(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154670
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】移動端末試験装置とその端末情報解析方法
(51)【国際特許分類】
H04W 88/02 20090101AFI20241024BHJP
H04W 24/06 20090101ALI20241024BHJP
H04W 8/22 20090101ALI20241024BHJP
【FI】
H04W88/02 150
H04W24/06
H04W8/22
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068623
(22)【出願日】2023-04-19
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.3GPP
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横堀 邦幸
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA34
5K067DD11
5K067EE02
5K067FF01
5K067HH24
5K067LL08
(57)【要約】
【課題】処理負荷を軽減させることができ、データ構造の変更にも容易に対応できる移動端末試験装置を提供すること。
【解決手段】試験対象となる移動端末100の情報を記憶する端末情報記憶部11と、移動端末100に、UE Capability Informationの送信を要求するRF信号を送信する情報要求部12と、移動端末100から受信したUE Capability Informationをデータ変換部14に出力するデータ受信部13と、データ構造情報格納部15に格納されたデータ構造情報に基づいて受信したUE Capability Informationをデコードして文字列データを生成するデータ変換部14と、UE Capability Informationのデータ構造を定義したデータ構造情報を格納するデータ構造情報格納部15と、データ変換部14で生成された文字列データから、試験に必要な情報を検索する文字列検索部16と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体通信の基地局を擬似して移動端末(100)を試験する移動端末試験装置(1)であって、
前記移動端末から受信したUE Capability Informationを、所定のデータ構造情報に基づいてデコードして文字列データを生成するデータ変換部(14)を備える移動端末試験装置。
【請求項2】
前記データ構造情報は、ASN.1により記述されている請求項1に記載の移動端末試験装置。
【請求項3】
移動体通信の基地局を擬似して移動端末(100)を試験する移動端末試験装置(1)の端末情報解析方法であって、
前記移動端末から受信したUE Capability Informationを、所定のデータ構造情報に基づいてデコードして文字列データを生成するステップを備える端末情報解析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動端末の試験を行なう移動端末試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やデータ通信端末等の移動しながら通信を行なう移動端末を開発した場合、この開発した移動端末が正常に通信を行なえるか否かを試験する必要がある。このため、実際の基地局の機能を擬似する擬似基地局として動作する試験装置に試験対象の移動端末を接続し、試験装置と移動端末との間で通信を行ない、この通信の内容を確認する試験を行なっている。
【0003】
試験を実施するにあたり、試験対象となる移動端末の情報が必要となる場合がある。移動端末の情報は、移動端末との通信で取得できるUE(User Equipment) Capability Informationに設定されている。
【0004】
特許文献1には、移動端末から取得したUE Capability Informationの全てを解析処理してデコードを行なって操作表示画面に情報の意味や設定されている値などが分かるように表示することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようにプログラムの処理によりUE Capability Informationの全てを解析処理してデコードを行なって操作表示画面に表示させるには、解析処理に時間がかかってしまう。
【0007】
また、UE Capability Informationのデータ構造は、規格のバージョンアップなどにより変更されることがあり、そのような場合には、解析処理のプログラムを改造して対応する必要がある。
【0008】
そこで、本発明は、予め決められたデータ構造の情報に基づいて移動端末の情報をデコードすることにより、処理負荷を軽減させることができ、データ構造の変更にも容易に対応できる移動端末試験装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の移動端末試験装置は、移動体通信の基地局を擬似して移動端末を試験する移動端末試験装置であって、前記移動端末から受信したUE Capability Informationを、所定のデータ構造情報に基づいてデコードして文字列データを生成するデータ変換部を備えるものである。
【0010】
この構成により、所定のデータ構造情報に基づいてUE Capability Informationがデコードされ文字列データが生成される。このため、処理負荷を軽減させることができ、データ構造の変更にも容易に対応できる。
【0011】
また、本発明の移動端末試験装置において、前記データ構造情報は、ASN.1(Abstract Syntax Notation One)により記述されているものである。
【0012】
この構成により、ASN.1で記述されたデータ構造に基づいてUE Capability Informationがデコードされ文字列データが生成される。このため、処理負荷を軽減させることができ、データ構造の変更にも容易に対応できる。
【0013】
また、本発明の端末情報解析方法は、移動体通信の基地局を擬似して移動端末を試験する移動端末試験装置の端末情報解析方法であって、前記移動端末から受信したUE Capability Informationを、所定のデータ構造情報に基づいてデコードして文字列データを生成するステップを備えるものである。
【0014】
この構成により、所定のデータ構造情報に基づいてUE Capability Informationがデコードされ文字列データが生成される。このため、処理負荷を軽減させることができ、データ構造の変更にも容易に対応できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、処理負荷を軽減させることができ、データ構造の変更にも容易に対応できる移動端末試験装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る移動端末試験装置のブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る移動端末試験装置のデコードされた文字列データの例を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係る移動端末試験装置の試験実施制御処理の手順を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る移動端末試験装置ついて詳細に説明する。
【0018】
図1において、本発明の一実施形態に係る移動端末試験装置1は、擬似基地局として同軸ケーブル等を介して有線で移動端末100とRF(無線周波数)信号を送受信するようになっている。なお、移動端末試験装置1は、アンテナを介して無線で移動端末100とRF信号を送受信するようにしてもよい。
【0019】
移動端末試験装置1は、端末情報記憶部11と、情報要求部12と、データ受信部13と、データ変換部14と、データ構造情報格納部15と、文字列検索部16と、TC(Test Case)実行部17と、操作表示部18とを含んで構成される。
【0020】
端末情報記憶部11は、試験対象となる移動端末100の情報を、例えば、移動端末100の機種ごとに記憶する。
【0021】
情報要求部12は、移動端末100に、UE Capability Informationの送信を要求するRF信号を送信する。
【0022】
データ受信部13は、移動端末100からUE Capability Informationを受信し、受信したUE Capability Informationをデータ変換部14に出力する。
【0023】
データ変換部14は、データ構造情報格納部15に格納されたデータ構造情報に基づいて、受信したUE Capability Informationをデコードし、パラメータ名や設定値などを文字列とした文字列データを生成する。
【0024】
データ構造情報格納部15は、UE Capability Informationのデータ構造を定義したデータ構造情報を格納する。データ構造情報は、例えば、ASN.1(Abstract Syntax Notation One)で記述される。
【0025】
データ変換部14は、例えば、データ構造情報格納部15に格納された、ASN.1で記述されたUE Capability Informationのデータ構造に基づいて、UE Capability Informationをデコードし、
図2に示すような文字列データを生成する。
【0026】
文字列検索部16は、データ変換部14で生成された文字列データから、試験に必要な情報を検索する。
【0027】
TC実行部17は、ユーザにより選択されたテストケースの実行を制御する。TC実行部17は、選択されたテストケースで必要となる移動端末100の情報を、移動端末100から取得する。
【0028】
操作表示部18は、ユーザからの操作入力を受け付ける入力部と、パラメータの設定画面や試験結果などを表示する表示部とを備えている。入力部は、タッチパッドやキーボードやプッシュボタンなどによって構成される。表示部は、液晶表示装置などによって構成される。
【0029】
本実施形態において、TC実行部17は、ユーザにより選択されたテストケースで必要となる移動端末100の情報を、移動端末100から受信したUE Capability Informationから取得する。
【0030】
TC実行部17は、ユーザにより選択されたテストケースで必要となる移動端末100の情報と、試験対象となる移動端末100の識別情報とを端末情報記憶部11に通知して、必要となる情報を取得させる。
【0031】
端末情報記憶部11は、移動端末100の識別情報に基づいて、その移動端末100の機種の情報が記憶されているかを確認する。端末情報記憶部11は、選択されたテストケースで必要となる情報が記憶されていない場合は、情報要求部12によりUE Capability Informationの送信を要求する信号を移動端末100に送信させる。また、端末情報記憶部11は、選択されたテストケースで必要となる情報を文字列検索部16に通知する。
【0032】
データ変換部14は、移動端末100から受信したUE Capability Informationを、データ構造情報格納部15に格納されたASN.1で記述されたUE Capability Informationのデータ構造情報に基づいてデコードする。
【0033】
無線通信の規格を作成している3GPP(3rd Generation Partnership Project)のTS38.331では、UE Capability Informationのデータ構造をASN.1で記述している。このため、TS38.331で定義されたASN.1をデータ構造情報格納部15に格納することで、UE Capability InformationがTS38.331で定義されたデータ構造でデコードされる。
【0034】
また、規格のバージョンアップなどによりUE Capability Informationのデータ構造が変更された場合でも、データ構造情報格納部15に格納されたASN.1で記述されたデータ構造情報を、TS38.331で新しく定義されたASN.1に置き換えるだけで、プログラムを変更することなく新しく定義されたデータ構造に対応することができる。
【0035】
データ変換部14は、デコードされた文字列データを文字列検索部16に出力する。文字列検索部16は、デコードされた文字列データから、端末情報記憶部11から通知された選択されたテストケースで必要となる情報を検索し、検索された情報を端末情報記憶部11に通知する。
【0036】
端末情報記憶部11は、文字列検索部16から通知された情報を追加して、記憶されている移動端末100の情報を更新し、取得可能な情報が全て取得できるまで移動端末100からの情報取得処理を繰り返す。端末情報記憶部11は、取得可能な情報を全て取得した結果、選択されたテストケースで必要となる情報が全て揃っているか否かをTC実行部17に通知する。
【0037】
TC実行部17は、選択されたテストケースで必要となる情報が全て揃っていれば試験測定を実行し、選択されたテストケースで必要となる情報が全て揃っていなければ試験を行なわず次のテストケースを実行する。
【0038】
なお、文字列検索部16は、ユーザの操作表示部18への操作により、UE Capability Informationの検索処理が選択された場合に、ユーザの入力したパラメータ等をデコードされた文字列データから検索して、結果を操作表示部18の表示部に表示させるようにしてもよい。
【0039】
以上のように構成された本実施形態に係る移動端末試験装置1による試験実施制御処理について、
図3を参照して説明する。なお、以下に説明する試験実施制御処理は、操作表示部18への入力で試験実行が選択されると実行される。
【0040】
ステップS1において、TC実行部17は、ユーザにより選択されたテストケースで必要となる移動端末100の情報と移動端末100の識別情報を端末情報記憶部11に通知し、端末情報記憶部11は、移動端末100の識別情報からその移動端末100の機種の情報を確認する。ステップS1の処理を実行した後、端末情報記憶部11は、ステップS2の処理を実行する。
【0041】
ステップS2において、端末情報記憶部11は、移動端末100の情報が取得済みであるか否かを判定する。
【0042】
移動端末100の情報が取得済みであると判定した場合には、端末情報記憶部11は、ステップS10の処理を実行する。移動端末100の情報が取得済みでないと判定した場合には、端末情報記憶部11は、ステップS3の処理を実行する。
【0043】
ステップS3において、端末情報記憶部11は、情報要求部12に移動端末100(UE)との通信の接続を要求する。ステップS3の処理を実行した後、端末情報記憶部11は、ステップS4の処理を実行する。
【0044】
ステップS4において、端末情報記憶部11は、UE Capability Informationの送信を要求するRF信号を移動端末100に送信することを情報要求部12に要求する。ステップS4の処理を実行した後、端末情報記憶部11は、データ受信部13にステップS5の処理を実行させる。
【0045】
ステップS5において、データ受信部13は、移動端末100からUE Capability Informationを受信すると、受信したUE Capability Informationをデータ変換部14に出力する。ステップS5の処理を実行した後、データ受信部13は、データ変換部14にステップS6の処理を実行させる。
【0046】
ステップS6において、データ変換部14は、受信したUE Capability Informationをデータ構造情報格納部15に格納されたASN.1に基づいてデコードして文字列データを生成し、文字列検索部16に出力する。ステップS6の処理を実行した後、データ変換部14は、文字列検索部16にステップS7の処理を実行させる。
【0047】
ステップS7において、文字列検索部16は、テストケースに必要な情報をデコードされた文字列データから検索し、検索結果を端末情報記憶部11に出力する。ステップS7の処理を実行した後、文字列検索部16は、端末情報記憶部11にステップS8の処理を実行する。
【0048】
ステップS8において、端末情報記憶部11は、検索された情報によって移動端末100の端末情報を更新する。ステップS8の処理を実行した後、端末情報記憶部11は、ステップS9の処理を実行する。
【0049】
ステップS9において、端末情報記憶部11は、移動端末100から取得可能な情報の取得が完了したか否かを判定する。
【0050】
情報の取得が完了したと判定した場合には、端末情報記憶部11は、TC実行部17にステップS10の処理を実行させる。情報の取得が完了していないと判定した場合には、端末情報記憶部11は、ステップS4の処理を実行する。
【0051】
ステップS10において、TC実行部17は、選択されたテストケースで必要となる情報が全て揃っているか否かを判定する。
【0052】
必要となる情報が全て揃っていると判定した場合には、TC実行部17は、ステップS12の処理を実行する。必要となる情報が全て揃っていないと判定した場合には、TC実行部17は、ステップS11の処理を実行する。
【0053】
ステップS11において、TC実行部17は、選択されたテストケースを行なわずスキップする試験スキップ処理を実行する。ステップS11の処理を実行した後、TC実行部17は、試験実施制御処理を終了する。
【0054】
ステップS12において、TC実行部17は、選択されたテストケースを実施する。ステップS12の処理を実行した後、TC実行部17は、試験実施制御処理を終了する。
【0055】
このように、上述の実施形態では、データ変換部14は、データ構造情報格納部15に格納されたデータ構造情報に基づいて、受信したUE Capability Informationをデコードし、パラメータ名や設定値などを文字列としたデータを生成する。
【0056】
これにより、データ構造情報格納部15に格納されたデータ構造情報に基づいてUE Capability Informationがデコードされ文字列データが生成される。このため、処理負荷を軽減させることができ、データ構造の変更にも容易に対応できる。
【0057】
また、データ構造情報格納部15に格納されたデータ構造情報は、ASN.1で記述される。
【0058】
これにより、ASN.1で記述されたデータ構造に基づいてUE Capability Informationがデコードされ文字列データが生成される。このため、処理負荷を軽減させることができ、データ構造の変更にも容易に対応できる。
【0059】
本発明の実施形態を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0060】
1 移動端末試験装置
11 端末情報記憶部
12 情報要求部
13 データ受信部
14 データ変換部
15 データ構造情報格納部
16 文字列検索部
17 TC実行部
100 移動端末