【0127】
次に、ストレージ装置10Aの制御プログラム11Aは、前述の通信コストに基づいて、転送経路204Aまたは転送経路204Bについて、通信コストが低い方の経路を選択する。ここでは、転送経路204Bを選択するものと仮定する。
【0128】
次に、ストレージ装置10Aの制御プログラム11Aは、ペア関係にあるストレージ装置10Bに対して、バックアップ指示205bを指示する。このとき、バックアップ指示205bは、リモートレプリケーション303を構成している通信経路上でレプリケーションを制御するコマンドの一部として送信してもよい。また、ストレージ装置10Aの制御プログラム11Aとストレージ装置10Bの制御プログラム11Bとが、インターネット31またはレプリケーションネットワーク32を介してコマンドを送受信するようにしてもよい。
【0129】
バックアップ指示205bを受信したストレージ装置10Bの制御プログラム11Bは、PVOL300とペア関係にあるSVOL301のスナップショットを取得し、SSVOL206bを作成する。また、バケット202Aに格納データをバックアップするため、SSVOL206bの格納データについてデータ変換を行い、オブジェクト201を生成する。このデータ変換処理は、処理経路203を通して行われる。
【0130】
次に、ストレージ装置10Bの制御プログラム11Bは、バックアップ指示205bに従って、転送経路204Bを利用し、バケット202Aに対してオブジェクト201を送信することによりで、オブジェクトストレージへのバックアップを完了し、次いで、バックアップ指示205bの完了をストレージ装置10Aの制御プログラム11Aに対して通知する。
【0131】
次に、ストレージ装置10Aの制御プログラム11Aは、ストレージ装置10Bの制御プログラム11Bからの通知を受けて、バックアップ指示205aが完了したことを統合管理装置20に対して通知する。
【0132】
以上のように、実施例2に係るリモートレプリケーションを用いたクラウドサービスへのデータバックアップでは、ストレージ装置10Aによる制御の下に、リモートレプリケーション303のペア関係を用いてクラウド3Aへのデータバックアップが行われる。これにより、より安定かつより高速なバックアップ処理を実現することができる。
【0133】
[オブジェクトストレージへのデータバックアップ処理フロー]
次に、本発明の実施形態に係るストレージシステムにおけるデータバックアップ処理方法について説明する。本実施形態に係るデータバックアップ処理方法は、統合管理装置20による制御の下に実行される、オブジェクトストレージへのデータバックアップ処理方法である。図13図14は、本発明の実施形態に係るデータバックアップ処理方法の処理フローの一例を示すフローチャート(その1、その2)である。
【0134】
以下では、統合管理装置20による制御の下に実行される、前述の実施例1に係るリモートレプリケーションを用いたクラウドサービスへのデータバックアップの場合のシステム構成における処理フローについて説明する。
【0135】
まず、統合管理装置20は、ストレージ装置10AのPVOL300を、オブジェクトストレージ200のバケット202Aへバックアップするためのバックアップ指示をストレージ管理者4から受信する(ステップS100)。
【0136】
バックアップ指示を受信すると、統合管理装置20は、バックアップ指示対象のストレージ装置10Aに対して、管理制御指示部22によりバックアップ経路計画のための情報を収集し、リモートストレージ管理テーブル1172を参照してバックアップ先のバケット202Aが属するクラウド3Aが宛先として登録されているかを確認する(ステップS101)。
【0137】
次に、統合管理装置20は、リモートストレージ管理テーブル1172にクラウド3Aが宛先として登録されているか否かを判断する(ステップS102)。そして、登録されていると判断した場合(S102のYES)、統合管理装置20は、ストレージ装置10Aの経路管理テーブル1175を参照し、クラウド3Aが宛先の宛先ID601を持つ経路情報A(経路情報は複数の経路IDを持つものとする)を取得し(ステップS103)、しかる後、ステップS104へ進む。
【0138】
ステップS102において、登録されていないと判断した場合(S102のNO)、または、ステップS103の処理した後、統合管理装置20は、ストレージ装置10Aのレプリケーション管理テーブル1173を参照し、バックアップ先のLDEV13をPVOL300とするペア状態のリモートレプリケーションがあるかを確認する(ステップS104)。具体的には、バックアップ先のLDEV13をPVOL300とするレプリケーション種別702が『Remote』、かつ、ペア状態706が『PAIR』のレプリケーション番号701を持つエントリがあるかをチェックする。
【0139】
次に、統合管理装置20は、レプリケーション種別702が『Remote』、かつ、ペア状態706が『PAIR』のレプリケーション番号701を持つエントリがあるか否かを判断する(ステップS105)。そして、当該エントリがあると判断した場合(S105のYES)、統合管理装置20は、ステップS105で抽出したエントリから、ストレージ装置10Aのリモートストレージ管理テーブル1172を参照することで、リモートレプリケーション303を構築しているストレージ装置10Bを特定する(ステップS106)。
【0140】
次に、統合管理装置20は、ストレージ装置10Bのリモートストレージ管理テーブル1172を参照し、クラウド3Aの宛先登録を確認し(ステップS107)、次いで、ストレージ装置10Bのリモートストレージ管理テーブル1172にクラウド3Aの宛先登録があるか否かを判断する(ステップS108)。
【0141】
ステップS108において、ストレージ装置10Bのリモートストレージ管理テーブル1172にクラウド3Aの宛先登録があると判断した場合(S108のYES)、統合管理装置20は、ストレージ装置10Bの経路管理テーブル1175を参照し、クラウド3Aが宛先の宛先ID601を持つ経路情報Bを取得する(ステップS109)。
【0142】
次に、統合管理装置20は、経路情報Aおよび経路情報Bに含まれる経路IDのうち、実績のデータ転送速度が最も高速かつ転送コストが最も低い経路IDを選択し(ステップS110)、次いで、選択した経路IDが経路情報Bであるか否かを判断する(ステップS111)。
【0143】
選択した経路IDが経路情報Bであると判断した場合(S111のYES)、統合管理装置20は、ストレージ装置10Bにバックアップ指示205を与える(ステップS112)。このバックアップ指示205を受けて、ストレージ装置10Bは、SVOL301をバックアップ元ボリュームとして選択し、ペア関係にあるPVOL300の最新データが反映された契機でSVOL301のスナップショット取得を、経路207を通して行ってSSVOL206bを作成する。
【0144】
次に、ストレージ装置10Bは、SSVOL206bをバックアップ元ボリュームとして選択し、SSVOL206bのデータをデータ形式変換プログラム116によりデータ変換処理を行ってオブジェクト201に変換した上で、転送経路204Bを利用してバケット202Aへ転送し(ステップS113)、バックアップ処理を終了する。
【0145】
ステップS105において、レプリケーション種別702が『Remote』、かつ、ペア状態706が『PAIR』のレプリケーション番号701を持つエントリがないと判断した場合(S105のNO)、統合管理装置20は、経路情報Aが未取得であるか否かを判断する(ステップS114)。
【0146】
経路情報Aが未取得の場合(S114のYES)、バックアップ先のクラウド3Bに至る経路が定義されていないことになるため、統合管理装置20は、バックアップ先のクラウド3Bまでの経路なしとしてエラー処理を行い(ステップS115)、バックアップ処理を終了する。
【0147】
ステップS108でクラウド3Aの宛先登録がないと判断した場合(S108のNO)、ステップS111で選択された経路IDが経路情報Bでないと判断した場合(S111のNO)、あるいは、ステップS114で経路情報Aが取得と判断した場合(S114のNO)、ステップS116に進む。ステップS116において、統合管理装置20は、経路情報Aに含まれる経路IDのうち、実績のデータ転送速度が最も高速かつ転送コストが最も低い経路IDを選択する(ステップS116)。
【0148】
次に、統合管理装置20は、ストレージ装置10Aにバックアップ指示205を与える(ステップS117)。このバックアップ指示205を受けて、ストレージ装置10Aは、PVOL300をバックアップ元ボリュームとして選択し、PVOL300のスナップショット取得を、経路207を通して行ってSSVOL206aを作成する。
【0149】
次に、ストレージ装置10Aは、SSVOL206aをバックアップ元ボリュームとして選択し、SSVOL206aのデータをデータ形式変換プログラム116によりデータ変換処理を行ってオブジェクト201に変換した上で、転送経路204Aを利用してバケット202Aへ転送し(ステップS118)、バックアップ処理を終了する。
【0150】
上述した本発明の実施形態に係るデータバックアップ処理方法によれば、オンプレミスに設置されたストレージ装置の格納データを、パブリッククラウドが提供するストレージサービスへバックアップする処理を、インターネット回線を用いてバックアップを行う場合に比べて、より安定にかつより高速に実現することができる。
【0151】
<変形例>
なお、本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りその他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。例えば、上述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するためにシステムの構成を詳細かつ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、本実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0152】
1…プライマリサイト、2…セカンダリサイト、3(3A,3B)…クラウド、4…ストレージ管理者、10A,10B…ストレージ装置、11(11A,11B)…制御プログラム、12…ホストインターフェースデバイス、13(13A-1~103A-n,13B-1~103B-n)…記憶ボリュームLDEV、14…ホスト、15…ホストネットワーク、16…レプリケーションインタフェースデバイス、17…マネージメントインターフェースデバイス、18A、18B…管理システム、19…管理ネットワーク、20…統合管理装置、21…インベントリ情報、22…管理制御指示部、23…データ転送経路計画部、31…インターネット、32…レプリケーションネットワーク、111…I/O制御プログラム、112…構成制御プログラム、113…コピー・レプリケーション制御プログラム、114…スナップショット制御プログラム、115…バックアップタスク制御プログラム、116…データ形式変換プログラム、117…管理情報、200…オブジェクトストレージ、201…オブジェクト、202(202A,202B)…バケット、204A,204B…転送経路、205…バックアップ指示、206…SSVOL、300…PVOL、211…ストレージ装置管理テーブル、212…ストレージ装置稼働情報テーブル、301…SVOL、302…クラウド間ネットワーク、303…リモートレプリケーション、1171…LDEV管理テーブル、1172…リモートストレージ管理テーブル、1173…レプリケーション管理テーブル、1174…バックアップデータ管理テーブル、1175…経路管理テーブル
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