(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015468
(43)【公開日】2024-02-02
(54)【発明の名称】キトサン由来のスポンジ、キトサン由来のシート及びそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/28 20060101AFI20240126BHJP
C08J 9/36 20060101ALI20240126BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
C08J9/28 101
C08J9/36 CEP
C08J5/18
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117617
(22)【出願日】2022-07-23
(71)【出願人】
【識別番号】391003130
【氏名又は名称】甲陽ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(72)【発明者】
【氏名】黒住 誠司
(72)【発明者】
【氏名】山本 正次
【テーマコード(参考)】
4F071
4F074
【Fターム(参考)】
4F071AA08
4F071AA78
4F071AC09
4F071AE08
4F071AF10Y
4F071AF15Y
4F071AG28
4F071AH19
4F071BA02
4F071BB02
4F071BB03
4F071BC01
4F071BC12
4F074AA01
4F074AD09
4F074AG12
4F074AH03
4F074CB33
4F074CB47
4F074CC03Z
4F074CC04Z
4F074CC05X
4F074CC28Y
4F074CD04
4F074DA02
4F074DA03
4F074DA08
4F074DA24
4F074DA45
4F074DA53
(57)【要約】
【課題】非晶質キチンに比べコストメリットがあるキトサンを主成分とするキトサン由来のスポンジ及びキトサン由来のシート、特に、吸水速度が速く、吸水後に破断強度を維持しているキトサン由来のスポンジ及びキトサン由来のシート並びにそれらの製造方法を提供することである。
【解決手段】キトサン由来のスポンジ及びキトサン由来のシートの製造工程において、キトサン懸濁液に添加する有機溶媒の種類の最適化及び凍結乾燥後の熱処理条件の改良により、大量生産が容易に可能であり、吸水速度が速く、吸水後に溶解またはボロボロ状に分解せず、破断強度を維持しているキトサン由来のスポンジ及びシートの開発に成功し、本発明を完成した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含むキトサンを主成分とするスポンジの製造方法;
(1)脱アセチル化度が70~100%のキトサンを懸濁させる工程、
(2)該キトサンのアミノ基の1モルに対し0.7以上モルの酢酸を上記(1)の懸濁液に添加する工程、
(3)上記(2)の溶液から得られるろ液からシャーベット凍結氷を得る工程、
(4)上記(3)のシャーベット凍結氷に凍結乾燥を行い、凍結乾燥処理品を得る工程、及び、
(5)上記(4)の凍結乾燥処理品に80~100℃で18~48時間の加熱処理を行い、加熱処理品を得る工程。
【請求項2】
前記(5)の加熱処理により、溶出酢酸量を9%以下にすることを特徴とする請求項1のキトサンを主成分とするスポンジの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2の製造方法で得られるキトサンを主成分とするスポンジ。
【請求項4】
以下の特性を有する、請求項3に記載のスポンジ。
(1)吸水量(g/g):20~120
(2)破断強度(N):5~100
(3)吸水時間(sec):30以下
【請求項5】
以下の工程を含むキトサンを主成分とするシートの製造方法;
(1)脱アセチル化度が70~100%のキトサンを懸濁させる工程、
(2)該キトサンのアミノ基の1モルに対し0.7以上モルの酢酸を上記(1)の懸濁液に添加する工程、
(3)上記(2)の溶液から得られるろ液からシャーベット凍結氷を得る工程、
(4)上記(3)のシャーベット凍結氷に凍結乾燥を行い、凍結乾燥処理品を得る工程、
(5)上記(4)の凍結乾燥処理品に80~100℃で18~48時間の加熱処理を行い、加熱処理品を得る工程、及び、
(6)プレス工程。
【請求項6】
前記(5)の加熱処理により、溶出酢酸量を9%以下にすることを特徴とする請求項5のキトサンを主成分とするシートの製造方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の製造方法で得られるキトサンを主成分とするシート。
【請求項8】
以下の特性を有する、請求項7に記載のシート。
(1)吸水量(g/g):20~120
(2)破断強度(N):5~100
(3)吸水時間(sec):30以下
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キトサン由来のスポンジ、キトサン由来のシート及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(キトサン)
キトサンは、化粧品分野、医療分野、食品分野などで広く使用され、天然の素材として、コラーゲン材料等と同様に好ましく使用されている。
【0003】
キチン、キトサンを医療用バンドとして使用することは20年以上前から試みられ、その有機酸塩も公開されている(特許文献1)。また、キトサンをスポンジ状にする試みもされている(特許文献2)。そして、キチン又はキチン誘導体の有機酸塩の商品化の試みもおこなわれた(特許文献3)(特許文献4)(特許文献5)。
【0004】
本発明者らは、キトサン自体の改良を行いその脱アセチル化度を調整しさらに非晶質とした新規な止血材(特許文献6)(特許文献7)、キトサンスポンジの改良製剤(特許文献8)(特許文献9)、キチン由来のスポンジ状止血材(特許文献10)及び非晶質の部分脱アセチル化キチン塩を主成分とするスポンジ状止血材(特許文献11)を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60-142927公報
【特許文献2】特開昭63-90507号公報
【特許文献3】特開平9-169654号公報
【特許文献4】特開2003-26578号公報
【特許文献5】特表2005-503197号公報
【特許文献6】特開平11-5803号公報
【特許文献7】特開平11-276189号公報
【特許文献8】特開2003-292501号公報
【特許文献9】特開2004-256784号公報
【特許文献10】特開2008-220388号公報
【特許文献11】WO2011/099087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非晶質キチンは、非晶質化の工程が非常に煩雑でキチン、キトサンに比べコストが高い。
そこで、非晶質キチンに比べコストメリットがあるキトサンを主成分とするキトサン由来のスポンジ及びキトサン由来のシート、特に、吸水速度が速く、吸水後に破断強度を維持しているキトサン由来のスポンジ及びキトサン由来のシート並びにそれらの製造方法を提供することを解決すべき課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、キトサン由来のスポンジ及びキトサン由来のシートの製造工程において、キトサン懸濁液に添加する有機溶媒の種類の最適化及び凍結乾燥後の熱処理条件の改良により、大量生産が容易に可能であり、吸水速度が速く、吸水後に溶解またはボロボロ状に分解せず、破断強度を維持しているキトサン由来のスポンジ及びキトサン由来のシートの開発に成功し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は以下の通りである。
1.以下の工程を含むキトサンを主成分とするスポンジの製造方法;
(1)脱アセチル化度が70~100%のキトサンを懸濁させる工程、
(2)該キトサンのアミノ基の1モルに対し0.7以上モルの酢酸を上記(1)の懸濁液に添加する工程、
(3)上記(2)の溶液から得られるろ液からシャーベット凍結氷を得る工程、
(4)上記(3)のシャーベット凍結氷に凍結乾燥を行い、凍結乾燥処理品を得る工程、及び、
(5)上記(4)の凍結乾燥処理品に80~100℃で18~48時間の加熱処理を行い、加熱処理品を得る工程。
2.前記(5)の加熱処理により、溶出酢酸量を9%以下にすることを特徴とする前項1のキトサンを主成分とするスポンジの製造方法。
3.前項1又は2の製造方法で得られるキトサンを主成分とするスポンジ。
4.以下の特性を有する、前項3に記載のスポンジ。
(1)吸水量(g/g):20~120
(2)破断強度(N):5~100
(3)吸水時間(sec):30以下
5.以下の工程を含むキトサンを主成分とするシートの製造方法;
(1)脱アセチル化度が70~100%のキトサンを懸濁させる工程、
(2)該キトサンのアミノ基の1モルに対し0.7以上モルの酢酸を上記(1)の懸濁液に添加する工程、
(3)上記(2)の溶液から得られるろ液からシャーベット凍結氷を得る工程、
(4)上記(3)のシャーベット凍結氷に凍結乾燥を行い、凍結乾燥処理品を得る工程、
(5)上記(4)の凍結乾燥処理品に80~100℃で18~48時間の加熱処理を行い、加熱処理品を得る工程、及び、
(6)プレス工程。
6.前記(5)の加熱処理により、溶出酢酸量を9%以下にすることを特徴とする前項5のキトサンを主成分とするシートの製造方法。
7.前項5又は6に記載の製造方法で得られるキトサンを主成分とするシート。
8.以下の特性を有する、前項7に記載のシート。
(1)吸水量(g/g):20~120
(2)破断強度(N):5~100
(3)吸水時間(sec):30以下
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によって得られるキトサンを主成分とするスポンジ及びキトサンを主成分とするシートは、吸水速度が速く、吸水後に溶解またはボロボロ状に分解せず、破断強度を維持している。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のキトサンスポンジ及びキトサンシートの製造例
【
図2】キトサンスポンジ(FD直後,プレス加工前)の分析値
【
図7】キトサンシート及びキトサンスポンジの細孔分布測定結果(細孔体積:測定時の最大圧力までに水銀が圧入された細孔容積の積算値をサンプル重量で割った値を意味する、細孔表面積:細孔形状が幾何学的な円筒であると仮定した全細孔の比表面積で、測定範囲内における圧力と圧入された水銀量の関係から計算した、メディアン径:積算細孔分布において、曲線の Y 軸(細孔容積または細孔比表面積)の最小値と最大値の中間に相当する X 軸(細孔径)の値を意味する、モード径:微分細孔分布において、微分値が最大となる所の細孔径を意味する、気孔率:試料の(細孔を含む)容積に対する細孔容積の割合を%で表す)
【
図8】キトサンシート及びキトサンスポンジの細孔分布測定結果
【0011】
(本発明の対象)
本発明は、キトサンを主成分とするスポンジ(以後、「本発明のスポンジ」と称する場合がある)、キトサンを主成分とするシート(以後、「本発明のシート」と称する場合がある)、キトサンを主成分とするスポンジの製造方法(以後、「本発明のスポンジの製造方法」と称する場合がある)、並びに、キトサンを主成分とするシートの製造方法(以後、「本発明のシートの製造方法」と称する場合がある)に関する。
【0012】
(キトサン)
本発明のスポンジ及び本発明のシートの製造方法で使用する「キトサン」は、キチンの脱アセチル化物と定義され、脱アセチル化度(DAC度ともいう)70~100%であり、かつ水に不溶である。
本発明で使用する「キトサン」の分子量は、一般的には、重量平均分子量(標準品にプルランを用いGPC分子量測定により算出)が1万~400万程度のものが使用され、好ましくは5万~300万、より好ましくは10万~200万である。
本発明で使用する「キトサン」の粘度は、20℃において0.5%W/W溶液粘度が1~400 mPa・s、より好ましくは5~350 mPa・s、さらに好ましくは10~300 mPa・sである。
【0013】
(キトサンの製造方法)
本発明で使用する「キトサン」の製造方法は、自体公知のキトサンを使用することができる。例えば、 脱アチル化率(DAC度)が 50~100%程度のものが使用され、好ましくは70~100%である。また、重量平均分子量(標準品にプルランを用いGPC分子量測定により算出)が1万~400万程度のものが使用され、好ましくは5万~300万、より好ましくは10万~200万 である。
粘度は、20℃において0.5%W/W溶液粘度が1~ 400 mPa・s、より好ましく5~350 mPa・s、さらに好ましくは10~300 mPa・sである。
なお、キチンをアルカリで脱アセチル化反応させキトサンを製造した後における脱アルカリの方法は、酸の添加による中和後、水洗浄・脱水、脱塩装置による脱塩、又は、酸中和なしに水洗浄・脱水、アルコール類洗浄・脱水、イオン交換樹脂等によるアルカリ除去等がある。
【0014】
本発明のキトサンスポンジ及びキトサンシートの製造例を以下に示す(参照:
図1)。
(1)脱アセチル化度が70~100%のキトサンを懸濁させる工程
本工程では、脱アセチル化度が70~100%のキトサンを0.1~5.0%W/Wの溶媒(例えば、水、純粋等)に添加して、懸濁する。なお、懸濁方法は、自体公知の攪拌を例示することができる。
キトサンを含有する懸濁液のキトサンの濃度は、0.1~5.0%W/Wで、特に0.5~3.0%W/Wが好ましく使用される。
加えて、本工程では、以下の(2)工程と同時に行っても良い。
【0015】
(2)酢酸をキトサンのアミノ基の1モルに対し0.7以上モルを上記(1)の懸濁液に添加する工程
酢酸の添加量は、キトサンのアミノ基1モルに対し酢酸0.7以上モル(好ましくは、1.0以上~1.5以下)を添加する。
酢酸添加量の計算式は、以下を例示することができる。
酢酸添加量(g)=キトサン量(g)/キトサン単糖分子量(161)×酢酸分子量(60)
酢酸添加量(%)=酢酸添加量(g)/溶液重量(g)×100
酢酸の濃度は、0.03~4.0%W/Wで、特に0.05~2.5%W/Wが好ましく使用される。
好ましくは、酢酸添加後懸濁液のキトサンがほぼ完全に溶解するまで撹拌する。撹拌する方法は、自体公知の方法を使用することができるが、例えば、自体公知の撹拌機で撹拌することを例示することができる。
【0016】
好ましくは、エタノールを上記(2)の溶液に添加する工程を含んでもよい。
本工程では、全溶液重量の0.01~1.0%のエタノール(99%)を上記(2)の溶液に添加する。
上記添加後において、必要に応じて、ステンレスメッシュ(例:60メッシュ)でろ過を行う。
【0017】
(3)上記(2)の溶液(特に、上記(2)から得られるろ液、エタノール添加後のろ液)からシャーベット凍結氷を得る工程
上記の(2)の溶液を「シャーベット凍結工程」に供することによりシャーベット状凍結氷を作製する。ここで、本発明の「シャーベット凍結工程」とは、従来のように急速冷凍、又は、徐々に凍結させて凍結氷を製造するのではなく、一度、凍結させた凍結氷を粉砕し、型枠に充填し、再度、凍結する事でシャーベット状凍結氷が得られる。
また、上記(2)の溶液をドライアイスと共に粉砕するとシャーベット状になり、同様に型枠に充填し、再度、凍結する事でシャーベット状凍結氷が得られる。詳しい製造方法は以下の通りである。
上記(2)の溶液の約1000gに対しドライアイスを500g~700g程度加え、ブレンダー等で粉砕し、シャーベット状にする。シャーベット温度は-5℃~+5℃に調整する。なお、本発明のスポンジ状止血材の製造において、上記のようなシャーベット状にすることができれば、特に凍結方法は限定されない。
加えて、シャーベット温度が低ければ。ブレンダーを動かし続け、シャーベット温度を0℃付近にする。
【0018】
上記シャーベット状のキトサンを、必要に応じて、出来上がりのスポンジ又はシートの厚みを想定したトレーなどの容器に流し込み、好ましくは-10~-50℃、より好ましくは-20~-40℃、最も好ましくは約-30℃で冷凍して凍結させる。
なお、上記シャーベット凍結氷であるキトサンは、凍結させておけば何十日でも保存が可能である。必要な時に凍結氷を次工程である凍結真空乾燥処理に付せば良い。
【0019】
(4)上記(3)のシャーベット凍結氷に凍結乾燥を行い、凍結乾燥処理品を得る工程
上記凍結させたキトサンに凍結真空乾燥処理を行う。なお、自体公知の凍結真空乾燥機を用いて行うことができる。例えば、真空条件下で-30℃~50℃で昇温させる条件で凍結真空乾燥処理を行うことができる。
【0020】
(5)上記(4)の凍結乾燥処理品に80~100℃で18~48時間の加熱処理を行い、加熱処理品を得る工程
本工程は、下記実施例より、好ましくは真空乾燥機(真空乾燥状態下)を用いて80~100℃、好ましくは約85~95℃において、18~48時間の加熱処理を行う。
本工程により、キトサンを主成分とするスポンジが製造される。
【0021】
(6)プレス工程
本工程は、本発明のスポンジに自体公知のプレスを行うことにより、本発明のキトサンシートを得る。プレスは、自体公知の方法を使用することができる。
例えば、本発明のスポンジをプレス加工により、厚さ0.05~3mmの本発明のキトサンシートを製造する。
【0022】
(γ線滅菌処理)
本発明のスポンジ及びシートは、製造工程において、酢酸が添加されているので、下記の実施例から明らかなように、抗菌性を有する。
しかし、本発明のスポンジ及びシートを手術等に使用する場合、滅菌処理されていることが必要である。よって、本発明のスポンジ及びシートは、好ましくは、γ線滅菌処理をする。例えば、25kGy、好ましくは50kGyのγ線を本発明のスポンジ及びシートに照射する。
なお、下記実施例に示すように、本発明の止血材は、50kGyのγ線照射後でも必要な破断強度(2N以上)を有している。
【0023】
(スポンジ及びシートの各特性の測定方法)
本発明のスポンジ及びシートの各特性の測定方法は以下の通りである。なお、以下の実施例でも使用した。
【0024】
〇脱アセチル化度
脱アセチル化度は、キトサン試料を0.5%(w/w)酢酸溶液に0.5%(w/w)になるように溶解し、指示薬としてトルイジンブルー溶液を用い、ポリビニル硫酸カリウム水溶液でコロイド滴定して乾物当たりのDAC度から算出した。
【0025】
〇粘土
粘度は、キトサン試料を0.5%(w/w)酢酸溶液に0.5%(w/w)になるように溶解し、室温で時間撹拌し、さらにホモジナイザーで2分間撹拌する。この撹拌後溶液を恒温槽中で20℃に保ちながらB型粘度計で回転粘度(mPa・s)を測定した数値である。
【0026】
〇吸水量
吸水量の測定における吸水は、試料の重量(A)を測定した後、十分な純水を含む容器試料を5分間浸漬する。次いで試料をザルに引揚げ、5分間水切りし、試料の重量(B)を測定する。吸水量は、(B-A)/Aで表す。
より詳しくは、約0.1gを秤量し(A)、5分間純水中に浸漬し、ザルに引揚げ、5分間水切りし秤量し(B)、以下式で得た。
吸水量=(B-A)/A
【0027】
〇吸水時間
JISL1907 滴下法を使用することができる。例えば、検体に20℃ 純水を1滴滴下し、完全に吸水する時間を測定する。
【0028】
〇乾燥減量
乾燥減量は、検体約0.1gを秤量し(A,最小目盛0.001g以下)、 110℃で1時間、 熱風乾燥し、デシケーターで1時間放冷後、秤量する(B)。水分量(%)=(B-A)/Aで算出する。
【0029】
〇破断強度
破断強度(吸水後の破断強度)は、試料を20mm角にカットし、純水中に5分間浸漬した後、ザルに引揚げ、5分間水切りする。専用の容器(直径φ40mm、高さh15mm)にセットし、クリープメーター(山電製 RHEONERII)を用い、測定速度1mm/sec、接触直径20mm、測定 歪率99.99%、格納ピッチ0.04secの測定条件で押し潰しによる破断強度を測定する。
【0030】
〇溶出酢酸濃度の測定
溶出酢酸濃度測定において、酢酸の測定は、細かく刻んだスポンジ約50mgを秤量し、超純水を加え、スターラーで一晩 撹拌した後、超純水で50mlにメスアップした。0.45μmフィルターでろ過を行い、サンプル溶液とする。HPLC(有機酸酸分析システム,島津製作所製)を用いて、ポストカラムpH緩衝化電気伝導度検出法で溶出酢酸を、以下の条件で測定する。なお、酢酸のリテンションタイムは26.1分前後であり、酢酸標準溶液及びサンプル溶液をそれぞれ測定し、標準溶液とサンプル溶液のピークの面積値の比からサンプルの酢酸濃度を算出する。
[分析条件]
装置:カルボン酸分析計(島津製作所製)
<分離条件 >
カラム : Shim Pak SCR 102H 2本連結
移動相 : 5mM p-トルエンスルホン酸水溶液
移動相流速:0.8ml/min
温 度 : 40℃
<検出条件 >
緩衝液 : 5mM p-トルエンスルホン酸水溶液
100μMEDTAを含む20mM Bis-tris水溶液
緩衝液流速:0.8ml/min
検出器 : CDD-6A 電気伝導度検出器
注入量 : 10μL
【0031】
(溶出酢酸/アミノ基のモル比)
溶出酢酸/アミノ基のモル比は、以下の計算式から算出できる。
脱アセチル化度100%未満キトサンモノマー分子量=脱アセチル化度100%キトサンモノマー分子量(161)×脱アセチル化度(%)/100+キチンモノマー分子量(203)×(100-脱アセチル化度)/100
例)脱アセチル化度85%キトサンモノマー分子量=161×85/100+203(100-85)/100=167.3
溶出酢酸イオン/アミノ基モル比={キトサン10g×溶出酢酸(%)/100)/60}/{(キトサン10g-10g×溶出酢酸(%)/100)/167.3(脱アセチル化度85%キトサンモノマー分子量)}
【0032】
(本発明のキトサンスポンジ)
本発明のキトサンスポンジは、本実施例により、以下の特性を有する。
体積当たり重量(mg/cm3):3~30、好ましくは5~20
pH:4~6
溶出酢酸(%):15以下、12以下、10以下
溶出酢酸/アミノ基モル比:0.3未満
吸水時間(sec):30以下、25以下、20以下
吸水量(g/g):20~120、好ましくは20~100
破断強度(N):2~100、好ましくは3~80、より好ましくは5~70
細孔体積(mL/g):15~45
細孔表面積(m2/g):0.5~2.0
メディアン径(μm):10~400
モード径(μm):10~400
気孔率(%):75~95
【0033】
(本発明のキトサンシート)
本発明のキトサンシートは、本実施例により、以下の特性を有する。
体積当たり重量(mg/cm3):30~600、好ましくは50~400
pH:4~6
溶出酢酸(%):15以下、12以下、10以下
溶出酢酸/アミノ基モル比:0.3未満
吸水時間(sec):30以下、25以下、20以下
吸水量(g/g):20~120、好ましくは20~100
破断強度(N):5~100、好ましくは6~80、より好ましくは7~70
細孔体積(mL/g):1~12
細孔表面積(m2/g):0.5~2.0
メディアン径(μm):10~100
モード径(μm):10~100
気孔率(%):80~99
【0034】
(キトサンスポンジ及びキトサンシートの用途)
本発明のキトサンスポンジ及びキトサンシートの用途は特に限定できないが、天然由来の素材であり、かつ破断強度・吸水量を考慮して、止血材、創傷被覆保護材、化粧品(化粧品パッド)、培養基材(細胞培養基材)、食品基材(培養肉、培養エビ、カニ、魚肉等の基材)、3次元担体(生体材料、骨、インプラント)、等を例示することができる。
【0035】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例によ
り限定されるものではない。
【実施例0036】
(キトサンスポンジ及びキトサンシートの製造(Lot.No.200518))
(1)原料であるキトサン(Lot.No.190427S1(脱アセチル化度=83.7%):甲陽ケミカル社製品)300g(1%)を使用した。
上記原料に純水29.59kgを添加して、キトサン懸濁液を得た。
(2)上記キトサン懸濁液に酢酸(関東化学製 特級)112g{酢酸添加量=キトサン量(300g)/キトサンモノマー分子量(161) ×酢酸分子量(60)=112g}を添加した。
さらに、酢酸添加後のキトサン懸濁液を一晩撹拌して、キトサンがほぼ完全に溶解するまで撹拌して、キトサン溶液を得た。
加えて、上記キトサン溶液に0.5w/w%のエタノールを添加した。
エタノール添加後のキトサン溶液をステンレスメッシュ(60メッシュ)でろ過して、ろ液を得た。ろ液は、1.0w/w%キトサン/0.37w/w%酢酸溶液であった。
(3)前記ろ液 約1000gにドライアイスを500g添加しブレンダーで粉砕し、シャーベット状にした。シャーベット温度は-5℃~+5℃に調製した。シャーベット状のキトサンをトレイに充填した。
(4)上記凍結させたシャーベット状のキトサンに凍結真空乾燥処理(-30℃ 冷凍庫中 5時間保存)を行った(B220209FNP、B220224FNP、B220302FNP)。
(5)上記凍結乾燥処理品に以下の条件で加熱処理を行って、キトサンスポンジを得た。
B200518NP:90℃24h、92℃ 24h、95℃ 24h、100℃ 24h
(6)上記キトサンスポンジをプレス加工して、キトサンシートを得た。
B200518:90℃24h
B220323:90℃24h、85℃ 24h、90℃24h
得られたキトサンスポンジ及びキトサンシートの物性を
図2~
図5に示す。