(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154661
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】ケレン用機械
(51)【国際特許分類】
E01D 24/00 20060101AFI20241024BHJP
E01D 19/12 20060101ALI20241024BHJP
B24B 23/02 20060101ALI20241024BHJP
B24B 29/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
E01D24/00
E01D19/12
B24B23/02
B24B29/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068609
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】593052235
【氏名又は名称】野宮産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】浅野 均
(72)【発明者】
【氏名】沖田 佳隆
(72)【発明者】
【氏名】西山 桂司
(72)【発明者】
【氏名】尾田 賢治
(72)【発明者】
【氏名】可児 幸嗣
(72)【発明者】
【氏名】大河内 孝彦
(72)【発明者】
【氏名】北原 慎也
(72)【発明者】
【氏名】阿部 嗣
(72)【発明者】
【氏名】野宮 英男
【テーマコード(参考)】
2D059
3C158
【Fターム(参考)】
2D059AA07
2D059AA13
2D059GG41
3C158AA06
3C158AA11
3C158AA16
3C158CA01
3C158CA06
3C158CB01
3C158CB03
(57)【要約】
【課題】ケレン作業の工期短縮を図るとともに、作業者の労力を軽減し、高い研磨性能が得られるようにする。
【解決手段】床版取替工事において既存の床版5を撤去した後、主桁4の上フランジ6上面のケレンをするためのケレン用機械1である。原動機10と、原動機10から延びる出力軸が回転可能に収容された出力軸収容管11と、出力軸の先端に回転連結部12を介して取り付けられた研磨用ブラシ13と、原動機10と回転連結部12との間の出力軸収容管11を支持する支持部14が備えられるとともに、主桁4の上フランジ6上を走行する車輪15が備えられた台車16と、出力軸収容管11を操作する操作ハンドル17とからなり、台車16には、両側方に延びるアーム24と、前記アーム24の先端に取り付けられ、主桁4の上フランジ6両側縁に係合して上フランジ6を両側から挟み込むように保持する回転駒25とからなる挟み込み機構26が備えられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床版取替工事において既存の床版を撤去した後、主桁の上フランジ上面のケレンをするためのケレン用機械であって、
原動機と、前記原動機から延びる出力軸が回転可能に収容された出力軸収容管と、前記出力軸の先端に回転連結部を介して取り付けられた研磨用ブラシと、前記原動機と回転連結部との間の前記出力軸収容管を支持する支持部が備えられるとともに、主桁の上フランジ上を走行する車輪が備えられた台車と、前記出力軸収容管を操作する操作ハンドルとからなり、
前記台車には、両側方に延びるアームと、前記アームの先端に取り付けられ、主桁の上フランジ両側縁に係合して上フランジを両側から挟み込むように保持する回転駒とからなる挟み込み機構が備えられていることを特徴とするケレン用機械。
【請求項2】
前記挟み込み機構は、上フランジの幅寸法に応じて幅方向に拡縮可能となっている請求項1記載のケレン用機械。
【請求項3】
前記挟み込み機構は、平面視X形に配置され、互いの交差部が前記台車の中央部に回転支持された2本のアームを備えている請求項1記載のケレン用機械。
【請求項4】
前記研磨用ブラシを主桁の幅方向に揺動させることができるように、前記出力軸収容管が前記台車に対して回動自在に支持されている請求項1記載のケレン用機械。
【請求項5】
前記台車に対する前記出力軸収容管の支持位置、支持角度及び支持高さのいずれか又は2以上が調整可能となっている請求項1記載のケレン用機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速道路や橋梁等の床版取替工事において、既存の床版を撤去した後の主桁上面のケレンをするためのケレン用機械に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高速道路や橋梁の老朽化が社会問題となっており、その対策としてこれらの大規模更新(リニューアル)が進められている。このリニューアル工事の一つに床版取替工事がある。
【0003】
高速道路等の床版取替工事の大まかな手順は、既存の床版を撤去した後、主桁の上フランジ上面のケレンを行い、主桁にスタッドジベルを溶接した上で新たな床版を架設するという工程が一般的である。床版取替工事は、大規模な交通規制を伴うため、施工期間の短縮が求められるが、主桁のケレン作業には多くの時間と労力を要することが課題となっていた。
【0004】
ケレン作業の際に用いられる機械としては、ディスクグラインダやホイールサンダなどの電動工具にワイヤーホイールブラシやカップワイヤブラシなどの研磨用ブラシを取り付けたものなどがある。
【0005】
ケレン作業の軽減を図るため、下記特許文献1には、研磨ブラシを取り付ける回転軸とこれを駆動するモータとを平行に支持する本体と、本体から延出したハンドルとを具備し、所定の集塵機構を備えたケレン機が開示されている。また、下記特許文献2には、前輪、後輪を有する台車と、該台車に設置され、鋼桁の上面に存在する錆等を取り除く浄化部と、該台車、該浄化部を制御する制御部とを備え、該制御部の指令にしたがい該台車を該鋼桁の上面に沿い前進走行または後退走行させるとともに該浄化部を作動させて該鋼桁の上面の錆等を除去する鋼桁ケレン装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-231058号公報
【特許文献2】特許第7158555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載されるような手持ち工具は、主桁の上で作業者がしゃがみ込んで身体を前に曲げた姿勢で長時間続けることを強いられるため、作業者の身体的負担が大きい。また、作業者の習熟度や個人の体調、疲労の度合いなどによって研磨程度のばらつきが大きくなりやすいという問題もある。更には、電動工具の出力不足や研磨面積の狭さなどにより作業時間が長くなりやすく、ケレン作業に要する時間の短縮化を図るには、人工を増やすことで対応するしかないなどが問題点として挙げられる。
【0008】
また、上記特許文献2に記載されるケレン装置では、自走式の台車に対して、錆等を取り除く浄化部として、鋼桁の上面に向けて高圧洗浄水を吹き付けるジェットノズルが取り付けられているが、このジェットノズルに代えてワイヤーホイールブラシやカップワイヤブラシなどの研磨用ブラシを取り付けた場合、主桁の上フランジ上面に押し付ける反力がケレン装置の自重でしかなく、研磨性能を高めるため研磨用ブラシの押し付け力を大きくしたいときは、ケレン装置の自重を大きくすることで対応するしかなかった。そのため、装置が高重量化及び大型化し、取り扱いが困難になり、作業時間が長くなるなどの問題があった。
【0009】
また、上記特許文献2に記載されるケレン装置では、台車に、鋼桁の幅方向の端縁への接近を検知する脱輪検知センサーが備えられ、この脱輪検知センサーによって脱輪の危険性が検知された場合、操舵角を変更することにより中心部へ緩やかに進行方向を変更するようにしているが、前述のような研磨用ブラシを備えたケレン装置の場合は、台車に常に研磨用ブラシの押し付け力や、研磨用ブラシの回転力、摩擦力等が作用しているため、操舵角の変更による進行方向の制御が非常に難しく、走行速度の低下によりケレン作業にかかる時間が長くなる懸念がある。
【0010】
そこで本発明の主たる課題は、ケレン作業の工期短縮を図るとともに、作業者の労力を軽減し、高い研磨性能が得られるようにしたケレン用機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、床版取替工事において既存の床版を撤去した後、主桁の上フランジ上面のケレンをするためのケレン用機械であって、
原動機と、前記原動機から延びる出力軸が回転可能に収容された出力軸収容管と、前記出力軸の先端に回転連結部を介して取り付けられた研磨用ブラシと、前記原動機と回転連結部との間の前記出力軸収容管を支持する支持部が備えられるとともに、主桁の上フランジ上を走行する車輪が備えられた台車と、前記出力軸収容管を操作する操作ハンドルとからなり、
前記台車には、両側方に延びるアームと、前記アームの先端に取り付けられ、主桁の上フランジ両側縁に係合して上フランジを両側から挟み込むように保持する回転駒とからなる挟み込み機構が備えられていることを特徴とするケレン用機械が提供される。
【0012】
上記請求項1記載の発明では、既存の床版を撤去した後の主桁の上フランジ上面をケレンするケレン用機械が、原動機と、この原動機から延びる出力軸が回転可能に収容された出力軸収容管と、この出力軸の先端に回転連結部を介して取り付けられた研磨用ブラシと、前記出力軸収容管を支持する支持部が備えられるとともに、主桁の上フランジ上を走行する車輪が備えられた台車と、前記出力軸収容管を操作する操作ハンドルとから主に構成される。そして、前記台車には、両側方に延びるアームと、このアームの先端に取り付けられ、主桁の上フランジ両側縁に係合して上フランジを両側から挟み込むように保持する回転駒とからなる挟み込み機構が備えられている。このように本発明に係るケレン用機械では、前記台車に前記挟み込み機構を備えることによって、前記研磨用ブラシによってケレン作業を行う際に、前記挟み込み機構によって主桁を挟み込み、反力の吸収を行っているため、研磨用ブラシを主桁の上フランジ上面に強く押し付けることができ、高い研磨性能が得られるとともに、ケレン作業にかかる時間を短縮することができる。また、本発明に係るケレン用機械は、刈払機のような構造を有しているため、作業者が直立した姿勢で操作ハンドルを持って先端に取り付けられた研磨用ブラシを操作することができ、従来のようにしゃがみ込んだ姿勢で作業する場合と比較して作業者の労力が軽減できる。
【0013】
請求項2に係る本発明として、前記挟み込み機構は、上フランジの幅寸法に応じて幅方向に拡縮可能となっている請求項1記載のケレン用機械が提供される。
【0014】
上記請求項2記載の発明では、前記挟み込み機構が上フランジの幅寸法に応じて幅方向に拡縮可能となっているため、寸法の異なる主桁にも簡単に対応できるようになる。
【0015】
請求項3に係る本発明として、前記挟み込み機構は、平面視X形に配置され、互いの交差部が前記台車の中央部に回転支持された2本のアームを備えている請求項1記載のケレン用機械が提供される。
【0016】
上記請求項3記載の発明では、前記挟み込み機構の具体的な形態例として、平面視X形に配置された2本のアームの各両端部を台車の両側方から突出させた状態で配置し、各アームの両端に前記回転駒を取り付けることにより、台車の前方側及び後方側でそれぞれ主桁の上フランジを両側から挟み込むように保持している。そして、これらのアームの交差部が台車の中央部に回転支持されることにより、上フランジの幅寸法に応じて幅方向に拡縮可能としている。
【0017】
請求項4に係る本発明として、前記研磨用ブラシを主桁の幅方向に揺動させることができるように、前記出力軸収容管が前記台車に対して回動自在に支持されている請求項1記載のケレン用機械が提供される。
【0018】
上記請求項4記載の発明では、作業者が操作ハンドルを操作することによって前記研磨用ブラシを主桁の幅方向に揺動させることができるようにするため、前記出力軸収容管が台車に対して回動自在に支持されている。これにより、主桁を全幅に亘って綺麗に研磨することができる。
【0019】
請求項5に係る本発明として、前記台車に対する前記出力軸収容管の支持位置、支持角度及び支持高さのいずれか又は2以上が調整可能となっている請求項1記載のケレン用機械が提供される。
【0020】
上記請求項5記載の発明では、台車に対する出力軸収容管の支持位置、支持角度及び支持高さのいずれか又は2以上が調整可能とすることにより、作業者の身長などに合わせて作業しやすい状態に設定できるようにしている。
【発明の効果】
【0021】
以上詳説のとおり本発明によれば、ケレン作業の工期短縮が図れるとともに、作業者の労力が軽減でき、高い研磨性能が得られるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図3】本発明に係るケレン用機械1の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0024】
一般に、高速道路や橋梁等の高架橋は、
図1に示されるように、橋軸方向に離間して配置された複数の橋脚2の上に、支承3を介して複数の主桁4が架設され、これら主桁4の上に床版5が敷設されて構成される。図示例では、前記主桁4は、上フランジ6、下フランジ7とこれらを連結するウェブ8とから構成されたI形鋼が用いられているが、その他の構造のものでもよい。
【0025】
通常の床版取替工事は、
図2に示されるように、既存の床版5に墨出しを行い、床版5を切断機によってクレーンで吊り上げ可能な大きさに切断し、順次撤去する。その後、主桁4の上フランジ上面のケレンをした後、主桁4の上フランジ上面にスタッドジベルを溶接し、新しい床版を架設し、間隙部に無収縮モルタルを打設して間詰めを行い、一つの工程の架設を完了する。以上の工程を繰り返すことにより、順次新しい床版を架設する。
【0026】
(ケレン用機械1の基本的構造)
本発明に係るケレン用機械1は、上述の床版取替工事において、既存の床版5を撤去した後、前記床版5が敷設してあった主桁4の上フランジ上面のケレンを行うためのものである。
【0027】
前記ケレン用機械1は、
図3及び
図4に示されるように、エンジンやモータ等の動力源となる原動機10と、前記原動機10から延びる出力軸(図示せず)が回転可能に収容された出力軸収容管11と、前記出力軸の先端に回転連結部12を介して取り付けられた研磨用ブラシ13と、前記原動機10と回転連結部12との間の出力軸収容管11を支持する支持部14が備えられるとともに、主桁4の上フランジ6上を走行する車輪15、15…が備えられた台車16と、前記出力軸収容管11を操作する操作ハンドル17とで主に構成されている。
【0028】
前記ケレン用機械1は、
図3に示されるように、草刈り用の刈払機のような構造を有しているため、作業者が直立した姿勢で操作ハンドル17を持って先端に取り付けられた研磨用ブラシ13を操作することができ、従来の手持ち工具のようにしゃがみ込んだ姿勢で作業する場合と比較して作業者の労力が大幅に軽減できる。また、主桁4上のケレン作業を一人の作業員で行うことができるため、他の作業に人員を配置することが可能となり、床版取替工事全体としての工期短縮が図れる。
【0029】
前記出力軸収容管11は中空の円管からなり、内部に原動機10から延びる図示しない出力軸が、途中の複数箇所を軸受によって回転可能に支持した状態で配置されている。前記出力軸収容管11は、一端が原動機10に連結され、他端が前記回転連結部12に連結される。
【0030】
前記回転連結部12は、出力軸の回転力を研磨用ブラシ13に伝達する構造部分であり、両者の回転軸の先端に備えられた傘歯車の噛合構造などによって構成されている。
【0031】
前記研磨用ブラシ13は、ワイヤーホイールブラシやカップワイヤブラシなど、公知の研磨用のブラシを広く用いることが可能である。この研磨用ブラシ13は、上下方向に延びる回転軸に対してナットによる締結などによって固定され、ブラシが消耗したときやブラシの種類を変えたいときなどに簡単に交換できるようになっている。前記研磨用ブラシ13は、上述の手持ち工具などに用いられるものと比較して大径のものを用いることができるため、その分、遠心力が大きくなり、研磨性能が向上できる。
【0032】
前記出力軸収容管11の前記台車16の支持部14より上側(原動機10側)には、作業者が手で持ってケレン用機械1を操作するための操作ハンドル17が取り付けられている。この操作ハンドル17が前記支持部14より上側に設けられているため、操作ハンドル17を操作したとき、支持部14を支点として出力軸収容管11の下端に設けられた研磨用ブラシ13が動作する。すなわち、
図4に示されるように、操作ハンドル17を右側に動かしたとき前記支持部14を支点として研磨用ブラシ13は左側に移動し、操作ハンドル17を左側に動かしたとき前記支持部14を支点として研磨用ブラシ13は右側に移動する。また、
図3に示されるように、操作ハンドル17の手持ち部17aを出力軸収容管11の軸方向に対して上側に突出して設けることにより、研磨用ブラシ13を主桁4の上フランジ6上面に強く押し付けたいときは、操作ハンドル17の手持ち部17aを手で持って出力軸収容管11の下端方向に押圧力を作用させることにより、出力軸収容管11にモーメントが発生し、研磨用ブラシ13を上フランジ6上面に強く押し付けることができるようになる。これによって、研磨性能が向上でき、ケレン作業に要する時間を短縮化できる。
【0033】
前記台車16は、
図4に示されるように、平面視略四角形の台車本体の四隅に主桁4の上フランジ6上を走行する車輪15、15…が備えられ、前後方向に走行できるようになっている。
【0034】
前記出力軸収容管11を台車16に支持する支持部14は、台車本体の前後方向中央部の両側部に立設された側板18、18と、これら両側板18、18の上端部間に懸架されるコ字状の支持台座19と、前記支持台座19の中央部に上方に突出して立設され、先端部に前記出力軸収容管11が固定可能な固定部が設けられた支持杆20とから構成されている。
【0035】
前記出力軸収容管11に対して支持杆20を固定するには、
図5に示されるように、支持杆20の上端部に出力軸収容管11が挿通可能な挟持孔21を設けておくとともに、ボルトの締め込みによって挟持孔21の孔径を小さくできるように構成することにより、この挟持孔21に出力軸収容管11を挿通した状態で、ボルトを締め込んで出力軸収容管11に支持杆20を挟持固定する。この支持杆20の固定位置を調整することにより、台車16に対する出力軸収容管11の支持位置が調整できる。
【0036】
また、前記支持杆20を支持台座19に固定するには、前記支持台座19の中央部に開口を設けるとともに、この開口に、前記支持杆20が嵌入可能な中空部を有するとともに、前記開口に係合して支持台座19に対するボルト固定用の取付穴を備えた鍔部23を有する案内用固定ブッシュ22を前記支持台座19に固定した上で、この案内用固定ブッシュ22の前記中空部に支持杆20を嵌入し、前記鍔部23に設けられた固定構造によって支持杆20を固定する。前記案内用固定ブッシュ22に対する支持杆20の固定構造としては、クランプレバーを回動することで内部のナットが嵌入されたシャフトを締め付ける構造や、外周から軸芯方向にボルトを螺入する構造などを例示することができる。
【0037】
前記支持杆20は、前記出力軸収容管11を挟持する挟持孔21が形成された頭部と、前記支持台座19の案内用固定ブッシュ22に挿通されるシャフト部との間で、軸回りに回動できるようになっている。これにより、支持杆20の頭部を出力軸収容管11に固定し、シャフト部を案内用固定ブッシュ22に固定した状態で、操作ハンドル17の操作により、研磨用ブラシ13を主桁4の幅方向に揺動させることができるようになる。
【0038】
前記支持台座19は、細長い平板の両端が直角に折り曲げられて略コ字状に形成され、両端の折り曲げ部分にそれぞれ側板18に対する固定部が形成されている。前記支持台座19の側板18への固定は、
図3に示されるように、支持台座19と側板18の重なり部において、両者のいずれか一方に周方向に長い長孔を形成することにより、支持台座19を側板18に対して傾斜した状態で固定できるようになっている。これにより、支持台座19に固定された支持杆20が台車16に対して所定の角度位置で固定できるため、この支持杆20に固定された出力軸収容管11の台車16に対する支持角度が調整できるようになる。
【0039】
前記側板18は、
図3に示されるように、台車本体の側部に複数のボルトで固定されている。このボルトを挿通する取付孔18aを上下方向に長い長孔で形成することにより、側板18の台車本体に対する上下方向の固定位置が調整できるようになる。これによって、台車16に対する出力軸収容管11の支持高さが調整可能となる。
【0040】
上述の台車16に対する出力軸収容管11の支持位置調整機構、支持角度調整機構及び支持高さ調整機構は、いずれか一つ又は2以上を組み合わせて設けることができる。
【0041】
(挟み込み機構26について)
前記台車16には、
図3~
図5に示されるように、両側方に延びるアーム24と、このアーム24の先端に取り付けられ、主桁4の上フランジ6両側縁に係合して上フランジ6を両側から挟み込むように保持する回転駒25とからなる挟み込み機構26が備えられている。
【0042】
台車16に前記挟み込み機構26が備えられることによって、この挟み込み機構26によって主桁4を挟み込んで反力の吸収を行うことができるため、研磨用ブラシ13を主桁4の上フランジ6上面に強く押し付けることができ、高い研磨性能が得られるとともに、ケレン作業の工期短縮を図ることができる。また、前記挟み込み機構26によって主桁4を挟み込むことによって、常に台車16が主桁4の上フランジ6の中心部を走行できるため、脱輪のおそれがなくなる。
【0043】
図4に示されるように、前記アーム24は、台車16の前方側及び後方側において、先端部が台車16よりそれぞれ左右に突出して配置される。
【0044】
図5に示されるように、台車16から突出した前記アーム24の各先端部には、下方向に延びる中心軸27が固定されるとともに、この中心軸27の下端部に、この中心軸27を中心として回動可能な前記回転駒25が取り付けられている。前記回転駒25は、主桁4の上フランジ6の厚みより大きな高さ寸法で形成され、上下方向中央部が全周に亘って凹んだ鼓形に形成されている。これにより、回転駒25を上フランジ6の側縁部に係合させることによって、挟み込み機構26が上フランジ6をしっかりと保持することができ、台車16に作用する反力を確実に受け持つことができるようになる。
【0045】
また、前記回転駒25が取り付けられた中心軸27は、アーム24に対する取付高さが調整可能となっている。具体的には、アーム24先端部に下方に延びるとともに前記中心軸27が挿通されるスリーブ29を固定しておくとともに、中心軸27の上部にねじ加工を施しておき、中心軸27を前記スリーブ29に挿通させるとともにアーム24に形成された貫通孔を通過して上端部をアーム24の上面に突出させ、この突出した中心軸27の上端部にクランプノブなどのナット部材28を螺合させ、このナット部材28の螺進退によって中心軸27を上下に位置調整できるようにする。前記中心軸27の固定は、前記スリーブ29の側壁に設けられた固定ねじ30の締め込みによって行うことができる。
【0046】
前記挟み込み機構26は、上フランジ6の異なる幅寸法に対応できるように、幅方向に拡縮可能な構造を有している。挟み込み機構26を幅方向に拡縮可能とすることで、かかる曲げモーメントの大きさに応じて寸法の異なる主桁4を用いた場合に対応できるようになる。
【0047】
前記挟み込み機構26を幅方向に拡縮可能とする第1の形態例は、
図4及び
図5に示されるように、2本のアーム24、24を平面視X形に配置し、これら2本のアーム24、24の交差部を台車16の中央部に回転支持し、これら2本のアーム24、24の交差角度を変化させることにより、左右の回転駒25の離隔距離を変化させるものである。
【0048】
2本のアーム24、24の交差角度を変化させるには、
図4及び
図5に示されるように、台車16に、幅方向に延びるとともに、少なくとも一端に回転用のハンドル32が備えられた交差角調整用回動軸31を回動自在に備え、この交差角調整用回動軸31の両側部にそれぞれ正ねじと逆ねじを切ったねじ部33、33を形成し、各ねじ部33に、このねじ部に螺合するねじ孔を有するとともに、各アーム24に回動可能に支持される支持部を有する可動部材34が備えられ、前記ハンドル32を回転させて交差角調整用回動軸31を一定方向に回転させることにより、前記可動部材34が交差角調整用回動軸31のねじ部33をそれぞれ螺進退して幅方向中央側又は幅方向外側に移動し、各アーム24、24の交差角を調整する。
【0049】
前記挟み込み機構26を幅方向に拡縮可能とする第2の形態例は、
図6に示されるように、上述の平面視X形に配置された2本のアーム24、24に付勢手段35を設けることにより、これら2本のアーム24、24が左右の回転駒25、25の離隔距離を縮小させる方向に付勢されるようにする。これによって、左右の回転駒25、25が常に上フランジ6の両側端縁に係合した状態が維持できる。ケレン用機械1を最初に主桁4の上フランジ6上にセットする際は、前記付勢手段35の付勢力に抗して左右の回転駒25、25の離隔距離を広げるように2本のアーム24、24の交差角度を調整する操作を行う。前記付勢手段25としては、図示例では、2本のアーム24、24の前側及び後側において幅方向内側への付勢力を作用させる引張コイルバネを用いているが、2本のアーム24、24の左側及び右側において前後方向外側への付勢力を作用させる圧縮コイルバネなどを用いてもよいし、2本のアーム24、24の交差部おいて各アームに異なる方向への回転付勢力を作用させる回転バネなどを用いてもよい。また、この付勢手段35と上記第1形態例で説明した交差角調整用回動軸31を用いた調整手段とを組み合わせて使用してもよい。
【0050】
前記挟み込み機構26を幅方向に拡縮可能とする第3の形態例は、
図7に示されるように、台車16の両側の前後部にそれぞれ、先端部が台車16より幅方向外側に突出するとともに、幅方向に位置調整可能なアーム24を備え、このアーム24の突出長の調整により、挟み込み機構26を幅方向に拡縮可能としている。前記アーム24の突出長の調整は、ボルト・ナット機構により所定位置で固定できるようにしたものでもよいし、前記アーム24を幅方向内側に付勢する付勢手段を備えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…ケレン用機械、2…橋脚、3…支承、4…主桁、5…床版、6…上フランジ、7…下フランジ、8…ウェブ、10…原動機、11…出力軸収容管、12…回転連結部、13…研磨用ブラシ、14…支持部、15…車輪、16…台車、17…操作ハンドル、18…側板、19…支持台座、20…支持杆、21…挟持孔、22…案内用固定ブッシュ、23…鍔部、24…アーム、25…回転駒、26…挟み込み機構、27…中心軸、28…ナット部材、29…スリーブ、30…固定ねじ、31…交差角調整用回動軸、32…ハンドル、33…ねじ部、34…可動部材、35…付勢手段