(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154644
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】情報認証システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 20/40 20120101AFI20241024BHJP
【FI】
G06Q20/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】37
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068581
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】300076633
【氏名又は名称】コグニティブリサーチラボ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100096105
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 広
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】苫米地 英人
【テーマコード(参考)】
5L020
5L055
【Fターム(参考)】
5L020AA72
5L055AA72
(57)【要約】
【課題】高い真正性を確保することが可能な情報認証システムを提供する。
【解決手段】情報認証システム(100)の第二情報処理装置(300)はユーザーの第一情報処理装置からハッシュ値(211)を受信すると、最も高精度な分解能を有する時計(330)から得た受信時刻の情報とそのハッシュ値(211)とを統合したタイムスタンプトークン(350)を作成し、タイムスタンプトークン(350)をユーザーの第一情報処理装置に送信する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザーが使用する第一情報処理装置と、
認証者が使用する第二情報処理装置と、
からなる情報認証システムであって、
前記第一情報処理装置は、
前記ユーザーが指定する情報をハッシュ値に変換する変換装置と、
ネットワークを介して前記第二情報処理装置と通信を行うユーザー側通信装置と、
を備えており、
前記第二情報処理装置は、
前記ネットワークを介して前記第一情報処理装置の前記ユーザー側通信装置と通信を行う認証者側通信装置と、
制御装置と、
前記第一情報処理装置から前記ハッシュ値を受信した受信時刻を前記制御装置に知らせる計時手段と、
を備えており、
前記計時手段はその時点において最も高精度な分解能を有する時計からなり、
前記制御装置は、
前記ハッシュ値と、前記ハッシュ値の受信時刻の情報とを統合したタイムスタンプトークンを作成し、
前記認証者側通信装置を介して前記タイムスタンプトークンを前記第一情報処理装置に送信するものである情報認証システム。
【請求項2】
前記計時手段は光格子時計であることを特徴とする請求項1に記載の情報認証システム。
【請求項3】
前記第一情報処理装置は携帯式電話装置からなるものであることを特徴とする請求項1に記載の情報認証システム。
【請求項4】
前記第二情報処理装置は印刷装置をさらに備えており、
前記制御装置は前記印刷装置を介して前記タイムスタンプトークンを媒体に印刷することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の情報認証システム。
【請求項5】
前記第二情報処理装置は暗号化装置をさらに備えており、
前記制御装置は前記暗号化装置を介して前記タイムスタンプトークンを暗号に変換し、前記印刷装置を介して当該暗号を媒体に印刷することを特徴とする請求項4に記載の情報認証システム。
【請求項6】
前記暗号は電子透かしであることを特徴とする請求項5に記載の情報認証システム。
【請求項7】
前記第二情報処理装置は復号化装置をさらに備えており、
前記復号化装置は、前記暗号化装置により変換された暗号を復号するものであることを特徴とする請求項5に記載の情報認証システム。
【請求項8】
前記媒体はシールであることを特徴とする請求項4に記載の情報認証システム。
【請求項9】
前記シールは、当該シールを対象物に貼り付けた後に当該対象物から剥がすと前記タイムスタンプトークンが破壊される構造を有することを特徴とする請求項8に記載の情報認証システム。
【請求項10】
タイムスタンプトークンが印刷されたシールであって、
前記タイムスタンプトークンは、
ユーザーによって指定され、ハッシュ値に変換された情報と、
前記タイムスタンプトークンが印刷された時刻の情報と、
を含み、
前記時刻はその時点において最も高精度な分解能を有する計時手段によって計時されたものであるシール。
【請求項11】
前記タイムスタンプトークンは暗号に変換されたものであることを特徴とする請求項10に記載のシール。
【請求項12】
前記暗号は電子透かしであることを特徴とする請求項11に記載のシール。
【請求項13】
前記シールは、当該シールを対象物に貼り付けた後に当該対象物から剥がすと前記タイムスタンプトークンが破壊される構造を有することを請求項10乃至12の何れか一項に記載のシール。
【請求項14】
タイムスタンプトークンが印刷された紙幣または紙幣代替物であって、
前記タイムスタンプトークンは、
ユーザーによって指定され、ハッシュ値に変換された情報と、
前記タイムスタンプトークンが印刷された時刻の情報と、
を含み、
前記時刻はその時点において最も高精度な分解能を有する計時手段によって計時されたものである紙幣または紙幣代替物。
【請求項15】
前記タイムスタンプトークンは暗号に変換されたものであることを特徴とする請求項14に記載の紙幣または紙幣代替物。
【請求項16】
前記暗号は電子透かしであることを特徴とする請求項15に記載の紙幣または紙幣代替物。
【請求項17】
前記紙幣または紙幣代替物は、前記タイムスタンプトークンが印刷された時点から一定時間の経過とともにその額が減少するように設定されていることを特徴とする請求項14乃至16の何れか一項に記載の紙幣または紙幣代替物。
【請求項18】
前記一定時間は半減期であり、半減期経過時に前記紙幣または紙幣代替物の額が半分になることを特徴とする請求項17に記載の紙幣または紙幣代替物。
【請求項19】
ネットワークを介してユーザーの情報処理装置と通信を行う通信装置と、
制御装置と、
前記ユーザーの情報処理装置から情報を受信した受信時刻を前記制御装置に知らせる計時手段と、
を備える情報処理装置であって、
前記通信装置は、前記ユーザーの情報処理装置(200)から送信されてきたハッシュ値を受信し、
前記計時手段はその時点において最も高精度な分解能を有する時計からなり、
前記制御装置は、
前記通信装置が受信した前記ハッシュ値に前記受信時刻の情報を統合したタイムスタンプトークンを作成し、
前記通信装置を介して前記タイムスタンプトークンを前記ユーザーの情報処理装置に送信するものである情報処理装置。
【請求項20】
前記計時手段は光格子時計であることを特徴とする請求項19に記載の情報処理装置。
【請求項21】
前記情報処理装置は印刷装置をさらに備えており、
前記制御装置は前記印刷装置を介して前記タイムスタンプトークンを媒体に印刷することを特徴とする請求項19または20に記載の情報処理装置。
【請求項22】
前記情報処理装置は暗号化装置をさらに備えており、
前記制御装置は前記暗号化装置を介して前記タイムスタンプトークンを暗号に変換し、前記印刷装置を介して当該暗号を媒体に印刷することを特徴とする請求項21に記載の情報処理装置。
【請求項23】
前記暗号は電子透かしであることを特徴とする請求項22に記載の情報処理装置。
【請求項24】
前記情報処理装置は復号化装置をさらに備えており、
前記復号化装置は、前記暗号化装置により変換された暗号を復号するものであることを特徴とする請求項22に記載の情報処理装置。
【請求項25】
前記媒体はシールであることを特徴とする請求項21に記載の情報処理装置。
【請求項26】
前記シールは、当該シールを対象物に貼り付けた後に当該対象物から剥がすと前記タイムスタンプトークンが破壊される構造を有することを特徴とする請求項25に記載の情報処理装置。
【請求項27】
ネットワークを介してユーザーの情報処理装置から受信したハッシュ値からなる情報を処理する方法であって、
前記ユーザーの情報処理装置から前記ハッシュ値を受信した時刻を示す受信時刻情報を取得する第一の過程と、
前記ハッシュ値に前記受信時刻情報を統合したタイムスタンプトークンを作成する第二の過程と、
前記タイムスタンプトークンを前記ユーザーの情報処理装置に送信する第三の過程と、
を備え、
前記時刻はその時点において最も高精度な分解能を有する計時手段によって計時されたものである情報処理方法。
【請求項28】
印刷装置を介して前記タイムスタンプトークンを媒体に印刷する第四の過程をさらに備えることを特徴とする請求項27に記載の情報処理方法。
【請求項29】
暗号化装置を介して前記タイムスタンプトークンを暗号に変換する第五の過程をさらに備え、
前記第四の過程においては当該暗号が媒体に印刷されることを特徴とする請求項28に記載の情報処理方法。
【請求項30】
前記暗号は電子透かしであることを特徴とする請求項29に記載の情報処理方法。
【請求項31】
前記暗号化装置により暗号に変換された前記タイムスタンプトークンを復号化装置を介して復号する第六の過程をさらに備えることを特徴とする請求項29に記載の情報処理方法。
【請求項32】
前記媒体はシールであることを特徴とする請求項28に記載の情報処理方法。
【請求項33】
前記シールは、当該シールを対象物に貼り付けた後に当該対象物から剥がすと前記タイムスタンプトークンが破壊される構造を有することを特徴とする請求項32に記載の情報処理方法。
【請求項34】
ネットワークを介してユーザーの情報処理装置から受信したハッシュ値からなる情報を処理する方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記プログラムが行う処理は、
前記ユーザーの情報処理装置から前記ハッシュ値を受信した時刻を示す受信時刻情報を取得する第一の処理と、
前記ハッシュ値に前記受信時刻情報を統合したタイムスタンプトークンを作成する第二の処理と、
前記タイムスタンプトークンを前記ユーザーの情報処理装置に送信する第三の処理と、
からなり、
前記時刻はその時点において最も高精度な分解能を有する計時手段によって計時されたものであるプログラム。
【請求項35】
印刷装置を駆動し、前記タイムスタンプトークンを媒体に印刷する第四の処理をさらに備えることを特徴とする請求項34に記載のプログラム。
【請求項36】
暗号化装置を駆動し、前記タイムスタンプトークンを暗号に変換する第五の処理をさらに備え、
前記第四の処理においては当該暗号が媒体に印刷されることを特徴とする請求項35に記載のプログラム。
【請求項37】
復号化装置を駆動し、前記暗号化装置により暗号に変換された前記タイムスタンプトークンを復号する第六の処理をさらに備えることを特徴とする請求項36に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報の真正性を担保することを可能にする情報認証システム、情報処理装置、情報処理方法、当該情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラム並びにこれらに関連して作成されるシール及び紙幣(または紙幣代替物)に関する。
【背景技術】
【0002】
タイムスタンプを用いて情報の真正性を担保する情報処理装置として特開2022-094755号公報に記載されたものがある。
この情報処理装置は制御部を備えており、この制御部はデータを取得した後にこのデータに対するタイムスタンプ発行の要求があったときには、タイムスタンプを発行する。このタイムスタンプによってデータの真正性が担保されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記情報処理装置の制御部に対して不正なアクセスがなされたりすると、タイムスタンプによる真正性を担保することは不可能である。
制御部に対する不正なアクセスをシャットアウトすることが可能であれば、タイムスタンプによる真正性を担保することはできるが、そのようなシャットアウトは現実には困難であり、上記公報にも不正なアクセスに対する防御への言及はない。
本発明はこのような従来の情報処理装置における問題点に鑑みてなされたものであり、より高い真正性を確保することが可能な情報認証システム、情報処理装置、情報処理方法、当該情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラム並びにこれらに関連して作成されるシール及び紙幣(または紙幣代替物)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
これまで、情報空間のデータのほとんどは複製可能または書き換え可能であることを前提として扱われており、真正性は必要とされていなかった。
現在では、ブロックチェーン技術に代表されるデータ改ざんが不可能である技術や、単調性が確保される技術の登場により、ビットコイン(Bitcoin)のようなデジタル空間におけるデジタル通貨が出現した。
続いて登場したイーサリアム(Ethereum)規格ERC721によれば、トークンにポインタ変数を持たせることによって、発行トークンごとに任意の情報と紐付けることが可能となった。これによって、唯一性及び非代替性が実現され、NFT(Non-Fungible Token)及びその関連サービスが広がった。
しかしながら、多くの場合、ポインタ変数のポインタ先はイーサリアムのデータ構造とは別の外部データベース上のデータ(例えば、デジタルアート)に紐付けられている。
【0006】
このため、この外部データベース上のデータには改ざんやハッキングの危険性があり、アルゴリズム的に代替不可能(Non-Fungible)であっても、データ構造的には真正性は保証されていない。
本発明は、より高い真正性を確保するために、データを物理空間における特性と紐付けることを提案する。
物理空間においては、任意の特性には唯一性が確保されていることは自明である。
例えば、紙幣に付されているシリアル番号のような採番のない硬貨は日常生活での利用では代替可能物として見なせるが、ミクロな構造レベルでの物理的な特性は同値とはならない。
【0007】
これに対して、普遍的な唯一性を有するものとして時刻がある。高精度な時刻単位においては、複数のインシデントが同時刻に発生する確率は限りなくゼロに近い。そのため、インシデントの発生時刻は唯一性をもつと見なすことができる。
量子論では、時間の最小単位としてプランク時間Tpがある。プランク時間Tpはプランク長と真空中の光速とによって一意に定まり、
Tp=(HG/C5)1/2=5.39116(13)×10―44s
で表される(Hはディラック定数、Gは万有引力定数、Cは真空中の光速である)。例えば、1秒をプランク時間Tpで表すと、
1秒=1.855×1043Tp
となる。
このように、プランク時間Tpの時間間隔内において複数インシデントが同時刻に発生することはまず起こり得ない。
このように、本発明は、高精度の時計に基づく時刻情報を用いることにより、任意の情報に対して高い真正性を保証する。
【0008】
具体的には、本発明は、ユーザーが使用する第一情報処理装置(200)と、認証者が使用する第二情報処理装置(300)と、からなる情報認証システム(100)であって、前記第一情報処理装置(200)は、前記ユーザーが指定する情報をハッシュ値(211)に変換する変換装置(210)と、ネットワーク(400)を介して前記第二情報処理装置(300)と通信を行うユーザー側通信装置(220)と、を備えており、前記第二情報処理装置(300)は、前記ネットワーク(400)を介して前記第一情報処理装置(200)の前記ユーザー側通信装置(220)と通信を行う認証者側通信装置(310)と、制御装置(320)と、前記第一情報処理装置(200)から前記ハッシュ値(211)を受信した受信時刻を前記制御装置(320)に知らせる時計(330)と、を備えており、前記時計(330)はその時点において最も高精度な分解能を有する時計からなり、前記制御装置(320)は、前記ハッシュ値(211)と、前記ハッシュ値(211)の受信時刻の情報とを統合したタイムスタンプトークン(350)を作成し、前記認証者側通信装置(310)を介して前記タイムスタンプトークン(350)を前記第一情報処理装置(200)に送信するものである情報認証システム(100)を提供する。
【0009】
前記計時手段(330)は、例えば、光格子時計からなる。
前記第一情報処理装置(200)は携帯式電話装置(200A)として構成することが可能である。
前記第二情報処理装置(300A)は印刷装置(360)をさらに備えていることが好ましい。前記制御装置(320)は前記印刷装置(360)を介して前記タイムスタンプトークン(350)を媒体(361, 362)に印刷する。
前記第二情報処理装置(300B)は暗号化装置(370)をさらに備えていることが好ましい。前記制御装置(320)は前記暗号化装置(370)を介して前記タイムスタンプトークン(350)を暗号に変換し、前記印刷装置(360)を介して当該暗号を媒体(361, 362)に印刷する。
前記暗号としては、例えば、電子透かしがある。
【0010】
前記第二情報処理装置(300B)は復号化装置(380)をさらに備えていることが好ましい。前記復号化装置(380)は、前記暗号化装置(370)により変換された暗号を復号する。
前記媒体は、例えば、シール(362)であり、前記シール(362)は、当該シール(362)を対象物に貼り付けた後に当該対象物から剥がすと前記タイムスタンプトークン(350)が破壊される構造を有することが好ましい。
本発明は、さらに、タイムスタンプトークン(350)が印刷されたシール(362)であって、前記タイムスタンプトークン(350)は、ユーザーによって指定され、ハッシュ値(211)に変換された情報と、前記タイムスタンプトークン(350)が印刷された時刻の情報と、を含み、前記時刻はその時点において最も高精度な分解能を有する計時手段(330)によって計時されたものであるシール(362)を提供する。
【0011】
本発明は、さらに、タイムスタンプトークン(350)が印刷された紙幣または紙幣代替物であって、前記タイムスタンプトークン(350)は、ユーザーによって指定され、ハッシュ値(211)に変換された情報と、前記タイムスタンプトークン(350)が印刷された時刻の情報と、を含み、前記時刻はその時点において最も高精度な分解能を有する計時手段(330)によって計時されたものである紙幣または紙幣代替物を提供する。
前記紙幣または紙幣代替物は、前記タイムスタンプトークン(350)が印刷された時点から一定時間の経過とともにその額が減少するように設定されていることが好ましい。
例えば、前記一定時間は半減期であり、半減期経過時に前記紙幣または紙幣代替物の額が半分になることが好ましい。
【0012】
本発明は、さらに、ネットワーク(400)を介してユーザーの情報処理装置(200)と通信を行う通信装置(310)と、制御装置(320)と、前記ユーザーの情報処理装置(200)から情報を受信した受信時刻を前記制御装置(320)に知らせる計時手段(330)と、を備える情報処理装置(300)であって、前記通信装置(310)は、前記ユーザーの情報処理装置(200)から送信されてきたハッシュ値(211)を受信し、前記計時手段(330)はその時点において最も高精度な分解能を有する時計からなり、前記制御装置(320)は、前記通信装置(310)が受信した前記ハッシュ値(211)に前記受信時刻の情報を統合したタイムスタンプトークン(350)を作成し、前記通信装置(310)を介して前記タイムスタンプトークン(350)を前記ユーザーの情報処理装置(200)に送信するものである情報処理装置(300)を提供する。
本発明は、さらに、ネットワーク(400)を介してユーザーの情報処理装置(200)から受信したハッシュ値(211)からなる情報を処理する方法であって、前記ユーザーの情報処理装置(200)から前記ハッシュ値(211)を受信した時刻を示す受信時刻情報を取得する第一の過程と、前記ハッシュ値(211)に前記受信時刻情報を統合したタイムスタンプトークン(350)を作成する第二の過程と、前記タイムスタンプトークン(350)を前記ユーザーの情報処理装置(200)に送信する第三の過程と、を備え、前記時刻はその時点において最も高精度な分解能を有する計時手段(330)によって計時されたものである情報処理方法を提供する。
【0013】
前記情報処理方法は、印刷装置(360)を介して前記タイムスタンプトークン(350)を媒体(361, 362)に印刷する第四の過程をさらに備えることが好ましい。
前記情報処理方法は、暗号化装置(370)を介して前記タイムスタンプトークン(350)を暗号に変換する第五の過程をさらに備え、前記第四の過程においては当該暗号が媒体(361, 362)に印刷されることが好ましい。
前記情報処理方法は、前記暗号化装置(370)により暗号に変換された前記タイムスタンプトークン(350)を復号化装置(380)を介して復号する第六の過程をさらに備えることが好ましい。
【0014】
本発明は、さらに、ネットワーク(400)を介してユーザーの情報処理装置(200)から受信したハッシュ値(211)からなる情報を処理する方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記プログラムが行う処理は、前記ユーザーの情報処理装置(200)から前記ハッシュ値(211)を受信した時刻を示す受信時刻情報を取得する第一の処理と、前記ハッシュ値(211)に前記受信時刻情報を統合したタイムスタンプトークン(350)を作成する第二の処理と、前記タイムスタンプトークン(350)を前記ユーザーの情報処理装置(200)に送信する第三の処理と、からなり、前記時刻はその時点において最も高精度な分解能を有する計時手段(330)によって計時されたものであるプログラムを提供する。
前記プログラムは、印刷装置(360)を駆動し、前記タイムスタンプトークン(350)を媒体(361, 362)に印刷する第四の処理をさらに備えることが好ましい。
【0015】
前記プログラムは、暗号化装置(370)を駆動し、前記タイムスタンプトークン(350)を暗号に変換する第五の処理をさらに備え、前記第四の処理においては当該暗号が媒体(361, 362)に印刷されることが好ましい。
前記プログラムは、復号化装置(380)を駆動し、前記暗号化装置(370)により暗号に変換された前記タイムスタンプトークン(350)を復号する第六の処理をさらに備えることが好ましい。
括弧内の符号は後述する実施形態との対応関係を示すために付したものであり、特許請求の範囲をこれに限定する意図ではない。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、認証したい対象物に対する物理的特性として、高精度な分解能を有する時計による時刻情報を用いたタイムスタンプトークンをデジタル空間及び物理空間において発行することが可能になり、物理空間及びデジタル空間のあらゆる対象物について、唯一性、真正性及び非代替性を確保することができる。
さらに、十分な真正性を有する紙またはシールなどの印刷物(公的証明)を発行することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第一の実施形態に係る情報認証システムのブロック図である。
【
図2】本発明の第一の実施形態に係る情報認証システムの動作を示すフローチャートである。
【
図3】本発明の第一の実施形態に係る情報認証システムにおいて第一情報処理装置を携帯式電話装置として構成した場合の携帯式電話装置の構造の一例を示すブロック図である。
【
図4】本発明の第二の実施形態に係る情報認証システムにおいて使用される第二情報処理装置のブロック図である。
【
図5】本発明の第三の実施形態に係る情報認証システムのブロック図である。
【
図6】本発明の第三の実施形態に係る情報認証システムの動作を示す部分的なフローチャートである。
【
図7】紙幣に代えて暗号通貨を用いた場合の第三の実施形態に係る情報認証システムのブロック図である。
【
図8】
図7に示した第三の実施形態に係る情報認証システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第一の実施形態)
図1は本発明の第一の実施形態に係る情報認証システム100のブロック図である。
情報認証システム100はユーザーが使用する第一情報処理装置200と認証者が使用する第二情報処理装置300とから構成されている。
第一情報処理装置200と第二情報処理装置300とはネットワーク400を介して相互に接続されており、相互に無線通信を行うことができる。
第一情報処理装置200は、ユーザーが指定する情報をハッシュ関数(例えば、SHA―2、SHA―3など)によってハッシュ値211に変換する変換装置210と、ネットワーク400を介して第二情報処理装置300の認証者側通信インターフェイス310(後述)と通信を行うユーザー側通信インターフェイス220と、変換装置210によって変換されたハッシュ値211を格納する第一メモリ230と、第二情報処理装置300から送信されてきたタイムスタンプトークン350(後述)を格納する第二メモリ240と、を備えている。
【0019】
第二情報処理装置300は、ネットワーク400を介して第一情報処理装置200のユーザー側通信インターフェイス220と通信を行う認証者側通信インターフェイス310と、タイムスタンプトークン350の作成その他の動作を実行する制御装置320と、制御装置320に時刻情報を提供する計時手段としての光格子時計330と、を備えている。
制御装置320は、中央処理装置(CPU)321と、ROMからなる第一メモリ322と、RAMからなる第二メモリ323と、認証者側通信インターフェイス310を介して入力された各種命令及びデータを中央処理装置321に転送するための入力インターフェイス324と、中央処理装置321により実行された処理の結果(例えば、タイムスタンプトークン350)を外部に出力する出力インターフェイス325と、から構成されている。
【0020】
第一メモリ322は中央処理装置321が実行する各種の制御用プログラムその他書き換え不能なデータを格納している。具体的には、第一メモリ322は、タイムスタンプの発行に用いられる秘密鍵を格納する秘密鍵格納領域3221と、第一情報処理装置200から送信されてきたハッシュ値211を格納するハッシュ値格納領域3222と、各種の制御用プログラム(アプリケーション)を格納するプログラム格納領域3223と、作成されたタイムスタンプトークン350を格納するタイムスタンプトークン格納領域3224と、中央処理装置321の動作に必要な追加情報を格納する追加情報格納領域3225と、を備えている。
タイムスタンプトークン350を作成する方法(後述する
図2を参照)を実行するプログラムはプログラム値格納領域3223に格納されており、タイムスタンプトークン350はこのプログラムに従って作成される。
【0021】
第二メモリ323は様々なデータ及びパラメータを記憶しているとともに、中央処理装置321に対する作動領域を提供する、すなわち、中央処理装置321が各種の制御用プログラム(例えば、タイムスタンプトークン350を作成するためのプログラム)を実行する上で一時的に必要とされるデータを格納している。
中央処理装置321は第一メモリ322のプログラム格納領域3223からプログラムを読み出し、そのプログラムを実行する。すなわち、中央処理装置321は第一メモリ322に格納されているプログラムに従って作動する。本実施形態においては、第一メモリ322のプログラム格納領域3223には、タイムスタンプトークン350を作成する方法を中央処理装置321に実行させるためのプログラムが格納されており、中央処理装置321はこのプログラムに従って、後述するように、タイムスタンプトークン350を作成する方法を実行し、タイムスタンプトークン350を作成する。
【0022】
認証者側通信インターフェイス310は第一情報処理装置200からハッシュ値211を受信すると、受信信号を光格子時計330に送信する。光格子時計330は受信信号を受信した時刻を受信時刻情報として中央処理装置321に送信する。
光格子時計330は現在において最高精度を有する時計として選ばれたものである。
光格子時計330は原子時計の一つであり、レーザー光を用いて、冷却されたストロンチウム原子を光格子と呼ばれるレーザー光の干渉パターンに閉じ込め、原子の振動を測定する。光格子時計330の精度はセシウム原子時計よりもはるかに高く、1秒間あたりの誤差が数十億分の1秒以下である。
【0023】
図2は情報認証システム100の動作を示すフローチャートである。以下、
図1及び
図2を参照して、情報認証システム100の動作を説明する。
最初に、ユーザーは第一データ201を用意する。第一データ201にはユーザーが認証を希望する認証対象物の電子データが含まれる。認証対象物には、デジタルコンテンツの他に、二次元的なもの及び三次元的なものの全てが含まれる。例えば、デジタルコンテンツとしては、デジタル通貨(暗号通貨)、プログラミングコード、映像、音声その他のあらゆるデジタル的情報データ、二次元的なものとしては、写真、図面、書面などが含まれ、三次元的なものとしては、彫刻、宝石、植物や動物などの生物が含まれる。
ユーザーは第一データ201を変換装置210に入力する。変換装置210にはハッシュ関数が内蔵されており、第一データ201はハッシュ関数を介してハッシュ値211に変換される(ステップS101)。
【0024】
ハッシュ値211は第一メモリ230に記憶されるとともに(ステップS102)、ユーザー側通信インターフェイス220からネットワーク400を介して第二情報処理装置300の認証者側通信インターフェイス310に送信される(ステップS103)。
第二情報処理装置300が第一情報処理装置200からハッシュ値211を受信すると(ステップS104)、認証者側通信インターフェイス310から光格子時計330に受信信号が送信され、光格子時計330はハッシュ値211を受信した時刻を計時し(ステップS105)、受信時刻を示す信号を中央処理装置321に送信する(ステップS106)。
中央処理装置321は、ハッシュ値211を受信した時刻を示す受信時刻信号を光格子時計330から受信すると、第一メモリ322のプログラム格納領域3223からタイムスタンプトークン作成用プログラムを読み出し、このプログラムに従ってタイムスタンプトークン350を作成する(ステップS107)。
【0025】
タイムスタンプトークン350の作成には、秘密鍵格納領域3221から読み出された秘密鍵が用いられる。
タイムスタンプトークン350には、第一データ201のハッシュ値211と、光格子時計330から取得した受信時刻情報と、が含まれている。
中央処理装置321は、作成されたタイムスタンプトークン350を第一メモリ322のタイムスタンプトークン格納領域3224に格納するとともに、認証者側通信インターフェイス310を介してタイムスタンプトークン350を第一情報処理装置200に送信する(ステップS108)。
第一情報処理装置200が第二情報処理装置300からタイムスタンプトークン350を受信すると(ステップS109)、タイムスタンプトークン350は第二メモリ240に記憶される(ステップS110)。
ユーザーが第二情報処理装置300からタイムスタンプトークン350を受信した後に、一定時間(例えば、一年)が経過し、ユーザーが第一データ201の真正性の確認、すなわち、第一データ201が改竄されていないか否かの確認を行うときには、確認は以下のように行われる。
【0026】
まず、ユーザーは変換装置210を介して第一データ201をハッシュ値211Aに再変換する(ステップS111)。
さらに、第二メモリ240からタイムスタンプトークン350を読み出し、第二情報処理装置300から送られてきた第一データ201のハッシュ値211Bを取得する(ステップS112)。
次いで、ユーザーはハッシュ値211Aとハッシュ値211Bとの比較を行い(ステップS113)、両者が同一であるか否かを判定する(ステップS114)。
ハッシュ値211Aとハッシュ値211Bとが同一であれば(ステップS114のYES)、第一データ201は改竄されていないことがわかる(ステップS115)。
【0027】
これに対して、ハッシュ値211Aとハッシュ値211Bとが同一ではない場合には(ステップS114のNO)、第一データ201は改竄されていることがわかる(ステップS116)。
以上のように、本実施形態に係る情報認証システム100によれば、計時手段として現時点において最も高精度な分解能を有する時計である光格子時計330を用いてタイムスタンプトークンを作成することにより、高精度での真正性の確認を実現することができる。
また、物理空間の特性である時刻情報を用いることにより、デジタル空間における認証を高精度に実現することができる。
このように、物理空間及びデジタル空間のあらゆる対象物について、唯一性、真正性及び非代替性を確保することができる。
【0028】
本実施形態に係る情報認証システム100の構造は上記の構造に限定されるものではなく、種々の改変が可能である。
ハッシュ値211に変換し、第二情報処理装置300に送るデータとしては、第一データ201の他にユーザー自身に固有の情報、あるいは、ユーザーのみが唯一有する属性に関する情報を含めることができる。例えば、ユーザーのパスポート番号、運転免許証番号、ユーザーの歯型や指紋の写真などである。
例えば、認証対象物が祖父の形見のパイプであれば、祖父のマウスピースの歯形の三次元計測値を含めることができる。あるいは、認証対象物が貴重な木材であれば、その年輪の写真データを含めることができる。
このように、ユーザー自身に固有の情報をもタイムスタンプトークン350に含めることにより、認証対象物である第一データ201は物理空間における特性であるユーザー情報(例えば、ユーザーのパスポート番号)と紐付けられた状態で格納される。物理空間における任意の特性には唯一性が確保されているため、認証対象物である第一データ201に対してより高い真正性を確保することが可能である。
【0029】
本実施形態においては、第二情報処理装置300は情報認証システム100の一構成要素として構成されているが、第二情報処理装置300を認証用の装置としてそれ単体で使用することも可能である。
本実施形態においては、その時点において最も高精度な分解能を有する時計として光格子時計330を用いているが、将来的に光格子時計の分解能を越える分解能を有する高精度な時計が開発された場合には、光格子時計330に代えてその時計を用いる。
複数のインシデントが光格子時計330の分解能の時間間隔内で起きる可能性がある。そのような場合に備えて、順序を決めるルールを予め定めておき、そのルールに従って、複数のインシデントの各々に区別可能な値(番号など)を割り振る。
第一情報処理装置200としては、上記の第一情報処理装置200の機能を備える機器であれば、任意のものを使用することができる。例えば、デスクトップ型パソコン、ノート型パソコン、タブレット、スマートフォン(携帯式電話装置)として構成することが可能である。
【0030】
図3は第一情報処理装置200を携帯式電話装置200Aとして構成した場合の携帯式電話装置200Aの構造の一例を示すブロック図である。
携帯式電話装置200Aは、通信インターフェイス220と、制御装置250と、第一メモリ230と、第二メモリ240と、入出力セクション260と、アンテナ270と、各部位に電力を供給するバッテリ280と、を備えている。
通信インターフェイス220はアンテナ270に接続されており、アンテナ270を介して他の携帯式電話装置(第二情報処理装置300を含む)と無線通信によるデータの送信及び受信を行う。
通信インターフェイス220は、無線受信部211と、無線送信部212と、切り替えスイッチ213と、を備えている。
無線受信部211は他の携帯式電話装置から受信したデータを復調し、制御装置250に送る。無線送信部212は、制御装置250から出力されたデータを変調し、アンテナ270を介して、他の携帯式電話装置に送信する。切り替えスイッチ213は制御装置250からの指示信号を受信し、その指示信号に応じて、送信及び受信の切り替えを実施する。
【0031】
制御装置250は中央処理装置(CPU: Central Processing Unit)251と、ROMからなる第一メモリ252と、RAMからなる第二メモリ253と、制御装置250に入力された各種命令及びデータを中央処理装置251に転送するための入力インターフェイス254と、中央処理装置251により実行された処理結果を外部に出力する出力インターフェイス255と、中央処理装置251と第一メモリ252、第二メモリ253、入力インターフェイス254及び出力インターフェイス255の各々とを接続するバス256と、から構成されている。
制御装置250は第二情報処理装置300の制御装置320と同様の機能を有している。
【0032】
中央処理装置251は第一メモリ252からハッシュ値変換用のプログラムを読み出し、そのプログラムに従って、第一データ201をハッシュ値に変換する。すなわち、制御装置250(中央処理装置251)が変換装置210としても機能する。
入出力セクション260は、操作部261と、ディスプレイ262と、スピーカー263と、から構成されている。
操作部261は、例えば、テンキーからなり、各種データは操作部261を介して携帯式電話装置200Aに入力される。
ディスプレイ262は、例えば、液晶ディスプレイからなり、制御装置250が行った演算の結果やその他のデータを画面に表示する。
他の携帯式電話装置から送信されてきた音声データはスピーカー263を通して出力される。
第一メモリ230は制御装置250に対する外部メモリとして機能する。制御装置250が作成したハッシュ値211や制御装置250が行った演算の結果やその他のデータは第一メモリ230に記憶される。
第二情報処理装置300から送信されてきたタイムスタンプトークン350は第二メモリ240に格納される。
【0033】
(第二の実施形態)
図4は第二の実施形態に係る情報認証システムにおいて使用される第二情報処理装置300Aのブロック図である。
第二の実施形態に係る情報認証システムは、第一の実施形態に係る情報認証システム100における第二情報処理装置300に代えて
図4の第二情報処理装置300Aを用いる点を除いて、第一の実施形態に係る情報認証システム100と同一の構造を有している。
第二情報処理装置300Aは、第一の実施形態における第二情報処理装置300と比較して、プリンター(印刷装置)360を追加的に備えている。
プリンター360の動作は中央処理装置321により制御される。プリンター360は中央処理装置321により作成されたタイムスタンプトークン350を媒体に印刷する機能を有している。
印刷する媒体としては、例えば、紙361やシール362がある。タイムスタンプトークン350が印刷された紙361またはシール362はユーザーに送られる。
【0034】
ユーザーはタイムスタンプトークン350が印刷された紙361またはシール362を後日の認証のために保管する。特に、タイムスタンプトークン350がシール362に印刷されている場合には、認証対象物にシール362を貼り付けて保管しておくことが可能である。
シール362は、シール362を認証対象物に貼り付けた後に当該認証対象物から剥がすとタイムスタンプトークン350に格納されているデータが破壊される構造を有するものとすることができる。
例えば、タイムスタンプトークン350をASIC(Application Specific Integrated Circuit)として作成し、対象物にアルミ蒸着させる。このようにすれば、タイムスタンプトークン350を対象物から剥がすとタイムスタンプトークン350の内部のデータは破壊される。
【0035】
以上のように、本実施形態によれば、タイムスタンプトークン350を紙361またはシール362に印刷することにより、ユーザーはデジタルコンテンツとしてのタイムスタンプトークン350の他に物理空間においても認証対象のデータを確認することが可能になる。
また、タイムスタンプトークン350の情報が外部に漏れてしまった場合でも、印刷物(紙361またはシール362)を提示することにより、ユーザーは認証対象物に関する自己の所有の正当性を示すことができる。
本実施形態においては、第二情報処理装置300Aは情報認証システムの一構成要素として構成されているが、第二情報処理装置300Aはそれ単体として使用することも可能である。
例えば、一国の政府がシリアル番号その他の情報を記憶したタイムスタンプトークン350を作成し、そのタイムスタンプトークン350を印刷した紙幣を発行することができる。
あるいは、一企業がシリアル番号その他の情報を記憶したタイムスタンプトークン350を作成し、そのタイムスタンプトークン350を印刷した金券、プリペイドカードその他の紙幣代替物を発行することができる。
なお、プリンター(印刷装置)360は偽造防止が可能な印刷を行うことができるものであることが好ましい。例えば、透かしや潜像などの国立印刷局で使用されているような高度の偽造防止技術を用いた印刷である。
【0036】
(第三の実施形態)
図5は第三の実施形態に係る情報認証システム100Aのブロック図である。第三の実施形態に係る情報認証システム100Aは、第二の実施形態に係る情報認証システムにおける第二情報処理装置300Aに代えて
図5に示す第二情報処理装置300Bを用いる点を除いて、第二の実施形態に係る情報認証システムと同一の構造を有している。
本実施形態における第二情報処理装置300Bは、第二の実施形態における第二情報処理装置300Aと比較して、暗号化装置370及び復号化装置380を追加的に備えている。
暗号化装置370は中央処理装置321が作成したタイムスタンプトークン350を暗号に変換する。
暗号としては、例えば、電子透かしがある。電子透かしとは、様々なデジタルコンテンツに人間の知覚では判別不可能の状態で特定のデータを埋め込む技術を指す。
【0037】
暗号化されたタイムスタンプトークン350は中央処理装置321の指示に従ってプリンター360を介して紙361またはシール362に印刷される。
復号化装置380は暗号化装置370により暗号化されたタイムスタンプトークン350を復号する。
暗号化装置370により暗号化されたタイムスタンプトークン350は暗号のままデジタルコンテンツとしてユーザーに送られるか、または、紙361またはシール362に印刷された印刷物としてユーザーに送られる。あるいは、デジタルコンテンツ及び印刷物の双方がユーザーに送られる。
ユーザーは暗号化されたタイムスタンプトークン350を第二情報処理装置300Bに送り、復号化装置380によって復号することを要求することができる。
図6は情報認証システム100Aの動作を示す部分的なフローチャートである。以下、
図5及び
図6を参照して、情報認証システム100Aの動作を説明する。
【0038】
ユーザーがハッシュ値211Aを得るまでの過程は
図2に示した過程と同様である。
先ず、ユーザーは、認証対象物の認証に際して、変換装置210を介して第一データ201をハッシュ値211Aに再変換する(ステップS111)。
次いで、ユーザーは過去に第二情報処理装置300Bから受け取っていた暗号化されたタイムスタンプトークン350(電子データ、紙361またはシール362)の復号を第二情報処理装置300Bに要求する。第二情報処理装置300Bは復号化装置380を介してタイムスタンプトークン350を復号し、ハッシュ値211Cとしてユーザー(第一情報処理装置200)に送信する(ステップS112A)。
次いで、ユーザーはハッシュ値211Aとハッシュ値211Cとを比較し(ステップS113A)、両者が同一であるか否かを判定する(ステップS114)。
【0039】
ハッシュ値211Aとハッシュ値211Cとが同一であれば(ステップS114のYES)、第一データ201は改竄されていないことがわかる(ステップS115)。
これに対して、ハッシュ値211Aとハッシュ値211Cとが同一ではない場合には(ステップS114のNO)、第一データ201は改竄されていることがわかる(ステップS116)。
以上のように、本実施形態によれば、タイムスタンプトークン350は暗号化された状態で送受信されるので、タイムスタンプトークン350の内部データ(第一データ201)の秘匿性を高めることができる。
【0040】
(第四の実施形態)
第二の実施形態において述べたように、一国の政府がシリアル番号その他の情報を記憶したタイムスタンプトークン350を印刷した紙幣を発行することができる。さらに、第三の実施形態において述べたように、タイムスタンプトークン350を暗号化(電子透かし化)した後にタイムスタンプトークン350を紙幣に印刷することも可能である。
このように、タイムスタンプトークン350を印刷した紙幣を発行することにより、この紙幣を国家の経済政策の一環として使用することが可能である。以下、その一例を説明する。
タイムスタンプトークン350を印刷した紙幣には額面が表示されているが、この額面は一定値ではなく、タイムスタンプトークン350が印刷された時点から一定時間の経過とともにその額が減少するように設定されている。
一定時間としては、例えば、半減期を用いることができ、一定期間(例えば、一日)の経過毎に半減期に従って額面が減少するものと設定することができる。
【0041】
額面の減少のアルゴリズムとして半減期性を採用した場合、半減期を1年(365日)とすれば、額面は翌日比で2の365乗根(21/365):1になる。すなわち、額面は1日で(21/365-1)の比率で減少する。例えば、当初には10,000円分の額面であった紙幣は翌日には9,981円となり、1週間後には9,439円、半年後には7,492円、1年後には5,000円、2年後には2,500円となる。
半減期に基づく紙幣の減少は紙幣が発行された日の翌日から開始し、発行された紙幣は全て半減期に従って1日(24時間)毎に減少する。
紙幣の額面の減少分は国家に還元される。すなわち、紙幣の額面の減少分は国庫に戻されたものとして扱われ、国家はこの減少分を国家予算として使用することができる。
【0042】
紙幣を受け取ったユーザーはその紙幣を使って物品購入などの消費活動を行うことができ、この消費活動によって紙幣の額面は減少するが、ユーザーがそのような消費活動を行わなくても、上記のように、紙幣の額面は日数の経過とともに減少する。
例えば、日本国の中央銀行である日本銀行がタイムスタンプトークン350を印刷した紙幣を発行し、日本国民一人一人に分配するものとする。
現在の社会で使われている通貨は、その価値が減少しない、すなわち、価値が保存されることが前提とされている。そのため、富める者は資金を貯め込み、金利での運用を行うことができる。このため、全体の資金の一部のみしか市場に流されず、市場への刺激は少なく、経済は活性化しづらい状況になることがある。換言すれば、金融経済のみが活性化し、実体経済は活性化されないという状況に陥ることがある。
しかしながら、タイムスタンプトークン350を印刷した紙幣に「時間経過とともに額が減少する」という特性をもたせることによって、消費行動を刺激し、消費行動を促すことが可能になる。
【0043】
その結果として、半減期性をもたせた紙幣の経済圏においては、紙幣はより流通し、経済は刺激され、市場全体が豊かになる。富めるものがより富める現在の社会から、市場全体に関わる全員が豊かになれる社会への転換を期待することができる。
2020年、日本銀行は量的緩和政策(QE: Quantitative Easing)によって約120兆円の通貨(日本円)の発行を行った。これらの資金は市中銀行などの金融機関に流れている。
情報認証システム100Aを応用した経済政策としては、これと同額の紙幣(タイムスタンプトークン350を印刷した紙幣)をユニバーサルベーシックインカム(UBI: Universal Basic Income)として国民に直接的に分配する。例えば、日本銀行(中央銀行)が月額20万円などの一定額を国民一人一人に毎月直接送金する。これによって、一か月当たり200、000×国民総数に相当する信用創造がなされる。
【0044】
国民の観点からも「市中銀行から国債を買い取る代わりに、直接資金が分配される」という取り組みは高い支持を受けられる。半減期による減少率が金利より大きければ、紙幣は貯蓄に回ることなく、消費が促進され、経済は刺激され、市場全体が、具体的には、実体経済が活性化される。
また、イングランド銀行(英国中央銀行)の発表によると、法定通貨(通貨価値が減少しない通貨)を用いての国民への直接の買いオペを実施することにより国民の消費行動は促進され、GDPは3%上昇すると言われている。このため、景気刺激の効果もある。
このように通貨価値が減少しない通貨であっても、買いオペを実施することにより国民の消費行動は促進されることに加えて、時間の経過とともに額面が減少する紙幣による消費促進も加わるので、さらなるGDPの上昇を期待することができる。
【0045】
ユニバーサルベーシックインカム(UBI)により国民に配られた月額20万円分の紙幣は半減期により日々減少する。中央銀行は紙幣の減少分を日々計算しており、減少分は中央銀行の資産として計上される。例えば、半減期の1年が経過すれば、信用創造総額(一か月当たり200、000×国民総数)の半分が中央銀行に戻ることになる。
表1はUBI発行量、回収量、一般会計及び余剰量の相互関係を示す。
例えば、国民への配布額が年額200万円ならば、国民1億2000万人に毎年総額で240兆円の支払いが行われ、表1に示すように、1年後には120兆円(2年目以降は180兆円+α)が中央銀行に戻る。これを法定通貨としての日本円に変換して国庫に入れれば、毎年の一般会計(120兆円)を賄うことができ、形式上は無税国家を誕生させることができる。
【0046】
半減期による紙幣の減少分は実体として税であると見ることもできる。現行の消費税の方式は、消費者の消費行動により左右される税収入であり、「消費をすることによるペナルティ」であると捉えることもでき、消費を鈍らせる矛盾をはらんでいる。
一方で、半減期により通貨量が減少する紙幣を用いる情報認証システム100Aにおいては、税(紙幣の減少分)収入は自動的に行われるため、安定財源となる。半減期による紙幣の減少は「消費をしないことによるペナルティ」と捉えられるため、当然消費を促進させる効果が見込まれる。
国民から中央銀行に戻された紙幣の減少分は半減期による減少を停止させる、すなわち、通貨額が保存されるように設定することが可能である。紙幣をこのように設定することにより、中央銀行または国家は回収した紙幣をその通貨額を減らすことなく使うことができる。例えば、最初に、回収した紙幣で一般会計を賄い、余剰金が出た場合には、その余剰金は海外に渡せば、日本国内はインフレにはならない。ODAなどの海外援助、米財務省証券、EU債や中国政府債の購入に回すことができる。
【0047】
時間経過に伴い通貨価値が減少しない従来の通貨(法定通貨)では、資産を持つ者は資金を金利で運用させ、さらなる富を得る選択をする。市場への流通はしないため、景気は刺激されない。景気が良くならない社会の労働者には資財を貯め込む余裕はない。そのため、貧富の格差は広がる傾向となる。
これに対して、半減期により通貨価値が減少する紙幣が導入された社会では、消費行動が促進され、景気が刺激され、市場に関わる全ての人に恩恵がある。いわば、現行の法定通貨から本紙幣への切り替えは、「個人の利益が優先される」という低い抽象度の社会から、より高い抽象度である「全員の利益が優先される」社会への大きな転換期となる。
以上のように、本実施形態に係る情報認証システム100Aは社会に極めて有用な政策のベースとなり得るものであり、現在の経済的諸問題を解決する可能性を有するものである。
【0048】
以上、タイムスタンプトークン350を印刷した紙幣(現物通貨)を用いる経済政策について説明したが、紙幣(現物通貨)に代えて暗号通貨(仮想通貨)を用いても同様の経済政策を実行することができる。暗号通貨を用いることにより、紙幣の額面の減少分をより円滑に回収することが可能になる。
図7は暗号通貨を用いた場合の情報認証システム100Bのブロック図である。
図7に示すように、情報認証システム100Bは、第二情報処理装置300Cと、国民一人一人が所有している複数個の情報処理装置500と、から構成されている。
第二情報処理装置300Cは、第一の実施形態における第二情報処理装置300と比較して、暗号通貨363を保存するアプリケーションとしてのウォレット390を追加的に備えている。
制御装置320はタイムスタンプトークン350のデータを内蔵した暗号通貨363を作成し、ウォレット390に格納する。
【0049】
各情報処理装置500は第二情報処理装置300Cとネットワーク400を介して接続されており、第二情報処理装置300Cと無線信号の送受信が可能である。
各情報処理装置500は、当該情報処理装置500の作動を制御する制御装置510と、時間の経過を計測し、計測結果を制御装置510に送信する計時手段520と、暗号通貨363を保存するアプリケーションとしてのウォレット530と、を備えている。
各情報処理装置500は、例えば、携帯式電話装置から構成することが可能である。
図8は情報認証システム100Bの動作を示すフローチャートである。以下、
図7及び
図8を参照して、情報認証システム100Bの動作を説明する。
【0050】
第二情報処理装置300Cは定期的に暗号通貨363を各情報処理装置500に送信する。例えば、第二情報処理装置300Cは1日、1週間または1か月に1回の頻度で暗号通貨363を各情報処理装置500に送信する(
図8のステップS200)。
各情報処理装置500において受信された暗号通貨363はウォレット530に保存される(
図8のステップS210)。
前述のように、各情報処理装置500のウォレット530に保存された暗号通貨363の額面は発行(保存)された翌日から減少を開始し、半減期に従って1日ごとに減少する。
暗号通貨363が第二情報処理装置300Cから各情報処理装置500に送信されると、各情報処理装置500の計時手段520は各情報処理装置500における暗号通貨363の受信時を始点として時間の経過の計測を開始する(
図8のステップS220)。
計時手段520は計測結果を、例えば、1時間毎に制御装置510に送信する(
図8のステップS230)。
【0051】
制御装置510は計時手段520から送信されてくる計測結果に基づいて1日(24時間)が経過したか否かを判定する(
図8のステップS240)。
暗号通貨363の受信時から1日(24時間)が経過していない場合には、1日(24時間)が経過したか否かの判定を繰り返して継続する(
図8のステップS240のNO)。
情報処理装置500による暗号通貨363の受信時から1日(24時間)が経過した場合には(
図8のステップS240のYES)、制御装置510は暗号通貨363の一日の減少分を計算する(
図8のステップS250)。
暗号通貨363は半減期を1年(365日)としてその通貨量が減少する。このため、一日の減少分Dは次の計算式(A)で計算される。
D=R×2
1/365 (R:暗号通貨363の額)
例えば、第二情報処理装置300Cから情報処理装置500に送信されてきた暗号通貨363が1万円とすると、暗号通貨363は最初の一日で19円減少する。
【0052】
従って、暗号通貨363の受信時から一日(24時間)経過後の時点では、
10,000-19=9,981円
の暗号通貨363がウォレット530に残る。
あるいは、暗号通貨363は最初の一週間(7日)で561円減少する。
従って、暗号通貨363の受信時から一週間(7日)経過後の時点では、
10,000-561=9,439円
の暗号通貨363がウォレット530に残る。
次いで、各情報処理装置500の制御装置510はネットワーク400を介して暗号通貨363の第一日目の減少分Dを第二情報処理装置300に送信する(
図8のステップS260)。
暗号通貨363の減少分Dを第二情報処理装置300Cに送信した後も、各情報処理装置500の計時手段520は情報処理装置500が暗号通貨363を受け取った時点を始点として引き続き時間の経過の計測を開始し、計測結果を、例えば、1時間毎に制御装置510に送信する。制御装置510は計時手段520から送信されてくる計測結果に基づいて1日(24時間)が経過したか否かを判定する(
図8のステップS270)。
【0053】
前回の暗号通貨363の減少分の送信時から1日(24時間)が経過していない場合(すなわち、情報処理装置500が暗号通貨363を受け取った時点から2日(48時間)が経過していない場合)には、1日(24時間)が経過したか否かの判定を継続する(
図8のステップS270のNO)。
前回の暗号通貨363の減少分の送信時から1日(24時間)が経過した場合には(
図8のステップS270のYES)、制御装置510は暗号通貨363の一日の減少分を前述の式(A)に従って計算する(
図8のステップS280)。
次いで、各情報処理装置500の制御装置510はネットワーク400を介して暗号通貨363の第二日目の減少分Dを第二情報処理装置300に送信する(
図8のステップS290)。
このように、暗号通貨363の減少分Dは1日(24時間)が経過するごとに各情報処理装置500から第二情報処理装置300Cに送り返される。
以後、
図8のステップS270からステップS290までの各ステップが繰り返し実行される。
【0054】
暗号通貨363の量はユーザーの消費活動及び日数の経過とともに減少する。制御装置510は常にウォレット530に保存されている暗号通貨363の残存通貨量を監視しており、残存通貨量が予め定めたしきい値(例えば、1000円)を下回ったときには、第二情報処理装置300Cに暗号通貨363の追加送信を依頼する依頼信号を送信する。この依頼信号を受信した第二情報処理装置300Cは、定期的に暗号通貨363を情報処理装置500に送ることに加えて、追加の暗号通貨363(例えば、一万円)を情報処理装置500に送信する。
このように、ウォレット530に保存されている暗号通貨363の残存通貨量がゼロに近くなったときには、第二情報処理装置300から追加の暗号通貨363が補充される。
【0055】
以上のように、現物紙幣に代えて暗号通貨363を用いることにより、暗号通貨363の減少分を円滑に中央銀行(国庫)に戻すことが可能になり、UBIに代表される斬新な経済政策を円滑に進めることができる。
本実施形態においては、半減期に従って価値が減少する暗号通貨363の例を挙げたが、暗号通貨363に代えて、時間の経過とともに価値が減少しない暗号通貨(既存の暗号通貨と同様のもの)を発行することも可能である。この場合には、暗号通貨の減少分は第二情報処理装置300に送信されることはなく、最初に情報処理装置500に送信された額が維持される。
例えば、地方自治体が自己の管轄する地域のみに通用する暗号通貨(半減期に従って価値が減少するもの及び価値が減少しないものの双方または一方)を発行し、地域創生を図ることができる。この場合、暗号通貨とともに、タイムスタンプトークン350を印刷した紙幣(第二実施形態)を発行することもできる。
【符号の説明】
【0056】
100 本発明の第一の実施形態に係る情報認証システム
200 第一情報処理装置
210 変換装置
220 ユーザー側通信インターフェイス
230 第一メモリ
240 第二メモリ
300 第二情報処理装置
310 認証者側通信インターフェイス
320 制御装置
330 光格子時計
350 タイムスタンプトークン
360 プリンター
370 暗号化装置
380 復号化装置
400 ネットワーク