(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154634
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】スタック締結構造
(51)【国際特許分類】
H01M 8/248 20160101AFI20241024BHJP
H01M 8/2475 20160101ALI20241024BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20241024BHJP
【FI】
H01M8/248
H01M8/2475
H01M8/10 101
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068566
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】522195954
【氏名又は名称】株式会社水素パワー
(74)【代理人】
【識別番号】100108947
【弁理士】
【氏名又は名称】涌井 謙一
(74)【代理人】
【識別番号】100117086
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典弘
(74)【代理人】
【識別番号】100124383
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一永
(74)【代理人】
【識別番号】100173392
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 貴宏
(74)【代理人】
【識別番号】100189290
【弁理士】
【氏名又は名称】三井 直人
(72)【発明者】
【氏名】深田 直也
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA25
5H126AA28
5H126BB06
5H126FF08
5H126FF10
5H126JJ00
5H126JJ03
5H126JJ09
(57)【要約】
【課題】燃料電池スタックの組み立てに用いられるスタック締結構造であって、燃料電池スタックのセル積層体に対して適切な荷重を付与することができ、燃料電池スタックを構成するケースの小型化、軽量化、原価低減を可能にするスタック締結構造を提供する。
【解決手段】燃料電池スタックのケースに締結されて前記ケース内に格納されている前記燃料電池スタックの構成部品に対して所定の荷重を加えるスタック締結構造。前記ケースの外側から前記ケースに締結されて、前記構成部品に対して第一の押圧荷重を加える第一の荷重付与手段と、前記ケースの外側から前記ケースに締結されて、前記構成部品に対して前記第一の押圧荷重が加えられている方向から、前記第一の押圧荷重とは異なる第二の押圧荷重を前記構成部品に対して加える第二の荷重付与手段とを備えている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタックのケースに締結されて前記ケース内に格納されている前記燃料電池スタックの構成部品に対して所定の荷重を加えるスタック締結構造であって、
前記ケースの外側から前記ケースに締結されて、前記構成部品に対して第一の押圧荷重を加える第一の荷重付与手段と、
前記ケースの外側から前記ケースに締結されて、前記構成部品に対して前記第一の押圧荷重が加えられている方向から、前記第一の押圧荷重とは異なる第二の押圧荷重を前記構成部品に対して加える第二の荷重付与手段と
を備えているスタック締結構造。
【請求項2】
前記第二の荷重付与手段は、前記第一の荷重付与手段の外側から前記ケースに締結され、
前記構成部品に対する前記第二の押圧荷重は、前記第二の荷重付与手段から、直接、前記構成部品に対して加えられる請求項1記載のスタック締結構造。
【請求項3】
前記第二の荷重付与手段は、前記構成部品の方向に向かって伸びる押圧部材を備えており、
前記押圧部材は、前記第一の荷重付与手段が備えている貫通孔を介して前記構成部品の方向に向かって伸びる
請求項2記載のスタック締結構造。
【請求項4】
前記第一の押圧荷重は、前記構成部品に含まれるセル積層体を構成する各単位セルの間のシール構造に対して要求されるシール圧を発生させる荷重以上の大きさである請求項1記載のスタック締結構造。
【請求項5】
前記第二の荷重付与手段によって前記構成部品に加えられる前記第二の押圧荷重によって前記構成部品に含まれるセル積層体が圧縮されて変位する量であるセル圧縮量X2と、前記第一の荷重付与手段によって前記構成部品に加えられる前記第一の押圧荷重によって前記構成部品に含まれるセル積層体が圧縮されて変位する量であるセル圧縮量X1との間の差(X2-X1)が、前記ケース内に前記構成部品が収容されて前記燃料電池スタックが使用されている際の前記セル積層体の最大膨張量より大きい請求項1記載のスタック締結構造。
【請求項6】
前記第二の荷重付与手段による前記第二の押圧荷重は、前記第二の荷重付与手段が備えている弾性体によって発生されていて、当該弾性体のばね定数である弾性体ばね定数が所定値以下に設定されている請求項1記載のスタック締結構造。
【請求項7】
前記ばね定数の前記所定値は、前記構成部品に含まれるセル積層体のセル積層構造によるばね定数であるセル積層体ばね定数の平均値である請求項6記載のスタック締結構造。
【請求項8】
前記ばね定数の前記所定値は、標準のつり合い状態にセル積層体に作用する荷重とセル許容荷重の差分を、標準のつり合い状態からの熱膨張によるセル変位最大値で除算した値である請求項6記載のスタック締結構造。
【請求項9】
前記第二の荷重付与手段による前記第二の押圧荷重は、前記第二の荷重付与手段が備えている弾性体によって発生されていて、前記弾性体は皿ばねである請求項1記載のスタック締結構造。
【請求項10】
前記第二の荷重付与手段による前記第二の押圧荷重は、前記第二の荷重付与手段が備えている弾性体によって発生されていて、前記弾性体はコイルばねである請求項1記載のスタック締結構造。
【請求項11】
前記第二の荷重付与手段は前記構成部品の方向に向かって伸びる押圧部材を備えており、
前記押圧部材は、前記カバー部材が備えている貫通孔を介して前記構成部品の方向に向かって伸びる前記コイルばねによって構成されている
請求項10記載のスタック締結構造。
【請求項12】
前記第二の荷重付与手段を構成する板状の第二の荷重付与手段カバー部材と、前記構成部品に対して前記押圧部材を介して加える前記第二の押圧荷重を発生する弾性体と、前記第二の荷重付与手段カバー部材を前記ケースに締結する第二の荷重付与手段締結部材とが一体に組み合わされてなる第一の締結ユニットが前記ケースに締結される請求項3記載のスタック締結構造。
【請求項13】
前記第二の荷重付与手段を構成する板状の第二の荷重付与手段カバー部材と、複数の前記押圧部材と、前記構成部品に対して前記押圧部材を介して加える前記第二の押圧荷重を発生する弾性体と、前記第二の荷重付与手段カバー部材を前記ケースに締結する第二の荷重付与手段締結部材とが一体に組み合わされてなる第二の締結ユニットが前記ケースに締結される請求項3記載のスタック締結構造。
【請求項14】
前記第二の荷重付与手段を構成する板状の第二の荷重付与手段カバー部材と、複数の前記押圧部材と、前記構成部品に対して前記押圧部材を介して加える前記第二の押圧荷重を発生する弾性体と、前記第二の荷重付与手段カバー部材を前記ケースに締結する第二の荷重付与手段締結部材と、
複数の前記押圧部材がそれぞれ貫通する複数の前記貫通孔を備えている前記第一の荷重付与手段を構成する板状の第一の荷重付与手段カバー部材と
が一体に組み合わされてなる第三の締結ユニットが前記ケースに締結される請求項3記載のスタック締結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料電池スタックの組み立てに用いられるスタック締結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の動力源や、家庭用コージェネレーションシステムなどへの使用が考えられている燃料電池スタック(固体高分子形燃料電池)は、複数の単位セルを積層して直列に接続したセル積層体と、前記セル積層体の両側に配置された集電板とエンドプレートとを備えている構成になっている。
【0003】
単位セルは、それぞれ、高分子電解質膜とその両側に配置された一対の触媒電極(燃料極、空気極)とからなる膜電極接合体(membrane electrode assembly:MEA)の両側に一対のセパレータが配置されて構成されている。
【0004】
燃料電池スタックのセル積層体では、各単位セルの間及び、各単位セル内における接触抵抗の低減、また、反応ガスおよび水のシール性などを確保する目的などのため、所定の荷重がセル積層体に印加されるようになっている。
【0005】
燃料電池スタックの性能を発揮させる上ではある程度の大きさの荷重を印加する必要があるが、一方で、印加する荷重が大きすぎると、膜電極接合体(MEA)やシール部材などがダメージを受けて発電効率が低下するという不具合が生じるおそれがある。
【0006】
そこで、燃料電池スタックのセル積層体に対して適切な荷重を印加するとともに、積層されている複数の単位セル、集電板、エンドプレートなどからなる積層体の積層公差を吸収する構造が要求される。
【0007】
従来から、弾性体や、積層公差を吸収する機構を採用することで燃料電池スタックのセル積層体に対して所定の荷重を印加する提案が行われている。
【0008】
特許文献1には、セル積層体に過度の荷重を印加することなく、セル積層体と共に寸法が定まったケースに収容することが可能で、なおかつセル積層体に所望の荷重を印加することができるとするセル押圧アセンブリ、および前記セル押圧アセンブリを有する燃料電池スタックが提案されている。
【0009】
また、特許文献2には、燃料電池のスタックに対する圧縮荷重を維持する機械的システムであって、少なくとも一部が燃料電池スタックを構成するケースの外側に配備されている圧縮アセンブリを有する燃料電池スタック圧縮システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010-198861号公報
【特許文献2】特表2006-512730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この発明は、燃料電池スタックの組み立てに用いられるスタック締結構造であって、燃料電池スタックのセル積層体に対して適切な荷重を付与することができ、燃料電池スタックを構成するケースの小型化、軽量化、原価低減を可能にするスタック締結構造を提案することを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決する本発明は以下のように例示することができる。
[1]
燃料電池スタックのケースに締結されて前記ケース内に格納されている前記燃料電池スタックの構成部品に対して所定の荷重を加えるスタック締結構造であって、
前記ケースの外側から前記ケースに締結されて、前記構成部品に対して第一の押圧荷重を加える第一の荷重付与手段と、
前記ケースの外側から前記ケースに締結されて、前記構成部品に対して前記第一の押圧荷重が加えられている方向から、前記第一の押圧荷重とは異なる第二の押圧荷重を前記構成部品に対して加える第二の荷重付与手段と
を備えているスタック締結構造。
【0013】
[2]
前記第二の荷重付与手段は、前記第一の荷重付与手段の外側から前記ケースに締結され、
前記構成部品に対する前記第二の押圧荷重は、前記第二の荷重付与手段から、直接、前記構成部品に対して加えられる[1]のスタック締結構造。
【0014】
[3]
前記第二の荷重付与手段は、前記構成部品の方向に向かって伸びる押圧部材を備えており、
前記押圧部材は、前記第一の荷重付与手段が備えている貫通孔を介して前記構成部品の方向に向かって伸びる[2]のスタック締結構造。
【0015】
[4]
前記第一の押圧荷重は、前記構成部品に含まれるセル積層体を構成する各単位セルの間のシール構造に対して要求されるシール圧を発生させる荷重以上の大きさである[1]のスタック締結構造。
【0016】
[5]
前記第二の荷重付与手段によって前記構成部品に加えられる前記第二の押圧荷重によって前記構成部品に含まれるセル積層体が圧縮されて変位する量であるセル圧縮量X2と、前記第一の荷重付与手段によって前記構成部品に加えられる前記第一の押圧荷重によって前記構成部品に含まれるセル積層体が圧縮されて変位する量であるセル圧縮量X1との間の差(X2-X1)が、前記ケース内に前記構成部品が収容されて前記燃料電池スタックが使用されている際の前記セル積層体の最大膨張量より大きい[1]のスタック締結構造。
【0017】
[6]
前記第二の荷重付与手段による前記第二の押圧荷重は、前記第二の荷重付与手段が備えている弾性体によって発生されていて、当該弾性体のばね定数である弾性体ばね定数が所定値以下に設定されている[1]のスタック締結構造。
【0018】
[7]
前記ばね定数の前記所定値は、前記構成部品に含まれるセル積層体のセル積層構造によるばね定数であるセル積層体ばね定数の平均値である[6]のスタック締結構造。
【0019】
[8]
前記ばね定数の前記所定値は、標準のつり合い状態にセル積層体に作用する荷重とセル許容荷重の差分を、標準のつり合い状態からの熱膨張によるセル変位最大値で除算した値である[6]のスタック締結構造。
【0020】
[9]
前記第二の荷重付与手段による前記第二の押圧荷重は、前記第二の荷重付与手段が備えている弾性体によって発生されていて、前記弾性体は皿ばねである[1]のスタック締結構造。
【0021】
[10]
前記第二の荷重付与手段による前記第二の押圧荷重は、前記第二の荷重付与手段が備えている弾性体によって発生されていて、前記弾性体はコイルばねである[1]のスタック締結構造。
【0022】
[11]
前記第二の荷重付与手段は前記構成部品の方向に向かって伸びる押圧部材を備えており、
前記押圧部材は、前記カバー部材が備えている貫通孔を介して前記構成部品の方向に向かって伸びる前記コイルばねによって構成されている[10]のスタック締結構造。
【0023】
[12]
前記第二の荷重付与手段を構成する板状の第二の荷重付与手段カバー部材と、前記構成部品に対して前記押圧部材を介して加える前記第二の押圧荷重を発生する弾性体と、前記第二の荷重付与手段カバー部材を前記ケースに締結する第二の荷重付与手段締結部材とが一体に組み合わされてなる第一の締結ユニットが前記ケースに締結される[3]のスタック締結構造。
【0024】
[13]
前記第二の荷重付与手段を構成する板状の第二の荷重付与手段カバー部材と、複数の前記押圧部材と、前記構成部品に対して前記押圧部材を介して加える前記第二の押圧荷重を発生する弾性体と、前記第二の荷重付与手段カバー部材を前記ケースに締結する第二の荷重付与手段締結部材とが一体に組み合わされてなる第二の締結ユニットが前記ケースに締結される[3]のスタック締結構造。
【0025】
[14]
前記第二の荷重付与手段を構成する板状の第二の荷重付与手段カバー部材と、複数の前記押圧部材と、前記構成部品に対して前記押圧部材を介して加える前記第二の押圧荷重を発生する弾性体と、前記第二の荷重付与手段カバー部材を前記ケースに締結する第二の荷重付与手段締結部材と、
複数の前記押圧部材がそれぞれ貫通する複数の前記貫通孔を備えている前記第一の荷重付与手段を構成する板状の第一の荷重付与手段カバー部材と
が一体に組み合わされてなる第三の締結ユニットが前記ケースに締結される[3]のスタック締結構造。
【発明の効果】
【0026】
この発明によれば、燃料電池スタックの組み立てに用いられるスタック締結構造であって、燃料電池スタックのセル積層体に対して適切な荷重を付与することができ、燃料電池スタックを構成するケースの小型化、軽量化、原価低減を可能にするスタック締結構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の一実施形態に係るスタック締結構造で、燃料電池スタックを構成するケースに収容されているセル積層体などの燃料電池スタックの構成部品に対して第一の押圧荷重を加える第一の荷重付与手段が前記ケースの外側から前記ケースに対して締結されている状態の一例を説明する概念図。
【
図2】
図1図示の状態に引き続いて、燃料電池スタックを構成するケースに収容されているセル積層体などの燃料電池スタックの構成部品に対して第一の押圧荷重が加えられている方向から、前記構成部品に対して前記第一の押圧荷重とは異なる第二の押圧荷重を加える第二の荷重付与手段が前記ケースの外側から前記ケースに対して締結される状態の一例を説明する概念図。
【
図3】
図2図示の状態に引き続いて、燃料電池スタックを構成するケースに対してケースの外側から締結された第一の荷重付与手段、第二の荷重付与手段によって、ケースに収容されているセル積層体などの燃料電池スタックの構成部品に対して第一の押圧荷重及び、第二の押圧荷重が加えられている状態の一例を説明する概念図。
【
図4】
図3図示の状態を燃料電池スタックを構成するケースの側面側から見て、第一の荷重付与手段、第二の荷重付与手段が、それぞれ、ケースの上側からケースの上端に対して締結される位置の関係の一例を説明する一部を省略した側面図。
【
図5】第二の荷重付与手段が備えている押圧部材が第一の荷重付与手段が備えている貫通孔を介してケースに収容されている燃料電池スタックの構成部品の側に向かって伸びる構造の一実施形態を説明する一部を省略した概念図。
【
図6】第二の荷重付与手段が備えている押圧部材が第一の荷重付与手段が備えている貫通孔を介してケースに収容されている燃料電池スタックの構成部品の側に向かって伸びる構造の他の実施形態を説明する一部を省略した概念図。
【
図7】第二の荷重付与手段が備えている押圧部材が第一の荷重付与手段が備えている貫通孔を介してケースに収容されている燃料電池スタックの構成部品の側に向かって伸びる構造の更に他の実施形態を説明する一部を省略した概念図。
【
図8】第二の荷重付与手段が弾性体機構からなる場合で、
図3、
図5~
図7に図示されている実施形態の構造よりも簡素な構造からなるものを説明する一部を省略した概念図。
【
図9】燃料電池スタックの構成部品に含まれるセル積層体を構成する各単位セルの間のシール構造に対して要求されるシール圧(シール荷重)と、第一の押圧荷重F
1、第二の押圧荷重F
2との関係を説明するグラフ。
【
図10】第一の荷重付与手段からの第一の押圧荷重F
1によるセル圧縮量X
1と、第二の荷重付与手段からの第二の押圧荷重F
2によるセル圧縮量X
2との間の関係を説明する図であって、(a)は第一の荷重付与手段がケース1に締結される前の状態を説明する一部を省略した概念図、(b)は第一の荷重付与手段がケース1に締結され、セル積層体2などのケース1内に格納されている燃料電池スタックの構成部品に対して第一の押圧荷重F
1が加えられて第一の押圧荷重F
1によるセル圧縮量X
1が発生した状態を説明する一部を省略した概念図、(c)は
図10(b)の状態に引き続いて第二の荷重付与手段がケース1に締結され、セル積層体2などのケース1内に格納されている燃料電池スタックの構成部品に対して第二の押圧荷重F
2が加えられて第二の押圧荷重F
2によるセル圧縮量X
2が発生した状態を説明する一部を省略した概念図、(d)は
図10(b)、
図10(c)に図示された第一の押圧荷重F
1によるセル圧縮量X
1と、第二の押圧荷重F
2によるセル圧縮量X
2との間の関係の一例を表すグラフ。
【
図11】セル積層体に対して加えられる荷重の大きさと、セル積層体に対して加えられる荷重によってセル積層体が圧縮されて変位する量(セル圧縮量)との関係から、セル積層構造起因のばね定数の平均値、セル間ガスケット起因のばね定数、ガスケット以外のセル要素起因のばね定数、弾性体機構からなる第二の荷重付与手段が備える弾性体のばね定数(=弾性体起因のばね定数)の変動の一例を表したグラフ。
【
図12】第二の押圧荷重が第二の荷重付与手段が備えている弾性体によって発生されている場合で、当該弾性体のばね定数である弾性体ばね定数を、標準のつり合い状態にセル積層体に作用する荷重と、セル許容荷重との差分を、標準のつり合い状態からの熱膨張によるセル変位最大値で除算した値以下に設定することを説明するグラフ。
【
図13】(a)ケースに締結される第二の荷重付与手段の構成の一部と、第二の荷重付与手段をケースに締結する締結部材とが一体化されてユニットになっている状態を説明する一部を省略した概念図、(b)は
図13(a)図示のユニットがケースに締結されて構成された本発明のスタック締結構造を説明する一部を省略した概念図。
【
図14】(a)ケースに締結される第二の荷重付与手段と、第二の荷重付与手段をケースに締結する締結部材とが一体化されてユニットになっている状態を説明する一部を省略した概念図、(b)は
図14(a)図示のユニットがケースに締結されて構成された本発明のスタック締結構造を説明する一部を省略した概念図。
【
図15】(a)ケースに締結される第二の荷重付与手段と、第二の荷重付与手段をケースに締結する締結部材と、複数の貫通孔を備えていて第一の荷重付与手段を構成する板状の第一の荷重付与手段カバー部材とが一体化されてユニットになっている状態を説明する一部を省略した概念図、(b)は
図15(a)図示のユニットがケースに締結されて構成された本発明のスタック締結構造を説明する一部を省略した概念図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
この実施形態のスタック締結構造は、燃料電池スタックを構成するケースに締結されて前記ケース内に格納されている前記燃料電池スタックの構成部品に対して所定の荷重を加えるものである。
【0029】
燃料電池スタックは従来公知の構造であって、
図1~
図4図示の実施形態では、セル積層体2がケース1の中に収容されている。セル積層体2は、詳細図示を省略しているが、従来公知のように、複数の単位セルが
図1における上下方向で積層され、直列に接続されている。セル積層体2の上下にはそれぞれ集電板(不図示)を介してエンドプレート3a、3bが配置されている。
【0030】
セル積層体2は
図1の上下方向において所定の荷重が印加されている状態でケース1の中に収容されている。
【0031】
従来の燃料電池スタックでは、セル積層体2などの燃料電池スタックの構成部品と、セル積層体2に対して所定の荷重を印加する押圧手段などとがケース1内に収容されていることが一般的であった。このような構成にする場合には、セル積層体2などの燃料電池スタックの構成部品だけでなく押圧手段などもケース1内に収納されることになる。このため、ケース1の寸法が拡大し、ケースが大型化する、ケースが重くなる、ひいては、ケース1の製造コスト、燃料電池スタックの製造コストが嵩むという問題につながっていた。
【0032】
この実施形態ではケース1内に収容されている燃料電池スタックのセル積層体2に対して適切な荷重を付与する押圧手段がケース1の外側に配備されている構成からなるスタック締結構造とすることで、燃料電池スタックを構成するケース1の小型化、軽量化、ケース1の製造コストの低減、燃料電池スタックの製造コストの低減を可能にしている。
【0033】
図1~
図4図示のスタック締結構造では、燃料電池スタック100(
図3)を構成するケース1に収容されているセル積層体2などの燃料電池スタックの構成部品に対して第一の押圧荷重を加える第一の荷重付与手段がケース1の外側からケース1に対して締結されている。また、燃料電池スタックを構成するケース1に収容されているセル積層体2などの燃料電池スタックの構成部品に対して上述した第一の押圧荷重が加えられている方向から、セル積層体2などの燃料電池スタックの構成部品に対して上述した第一の押圧荷重とは異なる第二の押圧荷重を加える第二の荷重付与手段がケース1の外側からケース1に対して締結されている(
図3)。
【0034】
図1~
図4図示のスタック締結構造では、上述した第一の荷重付与手段及び、第二の荷重付与手段のいずれともケース1の上側からケース1に対して締結されている。
【0035】
本実施形態では、燃料電池スタック100(
図3)を構成するケース1の中には、セル積層体2などの燃料電池スタックの構成部品が収容されているだけで、セル積層体2に対して所定の荷重を印加する押圧手段はケース1内に収容されていない。これによって、燃料電池スタックを構成するケース1の小型化、軽量化、ケース1の製造コストの低減、ひいては、燃料電池スタックの製造コストの低減を図ることが可能になっている。
【0036】
図1図示の実施形態では、ケース1の外側(
図1ではケース1の上側)から板状のカバー部材4がケース1に締結されて、セル積層体2などからなる燃料電池スタックの構成部品に対して
図1において上側から下側に向かう第一の押圧荷重が加えられる構成になっている。
【0037】
下側面4aを上側のエンドプレート3aの上側面に当接させている板状のカバー部材4の、
図1中の左右両端側が、それぞれ、締結部材5a、5bによって、ケース1の
図1中の左右両側の側壁1a、1bの上端に締結されている。
【0038】
なお、板状のカバー部材4は、
図1図示のように、所定箇所に貫通孔6a、6b、6cを備えている。後述する第二の荷重付与手段が備えている押圧部材がこの貫通孔6a、6b、6cの中を
図1の上下方向に貫通することになる。
【0039】
締結部材5a、5bとしては、例えば、ボルトを採用することができる。ボルトの締め付け量を調整する等、ケース1の
図1中の左右両側の側壁1a、1bの上端に対してカバー部材4を締結する際の締結量を適宜に調整することで、燃料電池スタックのセル積層体2に対して適切な大きさの第一の押圧荷重を印加する構成にすることができる。
【0040】
本実施形態では、下側面4aを上側のエンドプレート3aの上側面に当接させている板状のカバー部材4が、ケース1に対してケース1の外側から締結部材5a、5bによってケース1に締結されることで上述した第一の荷重付与手段が構成されている。
【0041】
このように、
図1~
図4図示のスタック締結構造では、燃料電池スタック100(
図3)を構成するケース1に収容されているセル積層体2などの燃料電池スタックの構成部品に対して第一の押圧荷重を加える第一の荷重付与手段がケース1の外側からケース1に対して締結されている。
【0042】
上述した第二の荷重付与手段もケース1の外側からケース1に締結されている。第二の荷重付与手段は、セル積層体2などの燃料電池スタックの構成部品に対して、上述した第一の押圧荷重が加えられている方向から、すなわち、
図1~
図3における図面の上側から図面の下側に向かう方向から、上述した第一の押圧荷重とは異なる第二の押圧荷重を、セル積層体2などの燃料電池スタックの構成部品に加えるようになっている。
【0043】
図示の実施形態では、上述した第二の荷重付与手段は、ケース1に締結される板状のカバー部材8と、カバー部材8の下側に配備されていて、セル積層体2などの燃料電池スタックの構成部品の方向に向かって伸びる押圧部材7a、7b、7cとを備えている(
図2)。
【0044】
板状のカバー部材8は、ケース1の外側(
図2~
図4ではケース1に締結されている第一の荷重付与手段の上側)から、ケース1に締結される。
【0045】
図示の実施形態では、板状のカバー部材8の、
図2、
図3中の左右両端側が、それぞれ、締結部材9a、9bによって、ケース1の
図2、
図3中の左右両側の側壁1a、1bの上端に締結されている。
【0046】
図4は、
図3図示の状態を、燃料電池スタック100を構成するケース1の側面側から見た一部を省略した側面図である。
図4で左右方向に伸びているケース1の側壁1bの上端に対して第一の荷重付与手段を構成するカバー部材4が締結部材5b、5cによって締結される位置と、第二の荷重付与手段を構成するカバー部材8が締結部材9b、9cによって締結される位置とが異なるようになっている。
【0047】
本実施形態では、このような形態にすることで、第一の荷重付与手段の外側から第二の荷重付与手段がケース1に締結される構造にしている。図示はしていないが、他の形態で、第一の荷重付与手段の外側から第二の荷重付与手段がケース1に締結される形態にすることもできる。
【0048】
締結部材9a、9b、9cとしては、例えば、ボルトを採用することができる。ボルトの締め付け量を調整する等、ケース1の
図1中の左右両側の側壁1a、1bの上端に対してカバー部材8を締結する際の締結量を適宜に調整することで、後述する弾性体機構によって燃料電池スタックのセル積層体2に対して第二の荷重付与手段が印加する荷重を適切なものにすることができる。
【0049】
第二の荷重付与手段が備えている押圧部材7a、7b、7cは、ケース1に対する第一の荷重付与手段及び、第二の荷重付与手段の上述した締結が行われると、上述した第一の荷重付与手段が備えている貫通孔6a、6b、6cを介して、セル積層体2などの燃料電池スタックの構成部品の方向に向かって伸びるようになる(
図3)。
【0050】
本実施形態では、上述した構成が採用されていることで、第二の荷重付与手段は、ケース1の外側から、すなわち、ケース1に締結されている第一の荷重付与手段の外側から、ケース1に締結され、セル積層体2などの燃料電池スタックの構成部品に対して第一の荷重付与手段によって第一の押圧荷重が加えられている方向から、第一の押圧荷重とは異なる第二の押圧荷重を、直接、セル積層体2などの構成部品に対して加えるようになっている。
【0051】
上述したように、ケース1に対する第一の荷重付与手段及び、第二の荷重付与手段の締結が行われたときに、第一の荷重付与手段が備えている貫通孔6a、6b、6cを介して、第二の荷重付与手段が備えている押圧部材7a、7b、7cが、セル積層体2などの燃料電池スタックの構成部品の方向に向かって伸び、その先端が上側のエンドプレート3aの上側面に当接する構造に関しては、以下に説明するように、種々の構造を採用することができる。
【0052】
図5図示の構造は、貫通孔6a~6cを貫通する押圧部材7a~7cを貫通孔6a~6c内で囲繞する弾性部材が第一の荷重付与手段に配備されている実施形態の一例を表すものである。
【0053】
図5では、貫通孔6a~6cを貫通する押圧部材7a~7cを貫通孔6a~6c内でそれぞれ囲繞する弾性部材12a、12b、12cが、第一の荷重付与手段を構成するカバー部材4に配備されている。第一の荷重付与手段を構成するカバー部材4に弾性部材12a、12b、12cが配備されている実施形態としては、例えば、カバー部材4の貫通孔6a、6b、6c内にそれぞれ弾性部材12a、12b、12cが配備されている構造を採用することができる。
【0054】
図6図示の構造は、貫通孔6a~6cを貫通する押圧部材7a~7cの先端に押されて上述した構成部品の側の部材に当接し、押圧部材7a~7cの先端と上述した構成部品の側の部材との間に介在する弾性部材が第一の荷重付与手段に配備されている実施形態の一例を表すものである。
【0055】
図6では、貫通孔6a~6cを貫通する押圧部材7a~7cそれぞれの先端に押されて上側のエンドプレート3aの上側面に当接し、押圧部材7a~7cそれぞれの先端と、エンドプレート3aとの間に介在する弾性部材13a、13b、13cが、第一の荷重付与手段を構成するカバー部材4に当接し、貫通孔6a、6b、6cを囲繞する形で配備されている。
図6では、弾性部材13a、13b、13cが、押圧部材7a、7b、7cの先端とエンドプレート3aとの間に介在している状態が表されている。
【0056】
図6図示の実施形態では、上側のエンドプレート3aが、押圧部材7a、7b、7cの先端が当接する、セル積層体2などの燃料電池スタックの構成部品の側の部材になっている。
【0057】
第一の荷重付与手段を構成するカバー部材4に弾性部材13a、13b、13cが配備されている実施形態としては、例えば、カバー部材4の貫通孔6a、6b、6cの下側に、それぞれ、弾性部材13a、13b、13cが、カバー部材4の下側面に対して離脱可能に配備されている構造を採用することもできる。
【0058】
図7図示の構造は、貫通孔6a~6cを貫通する押圧部材7a~7cそれぞれの第一の荷重付与手段より上側の部分を囲繞する弾性部材が第一の荷重付与手段に配備されている実施形態の一例を表すものである。
【0059】
図7では、貫通孔6a、6b、6cを貫通する押圧部材7a、7b、7cの第一の荷重付与手段より上側の部分を囲繞する弾性部材14a、14b、14cが、第一の荷重付与手段を構成するカバー部材4に配備されている。なお、
図7では、ケース1及び、ケース1に収容されているセル積層体2などの燃料電池スタックの構成部品の図示を省略している。
【0060】
第一の荷重付与手段を構成するカバー部材4に弾性部材14a、14b、14cが配備されている実施形態としては、例えば、カバー部材4の貫通孔6a、6b、6cの上側に、それぞれ、円筒状の弾性部材14a、14b、14cが配備されている構造を採用することができる。
【0061】
円筒状の弾性部材14a、14b、14cとしては、例えば、蛇腹状の円筒を採用することができる。蛇腹状の円筒からなる弾性部材14a、14b、14cは、
図7図示のように、第一の荷重付与手段の上から第二の荷重付与手段がケース1に取り付けられ、押圧部材7a、7b、7cが貫通孔6a、6b、6cを
図7で下方向に向かって貫通する際に上下方向で圧縮されるようになる。
【0062】
図5~
図7で例示した構造で、上述した弾性部材12a~12c、13a~13c、14a~14cが第一の荷重付与手段に配備されていると貫通孔6a、6b、6cと押圧部材7a、7b、7c間の隙間から、塵等のコンタミが燃料電池内に侵入することを防ぐことができるので有利である。
【0063】
図5~
図7で例示した構造に採用されている弾性部材12a~12c、13a~13c、14a~14cは、いずれも、押圧力を受けた際に当該押圧力に追随して変形し、当該押圧力が解除されると復元力を発揮できる部材である。
図7に例示した構造では、蛇腹状の円筒を弾性部材14a~14cの一例として例示したが、上述した特性を有するものであれば、種々の材質、形態のものを弾性部材12a~12c、13a~13c、14a~14cに採用することができる。例えば、ゴム材や樹脂材などから上述した弾性部材を構成することができる。
【0064】
なお、図示はしていないが、上述し、
図1~
図7に図示した形態とは異なる形態を採用して、第二の荷重付与手段も第一の荷重付与手段と同様にケース1の外側からケース1に締結され、セル積層体2などの燃料電池スタックの構成部品に対して第一の荷重付与手段によって第一の押圧荷重が加えられている方向から、第一の押圧荷重とは異なる第二の押圧荷重が、第二の荷重付与手段から、直接、セル積層体2などの構成部品に印加されるようにすることもできる。
【0065】
上述した実施形態を説明している
図1~
図7では板状のカバー部材4には3個の貫通孔6a、6b、6cが形成され、それぞれを押圧部材7a、7b、7cが貫通している。上述したように、セル積層体2などの燃料電池スタックの構成部品に対する第一の荷重付与手段からの第一の押圧荷重の付与は、板状のカバー部材4がその下側面4aを上側のエンドプレート3aの上側平面に当接させて行われる。また、セル積層体2などの燃料電池スタックの構成部品に対する第二の荷重付与手段からの第二の押圧荷重の付与は、押圧部材7a、7b、7cがそれぞれの下側面を上側のエンドプレート3aの上側平面に当接させて行われる。
【0066】
このような第一の押圧荷重の付与形態、第二の押圧荷重の付与形態や、カバー部材4の下側面4aが上側のエンドプレート3aの上側平面に当接する面積、押圧部材7a、7b、7cの下側面が上側のエンドプレート3aの上側平面に当接する面積などを考慮に入れて、カバー部材4に形成する貫通孔の数、それぞれの大きさ、形成する位置、押圧部材7a、7b、7cの下側面の面積などを設定するようにできる。
【0067】
上述した本実施形態における板状のカバー部材4、板状のカバー部材8は、それぞれ、燃料電池スタック100(
図3)を構成するケース1に収容されているセル積層体2などの燃料電池スタックの構成部品に対して加えられる第一の押圧荷重、第二の押圧荷重の支持体としての役割を果たす。
【0068】
そこで、カバー部材4、カバー部材8にはこのために必要な剛性が要求され、これを満たす種々の部材からカバー部材4、カバー部材8を形成することができる。
【0069】
また、押圧部材7a、7b、7cは、第二の押圧荷重を構成部品に対して伝える役割を果たす部材であるので、このために必要な剛性が要求され、これを満たす種々の部材から押圧部材7a、7b、7cを形成することができる。
【0070】
<第二の荷重付与手段を弾性体機構とする実施形態>
図3図示の実施形態では、第二の荷重付与手段による上述した第二の押圧荷重は、第二の荷重付与手段が備えている弾性体によって発生されている。弾性体としては、皿ばねやコイルばねなどを採用することができる。
【0071】
図3図示の実施形態では弾性体として直列に重ね合わせた皿ばね10a、10b、10cが採用されている。皿ばね10a、10b、10cは、
図3図示のように、その上端側が板状体からなるカバー部材8の下側面によって支持され、下端側が押圧部材7a、7b、7cの上端側に当接する形態で第二の荷重付与手段に配備されている。
【0072】
図3図示のように、押圧部材7a、7b、7cは、先端(下端)を上側のエンドプレート3aの上側面に当接させ、皿ばねやコイルばねなどからなる弾性体の弾性力に基づく第二の押圧荷重を、セル積層体2などの燃料電池スタックの構成部品に対して印加する。
【0073】
このように、第二の荷重付与手段の中には、当該第二の荷重付与手段が備えている弾性体によって発生される第二の押圧荷重を、セル積層体2などの燃料電池スタックの構成部品に対して印加する形態のものが含まれる。このような形態の第二の荷重付与手段は、弾性体による弾性力を利用するものであるので弾性体機構と称することもできる。
【0074】
上述したように、ボルトなどの締結部材9a、9bによって、第二の荷重付与手段を構成する板状のカバー部材8を、ケース1の側壁1a、1b上端に対して締結する際の締結量を、皿ばねやコイルばねなどからなる弾性体の弾性力に基づく第二の押圧荷重の強さを考慮した締結量にしておくことで、第二の押圧荷重の強さを適切なものにすることができる。
【0075】
図8は、弾性体機構からなる第二の荷重付与手段の他の実施形態を説明するものである。
図1~
図7図示の実施形態における押圧部材7a、7b、7cに替えて筒状のコイルばね15a、15b、15cが採用されている。上述したように、ボルトなどの締結部材9a、9bによって、第二の荷重付与手段を構成する板状のカバー部材8を、ケース1の側壁1a、1b上端に対して締結する際の締結量を、コイルばね15a、15b、15cの弾性力に基づく第二の押圧荷重の強さを考慮した締結量にしておくことで、第二の押圧荷重の強さを適切なものにすることができる。
【0076】
図1~
図7図示の実施形態では、押圧部材7a、7b、7cとカバー部材8との間に皿ばねやコイルばねなどからなる弾性体が配備されていたが、
図8図示の実施形態では、コイルばね15a、15b、15cが押圧部材7a、7b、7cとしての役割も果たす。そこで、
図1~
図7図示の実施形態に比較して部品点数を削減することができる。
【0077】
図8では、コイルばね15a、15b、15cが採用されている実施形態にしているが、上述したように、押圧部材7a、7b、7cとしての役割を果たすことができて、ボルトなどの締結部材9a、9bによって、カバー部材8が、所定の大きさの締結量でケース1の側壁1a、1b上端に締結されているときに弾性力に基づいて、セル積層体2などの燃料電池スタックの構成部品に対して第二の押圧荷重を印加できるものであれば、ゴム部材などからなる円筒状の弾性体など、種々の弾性体をコイルばね15a、15b、15cに替えて採用することができる。
【0078】
<第一の荷重付与手段による第一の押圧荷重の適切な大きさ>
上述したように、第一の荷重付与手段を構成するカバー部材4はその下側面4aを上側のエンドプレート3aの上側面に当接させている状態で締結部材5a、5bによってケース1の側壁1a、1bの上端に締結されている。
【0079】
そこで、上述したように、ケース1の
図1中の左右両側の側壁1a、1bの上端に対してカバー部材4を締結部材5a、5bによって締結する際の締結量を適宜に調整することで、燃料電池スタックのセル積層体2に対して適切な大きさの第一の押圧荷重F
1を印加する構成にすることができる。
【0080】
この適切な大きさの第一の押圧荷重F1は、燃料電池スタックの構成部品に含まれるセル積層体2を構成する各単位セルの間のシール構造に対して要求されるシール圧を発生させる荷重以上の大きさにすることができる。
【0081】
図9は、燃料電池スタックの構成部品に含まれるセル積層体2を構成する各単位セルの間のシール構造に対して要求されるシール圧(シール荷重)と、第一の押圧荷重F
1、第二の押圧荷重F
2との関係を説明するグラフである。
【0082】
本実施形態のスタック締結構造では、上述したように、第一の荷重付与手段によって第一の押圧荷重F1がセル積層体2などの燃料電池スタックの構成部品に対して印加されている下で、第二の荷重付与手段によって第二の押圧荷重F2がセル積層体2などの燃料電池スタックの構成部品に対して印加される。
【0083】
第二の荷重付与手段としては、上述したように、弾性体によって発生される第二の押圧荷重F2をセル積層体2などの燃料電池スタックの構成部品に対して印加する弾性体機構が採用されることがある。この場合、弾性体がクリープ又は破損することが起こり得る。
【0084】
上述したように、第一の押圧荷重F1が、燃料電池スタックの構成部品に含まれるセル積層体2を構成する各単位セルの間のシール構造に対して要求されるシール圧を発生させる荷重以上の大きさに設定されていれば、上述したように、第二の荷重付与手段に採用されている弾性体がクリープ又は破損した場合であっても、シール荷重を確保することができる。
【0085】
<第一の押圧荷重によるセル圧縮量X1と第二の押圧荷重によるセル圧縮量X2との関係>
本実施形態のスタック締結構造では、上述したように、ケース1の外側からケース1に締結されている第一の荷重付与手段によって、セル積層体2などのケース1内に格納されている燃料電池スタックの構成部品に対して第一の押圧荷重F1が加えられ、第一の荷重付与手段と同様にケース1の外側からケース1に締結されて第二の荷重付与手段によって、前記構成部品に対して第一の押圧荷重F1が加えられている方向から、第一の押圧荷重F1とは異なる第二の押圧荷重F2が加えられる。
【0086】
この時の第一の押圧荷重F
1によるセル圧縮量X
1と第二の押圧荷重F
2によるセル圧縮量X
2との間の好ましい関係について
図10を参照して説明する。
【0087】
図10(b)に図示しているように、カバー部材4等からなる第一の荷重付与手段によってセル積層体2等のケース1内に格納されている燃料電池スタックの構成部品に対して加えられる第一の押圧荷重F
1によって前記構成部品に含まれるセル積層体2が圧縮されて変位する量であるセル圧縮量をX
1とする。
【0088】
また、
図10(c)に図示しているように、カバー部材8等からなる第二の荷重付与手段によってセル積層体2等のケース1内に格納されている燃料電池スタックの構成部品に対して加えられる第二の押圧荷重F
2によって前記構成部品に含まれるセル積層体2が圧縮されて変位する量であるセル圧縮量をX
2とする。
【0089】
本実施形態のスタック締結構造においては、セル圧縮量X2とセル圧縮量X1との間の差(X2-X1)が、ケース1内にセル積層体2等の燃料電池スタックの構成部品が収容されて燃料電池スタック100が使用されている際のセル積層体2の最大膨張量より大きくなっていることが望ましい。
【0090】
このような関係になっていることが、高温時における積層セルのケース底付きによる熱応力急増を避ける上で望ましい。
【0091】
<弾性体機構からなる第二の荷重付与手段が備える弾性体のばね定数>
上述したように、第二の荷重付与手段の中には、当該第二の荷重付与手段が備えている弾性体によって発生されている第二の押圧荷重をセル積層体2などの燃料電池スタックの構成部品に対して印加する形態である弾性体機構が含まれる。
【0092】
このような弾性体機構からなる第二の荷重付与手段が備える弾性体のばね定数である弾性体ばね定数は所定値以下に設定されていることが望ましい。
図11を用いてこれを説明する。
【0093】
上述したように、セル積層体2などのケース1内に格納されている燃料電池スタックの構成部品に対しては第一の荷重付与手段によって第一の押圧荷重F1が加えられ、更に、第一の押圧荷重F1が加えられている方向から、第二の荷重付与手段が備えている弾性体によって発生されている第二の押圧荷重F2が加えられる。
【0094】
このような第一の押圧荷重F1と第二の押圧荷重F2とを受けているセル積層体2では、複数の単位セルが積層されていることに起因するセル積層構造起因のばね定数と、積層されている単位セル同士の間に存在しているガスケット、例えば、ゴムガスケットの存在に起因するセル間ガスケット起因のばね定数とを考慮する必要がある。
【0095】
図11は、セル積層体2に対して加えられる荷重の大きさを縦軸に、セル積層体2に対して加えられる荷重によってセル積層体2が圧縮されて変位する量(セル圧縮量)を横軸にして、セル積層構造起因のばね定数の平均値、セル間ガスケット起因のばね定数、ガスケット以外のセル要素起因のばね定数、弾性体機構からなる第二の荷重付与手段が備える弾性体のばね定数(=弾性体起因のばね定数)の変動の一例を表したグラフである。
【0096】
弾性体起因のばね定数=弾性体機構からなる第二の荷重付与手段が備える弾性体のばね定数が大きすぎると圧縮量に対する荷重変化が大きくなり、温度変化や製造公差等のばらつきに対する荷重安定性が低下する。
【0097】
そこで、上述したように、弾性体機構からなる第二の荷重付与手段が備える弾性体のばね定数である弾性体ばね定数は所定値以下に設定されていることが望ましい。
【0098】
一例としては、
図11のグラフに示すように、この所定値を、燃料電池スタックのケース1内に格納されている燃料電池スタックの構成部品に含まれるセル積層体2のセル積層構造によるばね定数であるセル積層体ばね定数の平均値に設定することが考えられる。本設定により、第二の荷重付与手段のばね定数が第一の荷重付与手段のばね定数と略同等以下となり、締結構造全体のばね定数の急激な変化を防ぐことができる。
【0099】
また、上述の所定値を、標準のつり合い状態にセルに作用する荷重とセル許容荷重の差分を、標準のつり合い状態からの熱膨張によるセル変位最大値で除算した値に設定することもできる。
【0100】
図12に、その事例を示す。第一の押圧荷重F
1によるセル圧縮量がX
1、第一の押圧荷重F
1に加えて第二の押圧荷重F
2も印加された際のセル圧縮量がX
2で、
図12図示のように印加されている荷重と、セル圧縮量X
2との状態で釣り合っている。
【0101】
ここから、例えば、高温側の最大温度変化により、セルが膨張し、圧縮量がΔx減じたとする。
【0102】
この時、第二の荷重付与手段の弾性体は、つり合い位置からさらにΔx圧縮され、結果として積層セルに負荷される荷重は増加することになる(
図12)。
【0103】
この時に、第二の荷重付与手段のばね定数k2(直線の傾き)が、標準状態で作用していた荷重F2とセル許容荷重Fcとの差分をΔxで除算した値より小さければ、セル膨張によりセルに負荷される荷重が増加した場合でも、セル許容荷重に達することはない。このような構成にすることにより、膨張時の荷重によりセルが破損することを防止できる。
【0104】
<ユニット化されているスタック締結構造>
本実施形態のスタック締結構造では、燃料電池スタック100(
図3)を構成するケース1に収容されているセル積層体2などの燃料電池スタックの構成部品に対して第一の押圧荷重を加える第一の荷重付与手段と、燃料電池スタックを構成するケース1に収容されているセル積層体2などの燃料電池スタックの構成部品に対して上述した第一の押圧荷重が加えられている方向から、セル積層体2などの燃料電池スタックの構成部品に対して上述した第一の押圧荷重とは異なる第二の押圧荷重を加える第二の荷重付与手段とが、それぞれ、ケース1の外側からケース1に対して締結されている(
図1~
図4、
図8)。
【0105】
上述した構成からなるスタック締結構造を燃料電池スタック100を構成するケース1に締結する工程を以下に説明するユニットを用いることで簡便にすることが可能になる。
【0106】
<ユニットを使用する実施形態1>
第二の荷重付与手段は、板状のカバー部材8(ここでは、以下、「板状の第二の荷重付与手段カバー部材8」という。)と、燃料電池スタック100を構成するケース1に収容されているセル積層体2などの燃料電池スタックの構成部品に対して第二の押圧荷重を発生する弾性体15a、15b、15cとを備えている(
図13(a)、(b))。
【0107】
そして、板状の第二の荷重付与手段カバー部材8は、締結部材9a、9b(ここでは、以下、「第二の荷重付与手段締結部材9a、9b」という。)によってケース1の側壁1a、1bの上端に締結される構成になっている(
図13(a)、(b))。
【0108】
図13(a)は、第二の荷重付与手段の構成要素の中の一部である上述の板状の第二の荷重付与手段カバー部材8、弾性体15a、15b、15cと、板状の第二の荷重付与手段カバー部材8をケース1の側壁1a、1bの上端に締結する第二の荷重付与手段締結部材9a、9bとが一体になってユニット化されている実施形態を説明するものである。
【0109】
図13(a)図示のユニットを用いた本実施形態のスタック締結構造は次のようにして燃料電池スタック100を構成するケース1に締結することができる。
【0110】
まず、第一の荷重付与手段を構成する板状のカバー部材4(ここでは、以下、「板状の第一の荷重付与手段カバー部材4」という。)を締結部材5a、5bを介して燃料電池スタック100を構成するケース1の側壁1a、1bの上端に締結することで第一の荷重付与手段をケース1に締結する。
【0111】
次に、板状の第一の荷重付与手段カバー部材4が備えている貫通孔6a、6b、6cに、
図13(a)図示のユニットの第二の荷重付与手段を構成する弾性体15a、15b、15cを装入する。
【0112】
その後、
図13(a)図示のユニットの弾性体15a、15b、15cがエンドプレート3a上端に当接するようにして、
図13(a)図示のユニットの板状の第二の荷重付与手段カバー部材8を、第二の荷重付与手段締結部材9a、9bを介して燃料電池スタック100を構成するケース1の側壁1a、1bの上端に締結することで第二の荷重付与手段をケース1に締結する(
図13(b))。
【0113】
このようにすることで、本実施形態のスタック締結構造を簡便に燃料電池スタック100(
図3)を構成するケース1に締結することができる。
【0114】
<ユニットを使用する実施形態2>
図14(a)図示のユニットは、
図3図示のユニットに対し、第二の荷重付与手段が備えている複数の弾性体10a、10b、10cと押圧部材7a、7b、7cを一体化したユニットである。第二の荷重付与手段の構成要素である板状の第二の荷重付与手段カバー部材8、押圧部材7a、7b、7c、弾性体10a、10b、10cと、板状の第二の荷重付与手段カバー部材8をケース1の側壁1a、1bの上端に締結する第二の荷重付与手段締結部材9a、9bとが一体になってユニット化されている。
【0115】
図14(a)図示のユニットを用いた本実施形態のスタック締結構造は次のようにして燃料電池スタック100を構成するケース1に締結することができる。
【0116】
まず、第一の荷重付与手段を構成する板状のカバー部材4(ここでは、以下、「板状の第一の荷重付与手段カバー部材4」という。)を締結部材5a、5bを介して燃料電池スタック100を構成するケース1の側壁1a、1bの上端に締結することで第一の荷重付与手段をケース1(不図示)に締結する。
【0117】
その後、板状の第一の荷重付与手段カバー部材4が備えている貫通孔6a、6b、6cに対して、
図14(a)図示のユニットの押圧部材7a、7b、7cが装入されるように
図14(a)図示のユニットを搭載し、
図14(a)図示のユニットの板状の第二の荷重付与手段カバー部材8を、第二の荷重付与手段締結部材9a、9b介して燃料電池スタック100を構成するケース1の側壁1a、1bの上端に締結することで第二の荷重付与手段をケース1に締結する(
図14(b))。
【0118】
このようにすることで、本実施形態のスタック締結構造を簡便に燃料電池スタック100を構成するケース1に締結することができる。
【0119】
<ユニットを使用する実施形態3>
図15(a)図示のユニットは、
図14(a)図示のユニットに追加して、第一の荷重付与手段が備えている板状の第一の荷重付与手段カバー部材4もが一体化されているユニットである。第二の荷重付与手段の構成要素である板状の第二の荷重付与手段カバー部材8、押圧部材7a、7b、7c、弾性体10a、10b、10cと、板状の第二の荷重付与手段カバー部材8をケース1の側壁1a、1bの上端に締結する第二の荷重付与手段締結部材9a、9b及び、第一の荷重付与手段を構成する板状の第一の荷重付与手段カバー部材4とが、貫通孔6a、6b、6cに第二の荷重付与手段の押圧部材7a、7b、7cを貫通させている状態で一体になってユニット化されている。カバー部材4は後述のケース1に締結されるまで、
図14(a)図示のユニットに仮止めまたは仮固定されている必要があるが、ここではその図示を省略している。
【0120】
図15(a)図示のユニットを用いた本実施形態のスタック締結構造は次のようにして燃料電池スタック100を構成するケース1に締結することができる。
【0121】
まず、第一の荷重付与手段の板状の第一の荷重付与手段カバー部材4を締結部材5a、5bを介して燃料電池スタック100を構成するケース1の側壁1a、1bの上端に締結することで第一の荷重付与手段をケース1に締結する。
【0122】
その後、カバー部材4の
図14(a)図示ユニットへの仮止めを解除後、
図15(a)図示のユニットの板状の第二の荷重付与手段カバー部材8を、第二の荷重付与手段締結部材9a、9b介して燃料電池スタック100(
図3)を構成するケース1の側壁1a、1bの上端に締結することで第二の荷重付与手段をケース1に締結する(
図15(b))。
【0123】
このようにすることで、本実施形態のスタック締結構造を簡便に燃料電池スタック100を構成するケース1に締結することができる(
図15(b))。
【0124】
以上、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述した実施形態に限られず、特許請求の範囲の記載から把握される技術的範囲において種々に変更可能である。