(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154645
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】電源制御装置、スイッチング電源、車両
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
H02M3/155 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068583
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神作 潔
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AS04
5H730AS05
5H730BB13
5H730BB14
5H730BB57
5H730DD04
5H730FD01
5H730FF02
5H730FG05
(57)【要約】
【課題】適切なオフスキップ制御を実現する。
【解決手段】電源制御装置100は、入力電圧Viから出力電圧Voを生成するスイッチング電源Aの出力段HBを形成するスイッチ素子1のデューティ制御を行うコントローラ12を備える。コントローラ12は、スイッチ素子1の周期的なオフ遷移をスキップするオフスキップ機能を備える。コントローラ12は、オフスキップ機能が働いているときには出力電圧Voの帰還制御に基づくリセット信号RSTを無視してスイッチ素子1をオン状態に維持する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧から出力電圧を生成するスイッチング電源の出力段を形成するスイッチ素子のデューティ制御を行うように構成されたコントローラを備え、
前記コントローラは、前記スイッチ素子の周期的なオフ遷移をスキップするオフスキップ機能を備え、前記オフスキップ機能が働いているときには前記出力電圧の帰還制御に基づくリセット信号を無視して前記スイッチ素子をオン状態に維持する、電源制御装置。
【請求項2】
前記出力電圧に応じた帰還電圧と所定の基準電圧との差分に応じて誤差信号を生成するように構成された第1アンプと、
所定のスイッチング周波数でセット信号を生成するように構成されたオシレータと、
前記誤差信号又はこれに応じた制御信号とランプ信号とを比較して前記リセット信号を生成するように構成されたコンパレータと、
をさらに備え、
前記コントローラは、前記オフスキップ機能が働いていないときには、前記セット信号に応じて前記スイッチ素子をオン状態とし、前記リセット信号に応じて前記スイッチ素子をオフ状態とする、請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項3】
前記出力段に流れる電流に応じた電流検出信号を生成するように構成された電流検出回路と、
前記誤差信号と前記電流検出信号との差分に応じて前記制御信号を生成するように構成された第2アンプと、
をさらに備える、請求項2に記載の電源制御装置。
【請求項4】
前記スイッチ素子がオフ状態であるときにキャパシタを充電することにより前記スイッチ素子の駆動電圧を生成するように構成されたブートストラップ回路をさらに備える、請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記スイッチ素子をオフ状態とするときに少なくとも最小オフ期間に亘って前記スイッチ素子をオフ状態に維持する、請求項4に記載の電源制御装置。
【請求項6】
前記コントローラは、
クロック端に前記セット信号が入力されてデータ端に固定電圧が入力されてリセット端に前記リセット信号が入力されて出力端から第1出力信号を出力するように構成された第1Dフリップフロップと、
クロック端に反転セット信号が入力されてデータ端に前記第1出力信号が入力されて出力端から第2出力信号を出力するように構成された第2Dフリップフロップと、
前記セット信号の論理レベルを反転させて前記反転セット信号を生成するように構成されたインバータと、
前記第1出力信号及び前記第2出力信号から前記スイッチ素子のデューティ制御信号を生成するように構成された論理ゲートと、
を含む、請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項7】
請求項1に記載の電源制御装置と、
前記電源制御装置により駆動される前記出力段と、
を備える、スイッチング電源。
【請求項8】
前記スイッチ素子は、Nチャネル型である、請求項7に記載のスイッチング電源。
【請求項9】
前記出力段は、降圧型、昇圧型、昇降圧型又は反転型である、請求項7に記載のスイッチング電源。
【請求項10】
請求項7に記載のスイッチング電源と、
前記スイッチング電源に前記入力電圧を供給するように構成されたバッテリと、
を備える、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源制御装置、スイッチング電源及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入力電圧から所望の出力電圧を生成するスイッチング電源が様々なアプリケーションで用いられている。
【0003】
なお、上記に関連する従来技術の一例としては、本願出願人による特許文献1を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のスイッチング電源(特にこれに用いられる電源制御装置)では、オフスキップ制御について改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
例えば、本開示に係る電源制御装置は、入力電圧から出力電圧を生成するスイッチング電源の出力段を形成するスイッチ素子のデューティ制御を行うように構成されたコントローラを備え、前記コントローラは、前記スイッチ素子の周期的なオフ遷移をスキップするオフスキップ機能を備え、前記オフスキップ機能が働いているときには前記出力電圧の帰還制御に基づくリセット信号を無視して前記スイッチ素子をオン状態に維持する。
【0007】
なお、その他の特徴、要素、ステップ、利点、及び、特性については、以下に続く発明を実施するための形態及びこれに関する添付の図面によって、さらに明らかとなる。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る電源制御装置によれば、適切なオフスキップ制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、スイッチング電源の全体構成を示す図である。
【
図2】
図2は、コントローラの第1実施形態(比較例)を示す図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態のオフスキップ機能を示す図である。
【
図4】
図4は、スイッチング周波数のヒステリシス特性を示す図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態における制御信号とオンデューティとの関係を示す図である。
【
図6】
図6は、分周動作によりインダクタ電流の実際値とサンプリング値との間にギャップが生じる様子を示す図である。
【
図7】
図7は、疑似電流生成回路の導入例を示す図である。
【
図8】
図8は、分周動作とPWM動作の違いを説明するための図である。
【
図9】
図9は、分周動作の開始/解除閾値のヒステリシス要因を示す図である。
【
図10】
図10は、ヒステリシス発生条件と発生有無を説明するための図である。
【
図12】
図12は、コントローラの第2実施形態を示す図である。
【
図13】
図13は、第2実施形態のオフスキップ機能を示す図である。
【
図14】
図14は、第2実施形態における制御信号とオンデューティとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<スイッチング電源(全体構成)>
図1は、スイッチング電源Aの全体構成を示す図である。本実施形態のスイッチング電源Aは、入力電圧Viから出力電圧Vo(<Vi)を生成して負荷Zに供給する降圧型DC/DCコンバータである。本図に即して述べると、スイッチング電源Aは、電源制御装置100と、これに外付けされる種々のディスクリート部品(例えばインダクタL1、キャパシタC1及びC2、並びに、抵抗R1及びR2)と、を備える。
【0011】
電源制御装置100は、スイッチング電源Aのハーフブリッジ出力段HB(後出の出力素子1及び整流素子2を含む)を制御するように構成された半導体集積回路装置(いわゆる電源制御IC[integrated circuit])である。
【0012】
なお、電源制御装置100は、装置外部との電気的な接続を確立するための手段として外部端子T1~T5を備えている。外部端子T1は、電源端子である。外部端子T2は、スイッチ出力端子である。外部端子T3は、接地端子である。外部端子T4は、帰還入力端子である。外部端子T5は、ブートストラップ端子である。もちろん、電源制御装置100には、上記以外の外部端子が設けられてもよい。
【0013】
電源制御装置100の外部接続について説明する。外部端子T1は、入力電圧Viの印加端に接続される。外部端子T2は、インダクタL1の第1端に接続される。外部端子T3は、接地電圧GND(=0V)の印加端に接続される。外部端子T4は、抵抗R1及びR2それぞれの第1端に接続される。外部端子T5は、キャパシタC2の第1端に接続される。キャパシタC1の第1端と、インダクタL1、キャパシタC2及び抵抗R1それぞれの第2端は、いずれも出力電圧Voの印加端(=負荷Zの第1端)に接続される。キャパシタC1、抵抗R2及び負荷Zそれぞれの第2端は、いずれも接地電圧GNDの印加端に接続される。
【0014】
<電源制御装置>
引き続き、
図1を参照しながら電源制御装置100の内部構成について説明する。電源制御装置100は、出力素子1と、整流素子2と、エラーアンプ3と、ソフトスタート回路4と、位相補償回路5と、電流検出回路6と、gmアンプ7と、位相補償回路8と、オシレータ9と、ランプ信号生成回路10と、コンパレータ11と、コントローラ12と、ドライバ13と、ダイオード14と、を備える。
【0015】
出力素子1と整流素子2は、Nチャネル型MOSFET[metal oxide semiconductor field effect transistor]であってもよい。Nチャネル型MOSFETは、同サイズのPチャネル型MOSFETと比べて一般にオン抵抗値が低い。従って、高電圧・大電流を取り扱うアプリケーションでは、出力素子1及び整流素子2としてNチャネル型MOSFETが用いられるとよい。
【0016】
出力素子1のドレインは、外部端子T1に接続されている。出力素子1のソースと整流素子2のドレインは、いずれも外部端子T2に接続されている。整流素子2のソースは、外部端子T3に接続されている。出力素子1及び整流素子2それぞれのゲートは、ゲート駆動信号G1及びG2の印加端にそれぞれ接続されている。このように接続される出力素子1及び整流素子2は、それぞれ、スイッチング電源Aのハーフブリッジ出力段HBを形成する上側スイッチ素子及び下側スイッチ素子として機能する。
【0017】
なお、出力素子1及び整流素子2は、ゲー駆動ト信号G1及びG2に応じて相補的にスイッチング駆動される。ここでの「相補的」という文言は、出力素子1と整流素子2のオン/オフ状態が完全に逆転している場合のみならず、双方の同時オフ期間(いわゆるデッドタイム)が設けられている場合も含むものとして広義に解されるべきである。
【0018】
例えば、ゲート駆動信号G1がハイレベル(=Vb)であり、ゲート駆動信号G2がローレベル(=GND)である場合を考える。この場合、出力素子1がオン状態となり、整流素子2がオフ状態となる。その結果、外部端子T1から出力素子1を介して外部端子T2に至る電流経路に上側インダクタ電流IL1が流れ、インダクタL1に電気エネルギが蓄えられる。この状態は、ハーフブリッジ出力段HBのオン期間Tonに相当する。
【0019】
一方、ゲート駆動信号G1がローレベル(=Vsw)であり、ゲート駆動信号G2がハイレベル(=Vreg)である場合を考える。この場合、出力素子1がオフ状態となり、整流素子2がオン状態となる。その結果、インダクタL1に蓄えられた電気エネルギが無くなるまで、外部端子T3から整流素子2を介して外部端子T2に至る電流経路に下側インダクタ電流IL2が流れる。この状態は、ハーフブリッジ出力段HBのオフ期間Toffに相当する。
【0020】
このように、電源制御装置100によるハーフブリッジ出力段HBのスイッチング駆動が繰り返されることにより、外部端子T2に矩形波状のスイッチ電圧Vswが現れる。従って、インダクタL1とキャパシタC1によるスイッチ電圧Vswの平滑化により直流の出力電圧Voが得られる。
【0021】
なお、出力素子1及び整流素子2は、それぞれ、電源制御装置100に外付けされてもよい。その場合には、ゲート駆動信号G1及びG2をそれぞれ外部出力するための外部端子が必要となる。また、出力素子1及び整流素子2は、それぞれ、Nチャネル型のIGBT[insulated gate bipolar transistor]であってもよい。
【0022】
また、整流素子2は、ダイオードであってもよい。すなわち、スイッチング電源Aの整流方式については、同期整流方式に限らずダイオード整流方式が採用されても構わない。
【0023】
また、スイッチング電源Aの出力段は、降圧型に限らず、昇圧型、昇降圧型又は反転型(負出力型)であってもよい。
【0024】
エラーアンプ3(=第1アンプに相当)は、2つの非反転入力端(+)にそれぞれ入力される所定の基準電圧Vref及びソフトスタート電圧Vssのうちいずれか低い方と、外部端子T4を介して反転入力端(-)に入力される帰還電圧Vfb(=出力電圧Voの分圧電圧)との差分に応じて誤差信号Verrを生成する。エラーアンプ3は、電流出力型のgmアンプであってもよい。例えば、Vfb<Vref(又はVss)であるときには、エラーアンプ3から位相補償回路5に向けて電流が流し込まれる。その結果、誤差信号Verrが引き上げられる。逆に、Vfb>Vref(又はVss)であるときには、位相補償回路5からエラーアンプ3に向けて電流が引き込まれる。その結果、誤差信号Verrが引き下げられる。
【0025】
ソフトスタート回路4は、スイッチング電源Aの起動時又は再起動時において、所定の傾きを持って緩やかに上昇するソフトスタート電圧Vssを生成する。
【0026】
位相補償回路5は、エラーアンプ3の出力端と接地端との間に接続されたRC回路であってもよい。なお、位相補償回路5を形成する容量値及び抵抗値については、それぞれ、電圧帰還ループのゲインを考慮して適宜設定されるとよい。また、位相補償回路5の一部又は全部は、電源制御装置100に外付けされてもよい。
【0027】
電流検出回路6は、ハーフブリッジ出力段HBに流れる電流(例えば下側インダクタ電流IL2)に応じた電流検出信号Isnsを生成する。
【0028】
gmアンプ7(=第2アンプに相当)は、非反転入力端(+)に入力される誤差信号Verrと、反転入力端(-)に入力される電流検出信号Isnsとの差分に応じて制御信号Vcを生成する。例えば、Verr>Isnsであるときには、gmアンプ7から位相補償回路8に向けて電流が流し込まれる。その結果、制御信号Vcが引き上げられる。逆に、Verr>Isnsであるときには、位相補償回路8からgmアンプ7に向けて電流が引き込まれる。その結果、制御信号Vcが引き下げられる。
【0029】
このように、電流検出回路6とgmアンプ7によれば、電流帰還制御(いわゆるカレントモード制御)が可能となる。従って、スイッチング電源Aの負荷応答性が高められる。ただし、電流帰還制御のトポロジとしては、gmアンプ7を用いる方式以外にも様々な方式(ランプ信号Vrに電流検出信号Isnsを足し合わせる方式など)が採用され得る。
【0030】
位相補償回路8は、gmアンプ7の出力端と接地端との間に接続されたRC回路であってもよい。なお、位相補償回路8を形成する容量値及び抵抗値については、それぞれ、電流帰還ループのゲインを考慮して適宜設定されるとよい。また、位相補償回路8の一部又は全部は、電源制御装置100に外付けされてもよい。
【0031】
オシレータ9は、所定のスイッチング周波数Fswでセット信号SETを生成する。
【0032】
ランプ信号生成回路10は、セット信号SETに同期して三角波状又は鋸波状のランプ信号Vrを生成する。
【0033】
コンパレータ11は、gmアンプ7から非反転入力端(+)に入力される制御信号Vcと、ランプ信号生成回路10から反転入力端(-)に入力されるランプ信号Vrとを比較してリセット信号RSTを生成する。従って、リセット信号RSTは、Vc>Vrであるときにハイレベルとなり、Vc<Vrであるときにローレベルとなる。
【0034】
コントローラ12は、セット信号SET及びリセット信号RSTに応じてハーフブリッジ出力段HBのスイッチング制御(特に出力素子1のデューティ制御)を行うように、ゲート制御信号S1及びS2を生成する。コントローラ12は、基本的にセット信号SETに応じて出力素子1のオンタイミングを決定する。また、コントローラ12は、基本的にリセット信号RSTに応じて出力素子1のオフタイミングを決定する。
【0035】
なお、コントローラ12は、上記した基本機能以外にも様々な付加機能(軽負荷時の逆流防止機能、及び、異常検出時の出力シャットダウン機能など)を備える。
【0036】
また、コントローラ12は、例えば、入力電圧Viと出力電圧Voとの差が小さいときに出力素子1の周期的なオフ遷移をスキップするオフスキップ機能(=スイッチング周波数Fswの分周機能)も備える。同機能については後ほど詳述する。
【0037】
ドライバ13は、ゲート制御信号S1及びS2に応じてゲート駆動信号G1及びG2を生成する。ドライバ13は、例えば、ゲート制御信号S1がハイレベル(=Vreg)であるときにゲート駆動信号G1をハイレベル(=Vb)とし、ゲート制御信号S1がローレベル(=GND)であるときにゲート駆動信号G1をローレベル(=Vsw)とする。また、ドライバ13は、例えば、ゲート制御信号S2がハイレベル(=Vreg)であるときにゲート駆動信号G2をハイレベル(=Vreg)とし、ゲート制御信号S2がローレベル(=GND)であるときにゲート駆動信号G2をローレベル(=GND)とする。
【0038】
ダイオード14のアノードは、内部電源電圧Vregの印加端に接続される。ダイオード14のカソードは、外部端子T5(=ブースト電圧Vbの印加端)に接続される。このように接続されるダイオード14は、先出のキャパシタC2と共にブートストラップ回路BSTを形成する。
【0039】
ブートストラップ回路BSTの動作について簡単に説明する。出力素子1がオフ状態で整流素子2がオン状態であるときには、外部端子T2のスイッチ電圧Vswがローレベル(=GND)となる。そのため、ダイオード14が順バイアス状態となる。従って、内部電源電圧VregによりキャパシタC2が充電される。このとき、ブースト電圧Vbは、内部電源電圧Vregからダイオード14の順方向降下電圧Vfを差し引いた電圧値(=Vreg-Vf)となる。
【0040】
一方、出力素子1がオン状態で整流素子2がオフ状態であるときには、スイッチ電圧Vswがローレベル(=GND)からハイレベル(=Vi)に立ち上がる。このとき、キャパシタC2の電荷保存則により、ブースト電圧Vbもスイッチ電圧Vswの上昇分だけ引き上げられる。すなわち、ブースト電圧Vbは、入力電圧ViよりもキャパシタC2の両端間電圧(=Vreg-Vf)だけ高い電圧(=Vi+Vreg-Vf)まで上昇する。
【0041】
このように、ブートストラップ回路BSTは、出力素子1がオフ状態であるときにキャパシタC2を充電することによりブースト電圧Vbを生成する。ブースト電圧Vbは、出力素子1の駆動電圧としてドライバ13に供給される。従って、ドライバ13は、ゲート駆動信号G1のハイレベル(=出力素子1をオン状態とするためのオン電圧)を入力電圧Viよりも高めることができる。その結果、出力素子1が確実にオン状態とされる。
【0042】
<コントローラ(第1実施形態)>
図2は、コントローラ12の第1実施形態(=後出の第2実施形態(
図6)と対比される比較例に相当)を示す図である。本実施形態のコントローラ12は、Dフリップフロップ120を含む。
【0043】
Dフリップフロップ120は、クロック端(>)にセット信号SETが入力される。Dフリップフロップ120は、データ端(D)に固定電圧(例えばハイレベル電圧Vdd)が入力される。Dフリップフロップ120は、リセット端(R)にリセット信号RSTが入力される。Dフリップフロップ120は、出力端(Q)からデューティ制御信号S0を出力する。
【0044】
すなわち、Dフリップフロップ120は、セット信号SETとリセット信号RSTに応じてデューティ制御信号S0の論理レベルを切り替える。例えば、Dフリップフロップ120は、セット信号SETの立下りタイミングでデータ端(D)の固定電圧をラッチ出力する。その結果、デューティ制御信号S0がハイレベル(=Vdd)にセットされる。また、例えば、Dフリップフロップ120は、リセット信号RSTの立下りタイミングでデューティ制御信号S0をローレベルにリセットする。
【0045】
なお、デューティ制御信号S0は、出力素子1のオンデューティDon(=スイッチング周期Tswに占めるオン期間Tonの割合、Don=Ton/Tsw)を決定する。先出のゲート制御信号S1及びS2は、基本的にデューティ制御信号S0から生成される。
【0046】
また、先にも述べられているように、コントローラ12は、例えば、入力電圧Viと出力電圧Voとの差が小さいときに出力素子1の周期的なオフ遷移をスキップするオフスキップ機能を備える。以下では、このオフスキップ機能について詳述する。
【0047】
<オフスキップ機能(第1実施形態)>
電源制御装置100では、出力素子1としてNチャネル型のMOSFETが用いられている。そのため、出力素子1を確実にオン状態とするためには、出力素子1のゲートに入力電圧Vi(=スイッチ電圧Vswのハイレベル)よりも高いゲート駆動信号G1を印加する必要がある。そこで、電源制御装置100では、ドライバ13の駆動電圧生成手段としてブートストラップ回路BSTが採用されている。
【0048】
ただし、ブートストラップ回路BSTは、キャパシタC2の充電期間を必要とする。すなわち、スイッチ電圧Vswよりも高いブースト電圧Vbを生成するためには、出力素子1がオフ状態とされて整流素子2がオン状態とされるオフ期間Toff(=Tsw-Ton)が必須となる。
【0049】
そこで、電源制御装置100では、キャパシタC2の充電動作に支障を来さないように最小オフ期間Toff_min(=オフ期間Toffの最小値)が確保されている。逆の見方をすると、電源制御装置100では、最大オン期間Ton_max(=オン期間Tonの最大値)が制限されている。
【0050】
このように、ブートストラップ回路BSTを採用した電源制御装置100では、出力素子1のオンデューティDonを1(=100%)とすることができない。そのため、例えば、入力電圧Viと出力電圧Voとの差が小さいときには、最小オフ期間Toff_minの確保(=最大オン期間Ton_maxの制限)に起因して出力電圧Voが目標値から低下してしまうおそれがある。
【0051】
このような出力低下を抑制するための対策として、コントローラ12は、オフスキップ機能を備える。
【0052】
図3は、第1実施形態のオフスキップ機能を示す図である。本図では、上から順に、セット信号SET、制御信号Vc(破線)及びランプ信号Vr(実線)、リセット信号RST、並びに、デューティ制御信号S0が描写されている。
【0053】
時刻t11において、セット信号SETがローレベルに立ち下がると、デューティ制御信号S0がハイレベルにセットされる。その結果、出力素子1がオン状態とされて整流素子2がオフ状態とされる。また、セット信号SETがローレベルに立ち下がると、ランプ信号Vrが所定の傾きで上昇し始める。
【0054】
時刻t12では、時刻t11でセット信号SETがローレベルに立ち下がってから時刻t13でセット信号SETがハイレベルに立ち上がるまでの間に、制御信号Vcとランプ信号Vrが交差する。このとき、リセット信号RSTがローレベルに立ち下がるので、デューティ制御信号S0がローレベルにリセットされる。その結果、出力素子1がオフ状態とされて整流素子2がオン状態とされる。
【0055】
時刻t13において、セット信号SETがハイレベルに立ち上がると、ランプ信号Vrが初期値(例えば0V)にリセットされる。
【0056】
時刻t14において、セット信号SETがローレベルに立ち下がると、デューティ制御信号S0が再びハイレベルにセットされる。その結果、出力素子1がオン状態とされて整流素子2がオフ状態とされる。また、時刻t14において、セット信号SETがローレベルに立ち下がると、ランプ信号Vrが所定の傾きで再び上昇し始める。
【0057】
なお、セット信号SETの或るサイクルの立下りタイミングから次サイクルの立下りタイミングまでの間隔(=時刻t11~t14)は、スイッチング周期Tswに相当する。デューティ制御信号S0のハイレベル期間は、オン期間Tonに相当する。デューティ制御信号S0のローレベル期間は、オフ期間Toff(=Tsw-Ton)に相当する。
【0058】
このように、コントローラ12は、オフスキップ機能が働いていないときには、セット信号SETに応じて出力素子1をオン状態とし、リセット信号RSTに応じて出力素子1をオフ状態とする。従って、オンデューティDonは、制御信号Vcが高いほど大きくなるようにPWM[pulse width modulation]制御される。
【0059】
次に、時刻t14~t15で示されるように、例えば入力電圧Viの低下に伴い、制御信号Vcが上昇した場合を考える。この場合、時刻t14でセット信号SETがローレベルに立ち下がってから時刻t15でセット信号SETがハイレベルに立ち上がるまでの間に、制御信号Vcとスロープ電圧V2が交差しないという状況が生じ得る。
【0060】
このような状況では、リセット信号RSTがローレベルに立ち下がらない。そのため、時刻t15では、デューティ制御信号S0がローレベルにリセットされないまま、ランプ信号Vrが初期値(例えば0V)にリセットされる。その結果、それまで周期的に到来していたオフ期間Toff(=デューティ制御信号S0のローレベル期間)がスキップされる。すなわち、出力素子1の周期的なオフ遷移がスキップされる。
【0061】
このようなオフスキップ制御によれば、見かけ上、セット信号SETがn分周される。そのため、スイッチング周期Tswがn×Tswに伸びる(本図ではn=2、時刻t14~t18を参照)。つまり、出力素子1のオン期間Tonが先述の最大オン期間Ton_maxを超えて延長される。その結果、出力素子1のオンデューティDonが疑似的に100%まで引き上げられる。従って、スイッチング電源Aの負荷応答特性及び電源応答特性が高められる。
【0062】
例えば、スイッチング電源Aがプライマリ電源として車載バッテリに直結される場合を考える。この場合、クランキング時(=車両のエンジン始動時)に入力電圧Vi(=バッテリ電圧)の低下が生じ得る。このような状況であっても、上記のオフスキップ制御によれば、出力電圧Voの意図しない低下が最小限に抑えられる。
【0063】
ただし、第1実施形態のオフスキップ制御では、時刻t17で示されるように、先述のオフスキップ制御が働いているときでも、リセット信号RSTがローレベルに立ち下がった時点で遅滞なくデューティ制御信号S0がローレベルに立ち下げられる。すなわち、スイッチング周波数Fswの分周有無に関わりなく、オン期間Tonからオフ期間Toffへの遷移条件がリセット信号RSTのみとされている。
【0064】
図4は、スイッチング周波数Fswのヒステリシス特性を示す図である。本図の横軸は入力電圧Viを示している。本図の縦軸(左)は出力電圧Voを示している。本図の縦軸(右)は、スイッチング周波数Fswを示している。
【0065】
出力電圧Voは、入力電圧Viが最低入力電圧VLLよりも高いときに、所望の目標値(={(R1+R2)/R2}×Vref)に維持される。
【0066】
また、本図の横軸で示されるように、オフスキップ機能(=スイッチング周波数Fswの分周機能)の有効/無効を切り替えるための開始閾値VL及び解除閾値VHには、ヒステリシスVhys(=VH-VL)がある。
【0067】
例えば、スイッチング周波数Fswが第1周波数fH(例えば440kHz)に設定されているときには、入力電圧Viが開始閾値VL(例えば9.91V)よりも低下するとオフスキップ機能が働く。その結果、スイッチング周波数Fswが第1周波数fHから第2周波数fL(例えば220kHz)に引き下げられる。
【0068】
一方、スイッチング周波数Fswが第2周波数fLに設定されているときには、入力電圧が解除閾値VH(例えば12.45V)よりも上昇するとオフスキップ機能が働かなくなる。その結果、スイッチング周波数Fswが第2周波数fLから第1周波数fHに引き上げられる。
【0069】
そのため、入力電圧Viが中間値VM(ただし、VL<VM<VH、例えばVM=10V)であるときには、図中のポイントP1及びP2で示されるように、スイッチング周波数Fswが第1周波数fHと第2周波数fLのいずれかを取り得る。すなわち、入力電圧Viが中間値VMであるときには、スイッチング周波数Fswの分周機能(=オフスキップ機能)が働く場合と働かない場合がある。すなわち、入力電圧Viが中間値VMであるときには、スイッチング周波数Fswを固定して動作することができない。
【0070】
図5は、第1実施形態における制御信号VcとオンデューティDonとの関係を示す図である。本図の横軸は制御信号Vcを示している。本図の縦軸はオンデューティDonを示している。本図で示されるように、第1実施形態のオフスキップ制御では、制御信号Vcに対してオンデューティDonが単調に増加しない。そのため、システムが不安定となり得る。以下では、このような不具合の原因について詳細に考察する。
【0071】
図6は、分周動作(=オフスキップ制御)によりインダクタ電流ILの実際値とサンプリング値との間にギャップが生じる様子を示す図である。本図では、上から順に、スイッチ電圧Vsw、インダクタ電流IL、及び、電流検出信号Isnsが描写されている。
【0072】
電源制御装置100は、整流素子2のオン期間、特に、同期間の中点タイミングでのみインダクタ電流IL(具体的には下側インダクタ電流IL2)のサンプリングを行う。そのため、分周動作により整流素子2のオン期間がスキップされると、電流情報の取得(=電流検出信号Isnsの生成)ができなくなる。その結果、インダクタ電流ILの実際値(実線)とサンプリング値(破線)との間にギャップIL_gapが生じ得る。そこで、帰還制御ループを安定動作させるためには、分周動作時(=オフスキップ時)に電流検出信号Isnsを引き下げてギャップIL_gapを補正する必要がある。
【0073】
図7は、疑似電流生成回路の導入例を示す図である。本図で示されるように、電源制御装置100には、先出の構成要素1~14(
図1を参照)に加えて、クランパ15と疑似電流生成回路16が導入され得る。
【0074】
クランパ15は、制御信号Vcを所定の上限値以下にクランプする。クランパ15は、本図で示されるように、例えば、位相補償回路8(本図では、位相補償抵抗と位相補償キャパシタとの接続ノード)に接続されてもよい。クランパ15は、出力電圧Voに応じた電圧検出信号Vo_SNSの入力を受け付けてもよい。
【0075】
疑似電流生成回路16は、分周動作時(=オフスキップ時)に電流検出信号Isnsを引き下げることにより、先述のギャップIL_gapを補正する。なお、電流検出信号Isnsを引き下げるということは、制御信号Vcを引き下げるということに他ならない。疑似電流生成回路16は、入力電圧Vi及び出力電圧Voの入力を受け付けてもよい。
【0076】
図8は、分周動作とPWM動作の違いを説明するための図である。本図では、上から順に、入力電圧Vi、出力電圧Vo、スイッチ電圧Vsw、インダクタ電流IL、電流検出信号Isns、制御信号Vc及びランプ信号Vrが描写されている。
【0077】
本図で示されるように、電源制御装置100では、スイッチング周期Tswの1サイクル以内に制御信号Vcとランプ信号Vrが交差するか否かに応じて、PWM動作(図中では「PWM」と表記)と分周動作(図中では「FRQ_DIV」と表記)が切り替わる。
【0078】
特に、図中の破線枠X1で示されるように、分周動作中には、電流情報を持つ電流検出信号Isnsが段階的に引き下げられる。その結果、制御信号Vcとランプ信号Vrが交差するようになる。このような電流情報補正処理により、インダクタ電流ILの実際値とサンプリング値とのギャップIL_gap(
図6)が補正される。従って、帰還制御ループの安定性が高められる。
【0079】
なお、図中の破線枠X2で示されるように、制御信号Vcは、クランパ15の働きにより、所定の上限値以下に制限される。
【0080】
また、図中の破線枠X3で示されるように、スイッチング周期Tswの1サイクル以内に制御信号Vcとランプ信号Vrが交差すると、リセット信号RST(本図では不図示)にパルスが生成される。その結果、分周動作が解除されてPWM動作が再開される。
【0081】
図9は、分周動作の開始/解除閾値のヒステリシス要因を示す図である。本図では、上から順に、スイッチ電圧Vsw、制御信号Vc(破線)及びランプ信号Vr(実線)が描写されている。
【0082】
なお、制御信号Vcの小破線は、疑似電流生成回路16による電流情報補正処理が施されていない状態を示している。以下では、この状態の制御信号Vcを「補正前の制御信号Vc(小破線)」と呼ぶことがある。
【0083】
一方、制御信号Vcの大破線は、疑似電流生成回路16による電流情報補正処理が施されている状態を示している。以下では、この状態の制御信号Vcを「補正後の制御信号Vc(大破線)」と呼ぶことがある。
【0084】
図中の一点鎖線枠Y1では、分周動作が開始される。分周開始直後に生成されるオフパルス幅(図中の(1)を参照)が大きい場合には、フィードバックが働いて次の周期における補正前の制御信号Vcが上昇する(図中の(2)を参照)。その結果、オンデューティDonが低下するので、オンデューティDonの単調増加性が損なわれ得る。なお、分周動作時のオフパルス幅は、擬似電流生成回路16による制御信号Vcの補正量(図中の(3)を参照)に依存する。この点については後述する。
【0085】
図中の一点鎖線枠Y2では、先述の分周動作が継続され、スイッチング周波数Fswが1/2に分周されている。すなわち、先述のオフスキップ制御により、スイッチング周期Tswが見かけ上2倍に延長されている。
【0086】
なお、分周動作からPWM動作への復帰条件は、先述のように、スイッチング周期Tswの1サイクル以内に制御信号Vcとランプ信号Vrが交差してリセット信号RSTにパルスが生成されることである。ただし、補正前の制御信号Vc(小破線)は、ランプ信号Vrの最大値よりも高いレベルまで上昇している。従って、リセット信号RSTにパルスが生成されずに分周動作が継続される。本図に即して述べると、図中の破線枠Y2では、見かけ上、補正後の制御信号Vc(大破線)に応じたPWM動作が実施される。
【0087】
入力電圧Viが上昇すると、フィードバックが働いて補正前の制御信号Vc(小破線)が低下する(図中の(5)及び(6)を参照)。ただし、スイッチング周期Tswの1サイクル以内に補正前の制御信号Vc(小破線)がランプ信号Vrと交差してリセット信号RSTにパルスが生成されるない限り、先述の分周動作が維持される。そのため、分周動作の開始/解除閾値にヒステリシスが生じる。
【0088】
図中の一点鎖線枠Y2では、スイッチング周期Tswの1サイクル以内に補正前の制御信号Vc(小破線)がランプ信号Vrと交差している(図中の(7)を参照)。従って、分周動作が解除されてPWM動作が再開される。
【0089】
図10は、ヒステリシス発生条件と発生有無を説明するための図である。本図の実線はランプ信号Vrを示している。本図の一点鎖線は制御信号Vcを示している。
【0090】
疑似電流生成回路16による制御信号Vcの補正量Vpsは、入力電圧Viと出力電圧Voとの差分値(Vi-Vo)に比例する。つまり、補正量Vpsは、Vps=A×(Vi-Vo)と表される(ただしAは比例係数)。
【0091】
また、ランプ信号Vrの振幅Vppは、入力電圧Viに比例する。つまり、振幅Vppは、Vpp=B×Viと表される(ただしBは比例係数)。
【0092】
ここで、分周動作の開始/解除閾値にヒステリシスが発生する条件は、A>Bとなる。以下、この条件式について詳述する。
【0093】
図11は、分周動作の開始前後を示す図である。本図の上段には、分周動作の開始直前における制御信号Vc(一点鎖線)及びランプ信号Vr(実線)とスイッチ電圧Vswが描写されている。一方、本図の下段には、分周動作の開始直後における制御信号Vc(一点鎖線)及びランプ信号Vr(実線)とスイッチ電圧Vswが描写されている。なお、制御信号Vcの小破線は、補正前の信号レベルである。
【0094】
分周開始直後のオフパルス幅は、分周開始直前のオフパルス幅に対して、制御信号Vcの補正量Vpsに依存した増分ΔTだけ太くなる。すなわち、分周開始直前のオフパルス幅をToff_minとすると、分周開始直後のオフパルス幅は、Toff_min+ΔTと表される。
【0095】
分周開始直後のオンデューティが分周開始直前のオンデューティよりも小さい場合、制御信号Vcが上昇する。その結果、分周動作の開始/解除閾値にヒステリシスが生じる。これを条件式として表すと、次の(1)式となる。
【0096】
【0097】
ここで、分周開始直前のオフパルス幅Toff_minは、(1-Don)×Tswである。従って、先の(1)式は、次の(2)式に書き換えられる。
【0098】
【0099】
また、増分ΔTは、制御信号Vcの補正量Vps(=A×(Vi-Vo))とランプ信号Vrの振幅Vpp(=B×Vi)を用いて、次の(3)式で表される。
【0100】
【0101】
従って、(2)式に(3)式を代入して整理すると、分周動作の開始/解除閾値にヒステリシスが発生する条件は、A>Bとなる。
【0102】
以下では、上記の考察に鑑み、より適切なオフスキップ制御を行うことのできる第2実施形態を提案する。
【0103】
<コントローラ(第2実施形態)>
図12は、コントローラ12の第2実施形態を示す図である。本実施形態のコントローラ12は、Dフリップフロップ121及び122と、インバータ123と、ORゲート124と、を含む。
【0104】
Dフリップフロップ121(=第1Dフリップフロップに相当)は、クロック端(>)にセット信号SETが入力される。Dフリップフロップ121は、データ端(D)に固定電圧(例えばハイレベル電圧Vdd)が入力される。Dフリップフロップ121は、リセット端(R)にリセット信号RSTが入力される。Dフリップフロップ121は、出力端(Q)から出力信号Q1(=第1出力信号に相当)を出力する。
【0105】
すなわち、Dフリップフロップ121は、セット信号SETとリセット信号RSTに応じて出力信号Q1の論理レベルを切り替える。例えば、Dフリップフロップ121は、セット信号SETの立上りタイミング(例えば先出のDフリップフロップ120と逆のタイミング)でデータ端(D)の固定電圧をラッチ出力する。その結果、出力信号Q1がハイレベル(=Vdd)にセットされる。また、例えば、Dフリップフロップ121は、リセット信号RSTの立下りタイミング(例えば先出のDフリップフロップ120と同じタイミング)で出力信号Q1をローレベルにリセットする。
【0106】
Dフリップフロップ122(=第2Dフリップフロップに相当)は、クロック端(>)に反転セット信号SETBが入力される。Dフリップフロップ122は、データ端(D)に出力信号Q1が入力される。Dフリップフロップ122は、リセット端(R)にパワーオンリセット信号PORが入力される。Dフリップフロップ122は、出力端(Q)から出力信号Q2(=第2出力信号に相当)を出力する。
【0107】
すなわち、Dフリップフロップ122は、反転セット信号SETBとパワーオンリセット信号PORに応じて出力信号Q2の論理レベルを切り替える。例えば、Dフリップフロップ122は、反転セット信号SETBの立上りタイミング(=セット信号SETの立下りタイミング)でデータ端(D)の固定電圧をラッチ出力する。その結果、出力信号Q2が出力信号Q1の論理レベルにセットされる。また、例えば、Dフリップフロップ122は、パワーオンリセット信号PORの立下りタイミングで出力信号Q2をローレベルにリセットする。なお、パワーオンリセット信号PORは、例えば、電源制御装置100の起動時にローレベルに立ち下げられてもよい。
【0108】
インバータ123は、セット信号SETの論理レベルを反転させて反転セット信号SETBを生成する。従って、反転セット信号SETBは、セット信号SETがハイレベルであるときにローレベルとなる。また、反転セット信号SETBは、セット信号SETがローレベルであるときにハイレベルとなる。
【0109】
ORゲート124は、出力信号Q1及びQ2の論理和演算によりデューティ制御信号S0を生成する。従って、デューティ制御信号S0は、出力信号Q1及びQ2の少なくとも一方がハイレベルであるときにハイレベルとなる。また、デューティ制御信号S0は、出力信号Q1及びQ2の双方がローレベルであるときにローレベルとなる。
【0110】
なお、デューティ制御信号S0は、先にも述べられているように、出力素子1のオンデューティDonを決定する。すなわち、先出のゲート制御信号S1及びS2は、基本的にデューティ制御信号S0から生成される。
【0111】
<オフスキップ機能(第2実施形態)>
図13は、第2実施形態のオフスキップ機能を示す図である。本図では、上から順に、セット信号SET、制御信号Vc(破線)及びランプ信号Vr(実線)、リセット信号RST、出力信号Q1及びQ2、並びに、デューティ制御信号S0が描写されている。
【0112】
時刻t21において、セット信号SETがハイレベルに立ち上がると、出力信号Q1がハイレベルにセットされる。従って、デューティ制御信号S0がハイレベルとなる。その結果、出力素子1がオン状態とされて整流素子2がオフ状態とされる。また、セット信号SETがハイレベルに立ち上がると、ランプ信号Vrが所定の傾きで上昇し始める。
【0113】
時刻t22では、時刻t21でセット信号SETがハイレベルに立ち上がってから時刻t23でセット信号SETがローレベルに立ち下がるまでの間に、制御信号Vcとランプ信号Vrが交差する。このとき、リセット信号RSTがローレベルに立ち下がるので、出力信号Q1がローレベルにリセットされる。従って、デューティ制御信号S0がローレベルとなる。その結果、出力素子1がオフ状態とされて整流素子2がオン状態とされる。
【0114】
時刻t23において、セット信号SETがローレベルに立ち下がると、ランプ信号Vrが初期値(例えば0V)にリセットされる。また、セット信号SETがローレベルに立ち下がると、不図示の反転セット信号SETBがハイレベルに立ち上がる。従って、出力信号Q2が出力信号Q1の論理レベル(ここではローレベル)にラッチされる。
【0115】
時刻t24において、セット信号SETがハイレベルに立ち上がると、出力信号Q1が再びハイレベルにセットされる。従って、デューティ制御信号S0が再びハイレベルとなる。その結果、出力素子1がオン状態とされて整流素子2がオフ状態とされる。また、時刻t24において、セット信号SETがハイレベルに立ち上がると、ランプ信号Vrが所定の傾きで再び上昇し始める。
【0116】
なお、セット信号SETの或るサイクルの立上りタイミングから次サイクルの立上りタイミングまでの間隔(=時刻t21~t24)は、スイッチング周期Tswに相当する。デューティ制御信号S0のハイレベル期間は、オン期間Tonに相当する。デューティ制御信号S0のローレベル期間は、オフ期間Toff(=Tsw-Ton)に相当する。
【0117】
このように、コントローラ12は、オフスキップ機能が働いていないときには、セット信号SETに応じて出力素子1をオン状態とし、リセット信号RSTに応じて出力素子1をオフ状態とする。従って、オンデューティDonは、制御信号Vcが高いほど大きくなるようにPWM制御される。ここまでの動作は、先出の第1実施形態(
図3の時刻t11~t14を参照)と基本的に変わらない。
【0118】
次に、時刻t24~t25で示されるように、例えば入力電圧Viの低下に伴い、制御信号Vcが上昇した場合を考える。この場合、時刻t24でセット信号SETがハイレベルに立ち上がってから時刻t25でセット信号SETがローレベルに立ち下がるまでの間に、制御信号Vcとスロープ電圧V2が交差しないという状況が生じ得る。
【0119】
このような状況では、リセット信号RSTがローレベルに立ち下がらない。そのため、時刻t25では、出力信号Q1がローレベルにリセットされない。従って、デューティ制御信号S0がローレベルに立ち下がらないまま、ランプ信号Vrが初期値(例えば0V)にリセットされる。その結果、それまで周期的に到来していたオフ期間Toff(=デューティ制御信号S0のローレベル期間)がスキップされる。すなわち、出力素子1の周期的なオフ遷移がスキップされる。このオフスキップ制御により、スイッチング電源Aの負荷応答特性及び電源応答特性が高められる点については、先述の通りである。
【0120】
なお、時刻t25において、セット信号SETがローレベルに立ち下がると、不図示の反転セット信号SETBがハイレベルに立ち上がる。従って、出力信号Q2が出力信号Q1の論理レベル(ここではハイレベル)にラッチされる。このように、出力信号Q2は、オフスキップ制御が働くときにハイレベルとなる。すなわち、出力信号Q2は、オフスキップ制御が働いているか否かを示すフラグ信号として理解され得る。
【0121】
時刻t26において、セット信号SETがハイレベルに立ち上がると、出力信号Q1が再びハイレベルにセットされる。従って、デューティ制御信号S0が再びハイレベルとなる。その結果、出力素子1がオン状態とされて整流素子2がオフ状態とされる。また、時刻t24において、セット信号SETがハイレベルに立ち上がると、ランプ信号Vrが所定の傾きで再び上昇し始める。
【0122】
ここで、例えば入力電圧Viの上昇に伴い、制御信号Vcが低下した場合を考える。この場合、時刻t27で示されるように、時刻t26でセット信号SETがハイレベルに立ち上がってから時刻t28でセット信号SETがローレベルに立ち下がるまでの間に、制御信号Vcとランプ信号Vrが交差するという状況が生じ得る。このとき、リセット信号RSTがローレベルに立ち下がるので、出力信号Q1がローレベルにリセットされる。
【0123】
一方、出力信号Q2は、セット信号SETがローレベルに立ち下がるまで、すなわち、不図示の反転セット信号SETBがハイレベルに立ち上がるまで、それまでの論理レベル(ここではハイレベル)に維持される。従って、リセット信号RSTがローレベルに立ち下がっても、デューティ制御信号S0がハイレベルに維持される。その結果、出力素子1がオン状態に維持されて、整流素子2がオン状態に維持される。
【0124】
このように、コントローラ12は、オフスキップ機能が働いているときには、リセット信号RSTを無視して出力素子1をオン状態に維持する。すなわち、オン期間Tonからオフ期間Toffへの遷移条件として、オフスキップ機能が働いていないこと、言い換えれば、出力信号Q2がローレベルであることが追加されている。
【0125】
本構成によれば、オフスキップ機能が働いているときにリセット信号RSTがローレベルに立ち下がっても、オン期間Tonからオフ期間Toffに即座に遷移しなくなる。すなわち、分周動作の開始直後に生成されるオフパルス幅が大きくならない。従って、オンデューティDonの単調増加性が維持され得る。
【0126】
時刻t28において、セット信号SETがローレベルに立ち下がると、ランプ信号Vrが初期値(例えば0V)にリセットされる。また、時刻t28において、セット信号SETがローレベルに立ち下がると、不図示の反転セット信号SETBがハイレベルに立ち上がる。従って、出力信号Q2が出力信号Q1の論理レベル(ここではローレベル)にラッチされる。その結果、デューティ制御信号S0がローレベルとなるので、出力素子1がオフ状態とされて整流素子2がオン状態とされる。
【0127】
時刻t29において、セット信号SETがハイレベルに立ち上がると、出力信号Q1が再びハイレベルにセットされる。従って、デューティ制御信号S0が再びハイレベルとなる。その結果、出力素子1がオン状態とされて整流素子2がオフ状態とされる。
【0128】
すなわち、セット信号SETがローレベルに立ち下がってからハイレベルに立ち下がるまでの期間(=時刻t28~t29)は、先の最小オフ期間Toff_minとして理解され得る。このように、コントローラ12は、出力素子1をオフ状態とするときに少なくとも最小オフ期間Toff_minに亘って出力素子1をオフ状態に維持する。従って、ブートストラップ回路BSTの動作に支障を来し難くなる。
【0129】
図14は、第2実施形態における制御信号VcとオンデューティDonとの関係を示す図である。先出の
図5と同じく、本図の横軸は制御信号Vcを示している。また、本図の縦軸はオンデューティDonを示している。本図で示されるように、第2実施形態のオフスキップ制御では、制御信号Vcに対してオンデューティDonが単調に増加する。そのため、第1実施形態と比べてシステムが安定となる。
【0130】
<車両への適用>
図15は、車両の外観を示す図である。本構成例の車両Bは、バッテリから電力供給を受けて動作する種々の電子機器を搭載している。
【0131】
車両Bには、エンジン車のほか、電動車(BEV[battery electric vehicle]、HEV[hybrid electric vehicle]、PHEV/PHV(plug-in hybrid electric vehicle/plug-in hybrid vehicle]、又は、FCEV/FCV(fuel cell electric vehicle/fuel cell vehicle]などのxEV)も含まれる。
【0132】
なお、先に説明したスイッチング電源Aは、車両Bに搭載される電子機器のいずれにも組み込むことが可能である。その場合、スイッチング電源Aは、プライマリ電源であってもよい。すなわち、バッテリは、スイッチング電源Aに入力電圧Viを直接的に供給するものであってもよい。
【0133】
<付記>
以下では、上記で説明した種々の実施形態について総括的に述べる。
【0134】
例えば、本開示に係る電源制御装置は、入力電圧から出力電圧を生成するスイッチング電源の出力段を形成するスイッチ素子のデューティ制御を行うように構成されたコントローラを備え、前記コントローラは、前記スイッチ素子の周期的なオフ遷移をスキップするオフスキップ機能を備え、前記オフスキップ機能が働いているときには前記出力電圧の帰還制御に基づくリセット信号を無視して前記スイッチ素子をオン状態に維持する構成(第1の構成)とされている。
【0135】
上記第1の構成による電源制御装置は、前記出力電圧に応じた帰還電圧と所定の基準電圧との差分に応じて誤差信号を生成するように構成された第1アンプと、所定のスイッチング周波数でセット信号を生成するように構成されたオシレータと、前記誤差信号又はこれに応じた制御信号とランプ信号とを比較して前記リセット信号を生成するように構成されたコンパレータとをさらに備え、前記コントローラは、前記オフスキップ機能が働いていないときには、前記セット信号に応じて前記スイッチ素子をオン状態とし、前記リセット信号に応じて前記スイッチ素子をオフ状態とする構成(第2の構成)とされてもよい。
【0136】
上記第2の構成による電源制御装置は、前記出力段に流れる電流に応じた電流検出信号を生成するように構成された電流検出回路と、前記誤差信号と前記電流検出信号との差分に応じて前記制御信号を生成するように構成された第2アンプとをさらに備える構成(第3の構成)とされてもよい。
【0137】
上記第1~第3いずれかの構成による電源制御装置は、前記スイッチ素子がオフ状態であるときにキャパシタを充電することにより前記スイッチ素子の駆動電圧を生成するように構成されたブートストラップ回路をさらに備える構成(第4の構成)とされてもよい。
【0138】
上記第4の構成による電源制御装置において、前記コントローラは、前記スイッチ素子をオフ状態とするときに少なくとも最小オフ期間に亘って前記スイッチ素子をオフ状態に維持する構成(第5の構成)とされてもよい。
【0139】
上記第1~第5いずれかの構成による電源制御装置において、前記コントローラは、クロック端に前記セット信号が入力されてデータ端に固定電圧が入力されてリセット端に前記リセット信号が入力されて出力端から第1出力信号を出力するように構成された第1Dフリップフロップと、クロック端に反転セット信号が入力されてデータ端に前記第1出力信号が入力されて出力端から第2出力信号を出力するように構成された第2Dフリップフロップと、前記セット信号の論理レベルを反転させて前記反転セット信号を生成するように構成されたインバータと、前記第1出力信号及び前記第2出力信号から前記スイッチ素子のデューティ制御信号を生成するように構成された論理ゲートと、を含む構成(第6の構成)とされてもよい。
【0140】
また、例えば、本開示に係るスイッチング電源は、上記第1~第6いずれかの構成による電源制御装置と、前記電源制御装置により駆動される前記出力段と、を備える構成(第7の構成)とされている。
【0141】
上記第7の構成によるスイッチング電源において、前記スイッチ素子は、Nチャネル型である構成(第8の構成)とされてもよい。
【0142】
上記第7又は第8の構成によるスイッチング電源において、前記出力段は、降圧型、昇圧型、昇降圧型又は反転型である構成(第9の構成)とされてもよい。
【0143】
また、例えば、本開示に係る車両は、上記第7~第9いずれかの構成によるスイッチング電源と、前記スイッチング電源に前記入力電圧を供給するように構成されたバッテリとを備える構成(第10の構成)とされている。
【0144】
<その他>
なお、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。また、本開示の技術的範囲は、特許請求の範囲により規定されるものであって、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【符号の説明】
【0145】
1 出力素子(上側スイッチ素子)
2 整流素子(下側スイッチ素子)
3 エラーアンプ
4 ソフトスタート回路
5 位相補償回路
6 電流検出回路
7 gmアンプ
8 位相補償回路
9 オシレータ
10 ランプ信号生成回路
11 コンパレータ
12 コントローラ
120、121、122 Dフリップフロップ
123 インバータ
124 ORゲート
13 ドライバ
14 ダイオード
15 クランパ
16 疑似電流生成回路
100 電源制御装置
A スイッチング電源
B 車両
BST ブートストラップ回路
C1、C2 キャパシタ
HB ハーフブリッジ出力段
L1 インダクタ
R1、R2 抵抗
T1~T5 外部端子
Z 負荷