(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154677
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】バックグラインドテープ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20241024BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20241024BHJP
【FI】
H01L21/304 622J
C09J7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068637
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】手柴 まり子
(72)【発明者】
【氏名】河野 広希
(72)【発明者】
【氏名】近藤 渉
【テーマコード(参考)】
4J004
5F057
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004CA06
4J004CB03
4J004CC02
4J004FA08
5F057AA02
5F057AA16
5F057AA31
5F057BA11
5F057BA26
5F057CA14
5F057DA11
5F057EC06
5F057EC07
5F057EC09
5F057EC16
5F057EC17
5F057EC19
5F057FA28
(57)【要約】
【課題】優れた凹凸の埋め込み性とカット性とを両立可能なバックグラインドテープを提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態のバックグラインドテープは、基材と、中間層と、粘着剤層とを備え、該中間層のナノインデンテーション硬さ(25℃)が0.001MPa~0.200MPaであり、該粘着剤層のナノインデンテーション硬さ(25℃)が0.001MPa~0.080MPaであり、該中間層および該粘着剤層の少なくとも一方の厚みが50μm以上であり、該厚みが50μm以上である層の除荷曲線変位量が8000μm以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、中間層と、粘着剤層とを備え、
該中間層のナノインデンテーション硬さ(25℃)が0.001MPa~0.200MPaであり、
該粘着剤層のナノインデンテーション硬さ(25℃)が0.001MPa~0.080MPaであり、
該中間層および該粘着剤層の少なくとも一方の厚みが50μm以上であり、
該厚みが50μm以上である層の除荷曲線変位量が8000μm以下である、バックグラインドテープ。
【請求項2】
前記中間層のナノインデンテーション硬さ(MPa)と厚み(μm)との積が、0.050~15.000である、請求項1に記載のバックグラインドテープ。
【請求項3】
前記粘着剤層のナノインデンテーション硬さ(MPa)と厚み(μm)との積が、0.001~1.000である、請求項1に記載のバックグラインドテープ。
【請求項4】
前記粘着剤層の厚みが1μm~50μmである、請求項1に記載のバックグラインドテープ。
【請求項5】
前記中間層が、ガラス転移温度が80℃以上であるモノマーを含むモノマー組成物を重合して得られる(メタ)アクリル系ポリマーを含む、請求項1に記載のバックグラインドテープ。
【請求項6】
前記中間層が、前記ガラス転移温度が80℃以上であるモノマーを5重量%~50重量%含むモノマー組成物を重合して得られる(メタ)アクリル系ポリマーを含む、請求項5に記載のバックグラインドテープ。
【請求項7】
前記粘着剤層が、紫外線硬化型粘着剤で形成される、請求項1に記載のバックグラインドテープ。
【請求項8】
前記粘着剤層が多官能アクリレートを含む粘着剤で形成される、請求項1に記載のバックグラインドテープ。
【請求項9】
バンプが形成された半導体ウエハに貼り合わせられ、
該バンプの高さ(μm)と、前記粘着剤層の厚み(μm)と前記中間層の厚み(μm)との合計とが、バンプの高さ(μm)<粘着剤層の厚み(μm)+中間層の厚み(μm)の関係を満たす、請求項1に記載のバックグラインドテープ。
【請求項10】
バンプが形成された半導体ウエハに貼り合わせられ、
該バンプの高さ(μm)と、前記中間層の厚み(μm)とが、バンプの高さ(μm)<中間層の厚み(μm)の関係を満たす、請求項1に記載のバックグラインドテープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックグラインドテープに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハは、パーソナルコンピューター、スマートフォン、自動車等、様々な用途に用いられている。半導体ウエハの加工工程では、加工時に表面を保護するために粘着テープが用いられている。近年、大規模集積回路(LSI)の微細化、および、高機能化が進んでおり、ウエハの表面構造が複雑化している。具体的には、はんだバンプ等によりウエハ表面の立体構造の複雑化が挙げられる。そのため、半導体加工工程に用いられる粘着テープにはウエハ表面の凹凸の埋め込み性、および、強粘着性が求められる。半導体ウエハのバックグラインド工程に用いられる粘着テープは、バックグラインド工程では半導体ウエハを適切に保持し、バックグラインド工程後は容易に剥離することが要求される。バックグラインド工程を施された半導体ウエハの厚みは格段に薄くなるため、糊残り、および、半導体ウエハの破損なく剥離できることがバックグラインドテープには要求される。
【0003】
近年、各製品の小型化および薄型化に伴い、半導体ウエハの薄型化が進められている。薄型に加工されたウエハにおいては、粘着テープの粘着力が高すぎる場合、粘着テープの剥離時にウエハを破損する場合がある。そのため、被着体への糊残り、および、剥離時のウエハの破損を防止するために、紫外線硬化型粘着剤を用いた粘着テープが提案されている(例えば、特許文献1および2)。また、バンプ等の凹凸構造を有する半導体ウエハの加工に好適な粘着テープとして、凹凸の埋め込み性に優れた粘着テープが提案されている(例えば、特許文献3)。しかしながら、凹凸の埋め込み性に優れる粘着テープは、テープ貼り付け後のカット工程で粘着剤層の糸曳きが発生し、バックグラインド工程および加工後の剥離工程で半導体ウエハが破損する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-017758号公報
【特許文献2】特開2013-213075号公報
【特許文献3】特開2022-121480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の課題を解決するためになされたものであり、優れた凹凸の埋め込み性とカット性とを両立可能なバックグラインドテープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1.本発明の実施形態のバックグラインドテープは、基材と、中間層と、粘着剤層とを備え、該中間層のナノインデンテーション硬さ(25℃)が0.001MPa~0.200MPaであり、該粘着剤層のナノインデンテーション硬さ(25℃)が0.001MPa~0.080MPaである。該中間層および該粘着剤層の少なくとも一方の厚みは50μm以上であり、該厚みが50μm以上である層の除荷曲線変位量は8000μm以下である。
2.上記1に記載のバックグラインドテープにおいて、上記中間層のナノインデンテーション硬さ(MPa)と厚み(μm)との積は、0.050~15.000であってもよい。
3.上記1または2に記載のバックグラインドテープにおいて、上記粘着剤層のナノインデンテーション硬さ(MPa)と厚み(μm)との積は、0.001~1.000であってもよい。
4.上記1から3のいずれかに記載のバックグラインドテープにおいて、上記粘着剤層の厚みは1μm~50μmであってもよい。
5.上記1から4のいずれかに記載のバックグラインドテープにおいて、上記中間層は、ガラス転移温度が80℃以上であるモノマーを含むモノマー組成物を重合して得られる(メタ)アクリル系ポリマーを含んでいてもよい。
6.上記5に記載のバックグラインドテープにおいて、上記中間層が、上記ガラス転移温度が80℃以上であるモノマーを5重量%~50重量%含むモノマー組成物を重合して得られる(メタ)アクリル系ポリマーを含んでいてもよい。
7.上記1から6のいずれかに記載のバックグラインドテープにおいて、上記粘着剤層は、紫外線硬化型粘着剤で形成されてもよい。
8.上記1から7のいずれかに記載のバックグラインドテープにおいて、上記粘着剤層は多官能アクリレートを含む粘着剤で形成されていてもよい。
9.上記1から8のいずれかに記載のバックグラインドテープは、バンプが形成された半導体ウエハに貼り合わせられ、該バンプの高さ(μm)と、上記粘着剤層の厚み(μm)と上記中間層の厚み(μm)との合計とが、バンプの高さ(μm)<粘着剤層の厚み(μm)+中間層の厚み(μm)の関係を満たしていてもよい。
10.上記1から9のいずれかに記載のバックグラインドテープは、バンプが形成された半導体ウエハに貼り合わせられ、該バンプの高さ(μm)と、上記中間層の厚み(μm)とが、バンプの高さ(μm)<中間層の厚み(μm)の関係を満たしていてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態によれば、優れた凹凸の埋め込み性とカット性とを両立可能なバックグラインドテープが提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態のバックグラインドテープの概略断面図である。
【
図2】中間層のナノインデンター測定を行う際のバックグラインドテープと圧子との概略断面図である。
【
図3】粘着剤層のナノインデンター測定を行う際のバックグラインドテープと圧子との概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.バックグラインドテープの全体構成
図1は本発明の実施形態のバックグラインドテープの概略断面図である。本発明の実施形態のバックグラインドテープ100は、基材10と、中間層20と、粘着剤層30とを備える。実用的には、使用までの間、粘着剤層30には、はく離ライナーが剥離可能に仮着され得る。中間層20は、任意の適切な樹脂、または、任意の適切な粘着剤により形成され得る。中間層20のナノインデンテーション硬さ(25℃)は0.001MPa~0.200MPaである。粘着剤層30のナノインデンテーション硬さ(25℃)は0.001MPa~0.080MPaである。中間層20と粘着剤層30とは、少なくとも一方の厚みが50μm以上である。さらに、厚みが50μm以上である層は、除荷曲線変位量が8000μm以下である。バンプ等の凹凸を有する半導体ウエハの加工に用いられるバックグラインドテープには、半導体ウエハ表面の凹凸の埋め込み性が要求される。他方、埋め込み性に優れるバックグラインドテープは、カット性に劣り、バックグラインドテープをカットする工程で粘着剤層および/または中間層に糸曳きが発生する場合がある。糸曳きした粘着剤または中間層形成組成物は、半導体ウエハに付着し得る。その結果、バックグラインドテープ剥離時に薄く研削された半導体ウエハが破損するおそれがある。このように凹凸の埋め込み性とカット性との両立は困難である。本発明者らは、バックグラインドテープの状態で測定されたナノインデンテーション硬さおよび除荷曲線変位量が特定の範囲である粘着剤層および中間層を備えるバックグラインドテープであれば、優れた凹凸埋め込み性とカット性(例えば、粘着剤層および中間層の糸曳き抑制)とを両立し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。なお、厚みが50μm未満であれば、通常、テープカット工程で用いられるカッターであれば、糸曳きなくカットされ得る。
【0010】
上記ナノインデンテーション硬さおよび除荷曲線変位量はナノインデンテーション測定により得られ得る。ナノインデンターによる測定は、圧子による荷重を制御し変位(圧子の押し込み深さ)を計測することにより行い、測定結果から荷重変位曲線を作成し、ナノインデンテーション硬さ等の特性を求めることができる。荷重変異曲線は、一般に横軸を変位(押し込みの深さ)、縦軸を荷重(押し込みに必要な力)として作成される。例えば、粘着剤層および中間層の場合、測定対象に圧子を接触させると、圧子と接触した層の濡れ性、および、吸着性により、荷重がマイナスの値となる。次いで、圧子による荷重を行う。本明細書においては、中間層は押し込み深さが3000nmになるまで、粘着剤層は押し込み深さが2000nmになるまでそれぞれ負荷をかける。負荷の開始から最大荷重になるまでの変位量から負荷曲線が作成される。上記押し込み深さまでの最大荷重と、接触投影面積からナノインデンテーション硬さが算出され得る。次いで、圧子を荷重が0となるまで引き抜く。荷重が0となるまでの変位量から除荷曲線が作成される。粘着剤層および中間層は吸着性および凝集力を有し、圧子を引き抜く際に圧子に粘着剤層および中間層を構成する成分が付着し糸曳きし得る。したがって、除荷曲線において変位量はマイナスの値となり得る。本明細書において、除荷曲線において変位がマイナスとなった距離(変位量)を除荷曲線変位量という。本明細書において、粘着剤層および中間層のナノインデンテーション硬さおよび除荷曲線変位量は、いずれもバックグラインドテープとして積層された状態で測定される。
【0011】
中間層のナノインデンテーション硬さ(25℃)は0.001MPa~0.200MPaであり、好ましくは0.005MPa~0.185MPaであり、より好ましくは0.010MPa~0.150MPaであり、さらに好ましくは0.015MPa~0.100MPaである。
図2は中間層のナノインデンター測定を行う際のバックグラインドテープと圧子との概略断面図である。中間層のナノインデンター測定を行う場合、バックグラインドテープ100の基材10側を、バックグラインドテープ100の側面と圧子とが対向するよう両面テープの粘着剤層400を介して支持体300に固定し、バックグラインドテープ100の側面側から中間層20の略中央部に、ナノインデンターの圧子200を接触させ、測定を行い得る。本明細書においては、中間層のナノインデンテーション硬さはバックグラインドテープの状態で測定される。バックグラインドテープの状態で測定された中間層のナノインデンテーション硬さが上記範囲であれば、優れた凹凸の埋め込み性とカット性とを両立可能なバックグラインドテープが提供され得る。具体的には、室温25℃の条件で、以下の方法で測定したナノインデンテーション硬さを中間層のナノインデンテーション硬さという。
<ナノインデンテーション硬さ>
バックグラインドテープを切り出し凍結条件下ウルトラミクロトームにて、測定用試料を作製する。圧子の押し込み、および、引き抜きは速度500nm/秒で実施する。中間層に押し込み深さ3000nmまで6秒かけて圧子を押し込む。押し込み後の保持時間は0秒とする。押し込みと同じ速度で圧子を中間層から引き抜き、中間層から圧子が引き抜けるまでの時間を測定する。なお、糸曳き性等の物性が影響するため、試料によって引き抜けるまでの時間は異なり得る。この測定における最大荷重Pmax(μN)と最大深さ(3000nm)時の接触投影面積A(μm
2)の値から、硬さ(ナノインデンテーション硬さ)(MPa)をPmax/Aにより、算出する。ナノインデンター測定では、測定対象となる層の厚みが押し込み深さの10倍以上であれば圧子を押し込む側と反対側の面に積層された層の影響を受けないと考えられる。したがって、中間層の厚みが20μm未満である場合は、中間層の厚みを20μmとした評価用粘着テープを作製し、上記の方法で評価する。
【0012】
粘着剤層のナノインデンテーション硬さ(25℃)は0.001MPa~0.080MPaであり、好ましくは0.001MPa~0.060MPaであり、より好ましくは0.002MPa~0.055MPaであり、さらに好ましくは0.003MPa~0.050MPaである。本明細書においては、粘着剤層のナノインデンテーション硬さはバックグラインドテープの状態で測定される。バックグラインドテープの状態で測定された粘着剤層のナノインデンテーション硬さが上記範囲であれば、優れた凹凸の埋め込み性とカット性とを両立可能なバックグラインドテープが提供され得る。具体的には、本明細書においては、室温25℃で、以下の方法で測定されたナノインデンテーション硬さを粘着剤層のナノインデンテーション硬さという。
<ナノインデンテーション硬さ>
バックグラインドテープを縦約1cm、横約1cmに切り出し、測定用試料を作製する。圧子の押し込み、および、引き抜きは速度500nm/秒で実施する。粘着剤層に押し込み深さ2000nmまで4秒かけて圧子を押し込む。押し込み後の保持時間は0秒とする。押し込みと同じ速度で圧子を粘着剤層から引き抜き、粘着剤層から圧子が引き抜けるまでの時間を測定する。なお、糸曳き性等の物性が影響するため、試料によって引き抜けるまでの時間は異なり得る。この測定における最大荷重Pmax(μN)と最大深さ(2000nm)時の接触投影面積A(μm2)の値から、硬さ(ナノインデンテーション硬さ)(MPa)をPmax/Aにより、算出する。粘着剤層についても、粘着剤層の厚みが20μm未満である場合は、粘着剤層の厚みを20μmとした評価用粘着テープを作製し、上記の方法で評価する。
【0013】
上記のとおり、粘着剤層および中間層は、少なくとも一方の厚みが50μm以上である。少なくとも一方が50μm以上であれば、凹凸の埋め込み性が向上し得る。厚みが50μm以上である層は、除荷曲線変位量が8000μm以下であり、好ましくは7500μm以下であり、より好ましくは7000μm以下であり、さらに好ましくは6500μm以下であり、特に好ましくは5000μm以下である。除荷曲線変位量は、小さいほど好ましく、例えば、500μm以上である。上記のとおり、除荷曲線変位量は、バックグラインドテープの状態で測定される。バックグラインドテープの状態で測定された除荷曲線変位量が上記範囲であれば、優れた凹凸の埋め込み性とカット性とを両立可能な半導体ウエハが提供され得る。本明細書において、除荷曲線変位量は上記ナノインデンテーション硬さの測定時の荷重と押し込み深さとから荷重変異曲線を作成し、荷重変位曲線の除荷曲線から、変位がマイナスとなった距離(すなわち、変位0nmとなった時点から除荷曲線において荷重が0となった時点までの変位量)をいう。
【0014】
バックグラインドテープは、基材、中間層、および、粘着剤層以外の任意の適切な層をさらに含んでいてもよい。例えば、帯電防止層をさらに含んでいてもよい。帯電防止層を有していれば、バックグラインドテープ剥離時の静電気による半導体素子の静電破壊を防止し得る。
【0015】
バックグラインドテープの厚みは任意の適切な範囲に設定され得る。好ましくは10μm~1000μmであり、より好ましくは50μm~300μmであり、さらに好ましくは100μm~300μmである。
【0016】
B.基材
基材は、任意の適切な樹脂から構成され得る。基材を構成する樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)などのポリエステル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体などのポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリイミド、セルロース類、フッ素系樹脂、ポリエーテル、ポリスチレンなどのポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン等が挙げられる。好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、および、ポリブチレンナフタレートが用いられる。これらの樹脂を用いれば、反りの発生がより防止され得る。
【0017】
基材は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分をさらに含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、耐熱安定剤等が挙げられる。その他の成分の種類および使用量は、目的に応じて任意の適切な量で用いることができる。
【0018】
1つの実施形態においては、基材は帯電防止機能を有する。基材が帯電防止機能を有していれば、テープ剥離時の静電気の発生を抑制し、静電気による回路の破壊、および、異物の付着が防止され得る。基材は、帯電防止剤を含む樹脂から形成することにより帯電防止機能を有していてもよく、任意の適切なフィルムに、導電性ポリマー、有機または無機の導電性物質、および、帯電防止剤等の帯電防止成分を含む組成物を塗布して帯電防止層を形成することにより、帯電防止機能を有していてもよい。基材が帯電防止層を有する場合、帯電防止層が形成された面に中間層が積層されることが好ましい。基材が帯電防止機能を有する場合、基材の表面抵抗値は、例えば、1.0×102Ω/□~1.0×1013Ω/□である。
【0019】
基材の厚みは、任意の適切な値に設定され得る。基材の厚みは、好ましくは10μm~200μmであり、より好ましくは20μm~150μmである。
【0020】
基材の弾性率は、任意の適切な値に設定され得る。基材の弾性率は、好ましくは50MPa~6000MPaであり、より好ましくは70MPa~5000MPaである。弾性率が上記範囲であれば、被着体表面の凹凸に適度に追従し得るバックグラインドテープが得られ得る。
【0021】
C.中間層
中間層の厚みは、好ましくは10μm~300μmであり、より好ましくは50μm~200μmであり、さらに好ましくは50μm~150μmであり、特に好ましくは100μm~150μmである。中間層の厚みが上記範囲であれば、凹凸面を良好に埋め込み得るバックグラインドテープを得ることができる。上記のとおり、中間層の厚みが50μm以上である場合、除荷曲線変位量は8000μm以下である。
【0022】
中間層のナノインデンテーション硬さ(MPa)と厚み(μm)との積は、好ましくは0.050~15.000であり、より好ましくは0.400~10.000であり、さらに好ましくは1.000~8.000である。ナノインデンテーション硬さと厚みとの積が上記範囲であれば、より凹凸の埋め込み性とカット性とを両立可能なバックグラインドテープが得られ得る。
【0023】
中間層は任意の適切な材料で形成され得る。中間層は、任意の適切な樹脂、例えば、アクリル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン酢酸ビニル系樹脂、および、エチレンメチルメタクリレート樹脂等の樹脂、または、粘着剤で形成され得る。
【0024】
1つの実施形態においては、中間層は(メタ)アクリル系ポリマーを含む中間層形成組成物から形成されることが好ましい。(メタ)アクリル系ポリマーは、好ましくはアルキル(メタ)アクリレート由来の構成成分を含む。アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸C1-C20アルキルエステルが挙げられる。なお、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルをいう。
【0025】
中間層は好ましくはガラス転移温度が80℃以上であるモノマー(以下、高Tgモノマーともいう)を含むモノマー組成物を重合して得られる(メタ)アクリル系ポリマーを含む。ガラス転移温度が80℃以上であるモノマーを含んでいれば、よりカット性に優れたバックグラインドテープが得られ得る。高Tgモノマーのガラス転移温度はより好ましくは90℃以上であり、さらに好ましくは100℃以上である。高Tgモノマーのガラス転移温度は、例えば、180℃以下である。本明細書において、モノマーのガラス転移温度は、該モノマーのホモポリマーのガラス転移温度をいう。高Tgモノマーとしては、具体的にはメタクリル酸シクロヘキシル(Tg:83℃)、アクリル酸ジシクロペンタニル(Tg:120℃)、メタクリル酸ジシクロペンタニル(Tg:175℃)、アクリル酸イソボルニル(Tg:94℃)、メタクリル酸イソボルニル(Tg:150℃)、メタクリル酸t-ブチル(Tg:118℃)、メタクリル酸メチル(Tg:105℃)、トリメチロールプロパントリアクリレート(Tg:>250℃)、スチレン(Tg:80℃)、アクリルニトリル(Tg:97℃)、N-アクリロイルモルホリン(Tg:145℃)等が挙げられる。高Tgモノマーとしては、好ましくはメタクリル酸メチルが用いられる。なお、上記以外のホモポリマーのTgは、例えば、「Polymer Handbook」(第4版、John Wiley & Sons,Inc、1999年)から判断することができる。なお、この文献中、複数のTgの値が記載されている場合は、「conventional」の値を採用する。
【0026】
高Tgモノマーは任意の適切な含有割合で用いられ得る。高Tgモノマーの含有割合は、モノマー組成物中好ましくは5重量%~50重量%であり、より好ましくは10重量%~40重量%であり、さらに好ましくは15重量%~35重量%である。
【0027】
(メタ)アクリル系ポリマーは、凝集力、耐熱性、架橋性等の改質を目的として、必要に応じて、上記アルキル(メタ)アクリレートと共重合可能な他のモノマーに対応する構成単位を含んでいてもよい。このようなモノマーとして、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イコタン酸等の酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル等のヒドロキシル基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、等のスルホン酸基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン等の窒素含有モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル等の(メタ)アクリル酸アミノアルキル系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;N-シクロヘキシルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド等のマレイミド系モノマー;N-メチルイタコンイミド、N-エチルイタコンイミド等のイタコンイミド系モノマー;スクシンイミド系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N-ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン等のビニル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノアクリレートモノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有アクリル系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール等のグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等の複素環、ハロゲン原子、ケイ素原子等を有するアクリル酸エステル系モノマー;イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のオレフィン系モノマー;ビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー等が挙げられる。これらの単量体成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記他のモノマー由来の構成単位の含有割合は、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部中、好ましくは1重量部~30重量部であり、より好ましくは3重量部~25重量部である。
【0028】
上記(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、好ましくは10万~100万であり、より好ましくは30万~80万である。重量平均分子量は、GPC(溶媒:THF)により測定され得る。
【0029】
1つの実施形態において、中間層は光重合開始剤を含み、かつ、紫外線硬化性成分を含まない。すなわち、光重合開始剤を含むものの、中間層自体は紫外線照射により硬化しない。そのため、中間層は紫外線照射の前後で柔軟性を維持し得る。また、中間層が光重合開始剤を含んでいれば、粘着剤層に含まれる光重合開始剤が中間層に移動し、結果として粘着剤層に含まれる光重合開始剤の含有量が経時的に低下することを抑制し得る。そのため、紫外線照射後において、バックグラインドテープが優れた軽剥離性を発揮し得る。本明細書において、紫外線硬化性成分とは、紫外線照射により架橋し、硬化収縮し得る成分をいう。具体的には、重合性炭素-炭素二重結合を側鎖または末端に有するポリマー等が挙げられる。
【0030】
中間層形成組成物(結果として形成される中間層)が含む光重合開始剤は、粘着剤層に含まれる光重合開始剤と同一であってもよく、異なっていてもよい。好ましくは、中間層は粘着剤層と同一の光重合開始剤を含む。中間層と粘着剤層とが同一の光重合開始剤を含んでいれば、粘着剤層から中間層への光重合開始剤の移動をより抑制し得る。光重合開始剤としては、粘着剤組成物で例示した光重合開始剤を用いることができる。光重合開始剤は1種のみであってもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
中間層における光重合開始剤の含有量は、中間層形成用組成物中のポリマー構成成分100重量部に対して、好ましくは0.1重量部~10重量部であり、より好ましくは0.5重量部~8重量部である。中間層に含まれる光重合開始剤の含有量が上記範囲であることにより、紫外線照射後において優れた軽剥離性を有するバックグラインドテープが得られ得る。1つの実施形態においては、上記粘着剤層を形成する組成物と等量となるよう光重合開始剤が用いられる。
【0032】
1つの実施形態においては、上記中間層形成用組成物は、架橋剤をさらに含む。架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、アミン系架橋剤等が挙げられる。
【0033】
中間層形成用組成物が架橋剤を含む場合、架橋剤の含有割合は、中間層形成用組成物中のポリマー構成成分100重量部に対して、好ましくは0.5重量部~10重量部であり、より好ましくは1重量部~8重量部である。
【0034】
中間層形成用組成物は、必要に応じて、任意の適切な添加剤をさらに含み得る。添加剤としては、例えば、活性エネルギー線重合促進剤、ラジカル捕捉剤、粘着付与剤、可塑剤(例えば、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸エステル系可塑剤等)、顔料、染料、充填剤、老化防止剤、導電材、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、剥離調整剤、軟化剤、界面活性剤、難燃剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0035】
D.粘着剤層
粘着剤層は任意の適切な粘着剤を用いて形成され得る。代表的には、粘着剤はベースポリマーを含む。好ましくは粘着剤層は紫外線硬化型粘着剤で形成される。紫外線硬化型粘着剤で形成されていれば、軽剥離性に優れたバックグラインドテープが得られ得る。
【0036】
D-1.ベースポリマー
紫外線硬化型粘着剤としては、任意の適切な粘着剤を用いることができる。例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤等の任意の適切な粘着剤に紫外線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマーを添加した粘着剤であってもよく、ベースポリマーとして重合性炭素-炭素二重結合が側鎖および/または末端に導入されたポリマーを用いた粘着剤であってもよい。好ましくは、ベースポリマーとして重合性炭素-炭素二重結合が側鎖および/または末端に導入されたポリマーを用いた粘着剤が用いられる。
【0037】
重合性炭素-炭素二重結合が側鎖および/または末端に導入されたポリマーを用いた粘着剤を用いる場合、ベースポリマーとしては側鎖および/または末端に重合性炭素-炭素二重結合が導入され、かつ、粘着性を有するポリマーが用いられる。このようなポリマーとしては、例えば、アクリル系樹脂、ビニルアルキルエーテル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ウレタン系樹脂、スチレン-ジエンブロック共重合体等の樹脂に重合性炭素-炭素二重結合を導入したポリマーが挙げられる。好ましくは、アクリル系樹脂に重合性炭素-炭素二重結合が導入されたアクリル系樹脂が用いられる。アクリル系樹脂を用いれば、粘着剤層の貯蔵弾性率および引っ張り弾性率の調整がしやすく、また、粘着力と剥離性とのバランスに優れた粘着シートを得ることができる。さらに、粘着剤由来の成分による半導体ウエハの汚染が低減され得る。
【0038】
アクリル系樹脂としては、任意の適切なアクリル系樹脂を用いることができる。アクリル系樹脂としては、例えば、直鎖または分岐のアルキル基を有するアクリル酸またはメタクリル酸のエステルを1種または2種以上含むモノマー組成物を重合して得られる重合体が挙げられる。
【0039】
直鎖または分岐のアルキル基は、好ましくは炭素数が30個以下のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1個~20個のアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数4個~18個のアルキル基である。アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、へキシル基、ヘプチル基、シクロヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ラウリル基、トリデシル基、テトラデシル基、ステアリル基、オクタデシル基、ドデシル基等が挙げられる。
【0040】
モノマー組成物は、任意の適切な他のモノマーを含んでいてもよい。他のモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)-メチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル等のヒドロキシル基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等のリン酸基含有モノマー等の官能基含有モノマーが挙げられる。官能基含有モノマーを含んでいれば、重合性炭素-炭素二重結合が導入されやすいアクリル系樹脂を得ることができる。官能基含有モノマーの含有割合は、モノマー組成物の全モノマー成分100重量部に対して、好ましくは4重量部~30重量部であり、より好ましくは6重量部~20重量部である。
【0041】
アクリル系樹脂の重量平均分子量は、好ましくは10万以上であり、より好ましくは30万以上であり、さらに好ましくは50万以上であり、特に好ましくは80万~300万である。このような範囲であれば、低分子量成分のブリードを防止し、低汚染性の半導体ウエハ加工用粘着シートを得ることができる。(メタ)アクリル系樹脂の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は、好ましくは1~20であり、より好ましくは3~10である。分子量分布の狭い(メタ)アクリル系樹脂を用いれば、低分子量成分のブリードを防止し、低汚染性の粘着シートを得ることができる。なお、重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ測定(溶媒:テトラヒドロフラン、ポリスチレン換算)により求めることができる。
【0042】
側鎖および/または末端に重合性炭素-炭素二重結合が導入されたポリマーは、任意の適切な方法により得ることができる。例えば、任意の適切な重合方法により得られた樹脂と、重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物とを反応(例えば、縮合反応、付加反応)させることにより得られ得る。具体的には、アクリル系樹脂を用いる場合、任意の適切な官能基を有するモノマー由来の構成単位を有するアクリル系樹脂(共重合体)を任意の適切な溶媒中で重合し、その後、該アクリル系樹脂の官能基と、該官能基と反応し得る重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物とを反応させることにより、重合性炭素-炭素二重結合が導入されたアクリル系樹脂を得ることができる。反応させる重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物の量は、上記樹脂100重量部に対して、好ましくは4重量部~30重量部であり、より好ましくは4重量部~20重量部である。溶媒としては任意の適切な溶媒を用いることができ、例えば、酢酸エチル、メチルチルケトン、トルエン等の各種有機溶剤が挙げられる。
【0043】
上記のようにして樹脂と重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物とを反応させる場合、樹脂および重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物はそれぞれ、互いに反応可能な官能基を有することが好ましい。官能基の組み合わせとしては、例えば、カルボキシル基/エポキシ基、カルボキシル基/アジリジン基、ヒドロキシル基/イソシアネート基等が挙げられる。これらの官能基の組み合わせの中でも、反応追跡の容易さから、ヒドロキシル基とイソシアネート基との組み合わせが好ましい。
【0044】
重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物としては、例えば、2-イソシアネートエチルメタクリレート、メタクリロイソシアネート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(2-イソシアナトエチルメタクリレート)、m-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられる。
【0045】
D-2.光重合開始剤
光重合開始剤としては、任意の適切な開始剤を用いることができる。光重合開始剤としては、例えば、エチル2,4,6-トリメチルベンジルフェニルホスフィネート、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド系光開始剤;4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、α-ヒドロキシ-α,α’-ジメチルアセトフェノン、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα-ケトール系化合物;メトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)-フェニル]-2-モルホリノプロパン-1等のアセトフェノン系化合物;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール等のケタール系化合物;2-ナフタレンスルホニルクロリド等の芳香族スルホニルクロリド系化合物;1-フェノン-1,1-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム等の光活性オキシム系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン、2-クロロチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、2,4-ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4-ジクロロチオキサンソン、2,4-ジエチルチオキサンソン、2,4-ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフォナート、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル-2-メチルプロパン-1等のα―ヒドロキシアセトフェノン等が挙げられる。好ましくは、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル-2-メチルプロパン-1を用いることができる。光重合開始剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
光重合開始剤としては、市販品を用いてもよい。例えば、IGM Resins社製の商品名:Omnirad 127およびOmnirad 651が挙げられる。
【0047】
光重合開始剤は任意の適切な量で用いられる。光重合開始剤の含有量は、ベースポリマー100重量部に対して、好ましくは0.5重量部~20重量部であり、より好ましくは0.5重量部~10重量部である。光重合開始剤の含有量が0.5重量部未満である場合、紫外線照射時に十分に硬化しないおそれがある。光重合開始剤の含有量が10重量部を超える場合、粘着剤の保存安定性が低下するおそれがある。
【0048】
粘着剤は、好ましくは多官能アクリレートをさらに含む。多官能アクリレートをさらに含んでいれば、粘着剤層の弾性が低下し、より凹凸の埋め込み性に優れたバックグラインドテープが得られ得る。また、紫外線照射により粘着力が低下し、より軽剥離性に優れたバックグラインドテープが得られ得る。多官能アクリレートとしては、例えば、(メタ)アクリレート系オリゴマー、モノマー等が挙げられる。具体的には、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等、さらに、ウレタン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリブタジエン系など種々のオリゴマーが挙げられる。これらのオリゴマー成分の分子量は、100~30000程度の範囲のものが適当である。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
多官能アクリレートは、任意の適切な含有量で用いられる。例えば、ベースポリマー100重量部に対して1重量部~80重量部であり、好ましくは10重量部~50重量部であり、より好ましくは25重量部~45重量部である。多官能アクリレートの含有量が上記範囲であれば、粘着剤層の弾性が低下し、より凹凸の埋め込み性に優れたバックグラインドテープが得られ得る。また、紫外線照射により粘着力が低下し、より軽剥離性に優れたバックグラインドテープが得られ得る。
【0050】
D-3.添加剤
粘着剤は、必要に応じて、任意の適切な添加剤を含み得る。添加剤としては、例えば、架橋剤、触媒(例えば、白金触媒)、粘着付与剤、可塑剤、顔料、染料、充填剤、老化防止剤、導電材、紫外線吸収剤、光安定剤、剥離調整剤、軟化剤、界面活性剤、難燃剤、溶剤等が挙げられる。
【0051】
1つの実施形態においては、粘着剤は、架橋剤をさらに含む。架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、キレート系架橋剤等が挙げられる。架橋剤の含有割合は、粘着剤に含まれるベースポリマー100重量部に対して、好ましくは0.01重量部~10重量部であり、より好ましくは0.02重量部~5重量部であり、さらに好ましくは0.025重量部~0.5重量部である。架橋剤の含有割合により、粘着剤層の柔軟性を制御することができる。架橋剤の含有量が0.01重量部未満である場合、粘着剤がゾル状となり、粘着剤層を形成できないおそれがある。架橋剤の含有量が10重量部を超える場合、半導体ウエハへの密着性が低下し、半導体ウエハを十分に保護できないおそれがある。
【0052】
1つの実施形態においては、イソシアネート系架橋剤が好ましく用いられる。イソシアネート系架橋剤は、多種の官能基と反応し得る点で好ましい。特に好ましくは、イソシアネート基を3個以上有する架橋剤が用いられる。架橋剤として、イソシアネート系架橋剤を用い、かつ、架橋剤の含有割合を上記範囲であれば、加熱後においても、剥離性に優れ、糊残りが顕著に少ない粘着剤層を形成することができる。
【0053】
粘着剤層の厚みは、任意の適切な値に設定され得る。粘着剤層の厚みは、好ましくは1μm~50μm、より好ましくは2μm~40μmであり、さらに好ましくは5μm~30μmである。粘着剤層の厚みが上記範囲であれば、半導体ウエハに対し十分な粘着力を発揮し得る。上記のとおり、粘着剤層の厚みが50μm以上である場合、除荷曲線変位量は8000μm以下である。
【0054】
粘着剤層のナノインデンテーション硬さ(MPa)と厚み(μm)との積は、好ましくは0.001~1.000であり、より好ましくは0.050~1.000であり、さらに好ましくは0.075~0.800であり、特に好ましくは0.100~0.600である。ナノインデンテーション硬さと厚みとの積が上記範囲であれば、より凹凸の埋め込み性とカット性とを両立可能なバックグラインドテープが得られ得る。
【0055】
粘着剤層は1層であってもよく、2層以上であってもよい。粘着剤層が2層以上である場合、上記光重合開始剤を含む粘着剤を用いて形成される粘着剤層が少なくとも1層含まれていればよい。粘着剤層が2層以上である場合、好ましくは粘着シートの半導体ウエハと接触する面に光重合開始剤を含む粘着剤を用いて形成された粘着剤層が形成される。紫外線硬化型粘着剤により形成されない粘着剤層は任意の適切な粘着剤組成物で形成され得る。この粘着剤組成物は紫外線硬化型粘着剤であってもよく、感圧性粘着剤であってもよい。
【0056】
粘着剤層は任意の適切な粘着力を有し得る。粘着剤層の紫外線照射前の対シリコンウエハ粘着力は、好ましくは0.50N/20mm~30N/20mmであり、より好ましくは1.00N/20mm~25N/20mmであり、さらに好ましくは1.50N/20mm~20N/20mmである。本明細書において、粘着剤層の粘着力は、バックグラインドテープを幅20mm、長さ80mmに切断し、シリコンミラーウエハのミラー面に、バックグラインドテープの粘着剤層を23℃の雰囲気下、2kgローラーを1往復させて圧着し、23℃で30分放置し、その後、23℃、50%RH雰囲気下、引張速度300mm/分で180°剥離試験により測定した値をいう。
【0057】
粘着剤層の紫外線照射後の対シリコンウエハ粘着力は好ましくは0.001N/20mm~1.000N/20mmであり、より好ましくは0.005N/20mm~0.850N/20mmであり、さらに好ましくは0.005N/20mm~0.800N/20mmである。紫外線照射後の粘着力は、バックグラインドテープを幅20mm、長さ80mmに切断し、シリコンミラーウエハのミラー面に、粘着剤層を23℃の雰囲気下、2kgローラーを1往復させて圧着し、23℃で30分放置し、その後、紫外線(UV)を積算光量が1000mJ/cm2(365nm換算)となるようバックグラインドテープの基材側から照射し、次いで、23℃、50%RH雰囲気下、引張速度300mm/分の条件で180°剥離試験を行い測定した値をいう。
【0058】
E.バックグラインドテープの製造方法
バックグラインドテープは、任意の適切な方法により製造され得る。1つの実施形態において、バックグラインドテープは、例えば、基材上に、中間層を形成した後、該中間層上に粘着剤層を形成することにより作製され得る。粘着剤層および中間層は、上記粘着剤層を形成する組成物、および、上記中間層を形成する組成物を、基材または中間層に塗工して各層を形成してもよく、任意の適切なはく離ライナー上に各層を形成した後、転写してもよい。塗工方法としては、バーコーター塗工、エアナイフ塗工、グラビア塗工、グラビアリバース塗工、リバースロール塗工、リップ塗工、ダイ塗工、ディップ塗工、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷など種々の方法を採用することができる。また、別途、はく離ライナーに粘着剤層、または、中間層を形成した後、それを基材に貼り合わせる方法等を採用してもよい。
【0059】
F.バックグラインドテープの用途
本発明の実施形態のバックグラインドテープは、半導体素子製造工程のバックグラインド工程において好適に用いることができる。バックグラインドテープには、背面研削時にはシリコンウエハを適切に保持し、剥離時には研削されたウエハを破損することなく剥離可能な軽剥離性が要求される。本発明の実施形態のバックグラインドテープは、優れた凹凸埋め込み性とカット性とを両立し得る。したがって、本発明の実施形態のバックグラインドテープは、半導体素子の加工工程に好適に用いることができる。
【0060】
1つの実施形態において、バンプの高さ(μm)と、粘着剤層の厚み(μm)と中間層厚み(μm)との合計が、バンプの高さ(μm)<粘着剤層の厚み(μm)+中間層の厚み(μm)の関係を満たすことが好ましい。また、バンプの高さ(μm)と、中間層の厚み(μm)とが、バンプの高さ(μm)<中間層の厚み(μm)の関係を満たす。このような関係を満たしていれば、より凹凸の埋め込み性に優れたバックグラインドテープが得られ得る。
【実施例0061】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。また、実施例において、特に明記しない限り、「部」および「%」は重量基準である。
【0062】
[実施例1]
1.中間層形成組成物の調製
モノマー成分として、アクリル酸ブチル(BA)73.7重量%と、メタクリル酸メチル(MMA)19.2重量%と、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)(東亜合成社製、商品名:アクリックス(登録商標)HEA)7.1重量%と、をそれぞれ用いた。モノマー成分の総重量に対して0.3重量%の重合開始剤(東京化成工業社製、商品名:2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN))と、溶媒(酢酸エチル)とを混合してモノマー組成物(固形分濃度:40%)を調製した。得られたモノマー組成物を、1L丸底セパラブルフラスコに、セパラブルカバー、分液ロート、温度計、窒素導入管、リービッヒ冷却器、バキュームシール、撹拌棒、撹拌羽が装備された重合用実験装置に投入し、撹拌しながら、常温で2時間、窒素置換した。その後、窒素を流入下、撹拌しながら、65℃下で6時間保持して溶液重合し、樹脂溶液(固形分40重量%)を得た。
得られた樹脂溶液の固形分100重量部に対し、ポリイソシアネート化合物(東ソー株式会社製、商品名「コロネートL」)0.1重量部、光重合開始剤(IGM Resins社製、商品名:Omnirad 127D)1重量部を混合し、酢酸エチルを含む中間層形成組成物(固形分23%)を調製した。
【0063】
2.粘着剤組成物の調製
モノマー成分として、アクリル酸ブチル(BA)76.8重量%と、メタクリル酸メチル(MMA)7.5重量%と、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(東亜合成社製、商品名:アクリックス(登録商標)HEA8.7重量%と、をそれぞれ用いた。モノマー成分の総重量に対して0.3重量%の重合開始剤(東京化成工業社製、商品名:2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN))と、溶媒(酢酸エチル)とを混合してモノマー組成物(固形分濃度:37.5%)を調製した。得られたモノマー組成物を、1L丸底セパラブルフラスコに、セパラブルカバー、分液ロート、温度計、窒素導入管、リービッヒ冷却器、バキュームシール、撹拌棒、撹拌羽が装備された重合用実験装置に投入し、撹拌しながら、常温で2時間、窒素置換した。その後、窒素を流入下、撹拌しながら、65℃下で6時間保持して溶液重合し、樹脂溶液を得た。その後、78℃下で2時間保持して熟成させた。
得られた樹脂溶液に空気が十分に入るように攪拌し、放射線重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物(昭和電工社製、商品名「カレンズMOI」)7.0重量%を加えた。さらに、ジラウリン酸ジブチルスズIV(和光純薬工業社製)を放射線重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物の重量に対して0.05重量%添加し、適宜溶媒(酢酸エチル)を添加し、固形分濃度が25%となるよう調整し攪拌した。その後、50℃で24時間保管し、ポリマー溶液(固形分:25%)を得た。
得られたポリマー溶液の固形分100重量部に対し、ポリイソシアネート化合物(東ソー株式会社製、商品名「コロネートL」)0.75重量部、光重合開始剤(IGM Resins社製、商品名「Omnirad 127D」)1重量部、および、多官能アクリレート(東亞合成社製、商品名「アロニックス(登録商標)M-321」)40重量部を混合し、酢酸エチルを含む粘着剤組成物(固形分15%)を調製した。
【0064】
3.テープの作製
1.で得られた中間層形成組成物を、厚み38μmのポリエステル系はく離ライナー(三菱ケミカル社製、商品名「ダイアホイル(登録商標)」)のシリコーン処理を施した面に塗布し、120℃で120秒間加熱して脱溶媒し、厚み100μmの中間層を形成した。次いで、中間層表面に、基材として厚み50μmのPETフィルム(東レ社製、商品名「ルミラー(登録商標)」)を貼り合わせた。
別途、2.で得られた粘着剤組成物を、厚み75μmのポリエステル系はく離ライナーのシリコーン処理面に塗布し、120℃で120秒間加熱して脱溶媒し、厚み20μmの粘着剤層を形成した。
次いで、中間層からはく離ライナーを剥離し、中間層のはく離ライナーを剥離した面に粘着剤層を貼り合わせて転写し、50℃にて72時間保存し、基材/中間層/粘着剤層をこの順に備える粘着テープ(バックグラインドテープ)を得た。
【0065】
[実施例2~4]
各モノマー組成、中間層形成組成物の組成、および、粘着剤層形成組成物の組成を表1のように変更した以外は実施例1と同様にして粘着テープ(バックグラインドテープ)を得た。
【0066】
[実施例5]
モノマー成分として、アクリル酸ブチル(BA)64重量%と、メタクリル酸メチル(MMA)33重量%と、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)(東亜合成社製、商品名:アクリックス(登録商標)HEA)3重量%と、をそれぞれ用いた。モノマー成分および乳化剤(第一工業製薬社製、商品名「アクアロンKH-1025」)の10重量%水溶液、水をガラス瓶に投入し、窒素バブリングを5分間おこなった。次いで、ホモディスパーで6000rpmの条件で5分間攪拌し、乳化モノマーを得た。冷却管を設置したセパラブルフラスコに乳化剤(第一工業製薬社製、商品名「アクアロンKH-1025」)の10重量%水溶液を投入し、攪拌しながら窒素置換を1時間行った。その後、70℃で20分間保持した。次いで、アゾ重合開始剤(富士フィルム製、商品名「VA-057」)の5%水溶液を0.02重量部投入し、すぐに乳化モノマーを3時間かけて滴下した。滴下終了後は70℃で3時間で熟成を行った。次いで、塩析を行い、塩析後の溶液をろ過し、ろ過物を乾燥し、ポリマーを得た。このポリマーを酢酸エチルに溶解させ、固形量35重量%のポリマー溶液を得た。
得られたポリマー溶液の固形分100重量部に対し、ポリイソシアネート化合物(商品名「コロネートL」、東ソー株式会社製)0.1重量部、光重合開始剤(IGM Resins社製、商品名:Omnirad 127D)1重量部を混合し、酢酸エチルを含む中間層形成組成物を調製した。
上記で得られた中間層形成組成物を用いたこと、ならびに、粘着剤組成物のベースポリマーのモノマー組成、中間層形成組成物の組成、および、粘着剤層形成組成物の組成を表1のように変更した以外は実施例1と同様にして粘着テープ(バックグラインドテープ)を得た。
【0067】
[実施例6~8]
各モノマー組成、中間層形成組成物の組成、および、粘着剤層形成組成物の組成を表1のように変更した以外は実施例1と同様にして粘着テープ(バックグラインドテープ)を得た。
【0068】
(比較例1~4)
各モノマー組成、中間層形成組成物の組成、および、粘着剤層形成組成物の組成を表1のように変更した以外は実施例1と同様にして粘着テープ(バックグラインドテープ)を得た。
【0069】
【0070】
<評価>
実施例および比較例で得られた粘着テープを用いて以下の評価を行った。結果を表2に示す。
1.中間層のナノインデンター測定
実施例および比較例で得られた粘着テープを切り出し凍結条件下ウルトラミクロトームにて、測定用試料を作製した。具体的には、粘着テープを液体窒素雰囲気下で急速凍結し、ウルトラミクロトーム(大和光機工業株式会社製、凍結ミクロトーム)を用いて、-30℃の凍結雰囲気下にて厚み方向に切削し、断面を作製した。断面作製後、試料は2時間以上、室温で放置し、ナノインデンター測定を行った。測定にはHysitron Inc.製のナノインデンター(製品名:Triboindenter)を用いた。圧子として、バーコビッチ圧子(三角錐、圧子の内角:142.35°、中心線と面のなす角度は65.35°、圧子のアスペクト比:1:8)を使用した。測定は25℃の条件で、単一押し込み測定にて行った。バックグラインドテープは
図2に図示するように支持体で固定した。具体的には、バックグラインドテープの基材側の面と支持体(真鍮台)とを両面テープ(Nitto社製、商品名「No.5605」、粘着剤層の厚み:0.05mm)で貼り合わせた。貼り合わせの際、真鍮台の一方の端部とバックグラインドテープの一方の端部とが面一となるよう貼り合わせた。図示例のとおり、面一とした側と圧子とが対応するよう置き、バックグライドテープの側面(上記で作製した断面側)の中間層の略中央部に、バーコビッチ圧子を接触させ、測定を行った。圧子の押し込み、および、引き抜きは速度500nm/秒で実施した。中間層に押し込み深さ3000nmまで6秒かけて圧子を押し込み、保持時間は0秒とした。次いで、押し込みと同じ速度で圧子を中間層から引き抜き、中間層から圧子が引き抜けるまでの時間を測定した。最大荷重Pmax(μN)と最大深さ時の接触投影面積A(μm
2)の値から、硬さ(ナノインデンテーション硬さ)(MPa)をPmax/Aにより、算出した。
また、上記測定時の荷重と押し込み深さとから、荷重変位曲線を作成した。荷重変位曲線の除荷曲線から、変位がマイナスとなった距離(すなわち、変位0nmとなった時点から除荷曲線において荷重が0となった時点までの変位量)を測定し、除荷曲線変位量(μm)とした。除荷曲線変位量が8000μm以下であれば、カット性が良好であり得る。
なお、3つの試料を用いて測定を行い、平均値を、ナノインデンテーション硬さ、および、除荷曲線変位量とした。
【0071】
2.粘着剤層のナノインデンター測定
実施例および比較例で得られた粘着テープを縦約1cm、横約1cmに切り出し、測定試料とした。はく離ライナーを剥離し、粘着剤層の硬さ、および、除荷曲線変位量を測定した。測定にはHysitron Inc.製のナノインデンター(製品名:Triboindenter)を用いた。バーコビッチ圧子(三角錐、圧子の内角:142.35°、中心線と面のなす角度は65.35°、圧子のアスペクト比:1:8)測定は25℃の条件で、単一押し込み測定にて行った。
図3に図示するとおり、測定試料の粘着剤層の略中央部に、圧子を接触させて測定を行った。圧子の押し込み、および、引き抜きは速度500nm/秒で実施した。粘着剤層に押し込み深さ2000nmまで4秒かけて圧子を押しこみ、保持時間は0秒とした。次いで、押し込みと同じ速度で圧子を粘着剤層から引き抜き、粘着剤層から圧子が引き抜けるまでの時間を測定した。最大荷重Pmax(μN)と最大深さ時の接触投影面積A(μm
2)の値から、硬さ(ナノインデンテーション硬さ)(MPa)をPmax/Aにより、算出した。粘着剤層の厚みが20μm未満である粘着テープについては、粘着剤層の厚みを20μmとした評価用粘着テープを作製し、上記の方法で評価した。
また、上記測定時の荷重と押し込み深さとから、荷重変位曲線を作成した。荷重変位曲線の除荷曲線から、変位がマイナスとなった距離(すなわち、変位0nmとなった時点から除荷曲線において荷重が0となった時点までの変位量)を測定し、除荷曲線変位量(μm)とした。除荷曲線変位量が8000μm以下であれば、カット性が良好であり得る。
なお、3つの試料を用いて測定を行い、平均値を、ナノインデンテーション硬さ、および、除荷曲線変位量とした。
【0072】
3.埋め込み性
実施例および比較例で得られた粘着テープを230cm×400cmに切断した。切断した粘着テープを、テープ貼付装置(日東精機社製、製品名:DR-3000III)を用いてウエハ(8インチ、バンプ高さ75μm、直径90μm、ピッチ200μm)に貼り付けた。貼り付けは以下の条件で行った。
ローラー圧力:0.40MPa
ローラー速度:5mm/秒
テーブル温度:80℃
貼り付け後、レーザー顕微鏡(倍率:100倍)で粘着シートおよびウエハの貼り付け状態を観察した。
また、粘着テープおよびウエハを、粘着テープを上にした状態で粘着テープ側から撮像し、画像解析ソフト(Image J(フリーソフト))を用いて画像の二値化(8ビットグレースケール、輝度:0~255、閾値:114)を行った。その後、ウエハからバンプを任意に5つ選択し、1つのバンプの表示に使用されるドット数を計測した。テープを貼り付けていない状態のバンプのみの画像は220ドットであり、粘着テープを貼り合わせた状態で測定したドット数が220に近いほど埋め込み性が良好であることを示す。なお、バンプを有する半導体ウエハに粘着テープを貼り合わせる場合、ドット数は通常820程度となる。任意の5つのバンプの平均ドット数が830以下であるものを〇(良好)、平均ドット数が830を超えるものを×(不良)として評価した。
【0073】
4.糸曳き
実施例および比較例で得られた粘着テープを230cm×400cmに切断した。切断した粘着テープを、テープ貼付装置(日東精機社製、製品名:DR-3000III)を用いて8インチシリコンミラーウエハに貼り付け、次いでウエハの形状に合わせてウエハに貼り合わせた粘着テープを切断した。切断には、テープ貼付装置DR-3000III専用のカッター刃を用い、測定毎に新品のカッター刃を使用した。貼り付けは以下の条件で行った。
ローラー圧力:0.27MPa
ローラー速度:20mm/秒
テーブル温度:23℃
カッター速度:200mm/秒
カッター温度:180℃
切断後の粘着テープとウエハとの積層体を、デジタルマイクロスコープでウエハを側面から観察し、中間層の糸曳きがないものを無、有るものを有として評価した。中間層の糸曳きはない方が好ましい。
【0074】
【0075】
本発明の実施例の粘着テープは、表面に凹凸を有する半導体ウエハの表面の表面埋め込み性に優れるものであった。また、糸曳きも抑制されており、剥離時のウエハの破損を抑制し得るものであった。