(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154680
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】面ファスナー
(51)【国際特許分類】
A44B 18/00 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
A44B18/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068640
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006828
【氏名又は名称】YKK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004152
【氏名又は名称】弁理士法人お茶の水内外特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100187193
【弁理士】
【氏名又は名称】林 司
(74)【代理人】
【識別番号】100181766
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 均
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 結
(72)【発明者】
【氏名】道端 勇
(72)【発明者】
【氏名】李 鵬
(72)【発明者】
【氏名】栗山 亘
(72)【発明者】
【氏名】大上戸 信一
【テーマコード(参考)】
3B100
【Fターム(参考)】
3B100DA02
3B100DA03
3B100DB05
(57)【要約】
【課題】ループ部材を用いなくても、網戸の網に防虫剤等の取り付け及び取り外しを行うことが可能な面ファスナーを提供する。
【解決手段】本発明の面ファスナー(1)では、2つ以上の係合素子(20)によりフック群(30)が形成され、ベース部(10)上に、複数のフック群(30)とフック群(30)間に形成されるスペース部(31)とが配され、各フック群(30)は、係合頭部(24)が第1方向の一方に向けて湾曲する第1係合素子(21)と、係合頭部(24)が第1方向の他方に向けて湾曲する第2係合素子(22)とを有し、1つのフック群(30)内で互いに隣接する2つの係合素子(20)同士は、素子頭側(41)と素子背中側(42)とが向き合う関係又は素子背中側(42)同士が向き合う関係で配置され、且つ、スペース部(31)を挟んで第1方向に対向する2つの係合素子(20)同士は、素子頭側(41)同士が向き合う関係で配置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部(10)と、前記ベース部(10)に一体的に形成される複数のフック状の係合素子(20)とを有する面ファスナー(1)において、
第1方向に沿って互いに近接して配される2つ以上の前記係合素子(20)により、フック群(30)が形成され、
前記ベース部(10)上に、複数の前記フック群(30)と、前記第1方向に互いに隣接する2つの前記フック群(30)間に形成される少なくとも1つのスペース部(31)とが配され、
各係合素子(20)は、前記ベース部(10)から突出するステム部(23)と、前記ステム部(23)の先端部から一方向に湾曲して鉤状に形成される係合頭部(24)とを有し、
各フック群(30)は、前記係合頭部(24)が前記第1方向の一方に向けて湾曲する少なくとも1つの第1係合素子(21)と、前記係合頭部(24)が前記第1方向の他方に向けて湾曲する少なくとも1つの第2係合素子(22)とを有し、
前記係合素子(20)について、前記係合頭部(24)が前記ステム部(23)から延びる側の前記第1方向における向きを素子頭側(41)とし、前記素子頭側(41)とは反対側の前記第1方向における向きを素子背中側(42)とした場合、1つの前記フック群(30)内で互いに隣接する2つの前記係合素子(20)同士は、前記素子頭側(41)と前記素子背中側(42)とが向き合う関係又は前記素子背中側(42)同士が向き合う関係で配置され、且つ、前記スペース部(31)を挟んで前記第1方向に対向する2つの前記係合素子(20)同士は、前記素子頭側(41)同士が向き合う関係で配置される
ことを特徴とする面ファスナー。
【請求項2】
1つの前記フック群(30)に設けられる2つ以上の前記係合素子(20)は、前記係合素子(20)の前記ベース部(10)に接続する基端部において互いに連結されている
請求項1記載の面ファスナー。
【請求項3】
前記ステム部(23)は、前記第1方向に沿って配される一対の側壁面を有し、
前記ステム部(23)の各側壁面には、前記ベース部(10)から前記ステム部(23)に沿って突出する一対のリブ部(25)が設けられ、
前記リブ部(25)は、1つの前記フック群(30)に設けられる2つ以上の前記係合素子(20)間で互いに連結されている
請求項1記載の面ファスナー。
【請求項4】
前記係合素子(20)の頂端面は、前記第1方向の一方側又は他方側から前記係合素子(20)を見たときに、前記ベース部(10)から離れる側へ凸状に湾曲する曲面に形成されている
請求項1記載の面ファスナー。
【請求項5】
前記第1方向の一方側又は他方側から前記係合素子(20)を見たときに、前記係合頭部(24)の先端部は、前記ベース部(10)に近付く側へ凸状に湾曲する曲面の形状に形成され、
前記係合素子(20)の高さ方向から前記係合素子(20)を見たときに、前記係合頭部(24)の先端面は、前記第1方向の一方側又は他方側へ凸状に湾曲する曲面の形状に形成され、
前記第1方向と前記高さ方向とに直交する前記係合素子(20)の幅方向から前記係合素子(20)を見たときに、前記係合頭部(24)の先端部は、前記ベース部(10)に近付く側へ凸状に湾曲する曲面の形状に形成されている
請求項1記載の面ファスナー。
【請求項6】
前記係合素子(20)における前記ベース部(10)からの高さ方向に沿った寸法の最大値を、前記係合素子(20)の最大高さ寸法(H1)とし、前記係合素子(20)の前記最大高さ寸法(H1)の1/2となる高さ位置を中央位置(M)とした場合、前記係合素子(20)の前記最大高さ寸法(H1)は、前記係合素子(20)の前記中央位置(M)における前記第1方向に沿った寸法(L2)の4倍の大きさよりも大きく設定され、前記係合素子(20)の前記中央位置(M)における前記第1方向に沿った寸法(L2)は、前記ステム部(23)の幅方向に沿った寸法よりも大きく設定される
請求項1記載の面ファスナー。
【請求項7】
1つの前記フック群(30)に、前記第1係合素子(21)と前記第2係合素子(22)とが同じ個数で設けられている
請求項1記載の面ファスナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベース部に複数のフック状の係合素子が一体的に形成される面ファスナーに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば住宅の窓等には、通気性を保ちながら室内への虫の侵入を防ぐことを目的として、網戸が設置されている。また近年では、網戸に防虫剤が取り付けられることもある。例えば防虫剤や、防虫剤が収容されたパッケージ又はケース体(以下、防虫剤、パッケージ、及びケース体等をまとめて、防虫剤等と略記する)を網戸の網に取り付ける場合、その防虫剤等を網に取り付ける手段として、フック状の複数の係合素子を有するフック部材(雄型部材)と、複数のループを有するとともにフック部材に係合するループ部材(雌型部材)とが組み合わされた面ファスナー製品が使用されることがある。このような網戸の網に取り付けられる面ファスナー製品の一例が、特開2014-236859号公報(特許文献1)に記載されている。
【0003】
特許文献1のようなフック部材及びループ部材を有する従来の面ファスナー製品を用いて網戸の網に防虫剤等を取り付ける場合、防虫剤等にフック部材を固定しておき、その防虫剤等に固定されたフック部材と、ループ部材とを、網戸の網を間に挟んで互いに係合させる。これにより、フック部材の係合素子及びループ部材のループの少なくとも一方が、網戸の網目を通り抜けてフック部材とループ部材が係合するため、防虫剤等を面ファスナー製品で網戸の網に取り付けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、フック部材及びループ部材を有する面ファスナー製品を使用して、上述のように防虫剤等を網戸の網に取り付ける場合、例えばループ部材を網戸の外側から手で押さえながら、フック部材を網戸の内側からループ部材に近付けてループ部材と係合させる必要がある。しかしながら、網戸の設置場所や網戸の大きさ等によっては、ループ部材を網戸の外側から手で押さえることが難しい又はできないため、防虫剤等を面ファスナー製品によって網戸に取り付けることができない場合があった。
【0006】
また、面ファスナー製品によって網戸に一度取り付けた防虫剤等を、例えば取り付け位置を変える等の目的で網戸から取り外す際に、フック部材とループ部材を剥離するときに加えられる応力等によって、網戸の外側に配されているループ部材がどこかに飛んでしまい、ループ部材を紛失させることもあり、その結果、防虫剤等を網戸に再び取り付けることができなくなるという不具合もあった。
【0007】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、複数のループを有するループ部材を用いなくても、網戸の網に対する防虫剤等のような部材の取り付け及び取り外しを行うことが可能な面ファスナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明により提供される面ファスナーは、ベース部と、前記ベース部に一体的に形成される複数のフック状の係合素子とを有する面ファスナーにおいて、第1方向に沿って互いに近接して配される2つ以上の前記係合素子により、フック群が形成され、前記ベース部上に、複数の前記フック群と、前記第1方向に互いに隣接する2つの前記フック群間に形成される少なくとも1つのスペース部とが配され、各係合素子は、前記ベース部から突出するステム部と、前記ステム部の先端部から一方向に湾曲して鉤状に形成される係合頭部とを有し、各フック群は、前記係合頭部が前記第1方向の一方に向けて湾曲する少なくとも1つの第1係合素子と、前記係合頭部が前記第1方向の他方に向けて湾曲する少なくとも1つの第2係合素子とを有し、前記係合素子について、前記係合頭部が前記ステム部から延びる側の前記第1方向における向きを素子頭側とし、前記素子頭側とは反対側の前記第1方向における向きを素子背中側とした場合、1つの前記フック群内で互いに隣接する2つの前記係合素子同士は、前記素子頭側と前記素子背中側とが向き合う関係又は前記素子背中側同士が向き合う関係で配置され、且つ、前記スペース部を挟んで前記第1方向に対向する2つの前記係合素子同士は、前記素子頭側同士が向き合う関係で配置される面ファスナーである。
【0009】
本発明の面ファスナーにおいて、1つの前記フック群に設けられる2つ以上の前記係合素子は、前記係合素子の前記ベース部に接続する基端部において互いに連結されていることが好ましい。
【0010】
また、前記ステム部は、前記第1方向に沿って配される一対の側壁面を有し、前記ステム部の各側壁面には、前記ベース部から前記ステム部に沿って突出する一対のリブ部が設けられ、前記リブ部は、1つの前記フック群に設けられる2つ以上の前記係合素子間で互いに連結されていることが好ましい。
【0011】
更に、前記係合素子の頂端面は、前記第1方向の一方側又は他方側から前記係合素子を見たときに、前記ベース部から離れる側へ凸状に湾曲する曲面に形成されていることが好ましい。
【0012】
本発明において、前記第1方向の一方側又は他方側から前記係合素子を見たときに、前記係合頭部の先端部は、前記ベース部に近付く側へ凸状に湾曲する曲面の形状に形成され、前記係合素子の高さ方向から前記係合素子を見たときに、前記係合頭部の先端面は、前記第1方向の一方側又は他方側へ凸状に湾曲する曲面の形状に形成され、前記第1方向と前記高さ方向とに直交する前記係合素子の幅方向から前記係合素子を見たときに、前記係合頭部の先端部は、前記ベース部に近付く側へ凸状に湾曲する曲面の形状に形成されていることが好ましい。
【0013】
また、前記係合素子における前記ベース部からの高さ方向に沿った寸法の最大値を、前記係合素子の最大高さ寸法とし、前記係合素子の前記最大高さ寸法の1/2となる高さ位置を中央位置とした場合、前記係合素子の前記最大高さ寸法は、前記係合素子の前記中央位置における前記第1方向に沿った寸法の4倍の大きさよりも大きく設定され、前記係合素子の前記中央位置における前記第1方向に沿った寸法は、前記ステム部の幅方向に沿った寸法よりも大きく設定されることが好ましい。
更に、1つの前記フック群に、前記第1係合素子と前記第2係合素子とが同じ個数で設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の面ファスナーによれば、複数のループを有するループ部材を用いなくても、網戸の網に対して、防虫剤等のような部材の取り付け及び取り外しを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施例に係る面ファスナーを模式的に示す側面図である。
【
図4】
図1に示した面ファスナーのフック群を拡大して示す側面図である。
【
図5】
図1に示した面ファスナーの係合素子を拡大して示す斜視図である。
【
図6】
図1に示した面ファスナーを製造する製造装置を示す模式図である。
【
図7】
図6に示した製造装置のダイホイールを示す模式図である。
【
図8】
図7に示したダイホイールの一部を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施の形態について、実施例を挙げて図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施例に係る面ファスナーを模式的に示す側面図である。
図2及び
図3は、本実施例に係る面ファスナーの平面図及び正面図である。
図4は、面ファスナーのフック群を拡大して示す側面図である。
図5は、面ファスナーの係合素子を拡大して示す斜視図である。
【0017】
なお、以下の説明において、前後方向は、面ファスナーの製造工程において、面ファスナーが搬送される機械方向MDに沿った方向(第1方向)であり、また、後述するフック群で係合素子が並んでいる方向に沿った方向である。
左右方向は、長さ方向に直交し、且つ、面ファスナーにおけるベース部の上面(第1面)又は下面(第2面)に沿った幅方向を言う。この場合、左右方向及び幅方向は、機械方向MDに直交する直交方向CDである。
上下方向は、ベース部の上面又は下面に直交する方向に沿った高さ方向(又はベース部の厚さ方向)であり、また、前後方向と左右方向とに直交する方向である。この場合、ベース部に対して係合素子が突出する側の向きを上側とし、その反対の向きを下側とする。
【0018】
本実施例の面ファスナー1は、防虫剤等(不図示)を網戸(不図示)に取り付けるために、防虫剤等に固定されて用いられる。また、面ファスナー1は、面ファスナー1の複数の係合素子20を網戸の網に直接係合させることにより、ループ部材を用いることなく網戸に防虫剤等を取り付けることができる。なお本発明において、防虫剤等には、防虫剤自体、防虫剤が収容されたパッケージ及びケース体等が含まれる。
【0019】
本実施例の面ファスナー1は、合成樹脂により形成されており、また、平板状のベース部10と、ベース部10に一体的に形成される複数のフック状の係合素子20とを有する。ベース部10上には、2つ以上の係合素子20により形成されるフック群30が複数設けられている。本実施例の面ファスナー1は、
図6に示した後述する成形装置60を備えた製造装置50を用いて製造される。
【0020】
本実施例において、面ファスナー1は、耐候性を備えるポリプロピレン樹脂により形成されている。なお本発明において、面ファスナー1の材質は特に限定されるものではなく、例えば、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、PVC樹脂、ABS樹脂、ポリエチレン樹脂、又はそれらの共重合体などの熱可塑性樹脂を採用できる。また、面ファスナー1は、耐候性を備えていることが好ましい。
【0021】
ベース部10は、その厚さ寸法(上下方向における寸法)を小さくした薄い平板状に形成されている。ベース部10の上面及び下面は、それぞれ平坦に形成されている。ベース部10は、面ファスナー1を上側から見た平面視において、製造装置50の搬送路に沿った機械方向MDの長さが、機械方向MDに直交する直交方向CDの長さよりも長い長方形に形成されている。
【0022】
本実施例において、ベース部10は、0.1mm以上0.4mm以下、好ましくは0.15mm以上0.35mm以下の厚さ寸法を有する。ベース部10の厚さ寸法が0.1mm以上であることにより、ベース部10が適切な強度を確保でき、複数のフック群30を安定して支持できる。それにより、面ファスナー1を防虫剤等に貼り付けし易くすることができる。一方、ベース部10の厚さ寸法が0.4mm以下であることにより、面ファスナー1の成形を行い易くすることができる。
【0023】
本実施例の各係合素子20は、ベース部10から突出するステム部23と、ステム部23の先端部から湾曲しながら延びる係合頭部24と、ステム部23の左右両側に配される左右一対のリブ部25とを有する。また、係合素子20は、係合素子20を左右側方から見た側面視(
図1及び
図4を参照)において、略J字状の形状に形成されている。
【0024】
本実施例の係合素子20は、例えば従来の一般的なフック状(J字状)の係合素子に比べて、上下方向の寸法(以下、高さ寸法と言う)が大きくされた上下に細長い形状に形成されている。このように各係合素子20が上下に細長い形状を有することにより、係合素子20を、前後方向や左右方向等の上下方向に直交する方向に撓み易く形成することができる。なお本発明において、係合素子20におけるベース部10からの高さ寸法の最大値を、係合素子20の最大高さ寸法H1と規定する。また、係合素子20の最大高さ寸法H1の1/2となる高さ位置を係合素子20の中央位置Mと規定する。
【0025】
係合素子20のステム部23は、ベース部10から上側に向けて、上下方向に沿ってまっすぐに延出している。また、ステム部23は、左右方向に向く左右一対の側壁面を有する。本実施例のステム部23は、上下方向に沿ってまっすぐに起立するように形成されており、また、ステム部23の左右の側壁面は、前後方向に沿って配されている。ここで、ステム部23が上下方向に沿ってまっすぐに起立するとは、ステム部23の左右方向における中心線が上下方向に沿って配されることを意味する。また本発明において、ステム部は、ベース部から上側に向けて延びていれば、上下方向に沿ってまっすぐに延びていなくてもよく、例えば上下方向に対し、前側に若しくは後側に、又は左右方向の一方に少し傾斜するような姿勢で形成されていてもよい。
【0026】
係合素子20の側面視(例えば、
図4)において、ステム部23の長さ寸法(前後方向の寸法)は、ベース部10から離れるにつれて(すなわち、上側に向けて)漸減している。ステム部23の幅寸法は、ステム部23のベース部10に連結する基端部から、ステム部23の先端部(係合頭部24側の端部)まで一定の大きさに設定されている。例えば本実施例の場合、ステム部23の幅寸法は、0.2mm以上0.4mm以下に設定されている。ここで、ステム部23の幅寸法は、ステム部23の左右側壁面間の間隔である。
【0027】
係合素子20の係合頭部24は、ステム部23の先端部(上端部)から、前後方向の一方のみに向けて湾曲しながら延出することにより鉤状に形成されている。係合頭部24は、係合素子20の側面視(
図4)において、円弧状又は略円弧状に形成される外周面24aと、係合頭部24でベース部10に向くように外周面24aの反対側に円弧状又は略円弧状に形成される内周面24bとを有する。例えば本実施例において、係合頭部24の外周面24aは、曲率半径が0.2mm以上0.5mm以下の湾曲面により形成されており、係合頭部24の内周面24bは、曲率半径が0.05mm以上0.2mm以下の湾曲面により形成されている。
【0028】
係合頭部24は、ステム部23に連結する係合頭部24の基端部から係合頭部24の先端部に向けて、外周面24a及び内周面24b間の間隔を漸減させるように形成されている。
【0029】
係合頭部24の外周面24aには、係合頭部24の前後方向の中央部分に上側に向くように配される頂端面(上端面)が含まれており、係合頭部24の外周面24aは、前記側面視(
図4)で、頂端面の部分が最も高くなるような円弧状又は略円弧状の湾曲面に形成されている。
【0030】
本実施例の係合頭部24において、係合頭部24の頂端面は、各係合素子20を前方側から見た正面視(例えば、
図3を参照)又は後方側から見た背面視において、幅方向(左右方向)に対して、幅方向の中央部が最も高くなるように上側に向けて凸状に湾曲する曲面に形成されている。
【0031】
本実施例の係合素子20では、上述したように、係合頭部24の外周面24aが、係合素子20の側面視で頂端面の部分が最も高くなるような円弧状又は略円弧状に形成されており、且つ、係合頭部24の頂端面が幅方向に対して凸状の湾曲面に形成されている。これにより、例えば本実施例の面ファスナー1を網戸の網に近付けて係合させる場合に、例えば係合素子20の係合頭部24が網戸の網目に直接挿入されずに、網戸の網(ワイヤー等の線材)に当接したとしても、その網に対して係合素子20の係合頭部24を滑らせて、上下に細長い係合素子20を上下方向に直交する方向(例えば、前後方向及び左右方向)に撓むように容易に弾性変形させることができるため、各係合素子20を、網戸の網目に容易に挿入することができる。
【0032】
更に本実施例の係合素子20において、係合頭部24の先端部は、係合素子20の正面視(
図3)又は背面視において、当該先端部における幅方向の中央部がベース部10に近付く下側に向けて最も突出するように、幅方向に対して下方へ凸状に湾曲する湾曲面の形状に形成されている。
【0033】
また、係合頭部24の先端部は、係合素子20の平面視において(
図2を参照)、当該先端部における幅方向の中央部が前方又は後方に向けて最も突出するように、幅方向に対して前方又は後方へ凸状に湾曲する湾曲面の形状に形成されている。更に、係合頭部24の先端部は、係合素子20の側面視(
図1及び
図4を参照)において、当該先端部における前後方向の中央部がベース部10に近付く下側に向けて最も突出するように、前後方向に対して下方へ凸状に湾曲する湾曲面の形状に形成されている。
【0034】
係合頭部24の先端部が、上述のように、下方と、前方又は後方とに向けて凸状に湾曲するような細い形状を有することにより、係合頭部24の先端部をより弾性変形させ易くすることができる。これにより、本実施例の面ファスナー1を網戸の網に係合させる場合に、網戸の網目に係合素子20が挿入されたときに、網戸の網(線材)を係合頭部24の先端部を乗り越えて係合頭部24の内周面24b側に移動させ易くすることができる。このため、面ファスナー1の係合素子20をより容易に網戸の網に係合させることができる。なお本発明において、係合頭部の先端部は、一方の方向のみに向けて凸状に湾曲する湾曲面の形状に形成されていてもよく、又は、湾曲面の形状を備えていなくてもよい。
【0035】
本実施例において、係合頭部24の長さ寸法(前後方向の寸法)L1は、係合素子20の側面視(例えば、
図4を参照)において、係合素子20の中央位置Mにおける長さ寸法L2よりも大きく、また、係合素子20の中央位置Mにおける長さ寸法L2の2倍の大きさよりも小さく設定されいる。具体的に、係合頭部24の長さ寸法L1は、0.5mm以上1.0mm以下に設定されている。この場合、係合頭部の長さ寸法L1は、係合素子20の側面視において、係合頭部24の先端の位置よりも上下方向の上側の領域において、係合頭部24の外周面24aの前方(略前方を含む)を向く部分から、その外周面24aの後方(略後方を含む)を向く部分までの前方方向における寸法の最大値を意味する。
【0036】
係合頭部24の前記長さ寸法L1が、係合素子20の中央位置Mにおける長さ寸法L2よりも大きいことにより、係合頭部24が適切な強度を有することができる。また、係合頭部24を網戸の網に係合させ易くして、係合素子20を網に安定して係合させることができる。係合頭部24の前記長さ寸法L1が、係合素子20の中央位置Mにおける長さ寸法L2の2倍の大きさよりも小さいことにより、係合素子20の係合頭部24を網戸の網目に挿通させ易くすることができる。
【0037】
各係合素子20のリブ部25は、ベース部10から、ステム部23に沿って上側に突出するように、ステム部23の左側壁面と右側壁面とに設けられている。左右のリブ部25は、ステム部23と一体的に形成されているとともに、ステム部23の左右側面から左右方向の外側に向けて膨出するように形成されている。また、リブ部25は、リブ部25の長さ寸法(前後方向の寸法)を、リブ部25のベース部10に連結する基端部(下端部)を除いて、ベース部10から離れるにつれて漸減させるように形成されている。
【0038】
本実施例において、左右の各リブ部25は、リブ部25の幅寸法(左右方向の寸法)を、ステム部23の幅寸法の50%以下にして形成されている。具体的に、リブ部25の幅寸法は、0.05mm以上0.20mm以下に、好ましくは0.10mm以上0.15mm以下に設定している。
【0039】
左右の各リブ部25が0.01mm以上の幅寸法で設けられていることにより、係合素子20の強度を向上させることができる。また、後述する製造装置50で面ファスナー1を成形するときに、溶融した合成樹脂を、細長い係合素子20を形成するキャビティ空間の先端部(すなわち、係合頭部24の先端部)まで充填させ易くして、各係合素子20を所定の形状に安定して成形できる。左右の各リブ部25が、ステム部23の幅寸法の50%以下の幅寸法で、又は、0.2mm以下の幅寸法で設けられていることにより、リブ部25の設置によって係合素子20の左右方向及び前後方向への可撓性(弾性変形のしやすさ)が低下することを抑制できる。
【0040】
左右の各リブ部25におけるベース部10からの最大高さ寸法(高さ寸法の最大値)は、係合素子20の前記最大高さ寸法H1の5%以上50%以下に、好ましくは25%以上50%以下に設定されている。リブ部25の最大高さ寸法が、係合素子20の前記最大高さ寸法H1の5%以上、好ましくは25%以上であることにより、係合素子20の強度を効果的に向上させることができる。また、面ファスナー1の成形時に溶融した合成樹脂をキャビティ空間の先端部まで充填させ易くすることができる。リブ部25の最大高さ寸法が、係合素子20の前記最大高さ寸法H1の50%以下であることにより、リブ部の設置に起因して、係合素子20の前後方向や左右方向への可撓性(弾性変形のしやすさ)が低下することを抑制できる。
【0041】
本実施例の各係合素子20は、ベース部10上に、上述したように、上下方向に細長い略J字状の形状で設けられている。例えば、本実施例の係合素子20は、係合素子20の最大高さ寸法H1が、係合素子20の中央位置Mにおける長さ寸法L2の4倍の大きさ、好ましくは5倍の大きさよりも大きくなるように形成されている。この場合、係合素子20の中央位置Mにおける長さ寸法L2は、ステム部23の幅寸法(ステム部23の左右側壁面間の間隔)よりも大きく設定されている。また具体的に説明すると、係合素子20の最大高さ寸法H1は、1.5mm以上3.5mm以下に、好ましくは2.0mm以上3.0mm以下に設定されている。係合素子20の中央位置Mにおける長さ寸法L2は、0.3mm以上0.6mm以下に設定されている。
【0042】
本実施例の面ファスナー1において、ベース部10上には、前後方向に沿って互いに近接して配される2つ以上の係合素子20により形成されるフック群30と、前後方向に隣り合う2つのフック群30間に形成されるスペース部31とが設けられている。本実施例の場合、1つのフック群30は、それぞれ、前後方向に沿って配される4つの係合素子20により形成されている。また、1つのフック群30に含まれる4つの係合素子20は、ステム部23(特に、ステム部23の左右方向の中心線)が互いに平行となるように形成されている。更に本実施例の面ファスナー1では、平面視で長方形を呈する1つのベース部10に対し、9個のフック群30が、前後方向と左右方向とに整列して格子状に設けられている(
図2を参照)。
【0043】
本実施例の係合素子20は、係合頭部24がステム部23から後方(第1方向の一方)に向けて湾曲しながら延出する第1係合素子21と、係合頭部24がステム部23から前方(第1方向の他方)に向けて湾曲しながら延出する第2係合素子22とを有する。ここで、1つのフック群30を形成する4つの係合素子20について、例えば
図4に示すように、最も後側に配される係合素子20を1番目の係合素子20と規定し、その1番目の係合素子20から前側に向けて、順番に、2番目の係合素子20、3番目の係合素子20、4番目の係合素子20と規定する。
【0044】
本実施例の各フック群30では、1番目及び2番目の係合素子20が第1係合素子21により形成されており、3番目及び4番目の係合素子20が第2係合素子22により形成されている。特に、本実施例の各フック群30には、第1係合素子21と第2係合素子22とが同じ個数で設けられている。このように各フック群30に、係合頭部24の延びる向きが互いに異なる2種類の係合素子20が含まれていることにより、フック群30を網戸の網にしっかりと係合させることができ、また、網に係合したフック群30を網から外れ難くすることができる。
【0045】
また本実施例では、1つの係合素子20の向きについて、係合頭部24がステム部23から延びる側の前後方向(第1方向)における向きを係合素子20の「素子頭側41」と規定し、素子頭側41とは反対側の前後方向(第1方向)における向きを「素子背中側42」と規定する(
図5を参照)。この場合、1つのフック群30を形成する4つの係合素子20について、前後方向に互いに隣接する2つの係合素子20同士は、素子頭側41と素子背中側42とが向き合う関係、又は素子背中側42同士が向き合う関係で配置されている。
【0046】
具体的に説明すると、各フック群30において、前後方向に隣接する1番目及び2番目の第1係合素子21は、素子頭側41と素子背中側42とが向き合う関係(すなわち、1番目の第1係合素子21の素子背中側42と、2番目の第1係合素子21の素子頭側41とが向き合う関係)で配されている。2番目の第1係合素子21及び3番目の第2係合素子22は、素子背中側42同士が向き合う関係(すなわち、2番目の第1係合素子21の素子背中側42と、3番目の第2係合素子22の素子背中側42とが向き合う関係)で配されている。3番目及び4番目の第2係合素子22は、素子頭側41と素子背中側42とが向き合う関係(すなわち、3番目の第2係合素子22の素子頭側41と、4番目の第2係合素子22の素子背中側42とが向き合う関係)で配されている。言い換えると、1つのフック群30において、隣接する2つの係合素子20同士は、素子頭側41同士が向き合わないように配置されている。
【0047】
例えば1つのフック群内に、素子頭側同士が向き合うように配置される2つの係合素子が含まれる場合、面ファスナーを網戸の網に近付けてフック群を網に引っ掛けるときに、素子頭側同士が向き合う2つの係合素子間に、網を形成する線材(例えばワイヤーや針金等)を2本以上で挿入させることは難しく、その結果、素子頭側同士が向き合う2つの係合素子の少なくとも一方を、網戸の網(線材)に係合させることができなくなる。
【0048】
これに対し、本実施例のように、1つのフック群30を形成する4つの係合素子20が、互いに素子頭側41と素子背中側42とが向き合う関係、又は素子背中側42同士が向き合う関係で配置されていることにより、面ファスナー1を網戸の網に近付けてフック群30を網に引っ掛けるときに、各フック群30の各係合素子20を、それぞれ網の線材に係合させ易くすることができる。また、面ファスナー1を網戸の網に引っ掛けた後に、網に係合した各フック群30の係合素子20を網から外れ難くすることができる。
【0049】
一方、スペース部31を介して前後方向に互いに対向して配される2つの係合素子20(例えば、フック群30の4番目の第2係合素子22と、そのフック群30に対してスペース部31を介して隣接するフック群30の1番目の第1係合素子21)は、素子頭側41同士が向き合う関係で配されている。これにより、2つのフック群30間に、係合素子20の形成ピッチよりも大きな間隔を有するスペース部31が設けられている場合に、そのスペース部31を挟んで配される2つの係合素子20に、網戸の網の線材をそれぞれ係合させ易くすることができる。また、網に係合させた2つの係合素子20を、それぞれ網から外れ難くすることができる。
【0050】
各フック群30において、フック群30を形成する4つの係合素子20は、それぞれのステム部23の基端部が互いに連結され、且つ、それぞれの左右のリブ部25の基端部が互いに連結されることによって、一体的に形成されている。これにより、各フック群30の強度を向上させることができる。また、面ファスナー1の成形時に、溶融した合成樹脂を、細長い係合素子20のキャビティ空間の先端部まで充填させ易くすることができるため、係合素子20を所定の形状に安定して成形できる。
【0051】
本実施例において、1つのフック群30を形成する4つの係合素子20は、前後方向に0.5mm以上1.5mm以下の形成ピッチで配されている。この場合、係合素子20の形成ピッチとは、1つのフック群30において、係合素子20のステム部23における基準位置から、その係合素子20に対して前後方向に隣り合う係合素子20のステム部23における基準位置までの前後方向の長さを意味する。ここで、係合素子20のステム部23における基準位置とは、ステム部23における前後方向の中心位置(特に、ステム部23の基端部における前後方向の中心位置)を意味する。
【0052】
また、スペース部31の前後方向における寸法(すなわち、前後方向に隣り合う2つのフック群30間の間隔)は、フック群30における係合素子20の形成ピッチの大きさ以上で、且つ、1つのフック群30における基端部の長さ寸法(連結された4つの係合素子20の基端部の長さ寸法)の50%の大きさ以下に設定されている。また具体的に、スペース部31の前後方向における寸法は、1.0mm以上2.0mm以下の大きさに設定されている。この場合、スペース部31の前後方向における寸法(長さ寸法)は、前後方向に隣り合う2つのフック群30に関して、一方のフック群30における4番目の第2係合素子22の基準位置から、他方のフック群30における1番目の第1係合素子21の基準位置までの前後方向の長さを意味する。
更に、左右方向に互いに隣接する2つのフック群30の間隔は、スペース部31の前後方向における寸法よりも大きく設定されており、また、1.5mm以上4.0mm以下に、好ましくは2.5mm以上3.0mm以下に設定されている。
【0053】
例えば従来の網戸には、網目の大きさ及び数(すなわち、メッシュの数値)が異なる様々な種類の網が用いられている。このため、本発明者等は、面ファスナー1をより多くの種類の網に対して係合することが可能なように鋭意実験及び検討を重ねた結果、係合素子20及びフック群30の大きさ及び配置に関し、上述したような数値範囲で面ファスナー1を形成すればよいことを見出した。
【0054】
すなわち、面ファスナー1における各係合素子20の大きさ、各フック群30における係合素子20の配置、並びに、ベース部10上におけるフック群30及びスペース部31の大きさ及び配置が、上述したような寸法及び位置関係で設定されていることにより、本実施例の面ファスナー1を、メッシュの数値が異なるより多くの種類の網に対して係合させることが可能となり、それによって、面ファスナー1の汎用性を向上させることができる。
【0055】
次に、上述した本実施例の面ファスナー1を製造する製造装置50について、
図6を参照しながら説明する。
本実施形態の製造装置50は、面ファスナー1を成形する成形装置60と、成形装置60から面ファスナー1を剥離するピックアップローラー70と、ピックアップローラー70の下流側に配される切断装置(不図示)とを有する。
【0056】
本実施形態の成形装置60は、一方向に駆動回転するダイホイール61と、ダイホイール61の外周面に対向して配されるノズル部64とを有する。ダイホイール61は、金型部材となるホイール部62と、ホイール部62を所定の速度で一方向に回転させる回転駆動ローラー63とを有する。
【0057】
ホイール部62は、
図7に示すように、所要の厚さを有する複数のドーナツ状のリングプレート(金型プレート)62aを、直交方向CDに又はダイホイール61の回転軸方向に重ねて積層することによって、中心部がくり貫かれたような円柱状に形成されている。
【0058】
ホイール部62の外周縁部には、面ファスナー1の上述した係合素子20及びフック群30を成形可能な複数のキャビティ空間(不図示)が設けられている。この場合、係合素子20及びフック群30のキャビティ空間は、製造する面ファスナーの係合素子20及びフック群30に対応させて、ホイール部62の外周縁部に設けられている。また、各係合素子20のキャビティ空間は、係合素子20の形状に対応させて、ダイホイール61の外周面24aから回転中心部に向けて細長く形成されている。
【0059】
本実施例のホイール部62において、1つの係合素子20のステム部23及び係合頭部24を形成するキャビティ空間は、例えば
図8にホイール部62の一部の断面を模式的に示すように、4枚のリングプレート62aを重ね合わせることによって形成されている。この場合、1枚のリングプレート62aは、0.05mm以上1.0mm以下の厚さを有する。
【0060】
これにより、ダイホイール61を用いて面ファスナー1の成形を行うときに、ステム部23を、上述したような0.2mm以上0.4mm以下という小さい幅寸法で形成する場合でも、ステム部23及び係合頭部24を所定の形状及び大きさで精度良く安定して成形できる。すなわち、本実施例のダイホイール61を用いることによって、係合頭部24の頂端面を、幅方向に対して上方へ凸状に湾曲させる湾曲面の形状に安定して成形できる。また、係合頭部24の先端部を、下方に凸状に湾曲するとともに、前方又は後方に凸状に湾曲するような細い形状に安定して成形できる。
【0061】
本実施例のダイホイール61には、ダイホイール61の外周面24aに沿って成形される面ファスナー1を効率的に冷却するために、回転駆動ローラー63内で冷却液を流通させる冷却ジャケット(不図示)が設けられている。また、ダイホイール61の下側には、図示しない冷却液槽が、冷却液槽内の冷却液にダイホイール61の少なくとも一部を浸漬させるように設けられている。
【0062】
ノズル部64は、溶融した合成樹脂をダイホイール61に向けて連続して供給するように形成されている。具体的には、ノズル部64は、合成樹脂を溶融させた状態で流通させる流路と、ダイホイール61に対向して配されるノズル先端面と、ノズル先端面に開口する供給口とを有しており、供給口からダイホイール61に向けて、溶融した合成樹脂を連続的に押し出す(又は流し出す)ことができる。
【0063】
ピックアップローラー70は、ダイホイール61で成形される面ファスナー1を上下から挟持して引っ張る一対の上側挟持ローラー71及び下側挟持ローラー72を有する。上側挟持ローラー71及び下側挟持ローラー72の各外周面には、ポリウレタンエラストマー等のエラストマーにより形成される図示しない表面層が設けられている。
【0064】
ピックアップローラー70の下流側に配される図示しない切断装置は、上下方向に昇降可能なカッター部を有する。この切断装置では、搬送されてきた面ファスナー1に向けてカッター部を下降させることにより、成形された面ファスナー1を所要の大きさに切断することができる。
【0065】
次に、上述のような成形装置60及びピックアップローラー70を有する製造装置50を用いて面ファスナー1を製造する方法について説明する。
【0066】
本実施例における面ファスナー1の製造方法では、先ず、ノズル部64の供給口から、溶融した合成樹脂材料をダイホイール61の外周面に向けて連続的に供給する。このとき、ダイホイール61は、回転駆動ローラー63の駆動によって一方向(
図6の反時計回り方向)に所定の回転速度で回転している。
【0067】
これにより、ノズル部64から供給された溶融状態の合成樹脂により、ノズル部64とダイホイール61との間にて、面ファスナー1のベース部10が成形される。それとともに、ダイホイール61の外周面部に形成された複数のキャビティ空間に合成樹脂が充填されることにより、複数の係合素子20及びフック群30がベース部10と一体的に成形される。
【0068】
このとき、本実施例の面ファスナー1では、1つのフック群30を形成する4つの係合素子20は、それぞれ左右一対のリブ部25を有しており、且つ、ステム部23の基端部と左右のリブ部25の基端部とにおいて互いに連結されて形成されている。このため、ダイホイール61の各係合素子20を成形するキャビティ空間では、ダイホイール61の外周面24aに開口する開口面積を大きく確保できる。これにより、ダイホイール61を用いて、各係合素子20を上述したように上下方向に細長い略J字状の形状に成形する場合でも、ノズル部64から供給された溶融状態の合成樹脂を、ダイホイール61の係合素子20を成形する細長いキャビティ空間内に安定して充填できる。これにより、所定の形状を有する複数の係合素子20及びフック群30を安定して成形することができる。
【0069】
続いて、ダイホイール61の外周面部で成形される面ファスナー1は、ダイホイール61に担持されて冷却されながら回転することにより硬化(固化)する。その後、面ファスナー1は、ピックアップローラー70によってダイホイール61から連続的に引き剥がされる。
【0070】
その後、ピックアップローラー70を通過した面ファスナー1は、図示しない切断部に向けて搬送され、同切断部にて所定の大きさに切断されて回収される。なお本発明では、ピックアップローラー70を通過した面ファスナー1を、長尺の状態のままで回収ローラー等にロール状に巻き取って回収してもよい。
【0071】
本発明において、面ファスナーの製造に用いられる成形装置や製造方法は、本実施例に限定されるものではなく、任意に変更することができる。例えば本実施例では、溶融した合成樹脂をノズル部64からダイホイール61に向けて連続的に供給することによって、面ファスナー1の成形が行われている。しかし、本発明では、少なくとも一方に上述した実施例のダイホイール61が用いられる上下一対の成形ローラーを用いて、当該上下一対の成形ローラー間に向けて、ノズル部から溶融した合成樹脂を連続的に供給することによって、面ファスナー1の成形を行うことも可能である。
【0072】
以上のような製造方法を行うことにより、
図1~
図3に示した本実施例の面ファスナー1を製造することができる。また、製造された本実施例の面ファスナー1は、防虫剤、及び防虫剤が収容されたパッケージ等を含む防虫剤等に対して、接着剤や粘着部材(粘着テープ)等を用いて固定されることによって取り付けられる。なお本発明において、面ファスナー1を防虫剤等に固定する方法や手段は特に限定されない。
【0073】
このように防虫剤等に取り付けられた本実施例の面ファスナー1は、網戸の網に対して、網の一方の表面側から面ファスナー1を近付けて、更に、面ファスナー1のフック群30を形成する複数の係合素子20を、網戸の網目に挿通させることによって、面ファスナー1の各フック群30を網戸の網に係合させることができる。この場合、本実施例の面ファスナー1は、網戸の網に対して、面ファスナー1の前後方向(機械方向MD)が横向きとなる姿勢でも、又は縦向きとなる姿勢でも、網に係合させることができる。
【0074】
特に本実施例では、係合素子20が上下に細長い形状を有するとともに、係合素子20の係合頭部24の外周面24a(特に、頂端面)が、前後方向と左右方向とに湾曲する湾曲面に形成されている。このため、例えば係合素子20を網戸の網目に挿通させるときに、係合素子20の係合頭部24が、網を形成するワイヤー等の線材に当接しても、係合素子20が、線材に対して、係合素子20の高さ方向に対して直交する直交方向(前後方向及び左右方向を含む)に撓むことができるため、係合素子20を線材に引っ掛からせることなく、網戸の網目に容易に挿通させることができる。
【0075】
このように、本実施例の面ファスナー1によれば、従来のようなループ部材を用いなくても、面ファスナー1の各フック群30を網戸の網にしっかりと係合させることができる。また、フック群30が網に係合した状態を安定して保持することができる。これにより、家屋内における網戸の設置場所等に関わらず、防虫剤等を網戸に取り付ける作業を容易に行うことができる。また、ループ部材を不要とすることにより、製造コストの削減、及びプラスチック使用量の削減を図ることができる。なお、網戸の網に係合させた本実施例の面ファスナー1は、例えば面ファスナー1のフック群30を1つ1つ網から外すようにして面ファスナー1を網から引き離すことによって、網戸から容易に取り外すことができる。
【0076】
更に本実施例の面ファスナー1では、上述したように、ベース部10上に9つのフック群30が所定の間隔を開けて格子状に設けられており、また、各フック群30には、4つの係合素子20が一定の間隔及び一定の配置で前後方向に沿って設けられている。更に、各係合素子20が、上述したように、上下に細長い形状を有しており、且つ、係合素子20の高さ方向に直交する方向に撓み易く形成されている。これにより、本実施例の面ファスナー1は、メッシュの数値が異なる様々な網に対して容易に係合させることが可能となるため、網戸に取り付けられる防虫剤等の利便性を大きく高めることができる。
【0077】
なお、本発明は、上述した実施例に何ら限定されるものではなく、本発明と実質的に同一な構成を有し、かつ、同様な作用効果を奏しさえすれば、多様な変更が可能である。例えば本発明において、面ファスナーの大きさ及び形状、並びに、1つの面ファスナー1に設けるフック群の個数及び配置等は特に限定されるものではなく、変更可能である。
【0078】
また、上述した実施例の面ファスナー1において、各フック群30は、係合頭部24の向きが互いに反対となる第1係合素子21及び第2係合素子22を有するとともに、4つの係合素子20によって形成されている。しかし本発明において、フック群は、第1係合素子及び第2係合素子を有していれば、フック群を形成する係合素子の個数は限定されるものではない。なお、本発明のフック群は、第1係合素子と第2係合素子とが同じ個数で配されるように、偶数の個数の係合素子によって形成されることが好ましい。このように1つのフック群が、同じ個数の第1係合素子及び第2係合素子を有することによって、フック群を網戸の網にしっかりと係合させることができ、また、網に係合したフック群を網から外れ難くすることができる。
【0079】
更に、上述した実施例の面ファスナー1は、防虫剤等を網戸に取り付けられるために用いられているが、本発明の面ファスナーは、防虫剤等以外の部材又は部品を、網戸、又は網戸以外の網に対して取り付けられるために用いられてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 面ファスナー
10 ベース部
20 係合素子
21 第1係合素子
22 第2係合素子
23 ステム部
24 係合頭部
24a 外周面
24b 内周面
25 リブ部
30 フック群
31 スペース部
41 素子頭側
42 素子背中側
50 製造装置
60 成形装置
61 ダイホイール
62 ホイール部
62a リングプレート(金型プレート)
63 回転駆動ローラー
64 ノズル部
70 ピックアップローラー
71 上側挟持ローラー
72 下側挟持ローラー
H1 係合素子の最大高さ寸法
L1 係合頭部の長さ寸法
L2 係合素子の中央位置における長さ寸法
M 係合素子の中央位置