IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社小松製作所の特許一覧

<>
  • 特開-作業機械および積荷質量算出方法 図1
  • 特開-作業機械および積荷質量算出方法 図2
  • 特開-作業機械および積荷質量算出方法 図3
  • 特開-作業機械および積荷質量算出方法 図4
  • 特開-作業機械および積荷質量算出方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154697
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】作業機械および積荷質量算出方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
E02F9/20 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068669
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小山 幹
(72)【発明者】
【氏名】古賀 泰樹
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB03
2D003BA02
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB02
2D003DB04
(57)【要約】
【課題】ブームを動作させるアクチュエータが不動状態の場合であっても、バケット内の積荷質量を精度よく算出可能な作業機械を提供する。
【解決手段】作業機械は、走行体が取り付けられる本体と、本体の水平方向の加速度を取得する加速度センサと、本体に取り付けられるブームと、ブームに取り付けられるバケットとを含む作業機と、本体に対するブームの角度を変化させるアクチュエータと、アクチュエータを動作させるコントローラとを備える。コントローラは、アクチュエータが不動状態であると判断したことに基づき、作業機の姿勢とアクチュエータの推力と加速度とに基づき、バケット内の積荷質量を算出する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体が取り付けられる本体と、
前記本体の水平方向の加速度を取得する加速度センサと、
前記本体に取り付けられるブームと、前記ブームに取り付けられるバケットとを含む作業機と、
前記本体に対する前記ブームの角度を変化させるアクチュエータと、
前記アクチュエータを動作させるコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記アクチュエータが不動状態であると判断したことに基づき、前記作業機の姿勢と前記アクチュエータの推力と前記加速度とに基づき、前記バケット内の積荷質量を算出する、作業機械。
【請求項2】
前記コントローラは、前記アクチュエータが前記不動状態であると判断したことに基づき、前記本体が後進かつ減速中であることを条件に、前記姿勢と前記推力と前記加速度とに基づき前記積荷質量を算出する、請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記コントローラは、前記アクチュエータが前記不動状態であると判断したことに基づき、前記作業機械が予め定められた距離以上走行したことを条件に、前記姿勢と前記推力と前記加速度とに基づき前記積荷質量を算出する、請求項1または2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記姿勢は、前記本体に対する前記ブームの角度を含み、
前記コントローラは、前記アクチュエータが前記不動状態であると判断したことに基づき、前記ブームの角度と前記加速度とに基づき補正係数を算出し、かつ、前記補正係数によって前記推力を補正することにより前記積荷質量を算出する、請求項1に記載の作業機械。
【請求項5】
前記補正係数は、前記ブームの角度を示す変数と、前記ブームの角度毎の前記加速度と前記アクチュエータの推力との関係に基づき算出された定数とを含む、請求項4に記載の作業機械。
【請求項6】
モニタをさらに備え、
前記コントローラは、
前記積荷質量を周期的に算出し、
前記作業機による掘削動作が終了したと判断すると、算出された前記積荷質量を前記モニタに表示させる、請求項1に記載の作業機械。
【請求項7】
前記姿勢は、前記本体に対する前記ブームの角度を含み、
前記コントローラは、前記ブームの角度が変化していない場合、前記アクチュエータが前記不動状態であると判断する、請求項1に記載の作業機械。
【請求項8】
前記コントローラは、前記アクチュエータが動作している動作状態であると判断したことに基づき、前記姿勢と前記推力と前記加速度とのうちの前記姿勢と前記推力とのみに基づき、前記バケット内の積荷質量を算出する、請求項1に記載の作業機械。
【請求項9】
前記姿勢を検出する第1のセンサと、
前記推力を検出する第2のセンサとをさらに備え、
前記コントローラは、前記第1のセンサによる前記検出の結果と、前記第2のセンサによる前記検出の結果とをさらに取得する、請求項1に記載の作業機械。
【請求項10】
自走可能な作業機械の積荷質量算出方法であって、
前記作業機械の本体の水平方向の加速度を取得するステップと、
前記本体に取り付けられ、かつブームとバケットとを有する作業機の姿勢を検出するステップと、
前記ブームの角度を変化させるアクチュエータの推力を検出するステップと、
コントローラによって前記アクチュエータが不動状態であると判断されたことに基づき、前記コントローラが前記作業機の姿勢と前記アクチュエータの推力と前記加速度とに基づき前記バケット内の積荷質量を算出するステップと、を備える、積荷質量算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械および作業機械における積荷質量算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特開2021-95710号公報(特許文献1)に開示されているように、作業機械に含まれるコントローラがバケット内の積荷質量を算出することが行われている。特許文献1では、コントローラは、ブームを動作させるアクチュエータ(ブームシリンダ)の推力を変数として含む演算式を利用して、バケット内の積荷質量を算出する。当該演算式は、ブームフートピン周りのモーメントのつり合い式から導出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-95710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ブームを動作させるアクチュエータが不動状態となった場合には、静止摩擦が発生する。静止摩擦が発生しているときは、慣性力の影響が大きくなる。このため、アクチュエータが不動状態となった場合には、検出されるアクチュエータの推力は実際に生じている推力から乖離してしまう。このため、このような状況では、検出されたアクチュエータの推力の値を上記演算式に代入しても、バケット内の積荷質量を精度よく算出できない。
【0005】
本開示は、ブームを動作させるアクチュエータが不動状態の場合であっても、バケット内の積荷質量を精度よく算出可能な作業機械および積荷質量算出方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある局面に従うと、作業機械は、走行体が取り付けられる本体と、本体の水平方向の加速度を取得する加速度センサと、本体に取り付けられるブームと、ブームに取り付けられるバケットとを含む作業機と、本体に対するブームの角度を変化させるアクチュエータと、アクチュエータを動作させるコントローラと、を備える。コントローラは、アクチュエータが不動状態であると判断したことに基づき、作業機の姿勢とアクチュエータの推力と加速度とに基づき、バケット内の積荷質量を算出する。
【0007】
本開示の他の局面に従うと、自走可能な作業機械の積荷質量算出方法は、作業機械の本体の水平方向の加速度を取得するステップと、本体に取り付けられ、かつブームとバケットとを有する作業機の姿勢を検出するステップと、ブームの角度を変化させるアクチュエータの推力を検出するステップと、コントローラによってアクチュエータが不動状態であると判断されたことに基づき、前記コントローラが、作業機の姿勢とアクチュエータの推力と加速度とに基づきバケット内の積荷質量を算出するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
上記の開示によれば、ブームを動作させるアクチュエータが不動状態の場合であっても、バケット内の積荷質量を精度よく算出可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ホイールローダの側面図である。
図2】作業機の各部の寸法と、4つのモーメントのつり合いとを説明するための図である。
図3】作業機の重量によるモーメントの詳細を説明するための図である。
図4】ホイールローダの機能的構成を示した機能ブロック図である。
図5】コントローラで実行される処理の流れを説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、明細書および図面において、同一の構成要素または対応する構成要素には、同一の符号を付し、重複する説明を繰り返さない。また、図面では、説明の便宜上、構成を省略または簡略化している場合もある。また、各実施の形態と各変形例との少なくとも一部は、互いに任意に組み合わされてもよい。
【0011】
<A.作業機械の構成>
本実施の形態に係る作業機械の一例としてホイールローダの構成について図1を用いて説明する。なお本実施の形態における作業機械はホイールローダに限定されるものではない。本実施の形態の作業機械は、走行しながら掘削する車輪を有する作業機械であればよく、バックホーローダ、スキッドステアローダなどであってもよい。
【0012】
図1は、実施の形態1に係る作業機械の一例としてのホイールローダの側面図である。図1に示されるように、ホイールローダ1は、車体フレーム2と、作業機3と、走行装置4と、キャブ5とを有している。ホイールローダ1は、後述するバケット14内の積荷質量を計測するコントローラ50(図4)をさらに有している。
【0013】
車体フレーム2およびキャブ5からホイールローダ1の機械本体9が構成されている。キャブ5内には、オペレータが着座するシート、操作装置、およびモニタなどが配置されている。操作装置は、走行(前後進)用の操作レバー、作業機3用の操作レバー、入力装置等を含む。ホイールローダ1の機械本体9には、作業機3および走行装置4が取り付けられている。作業機3は機械本体9の前方に配置されており、機械本体9の最後端にはカウンタウエイト6が設けられている。
【0014】
車体フレーム2は、前フレーム11と後フレーム12とを含んでいる。前フレーム11と後フレーム12とには、ステアリングシリンダ13が取り付けられている。ステアリングシリンダ13は、油圧シリンダである。ステアリングシリンダ13はステアリングポンプ(図示せず)からの作動油で伸縮する。ステアリングシリンダ13の伸縮により、前フレーム11と後フレーム12とは互いに左右方向に揺動可能である。これにより、ホイールローダ1の進行方向が左右に変更可能である。
【0015】
本明細書中において、ホイールローダ1が直進走行する方向を、ホイールローダ1の前後方向という。ホイールローダ1の前後方向において、車体フレーム2に対して作業機3が配置されている側を前方向とし、前方向と反対側を後方向とする。ホイールローダ1の左右方向とは、平面視において前後方向と直交する方向である。前方向を見て左右方向の右側、左側が、それぞれ右方向、左方向である。ホイールローダ1の上下方向とは、前後方向および左右方向によって定められる平面に直交する方向である。上下方向において地面のある側が下側、空のある側が上側である。
【0016】
走行装置4は、走行輪4a、4bを含んでいる。走行輪4a、4bの各々は車輪であり、ゴムよりなるタイヤを有している。走行輪(前輪)4aは、前フレーム11に回転可能に取り付けられている。走行輪(後輪)4bは、後フレーム12に回転可能に取り付けられている。ホイールローダ1は、走行輪4a、4bが回転駆動されることにより自走可能である。
【0017】
作業機3は、掘削などの作業を行うためのものである。作業機3は、前フレーム11に取り付けられている。作業機3は、バケット14と、ブーム15と、ベルクランク16と、チルトロッド17、ブームシリンダ18と、バケットシリンダ19とを含んでいる。
【0018】
ブーム15の基端部は、ブームフートピン21によって前フレーム11に回転自在に取付けられている。これによりブーム15は機械本体9に回転可能に取り付けられている。バケット14は、バケットピン22によってブーム15の先端に回転自在に取付けられている。
【0019】
ブームシリンダ18はブーム15を駆動する。ブームシリンダ18の一端は、機械本体9の前フレーム11にピン23によって回転可能に取り付けられている。これによりブームシリンダ18は、機械本体9に回転可能に取り付けられている。ブームシリンダ18の他端は、ブーム15にピン24によって回転可能に取り付けられている。
【0020】
ブームシリンダ18はたとえば油圧シリンダである。ブームシリンダ18は、作業機ポンプ(図示せず)からの作動油によって伸縮する。これによりブーム15が駆動し、ブーム15の先端に取り付けられたバケット14が昇降する。
【0021】
ブームシリンダ18は、機械本体9に取り付けられたチューブ18a(シリンダチューブ)と、ブーム15に取り付けられ、かつチューブ18aに対してブームシリンダ18の推力Fcylにより移動するロッド18b(ピストンロッド)とを有する。ロッド18bは、ピストン18cを有する。油圧によりピストン18cがチューブ18a内を移動することにより、ブームシリンダ18のストローク長が変化する。
【0022】
ベルクランク16は、支持ピン29によってブーム15に回転自在に支持されている。ベルクランク16は、支持ピン29の一方側に位置する第1端部と、支持ピン29に対して第1端部と反対側に位置する第2端部とを有している。ベルクランク16の第1端部はチルトロッド17を介在してバケット14に接続されている。ベルクランク16の第2端部はバケットシリンダ19を介在して機械本体9の前フレーム11に接続されている。
【0023】
チルトロッド17の一端はベルクランク16の第1端部にピン27によって回転可能に取り付けられている。チルトロッド17の他端はバケット14にピン28によって回転可能に取り付けられている。
【0024】
バケットシリンダ19は、ブーム15に対してバケット14を駆動する。バケットシリンダ19は、一端と、一端の反対側の他端とを有している。バケットシリンダ19の一端は機械本体9の前フレーム11にピン25によって回転可能に取り付けられている。バケットシリンダ19の他端はベルクランク16の第2端部にピン26によって回転可能に取り付けられている。
【0025】
バケットシリンダ19はたとえば油圧シリンダである。バケットシリンダ19は、作業機ポンプ(図示せず)からの作動油によって伸縮する。これによりバケット14が駆動し、バケット14がブーム15に対して上下に回動する。
【0026】
ホイールローダ1は、ブームシリンダ18の推力Fcyl(に関する情報を検知するセンサと、バケットシリンダ19の推力に関する情報を検知するセンサ(第2のセンサ)とをさらに有している。
【0027】
ブームシリンダ18の推力に関する情報を検知するセンサは、たとえば圧力センサ31b、31hである。圧力センサ31b、31hの各々は、ブームシリンダ18のシリンダ圧力を検知する。圧力センサ31bは、ブームシリンダ18のボトム圧を検知する。圧力センサ31hは、ブームシリンダ18のヘッド圧を検知する。
【0028】
ヘッド圧とは油圧シリンダのピストンに対してシリンダーロッド側の圧力を意味し、ボトム圧とはピストンに対してチューブ側の圧力を意味する。
【0029】
バケットシリンダ19の推力に関する情報を検知するセンサは、たとえば圧力センサ32b、32hである。圧力センサ32b、32hの各々は、バケットシリンダ19のシリンダ圧力を検知する。圧力センサ32bは、バケットシリンダ19のボトム圧を検知する。圧力センサ32hは、バケットシリンダ19のヘッド圧を検知する。
【0030】
ホイールローダ1は、作業機3の姿勢に関する情報を検知するセンサ(第1のセンサ)をさらに有している。作業機3の姿勢に関する情報を検知するセンサは、たとえばブーム角度に関する情報を検知するセンサと、ブームに対するバケット角度に関する情報を検知するセンサとを含む。作業機3の姿勢に関する情報の詳細については後述する(図2)。
【0031】
ブーム角度は、機械本体9の前フレーム11に対するブーム15の角度である。バケット角度は、ブーム15に対するバケット14の角度である。詳しくは、ブーム角度は、ホイールローダ1の側面視(図1)において、車体の前後方向に延びる仮想軸(詳しくは、ホイールローダ1が水平状態の場合に水平となる軸)とブーム15とがなす角である。なお、この点については、後述するブームシリンダ18の角度についても同様である。
【0032】
ブーム角度に関する情報を検知するセンサは、たとえばポテンショメータ33である。ポテンショメータ33は、ブームフートピン21と同心となるように取り付けられている。ブーム角度に関する情報を検知するセンサとして、ポテンショメータ33に代えて、ブームシリンダ18のストロークセンサ35が用いられてもよい。
【0033】
ブーム角度に関する情報を検知するセンサとして、IMU(Inertial Measurement Unit)37、または撮像デバイス(たとえばカメラ)39が用いられてもよい。IMU37は、たとえばブーム15に取り付けられている。撮像デバイス39は、機械本体9(たとえばキャブ5)に取り付けられている。
【0034】
バケット角度に関する情報を検知するセンサは、たとえばポテンショメータ34である。ポテンショメータ34は、支持ピン29と同心となるように取り付けられている。バケット角度に関する情報を検知するセンサとして、ポテンショメータ34に代えて、バケットシリンダ19のストロークセンサ36が用いられてもよい。
【0035】
バケット角度に関する情報を検知するセンサとして、IMU38、または撮像デバイス39が用いられてもよい。IMU38は、たとえばチルトロッド17に取り付けられている。
【0036】
上記のポテンショメータ33、34、ストロークセンサ35、36、IMU37、38、および撮像デバイス39は、作業機3の重心GC1の位置に関する情報を検知するセンサとして用いられてもよい。上記のポテンショメータ33、34、ストロークセンサ35、36、IMU37、38、および撮像デバイス39は、バケット14内の積荷の重心GC2の位置に関する情報を検知するセンサとして用いられてもよい。
【0037】
ホイールローダ1は、角度センサ40をさらに有していてもよい。角度センサ40は、基準である重力方向に垂直な方向(水平面)に対する機械本体9の傾斜角度(ピッチ角度)を検知する。この角度センサ40として、たとえば機械本体9に取り付けられたIMUが用いられてもよい。角度センサ40は、機械本体9に取り付けられていれば、前フレーム11、後フレーム12およびキャブ5のいずれに取り付けられていてもよい。
【0038】
<B.瞬時ペイロード値の算出>
図2は、作業機3の各部の寸法と、4つのモーメントのつり合いとを説明するための図である。図3は、4つのモーメントのうち、作業機3の重量によるモーメントの詳細を説明するための図である。
【0039】
(b1.寸法)
上述した「作業機3の姿勢に関する情報」とは、図2に示すように、寸法Rl2および寸法Rb5である。寸法Rl2は、ブームフートピン21とピン23との間の寸法であって、ブームシリンダ18の延びる方向に直交する方向の寸法である。寸法Rb5は、ブームフートピン21とピン26との間の寸法であって、バケットシリンダ19の延びる方向に直交する方向の寸法である。
【0040】
上述した「作業機3の重心GC1の位置に関する情報」とは、寸法Rl3である。寸法Rl3は、重心GC1とブームフートピン21との間の寸法であって、ホイールローダ1の前後方向に沿う寸法である。寸法Rl3は、ホイールローダ1が水平な地面に載置されている状態においては、重心GC1とブームフートピン21との間の水平方向に沿う寸法である。
【0041】
上述した「バケット14内の積荷の重心GC2の位置に関する情報」とは、寸法Rl1である。寸法Rl1は、重心GC2とブームフートピン21との間の寸法であって、ホイールローダ1の前後方向に沿う寸法である。寸法Rl1は、ホイールローダ1が水平な地面に載置されている状態においては、重心GC2とブームフートピン21との間の水平方向に沿う寸法である。
【0042】
寸法Rb1は、積荷重心GC2とピン22との間の寸法であって、ホイールローダ1の前後方向に沿う寸法である。寸法Rb1は、ホイールローダ1が水平な地面に載置されている状態においては、積荷重心GC2とピン22との間の水平方向に沿う寸法である。
【0043】
寸法Rb2は、ピン22とピン27との間の寸法であって、チルトロッド17の延びる方向に直交する方向における寸法である。寸法Rb3は、ピン27と支持ピン29との間の寸法であって、チルトロッド17の延びる方向に直交する方向における寸法である。寸法Rb4は、ピン26と支持ピン29との間の寸法であって、バケットシリンダ19の延びる方向に直交する方向における寸法である。
【0044】
寸法Rb6は、バケット14の重心GC3とピン22との間の寸法であって、ホイールローダ1の前後方向に沿う寸法である。寸法Rb6は、ホイールローダ1が水平な地面に載置されている状態においては、バケット14の重心GC3とピン22との間の水平方向に沿う寸法である。
【0045】
Rl1,Rl2,Rbi(i=1~6)の値は、作業機3を構成する各部材の設計寸法、ブーム角度、バケット角度に基づき、コントローラ50によって算出される。なお、コントローラ50は、図3に基づき説明するように作業機3の各構成部品についての重心位置を利用した演算を行うため、Rl3の算出は必須ではない。
【0046】
(b2.モーメントのつり合い)
以下では、4つのモーメントのつり合いにより、瞬時ペイロード値Wloadを算出する。図2を参照して、積荷の重量F1によるモーメントaWloadは、以下の式(1)で表される。
【0047】
【数1】
【0048】
なお、式(1)において、gは、重力加速度である。後述する式(4)においても同様である。
【0049】
作業機3の重量F2によるモーメントbWloadは、作業機3の重量F2と、Rl3(図2)との積により求められる。詳しくは、モーメントbWloadは、図3を参照して、以下の式(2)で表される。
【0050】
【数2】
【0051】
なお、式(2)において、Wgbucketは、バケット14の質量である。なお、後述する式(4)でも同様である。Wgtiltrodは、チルトロッド17の質量である。Wgbellcrankは、ベルクランク16の質量である。Wgboomは、ブーム15の質量である。以下ではこれらの質量を、「Wgj」とも表記する(ただし、j=bucket,tiltrod,bellcrank,boom)。
【0052】
Rgbucketは、ブームフートピン21からバケット14の重心までの水平距離である。Rgtiltrodは、ブームフートピン21からチルトロッド17の重心までの水平距離である。Rgbellcrankは、ブームフートピン21からベルクランク16の重心までの水平距離である。Rgboomは、ブームフートピン21からブーム15の重心までの水平距離である。以下では、これらの水平距離を、上記の変数jを用いて「Rgj」とも表記する。
【0053】
βは、空荷補正係数である。βは、重量の異なるバケット14をブーム15に取り付けた場合に、空荷状態を補正する係数である。なお、後述する式(4)でも同様である。
【0054】
MassCorrectionFactorは、ハイリフト用ブーム等、作業機の仕様が異なるときに変更される係数である。標準仕様の場合には、MassCorrectionFactorの値は“1”である。
【0055】
図2を参照し、ブームシリンダ18の推力FcylによるモーメントcWloadは、以下の式(3)で表される。
【0056】
【数3】
【0057】
なお、式(3)において、ηは、ブーム15の油圧伝達効率である。
【0058】
バケット14の反力F4によるモーメントdWloadは、以下の式(4)で表される。
【0059】
【数4】
【0060】
積荷の重量F1によるモーメントaWloadと、作業機3の重量F2によるモーメントbWloadと、ブームシリンダ18の推力FcylによるモーメントcWloadと、バケット14の反力F4によるモーメントdWloadとの間には、以下の式(5)に示すような、つり合いの関係式が成立する。
【0061】
【数5】
【0062】
(b3.瞬時ペイロード値の補正)
式(5)から、瞬時ペイロード値Wloadを求めると、以下の式(6)のとおりとなる。なお、瞬時ペイロード値Wloadは、式(1)と式(4)とに含まれている。
【0063】
【数6】
【0064】
式(6)で得られた瞬時ペイロード値Wloadに対して、積荷補正係数γを掛けるともに、ブームシリンダ18の推力Fcylに対して補正係数δaを掛ける。これにより、以下の式(7)に示すような、補正後の瞬時ペイロード値Wload_CRを得る。
【0065】
【数7】
【0066】
ホイールローダ1のコントローラ50(図4)は、式(7)で示した数式から得られる瞬時ペイロード値Wload_CRに基づき積荷質量を算出する。詳しくは、コントローラ50は、積荷質量を周期的に算出する。コントローラ50は、算出された積荷質量を、キャブ5内のモニタに出力する。たとえば、コントローラ50は、連続した演算周期によって得られた複数の瞬時ペイロード値Wload_CRの平均値を、積荷質量としてモニタに表示する。典型的には、コントローラ50は、作業機3による掘削動作が終了したと判断すると、算出された積荷質量をモニタに表示する。掘削動作終了は、後進状態、ブーム15の上げ、ブームボトム圧の低下等に基づき、コントローラ50によって判断される。
【0067】
<C.補正係数δa
次に、式(7)における補正係数δaについて説明する。コントローラ50は、ブームシリンダ18が不動状態であるか否かを判断する。コントローラ50は、典型的には、ブーム角度θboomが変化していない場合に、ブームシリンダ18が不動状態となっていると判断する。コントローラ50は、ホイールローダ1が走行状態(前進状態、後進状態、停止状態)を判断する。以下の式(8)に示すように、ブームシリンダ18が不動状態かつホイールローダ1が後進状態となっている場合には、コントローラ50は、式(8)内の上の行の数式(分数式)を用いて、ブームシリンダの18の推力Fcylを補正する。
【0068】
それ以外(ブームシリンダ18が動作状態、ホイールローダ1が前進状態または停止状態)の場合には、式(8)内の下の行に示すように、コントローラ50は、補正係数δaの値を“1”とする。すなわち、コントローラ50は、ブームシリンダの18の推力Fcylを補正しない。
【0069】
【数8】
【0070】
なお、式(8)において、Aは定数である。θlowBoomは、ブーム角度に関する定数である。θboomは、ブーム角度(変数)である。avehicleは、機械本体9の水平方向の加速度(変数)を表している。
【0071】
定数Aは、静止摩擦力を発生させる摩擦係数μを増加させる要素を含む。定数Aの値は、ブーム角度毎の加速度avehicleと、ブームシリンダの推力Fcylとの関係に基づき事前に算出される。定数Aの値は、1未満の小数とし得る。具体的には、以下のような手法により定数Aの値を事前に算出する。なお、定数Aの値の算出は、コントローラ50に限らず、他の情報処理装置が行ってもよい。
【0072】
バケット満杯重量水準の簡易試験結果を用いて、ブーム15を停止させた状態での積荷更新区間における加速度avehicleと、ブームシリンダの18の推力Fcylとの関係を見る。積荷後進かつブーム15の停止区間において、検出される加速度avehicleに対する推力Fcylが区間平均の何倍かをプロットすることにより、近似直線の傾きを求める。
【0073】
当該傾きは加速度avehicleの影響度合いの大小を示す。一回掘削動作毎に当該傾きと、その時のブーム角度とを求め、縦軸に傾き、横軸にブーム角度をプロットする。この点群は、積荷後進時のブーム角度が-30°(下限値)のときに傾きが最小、ブーム角度が0°(水平)の時に傾きが0である余弦関数(cos関数)におおよそ沿う。このため、ブーム角度と慣性の影響の大きさとの関係は、当該余弦関数によって決定するものとする。このときの余弦関数の振幅をAとする。なお、ホイールローダ1の機種によって積荷が受けるモーメントは異なるため、定数Aは、ホイールローダの機種毎に設定することが好ましい。
【0074】
θlowBoomの値は、本例では、30°である。ホイールローダ1の走行時に生じる慣性力によってブームシリンダ18が受けるブームシリンダ18の伸縮方向の力が最大となるときのブーム角度が約-30°となるため、θlowBoomを30°とした。具体的には、ブームシリンダ18の姿勢が水平となるときのブーム角度が約-30°となるため、θlowBoomを30°とした。なお、θlowBoomの値は、ホイールローダの機種ごとに適宜設定される。
【0075】
<D.小括>
〔1〕上述した式(7)において、各寸法Rl1,Rl2,Rbi(i=1~6)の値は、作業機3の姿勢によって定まる。式(7)に含まれるbWloadの値も、式(2)に示すように、作業機3の姿勢によって定まる。さらに、式(7)に示されるように、瞬時ペイロード値Wload_CRは、ブームシリンダ18の推力Fcylに比例する。
【0076】
コントローラ50は、上述したように、ブームシリンダ18が不動状態となっており、かつ機械本体9が後進状態の場合には、補正係数δaとして式(8)の上の行の数式を用いて、式(7)で示される瞬時ペイロード値Wload_CRを算出する。式(8)の上の行の数式は、機械本体9の水平方向の加速度avehicleの項を分母に含む。
【0077】
このように、コントローラ50は、ブームシリンダ18が不動状態となっており、かつ機械本体9が後進状態の場合には、作業機3の姿勢とブームシリンダ18の推力Fcylと機械本体9の加速度avehicleとに基づき、バケット14内の積荷質量を算出する。具体的には、コントローラ50は、瞬時ペイロード値Wload_CRを算出してから、積荷質量を求める。
【0078】
なお、機械本体9が一定速度で移動しており、加速度avehicleの値が0となる場合には、式(8)の上の行の数式の値(δaの値)は、結果として“1”となる。すなわち、ブームシリンダ18が動作状態、ホイールローダ1が前進状態または停止状態のときに用いられるδaの値と同じとなる。このように、式(8)の補正係数δaは、機械本体9の加速または減速しているときに作用する係数である。
【0079】
ブームシリンダ18が動作状態、ホイールローダ1が前進状態または停止状態のときには、式(8)より、補正係数δaの値が“1”となる。したがって、この場合、コントローラ50は、作業機3の姿勢とブームシリンダ18の推力Fcylと機械本体9の加速度avehicleとのうち、作業機3の姿勢とブームシリンダ18の推力Fcylとのみに基づき、バケット14内の積荷質量を算出する。すなわち、コントローラ50は、加速度avehicleを考慮せずに、バケット14内の積荷質量を算出する。
【0080】
ところで、ブームシリンダ18が不動状態となっている場合には、ブームシリンダ18のチューブ18aとロッド18bとの間に静止摩擦が発生する。当該静止摩擦が発生しているときは、ブームシリンダ18に加わる慣性力の影響が大きくなる。このため、ブームシリンダ18が不動状態となった場合には、検出されたブームシリンダ18の推力Fcylの値は実際に生じている推力Fcylから乖離してしまう。
【0081】
それゆえ、コントローラ50は、ブームシリンダ18が不動状態となっており、かつ機械本体9が後進状態の場合には、上述したように、作業機3の姿勢およびブームシリンダ18の推力Fcylだけではなく、加速度avehicleにも基づいて、バケット14内の積荷質量を算出する。このように、コントローラ50は、ブームシリンダ18が不動状態かつブームシリンダ18に一定の慣性力が加わっている場合に、加速度avehicleを考慮して、バケット14内の積荷質量を算出する。
【0082】
したがって、ホイールローダ1によれば、ホイールローダ1の後進時(特に、加減速時)において、ブームシリンダ18が不動状態となっているときであっても、バケット内の積荷質量を精度よく算出可能となる。詳しくは、ホイールローダ1によれば、瞬時ペイロード値Wload_CRが精度よく算出されるため、結果として、バケット内の積荷質量を精度よく算出可能となる。
【0083】
より詳しくは、ホイールローダ1は、掘削工程(掬込み)によってバケット14に掘削対象物(土砂等)が掬い込まれた後に、ホイールローダ1を後進させる積荷後進工程を実行する。積荷後進工程では、ホイールローダ1は、通常、ブーム15を低リフト状態としたまま、ブーム角度を変更することなく後進する。その後、ホイールローダ1は、バケット14を上昇させながら、または途中から上昇させた状態を維持しながら、ホイールローダ1を前進させてダンプトラック(図示せず)に接近させる積荷前進工程を実行する。次いで、ホイールローダ1は、所定位置でバケット14をダンプして掘削対象物をダンプトラック荷台上に積み込む排土工程を実行する。
【0084】
ホイールローダ1では、上述したように、ブームシリンダ18が不動状態となっており、かつ機械本体9が後進状態の場合には、上述したように、加速度avehicleを考慮して、バケット14内の積荷質量を算出する。それゆえ、ホイールローダ1によれば、積荷後進工程において、バケット14内の積荷質量を精度よく算出可能となる。ホイールローダ1によれば、積荷前進工程よりも前段階の積荷後進工程において、バケット14内の積荷質量を精度よく算出可能となる。したがって、ホイールローダ1のオペレータは、早いタイミングで、精度の高い積荷質量を知ることができる。
【0085】
〔2〕コントローラ50は、ブームシリンダ18が不動状態かつホイールローダ1が後進状態であると判断したことに基づき、ホイールローダ1が予め定められた距離以上走行したことを条件に、作業機3の姿勢とブームシリンダ18の推力Fcylと加速度avehicleとに基づき積荷質量を算出することが好ましい。
【0086】
積荷後進工程では、ホイールローダ1は、ある程度の距離、後進する。そこで、上記のような走行距離の条件を加えることにより、コントローラ50は、現在の工程が積荷後進工程であることを判断できる。それゆえ、このような構成によれば、ホイールローダ1は、積荷後進工程のときに、加速度avehicleを考慮した、精度の高い積荷質量の算出が可能となる。
【0087】
〔3〕コントローラ50は、ブームシリンダ18が不動状態かつホイールローダ1が後進状態であると判断したことに基づき、式(8)の上の行の数式に示すように、ブーム角度θboomと加速度avehicleとに基づき補正係数δaを算出する。コントローラ50は、さらに、補正係数δaによってブームシリンダ18の推力Fcylを補正することにより積荷質量を算出する。このように、ホイールローダ1によれば、コントローラ50が補正係数δaを用いてブームシリンダ18の推力Fcylを補正することにより、バケット14内の積荷質量を精度よく算出可能となる。
【0088】
〔4〕補正係数δaは、ブーム角度を示す変数(θboom)と、ブーム角度毎の加速度avehicleとブームシリンダの推力Fcylとの関係に基づき算出された定数Aとを含む。このような構成によれば、ホイールローダ1の機種に応じた補正係数δaを事前設定可能となる。
【0089】
〔5〕コントローラ50は、瞬時ペイロード値Wload_CRに基づき、積荷質量を周期的に算出する。コントローラ50は、作業機3による掘削動作(掘削工程)が終了したと判断すると、算出された積荷質量をモニタに表示させる。このような構成によれば、オペレータは、掘削動作(掘削工程)が終了した直後に、積荷質量をモニタで確認することが可能となる。
【0090】
〔6〕コントローラ50は、ブーム角度θboomが変化していない場合に、ブームシリンダ18が不動状態となっていると判断する。このような構成によれば、コントローラ50は、ブーム角度θboomに基づき、ブームシリンダ18が不動状態となっているかを判断できる。
【0091】
<E.機能的構成>
次に、ホイールローダ1の機能的構成について説明する。特に、図1に示すホイールローダ1のバケット14内の積荷質量を計測するコントローラ50の機能ブロックについて図4を用いて説明する。
【0092】
図4は、ホイールローダ1の機能的構成を示した機能ブロック図である。図4に示されるように、ホイールローダ1は、コントローラ50と、入力部51と、表示部52とを備える。入力部51は、操作パネル等の入力装置に対応する。操作パネルは、ハードキー、および/またはソフトウェアキーを含んで構成され得る。表示部52は、モニタに対応する。入力部51と表示部52とは、キャブ5内に設置される。
【0093】
コントローラ50は、記憶部500と、ブームシリンダ推力算出部501と、油圧伝達効率算出部502と、寸法値算出部503と、水平距離算出部504と、不動状態判定部505と、後進判定部506と、水平加速度取得部507と、補正係数決定部508と、瞬時ペイロード値算出部509と、積荷質量算出部510と、表示制御部511とを備える。
【0094】
記憶部500には、入力部51を介して入力された各種のデータが予め記憶されている。記憶部500には、バケット14の質量Wgbucketと、チルトロッド17の質量Wgtiltrodと、ベルクランク16の質量Wgbellcrankと、ブーム15の質量Wgboomと、MassCorrectionFactorと、空荷補正係数βと、積荷補正係数γと、作業機設計寸法値と、作業機設計重心位置とが記憶されている。
【0095】
なお、作業機設計寸法値とは、バケット14、ブーム15、ベルクランク16、チルトロッド17等の作業機3を構成する各部品の設計寸法値である。当該設計寸法値は、たとえばブーム15に関しては、ブームフートピン21が挿入される貫通穴と、バケットピン22が挿入される貫通穴との間の距離、ブームフートピン21が挿入される貫通穴と、ピン24が挿入される貫通穴との間の距離等である。
【0096】
作業機設計重心位置とは、バケット14、ブーム15、ベルクランク16、チルトロッド17等の作業機3を構成する各部品における重心位置(理論値)である。作業機設計重心位置は、各部品における固有の座標系における重心位置である。作業機設計重心位置は、当該各部品に関し、当該部品の特定の位置を原点としたときの座標値として示される。作業機設計重心位置が2次元の座標系で表記可能なように原点の位置を設定できる。この場合、たとえばブーム15については、ブーム15の側面視においてブームフートピン21が挿入される貫通穴の中心を上記特定の位置(原点)とすることができる。
【0097】
作業機設計寸法値は、寸法値算出部503で利用される。作業機設計重心位置は、水平距離算出部504で利用される。バケット14の質量Wgbucketと、チルトロッド17の質量Wgtiltrodと、ベルクランク16の質量Wgbellcrankと、ブーム15の質量Wgboomと、MassCorrectionFactorと、空荷補正係数βと、積荷補正係数γとは、瞬時ペイロード値算出部509で利用される。
【0098】
ブームシリンダ推力算出部501は、圧力センサ31b、31hにより検知されたシリンダ圧力に基づいて、上述したブームシリンダ18の推力Fcylを算出する。具体的には、ブームシリンダ推力算出部501は、圧力センサ31bから取得したブームシリンダ18のボトム圧と、圧力センサ31hから取得したからヘッド圧とに基づいて推力Fcylを周期的に算出する。ブームシリンダ推力算出部501は、取得したブームシリンダ18のボトム圧のみから推力Fcylを算出してもよい。算出された推力Fcylの値は、瞬時ペイロード値算出部509に送られる。
【0099】
油圧伝達効率算出部502は、上述したブーム角度に関する情報を検知するセンサによって検知されたブーム角度θboomの値に基づいて、ブーム15の油圧伝達効率ηを計算する。詳しくは、油圧伝達効率算出部502は、ブーム角度θboomの値の単位時間当たりの変化量を算出し、当該変化量に基づき油圧伝達効率ηを決定する。油圧伝達効率算出部502は、算出された油圧伝達効率ηを瞬時ペイロード値算出部509に送る。算出された油圧伝達効率ηは、上述した式(7)に代入される。
【0100】
なお、ブーム角度θboomの値の単位時間当たりの変化量がゼロの場合には油圧伝達効率ηを算出できないため、油圧伝達効率算出部502は、たとえば、直前に算出された油圧伝達効率ηを瞬時ペイロード値算出部509に送る。
【0101】
上記のように、油圧伝達効率ηを都度計算するのではなく、油圧伝達効率ηとして、事前に決定された一定の値を用いてもよい。
【0102】
寸法値算出部503は、記憶部500に記憶された上記作業機設計寸法値と、バケット角度と、ブーム角度θboomとを用いて、上述した各寸法Rl1,Rl2,Rbi(i=1~6)の値を算出する。寸法値算出部503は、各寸法Rl1,Rl2,Rbi(i=1~6)の値を周期的に算出する。寸法値算出部503は、算出結果を、瞬時ペイロード値算出部509に送る。
【0103】
水平距離算出部504は、記憶部500に記憶された上記作業機設計重心位置と、バケット角度と、ブーム角度θboomとを用いて、上述した水平距離Rgjを算出する。具体的には、水平距離算出部504は、各水平距離Rgbucket,Rgtiltrod,Rgbellcrank,Rgboomを周期的に算出する。水平距離算出部504は、算出結果を、瞬時ペイロード値算出部509に送る。
【0104】
不動状態判定部505は、ブーム角度θboomに基づいて、ブームシリンダ18が不動状態か否かを判定する。不動状態判定部505は、ブーム角度θboomが変化していない場合(単位時間当たりのブーム角度θboomの変化率がゼロの場合)に、ブームシリンダ18が不動状態となっていると判定する。不動状態判定部505は、「動状態」または「不動状態」を表す判定結果を補正係数決定部508に周期的に送る。
【0105】
なお、不動状態の判定手法は、上記に限定されない。たとえば、コントローラ50は、直前の演算周期において算出された瞬時ペイロード値Wload_CRまたは積荷質量の値が、所定の数値範囲の上限から所定の値以上乖離している場合、ブームシリンダ18が不動状態となっていると判定してもよい。
【0106】
後進判定部506は、前後進用の操作レバーの操作情報に基づき、ホイールローダ1が後進状態であるか否かを判定する。後進判定部506は、当該操作レバーが後進位置にある場合、ホイールローダ1が後進状態であると判定する。後進判定部506は、当該操作レバーが前進位置または中立位置にある場合、ホイールローダ1が後進状態でないと判定する。後進判定部506は、判定結果を補正係数決定部508に周期的に送る。
【0107】
水平加速度取得部507は、機械本体9の水平方向の加速度avehicleを周期的に取得する。水平加速度取得部507は、加速度avehicleの値を補正係数決定部508に周期的に送る。
【0108】
加速度avehicleの取得方法は、特に限定されない。たとえば、水平加速度取得部507は、加速度センサ(図示せず)によって検出された水平方向の加速度avehicleを取得する。あるいは、水平加速度取得部507は、IMUによって検出されたデータから、加速度avehicleを算出してもよい。あるいは、水平加速度取得部507は、機械本体9の速度を時間微分することにより、加速度avehicleを算出してもよい。機械本体9の速度から加速度avehicleを算出する場合、当該速度をローパスフィルタによって平滑化した後に、加速度avehicleを算出することが好ましい。
【0109】
補正係数決定部508は、ブーム角度θboomと、不動状態判定部505の判定結果と、後進判定部506の判定結果と、水平加速度取得部507によって取得された加速度avehicleとに基づき、補正係数δaを決定する。具体的には、補正係数決定部508は、上述した式(8)を用いて、補正係数δaを決定する。
【0110】
不動状態判定部505の判定結果が「不動状態」であって、かつ、後進判定部506の判定結果が「後進状態」である場合、補正係数決定部508は、式(8)の上側の行の数式を用いて補正係数δaを周期的に決定する。この場合、補正係数決定部508は、数式(8)に示されるように、加速度avehicleを用いて補正係数δaを決定する。
【0111】
補正係数決定部508は、不動状態判定部505の判定結果が「不動状態」以外、または、後進判定部506の判定結果が「後進状態」以外である場合、式(8)の下側の行に示すように、補正係数δaの値を“1”とする。具体的には、ブームシリンダ18が動いている場合、操作レバーが前進位置または中立位置にある場合には、補正係数決定部508によって、補正係数δaの値が“1”に設定される。
【0112】
補正係数決定部508は、式(8)を用いて計算した補正係数δaの値を、周期的に瞬時ペイロード値算出部509に送る。
【0113】
瞬時ペイロード値算出部509は、各質量Wgbucket,Wgtiltrod,Wgbellcrank,Wgboomと、MassCorrectionFactorと、各補正係数β,γと、推力Fcylと、油圧伝達効率ηと、各寸法Rl1,Rl2,Rbi(i=1~6)と、各水平距離Rgbucket,Rgtiltrod,Rgbellcrank,Rgboomと、補正係数δaとに基づき、瞬時ペイロード値Wload_CRを周期的に算出する。
【0114】
詳しくは、瞬時ペイロード値算出部509は、上述した式(7)を用いて、瞬時ペイロード値Wload_CRを算出する。なお、各質量Wgbucket,Wgtiltrod,Wgbellcrank,Wgboomと、MassCorrectionFactorとは、上述した式(2)に示されるように、式(7)の分子に含まれる“bWload”の算出に利用される。瞬時ペイロード値算出部509は、瞬時ペイロード値Wload_CRを周期的に積荷質量算出部510に送る。
【0115】
積荷質量算出部510は、連続して送られてきた複数の瞬時ペイロード値Wload_CRの平均値を算出し、当該平均値を積荷質量に決定する。たとえば、積荷質量算出部510は、連続して送られてきた5つの瞬時ペイロード値Wload_CRの平均値を積荷質量とする。積荷質量算出部510は、決定した積荷質量を表示制御部511に送る。
【0116】
表示制御部511は、積荷質量を表示部52に表示させる。表示制御部511は、積荷質量を積荷質量算出部510から取得する都度、表示部52に表示される積荷質量の値を更新する。
【0117】
<F.制御構造>
図5は、コントローラ50で実行される処理の流れを説明するためのフロー図である。なお、図5においては、瞬時ペイロード値Wload_CRの算出までの処理を記載している。また、図5に示す一連処理は、周期的に繰り返し実行される。
【0118】
ステップS1において、コントローラ50は、各寸法Rl1,Rl2,Rbi(i=1~6)の値を算出する。ステップS2において、コントローラ50は、各水平距離Rgbucket,Rgtiltrod,Rgbellcrank,Rgboomを算出する。ステップS3において、コントローラ50は、作業機重量によるモーメントbWloadの値を算出する。なお、算出されたbWloadの値は、式(7)に代入される。
【0119】
ステップS4において、コントローラ50は、ブームシリンダ18の推力Fcylを算出する。ステップS5において、コントローラ50は、ブーム角度θboomの単位時間当たりの変化量に基づき、油圧伝達効率ηを算出する。なお、上述したように、ブーム角度θboomの値の単位時間当たりの変化量がゼロの場合には、コントローラ50は、たとえば、直前に算出された油圧伝達効率ηを用いる。
【0120】
ステップS6において、コントローラ50は、ブームシリンダ18が不動状態であるか否かを判定する。ブームシリンダ18が不動状態であると判定された場合(ステップS6においてYES)、コントローラ50は、ホイールローダ1が後進状態(後進中)であるか否かを判定する。
【0121】
ブームシリンダ18が不動状態でないと判定された場合(ステップS6においてNO)またはホイールローダ1が後進状態でないと判定された場合(ステップS7においてNO)、コントローラ50は、ステップS8において、補正係数δaの値を“1”に設定する。詳しくは、コントローラ50は、上述した式(8)を参照して、補正係数δaの値を“1”に設定する。
【0122】
ホイールローダ1が後進状態であると判定された場合(ステップS7においてYES)、ステップS10において、コントローラ50は、加速度avehicleの値を取得する。さらに、ステップS11において、コントローラ50は、加速度avehicleの値を用いて、補正δaの値を算出する。具体的には、コントローラ50は、式(8)の上側の行の数式を用いて、補正係数δaの値を算出する。
【0123】
ステップS8またはステップS11の後、ステップS9において、コントローラ50は、補正係数δaの値を上述した式(7)に代入することにより、瞬時ペイロード値Wload_CRを算出する。
【0124】
<G.変形例>
(1)上記においては、ブームシリンダ18が不動状態となっている場合に、ホイールローダ1が後進状態であることを条件に、加速度avehicleの値を用いて補正係数δaの値を算出した。しかしながら、これに限定されるものではない。
【0125】
たとえば、ホイールローダ1が後進状態であるか否かにかかわらず、ブームシリンダ18が不動状態となっていることを条件に、コントローラ50は、加速度avehicleの値を用いて補正係数δaの値を算出し、かつ、補正係数δaの値を用いて瞬時ペイロード値Wload_CRを算出してもよい。
【0126】
あるいは、ブームシリンダ18が不動状態となっている場合に、ホイールローダ1が後進状態かつ減速中であることを条件に、加速度avehicleの値を用いて補正係数δaの値を算出し、かつ、補正係数δaの値を用いて瞬時ペイロード値Wload_CRを算出してもよい。掘削工程(掬込み)では、ホイールローダ1が後ろ向きに加速し、その後、減速する。次いで、上述した積荷前進工程が実行される。したがって、上記の構成によれば、積荷前進工程の前に瞬時ペイロード値Wload_CRを算出可能となる。
【0127】
(2)コントローラ50は、瞬時ペイロード値Wload_CRを積荷質量として、表示部52に出力してもよい。コントローラ50は、瞬時ペイロード値Wload_CRの平均を算出せずに、瞬時ペイロード値Wload_CRを表示部52に表示してもよい。
【0128】
<付記>
[項目1]
走行体が取り付けられる本体と、
前記本体の水平方向の加速度を取得する加速度センサと、
前記本体に取り付けられるブームと、前記ブームに取り付けられるバケットとを含む作業機と、
前記本体に対する前記ブームの角度を変化させるアクチュエータと、
前記アクチュエータを動作させるコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記アクチュエータが不動状態であると判断したことに基づき、前記作業機の姿勢と前記アクチュエータの推力と前記加速度とに基づき、前記バケット内の積荷質量を算出する、作業機械。
【0129】
[項目2]
前記コントローラは、前記アクチュエータが前記不動状態であると判断したことに基づき、前記本体が後進かつ減速中であることを条件に、前記姿勢と前記推力と前記加速度とに基づき前記積荷質量を算出する、項目1に記載の作業機械。
【0130】
[項目3]
前記コントローラは、前記アクチュエータが前記不動状態であると判断したことに基づき、前記作業機械が予め定められた距離以上走行したことを条件に、前記姿勢と前記推力と前記加速度とに基づき前記積荷質量を算出する、項目1または2に記載の作業機械。
【0131】
[項目4]
前記姿勢は、前記本体に対する前記ブームの角度を含み、
前記コントローラは、前記アクチュエータが前記不動状態であると判断したことに基づき、前記ブームの角度と前記加速度とに基づき補正係数を算出し、かつ、前記補正係数によって前記推力を補正することにより前記積荷質量を算出する、項目1から3のいずれか1項に記載の作業機械。
【0132】
[項目5]
前記補正係数は、前記ブームの角度を示す変数と、前記ブームの角度毎の前記加速度と前記アクチュエータの推力との関係に基づき算出された定数とを含む、項目4に記載の作業機械。
【0133】
[項目6]
モニタをさらに備え、
前記コントローラは、
前記積荷質量を周期的に算出し、
前記作業機による掘削動作が終了したと判断すると、算出された前記積荷質量を前記モニタに表示させる、項目1から5のいずれか1項に記載の作業機械。
【0134】
[項目7]
前記姿勢は、前記本体に対する前記ブームの角度を含み、
前記コントローラは、前記ブームの角度が変化していない場合、前記アクチュエータが前記不動状態であると判断する、項目1から6のいずれか1項に記載の作業機械。
【0135】
[項目8]
前記コントローラは、前記アクチュエータが動作している動作状態であると判断したことに基づき、前記姿勢と前記推力と前記加速度とのうちの前記姿勢と前記推力とのみに基づき、前記バケット内の積荷質量を算出する、項目1から7のいずれか1項に記載の作業機械。
【0136】
[項目9]
前記姿勢を検出する第1のセンサと、
前記推力を検出する第2のセンサとをさらに備え、
前記コントローラは、前記第1のセンサによる前記検出の結果と、前記第2のセンサによる前記検出の結果とをさらに取得する、項目1から8のいずれか1項に記載の作業機械。
【0137】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0138】
1 ホイールローダ、2 車体フレーム、3 作業機、4 走行装置、4a 走行輪、5 キャブ、6 カウンタウエイト、9 機械本体、11 前フレーム、12 後フレーム、13 ステアリングシリンダ、14 バケット、15 ブーム、16 ベルクランク、17 チルトロッド、18 ブームシリンダ、18a チューブ、18b ロッド、18c ピストン、19 バケットシリンダ、21 ブームフートピン、22 バケットピン、29 支持ピン、31b,31h,32b,32h 圧力センサ、33,34 ポテンショメータ、35,36 ストロークセンサ、39 撮像デバイス、40 角度センサ、50 コントローラ、51 入力部、52 表示部、500 記憶部、501 ブームシリンダ推力算出部、502 油圧伝達効率算出部、503 寸法値算出部、504 水平距離算出部、505 不動状態判定部、506 後進判定部、507 水平加速度取得部、508 補正係数決定部、509 瞬時ペイロード値算出部、510 積荷質量算出部、511 表示制御部。
図1
図2
図3
図4
図5