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特開2024-154660地形状態判定システム及び地形状態判定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154660
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】地形状態判定システム及び地形状態判定方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/90 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
G01S13/90 127
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068608
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100128107
【弁理士】
【氏名又は名称】深石 賢治
(72)【発明者】
【氏名】伊達 健介
(72)【発明者】
【氏名】横田 泰宏
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AC01
5J070AE07
5J070AF08
5J070BE04
(57)【要約】
【課題】PS点が減少する場合でも地形状態を判定できる地形状態判定システム及び地形状態判定方法を提供する。
【解決手段】地形状態判定システム1は、対象地の地形状態を判定する地形状態判定システム1であって、複数の時点毎の、対象地のSAR画像SMから得られたPS点Pの位置を示す位置情報を取得する位置情報取得部11と、複数の時点毎に、位置情報に基づき、予め設定された区画M内のPS点Pの数であるPS点数を算出する点数算出部12と、複数の時点毎の区画M内のPS点数に基づき、区画Mに対応する対象地の地形状態を判定する地形状態判定部13と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象地の地形状態を判定する地形状態判定システムであって、
複数の時点毎の、前記対象地のSAR画像から得られたPS点の位置を示す位置情報を取得する位置情報取得部と、
複数の時点毎に、前記位置情報に基づき、予め設定された区画内の前記PS点の数であるPS点数を算出する点数算出部と、
前記複数の時点毎の前記区画内の前記PS点数に基づき、前記区画に対応する前記対象地の地形状態を判定する地形状態判定部と、
を備える地形状態判定システム。
【請求項2】
前記地形状態判定部は、前記複数の時点のうちの基準時点における前記区画内の前記PS点数である基準PS点数、及び、前記基準時点よりも後の時点である判定対象時点における前記区画内の前記PS点数である対象PS点数に基づき、前記判定対象時点における前記地形状態を判定する、
請求項1に記載の地形状態判定システム。
【請求項3】
前記地形状態判定部は、前記基準PS点数に対する前記対象PS点数の割合に基づき、前記判定対象時点における前記地形状態を判定する、
請求項2に記載の地形状態判定システム。
【請求項4】
前記地形状態判定部は、前記基準PS点数に対する前記対象PS点数の割合が予め設定された判定条件を満たす前記時点が連続する期間に基づき、前記判定対象時点における前記地形状態を判定する、
請求項3に記載の地形状態判定システム。
【請求項5】
前記地形状態判定部は、
前記地形状態を判定するための基準値を決定するための基準値用のPS点の数を取得し、
取得した前記基準値用のPS点の数に係る統計値に基づき、前記判定対象時点における前記地形状態を判定するための前記基準値を決定する、
請求項2又は3に記載の地形状態判定システム。
【請求項6】
前記区画は、位置関係が予め設定されている複数の区画を含み、
前記地形状態判定部は、前記複数の区画間の位置関係にも基づき、前記判定対象時点における前記地形状態を判定する、
請求項2又は3に記載の地形状態判定システム。
【請求項7】
前記地形状態判定部は、
互いに異なる複数の前記基準時点における複数の前記基準PS点数のそれぞれ、及び前記対象PS点数に基づき、前記判定対象時点における前記地形状態をそれぞれ一次的に判定し、
一次的な判定結果に基づき、前記判定対象時点における前記地形状態を判定する、
請求項2又は3に記載の地形状態判定システム。
【請求項8】
対象地の地形状態を判定する地形状態判定システムの動作方法である地形状態判定方法であって、
複数の時点毎の、前記対象地のSAR画像から得られたPS点の位置を示す位置情報を取得する位置情報取得ステップと、
複数の時点毎に、前記位置情報に基づき、予め設定された区画内の前記PS点の数であるPS点数を算出する点数算出ステップと、
前記複数の時点毎の前記区画内の前記PS点数に基づき、前記区画に対応する前記対象地の地形状態を判定する地形状態判定ステップと、
を備える地形状態判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象地の地形状態を判定する地形状態判定システム及び地形状態判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合成開口レーダ(SAR:Synthetic Aperture Rader)により取得されたSAR画像を用いて地形を解析する干渉SAR解析が知られている。特許文献1には、SARから地表面に向けてマイクロ波が出射され、地表面において反射したマイクロ波をSARで検出することでSAR画像を取得し、地すべりを検出することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-56008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
干渉SAR解析においては、SAR画像上において干渉性が高いピクセルであるPS(Persistent(Permanent) Scatter)点を抽出し、PS点をモニタリングすることで地形の状態を判定する手法が知られている。しかし、植生の影響、土地の改変、又は例えば斜面崩壊等の過剰な変位の発生が生じた場合、地表の干渉性が低下してPS点が得られなくなり、SAR画像上のPS点が減少することが多い。この場合、地形の状態(地形状態)を判定することが困難となる。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、PS点が減少する場合でも地形状態を判定できる地形状態判定システム及び地形状態判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る地形状態判定システムは、対象地の地形状態を判定する地形状態判定システムであって、複数の時点毎の、対象地のSAR画像から得られたPS点の位置を示す位置情報を取得する位置情報取得部と、複数の時点毎に、位置情報に基づき、予め設定された区画内のPS点の数であるPS点数を算出する点数算出部と、複数の時点毎の区画内のPS点数に基づき、区画に対応する対象地の地形状態を判定する地形状態判定部と、を備える。
【0007】
本発明に係る地形状態判定システムでは、複数の時点毎の区画内のPS点数に基づき、区画に対応する対象地の地形状態を判定する。よって、例えば斜面崩壊によりSAR画像上のPS点が減少する場合でも、区画内のPS点数の時系列変化に基づき地形状態を判定することができる。したがって、PS点が減少する場合でも地形状態を判定できる。
【0008】
地形状態判定部は、複数の時点のうちの基準時点における区画内のPS点数である基準PS点数、及び基準時点よりも後の時点である判定対象時点における区画内のPS点数である対象PS点数に基づき、判定対象時点における地形状態を判定してもよい。この構成によれば、例えば基準時点から判定対象時点までのPS点数の変化に基づき地形状態を判定できるので、PS点が減少する場合でも地形状態を適切に判定できる。
【0009】
地形状態判定部は、基準PS点数に対する対象PS点数の割合に基づき、判定対象時点における地形状態を判定してもよい。この構成によれば、例えば基準PS点数に対する対象PS点数の割合が所定値以下となった場合、判定対象時点における地形状態が斜面崩壊等の可能性がある状態であると判定できる。よって、地形状態を一層適切に判定できる。
【0010】
地形状態判定部は、基準PS点数に対する対象PS点数の割合が予め設定された判定条件を満たす時点が連続する期間に基づき、判定対象時点における地形状態を判定してもよい。この構成によれば、例えば基準PS点数に対する対象PS点数の割合が所定値以下となる期間が所定期間以上連続する場合、判定対象時点における地形状態が斜面崩壊等の可能性がある状態であると判定できる。よって、例えば、地形状態にかかわらず短い期間内にPS点数が増減する場合でも、地形状態を一層適切に判定できる。
【0011】
地形状態判定部は、地形状態を判定するための基準値を決定するための基準値用のPS点の数を取得し、取得した基準値用のPS点の数に係る統計値に基づき、判定対象時点における地形状態を判定するための基準値を決定してもよい。この構成によれば、例えば基準値用のPS点の数の確率密度、平均値、及び標準偏差を統計値として取得し、判定対象時点における地形状態を判定するための基準値を決定できる。よって、決定した基準値に基づき、地形状態を一層適切に判定できる。
【0012】
区画は、位置関係が予め設定されている複数の区画を含み、地形状態判定部は、複数の区画間の位置関係にも基づき、判定対象時点における地形状態を判定してもよい。この構成によれば、例えば複数の区画が互いに隣接することにも基づき、地形状態を判定できる。よって、地形状態を一層適切に判定できる。
【0013】
地形状態判定部は、互いに異なる複数の基準時点における複数の基準PS点数のそれぞれ、及び対象PS点数に基づき、判定対象時点における地形状態をそれぞれ一次的に判定し、一次的な判定結果に基づき、判定対象時点における地形状態を判定してもよい。この構成によれば、例えば、複数の基準時点における複数の基準PS点数のそれぞれに対する対象PS点数の割合に基づき、判定対象時点における地形状態を判定できる。これにより、一の基準PS点数に対する対象PS点数の割合のみに基づき地形状態を判定する場合と比較して、判定精度を向上できる。
【0014】
ところで、本発明は、上記のように地形状態判定システムの発明として記述できる他に、以下のように地形状態判定方法の発明としても記述することができる。これらはカテゴリが異なるだけで、実質的に同一の発明であり、同様の作用及び効果を奏する。
【0015】
即ち、本発明に係る地形状態判定方法は、対象地の地形の状態である地形状態を判定するための地形状態判定システムの動作方法である地形状態判定方法であって、複数の時点毎の、対象地のSAR画像から得られたPS点の位置を示す位置情報を取得する位置情報取得ステップと、複数の時点毎に、位置情報に基づき、予め設定された区画内のPS点の数であるPS点数を算出する点数算出ステップと、複数の時点毎の区画内のPS点数に基づき、区画に対応する対象地の地形状態を判定する地形状態判定ステップと、を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、PS点が減少する場合でも地形状態を判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る地形状態判定システムの構成を示す図である。
図2】区画が設定されたSAR画像の例を示す図である。
図3】(a)は、斜面崩壊前のPS点の位置の例を示す図である。(b)は、斜面崩壊後のPS点の位置の例を示す図である。
図4】区画毎のPS点数の時系列変化の一例を示すグラフである。
図5】区画毎のPS点数の割合の時系列変化の第1例を示すグラフである。
図6】地形状態の表示の例を示す図である。
図7】本発明の実施形態に係る地形状態判定方法を示すフローチャートである。
図8】(a)は、区画毎のPS点数の割合の時系列変化の第2例を示すグラフである。(b)は、区画毎のPS点数の割合の時系列変化の第3例を示すグラフである。
図9】区画毎のPS点数の割合の時系列変化の第4例を示すグラフである。
図10】所定の区画内のPS点数に係る統計値の例を示すグラフである。
図11】(a)は、表示の別の例を示す図である。(b)は、表示のさらに別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面と共に本発明に係る地形状態判定システム及び地形状態判定方法の実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
図1に、本実施形態に係る地形状態判定システム1を示す。地形状態判定システム1は、対象地の地形状態を判定する。対象地は、例えば、地球上における所定の範囲の場所である。地形状態は、対象地における地形の状態である。地形状態は、例えば、斜面崩壊等の過剰な変位の発生の可能性が高い状態である、又は、過剰な変位の発生が既に発生している異常状態と、過剰な変位の発生の可能性が低い状態である正常状態と、を含む。地形状態判定システム1は、例えば、対象地の地形状態を判定し、ユーザに向けて地形状態を報知する。ユーザは、例えば、地形状態判定システム1を使用して地形状態を把握する者である。
【0020】
地形状態判定システム1は、具体的には、CPU(Central Processing Unit)、メモリ等のハードウェアを含むコンピュータである。地形状態判定システム1の後述する各機能は、これらの構成要素がプログラム等により動作することによって発揮される。なお、地形状態判定システム1は、1つのコンピュータで実現されてもよいし、複数のコンピュータがネットワークにより互いに接続されて構成されるコンピュータシステムにより実現されていてもよい。地形状態判定システム1は、別の装置との間でネットワークを介して互いに情報の送受信を行うことができる。
【0021】
本実施形態では、人工衛星100は、SARを有し、SAR観測を実施する。SAR観測では、人工衛星100は、SARから対象地に位置する対象物に向けて電波を発射し、対象物で反射した電波(反射波)をSARにより検出する。対象物は、例えば、対象地の隆起した地形の一部であってもよく、対象地の地表に位置する建物等の人工物であってもよい。
【0022】
人工衛星100は、対象地における地表の同一の地点に対して複数回のSAR観測を実施する。人工衛星100は、例えば、複数回のSAR観測により得られた複数の反射波の位相差に基づき、人工衛星100と地表面との距離の変化を示す情報を取得する。本実施形態では、人工衛星100は、PS-InSAR解析(PS干渉SAR解析)に用いられるデータを人工衛星100の外部に送信する。
【0023】
引き続いて、本実施形態に係る地形状態判定システム1の機能を説明する。図1に示すように、地形状態判定システム1は、位置情報取得部11と、点数算出部12と、地形状態判定部13と、を備えて構成される。
【0024】
位置情報取得部11は、複数の時点毎の、SAR画像から得られたPS点の位置を示す位置情報を取得する。本実施形態では、位置情報取得部11は、地形状態判定システム1とは別の装置からPS-InSAR解析に用いられるデータを取得する。例えば、地形状態判定システム1の提供者が、人工衛星100によって得られた当該データを販売する第三者から当該データを購入し、位置情報取得部11は、当該第三者の装置から受信する等して当該データを取得する。あるいは、位置情報取得部11は、人工衛星100から直接当該データを取得してもよい。当該データは、例えば、SAR画像を含む。位置情報取得部11は、取得したデータに基づき、公知のPS-InSAR解析によって複数の時点毎のデータを含むSAR解析結果を生成する。SAR解析結果に含まれる複数の時点毎のデータには、当該複数の時点毎の位置情報が含まれる。複数の時点は、例えば、1ヶ月毎の時点等の予め設定された一定間隔での時点である。但し、複数の時点は、時間軸上の複数の点であればよく、必ずしも上記である必要はない。但し、位置情報の生成は地形状態判定システム1の外部において行われ、位置情報取得部11は、生成された位置情報を取得してもよい。
【0025】
PS点は、SAR画像上における干渉性が良い(対象地における、人工衛星100からの電波を安定して反射する点に対応する)ピクセルである。PS点は、人工構造物、又は岩石等に対応することが知られている。このようなPS点では、干渉位相のノイズ量が少ないことが知られている。
【0026】
図2は、区画Mが設定されたSAR画像SMの例を示す図である。区画Mは、地形状態を判定するために設定された対象地を分割する単位である。SAR画像SM上には、例えばユーザにより予め複数の区画Mが設定されている。区画Mは、例えば、対象地の一定範囲をゾーニングして定義された平面メッシュである。
【0027】
図2に示すように、SAR画像SM上には、3つの長方形状の区画Mが一方向に沿って配列されており、3つの区画Mの列が一方向と直交する直交方向に4列設定されている。区画Mの数、大きさ、形状、及び配置は、適宜変更可能である。以下では、説明の便宜のため、複数の区画Mのうち、下から数えてm行目、且つ、左から数えてn列目に位置する区画Mを、区画(m,n)と称する(m、nは自然数)。
【0028】
図3(a)は、図2に示すSAR画像SM上におけるPS点Pの位置の例を示す図である。図3(b)は、斜面崩壊後のPS点Pの位置の例を示す図である。点数算出部12は、複数の時点毎に、位置情報取得部11により取得された位置情報に基づき、予め設定された区画M内のPS点Pの数であるPS点数を算出する。点数算出部12は、複数の区画Mのそれぞれについて、複数の時点毎にPS点数を算出する。
【0029】
図3(b)に示すように、例えば、対象地において斜面崩壊又は斜面崩壊につながる大きな変状が生じると、地表の干渉性が低下してPS点Pが得られなくなり、SAR画像SM上のPS点Pが減少し得る。図3(b)の例では、図3(a)と比較して、区画(1,2)における2点鎖線で囲まれた領域MAのPS点Pの数が減少している。
【0030】
図4は、区画M毎のPS点数の時系列変化の一例を示すグラフである。グラフの横軸は時間を示し、グラフの縦軸はPS点数を示す。図4では、点数算出部12が1ヶ月毎にPS点数を算出する例を示している。図4に示すように、複数の区画Mのうち一部の区画Mにおいて、斜面崩壊後にPS点数が減少する。
【0031】
地形状態判定部13は、点数算出部12によって算出された複数の時点毎の区画M内のPS点数に基づき、区画Mに対応する対象地の地形状態を判定する。本実施形態では、地形状態判定部13は、複数の時点のうちの基準時点における区画M内のPS点数である基準PS点数、及び、基準時点よりも後の時点である判定対象時点における区画M内のPS点数である対象PS点数に基づき、判定対象時点における地形状態を判定する。
【0032】
基準時点は、判定対象時点における地形状態を判定する際の基準となる時点である。判定対象時点は、地形状態を判定する対象となる時点である。本実施形態では、基準時点及び判定対象時点は、予め設定されている。例えば、基準時点及び判定対象時点は、複数の時点からユーザによって選択されて設定される。例えば、ユーザは、斜面崩壊等の現象又はその兆候が起こった時点を判定対象時点として設定し得る。また、ユーザは、複数の時点を判定対象時点として予め設定してもよい。例えば、ユーザは、毎月の決まった日(一例として、毎月の1日)を判定対象時点として予め設定してもよい。基準時点及び判定対象時点は、適宜変更可能である。
【0033】
図5は、区画M毎のPS点数の割合の時系列変化の第1例を示すグラフである。図5では、2つの区画M内のPS点数の割合の時系列変化が示されている。図5では、区画(1,2)内のPS点数の割合の時系列変化が実線で示されており、区画(4,2)内のPS点数の割合の時系列変化が破線で示されている。図5では、区画(1,2)及び区画(4,2)のそれぞれにおける1月のPS点数を100とし、1月のPS点数に対する1ヶ月毎のPS点数の割合が示されている。
【0034】
本実施形態では、地形状態判定部13は、基準PS点数に対する対象PS点数の割合に基づき、判定対象時点における地形状態を判定する。地形状態判定部13は、基準PS点数に対する対象PS点数の割合が所定値以下である場合、地形状態が異常状態であると判定する。地形状態判定部13は、基準PS点数に対する対象PS点数の割合が所定値よりも大きい場合、地形状態が正常状態であると判定する。所定値は、例えば、100%未満の値であり、地形状態の判定を行うために適切な数値が例えば予め設定されている。本実施形態では、所定値は90%であるが、適宜変更可能である。
【0035】
以下、基準時点が1月の時点であり、判定対象時点が3月の時点である例を説明する。図5の例では、区画(1,2)において、基準PS点数に対する対象PS点数の割合が80%である。よって、地形状態判定部13は、判定対象時点における地形状態が異常状態であると判定する。
【0036】
区画(4,2)において、基準PS点数に対する対象PS点数の割合が90%以上である。よって、地形状態判定部13は、判定対象時点における地形状態が正常状態であると判定する。なお、基準時点及び判定対象時点が上記の例と異なる場合でも、地形状態判定部13は、同様の処理を実行することにより、判定対象時点における地形状態を判定できる。
【0037】
地形状態判定部13は、判定した地形状態を示す情報を出力する。出力として、例えば、地形状態判定部13は、地形状態判定システム1の外部の装置に送信してもよく、地形状態判定システム1に含まれる表示装置に表示してもよい。当該外部の装置は、例えば、ユーザにより用いられる端末である。当該外部の装置は、例えば、ユーザにより携帯されるスマートフォン又はタブレット端末であってもよく、PCのディスプレイであってもよい。上記の外部の装置は、例えば、地形状態判定システム1と通信可能に構成されている。
【0038】
図6は、地形状態の表示の例を示す図である。図6では、赤色で表示された区画Mが太線のハッチングで示されており、青色で表示された区画Mにはハッチングが付されていない。本実施形態では、地形状態判定部13は、区画M毎の地形状態を地形状態に応じた色で表示する。地形状態判定部13は、例えば、複数の区画Mを色分けして表示する。地形状態判定部13は、例えば、異常状態であると判定した区画Mを赤色で表示し、正常状態であると判定した区画Mを青色で表示する。本実施形態では、地形状態判定部13は、異常状態であると判定した区画(1,2)を赤色で表示する(図2参照)。地形状態判定部13は、正常状態であると判定した区画(1,2)以外の区画Mを青色で表示する。地形状態判定部13は、何れかの区画Mについて地形状態が異常状態と判定した場合、出力として、例えばユーザの端末にアラート(警告)を発してもよい(アラートに係る情報を送信してもよい)。当該ユーザの端末は、例えば、スマートフォン、タブレット端末、又はパーソナルコンピュータ等の端末でもよい。
【0039】
引き続いて、図7のフローチャートを用いて、本実施形態に係る地形状態判定システム1で実行される処理(地形状態判定システム1の動作方法)である地形状態判定方法を説明する。本処理では、位置情報取得部11によって、位置情報が取得される(S1、位置情報取得ステップ)。本実施形態において、位置情報取得ステップでは、位置情報取得部11が人工衛星100から取得したデータに基づき、複数の時点毎のSAR画像を生成する。本実施形態では、位置情報取得部11は、生成した複数の時点毎のSAR画像に基づき、PS-InSAR解析により位置情報を生成して取得する。
【0040】
続いて、位置情報取得部11により取得された位置情報に基づき、点数算出部12によって、複数の時点毎に予め設定された区画M内のPS点数を算出する(S2、点数算出ステップ)。本実施形態において、点数算出ステップでは、点数算出部12が複数の区画Mのそれぞれについて、複数の時点毎にPS点数を算出する。
【0041】
続いて、点数算出部12によって算出された複数の時点毎の区画M内のPS点数に基づき、地形状態判定部13によって、区画Mに対応する対象地の地形状態が判定される(S3、地形状態判定ステップ)。地形状態判定ステップにおいて、本実施形態では、地形状態判定部13は、基準PS点数及び対象PS点数に基づき、判定対象時点における地形状態を判定する。地形状態判定部13は、基準PS点数に対する対象PS点数の割合に基づき、判定対象時点における地形状態を判定する。地形状態判定部13は、基準PS点数に対する対象PS点数の割合が所定値以下である場合、地形状態が異常状態であると判定する。地形状態判定部13は、基準PS点数に対する対象PS点数の割合が所定値よりも大きい場合、地形状態が正常状態であると判定する。
【0042】
続いて、地形状態判定部13によって判定された地形状態に基づき、地形状態判定部13によって、地形状態が出力される(S4、地形状態出力ステップ)。本実施形態において、地形状態出力ステップでは、地形状態判定部13は、地形状態を示す情報を出力する。以上が、本実施形態に係る地形状態判定システム1で実行される処理である。
【0043】
従来、PS点をモニタリングすることで地形状態を判定する(一例として、地盤変動計測を実施する)手法が知られている。しかし、過剰な変位の発生等に起因してPS点の数が減少すると、判定しようとする地点でPS点が得られず、地形状態を判定できない可能性がある。したがって、地滑り、斜面崩壊等の発生の可能性を評価すること、地滑り等を早期に検知することが困難となり得る。また、少ないPS点で地形の変位分析を行うと、分析精度が低下するため、この点においても問題となり得る。
【0044】
これらの問題に対し、本実施形態では、複数の時点毎の区画M内のPS点数に基づき、区画Mに対応する対象地の地形状態を判定する。よって、例えば斜面崩壊によりSAR画像SM上のPS点Pが減少する場合でも、区画M内のPS点数の時系列変化に基づき地形状態を判定することができる。したがって、PS点Pが減少する場合でも地形状態を判定できる。また、本実施形態によれば、斜面崩壊、及び地滑り等を早期に検知することができる。
【0045】
また、本実施形態のように、地形状態判定部13は、複数の時点のうちの基準時点における区画内のPS点数である基準PS点数、及び基準時点よりも後の時点である判定対象時点における区画M内のPS点数である対象PS点数に基づき、判定対象時点における地形状態を判定してもよい。この構成によれば、例えば基準時点から判定対象時点までのPS点数の変化に基づき地形状態を判定できるので、PS点Pが減少する場合でも地形状態を適切に判定できる。
【0046】
また、本実施形態のように、地形状態判定部13は、基準PS点数に対する対象PS点数の割合に基づき、判定対象時点における地形状態を判定してもよい。この構成によれば、例えば基準PS点数に対する対象PS点数の割合が所定値以下となった場合、判定対象時点における地形状態が斜面崩壊等の可能性がある状態であると判定できる。よって、地形状態を一層適切に判定できる。
【0047】
また、本実施形態では、地形状態を判定するためのアルゴリズムが非常にシンプルであるため、地形状態の判定を迅速に行うことができる。このため、地形状態を判定するための計算コストを低減できる。例えば、地形状態判定システム1を用いることにより、狭義では、計測器等を設置する場所の優先順位を適切に決定することができ、広義では、対象地のインフラ補修を行う場所の優先順位を適切に決定することができる。
【0048】
上記実施形態で説明した地形状態判定システム1の構成及び処理は、一例であり、種々の変更を加えることができる。以下、上記の実施形態との相違点を主として代表的な変形例について説明し、重複する説明は適宜省略する。
【0049】
第1変形例では、地形状態判定部13が判定基準時点における地形状態を判定する方法において上記の実施形態と相違する。本変形例では、地形状態判定部13は、基準PS点数に対する対象PS点数の割合が予め設定された判定条件を満たす時点が連続する期間に基づき、判定対象時点における地形状態を判定する。
【0050】
本変形例では、判定条件は、基準PS点数に対する対象PS点数の割合が所定値(本変形例では90%)以下であることである。当該所定値は、例えば予め設定されており、適宜変更可能である。地形状態判定部13は、基準PS点数に対する対象PS点数の割合が90%以下となる時点が3ヶ月以上連続した場合、判定対象時点における地形状態が異常状態であると判定する。但し、判定条件及び判定条件を満たす時点が連続する期間は、適宜変更可能である。地形状態判定部13は、その他の場合、判定対象時点における地形状態が正常状態であると判定する。この判定を行う場合、判定に用いる基準PS点数に係る時点(即ち、基準時点)は、所定値との比較に用いる全ての対象PS点数に係る時点(上記の例では、連続する3ヶ月の期間の時点)に対して同一(共通)であってもよい。あるいは、対象PS点数に係る時点毎に、判定に用いる基準PS点数に係る時点が異なっていてもよい。この場合、例えば、対象PS点数に係る時点と、判定に用いる基準PS点数に係る時点との間隔が一定間隔であることとしてもよい。
【0051】
基準PS点数に対する対象PS点数の割合は、地形状態が異常状態ではなかったとしても、一時的である短期間(例えば1~2ヶ月間)に増減し得る。また、地形状態が一時的に異常状態となった場合でも、短期間に地形状態が正常状態となる可能性もある。さらに、計測ノイズ又は誤差の影響等により、地形状態が一時的に異常状態と判定された場合でも、短期間に地形状態が正常状態と判定される可能性もある。基準PS点数に対する対象PS点数の割合が所定値以下となる時点が所定期間以上連続する場合、PS点数の減少が一時的なものでないと考えられ、地形状態が異常状態であると判定できる。反対に、基準PS点数に対する対象PS点数の割合が所定値以下となる時点が所定期間以上連続しない場合、PS点数の減少が一時的なものであると考えられ、地形状態が正常状態であると判定できる。
【0052】
図8(a)は、区画M毎のPS点数の割合の時系列変化の第2例を示すグラフである。図8(a)では、3つの区画M内のPS点数の割合の時系列変化が示されている。図8(a)では、一の区画Mである区画M1内のPS点数の割合の時系列変化が太い実線で示されており、区画M1と異なる区画Mである区画M2内のPS点数の割合の時系列変化が細い実線で示されており、区画M1,M2と異なる区画Mである区画M3内のPS点数の割合の時系列変化が破線で示されている。
【0053】
以下、基準時点が、全ての対象PS点数に係る時点に対して同一(共通)であり、1月の時点である例について説明する。図8(a)の例では、区画M1において、基準PS点数に対する2月の時点におけるPS点数の割合は90%であり、基準PS点数に対する3月の時点におけるPS点数の割合は80%であり、基準PS点数に対する4月の時点におけるPS点数の割合は75%である。よって、4月の時点において、基準PS点数に対する対象PS点数の割合が90%以下となる時点が3ヶ月以上連続している。よって、地形状態判定部13は、判定対象時点である4月の時点における地形状態を異常状態であると判定する。
【0054】
区画M2において、基準PS点数に対する2月の時点におけるPS点数の割合は105%であり、基準PS点数に対する3月の時点におけるPS点数の割合は75%であり、基準PS点数に対する4月の時点におけるPS点数の割合は100%である。よって、4月の時点において、基準PS点数に対する対象PS点数の割合が90%以下となる時点が3ヶ月以上連続していない。よって、地形状態判定部13は、判定対象時点である4月の時点における地形状態を正常状態であると判定する。
【0055】
区画M3において、基準PS点数に対する2月の時点におけるPS点数の割合は100%であり、基準PS点数に対する3月の時点におけるPS点数の割合は95%であり、基準PS点数に対する4月の時点におけるPS点数の割合は105%である。よって、区画M2と同様の判定により、地形状態判定部13は、判定対象時点である4月の時点における地形状態を正常状態であると判定する。
【0056】
第2変形例では、上記の判定条件において第1変形例と相違する。本変形例では、判定条件は、基準PS点数に対する対象PS点数の割合が、基準PS点数に対する過去PS点数の割合よりも所定値以上減少していることである。過去PS点数とは、基準PS点数に対する判定対象時点よりも所定期間前であり、且つ、基準時点よりも後の時点におけるPS点数の割合を言う。本変形例では、上記の所定値は5%であり、上記の所定期間は1ヶ月である。上記の所定値及び上記の所定期間は、例えば予め設定されており、適宜変更可能である。本変形例の場合も、判定に用いる基準PS点数に係る時点は、第1変形例と同様である。
【0057】
上記判定条件を満たす時点が所定期間以上連続する場合、PS点数が所定期間に亘って減少しているため、PS点数が減少する傾向にあると考えられる。よって、地形状態が異常状態であると判定できる。反対に、上記判定条件を満たす時点が所定期間以上連続しない場合、PS点数が減少する傾向にないと考えられる。よって、地形状態が正常状態であると判定できる。
【0058】
以下、第1変形例と同様に、基準時点が、全ての対象PS点数に係る時点に対して同一(共通)であり、1月の時点である例を説明する。図8(b)は、区画M毎のPS点数の割合の時系列変化の第3例を示すグラフである。図8(b)では、一の区画Mである区画M4内のPS点数の割合の時系列変化が太い実線で示されており、区画M4と異なる区画Mである区画M5内のPS点数の割合の時系列変化が細い実線で示されており、区画M4,M5と異なる区画Mである区画M6内のPS点数の割合の時系列変化が破線で示されている。
【0059】
図8(b)の例では、区画M4において、基準PS点数に対する2月の時点におけるPS点数の割合は90%であり、基準PS点数に対する3月の時点におけるPS点数の割合は80%である。よって、3月の時点を判定対象時点とした場合、基準PS点数に対する対象PS点数(3月の時点におけるPS点数)の割合が、基準PS点数に対する過去PS点数(2月の時点におけるPS点数)の割合よりも5%以上減少している。よって、3月の時点は、上記の判定条件を満たす。同様に、基準PS点数に対する4月の時点におけるPS点数の割合は75%であり、基準PS点数に対する5月の時点におけるPS点数の割合は70%である。よって、4月及び5月の時点は、上記の判定条件を満たし、5月の時点において、上記の判定条件を満たす時点が3ヶ月以上連続している。よって、地形状態判定部13は、判定対象時点である5月の時点における地形状態を異常状態であると判定する。
【0060】
区画M5において、基準PS点数に対する2月の時点におけるPS点数の割合は105%であり、基準PS点数に対する3月の時点におけるPS点数の割合は90%である。基準PS点数に対する4月の時点におけるPS点数の割合は90%であり、基準PS点数に対する5月の時点におけるPS点数の割合は90%である。よって、5月の時点において、上記の判定条件を満たす時点が3ヶ月以上連続していない。よって、地形状態判定部13は、判定対象時点である5月の時点における地形状態を正常状態であると判定する。
【0061】
区画M6において、基準PS点数に対する2月の時点におけるPS点数の割合は100%であり、基準PS点数に対する3月の時点におけるPS点数の割合は95%である。基準PS点数に対する4月の時点におけるPS点数の割合は105%であり、基準PS点数に対する5月の時点におけるPS点数の割合は95%である。よって、区画M5と同様の判定により、地形状態判定部13は、判定対象時点である5月の時点における地形状態を正常状態であると判定する。
【0062】
第3変形例は、地形状態が正常状態、要注意状態、及び異常状態のいずれであるかを判定する点において、第2変形例と相違する。要注意状態とは、将来において過剰な変位が発生する可能性がある状態を言う。要注意状態は、過剰な変位が発生する可能性の高低において異常状態と相違する。要注意状態では、異常状態と比較して過剰な変位が発生する可能性が低い。
【0063】
地形状態判定部13は、基準PS点数に対する対象PS点数の割合が所定値以下であり、且つ、判定条件を満たす時点が所定期間以上連続する場合、判定対象時点における地形状態が異常状態であると判定する。地形状態判定部13は、基準PS点数に対する対象PS点数の割合が所定値以下であり、且つ、判定条件を満たす時点が所定期間以上連続しない場合、判定対象時点における地形状態が要注意状態であると判定する。地形状態判定部13は、その他の場合、判定対象時点における地形状態が正常状態であると判定する。上記の所定値及び上記の所定期間は、例えば予め設定されており、適宜変更可能である。本変形例では、当該所定値及び所定期間は、第2変形例と同様である。本変形例の場合も、判定に用いる基準PS点数に係る時点は、第1変形例と同様である。
【0064】
基準PS点数に対する対象PS点数の割合が所定値以下であり、且つ、判定条件を満たす時点が所定期間以上連続する場合、PS点数が所定割合以上減少しており、且つ、PS点数が減少する傾向にあると言える。よって、地形状態が異常状態であると判定できる。基準PS点数に対する対象PS点数の割合が所定値以下であり、且つ、判定条件を満たす時点が所定期間以上連続しない場合、PS点数が所定割合以上減少しているが、PS点数が減少する傾向にない(例えば収束している)と言える。よって、地形状態が要注意状態であると判定できる。基準PS点数に対する対象PS点数の割合が所定値以下でなく、且つ、判定条件を満たす時点が所定期間以上連続しない場合、PS点数が所定割合以上減少しておらず、且つ、PS点数が減少する傾向にないと言える。よって、地形状態が正常状態であると判定できる。
【0065】
以下、第1変形例と同様に、基準時点が、全ての対象PS点数に係る時点に対して同一(共通)であり、1月の時点である例を説明する。図8(b)の例では、区画M4では、5月の時点において、基準PS点数に対する対象PS点数の割合が90%以下であり、且つ、判定条件を満たす時点が3ヶ月以上連続している。よって、地形状態判定部13は、判定対象時点である5月の時点における地形状態が異常状態であると判定する。
【0066】
区画M5では、5月の時点において、基準PS点数に対する対象PS点数の割合が90%以下であり、且つ、判定条件を満たす時点が3ヶ月以上連続していない。よって、地形状態判定部13は、判定対象時点である5月の時点における地形状態が要注意状態であると判定する。
【0067】
第1変形例、第2変形例、及び第3変形例のように、地形状態判定部13は、基準PS点数に対する対象PS点数の割合が予め設定された判定条件を満たす時点が連続する期間に基づき、判定対象時点における地形状態を判定してもよい。この構成によれば、例えば基準PS点数に対する対象PS点数の割合が所定値以下となる期間が所定期間以上連続する場合、判定対象時点における地形状態が斜面崩壊等の可能性がある状態であると判定できる。よって、例えば、地形状態にかかわらず短い期間内にPS点数が増減する場合でも、地形状態を一層適切に判定できる。
【0068】
第4変形例では、地形状態判定部13が判定基準時点における地形状態を判定する方法において上記の実施形態、第1変形例、第2変形例、及び第3変形例と相違する。本変形例では、地形状態判定部13は、互いに異なる複数の基準時点における複数の基準PS点数のそれぞれ、及び対象PS点数に基づき、判定対象時点における地形状態をそれぞれ一次的に判定する。そして、地形状態判定部13は、一次的な判定結果に基づき、判定対象時点における地形状態を判定する。
【0069】
本変形例では、地形状態判定部13が地形状態を一次的に判定する方法は、上記の実施形態と同様である。地形状態判定部13は、一の基準PS点数に対する対象PS点数の割合が所定値以下である場合、判定対象時点における地形状態が異常状態であると一次的に判定する。地形状態判定部13は、一の基準PS点数に対する対象PS点数の割合が所定値よりも大きい場合、判定対象時点における地形状態が正常状態であると一次的に判定する。地形状態判定部13は、一次的に判定された地形状態の全てが異常状態である場合、判定対象時点における地形状態が異常状態であると判定する。地形状態判定部13は、一次的に判定された地形状態の全てが異常状態でない場合、判定対象時点における地形状態が正常状態であると判定する。この場合、地形状態判定部13は、一次的に判定された地形状態の何れかが異常状態である場合、判定対象時点における地形状態が要注意状態であると判定してもよい。
【0070】
上記の実施形態では、地形状態判定部13は、基準PS点数に対する対象PS点数の割合に基づき地形状態を判定するため、基準時点として選択される時点により地形状態の判定結果が変動し得る。また、基準時点として選択された時点におけるPS点数を算出した際に、測定ノイズ又は誤差の影響で正確なPS点数が算出されなかった場合、地形状態の判定結果が変動し得る。このような変動がある場合、1つの基準時点での判定では、判定精度が低下する。上記の実施形態は、それを防ぐ目的で互いに異なる複数の基準PS点数を用いて判定を行うものである。互いに異なる複数の基準PS点数を用いて地形状態を一次的に判定し、一次的に判定された地形状態の全てが異常状態である場合、基準時点の選び方によらず、PS点数が所定割合以上減少していると言える。よって、地形状態が異常状態であると判定できる。反対に、一次的に判定された地形状態の全てが異常状態でない場合、基準時点の選び方によってはPS点数が所定割合以上減少していないと言える。よって、地形状態が正常状態であると判定できる。
【0071】
図9は、区画M毎のPS点数の割合の時系列変化の第4例を示すグラフである。図9では、1つの区画M内のPS点数の割合の時系列変化が示されている。図9では、一の区画Mである区画M7内のPS点数の割合の時系列変化が破線及び実線で示されている。図9では、区画M7における1月のPS点数を100とし、1月のPS点数に対する1ヶ月毎のPS点数の割合が破線で示されている。区画M7における2月のPS点数を100とし、2月のPS点数に対する1ヶ月毎のPS点数の割合が実線で示されている。
【0072】
以下、互いに異なる2つの基準時点が1月及び2月の時点であり、判定対象時点が3月の時点である例を説明する。図9の例では、区画M7において、1月の時点におけるPS点数に対する対象PS点数の割合が80%である。よって、地形状態判定部13は、1月の時点を基準時点とした場合において、判定対象時点における地形状態が異常状態であると一次的に判定する。区画M7において、2月の時点におけるPS点数に対する対象PS点数の割合が100%である。よって、地形状態判定部13は、2月の時点を基準時点とした場合において、判定対象時点における地形状態が正常状態であると一次的に判定する。以上より、地形状態判定部13は、一次的に判定された地形状態の全てが異常状態でないため、判定対象時点における地形状態が正常状態であると判定する。
【0073】
第4変形例のように、地形状態判定部13は、互いに異なる複数の基準時点における複数の基準PS点数のそれぞれ、及び対象PS点数に基づき、判定対象時点における地形状態をそれぞれ一次的に判定し、一次的な判定結果に基づき、判定対象時点における地形状態を判定してもよい。この構成によれば、例えば、複数の基準時点における複数の基準PS点数のそれぞれに対する対象PS点数の割合に基づき、判定対象時点における地形状態を判定できる。これにより、一の基準PS点数に対する対象PS点数の割合のみに基づき地形状態を判定する場合と比較して、判定精度を向上できる。
【0074】
上記の実施形態では、地形状態を判定するための基準値として、ユーザにより予め設定された所定値(上記の例では90%)を用いる例を説明した。しかし、地形状態を判定するための基準値を決定する方法は、適宜変更可能である。第5変形例では、地形状態判定部13は、地形状態を判定するための基準値を決定するための基準値用のPS点の数を取得する。地形状態判定部13は、取得した基準値用のPS点の数に係る統計値に基づき、判定対象時点における地形状態を判定するための基準値を決定する。
【0075】
基準値用のPS点の数に係る統計値に基づき、地形状態を判定するための基準値を決定することで、例えばユーザが当該基準値を予め設定する場合と比較して、過去の統計に基づいて地形状態の判定に適した基準値を設定し得る。
【0076】
図10は、所定の区画M内のPS点数に係る統計値の例を示すグラフである。本変形例では、地形状態判定部13は、予め記憶された区画M毎の過去のPS点数を基準値用のPS点の数として取得する。地形状態判定部13は、所定の区画Mの過去のPS点数に基づき、所定期間のPS点数の変化率(以下、単に「変化率」と称することがある)、変化率の確率密度、及び変化率の標準偏差を基準値用のPS点の数に係る統計値として取得する。本変形例では、当該所定期間は1ヶ月であるが、適宜変更可能である。当該所定期間は、例えば、ユーザにより予め設定されている。
【0077】
本変形例では、地形状態判定部13は、変化率の平均値から変化率の標準偏差に所定数を乗じた値を差し引いた値を、地形状態を判定するための基準値として決定する。地形状態判定部13は、変化率の平均値と、変化率の標準偏差に所定数を乗じた値との和を、地形状態を判定するための基準値として決定する。本変形例では、当該所定数は3であるが、適宜変更可能である。
【0078】
言い換えると、変化率の平均値をμとし、変化率の標準偏差をσとし、基準値をα,βとした場合、例えば、以下の式(1)及び式(2)を満たしてもよい。
α=μ+3σ …(1)
β=μ-3σ …(2)
【0079】
地形状態判定部13は、例えば、基準PS点数に対する対象PS点数の割合がβ以下、又は、α以上である場合、判定基準時点における地形状態が異常状態であると判定してもよい。地形状態判定部13は、例えば、基準PS点数に対する対象PS点数の割合がβよりも大きく、且つ、αよりも小さい場合、判定基準時点における地形状態が正常状態であると判定してもよい。
【0080】
第5変形例のように、地形状態判定部13は、地形状態を判定するための基準値を決定するための基準値用のPS点の数を取得し、取得した基準値用のPS点の数に係る統計値に基づき、判定対象時点における地形状態を判定するための基準値を決定してもよい。この構成によれば、例えば基準値用のPS点の数の確率密度、平均値、及び標準偏差を統計値として取得し、判定対象時点における地形状態を判定するための基準値を決定できる。よって、決定した基準値に基づき、地形状態を一層適切に判定できる。
【0081】
但し、上記の基準値を決定する方法は、あくまで一例であり、適宜変更可能である。例えば、地形状態判定部13は、変化率の平均値と所定値との和、及び、変化率の平均値から所定値を差し引いた値を基準値として決定してもよい。
【0082】
第6変形例では、地形状態判定部13は、位置関係が予め設定された複数の区画M間の位置関係にも基づき、判定対象時点における地形状態を判定する。本変形例では、位置関係が予め設定された複数の区画Mとは、互いに隣接する複数の区画Mを言う。互いに隣接する複数の区画Mとは、例えば区画Mが長方形状である場合、互いに辺又は頂点を共有する複数の区画Mを言う。地形状態の判定に用いられる前述の位置関係は、例えば予め設定されており、適宜変更可能である。
【0083】
地形状態判定部13は、複数の区画M毎に、判定対象時点における地形状態を一次的に判定する。地形状態判定部13は、基準PS点数に対する対象PS点数の割合が所定値以下である場合、判定対象時点における地形状態が要注意状態であると一次的に判定する。地形状態判定部13は、基準PS点数に対する対象PS点数の割合が所定値よりも大きい場合、判定対象時点における地形状態が正常状態であると一次的に判定する。当該所定値は、例えば予め設定されており、適宜変更可能である。
【0084】
地形状態判定部13は、一次的な判定結果に基づき、判定対象時点における地形状態を判定する。地形状態判定部13は、一の区画Mにおける地形状態が要注意状態であると一次的に判定し、且つ、一の区画Mに隣接し、地形状態が要注意状態であると一次的に判定された他の区画Mの数が所定数以上である場合、一の区画Mにおける地形状態が異常状態であると判定する。地形状態判定部13は、一の区画Mにおける地形状態が要注意状態であると一次的に判定し、且つ、一の区画Mに隣接し、地形状態が要注意状態であると一次的に判定された他の区画Mの数が所定数未満である場合、一の区画Mにおける地形状態が要注意状態であると判定する。本変形例では、当該所定値は4であるが、適宜変更可能である。当該所定値は、例えば予め設定されている。地形状態判定部13は、その他の場合、一の区画Mにおける地形状態が正常状態であると判定する。
【0085】
一の区画Mのみならず、一の区画Mに隣接する他の区画Mにおける地形状態が要注意状態であると一次的に判定されている場合、他の区画Mにおける地形状態が正常状態であると一次的に判定されている場合と比較して、一の区画Mにおいて過剰な変位が発生している可能性が高いと言える。よって、地形状態が異常状態であると判定できる。
【0086】
図11(a)は、地形状態判定システム1による表示の別の例を示す図である。図11(a)では、黄色で表示された部分が細線のハッチングで示されており、青色で表示された部分にはハッチングが付されていない。図11(a)では、区画(4,2)において、基準PS点数に対する対象PS点数の割合が所定値以下であり、他の区画Mにおいて基準PS点数に対する対象PS点数の割合が所定値よりも大きい例が示されている。この場合、地形状態判定部13は、区画(4,2)における地形状態が要注意状態であると判定し、他の区画Mにおける地形状態が正常状態であると判定する。地形状態判定部13は、区画(4,2)を黄色で表示し、他の区画Mを青色で表示する。
【0087】
図11(b)は、地形状態判定システム1による表示のさらに別の例を示す図である。図11(b)では、赤色で表示された部分が太線のハッチングで示されている。図11(b)では、区画(3,2)、区画(3,3)、区画(4,2)、及び区画(4,3)において、基準PS点数に対する対象PS点数の割合が所定値以下であり、他の区画Mにおいて基準PS点数に対する対象PS点数の割合が所定値よりも大きい例が示されている。この場合、地形状態判定部13は、互いに隣接する区画(3,2)、区画(3,3)、区画(4,2)、及び区画(4,3)における地形状態が異常状態であると判定し、他の区画Mにおける地形状態が正常状態であると判定する。地形状態判定部13は、区画(3,2)、区画(3,3)、区画(4,2)、及び区画(4,3)を赤色で表示し、他の区画Mを青色で表示する。
【0088】
第6変形例のように、区画Mは、位置関係が予め設定されている複数の区画Mを含み、地形状態判定部13は、複数の区画M間の位置関係にも基づき、地形状態を判定してもよい。この構成によれば、例えば複数の区画Mが互いに隣接することにも基づき、地形状態を判定できる。例えば、互いに隣接する複数の区画MにおけるPS点数が減少している場合、一の区画MのみにおけるPS点数が減少している場合と比較して、斜面崩壊等が発生する可能性が高い状態であると言える。よって、複数の区画M間の位置関係にも基づいて地形状態を判定することで、地形状態を一層適切に判定できる。
【0089】
但し、位置関係が予め設定された複数の区画Mは、互いに隣接する複数の区画Mに限定されない。位置関係が予め設定された複数の区画Mは、例えば、離間距離が所定値以下である複数の区画Mであってもよい。離間距離とは、例えば、一の区画Mの中心から、他の区画Mの中心までの距離である。
【0090】
また、第6変形例では、地形状態判定部13が一の区画Mにおける地形状態、及び、一の区画Mに隣接し、地形状態が要注意状態であると一次的に判定された他の区画Mの数に基づき、一の区画Mにおける地形状態を判定する例を説明した。しかし、地形状態判定部13は、地形状態が要注意状態であると一次的に判定された区画Mが連続して隣接している数(例えば、地続きである当該区画Mの数)に基づき、当該複数の区画Mの地形状態を判定してもよい。地形状態判定部13は、例えば、その数が所定値以上である場合、当該複数の区画Mの地形状態が異常状態であると判定してもよい。
【0091】
上記の実施形態では、地形状態判定部13が基準PS点数に対する対象PS点数の割合に基づき、判定対象時点における地形状態を判定する例を説明した。しかし、地形状態判定部13は、判定対象時点よりも所定期間前の時点におけるPS点数に対する対象PS点数の割合(傾き)に基づき、判定対象時点における地形状態を判定してもよい。
【0092】
上記の実施形態では、点数算出部12が1ヶ月毎にPS点数を算出する例を説明した。しかし、点数算出部12は、複数の時点毎にPS点数を算出すればよく、1ヶ月毎に算出するものに限定されない。
【0093】
上記の実施形態では、地形状態判定部13が対象地の地形状態を正常状態及び異常状態のいずれかに分類する例を説明した。しかし、地形状態の分類は、上記のものに限定されず、適宜変更可能である。また、地形状態判定部13は、区画M毎のPS点数の減少傾向をコンタ化して表示してもよい。
【0094】
本開示の地形状態判定システム及び地形状態判定方法は、以下の構成を有する。
[1]対象地の地形状態を判定する地形状態判定システムであって、
複数の時点毎の、前記対象地のSAR画像から得られたPS点の位置を示す位置情報を取得する位置情報取得部と、
複数の時点毎に、前記位置情報に基づき、予め設定された区画内の前記PS点の数であるPS点数を算出する点数算出部と、
前記複数の時点毎の前記区画内の前記PS点数に基づき、前記区画に対応する前記対象地の地形状態を判定する地形状態判定部と、
を備える地形状態判定システム。
[2]前記地形状態判定部は、前記複数の時点のうちの基準時点における前記区画内の前記PS点数である基準PS点数、及び、前記基準時点よりも後の時点である判定対象時点における前記区画内の前記PS点数である対象PS点数に基づき、前記判定対象時点における前記地形状態を判定する、
[1]に記載の地形状態判定システム。
[3]前記地形状態判定部は、前記基準PS点数に対する前記対象PS点数の割合に基づき、前記判定対象時点における前記地形状態を判定する、
[2]に記載の地形状態判定システム。
[4]前記地形状態判定部は、前記基準PS点数に対する前記対象PS点数の割合が予め設定された判定条件を満たす前記時点が連続する期間に基づき、前記判定対象時点における前記地形状態を判定する、
[3]に記載の地形状態判定システム。
[5]前記地形状態判定部は、
前記地形状態を判定するための基準値を決定するための基準値用のPS点の数を取得し、
取得した前記基準値用のPS点の数に係る統計値に基づき、前記判定対象時点における前記地形状態を判定するための前記基準値を決定する、
[2]~[4]のいずれかに記載の地形状態判定システム。
[6]前記区画は、位置関係が予め設定されている複数の区画を含み、
前記地形状態判定部は、前記複数の区画間の位置関係にも基づき、前記判定対象時点における前記地形状態を判定する、
[2]~[5]のいずれかに記載の地形状態判定システム。
[7]前記地形状態判定部は、
互いに異なる複数の前記基準時点における複数の前記基準PS点数のそれぞれ、及び前記対象PS点数に基づき、前記判定対象時点における前記地形状態をそれぞれ一次的に判定し、
一次的な判定結果に基づき、前記判定対象時点における前記地形状態を判定する、
[2]~[6]のいずれかに記載の地形状態判定システム。
[8]対象地の地形状態を判定する地形状態判定システムの動作方法である地形状態判定方法であって、
複数の時点毎の、前記対象地のSAR画像から得られたPS点の位置を示す位置情報を取得する位置情報取得ステップと、
複数の時点毎に、前記位置情報に基づき、予め設定された区画内の前記PS点の数であるPS点数を算出する点数算出ステップと、
前記複数の時点毎の前記区画内の前記PS点数に基づき、前記区画に対応する前記対象地の地形状態を判定する地形状態判定ステップと、
を備える地形状態判定方法。
【符号の説明】
【0095】
1…地形状態判定システム、11…位置情報取得部、12…点数算出部、13…地形状態判定部、M…区画、SM…SAR画像、P…PS点。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11