(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015464
(43)【公開日】2024-02-02
(54)【発明の名称】積層鋼板製造装置、及び積層鋼板製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/02 20060101AFI20240126BHJP
【FI】
H02K15/02 D
H02K15/02 E
H02K15/02 F
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117612
(22)【出願日】2022-07-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】393023950
【氏名又は名称】大垣精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187791
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 晃志郎
(72)【発明者】
【氏名】鄭 日権
(72)【発明者】
【氏名】谷 清和
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB05
5H615BB14
5H615PP01
5H615PP06
5H615SS03
5H615SS05
5H615SS10
(57)【要約】
【課題】環状鋼板を形成して積層する装置において、積層鋼板の積層方向に生じる段差又は隙間を低減する積層鋼板製造装置、及び積層鋼板製造方法を提供すること。
【解決手段】積層鋼板製造装置1は、プレス鋼板片31を打ち抜くプレス部2を備える。プレス部2は第一プレス部11を含み、上金型4に第一パンチ21と補助パンチ23を備え、下金型5に第一ダイ22を備え、第一ダイ22は、プレス鋼板片31が打ち抜かれる毎に、所定角度ずつ回転可能である。補助パンチ23は、上金型4の移動に伴って、第一パンチ21と同期して上下方向に移動し、第一ダイ22に保持されるプレス鋼板片31を押下可能である。補助パンチ23の下端面26は、第一パンチ21のプレス面20よりも鋼板材30の板厚分T下側に突出する第一状態と、プレス面20と同一高さか又はプレス面20よりも上側に凹む第二状態とに設定可能である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送方向に間欠的に搬送される帯状の鋼板材を、所定の形状のプレス鋼板片に打ち抜いて環状に配置して環状鋼板を形成し、積層する装置であって、
前記鋼板材を所定の形状に打ち抜くために、前記搬送方向と直交する上下方向において相対的に移動可能な上金型及び下金型と、
前記鋼板材を搬送する搬送経路を含む搬送装置と、
前記上金型と前記下金型において、前記プレス鋼板片を打ち抜くプレス部を備え、
前記プレス部は、前記プレス鋼板片の外形を打ち抜いて前記鋼板材から分離する第一プレス部を含み、
前記第一プレス部は、前記上金型に第一パンチと補助パンチを備え、前記下金型に第一ダイを備え、
前記第一ダイは、前記第一パンチと協働で打ち抜かれる前記プレス鋼板片を内部に保持可能であり、
前記第一ダイは、前記第一プレス部にて前記プレス鋼板片が打ち抜かれる毎に、第一プレス部中心を中心とする周方向に所定角度ずつ回転可能であり、
前記補助パンチは、前記上金型の移動に伴って、前記第一パンチと同期して前記上下方向に移動し、前記第一ダイに保持される前記プレス鋼板片を押下可能であり、
前記補助パンチの下端面は、前記上下方向において、
前記第一パンチの下端であるプレス面よりも前記鋼板材の板厚分下側に突出する第一状態と、前記プレス面と同一高さか又は前記プレス面よりも上側に凹む第二状態とに設定可能である積層鋼板製造装置。
【請求項2】
Nは自然数であり、
前記第一プレス部は、前記周方向に前記プレス鋼板片をN枚連結することで前記環状鋼板を形成可能であり、
前記第一ダイは、前記環状鋼板を保持可能な円筒状の中空を備え、
前記第一パンチと前記補助パンチは、前記中空において相対的に前記上下方向に移動可能であり、
前記補助パンチは、前記中空のうち前記上下方向に直交する平面方向において、前記第一パンチが配置される領域を除く領域に配置される請求項1に記載の積層鋼板製造装置。
【請求項3】
Mは、Nの約数であり、かつN未満であり、
前記第一プレス部は、前記第一パンチが前記周方向において均等の角度間隔でM箇所に配置され、
前記第一プレス部の上流側に前記搬送経路がM個形成され、
前記上金型が前記下金型に対して相対的に前記上下方向に一回移動する毎に、M枚の前記プレス鋼板片が形成される請求項2に記載の積層鋼板製造装置。
【請求項4】
前記補助パンチを、前記第一状態及び前記第二状態のいずれかの状態に設定する補助パンチ制御装置を備え、
前記環状鋼板は、N/M回の前記プレス鋼板片の打ち抜きによって形成され、
前記補助パンチ制御装置は、前記第一プレス部が一回目を打ち抜くときは、前記補助パンチを前記第一状態に制御し、二回目からN/M回目までを打ち抜くときは、前記補助パンチを前記第二状態に制御する請求項3に記載の積層鋼板製造装置。
【請求項5】
前記第一ダイを前記周方向に所定角度回転させるダイ回転制御装置を備え、
前記環状鋼板は、N/M回の前記プレス鋼板片の打ち抜きと、さらに打ち抜き後の一方向への回転によって形成され、
前記ダイ回転制御装置は、
前記第一ダイが、一回目から((N/M)-1)回目までの打ち抜き後は、毎回360/N度の角度回転するよう制御し、N/M回目の打ち抜き後は、360/(2×N)度の角度回転するよう制御する請求項4に記載の積層鋼板製造装置。
【請求項6】
前記プレス部は、前記第一プレス部よりも前記搬送方向の上流側にあって、前記プレス鋼板片の形状の一部を打ち抜く第二プレス部を備え、
前記第一プレス部は、前記プレス鋼板片の外形部のみが打ち抜かれるよう形成され、
前記第二プレス部は、前記鋼板材の前記搬送方向の下流側の端部が前記第一プレス部に搬送されるまでに、該第一プレス部によって打ち抜かれる繋ぎ部を除き、前記プレス鋼板片以外の部分を取り除くように形成される請求項1から5までのいずれかに記載の積層鋼板製造装置。
【請求項7】
前記プレス部は、前記プレス鋼板片の外形に凹部又は/及び凸部を含めた鋼板係合部を形成可能であり、
前記第一ダイは、
周方向の少なくとも一部にダイ凹凸部を備え、
前記プレス鋼板片に前記鋼板係合部が形成されるとき、前記ダイ凹凸部が該鋼板係合部に係合しながら回転可能である請求項1から5のいずれかに記載の積層鋼板製造装置。
【請求項8】
前記ダイ凹凸部の少なくとも一部は、前記第一プレス部中心からの径方向において略逆台形状に形成され、
前記プレス部は、前記鋼板係合部の凹部又は/及び凸部を、前記径方向において略逆台形状に形成可能であり、
前記プレス鋼板片に前記鋼板係合部が形成されるとき、前記ダイ凹凸部が前記鋼板係合部に係合すると、前記径方向において前記ダイ凹凸部と前記鋼板係合部とが互いにかみ合う請求項7に記載の積層鋼板製造装置。
【請求項9】
請求項1から5までのいずれかに記載の積層鋼板製造装置によって前記プレス鋼板片を形成し、環状に配置して前記環状鋼板とし、積層して積層鋼板を製造する製造方法であって、
前記第一プレス部において、前記プレス鋼板片の外形を打ち抜く第一工程と、
前記第一ダイを回転させて前記プレス鋼板片を環状に配置して連結し、前記環状鋼板を形成する第二工程を備え、
前記第一工程は、N/M回の前記プレス鋼板片を打ち抜く工程において、
一回目に前記プレス鋼板片を打ち抜くときは、前記補助パンチを前記第一状態にして、前記第一ダイに保持される前記プレス鋼板片を押下して補正し、
二回目からN/M回目までに前記プレス鋼板片を打ち抜くときは、前記補助パンチを前記第二状態にして、前記第一ダイに保持される前記プレス鋼板片の前記上下方向の位置を補正された状態に保持する積層鋼板製造方法。
【請求項10】
前記第二工程は、N/M回の前記プレス鋼板片の打ち抜きと、打ち抜き後の一方向への回転によって前記環状鋼板を形成し、
前記第一ダイは、一回目から((N/M)-1)回目までの打ち抜き後は、毎回360/N度の角度回転させ、N/M回目の打ち抜き後は、360/(2×N)度の角度回転させる請求項9に記載の積層鋼板製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、順送型の積層鋼板製造装置、及び積層鋼板製造装置を用いた積層鋼板製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、中大型の回転機の固定子に用いられる積層鉄心を製造する場合に、分割型固定子を打ち抜いた後に組み合わせて環状の鉄心を製作する製造装置、及び製造方法が提案されていた。例えば、特許文献1の記載の製造装置は、単コア片の一端または他端の凹形状部を選択的に打ち抜く単部打ち抜き部、単コア片の全体を打ち抜く全体打ち抜き部を備えた金型と、電磁鋼板を金型に送る送り装置と、打ち抜かれた単コア片を受ける積層部を有し、積層部に受けた単コア片を順次円環状に移動させることにより凸形状部と凹形状部とを対向させて単コア片を配列する積層装置を備える。
【0003】
これによれば、製造装置は単コア片単位で打ち抜くので、打ち抜き荷重は小さくてすみ、小型で安価なプレス機及び金型を使用することができる。また、各層間の単コア片は、凸形状部で重なり合うように積層されているので、磁気特性がよく、かつ、各層間で凸形状部の向きが逆向きになっているので、凸形状部と凹形状部との嵌め合わせ部が積層方向において単コア片間に挟まれ、機械強度(剛性)に優れた積層鉄心が得られる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の発明は、以下の課題がある。
図17を参照して説明する。
図17(a)に示すように、鋼板材130から単コア片131が打ち抜かれるとき、すでに打ち抜かれた単コア片131が下金型105内に積層され、通常はダイ122の内周部とスクイズリング142によって支持されている。この状態から、
図17(b)に示すように、上金型104におけるパンチ121と下金型105におけるダイ122とによって単コア片131が打ち抜かれる。
【0006】
このとき、パンチ121によって単コア片131が打ち抜かれるのと同時に、下金型105内にすでに積層され、円環状に連結されて積層された積層コア136も同時に下側へ押される。すると、パンチ121によって押された部分のみが下側へ押下され、パンチ121によって押されない部分はダイ122によって保持されているので下側へ下降しない。すると、本来なら打ち抜かれた単コア片131の上面131bと、すでに打ち抜かれて積層された積層コア136の上面136aとは、単コア片131の板厚分Tの段差が生じるところ、
図17(b)に示すように、逆に打ち抜かれた単コア片131の上面131bが下側に下がってしまい板厚分Tのズレが生じてしまう。よって、積層されるべき単コア片131が上下方向に波打つ状態となるか、或いは積層できないという課題がある。
【0007】
本発明の目的は、プレス鋼板片を下金型内で環状鋼板を形成して積層する装置において、積層鋼板の積層方向に生じる段差又は隙間を低減する積層鋼板製造装置、及び積層鋼板製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様に係る積層鋼板製造装置は、搬送方向に間欠的に搬送される帯状の鋼板材を、所定の形状のプレス鋼板片に打ち抜いて環状に配置して環状鋼板を形成し、積層する装置であって、前記鋼板材を所定の形状に打ち抜くために、前記搬送方向と直交する上下方向において相対的に移動可能な上金型及び下金型と、前記鋼板材を搬送する搬送経路を含む搬送装置と、前記上金型と前記下金型において、前記プレス鋼板片を打ち抜くプレス部を備え、前記プレス部は、前記プレス鋼板片の外形を打ち抜いて前記鋼板材から分離する第一プレス部を含み、前記第一プレス部は、前記上金型に第一パンチと補助パンチを備え、前記下金型に第一ダイを備え、前記第一ダイは、前記第一パンチと協働で打ち抜かれる前記プレス鋼板片を内部に保持可能であり、前記第一ダイは、前記第一プレス部にて前記プレス鋼板片が打ち抜かれる毎に、第一プレス部中心を中心とする周方向に所定角度ずつ回転可能であり、前記補助パンチは、前記上金型の移動に伴って、前記第一パンチと同期して前記上下方向に移動し、前記第一ダイに保持される前記プレス鋼板片を押下可能であり、前記補助パンチの下端面は、前記上下方向において、前記第一パンチの下端であるプレス面よりも前記鋼板材の板厚分下側に突出する第一状態と、前記プレス面と同一高さか又は前記プレス面よりも上側に凹む第二状態とに設定可能である。
【0009】
これによれば、積層鋼板製造装置は、補助パンチが第一状態と第二状態とを選択可能であり、すでに打ち抜かれ第一ダイに保持されるプレス鋼板片を補助パンチによって押下することができる。よって、第一パンチによって打ち抜かれるプレス鋼板片に対して、第一ダイに保持されるプレス鋼板片の上下高さを補正することができる。補助パンチが第一状態のとき、補助パンチの下端面はプレス面よりも鋼板材の板厚分下側に突出するので、第一ダイに保持されるプレス鋼板片の上端面の高さを、第一パンチによって打ち抜かれるプレス鋼板片の上端面よりも板厚分下降させて適正位置に補正することができる。また、補助パンチが第二状態のとき、補助パンチの下端面は、プレス面と同一高さか又はプレス面よりも上側に凹むので、第一ダイに保持されたプレス鋼板片の上端面の高さを補正された状態に維持することができる。よって、積層鋼板製造装置は、プレス鋼板片が打ち抜かれる毎に第一ダイが周方向に回転することで環状に配置され、補助パンチによって積層方向に生じる段差又は隙間が低減された状態でプレス鋼板片を積層することができる。
【0010】
また、前記積層鋼板製造装置は、Nが自然数であり、前記第一プレス部は、前記周方向に前記プレス鋼板片をN枚連結することで前記環状鋼板を形成可能であり、前記第一ダイは、前記環状鋼板を保持可能な円筒状の中空を備え、前記第一パンチと前記補助パンチは、前記中空において相対的に前記上下方向に移動可能であり、前記補助パンチは、前記中空のうち前記上下方向に直交する平面方向において、前記第一パンチが配置される領域を除く領域に配置されてもよい。
【0011】
この場合、補助パンチは、中空のうち上下方向に直交する平面方向において、第一パンチが配置される領域を除く領域に配置されるので、第一パンチとは独立して作動させることができる。また、補助パンチは、第一パンチが配置される領域を除く領域において、プレス鋼板片を押下することができる。よって、第一パンチがプレス鋼板片を打ち抜くときに、すでに打ち抜かれたプレス鋼板片との上下位置を適正に補正し、積層方向に生じる段差又は隙間を低減することができる。
【0012】
また、前記積層鋼板製造装置は、Mが、Nの約数であり、かつN未満であり、前記第一プレス部は、前記第一パンチが前記周方向において均等の角度間隔でM箇所に配置され、前記第一プレス部の上流側に前記搬送経路がM個形成され、前記上金型が前記下金型に対して相対的に前記上下方向に一回移動する毎に、M枚の前記プレス鋼板片が形成されてもよい。
【0013】
この場合、上金型が下金型に対して相対的に上下方向に一回移動する毎に、M枚のプレス鋼板片が形成されるので、さらに製造時間を短縮できる。
【0014】
また、前記積層鋼板製造装置は、前記補助パンチを、前記第一状態及び前記第二状態のいずれかの状態に設定する補助パンチ制御装置を備え、前記環状鋼板は、N/M回の前記プレス鋼板片の打ち抜きによって形成され、前記補助パンチ制御装置は、前記第一プレス部が一回目を打ち抜くときは、前記補助パンチを前記第一状態に制御し、二回目からN/M回目までを打ち抜くときは、前記補助パンチを前記第二状態に制御してもよい。
【0015】
この場合、補助パンチ制御装置は、第一プレス部が一回目を打ち抜く際に生じる段差に対し、すでに打ち抜かれたプレス鋼板片との上下位置を補正するよう補助パンチを制御する。二回目からN/M回目までを打ち抜くときは補正されたプレス鋼板片の上下位置を維持するよう補助パンチを制御する。よって、第一パンチがプレス鋼板片を打ち抜くときに、すでに打ち抜かれたプレス鋼板片との上下位置を適正に補正し、さらにその状態を維持できるので、積層方向に生じる段差又は隙間を低減することができる。
【0016】
また、前記積層鋼板製造装置は、前記第一ダイを前記周方向に所定角度回転させるダイ回転制御装置を備え、前記環状鋼板は、N/M回の前記プレス鋼板片の打ち抜きと、さらに打ち抜き後の一方向への回転によって形成され、前記ダイ回転制御装置は、前記第一ダイが、一回目から((N/M)-1)回目までの打ち抜き後は、毎回360/N度の角度回転するよう制御し、N/M回目の打ち抜き後は、360/(2×N)度の角度回転するよう制御してもよい。
【0017】
この場合、第一ダイは、ダイ回転制御装置によって、N/M回目の打ち抜き後に360/(2×N)度の角度回転するよう制御されるので、周方向に隣接するプレス鋼板片との間で生じる境界が、積層方向に一枚毎に互い違いになる。よって、周方向における連結部に発生しやすい上下方向における段差が重なることを防止し、積層方向に生じる段差又は隙間をより低減することができ、さらに強度を高めることができる。
【0018】
また、前記積層鋼板製造装置の前記プレス部は、前記第一プレス部よりも前記搬送方向の上流側にあって、前記プレス鋼板片の形状の一部を打ち抜く第二プレス部を備え、前記第一プレス部は、前記プレス鋼板片の外形部のみが打ち抜かれるよう形成され、前記第二プレス部は、前記鋼板材の前記搬送方向の下流側の端部が前記第一プレス部に搬送されるまでに、該第一プレス部によって打ち抜かれる繋ぎ部を除き、前記プレス鋼板片以外の部分を取り除くように形成されてもよい。
【0019】
この場合、鋼板材は、第一プレス部に搬送されるまでに、第一プレス部によって打ち抜かれる繋ぎ部を除き、第二プレス部によってプレス鋼板片以外の部分が取り除かれる。よって、第一ダイにプレス鋼板片以外の端材が混入することを低減できるので、積層方向に生じる段差又は隙間をより低減する積層鋼板製造装置を提供することができる。また、下流側に端材を搬送する必要が無いので、搬送装置を簡略化することができる。
【0020】
また、前記積層鋼板製造装置は、前記プレス部が、前記プレス鋼板片の外形に凹部又は/及び凸部を含めた鋼板係合部を形成可能であり、前記第一ダイは、周方向の少なくとも一部にダイ凹凸部を備え、前記プレス鋼板片に前記鋼板係合部が形成されるとき、前記ダイ凹凸部が該鋼板係合部に係合しながら回転可能でもよい。
【0021】
この場合、第一ダイが回転するとき、鋼板係合部がダイ凹凸部に係合されてプレス鋼板片が回転するので、より確実に打ち抜かれたプレス鋼板片を回転させることができる。よって、積層鋼板の積層方向においてプレス鋼板片が不適正に重なることが抑制され、積層方向に生じる段差又は隙間をより低減する積層鋼板製造装置を提供することができる。
【0022】
また、前記積層鋼板製造装置は、前記ダイ凹凸部の少なくとも一部は、前記第一プレス部中心からの径方向において略逆台形状に形成され、前記プレス部は、前記鋼板係合部の凹部又は/及び凸部を、前記径方向において略逆台形状に形成可能であり、前記プレス鋼板片に前記鋼板係合部が形成されるとき、前記ダイ凹凸部が前記鋼板係合部に係合すると、前記径方向において前記ダイ凹凸部と前記鋼板係合部とが互いにかみ合ってもよい。
【0023】
この場合、ダイ凹凸部が鋼板係合部に係合すると、第一プレス部中心からの径方向において、ダイ凹凸部と鋼板係合部とが互いにかみ合うので、鋼板片が径方向にずれることを抑制できる。よって、周方向に隣接するプレス鋼板片は、互いに位置ずれが抑制された状態で連結することができる。
【0024】
本発明の第二の態様に係る積層鋼板製造方法は、前記積層鋼板製造装置によって前記プレス鋼板片を形成し、環状に配置して前記環状鋼板とし、積層して積層鋼板を製造する製造方法であって、前記第一プレス部において、前記プレス鋼板片の外形を打ち抜く第一工程と、前記第一ダイを回転させて前記プレス鋼板片を環状に配置して連結し、前記環状鋼板を形成する第二工程を備え、前記第一工程は、N/M回の前記プレス鋼板片を打ち抜く工程において、一回目に前記プレス鋼板片を打ち抜くときは、前記補助パンチを前記第一状態にして、前記第一ダイに保持される前記プレス鋼板片を押下して補正し、二回目からN/M回目までに前記プレス鋼板片を打ち抜くときは、前記補助パンチを前記第二状態にして、前記第一ダイに保持される前記プレス鋼板片の前記上下方向の位置を補正した状態に保持する。
【0025】
これによれば、積層鋼板製造方法は、一回目にプレス鋼板片を打ち抜くときは、補助パンチを第一状態にして、すでに打ち抜かれて第一ダイに保持されるプレス鋼板片を押下して上下位置を補正する。二回目からN/M回目までにプレス鋼板片を打ち抜くときは、補助パンチを第二状態にして、第一ダイに保持されるプレス鋼板片の上下方向の位置を補正された状態に保持する。よって、打ち抜くプレス鋼板片と、すでに打ち抜かれて第一ダイに保持されるプレス鋼板片との上下位置を適正状態にできるので、積層方向に生じる段差又は隙間を低減した積層鋼板を製造することができる。
【0026】
また、前記プレス鋼板片製造方法は、前記第二工程が、N/M回の前記プレス鋼板片の打ち抜きと、打ち抜き後の一方向への回転によって前記環状鋼板を形成し、前記第一ダイは、一回目から((N/M)-1)回目までの打ち抜き後は、毎回360/N度の角度回転させ、N/M回目の打ち抜き後は、360/(2×N)度の角度回転させてもよい。
【0027】
この場合、第一ダイは、N/M回目の打ち抜き後に360/(2×N)度の角度回転するので、周方向に隣接するプレス鋼板片との間で生じる境界が、積層方向に一枚毎に互い違いになる。よって、積層方向に生じる段差又は隙間をより低減することができ、さらに強度を高める積層鋼板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の第一実施形態の積層鋼板製造装置1aを示す平面図である。
【
図2】
図1の断面I-Iであり、補助パンチ23の第一状態を示す断面図である。
【
図3】
図1の断面I-Iであり、補助パンチ23の第二状態を示す断面図である。
【
図4】プレス鋼板片31を示した図であり、(a)はプレス鋼板片31が連結される前の状態を示し、(b)はプレス鋼板片31が周方向に連結された状態を示す。
【
図5】
図2の断面II-IIであり、プレス鋼板片31の一回目からN回目までの打ち抜き工程と、次の一回目打ち抜きのための準備工程を示した断面図である。
【
図6】
図5(a)の断面V-Vを示し、(a)はプレス鋼板片31を打ち抜く前の状態を示し、(b)はプレス鋼板片31を打ち抜いた状態を示す。
【
図7】
図5(c)の断面VI-VIを示し、(a)はプレス鋼板片31を打ち抜く前の状態を示し、(b)はプレス鋼板片31を打ち抜いた状態を示す。
【
図8】本発明の積層鋼板製造装置1によって製造した積層鋼板36の正面図である。
【
図9】
図2における断面III-IIIであり、積層鋼板製造装置1aにおける第一パンチ21を示す断面図である。
【
図10】
図2における断面IV-IVであり、積層鋼板製造装置1における第一ダイ22を示す断面図である。
【
図11】(a)は
図9におけるA部詳細図であり、(b)は
図10におけるB部詳細図である。
【
図12】本発明の第二実施形態の積層鋼板製造装置1bを示す平面図である。
【
図13】本発明の第二実施形態の積層鋼板製造装置1bを示し、
図2の断面II-IIに相当し、プレス鋼板片31の一回目からN/M回目までの打ち抜き工程と、次の一回目打ち抜きのための準備工程を示した断面図である。
【
図14】本発明の第三実施形態の積層鋼板製造装置1cを示す平面図である。
【
図15】本発明の第三実施形態の積層鋼板製造装置1cを示し、
図2の断面II-IIに相当し、プレス鋼板片31の一回目からN/M回目までの打ち抜き工程と、次の一回目打ち抜きのための準備工程を示した断面図である。
【
図16】積層鋼板製造装置1の制御装置50を示すブロック図である。
【
図17】従来例の積層鋼板製造装置101を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照し、本発明を具現化した積層鋼板製造装置1、及びプレス鋼板片製造方法を説明する。なお、発明を実施するための形態、及び参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものである。本発明はこれらに限定されるものではない。図面に記載されている構成は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0030】
<各実施形態の積層鋼板製造装置1に共通する構成と効果>
本発明の第一の態様に係る積層鋼板製造装置1の構成を説明する。まず、
図1から
図11までを参照して、各実施形態に共通する構成を第一実施形態の積層鋼板製造装置1aを例に説明する。積層鋼板製造装置1は、搬送方向に間欠的に搬送される帯状の鋼板材30を、所定の形状のプレス鋼板片31に打ち抜いて環状に配置して環状鋼板32を形成し、積層して積層鋼板36を形成する。積層鋼板製造装置1は、いわゆる、順送型のプレス金型装置である。積層鋼板36は、一例として、回転電機装置における電機子の鉄心として使用されるものであり、この場合プレス鋼板片31は鉄心片である。
【0031】
<第一の構成>
積層鋼板製造装置1の第一の構成を説明する。
図2及び
図3に示すように、積層鋼板製造装置1は、鋼板材30を所定の形状に打ち抜くために、搬送方向と直交する上下方向において相対的に移動可能な上金型4及び下金型5と、鋼板材30を搬送する搬送経路3を含む搬送装置6を備える。さらに、
図1に示すように、上金型4と下金型5において、プレス鋼板片31を打ち抜くプレス部2を備える。
図1等に示す例では、プレス部2は搬送方向に所定の間隔をおいて複数形成される。プレス部2は、プレス鋼板片31の外形を打ち抜いて鋼板材30から分離する第一プレス部11を含む。なお、
図1等に示す例では、第一プレス部11よりも搬送方向の上流側にあって、プレス鋼板片31の形状の一部を打ち抜く第二プレス部12を備える。第一プレス部11は、上金型4に第一パンチ21と補助パンチ23を備え、下金型5に第一ダイ22を備える。
【0032】
図2、
図3、及び
図6、
図7に示すように、第一ダイ22は、第一パンチ21と協働で打ち抜かれるプレス鋼板片31を内部に保持可能である。第一ダイ22は、第一プレス部11にてプレス鋼板片31が打ち抜かれる毎に、第一プレス部中心Cを中心とする周方向に所定角度ずつ回転可能である。補助パンチ23は、上金型4の移動に伴って、第一パンチ21と同期して上下方向に移動し、第一ダイ22に保持されるプレス鋼板片31を押下可能である。
図2及び
図6に示すように、補助パンチ23の下端面26は、上下方向において、第一パンチ21の下端であるプレス面20よりも鋼板材30の板厚分T下側に突出する第一状態と、
図3及び
図7に示すように、プレス面20と同一高さか又はプレス面20よりも上下方向の上側に凹む第二状態とを選択可能である。プレス鋼板片31は、第一プレス部11において連続して打ち抜かれる。
【0033】
図6(a)は、第一パンチ21が鋼板材30を打ち抜く直前の状態を示す。この場合、第一ダイ22に保持されるすでに打ち抜かれたプレス鋼板片31は、周方向に環状に配置されて連結され、積層された積層鋼板36の最上段部を示す。積層鋼板36の上端面36aは、第一ダイ22の中空29のうち、上下方向と直交する平面方向において、略同一高さの場合である。後述するが、
図6(a)は、周方向にN枚が連結されて環状鋼板32が形成されるとき、1回目にプレス鋼板片31を打ち抜く場合を示す。
【0034】
図6(b)は、第一パンチ21が鋼板材30を打ち抜いた直後の状態を示す。補助パンチ23の下端面26は、第一パンチ21のプレス面20よりも下側に鋼板材30の板厚分T突出しているので、鋼板材30が打ち抜かれると同時に、補助パンチ23が積層鋼板36の上端面36aを押下する。積層鋼板36の上端面36aは、適正な上下高さに補正された状態となる。
【0035】
図6(a)の状態において、積層鋼板36は前回の打ち抜きが終了したときの状態なので、上端面36aは第一パンチ21のプレス面20が打ち抜いた直後の高さに保持されている。この状態で、仮に積層鋼板36の上端面36aを押下しないと、すでに説明した
図17に示すように、第一パンチ21によって打ち抜かれたプレス鋼板片31の高さと積層鋼板36の上端面36aの高さとの間に鋼板材30の板厚分T段差が生じる。
【0036】
なお、
図6は第一ダイ22にプレス鋼板片31、又は積層鋼板36が保持される場合について説明したが、保持されていない状態、すなわち最下層の積層鋼板36を形成するためプレス鋼板片31を打ち抜く場合も同様である。この場合、補助パンチ23は、プレス鋼板片31または積層鋼板36の最上段を押下する代わりに、積層鋼板36を下側から支持するスクイズリング42を押下する。
【0037】
図7(a)は、
図6を参照して説明した、積層鋼板36の上端面36aの高さが補正された後に、次のプレス鋼板片31を打ち抜く直前の状態を示す。詳細は後述するが、二回目以降にプレス鋼板片31を打ち抜く場合である。
図7に示す例は、第一パンチ21のプレス面20と補助パンチ23の下端面26とが同一高さの場合を示す。
図5の場合を例にして、周方向にN=6枚が連結されて環状鋼板32が積層される場合、積層鋼板36の最上段のプレス鋼板片31の枚数が、1から(N-1)=5までの状態である。
【0038】
図7(b)に示すように、プレス鋼板片31は、積層鋼板36の最上段のうち周方向においてまだ積層されていない領域に打ち抜かれる。この場合、第一パンチ21によってプレス鋼板片31が打ち抜かれて押下される。補助パンチ23は、積層鋼板36の上端面36aには作用しない。ただし、仮に積層鋼板36の最上段が上下方向に凹凸を有している場合、補助パンチ23が最上段のうち上側に突出する部分を押下して、適正な高さ位置に補正する。なお、補助パンチ23の下端面26は、プレス面20よりも上側に凹んでいてもよい。積層鋼板36の最上段が適正な高さに保持されていれば、補助パンチ23は作用しないからである。例えば、補助パンチ23が第二状態のときは、第一パンチ21と同時に下降しなくてもよい。
【0039】
図16に示すように、積層鋼板製造装置1は、制御装置50によって制御される。制御装置50は、入力装置51が入出力インターフェース60に接続され、ROM62及びRAM63からの情報を加えてCPU61に入力信号が伝達され、ダイ回転制御処理、補助パンチ制御処理、搬送駆動源駆動処理、及び金型昇降駆動処理が行われる。作成する積層鋼板36に必要な指示内容が入力装置51に入力され、各種の駆動処理及び制御が行われる。第一ダイ22は、制御装置50によってダイ用モータ駆動回路52が制御され、ダイ用モータ40が駆動される。
図2及び
図3に示すように、鋼板材30は、搬送駆動回路53が制御されて搬送駆動源54が駆動され、搬送装置6によって上流側からの押出方式によって送り出されて搬送される。
【0040】
上金型4は、金型昇降駆動回路55が制御されて金型昇降駆動源56が駆動され、昇降する。第一パンチ21と補助パンチ23は上金型4に備えられ、上金型4が上下方向に移動するのに伴って上下方向に移動する。第一パンチ21と補助パンチ23は、いずれも第一ダイ22の中空29に対して上下方向に移動可能である。補助パンチ23は、補助パンチ駆動回路57が制御され、補助パンチ駆動源27であるエアシリンダーの作動によって、第一状態と第二状態に設定される。
【0041】
<第一の構成による効果>
以上説明した第一の構成によれば、以下の効果を奏する。積層鋼板製造装置1は、補助パンチ23が第一状態と第二状態とを選択可能であり、すでに打ち抜かれ第一ダイ22に保持されるプレス鋼板片31を押下することができる。よって、第一パンチ21によって打ち抜かれるプレス鋼板片31に対して、第一ダイ22に保持されるプレス鋼板片31の上下高さを補正することができる。
【0042】
図6に示すように、補助パンチ23が第一状態のとき、補助パンチ23の下端面26はプレス面20よりも鋼板材30の板厚分T下側に突出する。よって、第一ダイ22に保持されるプレス鋼板片31である積層鋼板36の上端面36aの高さを、第一パンチ21によって打ち抜かれるプレス鋼板片31の上端面31bよりも板厚分T下降させて適正位置に補正することができる。
【0043】
また、
図7に示すように、補助パンチ23が第二状態のとき、補助パンチ23の下端面26は、プレス面20と同一高さか又はプレス面20よりも上側に凹むので、第一ダイ22に保持されたプレス鋼板片31の上端面31bの高さを補正された状態に維持することができる。よって、積層鋼板製造装置1は、プレス鋼板片31が打ち抜かれる毎に第一ダイ22が周方向に回転することで環状に配置され、補助パンチ23によって積層方向に生じる段差又は隙間が低減された状態でプレス鋼板片31を積層することができる。
【0044】
<第二の構成>
次に、積層鋼板製造装置1の第二の構成を説明する。Nは自然数であり、第一プレス部11は、周方向にプレス鋼板片31をN枚連結することで環状鋼板32を形成可能である。
図4(a)に示すように、プレス鋼板片31には、周方向に連結される一方の端部に係合凸部31cが形成され、他方の端部に係合凹部31dが形成される。第一ダイ22は、第一プレス部11にてプレス鋼板片31が打ち抜かれる毎に、第一プレス部中心Cの周方向に所定角度ずつ回転し、次に第一プレス部11においてプレス鋼板片31が打ち抜かれると、
図4(b)に示すように、係合凸部31cと係合凹部31dとが嵌まり合って連結される。なお、ここでの所定角度は、プレス鋼板片31が周方向に連結されるように、互いの端部が一致するように回転させる角度である。
【0045】
図5に示す例は、Nが6の場合を示す。
図6及び
図7に示すように、第一ダイ22は、環状鋼板32を収納可能な円筒状の中空29を備える。第一パンチ21と補助パンチ23は、中空29において相対的に上下方向に移動可能である。
図5(a)に示すように、補助パンチ23は、中空29のうち上下方向に直交する平面方向において、第一パンチ21が配置される領域を除く領域に配置される。
【0046】
<第二の構成による効果>
以上説明した第二の構成によれば、以下の効果を奏する。
図5(a)に示すように、積層鋼板製造装置1の補助パンチ23は、中空29のうち上下方向に直交する平面方向において、第一パンチ21が配置される領域を除く領域に配置されるので、第一パンチ21とは独立して作動させることができる。また、補助パンチ23は、第一パンチ21が配置される領域を除く領域において、中空29にプレス鋼板片31があるときに押下することができる。よって、第一パンチ21がプレス鋼板片31を打ち抜くときに、すでに打ち抜かれて第一ダイ22に保持されるプレス鋼板片31との上下位置を適正に補正し、積層方向に生じる段差又は隙間を低減することができる。
【0047】
<第三の構成>
次に、積層鋼板製造装置1の第三の構成を説明する。Mは、Nの約数であり、かつN未満であり、第一プレス部11は、第一パンチ21が周方向において均等の角度間隔でM箇所に配置される。例えば、Nが6の場合、Mは1、2、3のいずれかであり、Nが8の場合、Mは1、2、4のいずれかである。上金型4が下金型5に対して相対的に上下方向に一回移動する毎に、M枚のプレス鋼板片31が形成される。Mは後述する各実施形態によって異なる。
図1及び
図5に示すように、第一実施形態の積層鋼板製造装置1aは、Nが6であり、Mが1の場合であり、搬送経路3は一つである。第一実施形態以外の他の実施形態については後述する。
【0048】
また、後述するように、プレス部2が第二プレス部12を含む場合、第二プレス部12は、それぞれの第一パンチ21における搬送方向の上流側のM箇所に備えられる。搬送経路3は、第一プレス部11と第二プレス部12とを結ぶ方向にM個形成される。
【0049】
<第三の構成による効果>
以上説明した第三の構成によれば、以下の効果を奏する。積層鋼板製造装置1は、上金型4が下金型5に対して相対的に上下方向に一回移動する毎に、M枚のプレス鋼板片31が形成されるので、すでに説明した効果に加えて製造時間を短縮できる。
図1から
図11までに示す第一実施形態の積層鋼板製造装置1aは、Mが1なので上金型4が下金型5に対して相対的に上下方向に一回移動すると1枚のプレス鋼板片31が形成されるが、後述する第二実施形態の積層鋼板製造装置1b、及び第三実施形態の積層鋼板製造装置1cは、複数枚のプレス鋼板片31が形成される。
【0050】
<第四の構成>
次に、積層鋼板製造装置1の第四の構成を説明する。
図16に示すように、積層鋼板製造装置1は、補助パンチ23を、第一状態及び第二状態のいずれかの状態に設定する補助パンチ制御装置59を備える。補助パンチ制御装置59は、補助パンチ駆動源27であるエアシリンダーと、補助パンチ駆動回路57を備える。
【0051】
環状鋼板32は、N/M回のプレス鋼板片31の打ち抜きによって形成される。補助パンチ制御装置59は、第一プレス部11が一回目を打ち抜くときは、
図6等に示すように補助パンチ23を第一状態に制御する。二回目からN/M回目までを打ち抜くときは、
図7等に示すように、補助パンチ23を第二状態に制御する。
【0052】
図2、
図5(a)、及び
図6は、一回目にプレス鋼板片31を打ち抜く状態を示す。第一パンチ21のプレス面20に対して、補助パンチ23の下端面26が鋼板材30の板厚分T下側に突出した第一状態である。
図2に示すように、第一状態は、補助パンチスライドカム24が、補助パンチ駆動源27であるエアシリンダーによって図示の左側へ押され、補助パンチ23が下側へ押し下げられた状態である。
【0053】
図2及び
図6に示すように、一回目にプレス鋼板片31が打ち抜かれるときは、プレス鋼板片31が第一パンチ21によって打ち抜かれるのと同時に下側に押下される。一回目にプレス鋼板片31が打ち抜かれるときは、第一ダイ22に保持されているプレス鋼板片31は、周方向に連結されて環状鋼板32の状態である。このとき、環状鋼板32が積層された積層鋼板36は、スクイズリング42と第一ダイ22の中空29における内周壁に保持された状態である。第一ダイ22に保持されているプレス鋼板片31は、第一状態にある補助パンチ23によって第一パンチ21と同時に下側へ押下される。これにより、第一ダイ22において打ち抜かれた状態に保持されていたプレス鋼板片31は、補助パンチ23によって押下されることによって、上下位置が補正される。
【0054】
図3、
図5(b)、
図5(c)、及び
図7は、二回目からN/M回目までに打ち抜く状態を示す。
図3に示すように、第二状態は、補助パンチスライドカム24が、補助パンチ駆動源27であるエアシリンダーによって図示の右側へ引かれる。補助パンチ23は、補助パンチバネ25によって押し上げられ、下端面26が第一パンチ21のプレス面20と同一高さ、或いはプレス面20よりも上側の位置になる。
【0055】
図3及び
図7に示すように、中空29に保持されているすでに打ち抜かれたプレス鋼板片31は、板厚分T下側に押下されて上下位置が補正された状態である。よって、二回目以降にプレス鋼板片31が打ち抜かれるときは、第一ダイ22に保持されているプレス鋼板片31が凹凸無く正しく補正されていれば、補助パンチ23はプレス鋼板片31に対して作用しない。ただし、仮にプレス鋼板片31が部分的に上側に突出していると、補助パンチ23によって押下され上下位置が補正される。
【0056】
<第四の構成による効果>
以上説明した第三の構成によれば、以下の効果を奏する。
図2、
図5(a)、及び
図6に示すように、補助パンチ23は、補助パンチ制御装置59によって、一回目に打ち抜く際に生じる段差に対し、すでに打ち抜かれたプレス鋼板片31との上下位置を補正する。
図3、
図5(b)、
図5(c)、及び
図7に示すように、二回目からN/M回目までを打ち抜くときは補正されたプレス鋼板片31の上下位置を維持するよう制御される。よって、第一パンチ21がプレス鋼板片31を打ち抜くときに、すでに打ち抜かれたプレス鋼板片31との上下位置を適正に補正し、さらにその状態を維持できるので、積層方向に生じる段差又は隙間を低減することができる。
【0057】
<第五の構成>
次に、積層鋼板製造装置1の第五の構成を説明する。
図16に示すように、積層鋼板製造装置1は、第一ダイ22を周方向に所定角度回転させるダイ回転制御装置58を備える。環状鋼板32は、N/M回のプレス鋼板片31の打ち抜きと、さらに打ち抜き後の一方向への回転によって形成される。ダイ回転制御装置58は、ダイ用モータ40と、ダイ用モータ駆動回路52を備える。
図2及び
図3に示すように、ダイ用モータ40と第一ダイ22とは、駆動ベルト41によって連結され、駆動ベルト41によってダイ用モータ40の回転が第一ダイ22に伝達されて回転する。
【0058】
図5(a)から
図5(c)までに示すように、ダイ回転制御装置58は、第一ダイ22が、一回目から((N/M)-1)回目までの打ち抜き後は、毎回Rである360/N度の角度回転するよう制御する。
図5(d)に示すように、N/M回目の打ち抜き後は、R/2である360/(2×N)度の角度回転するよう制御する。
【0059】
図5(a)から
図5(d)までの回転方向は同一方向で、例として図示の時計回りに回転する。例として、Nが6でMが1のときは、1回目から5回目までの打ち抜き後にそれぞれRである60度回転させ、6回目に打ち抜いた後はR/2である30度回転させる。
【0060】
図8は、プレス鋼板片31が上下方向に複数枚積層された積層鋼板36の正面図である。
図5(a)から
図5(d)までの工程によって、プレス鋼板片31の周方向における境界37は、上下方向において一枚毎に等角度間隔でずれて積載される。
【0061】
<第五の構成による効果>
以上説明した第五の構成によれば、以下の効果を奏する。第一ダイ22は、ダイ回転制御装置58によって、N/M回目の打ち抜き後に360/(2×N)度の角度回転する。周方向に隣接するプレス鋼板片31との間で生じる境界37が、積層方向に一枚毎に互い違いになる。よって、積層鋼板製造装置1は、周方向における連結部に発生しやすい上下方向における段差が重なることを防止し、積層方向に生じる段差又は隙間をより低減することができ、さらに強度を高めることができる。
【0062】
<第六の構成>
次に、積層鋼板製造装置1の第六の構成を説明する。
図1等を例に示すように、積層鋼板製造装置1のプレス部2は、第一プレス部11よりも搬送方向の上流側にあって、プレス鋼板片31の形状の一部を打ち抜く第二プレス部12を備える。第一プレス部11は、プレス鋼板片31の外形部のみが打ち抜かれるよう形成される。第二プレス部12は、鋼板材30の搬送方向の下流側の端部が第一プレス部11に搬送されるまでに、第一プレス部11によって打ち抜かれる繋ぎ部35を除き、プレス鋼板片31以外の部分を取り除くように形成される。
【0063】
図1等に示すように、鋼板材30は、第二プレス部12によってパイロット穴33、スロット34の穴加工が行われ、さらに、トリム部13によって、繋ぎ部35以外の外形が加工される。鋼板材30は、プレス鋼板片31を形成する部分以外は取り除かれた状態で第一プレス部11に搬送される。
【0064】
<第六の構成による効果>
以上説明した第六の構成によれば、以下の効果を奏する。積層鋼板製造装置1は、第二プレス部12によって、鋼板材30が第一プレス部11に搬送されるまでに、第一プレス部11によって打ち抜かれる繋ぎ部35を除き、第二プレス部12によってプレス鋼板片31以外の部分が取り除かれる。よって、第一ダイ22にプレス鋼板片31以外の端材が混入することを低減できるので、積層方向に生じる段差又は隙間をより低減することができる。また、下流側に端材を搬送する必要が無いので、搬送装置6を簡略化することができる。後述するように、第二実施形態の積層鋼板製造装置1b、及び第三実施形態の積層鋼板製造装置1cに特に効果がある。
【0065】
<第七の構成>
次に、積層鋼板製造装置1の第七の構成を説明する。
図11に示すように、積層鋼板製造装置1は、プレス部2が、プレス鋼板片31の外形に凹部又は/及び凸部を含めた鋼板係合部31aを形成可能である。第一ダイ22は、周方向の少なくとも一部にダイ凹凸部28を備える。プレス鋼板片31に鋼板係合部31aが形成されるとき、ダイ凹凸部28は鋼板係合部31aに係合しながら回転可能である。すなわち、第一ダイ22が回転するとき、鋼板係合部31aがダイ凹凸部28に係合されてプレス鋼板片31が回転する。鋼板係合部31aは、第一プレス部11又は/及び第二プレス部12において形成される。
【0066】
また、
図11に示すように、積層鋼板製造装置1は、ダイ凹凸部28の少なくとも一部は、第一プレス部中心Cからの径方向において略逆台形状に形成される。プレス部2は、鋼板係合部31aの凹部又は/及び凸部を、第一プレス部中心Cからの径方向において略逆台形状に形成可能である。プレス鋼板片31に鋼板係合部31aが形成されるとき、ダイ凹凸部28が鋼板係合部31aに係合すると、第一プレス部中心Cからの径方向においてダイ凹凸部28と鋼板係合部31aとが互いにかみ合う。
【0067】
図11(a)は、プレス鋼板片31の外形形状の一部を例示し、鋼板係合部31aは凹凸を含む形状が形成される。
図11(b)は、鋼板係合部31aに対応して第一ダイ22の内周壁に凹凸を含む形状が形成されるダイ凹凸部28を示す。対応する凹凸は、互いに係合し合う形状であり、鋼板係合部31aの一つの凹部は角度θ1であり、ダイ凹凸部28の凸部の角度はθ1であり、同様に、他の凹凸における角度θ2、角度θ3、角度θ4、及び角度θ5も互いに係合可能に形成される。ダイ凹凸部28と鋼板係合部31aの凹凸は、それぞれ第一プレス部中心Cからの径方向において、略逆台形状である。それぞれの凹凸における角度θ1から角度θ5までは、第一プレス部中心Cを中心とする回転に対して、互いの係合面が食い込むように形成される。
【0068】
鋼板係合部31aとダイ凹凸部28とが、第一プレス部中心Cに対する周方向に係合する凹凸面は、第一プレス部中心Cから径方向に仮想線を引いたときに交差する。なお、鋼板係合部31aは、プレス部2のうち第一プレス部11以外で形成されてもよく、その場合はプレス鋼板片31が環状鋼板32に形成されるときを想定した仮想中心から径方向において略逆台形状に形成される。
【0069】
図9及び
図10に示すように、第一パンチ21と第一ダイ22は、周方向における所定の角度毎に位相が一致するよう形成される。プレス鋼板片31が周方向に占める角度がRの場合、周方向において第一パンチ21と第一ダイ22は、角度R/2の単位で同様の形状が繰り返し形成される。第五の構成で説明したように、第一ダイ22は、プレス鋼板片31のうち、一回目から(N/M)-1回目までを打ち抜き後に毎回360/N度の角度回転するよう制御され、N/M回目を打ち抜き後に360/(2×N)度の角度回転するよう制御される。
【0070】
例として、Nが6の場合、第一ダイ22は、一回目から(N/M)-1回目までの打ち抜き後に毎回60度回転し、N/M回目を打ち抜き後に30度回転する。この場合、Rは60度であり、第一パンチ21と第一ダイ22は、R/2=30度単位で周方向に同様の形状が繰り返される。すなわち、周方向において、第一パンチ21は固定され、第一ダイ22は、プレス鋼板片31を打ち抜き後に60度回転する場合と30度回転する場合とがある。いずれの場合においても、第一パンチ21と第一ダイ22とが干渉することなくプレス鋼板片31を打ち抜くよう構成されている。
【0071】
<第七の構成による効果>
以上説明した第七の構成によれば、以下の効果を奏する。
図11に示すように、積層鋼板製造装置1は、第一ダイ22が回転するとき、鋼板係合部31aがダイ凹凸部28に係合されてプレス鋼板片31が回転するので、より確実に打ち抜かれたプレス鋼板片31を回転させることができる。よって、積層鋼板36の積層方向においてプレス鋼板片31が不適正に重なることが抑制され、積層方向に生じる段差又は隙間をより低減することができる。
【0072】
また、
図11に示すように、ダイ凹凸部28が鋼板係合部31aに係合すると、第一プレス部中心Cからの径方向において、ダイ凹凸部28と鋼板係合部31aとが互いにかみ合うので、プレス鋼板片31が径方向にずれることを抑制できる。よって、周方向に隣接するプレス鋼板片31は、互いに位置ずれが抑制された状態で連結することができる。
【0073】
<第一実施形態の積層鋼板製造装置1aの構成と効果>
次に、本発明の第一の態様に係る第一実施形態の積層鋼板製造装置1aを説明する。積層鋼板製造装置1aの構成は、
図1から
図11までを参照してすでに共通の構成において説明済みであるが、他の実施形態との違いは、上金型4と下金型5による一回の打ち抜き動作によって、プレス鋼板片31が一枚形成される点である。
図1に示すように、第一プレス部11aの上流側には、一つの搬送経路3において第二プレス部12aが形成される。
図2に示すように、第一プレス部11aには、一対の第一パンチ21aと第一ダイ22a、及び補助パンチ23aが備えられる。この構成によれば、共通の構成による種々の効果に加えて、装置の構成を簡略化できるので精度の高い積層鋼板36を製造可能な積層鋼板製造装置1aを提供することができる。
【0074】
<第二実施形態の積層鋼板製造装置1bの構成>
次に、
図12及び
図13を参照して、本発明の第一の態様に係る第二実施形態の積層鋼板製造装置1bを説明する。積層鋼板製造装置1bは、共通の構成における第三の構成において説明したMが2の場合である。
図12に示すように、積層鋼板製造装置1bは、第一プレス部11bを中心として180度の方向に二つの搬送経路3が形成され、それぞれの搬送経路3に第二プレス部12bが形成される。第二プレス部12aと同様に、鋼板材30は、第二プレス部12bによってパイロット穴33、スロット34の穴加工が行われ、さらに、トリム部13によって、繋ぎ部35以外の外形が加工される。鋼板材30は、プレス鋼板片31を形成する部分以外は取り除かれた状態で第一プレス部11bに搬送される。
【0075】
図13は、第一実施形態の積層鋼板製造装置1aにおける
図5に対応した図である。
図13(a)に示すように、第一パンチ21bは第二プレス部12bが形成される位置に合わせて、周方向に180度対向して形成される。補助パンチ23bは、第一パンチ21bが配置される領域を除く領域の二箇所に配置される。
図13(b)及び
図13(c)に示すように、第一ダイ22bは、プレス鋼板片31のうち、一回目から((N/M)-1)回目までの打ち抜き後に毎回360/N度の角度回転するよう制御される。さらに、
図13(d)に示すように、N/M回目を打ち抜き後に360/(2×N)度の角度回転するよう制御される。第五の構成で説明した内容である。
【0076】
図13に示す例では、Nが6であり、Mは6の約数のうちの2である。Rは一枚のプレス鋼板片31が周方向に占める角度を示し、Nが6の場合は60度である。N/M回目、すなわち、3回目を打ち抜いた後に、第一ダイ22bが30度回転する。積層鋼板製造装置1bは、N枚のプレス鋼板片31による環状鋼板32が、N/M=6/2=3回の打ち抜き工程で形成される。
【0077】
<第二実施形態の積層鋼板製造装置1bの効果>
以上説明した第二実施形態の積層鋼板製造装置1bの構成によれば、以下の効果を奏する。
図13に示すように、積層鋼板製造装置1bは、第三の構成から第五の構成までに説明したMが2なので、上金型4が下金型5に対して相対的に上下方向に一回移動する毎に、二枚のプレス鋼板片31が形成される。よって、製造時間を短縮する積層鋼板製造装置1bを提供することができる。なお、第六の構成で説明したように、鋼板材30は、プレス鋼板片31を形成する部分以外は取り除かれた状態で第一プレス部11bに搬送されるので、搬送経路3が複数の方向に形成されても、第一プレス部11bで打ち抜かれた後の端材を処理する必要が無い。
【0078】
<第三実施形態の積層鋼板製造装置1cの構成>
次に、
図14及び
図15を参照して、本発明の第一の態様に係る第三実施形態の積層鋼板製造装置1cを説明する。積層鋼板製造装置1cは、共通の構成における第三の構成において説明したMが4の場合である。ここで示す例は、Nが8の場合であり、Mは8の約数のうちの4の場合である。
図14に示すように、積層鋼板製造装置1cは、第一プレス部11cを中心として90度毎に四つの搬送経路3が形成され、それぞれの搬送経路3に第二プレス部12cが形成される。第二プレス部12aと同様に、鋼板材30は、第二プレス部12cによってパイロット穴33、スロット34の穴加工が行われ、さらに、トリム部13によって、繋ぎ部35以外の外形が加工される。鋼板材30は、プレス鋼板片31を形成する部分以外は取り除かれた状態で第一プレス部11cに搬送される。
【0079】
図15は、第一実施形態の積層鋼板製造装置1aにおける
図5に対応した図である。
図15(a)に示すように、第一パンチ21cは第二プレス部12cが形成される位置に合わせて、周方向に90度毎の四箇所に形成される。補助パンチ23cは、第一パンチ21cが配置される領域を除く領域の四箇所に配置される。
【0080】
図15(b)に示すように、第一ダイ22cは、プレス鋼板片31のうち、一回目から((N/M)-1)回目までを打ち抜き後に毎回360/N度の角度回転するよう制御され、
図15(c)に示すように、N/M回目を打ち抜き後に360/(2×N)度の角度回転するよう制御される。
図15の例では、Nが8であり、Mは8の約数のうちの4である。この場合、(N/M)-1=8/4-1=1となり、N/M=8/4=2である。すなわち、
図15(b)に示すように、一回目の打ち抜き後に、第一ダイ22cは360/N=360/8=45度回転し、
図15(c)に示すように、二回目を打ち抜き後に360/(2×N)=360/(2×8)=22.5度回転する。積層鋼板製造装置1cは、N枚のプレス鋼板片31による環状鋼板32が、N/M=8/4=2回の打ち抜き工程で形成される。
【0081】
<第三実施形態の積層鋼板製造装置1cの効果>
以上説明した第三実施形態の積層鋼板製造装置1cの構成によれば、以下の効果を奏する。
図15に示すように、積層鋼板製造装置1cは、第三の構成から第五の構成までに説明したMが4なので、上金型4が下金型5に対して相対的に上下方向に一回移動する毎に、4枚のプレス鋼板片31が形成される。
図15の例では、Nが8なので、二回の打ち抜き工程で、周方向に繋がる環状鋼板32を形成することができる。よって、製造時間をより短縮できる積層鋼板製造装置1cを提供することができる。なお、第六の構成で説明したように、鋼板材30は、プレス鋼板片31を形成する部分以外は取り除かれた状態で第一プレス部11cに搬送されるので、搬送経路3が複数の方向に形成されても、第一プレス部11cで打ち抜かれた後の端材を処理する必要が無い。
【0082】
<積層鋼板製造方法の説明>
次に、本発明の第二の態様に係る積層鋼板製造方法を説明する。積層鋼板製造方法は、積層鋼板製造装置1によって鋼板材30を打ち抜いてプレス鋼板片31を形成し、環状に配置して環状鋼板32とし、積層して積層鋼板36を製造する製造方法である。積層鋼板製造方法は、
図1等に示すように、第一プレス部11において、プレス鋼板片31の外形を打ち抜く第一工程と、
図5等に示すように、第一ダイ22を回転させてプレス鋼板片31を環状に配置して連結する第二工程を備える。なお、プレス部2が第二プレス部12を含む場合、第一工程にプレス鋼板片31の形状の一部を打ち抜く工程が含まれる。
【0083】
第一工程は、
図2及び
図6に示すように、N/M回のプレス鋼板片31を打ち抜く工程において、一回目のプレス鋼板片31を打ち抜くときは、補助パンチ23を第一状態にして、すでに打ち抜かれたプレス鋼板片31を押下する。二回目からN/M回目までにプレス鋼板片31を打ち抜くときは、
図3及び
図7に示すように、補助パンチ23を第二状態にして、第一ダイ22に保持されるプレス鋼板片31の上下方向の位置を補正された状態に保持する。なお、第一ダイ22に保持されているプレス鋼板片31が凹凸無く正しく補正されていれば、補助パンチ23はプレス鋼板片31に作用しない。ただし、仮にプレス鋼板片31が部分的に上側に突出していると、補助パンチ23が押下して上下位置を補正する。
【0084】
また、
図5等に示すように、第二工程は、N/M回のプレス鋼板片31の打ち抜きと、打ち抜き後の一方向への回転によって環状鋼板32を形成する。第一ダイ22は、一回目から((N/M)-1)回目までの打ち抜き後は、毎回360/N度の角度回転させ、N/M回目の打ち抜き後は、360/(2×N)度の角度回転させる。
【0085】
また、
図9及び
図11に示すように、第一工程において、第一プレス部11又は/及び第二プレス部12は、プレス鋼板片31の外形に凹部又は/及び凸部を含む鋼板係合部31aを形成する。第一ダイ22は、鋼板係合部31aに係合可能なダイ凹凸部28を備える。第二工程において、第一ダイ22は、ダイ凹凸部28に鋼板係合部31aを係合してプレス鋼板片31を回転させる。
【0086】
<積層鋼板製造方法の効果>
以上説明した積層鋼板製造方法によれば、以下の効果を奏する。積層鋼板製造方法は、
図2及び
図6に示すように、一回目にプレス鋼板片31を打ち抜くときは、補助パンチ23を第一状態にして、すでに打ち抜かれて第一ダイ22に保持されるプレス鋼板片31を押下する。
図3及び
図7に示すように、二回目からN/M回目までにプレス鋼板片31を打ち抜くときは、補助パンチ23を第二状態にして、第一ダイ22に保持されるプレス鋼板片31の上下方向の位置を補正された状態に保持する。よって、打ち抜くプレス鋼板片31と、すでに打ち抜かれて第一ダイ22に保持されるプレス鋼板片31との上下位置を適正状態にできるので、積層方向に生じる段差又は隙間を低減した積層鋼板36を製造することができる。
【0087】
また、
図5等に示すように、第一ダイ22は、N/M回目の打ち抜き後に360/(2×N)度の角度回転するので、周方向に隣接するプレス鋼板片31との間で生じる境界37が、積層方向に一枚毎に互い違いになる。よって、周方向の連結部に生じやすい段差が上下方向に重なることを防止し、積層方向に生じる段差又は隙間をより低減することができ、さらに強度を高める積層鋼板36を製造することができる。
【0088】
また、
図9及び
図11に示すように、第一ダイ22が回転するとき、ダイ凹凸部28が鋼板係合部31aを係合してプレス鋼板片31を回転するので、より確実に打ち抜かれたプレス鋼板片31を回転させることができる。よって、積層鋼板製造方法は、積層鋼板36の積層方向においてプレス鋼板片31が不適正に重なることを抑制し、積層方向に生じる段差又は隙間をより低減する積層鋼板36を製造することができる。
【符号の説明】
【0089】
1、1a、1b、1c 積層鋼板製造装置
2 プレス部
3 搬送経路
4 上金型
5 下金型
6 搬送装置
11、11a、11b、11c 第一プレス部
12、12a、12b、12c 第二プレス部
20 プレス面
21、21a、21b、21c 第一パンチ
22、22a、22b、22c 第一ダイ
23、23a、23b、23c 補助パンチ
26 下端面
28 ダイ凹凸部
29 中空
30 鋼板材
31 プレス鋼板片
31a 鋼板係合部
32 環状鋼板
35 繋ぎ部
36 積層鋼板
50 制御装置
58 ダイ回転制御装置
59 補助パンチ制御装置
C 第一プレス部中心
T 板厚分