(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154642
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】歯科用組成物、歯科切削加工用レジン材料、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 6/831 20200101AFI20241024BHJP
A61K 6/887 20200101ALI20241024BHJP
A61K 6/40 20200101ALI20241024BHJP
A61K 6/30 20200101ALI20241024BHJP
A61K 6/20 20200101ALI20241024BHJP
A61K 6/60 20200101ALI20241024BHJP
A61K 6/71 20200101ALI20241024BHJP
【FI】
A61K6/831
A61K6/887
A61K6/40
A61K6/30
A61K6/20
A61K6/60
A61K6/71
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068578
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】515279946
【氏名又は名称】株式会社ジーシー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】棚澤 公貴
(72)【発明者】
【氏名】庄司 拓未
(72)【発明者】
【氏名】薄 大輔
(72)【発明者】
【氏名】樋口 晃司
【テーマコード(参考)】
4C089
【Fターム(参考)】
4C089AA02
4C089AA10
4C089AA12
4C089BA12
4C089BA13
4C089BC06
4C089BD02
4C089BD05
4C089BE03
4C089CA03
4C089CA04
4C089CA08
(57)【要約】
【課題】機械的強度の高い歯科切削加工用レジン材料が得られる歯科用組成物を提供すること。
【解決手段】ウレタン基、ウレア基、及びカーボネート基からなる群から選択される基を1つのみ有する重合性単量体、及び、無機充填材、を含有する、歯科用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン基、ウレア基、及びカーボネート基からなる群から選択される基を1つのみ有する重合性単量体、及び、
無機充填材、
を含有する、歯科用組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の歯科用組成物を重合硬化してなる、歯科切削加工用レジン材料。
【請求項3】
請求項1に記載の歯科用組成物を重合硬化する、歯科切削加工用レジン材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用組成物、歯科切削加工用レジン材料、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、歯科用補綴物の製造では、コンピュータを利用して画面上でクラウンやブリッジ等の補綴物の設計が行われ、切削加工によって補綴物を製造するCAD/CAM装置が適用されることで、一定の品質の歯科用補綴物を短時間で安定供給できるようになっている。
【0003】
CAD/CAM装置における切削加工では、形状を切り出す前の材料として、歯科用レジンをブロック状に形成した歯科切削加工用レジン材料(歯科用レジンブロック、歯科用ミルブランクとも言う)が用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような歯科切削加工用レジン材料としては、口腔内での安定性担保のため、更に機械的強度の高いものが望まれている。
【0006】
本発明の課題は、機械的強度の高い歯科切削加工用レジン材料が得られる歯科用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、ウレタン基、ウレア基、及びカーボネート基からなる群から選択される基を1つのみ有する重合性単量体、及び、無機充填材、を含有する、歯科用組成物である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、機械的強度の高い歯科切削加工用レジン材料が得られる歯科用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明を実施するための形態を説明する。
【0010】
<歯科用組成物>
本実施形態の歯科用組成物は、ウレタン基、ウレア基、及びカーボネート基からなる群から選択される基(以下、ウレタン基等という)を1つのみ有する重合性単量体、及び、無機充填材、を含有する。本明細書において、歯科用組成物とは、歯科材料に用いられる組成物を示す。
【0011】
ウレタン基は、-NHCOO-で表される結合基である。ウレア基は、-NHCONH-で表される結合基である。カーボネート基は、-OCOO-で表される結合基である。
【0012】
ウレタン基等を1つのみ有する重合性単量体は、ウレタン基等を1つ含有し、2つ以上のウレタン基等を含有しない。
【0013】
ウレタン基等を1つのみ有する重合性単量体は、特に限定されず、例えば、ウレタン基等を1つのみ含有する(メタ)アクリレートである。本明細書において、(メタ)アクリレートは、メタクリロイルオキシ基及び/又はアクリロイルオキシ基(以下、(メタ)アクリロイルオキシ基という)を有する化合物を示す。
【0014】
ウレタン基等を1つのみ含有する(メタ)アクリレートは、好ましくは(メタ)アクリロイルオキシ基を2以上有する(メタ)アクリレートである。
【0015】
ウレタン基等を1つのみ含有する(メタ)アクリレートは、例えば、下記式(1)で表される。
【0016】
【0017】
式(1)において、A1、A2は、各々独立に、炭素数3以下のアルキル基を側鎖に有してもよい(メタ)アクリロイルオキシ基又は(メタ)アクリルアミド基であり、Bはウレタン基であり、R1、R2は、各々独立に、(メタ)アクリロイルオキシ基又は(メタ)アクリルアミド基を側鎖に有してもよい炭素数8以下のアルキル基である。
【0018】
ここで、(メタ)アクリルアミド基は、メタクリルアミド基及び/又はアクリルアミド基を意味する。なお、アクリルアミド基は、-NHCO(CH=CH2)で表される置換基を示す。
【0019】
なお、A1、A2は、上記(メタ)アクリロイルオキシ基又は(メタ)アクリルアミド基の側鎖に有するアルキル基の炭素数が2以下であること、又は上記(メタ)アクリロイルオキシ基又は(メタ)アクリルアミド基の側鎖にアルキル基を有さないことが好ましい。また、R1、R2は、上記アルキル基の炭素数が5以下であることが好ましい。
【0020】
なお、R1、R2は、上記アルキル基の炭素数が9以上であるとウレタン基等を1つのみ有する重合性単量体が歪みやすく、このような重合性単量体を含有する歯科用組成物を硬化して得られた硬化物の機械的強度が十分に得られない。
【0021】
上記式(1)で表される(メタ)アクリレートは、特に限定されないが、例えば、下記式(2)~(6)で表されるウレタン基を1つのみ含有する(メタ)アクリレートである。
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
ウレタン基等を1つのみ有する重合性単量体の歯科用組成物中の含有量は、特に限定されないが、5質量%以上30質量%以下が好ましく、10質量%以上28質量%以下がより好ましく、15質量%以上25質量%以下が更に好ましい。ウレタン基等を1つのみ有する重合性単量体の含有量が10質量%以上27質量%以下であると、歯科用組成物の硬化物が高い機械的強度を維持することができる。
【0028】
なお、ウレタン基等を1つのみ有する重合性単量体の含有量は、歯科用組成物の用途により異なるが、歯科用組成物が歯科切削加工用レジン材料用途の場合、5質量%以上30質量%以下が好ましく、10質量%以上25質量%以下がより好ましい。
【0029】
無機充填材は、無機材料からなり、粒子の状態で樹脂組成物に含まれる。無機充填材は、特に限定されず、例えば、バリウムガラス、ストロンチウムガラス、シリカ微粉末等が挙げられる。
【0030】
無機充填材は、疎水化処理されたものを用いることが好ましい。無機充填材の疎水化処理には、例えば、シランカップリング剤が用いられる。シランカップリング剤は、例えば、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、8-メタクリロイルオキシオクチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0031】
シランカップリング剤の使用量は、無機充填材を構成する無機材料100質量%に対して好ましくは0.1質量%以上15質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上10質量%以下、更に好ましくは1質量%以上5質量%以下である。
【0032】
主となる無機充填材の粒径は、例えば、0.1μm以上100μm以下が好ましく、0.15μm以上70μm以下がより好ましく、0.1μm以上50μm以下が更に好ましい。ここで、粒径とは、メジアン径(d50)で定義される平均粒子径を意味する。
【0033】
無機充填材の歯科用組成物中の含有量は、特に限定されないが、70質量%以上90質量%以下が好ましく、72質量%以上85質量%以下がより好ましく、75質量%以上82質量%以下が更に好ましい。無機充填材の含有量が70質量%未満であると、機械的強度が十分に得られない。また、90質量%を超えると、歯科用組成物の粘度が著しく上昇することにより、歯科用組成物を硬化させる際に硬化物中に気泡が発生する等の不具合が生じる場合がある。
【0034】
なお、無機充填材の歯科用組成物中の含有量は、歯科用組成物の用途により異なるが、歯科用組成物が歯科切削加工用レジン材料用途の場合は、70質量%以上90質量%以下が好ましく、75質量%以上85質量%以下がより好ましい。
【0035】
本実施形態の歯科用組成物は、更に、ウレタン基等を1つのみ含有する重合性単量体以外の重合性単量体(以下、その他の重合性単量体という)を含有してもよい。
【0036】
その他の重合性単量体としては、ウレタン基を有さない(メタ)アクリレート、ウレタン基を2以上有する(メタ)アクリレートを用いることができる。
【0037】
その他の重合性単量体としては、例えば、2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン(Bis-MPEPP)、グリセロールジメタクリレート(GDMA)、ネオペンチルグリコールジメタクリレート(NPGDMA)、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、ビスフェノールAグリシジルメタクリレート(Bis-GMA)、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート(DCP)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPT)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(A-DPH)等が挙げられる。
【0038】
ウレタン基を2以上有する(メタ)アクリレートとして、ジ-2-メタクリロイルオキシエチル-2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジカルバメート(UDMA)等が挙げられる。
【0039】
なお、その他の重合性単量体は、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0040】
その他の重合性単量体の歯科用組成物中の含有量は、特に限定されないが、1質量%以上70質量%以下が好ましく、5質量%以上60質量%以下がより好ましく、10質量%以上50質量%以下が更に好ましい。ウレタン基等を1つのみ有する重合性単量体の含有量が10質量%以上27質量%以下であると、歯科用組成物の硬化物が高い機械的強度を維持することができる。
【0041】
本実施形態の歯科用組成物は、本発明の目的を損なわない限り、その他の成分を任意に含有してもよい。歯科用組成物に含まれるその他の成分は、例えば、重合開始剤、重合促進剤、重合禁止剤、連鎖移動剤、フィラー(上記の無機充填材を除く)、着色材、顔料、蛍光剤、抗菌剤等である。
【0042】
重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物が挙げられる。重合開始剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
重合開始剤の歯科用組成物中の含有量は、特に限定されないが、例えば、0.005質量%以上10質量以下であり、好ましくは0.01質量%以上5質量%以下であり、更に好ましくは0.1質量%以上3質量%以下である。歯科用組成物中の重合開始剤の含有量が0.005質量%以上10質量以下であると、歯科用組成物を硬化させる際の重合効率が向上する。
【0044】
フィラーとしては、例えば、シリカジルコニア、シリカアルミナ等の上記無機充填材以外の無機充填材、有機無機複合フィラー、クラスターフィラー等が挙げられる。なお、フィラーは、疎水化処理されたものを用いることが好ましい。フィラーの疎水化処理には、例えば、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤を用いることができる。
【0045】
顔料としては、例えば、酸化鉄、酸化チタン等が挙げられる。
【0046】
蛍光剤としては、ジエチル-2,5-ジヒドロキシテレフタレート等が挙げられる。
【0047】
本実施形態の歯科用組成物では、上述のように、ウレタン基等を1つのみ有する重合性単量体を含有するが、ウレタン基等を1つのみ有する重合性単量体は、2つ以上のウレタン基を含有する重合性単量体より相対的に粘度が低くなる傾向がある。そのため、このようなウレタン基等を1つのみ有する重合性単量体を含有することで、従来よりも無機充填材の含有量を増やすことが可能であり、歯科用組成物の重合硬化物における機械的強度(例えば、曲げ強度)を向上させることができる。
【0048】
本実施形態の歯科用組成物は、このように重合硬化物の機械的強度を向上させる効果が得られる観点から、各種の歯科材料に用いることができる。
【0049】
歯科材料としては、例えば、歯科切削加工用レジン材料、歯科充填用コンポジットレジン、歯科用硬質レジン、歯科用暫間修復材、歯科用充填材、歯科用セメント、歯科用接着材(歯冠修復物接着用プライマー含む)、歯科用プライマー、歯面コーティング材、歯磨剤などが挙げられる。本実施形態の歯科用組成物は、これらの中でも、歯科切削加工用レジン材料、に好適に用いられる。
【0050】
<歯科切削加工用レジン材料>
本実施形態の歯科切削加工用レジン材料は、上述の歯科用組成物を重合硬化して形成することができる。すなわち、本実施形態の歯科切削加工用レジン材料では、上述の歯科用組成物が用いられる。
【0051】
なお、歯科用組成物を重合硬化する態様としては、特に限定されないが、加熱重合、化学重合、光重合等の重合方法が例示される。
【0052】
本実施形態の歯科切削加工用レジン材料では、本実施形態の歯科用組成が用いられるため、該歯科用組成物の効果がそのまま得られる。すなわち、ウレタン基等を1つのみ有する重合性単量体と無機充填材を含有する歯科用組成物を重合硬化することで、硬化物として得られる歯科切削加工用レジン材料の機械的強度を向上させることができる。
【0053】
<歯科切削加工用レジン材料の製造方法>
本実施形態に係る歯科切削加工用レジン材料の製造方法は、上述の歯科用組成物を重合硬化する工程を有する。すなわち、本実施形態に係る歯科切削加工用レジン材料の製造方法では、上述の歯科用組成物が用いられる。
【0054】
なお、歯科用組成物を重合硬化する態様としては、特に限定されず、上述の歯科切削加工用レジン材料において、歯科用組成物を重合硬化する際の重合方法と同様の重合方法(加熱重合、化学重合、光重合等)が用いられる。
【0055】
歯科用組成物を重合硬化するための重合条件は、任意である。例えば、重合温度は、50℃以上200℃以下であり、好ましくは80℃以上180℃以下、より好ましくは110℃以上150℃以下である。また、重合時間は、20分以上360分以下であり、好ましくは60分以上240分以下、より好ましくは100分以上180分以下である。
【0056】
なお、歯科用組成物の重合は加圧下で行ってもよい。この場合の圧力は1.0MPa以上10.0MPa以下であり、好ましくは2.0MPa以上8.0MPa以下、更に好ましくは3.0MPa以上5.0MPa以下である。
【0057】
本実施形態に係る歯科切削加工用レジン材料の製造方法では、本実施形態の歯科用組成物が用いられるため、該歯科用組成物の効果がそのまま得られる。すなわち、ウレタン基等を1つのみ有する重合性単量体と無機充填材を含有する歯科用組成物を重合硬化することで、硬化物として得られる歯科切削加工用レジン材料の機械的強度を向上させることができる。
【0058】
本実施形態に係る歯科切削加工用レジン材料の製造方法では、歯科用組成物に含まれる重合性単量体としてウレタン基等を1つのみ有する重合性単量体を用いるだけで歯科切削加工用レジン材料を製造することができる。すなわち、本実施形態の製造方法では、単一のモノマーのみで、歯科切削加工用レジン材料を製造することができる。
【0059】
なお、単一モノマーではなく混合配合では、他のモノマーの純度に依るバラつきが懸念されるリスクがある(複数になるほどリスクが増える)。また、単一モノマーではなく混合配合では、モノマーが均一に混ざらないおそれがある(品質の均一性が低下するリスクが増える)。
【0060】
これに対して、本実施形態に係る歯科切削加工用レジン材料の製造方法では、単一のモノマーのみで、歯科切削加工用レジン材料を製造することができるので、製造工程が減ることによる異物混入のリスクを低減することができる。また、歯科切削加工用レジン材料を単一のモノマーのみで製造することで、製造工程が簡素化されるため、材料、設備等の観点で製造コストを低減することができる。
【実施例0061】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。なお、単位のない数値又は「部」は、特に断りのない限り、質量基準(質量%)である。
【0062】
<歯科切削加工用レジン材料(レジンブロック)の作製>
歯科用組成物として歯科切削加工用レジン材料(レジンブロック)を作製した。まず、硬化性重合性単量体(モノマー)と重合開始剤(BPO)を表1、表2の組成比で混合してモノマー液を調製した。
【0063】
なお、表1、表2中の記号又は略称で示される成分は、以下のとおりである。
・mUDMA:上記式(3)で表される(メタ)アクリレート
・mUA/MA-1:上記式(2)で表される(メタ)アクリレート
・mUA/MA-2:上記式(4)で表される(メタ)アクリレート
・mUTMA:上記式(5)で表される(メタ)アクリレート
・mUAA/MA:上記式(6)で表される(メタ)アクリレート
・UDMA:ジ-2-メタクリロイルオキシエチル-2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジカルバメート
・D-2.6E:エトキシ基の平均付加モル数が2.6である2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン
・GDMA:グリセロールジメタクリレート
・NPGDMA:ネオペンチルグリコールジメタクリレート
・TEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート
・BPO:過酸化ベンゾイル(重合開始剤)
・シラン処理ガラス:8-メタクリロイルオキシオクチルトリメトキシシランで表面処理したバリウムガラスパウダー(平均粒子径:0.7μm)
・シリカ微粉末:アエロジル(日本アエロジル社製、AEROSILは登録商標)
【0064】
モノマー液及び無機充填材(シリカ微粉末+シラン処理ガラス)を表3、表4の配合比[質量%]にて自転公転ミキサー(又はダブルプラネタリ)で混合してペーストを調製した。このペーストを成型容器に充填し、100~130℃、1.0~5.0MPa窒素加圧下で60~180分間重合硬化してブロック硬化体(実施例1~16及び比較例1~5)を得た。
【0065】
<ペースト粘度>
レオメータ(アントンパール社製、MCR 302e)を用い、25℃にてせん断速度1[1/s]における、ペーストの粘度を測定した。
【0066】
<曲げ試験>
ダイヤモンドカッターにて、ブロック硬化体から1.2mm×4.0mm×14.0mmの試験片を切り出し、試験片の各面をP2000の耐水研磨紙で仕上げた。万能試験機(島津製作所社製、AG-Xplus)を用いて、支点間距離:12mm、クロスヘッドスピード:1.0mm/minの条件で3点曲げ試験を行い、3点曲げ強さ及び曲げ弾性率を測定した。
【0067】
3点曲げ強さは、下記式(7)に従って算出した。
【0068】
【数1】
式(7)において、Fは曲げ試験で測定した最大荷重[N]、Sは支点間距離[mm]、bは試験直前に測定した試験片の幅[mm]、hは試験直前に測定した試験片の厚さ[mm]である。3点曲げ強さの評価は、3点曲げ強さが310MPa以上を良好とし、310MPa未満を不良と判定した。
【0069】
曲げ弾性率は、3点曲げ試験で得られたひずみ-応力曲線から割線法に基づいて算出した。曲げ弾性率の評価は、曲げ弾性率が8GPa以上を良好とし、8GPa未満を不良と判定した。
【0070】
<切削加工性>
切削加工機(ジーシー社製、AadvaハーモニーWET)によりブロック硬化体を切削したときの接触加工性を確認した。接触加工性は、従来の歯科切削加工用レジン材料(ブロック硬化体の従来品)と比較して、従来品と同等か否かを評価した。
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
表1、表3から、ウレタン基を1つのみ有する重合性単量体、及び、無機充填材、を含有する、歯科用組成物を用いて得られたレジンブロックは、3点曲げ強さ、曲げ弾性率のいずれも良好であった(実施例1~16)。
【0076】
これに対して、表2、表4から、ウレタン基を1つのみ有する重合性単量体を含有しない歯科用組成物を用いて得られたレジンブロックは、3点曲げ強さが不良であり(比較例1~5)、このうちの一部は曲げ弾性率も不良であった(比較例1~2)。
【0077】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。