(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154657
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】三次元画像の表示装置と三次元画像の表示方法
(51)【国際特許分類】
G02B 30/56 20200101AFI20241024BHJP
G09F 19/12 20060101ALI20241024BHJP
H04N 13/398 20180101ALI20241024BHJP
H04N 13/393 20180101ALI20241024BHJP
H04N 13/346 20180101ALI20241024BHJP
【FI】
G02B30/56
G09F19/12 Z
H04N13/398
H04N13/393
H04N13/346
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068602
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】523135816
【氏名又は名称】X-Gate株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102923
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 雄二
(72)【発明者】
【氏名】大貫 誠
【テーマコード(参考)】
2H199
【Fターム(参考)】
2H199BA32
2H199BB18
2H199BB59
2H199BB67
(57)【要約】
【課題】回転ディスプレイと壁との距離が短いと、壁によって奥行きが制限されるように感じられる。回転ディスプレイは、ブレード音が出る事と、回転部分に人が近づくと危険である。
【解決手段】 ハーフミラーとノーマルミラーとの間に、回転する発光素子アレイを挟んで配置する。フレームの内壁の多重反射像により壁に囲まれた空間の奥行きを拡大させる。動画像の三次元的な動きの効果を高めることができる。回転する発光素子アレイを包囲するので、回転部分が覆われるから安全性が高い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
残像効果を利用して動画像を表示するための発光素子アレイと、この発光素子アレイを回転軸を中心に回転させる駆動装置と、
上記の発光素子アレイの照射光が直接照射される表面側にハーフミラーを配置し、その発光素子アレイの背面側にノーマルミラーを配置し、ハーフミラーとノーマルミラーとの間に発光素子アレイを挟んで配置したことを特徴とする三次元動画像表示装置。
【請求項2】
ハーフミラーとノーマルミラーとそれらの周囲を囲むフレームとで、発光素子アレイを包囲し、フレームの内面を照明を用いて照射して、回転する発光素子アレイの周囲に、ハーフミラー越しに、フレームの内壁の多重反射像を見せることを特徴とする請求項1に記載の三次元動画像表示装置。
【請求項3】
ハーフミラーもしくはノーマルミラーの、発光素子アレイにより表示される画像の表示領域と向き合う面に、周辺部分よりも光反射率を低下させた領域を設けたことを特徴とする請求項1に記載の三次元動画像表示装置。
【請求項4】
ノーマルミラーとハーフミラーとに挟まれた空間に、回転ディスプレイにより回転される発光素子アレイを配置して、ノーマルミラーとハーフミラーの周辺をフレームで囲み、フレームの内壁の多重反射像により奥行きが拡張された空間を表示し、発光素子アレイにより表示される三次元動画像がこの拡張された空間中で動き回るように、発光素子アレイの表示画像を制御することを特徴とする三次元動画像の表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転ディスプレイを使用した三次元画像の表示装置と三次元画像の表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータやテレビジョン受信機に設けられた通常の平面ディスプレイに動画を表示しても、その動画を立体的に表示するには限界がある。一方、特許文献1や特許文献2で紹介されたような回転ディスプレイで動画を表示すると、高い立体感が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本特許第6676831号公報
【特許文献2】米国特許公開第2009/0002270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図7に特許文献1で紹介した回転ディスプレイの斜視図を示した。
図8はその側面図、
図9はその平面図である。この回転ディスプレイは、プレート12上に発光素子アレイ14が搭載されており、駆動装置の回転軸16により矢印A方向に回転駆動される。発光素子アレイ14に画像データが入力すると、人の視覚の残像効果を利用して動画像を表示する。
【0005】
図10は壁面に回転ディスプレイをとり付けた従来例の側面図である。壁36の手前の空間で動画像中の動物等が三次元方向に自在に移動しているように感じることができる。この装置により、平面ディスプレイによる画像よりも高い立体感が得られる。しかしながら回転ディスプレイと壁36との距離が短いと、壁36によって奥行きが制限され立体感が損なわれる。
【0006】
一方、
図11に示した従来例では、壁36から十分に離して回転ディスプレイを取り付けた。このほうが
図10の例よりも動画像の奥行きを感じることができる。しかしながら、回転ディスプレイは、回転部分に人が近づくと危険である。従って、防護用のカバー等が必要になる。そのため、回転ディスプレイの設置スペースが大きくなるという問題があった。また、駆動装置による回転音が気になるという問題もあった。
【0007】
図12に示した従来例では、天井38から回転ディスプレイを吊して固定している。これで、壁を取り除くことができる。しかしながら、この構造も
図11の例と同様に、回転ディスプレイの設置スペースが大きくなるという問題があった。
【0008】
本発明では、回転ディスプレイによる三次元画像の立体感を十分に高めつつ、設備を小型化し、ブレード音の少音化、かつ、安全性を高めた三次元画像の表示装置と、三次元画像の表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下の構成はそれぞれ上記の課題を解決するための手段である。
【0010】
<構成1>
残像効果を利用して動画像を表示するための発光素子アレイと、この発光素子アレイを回転軸を中心に回転させる駆動装置と、
上記の発光素子アレイの照射光が直接照射される表面側にハーフミラーを配置し、その発光素子アレイの背面側にノーマルミラーを配置し、ハーフミラーとノーマルミラーとの間に発光素子アレイを挟んで配置したことを特徴とする三次元動画像表示装置。
【0011】
<構成2>
ハーフミラーとノーマルミラーとそれらの周囲を囲むフレームとで、発光素子アレイを包囲し、フレームの内面を照明を用いて照射して、回転する発光素子アレイの周囲に、ハーフミラー越しに、フレームの内壁の多重反射像を見せることを特徴とする構成1に記載の三次元動画像表示装置。
【0012】
<構成3>
ハーフミラーもしくはノーマルミラーの、発光素子アレイにより表示される画像の表示領域と向き合う面に、周辺部分よりも光反射率を低下させた領域を設けたことを特徴とする構成1に記載の三次元動画像表示装置。
【0013】
<構成4>
ノーマルミラーとハーフミラーとに挟まれた空間に、回転ディスプレイにより回転される発光素子アレイを配置して、ノーマルミラーとハーフミラーの周辺をフレームで囲み、フレームの内壁の多重反射像により奥行きが拡張された空間を表示し、発光素子アレイにより表示される三次元動画像がこの拡張された空間中で動き回るように、発光素子アレイの表示画像を制御することを特徴とする三次元動画像の表示方法。
【発明の効果】
【0014】
ハーフミラーとノーマルミラーとの間に発光素子アレイを挟んで配置するので、省スペ-スであって、多重反射により奥行きが拡大した空間に動画像を表示できる。
回転する発光素子アレイをハーフミラーとノーマルミラーとで挟むので、回転部分が覆われるから安全性が高い。
照明に照らされた、フレームの内壁の多重反射像により壁に囲まれた空間の奥行きが拡大するから、動画像の三次元的な動きの効果を高めることができる。
ハーフミラーあるいはノーマルミラーの、発光素子アレイにより表示される画像の表示領域と向き合う面での反射を抑制すると、必要に応じて動画像の多重反射を抑制することができる。駆動装置を背面に隠せば、駆動装置による回転騒音を遮断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の三次元画像表示装置の縦断面図である。
【
図2】
図2は
図1に示した装置の画像制御システムのブロック図である。
【
図4】
図4は動画像と多重反射像を表示した装置の斜視図である。
【
図7】
図7は特許文献1で紹介した回転ディスプレイの斜視図である。
【
図10】
図10は壁面に回転ディスプレイをとり付けた従来例の側面図である。
【
図11】
図11は壁から十分に離して回転ディスプレイを取り付けた従来例の側面図である。
【
図12】
図12は天井から回転ディスプレイを吊して固定した従来例の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を実施例毎に詳細に説明する。
【実施例0017】
この実施例1は、
図7の図面に示した回転ディスプレイ10を使用した例を用いて説明する。なお、使用される回転ディスプレイ10の構造は、特許文献1や特許文献2に示した各種のものを自由に採用できる。
【0018】
図1は
図3に正面図を示した本発明の装置のX-X面に沿う縦断面図である。
図1に示した発光素子アレイ14には、
図2に示すように、画像制御部20から、駆動装置18の回転に同期させた動画像が供給される。動作原理は特許文献1や特許文献2に示されたとおりである。この発光素子アレイ14の照射光は、ハーフミラー24の方向に発射される。
【0019】
発光素子アレイ14の照射光が照射される側を表面側と呼び、反対側を背面側と呼ぶことにする。その表面側にはハーフミラー24が配置されている。またその背面側にはノーマルミラー22が配置されている。即ち、
図1に示した三次元画像表示装置は、ハーフミラー24とノーマルミラー22との間に発光素子アレイ14を挟んだ構造をしている。
【0020】
なお、ノーマルミラー22は入射光をほぼ100%反射する機能を持つ。ハーフミラー24は、入射光を例えば、60%反射し、40%透過させる機能を持つ。この割合は要求に応じて自由に変更して構わない。
【0021】
図1と
図3に示すように、ハーフミラー24とノーマルミラー22の周囲を取り囲むようにフレーム26が設けられている。フレーム26は不透明な板等で構成することができる。ハーフミラー24とノーマルミラー22とフレーム26とによって発光素子アレイ14全体が包囲されている。
【0022】
図1と
図3に示した実施例では、フレーム26とハーフミラー24とで、直方体の箱が構成されている。箱の外背面に駆動装置18を固定して、プレート12に搭載した発光素子アレイ14を回転させるための回転軸16を、その外背面から箱の内部に挿入している。ハーフミラー24を取り外した状態で発光素子アレイ14を回転させると箱の中には回転軸以外には何も見えない状態になる。発光素子アレイ14により、特許文献1等に示されたような動画像が表示される。
【0023】
フレーム26の上面と下面には、内部照明32が取り付けられている。内部照明32は、例えば、複数のLEDランプを配列したパネルである。この内部照明32によってフレーム26の内壁が明るく照らされる。内部照明32の構造も取り付け位置も任意である。
【0024】
上記の構造の三次元画像表示装置を使用して、
図4に示すように、例えば、金魚の動画像30を表示する。このとき、ハーフミラー24とノーマルミラー22の作用によって、フレーム26の内壁の多重反射像42が動画像の周囲に見える。
【0025】
図3に示した破線の円は、発光素子アレイ14の画像表示領域28である。例えば、この画像表示領域28の直径を30センチメートルとし、ハーフミラー24とノーマルミラー22の縦と横の長さを40センチメートルとし、両者の間隔を10センチメートルとして、
図4に示したような箱形の装置を組み立てることができる。なお、箱の形状については、直方体、多角柱、円筒、円柱その他、複雑な形状も適用できる。従って、ハーフミラー24やノーマルミラー22を湾曲させてもよい。
【0026】
内部照明32を点灯すると、動画像30の周囲にハーフミラー24を通じてフレーム26の内壁の多重反射像42が見える。このため、回転ディスプレイ10による空中に浮いたような特有の動画像30が、奥行きの拡大した空間中で動いているように見える。従って、例えば金魚をハーフミラー24から奥の方に向かって違和感なしに大きく移動させる動画像30を表示することができる。
【0027】
即ち、回転ディスプレイ10の発光素子アレイ14とハーフミラー24とノーマルミラー22とを組み合わせることによって、従来のディスプレイでは表現できなかった三次元動画像を表現できる。しかも、この装置は、ハーフミラー24とノーマルミラー22とフレーム26とで構成したコンパクトな装置で構成できる。また、回転する発光素子アレイ14全体が箱に覆われているので安全で任意の場所に取り付けて使用できる。このような箱を任意の場所に任意の数だけ並べて広告等に使用できる。
上記のように、ノーマルミラー22とハーフミラー24とフレーム26とで囲まれた箱の中に、奥行きが拡大された空間を見せて、回転ディスプレイ10による動画像を表示すると、3次元空間を広く動き回る画像を表現できる。
また、発光素子アレイ14の照射光44はハーフミラー24の内側で反射するが、プレート12が不透明だから、ノーマルミラー22に達しない。そのため発光素子アレイ14で表示される動画像は、正面から見た場合には多重反射が生じない。
この実施例2では、こうした動画像の多重反射を防ぐ必要がある場合のために、例えば、発光素子アレイ14の背面側にある、ノーマルミラー22の背面領域34の光反射率を、周辺部分の光反射率よりも低くした。例えば、このノーマルミラー22の背面領域34に、光が反射しにくいコーティングを塗布するとよい。
動画像の多重反射を防ぐために、発光素子アレイ14により表示される画像の表示領域と向き合うハーフミラー24の面に、光が反射しにくいコーティングを塗布しても同様の効果が得られる
動画像の多重反射は、広告宣伝用の画像では効果的なため、この実施例2の構造は動画像の多重反射を防ぐ必要がある場合にのみ有効である。箱の形状によっては、動画像の多重反射がほとんど見えないこともあり、その場合には実施例2の構造は不要である。
また、一部に光が反射しにくいコーティングを塗布したハーフミラー24を簡単に交換できるようにしておけば、必要に応じて使い分けをすることができる。