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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154698
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】作業機械および積荷質量算出方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
E02F9/20 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068670
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 実
(72)【発明者】
【氏名】小山 幹
(72)【発明者】
【氏名】古賀 泰樹
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB03
2D003BA02
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB02
2D003DB04
2D003DB05
(57)【要約】
【課題】作業機械の走行時、バケット内の積荷質量を精度よく算出可能な作業機械を提供する。
【解決手段】作業機械は、走行体が取り付けられる本体と、本体に取り付けられるブームと、ブームに取り付けられるバケットとを含む作業機と、本体に対するブームの角度を変化させるブームシリンダと、ブームシリンダの推力を検出するセンサと、本体に対するブームシリンダの姿勢に基づき検出された推力の値を補正し、かつ、補正後の推力の値を用いてバケット内の積荷質量を算出するコントローラと、を備える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体が取り付けられる本体と、
前記本体に取り付けられるブームと、前記ブームに取り付けられるバケットとを含む作業機と、
前記本体に対する前記ブームの角度を変化させるブームシリンダと、
前記ブームシリンダの推力を検出するセンサと、
前記本体に対する前記ブームシリンダの姿勢に基づき前記検出された推力の値を補正し、かつ、前記補正後の推力の値を用いて前記バケット内の前記積荷質量を算出するコントローラと、を備える、作業機械。
【請求項2】
前記コントローラは、前記作業機械が積荷搬送工程中であると判断されたことを条件に、前記補正後の推力の値を用いて前記バケット内の前記積荷質量を算出する、請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記コントローラは、前記ブームシリンダの姿勢が水平状態であるとき、および/または、前記作業機械が後進状態にあるときに、前記作業機械が積荷搬送工程中と判断する、請求項2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記コントローラは、
前記作業機械の走行時に生じる慣性力によって前記ブームシリンダが受ける前記ブームシリンダの伸縮方向の力が最大となるときの前記ブームの角度を示した角度データを予め記憶しており、
前記角度データをさらに用いて前記検出された推力を補正することにより、前記バケット内の前記積荷質量を算出する、請求項1から3のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項5】
前記ブームを前記本体に接続するブームフートピンをさらに備え、
前記角度データは、前記ブームシリンダで発生する反力のうち前記ブームシリンダの伸縮方向の力についての前記ブームフートピン回りのモーメントが最大となるときの前記ブームの角度である、請求項4に記載の作業機械。
【請求項6】
前記コントローラは、前記ブームシリンダの推力を第1の変数として含む第1の演算式に対して前記第1の変数の値を補正するための補正係数を乗じることにより得られた第2の演算式を記憶しており、
前記補正係数は、第2の変数として、前記ブームシリンダの角度または前記ブームの角度を含み、
前記第1の演算式は、前記バケット内の積荷によるモーメントと前記作業機の重量によるモーメントとの和と、前記ブームシリンダの推力によるモーメントと前記バケットの反力によるモーメントとの和とのつり合いから導かれ、
前記コントローラは、前記第2の演算式に基づき、前記バケット内の前記積荷質量を算出する、請求項1に記載の作業機械。
【請求項7】
前記コントローラは、前記ブームシリンダの姿勢を、前記ブームシリンダの角度に基づき算出する、請求項1に記載の作業機械。
【請求項8】
前記ブームシリンダは、前記本体に取り付けられる基端部と、前記バケットに取り付けられる先端部とを有し、
前記コントローラは、前記ブームシリンダの姿勢を、前記ブームの寸法と、前記本体に対する前記基端部の取り付け位置と、前記バケットに対する前記先端部の取り付け位置と、前記本体に対する前記ブームの角度とに基づき算出する、請求項1に記載の作業機械。
【請求項9】
前記ブームシリンダの角度を検出する第1のセンサと、
前記推力を検出する第2のセンサとをさらに備え、
前記コントローラは、前記第1のセンサによる前記検出の結果と、前記第2のセンサによる前記検出の結果とをさらに取得する、請求項7に記載の作業機械。
【請求項10】
前記ブームの角度を検出する第1のセンサと、
前記推力を検出する第2のセンサとをさらに備え、
前記コントローラは、前記第1のセンサによる前記検出の結果と、前記第2のセンサによる前記検出の結果とをさらに取得する、請求項8に記載の作業機械。
【請求項11】
自走可能な作業機械の積荷質量算出方法であって、
ブームとバケットとを含む作業機が接続された本体に対するブームの角度を変化させるブームシリンダの推力を検出するステップと、
前記本体に対する前記ブームシリンダの姿勢に基づき、前記検出された推力を補正するステップと、
前記補正後の推力の値を用いて、前記バケット内の積荷質量を算出するステップと、を備える、積荷質量算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械および作業機械における積荷質量算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特開2021-95710号公報(特許文献1)に開示されているように、作業機械に含まれるコントローラがバケット内の積荷質量を算出することが行われている。特許文献1では、コントローラは、ブームを動作させるブームシリンダの推力を変数として含む演算式を利用して、バケット内の積荷質量を算出する。当該演算式は、ブームフートピン周りのモーメントのつり合い式から導出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-95710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業機械の走行によってブームシリンダに一定の慣性力が加わった場合、作業機械の本体に対するブームの角度またはブームシリンダの角度に応じて、ブームシリンダの伸縮方向に加わる慣性力の成分の大きさは異なる。このため、検出されたブームシリンダの推力の値を上記演算式に代入しても、バケット内の積荷質量を精度よく算出できない場合がある。
【0005】
本開示は、作業機械の走行時、バケット内の積荷質量を精度よく算出可能な作業機械および積荷質量算出方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある局面に従うと、作業機械は、走行体が取り付けられる本体と、本体に取り付けられるブームと、ブームに取り付けられるバケットとを含む作業機と、本体に対するブームの角度を変化させるブームシリンダと、ブームシリンダの推力を検出するセンサと、本体に対するブームシリンダの姿勢に基づき検出された推力の値を補正し、かつ、補正後の推力の値を用いてバケット内の積荷質量を算出するコントローラと、を備える。
【0007】
本開示の他の局面に従うと、自走可能な作業機械の積荷質量算出方法は、ブームとバケットとを含む作業機が接続された本体に対するブームの角度を変化させるブームシリンダの推力を検出するステップと、本体に対するブームシリンダの姿勢に基づき、検出された推力を補正するステップと、補正後の推力の値を用いて、バケット内の積荷質量を算出するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
上記の開示によれば、作業機械の走行時、バケット内の積荷質量を精度よく算出可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ホイールローダの側面図である。
図2】作業機の各部の寸法と、4つのモーメントのつり合いとを説明するための図である。
図3】作業機の重量によるモーメントの詳細を説明するための図である。
図4】ブームの側面図である。
図5】ホイールローダの走行時における、力のつり合いを説明する図である。
図6】ホイールローダの機能的構成を示した機能ブロック図である。
図7】コントローラで実行される処理の流れを説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、明細書および図面において、同一の構成要素または対応する構成要素には、同一の符号を付し、重複する説明を繰り返さない。また、図面では、説明の便宜上、構成を省略または簡略化している場合もある。また、各実施の形態と各変形例との少なくとも一部は、互いに任意に組み合わされてもよい。
【0011】
<A.作業機械の構成>
本実施の形態に係る作業機械の一例としてホイールローダの構成について図1を用いて説明する。なお本実施の形態における作業機械はホイールローダに限定されるものではない。本実施の形態の作業機械は、走行しながら掘削する車輪を有する作業機械であればよく、バックホーローダ、スキッドステアローダなどであってもよい。
【0012】
図1は、実施の形態1に係る作業機械の一例としてのホイールローダの側面図である。図1に示されるように、ホイールローダ1は、車体フレーム2と、作業機3と、走行装置4と、キャブ5とを有している。ホイールローダ1は、後述するバケット14内の積荷質量を計測するコントローラ50(図6)をさらに有している。
【0013】
車体フレーム2およびキャブ5からホイールローダ1の機械本体9が構成されている。キャブ5内には、オペレータが着座するシート、操作装置、およびモニタなどが配置されている。操作装置は、走行(前後進)用の操作レバー(以下、「走行レバー」とも称する)、作業機3用の操作レバー、入力装置等を含む。ホイールローダ1の機械本体9には、作業機3および走行装置4が取り付けられている。作業機3は機械本体9の前方に配置されており、機械本体9の最後端にはカウンタウエイト6が設けられている。
【0014】
車体フレーム2は、前フレーム11と後フレーム12とを含んでいる。前フレーム11と後フレーム12とには、ステアリングシリンダ13が取り付けられている。ステアリングシリンダ13は、油圧シリンダである。ステアリングシリンダ13はステアリングポンプ(図示せず)からの作動油で伸縮する。ステアリングシリンダ13の伸縮により、前フレーム11と後フレーム12とは互いに左右方向に揺動可能である。これにより、ホイールローダ1の進行方向が左右に変更可能である。
【0015】
本明細書中において、ホイールローダ1が直進走行する方向を、ホイールローダ1の前後方向という。ホイールローダ1の前後方向において、車体フレーム2に対して作業機3が配置されている側を前方向とし、前方向と反対側を後方向とする。ホイールローダ1の左右方向とは、平面視において前後方向と直交する方向である。前方向を見て左右方向の右側、左側が、それぞれ右方向、左方向である。ホイールローダ1の上下方向とは、前後方向および左右方向によって定められる平面に直交する方向である。上下方向において地面のある側が下側、空のある側が上側である。
【0016】
走行装置4は、走行輪4a、4bを含んでいる。走行輪4a、4bの各々は車輪であり、ゴムよりなるタイヤを有している。走行輪(前輪)4aは、前フレーム11に回転可能に取り付けられている。走行輪(後輪)4bは、後フレーム12に回転可能に取り付けられている。ホイールローダ1は、走行輪4a、4bが回転駆動されることにより自走可能である。
【0017】
作業機3は、掘削などの作業を行うためのものである。作業機3は、前フレーム11に取り付けられている。作業機3は、バケット14と、ブーム15と、ベルクランク16と、チルトロッド17、ブームシリンダ18と、バケットシリンダ19とを含んでいる。
【0018】
ブーム15の基端部は、ブームフートピン21によって前フレーム11に回転自在に取付けられている。これによりブーム15は機械本体9に回転可能に取り付けられている。バケット14は、バケットピン22によってブーム15の先端に回転自在に取付けられている。
【0019】
ブームシリンダ18はブーム15を駆動する。ブームシリンダ18の一端は、機械本体9の前フレーム11にピン23によって回転可能に取り付けられている。これによりブームシリンダ18は、機械本体9に回転可能に取り付けられている。ブームシリンダ18の他端は、ブーム15にピン24によって回転可能に取り付けられている。
【0020】
ブームシリンダ18はたとえば油圧シリンダである。ブームシリンダ18は、作業機ポンプ(図示せず)からの作動油によって伸縮する。これによりブーム15が駆動し、ブーム15の先端に取り付けられたバケット14が昇降する。
【0021】
ブームシリンダ18は、機械本体9に取り付けられたチューブ18a(シリンダチューブ)と、ブーム15に取り付けられ、かつチューブ18aに対してブームシリンダ18の推力Fcylにより移動するロッド18b(ピストンロッド)とを有する。ロッド18bは、ピストン18cを有する。油圧によりピストン18cがチューブ18a内を移動することにより、ブームシリンダ18のストローク長が変化する。
【0022】
ベルクランク16は、支持ピン29によってブーム15に回転自在に支持されている。ベルクランク16は、支持ピン29の一方側に位置する第1端部と、支持ピン29に対して第1端部と反対側に位置する第2端部とを有している。ベルクランク16の第1端部はチルトロッド17を介在してバケット14に接続されている。ベルクランク16の第2端部はバケットシリンダ19を介在して機械本体9の前フレーム11に接続されている。
【0023】
チルトロッド17の一端はベルクランク16の第1端部にピン27によって回転可能に取り付けられている。チルトロッド17の他端はバケット14にピン28によって回転可能に取り付けられている。
【0024】
バケットシリンダ19は、ブーム15に対してバケット14を駆動する。バケットシリンダ19は、一端と、一端の反対側の他端とを有している。バケットシリンダ19の一端は機械本体9の前フレーム11にピン25によって回転可能に取り付けられている。バケットシリンダ19の他端はベルクランク16の第2端部にピン26によって回転可能に取り付けられている。
【0025】
バケットシリンダ19はたとえば油圧シリンダである。バケットシリンダ19は、作業機ポンプ(図示せず)からの作動油によって伸縮する。これによりバケット14が駆動し、バケット14がブーム15に対して上下に回動する。
【0026】
ホイールローダ1は、ブームシリンダ18の推力Fcyl(に関する情報を検知するセンサと、バケットシリンダ19の推力に関する情報を検知するセンサ(第の2センサ)とをさらに有している。
【0027】
ブームシリンダ18の推力に関する情報を検知するセンサは、たとえば圧力センサ31b、31hである。圧力センサ31b、31hの各々は、ブームシリンダ18のシリンダ圧力を検知する。圧力センサ31bは、ブームシリンダ18のボトム圧を検知する。圧力センサ31hは、ブームシリンダ18のヘッド圧を検知する。
【0028】
ヘッド圧とは油圧シリンダのピストンに対してシリンダーロッド側の圧力を意味し、ボトム圧とはピストンに対してチューブ側の圧力を意味する。
【0029】
バケットシリンダ19の推力に関する情報を検知するセンサは、たとえば圧力センサ32b、32hである。圧力センサ32b、32hの各々は、バケットシリンダ19のシリンダ圧力を検知する。圧力センサ32bは、バケットシリンダ19のボトム圧を検知する。圧力センサ32hは、バケットシリンダ19のヘッド圧を検知する。
【0030】
ホイールローダ1は、作業機3の姿勢に関する情報を検知するセンサをさらに有している。作業機3の姿勢に関する情報を検知するセンサは、たとえばブーム角度に関する情報を検知するセンサ(第1のセンサ)と、ブームに対するバケット角度に関する情報を検知するセンサとを含む。作業機3の姿勢に関する情報の詳細については後述する(図2)。
【0031】
ブーム角度は、機械本体9の前フレーム11に対するブーム15の角度である。バケット角度は、ブーム15に対するバケット14の角度である。詳しくは、ブーム角度は、ホイールローダ1の側面視(図1)において、車体の前後方向に延びる仮想軸(詳しくは、ホイールローダ1が水平状態の場合に水平となる軸)とブーム15とがなす角である。なお、この点については、後述するブームシリンダ18の角度についても同様である。
【0032】
ブーム角度に関する情報を検知するセンサは、たとえばポテンショメータ33である。ポテンショメータ33は、ブームフートピン21と同心となるように取り付けられている。ブーム角度に関する情報を検知するセンサとして、ポテンショメータ33に代えて、ブームシリンダ18のストロークセンサ35が用いられてもよい。
【0033】
ブーム角度に関する情報を検知するセンサとして、IMU(Inertial Measurement Unit)37、または撮像デバイス(たとえばカメラ)39が用いられてもよい。IMU37は、たとえばブーム15に取り付けられている。撮像デバイス39は、機械本体9(たとえばキャブ5)に取り付けられている。
【0034】
バケット角度に関する情報を検知するセンサは、たとえばポテンショメータ34である。ポテンショメータ34は、支持ピン29と同心となるように取り付けられている。バケット角度に関する情報を検知するセンサとして、ポテンショメータ34に代えて、バケットシリンダ19のストロークセンサ36が用いられてもよい。
【0035】
バケット角度に関する情報を検知するセンサとして、IMU38、または撮像デバイス39が用いられてもよい。IMU38は、たとえばチルトロッド17に取り付けられている。
【0036】
上記のポテンショメータ33、34、ストロークセンサ35、36、IMU37、38、および撮像デバイス39は、作業機3の重心GC1の位置に関する情報を検知するセンサとして用いられてもよい。上記のポテンショメータ33、34、ストロークセンサ35、36、IMU37、38、および撮像デバイス39は、バケット14内の積荷の重心GC2の位置に関する情報を検知するセンサとして用いられてもよい。
【0037】
ホイールローダ1は、角度センサ40をさらに有していてもよい。角度センサ40は、基準である重力方向に垂直な方向(水平面)に対する機械本体9の傾斜角度(ピッチ角度)を検知する。この角度センサ40として、たとえば機械本体9に取り付けられたIMUが用いられてもよい。角度センサ40は、機械本体9に取り付けられていれば、前フレーム11、後フレーム12およびキャブ5のいずれに取り付けられていてもよい。
【0038】
<B.瞬時ペイロード値の算出>
図2は、作業機3の各部の寸法と、4つのモーメントのつり合いとを説明するための図である。図3は、4つのモーメントのうち、作業機3の重量によるモーメントの詳細を説明するための図である。
【0039】
(b1.寸法)
上述した「作業機3の姿勢に関する情報」とは、図2に示すように、寸法Rl2および寸法Rb5である。寸法Rl2は、ブームフートピン21とピン23との間の寸法であって、ブームシリンダ18の延びる方向に直交する方向の寸法である。寸法Rb5は、ブームフートピン21とピン26との間の寸法であって、バケットシリンダ19の延びる方向に直交する方向の寸法である。
【0040】
上述した「作業機3の重心GC1の位置に関する情報」とは、寸法Rl3である。寸法Rl3は、重心GC1とブームフートピン21との間の寸法であって、ホイールローダ1の前後方向に沿う寸法である。寸法Rl3は、ホイールローダ1が水平な地面に載置されている状態においては、重心GC1とブームフートピン21との間の水平方向に沿う寸法である。
【0041】
上述した「バケット14内の積荷の重心GC2の位置に関する情報」とは、寸法Rl1である。寸法Rl1は、重心GC2とブームフートピン21との間の寸法であって、ホイールローダ1の前後方向に沿う寸法である。寸法Rl1は、ホイールローダ1が水平な地面に載置されている状態においては、重心GC2とブームフートピン21との間の水平方向に沿う寸法である。
【0042】
寸法Rb1は、積荷重心GC2とピン22との間の寸法であって、ホイールローダ1の前後方向に沿う寸法である。寸法Rb1は、ホイールローダ1が水平な地面に載置されている状態においては、積荷重心GC2とピン22との間の水平方向に沿う寸法である。
【0043】
寸法Rb2は、ピン22とピン27との間の寸法であって、チルトロッド17の延びる方向に直交する方向における寸法である。寸法Rb3は、ピン27と支持ピン29との間の寸法であって、チルトロッド17の延びる方向に直交する方向における寸法である。寸法Rb4は、ピン26と支持ピン29との間の寸法であって、バケットシリンダ19の延びる方向に直交する方向における寸法である。
【0044】
寸法Rb6は、バケット14の重心GC3とピン22との間の寸法であって、ホイールローダ1の前後方向に沿う寸法である。寸法Rb6は、ホイールローダ1が水平な地面に載置されている状態においては、バケット14の重心GC3とピン22との間の水平方向に沿う寸法である。
【0045】
Rl1,Rl2,Rbi(i=1~6)の値は、作業機3を構成する各部材の設計寸法、ブーム角度、バケット角度に基づき、コントローラ50によって算出される。なお、コントローラ50は、図3に基づき説明するように作業機3の各構成部品についての重心位置を利用した演算を行うため、Rl3の算出は必須ではない。
【0046】
(b2.モーメントのつり合い)
以下では、4つのモーメントのつり合いにより、瞬時ペイロード値Wloadを算出する。図2を参照して、積荷の重量F1によるモーメントaWloadは、以下の式(1)で表される。
【0047】
【数1】
【0048】
なお、式(1)において、gは、重力加速度である。後述する式(4)においても同様である。
【0049】
作業機3の重量F2によるモーメントbWloadは、作業機3の重量F2と、Rl3(図2)との積により求められる。詳しくは、モーメントbWloadは、図3を参照して、以下の式(2)で表される。
【0050】
【数2】
【0051】
なお、式(2)において、Wgbucketは、バケット14の質量である。なお、後述する式(4)でも同様である。Wgtiltrodは、チルトロッド17の質量である。Wgbellcrankは、ベルクランク16の質量である。Wgboomは、ブーム15の質量である。以下ではこれらの質量を、「Wgj」とも表記する(ただし、j=bucket,tiltrod,bellcrank,boom)。
【0052】
Rgbucketは、ブームフートピン21からバケット14の重心までの水平距離である。Rgtiltrodは、ブームフートピン21からチルトロッド17の重心までの水平距離である。Rgbellcrankは、ブームフートピン21からベルクランク16の重心までの水平距離である。Rgboomは、ブームフートピン21からブーム15の重心までの水平距離である。以下では、これらの水平距離を、上記の変数jを用いて「Rgj」とも表記する。
【0053】
βは、空荷補正係数である。βは、重量の異なるバケット14をブーム15に取り付けた場合に、空荷状態を補正する係数である。なお、後述する式(4)でも同様である。
【0054】
MassCorrectionFactorは、ハイリフト用ブーム等、作業機の仕様が異なるときに変更される係数である。標準仕様の場合には、MassCorrectionFactorの値は“1”である。
【0055】
図2を参照し、ブームシリンダ18の推力FcylによるモーメントcWloadは、以下の式(3)で表される。
【0056】
【数3】
【0057】
なお、式(3)において、ηは、ブーム15の油圧伝達効率である。
【0058】
バケット14の反力F4によるモーメントdWloadは、以下の式(4)で表される。
【0059】
【数4】
【0060】
積荷の重量F1によるモーメントaWloadと、作業機3の重量F2によるモーメントbWloadと、ブームシリンダ18の推力FcylによるモーメントcWloadと、バケット14の反力F4によるモーメントdWloadとの間には、以下の式(5)に示すような、つり合いの関係式が成立する。
【0061】
【数5】
【0062】
(b3.瞬時ペイロード値の補正)
式(5)から、瞬時ペイロード値Wloadを求めると、以下の式(6)のとおりとなる。なお、瞬時ペイロード値Wloadは、式(1)と式(4)とに含まれている。
【0063】
【数6】
【0064】
式(6)で得られた瞬時ペイロード値Wloadに対して、積荷補正係数γを掛けるともに、ブームシリンダ18の推力Fcylに対して補正係数δaを掛ける。これにより、以下の式(7)に示すような、補正後の瞬時ペイロード値Wload_CRを得る。
【0065】
【数7】
【0066】
ホイールローダ1のコントローラ50(図6)は、式(7)で示した数式から得られる瞬時ペイロード値Wload_CRに基づき積荷質量を算出する。詳しくは、コントローラ50は、積荷質量を周期的に算出する。コントローラ50は、算出された積荷質量を、キャブ5内のモニタに出力する。たとえば、コントローラ50は、連続した演算周期によって得られた複数の瞬時ペイロード値Wload_CRの平均値を、積荷質量としてモニタに表示する。典型的には、コントローラ50は、作業機3による掘削動作が終了したと判断すると、算出された積荷質量をモニタに表示する。掘削動作終了は、後進状態、ブーム15の上げ、ブームボトム圧の低下等に基づき、コントローラ50によって判断される。
【0067】
<C.補正係数δa
次に、式(7)における補正係数δaについて説明する。以下の式(8)に示すように、ホイールローダ1が積荷搬送工程中(ホイールローダ1の状態が積荷搬送状態)の場合には、コントローラ50は、式(8)内の上の行の数式(分数式)を用いて、ブームシリンダの18の推力Fcylを補正する。本例では、コントローラ50は、ブームシリンダ18の姿勢が水平状態であるとき、および/または、ホイールローダ1が後進状態であるときに、ホイールローダ1が積荷搬送工程中と判断する。
【0068】
それ以外の場合(ホイールローダ1が積荷搬送工程中でない場合)には、式(8)内の下の行に示すように、コントローラ50は、補正係数δaの値を“1”とする。すなわち、コントローラ50は、ブームシリンダの18の推力Fcylを補正しない。
【0069】
【数8】
【0070】
なお、式(8)において、Aは定数である。θlowBoomは、ブーム角度に関する定数である。θboomは、ブーム角度(変数)である。avehicleは、機械本体9の水平方向の加速度(変数)を表している。
【0071】
定数Aの値は、ブーム角度毎の加速度avehicleと、ブームシリンダの推力Fcylとの関係に基づき事前に算出される。定数Aの値は、1未満の小数とし得る。具体的には、以下のような手法により定数Aの値を事前に算出する。なお、定数Aの値の算出は、コントローラ50に限らず、他の情報処理装置が行ってもよい。
【0072】
バケット満杯重量水準の簡易試験結果を用いて、ブーム15を停止させた状態での積荷更新区間における加速度avehicleと、ブームシリンダの18の推力Fcylとの関係を見る。積荷後進かつブーム15の停止区間において、検出される加速度avehicleに対する推力Fcylが区間平均の何倍かをプロットすることにより、近似直線の傾きを求める。
【0073】
当該傾きは加速度avehicleの影響度合いの大小を示す。一回掘削動作毎に当該傾きと、その時のブーム角度とを求め、縦軸に傾き、横軸にブーム角度をプロットする。この点群は、積荷後進時のブーム角度が-30°(下限値)のときに傾きが最小、ブーム角度が0°(水平)の時に傾きが0である余弦関数(cos関数)におおよそ沿う。このため、ブーム角度と慣性の影響の大きさとの関係は、当該余弦関数によって決定するものとする。このときの余弦関数の振幅をAとする。なお、ホイールローダ1の機種によって積荷が受けるモーメントは異なるため、定数Aは、ホイールローダの機種毎に設定することが好ましい。
【0074】
図4および図5を参照して、θlowBoomの算出方法について説明する。図4は、ブーム15の側面図である。なお、θlowBoomは、本発明の「角度データ」の一例である。
【0075】
図4に示されるように、ブーム15の側面視において、ブームフートピン21が挿入される貫通穴の中心を位置Paとする。バケットピン22が挿入される貫通穴の中心を位置Pbとする。ブームシリンダ18をブーム15に固定するピン24(図1)が挿入される貫通穴の中心を位置Pcとする。支持ピン29が挿入される貫通穴の中心を位置Pdとする。さらに、ブームシリンダ18を機械本体9に固定するピン23(図1)が挿入される貫通穴の中心を位置Peとする。
【0076】
図4に示すとおり、位置Paと位置Pbとの間の距離をL1とする。なお、以下では、位置Paから位置Pbに向かう方向をP方向とする。P方向に直交する方向をQ方向とする。同様に、位置Paと位置Pcとの間のP方向の距離をL2とする。位置Paと位置Pcとの間のQ方向の距離をL3とする。位置Paと位置Pdとの間のP方向の距離をL4とする。位置Pbと位置Pdとの間のQ方向の距離をL5とする。なお、距離L1~L5の各々は、一定の値であり、変化しない。
【0077】
θlowBoomの算出の際には、距離L1~L5のうち、距離L2と距離L3とが用いられる。以下では、位置Paと位置Pcとの間の距離をLとする。なお、距離Lは、三平方の定理から、距離L2の二乗と距離L3の二乗とを足し合わせた値の平方根の値(すなわち、L=(L2+L31/2)となる。
【0078】
以下では、位置Paを原点としたXY座標系を用いて説明する。当該XY座標系は、鉛直上向きがY軸とし、ホイールローダ1の進行方向かつ水平方向の向きをX軸とする2次元座標系である。
【0079】
ブーム角度θboomを用いて、位置PcのX座標であるCとY座標であるCとは、それぞれ、以下の式(9)と式(10)とで表される。なお、式(9)および式(10)におけるλは、以下の式(11)で示される定数である。
【0080】
【数9】
【0081】
【数10】
【0082】
【数11】
【0083】
ブームシリンダ18の機械本体9への取付位置(すなわち、位置Pe)のx座標とy座標とを、それぞれ、xcmt,ycmtとすると、機械本体9に対するブームシリンダ18の角度α(変数)は、以下の式(12)によって求められる。
【0084】
【数12】
【0085】
したがって、ブームシリンダ18の角度αは、ブーム角度θboomの関数であることが分かる。
【0086】
ブーム15の機械本体9への取付位置(すなわち、位置Pa)のx座標とy座標とを、それぞれ、xbmt,ybmtとすると、上述した寸法Rl2(図2)は、以下の式(13)で求められる。なお、本例では、上述したように位置Paを原点としているため、xbmt,ybmtは、それぞれ、ゼロとなる。
【0087】
【数13】
【0088】
したがって、寸法Rl2についても、ブーム角度θboomの関数であることが分かる。
【0089】
このように、ブームシリンダ18の角度αと、寸法Rl2とは、ブーム角度θboomが与えられると、ブーム15とブームシリンダ18との幾何学的関係に基づき、一意に決定される。それゆえ、ホイールローダ1とは異なる車格のホイールローダであっても、ブームシリンダ18の角度αと寸法Rl2とを、ブーム角度θboomに応じて一意に決定できる。ホイールローダの車格に関わらず、ブームシリンダ18の角度αと寸法Rl2とは一般化できる。
【0090】
コントローラ50は、ブームシリンダ18の角度を、ブーム15とブームシリンダ18との幾何学的関係に基づき算出する。詳しくは、コントローラ50は、ブームシリンダ18の角度を、ブーム15の寸法と、機械本体9に対するブームシリンダ18の基端部の取り付け位置と、バケット14に対するブームシリンダ18の先端部の取り付け位置と、機械本体9に対するブーム角度θboomとに基づき算出する。なお、上記基端部は、ブームシリンダ18における、機械本体9に取り付けられる端部(上述した一端)である。上記先端部は、ブームシリンダ18における、ブーム15に取り付けられる端部(上述した他端)である。
【0091】
ブームシリンダ18の角度の算出方法は、上記に限定されるものではない。ホイールローダ1に、ブームシリンダ18の角度を検知するセンサ(第1のセンサ)を搭載し、当該センサからの出力に基づき、コントローラ50は、ブームシリンダ18の角度を取得(算出)する構成としてもよい。
【0092】
ブームシリンダ18の角度に関する情報を検知するセンサとしては、ブームシリンダ18のストロークセンサ35を用いてもよい。ブームシリンダ18の角度に関する情報を検知するセンサとして、撮像デバイス39が用いられてもよい。また、ポテンショメータ(図示せず)をピン23と同心となるように取り付け、当該ポテンショメータをブームシリンダ18の角度に関する情報を検知するセンサとして用いてもよい。
【0093】
図5は、ホイールローダ1の走行時における、力のつり合いを説明する図である。図5に示されるように、作業機3の重心GC1に係る水平方向の力Fma(すなわち慣性力)は、ブームシリンダ18で発生する反力Fcとつり合う。
【0094】
反力Fcのうちブームシリンダ18の伸縮方向の力(反力Fcの成分)によるブームフートピン21回りのモーメントMは、以下の式(14)で表される。ブームシリンダ18の角度αと寸法Rl2とは、上述したように、ブーム角度θboomの関数であるため、モーメントMも、ブーム角度θboomの関数となる。
【0095】
【数14】
【0096】
以下の式(15)に示すように、モーメントMが最大となるときのブーム角度θboomの値をθlowBoomとする。
【0097】
【数15】
【0098】
θlowBoomの値は、本例では、30°である。ホイールローダ1の走行時に生じる慣性力によってブームシリンダ18が受けるブームシリンダ18の伸縮方向の力が最大となるときのブーム角度が約-30°となるため、θlowBoomが30°となっている。具体的には、ブームシリンダ18の姿勢が水平となるときのブーム角度が約-30°となるため、θlowBoomが30°となっている。なお、θlowBoomの値は、ホイールローダの機種ごとに適宜設定される。
【0099】
なお、ブームシリンダ18の角度を検知するセンサがホイールローダ1に搭載されていれば、上記のようにブーム角度を用いてθlowBoomを算出するよりも、簡単にθlowBoomを算出することができる。
【0100】
<D.小括>
〔1〕上述した式(7)に示すように、コントローラ50は、補正係数δaを掛けることによりブームシリンダ18の推力Fcylの値を補正する。積荷搬送工程中のとき、補正係数δaは、式(8)の上の行の数式に示すように、ブーム角度θboomを変数として含む。補正係数δaの値は、加速度avehicleがゼロのときには“1”となる。詳しくは、機械本体9が一定速度で移動しており、加速度avehicleの値が0となる場合には、補正係数δaは、積荷搬送工程中でないときに用いられるδaの値“1”と同じとなる。このように、式(8)の補正係数δaは、機械本体9の加速または減速しているときに作用する係数である。それゆえ、加速度avehicleがゼロのとき、結果的に、ブームシリンダ18の推力Fcylの値は補正されない。
【0101】
このように、コントローラ50は、機械本体9に対するブーム角度θboomに基づき、センサにて検出されたブームシリンダ18の推力Fcylの値を補正する。さらに、コントローラ50は、補正後の推力(Fcyl×δa)の値を用いてバケット14内の積荷質量を算出する。
【0102】
ホイールローダ1では、ブームシリンダ18の姿勢(本例では、ブームシリンダ18の角度)に基づき、ブーム角度θboomが定まる。ブームシリンダ18の姿勢とブーム角度θboomとの間には、このような相関関係がある。よって、ブーム角度θboomが分かれば、上述したように、幾何学的関係を用いてブームシリンダ18の姿勢(本例では、ブームシリンダ18の角度)を特定し得る。
【0103】
このように、ブーム角度θboomを規定するのは、ブームシリンダ18の姿勢である。それゆえ、コントローラ50は、機械本体9に対するブームシリンダ18の姿勢に基づき、センサにて検出されたブームシリンダ18の推力Fcylの値を補正していると言える。
【0104】
詳しくは、ブームシリンダ18の姿勢とブーム角度θboomとの間の関係から、式(8)における補正係数δaのブーム角度θboom(第2の変数)を、ブームシリンダ18の角度(第2の変数)を含む数式に置き換えることができる。このことからも明らかなように、コントローラ50は、ブームシリンダ18の姿勢に基づき、ブームシリンダ18の推力Fcylの値を補正していると言える。
【0105】
なお、積荷搬送工程中でないときには、コントローラ50は、ブームシリンダ18の推力Fcylの値を補正せずに、検出された推力Fcylを用いて積荷質量を算出する。
【0106】
ところで、ホイールローダ1の走行によってブームシリンダ18に一定の慣性力が加わった場合、ホイールローダ1の機械本体9に対するブームシリンダ18の姿勢に応じて、ブームシリンダ18の伸縮方向に加わる慣性力の成分の大きさは異なる。このため、特に積荷搬送工程中では、検出されたブームシリンダの推力Fcylの値を補正せずにそのまま用いても、バケット内の積荷質量を精度よく算出できない。
【0107】
コントローラ50は、上述したように、ブームシリンダ18の姿勢に基づきブームシリンダ18の推力Fcylの値を補正し、かつ、補正後の推力(Fcyl×δa)の値を用いてバケット14内の積荷質量を算出する。このように、コントローラ50は、ホイールローダ1の走行時、ブームシリンダ18の姿勢を考慮して、バケット14内の積荷質量を算出する。
【0108】
したがって、ホイールローダ1によれば、ホイールローダ1の走行時、バケット内の積荷質量を精度よく算出可能となる。詳しくは、ホイールローダ1によれば、瞬時ペイロード値Wload_CRが精度よく算出されるため、結果として、バケット内の積荷質量を精度よく算出可能となる。
【0109】
〔2〕詳しくは、コントローラ50は、ブームシリンダ18の姿勢が水平状態であると判断したことに基づき、補正後の推力(Fcyl×δa)の値を用いてバケット14内の積荷質量を算出する。なお、上述したように、ブームシリンダ18の角度は、ブーム角度θboomに基づき算出し得る。コントローラ50は、ブームシリンダ18の角度が-10°以上かつ10°以下の範囲にあるとき、ブームシリンダ18の姿勢が水平状態と判断する。
【0110】
〔3〕同様に、コントローラ50は、ホイールローダ1が後進状態であると判断したことに基づき、補正後の推力(Fcyl×δa)の値を用いてバケット14内の積荷質量を算出する。本例では、コントローラ50は、走行レバー53(図6)の操作情報(操作状態)に基づき、ホイールローダ1の進行方向が後進方向であるか否かを判断する。詳しくは、コントローラ50は、走行レバー53の位置が後進位置にあれば、ホイールローダ1の進行方向が後進方向であると判断する。なお、コントローラ50は、走行輪4aの回転方向に基づき、ホイールローダ1の進行方向が後進方向であるか否かを判断してもよい。
【0111】
〔4〕より詳しくは、ホイールローダ1は、掘削工程(掬込み)によってバケット14に掘削対象物(土砂等)が掬い込まれた後に、ホイールローダ1を後進させる積荷後進工程を実行する。積荷後進工程では、ホイールローダ1は、通常、ブーム15の角度を一定(具体的には、-40°~-20°の間の角度)としたまま後進する。その後、ホイールローダ1は、バケット14を上昇させながら、または途中から上昇させた状態を維持しながら、ホイールローダ1を前進させてダンプトラック(図示せず)に接近させる積荷前進工程を実行する。次いで、ホイールローダ1は、所定位置でバケット14をダンプして掘削対象物をダンプトラック荷台上に積み込む排土工程を実行する。
【0112】
ブーム15の角度が-40°~-20°の間のときには、ブームシリンダ18の角度が-10°~10°になる。このように、積荷後進工程では、ブームシリンダ18の姿勢が水平となった状態でホイールローダ1が後進する。
【0113】
したがって、ホイールローダ1が積荷後進状態にあるとき、コントローラ50は、ブームシリンダ18の姿勢を考慮して、バケット14内の積荷質量を算出する。具体的には、コントローラ50は、補正後の推力(Fcyl×δa)の値を用いてバケット14内の積荷質量を算出する。それゆえ、ホイールローダ1によれば、積荷後進工程において、バケット14内の積荷質量を精度よく算出可能となる。ホイールローダ1によれば、積荷前進工程よりも前段階の積荷後進工程において、バケット14内の積荷質量を精度よく算出可能となる。したがって、ホイールローダ1のオペレータは、早いタイミングで、精度の高い積荷質量を知ることができる。
【0114】
〔5〕コントローラ50は、ホイールローダ1の走行時に生じる慣性力によってブームシリンダ18が受けるブームシリンダ18の伸縮方向の力が最大となるときのブーム角度θboomを示したθlowBoomの値(角度データ)を予め記憶している。コントローラ50は、式(7)および式(8)に示すように、ブーム角度θboomに加え、θlowBoomの値をさらに用いてブームシリンダ18の推力Fcylの値を補正することにより、バケット18内の積荷質量を算出する。このような構成によれば、θlowBoomの値を用いずに推力Fcylの値を補正する場合に比べて、積荷質量を精度よく算出することができる。
【0115】
〔6〕θlowBoomの値(角度データ)は、ブームシリンダ18で発生する反力Fcのうちブームシリンダ18の伸縮方向の力についてのブームフートピン22回りのモーメントが最大となるときのブーム角度θboomである。このようなブーム角度θboomの場合に、走行時に生じる慣性力によってブームシリンダ18が受けるブームシリンダ18の伸縮方向の力が最大となる。
【0116】
〔7〕コントローラ50は、ブームシリンダ18の推力Fcylを変数(第1の変数)として含む第1の演算式に対して当該変数の値を補正するための補正係数δaを乗じることにより得られた第2の演算式を記憶している。第2の演算式は、上述した式(7)である。第1の演算式は、上述した式(6)に対して積荷補正係数γを乗じた式である。
【0117】
補正係数δaは、変数(第2の変数)として、ブーム角度θboomを含む。上記第1の演算式は、上述した式(5)に示したように、バケット14内の積荷によるモーメントaWloadと作業機3の重量によるモーメントbWloadとの和と、ブームシリンダ18の推力FcylをによるモーメントcWloadとバケット14の反力によるモーメントdWloadとの和とのつり合いから導かれる。コントローラ50は、上記第2の演算式(式(7))に基づき、バケット14内の積荷質量を算出する。
【0118】
このように、コントローラ50は、上記4つのモーメントのつり合いから導かれる第1の演算式に含まれるブームシリンダ18の推力Fcylを補正係数δaによって補正した第2の演算式を用いて、バケット14内の積荷質量を算出する。それゆえ、このような構成によれば、第1の演算式をそのまま用いる場合に比べて、積荷質量を精度よく算出することができる。なお、補正係数δaは、変数(第2の変数)として、ブーム角度θboomの代わりに、ブームシリンダ18の角度を含んでいてもよい。
【0119】
<E.機能的構成>
次に、ホイールローダ1の機能的構成について説明する。特に、図1に示すホイールローダ1のバケット14内の積荷質量を計測するコントローラ50の機能ブロックについて図6を用いて説明する。
【0120】
図6は、ホイールローダ1の機能的構成を示した機能ブロック図である。図6に示されるように、ホイールローダ1は、コントローラ50と、入力部51と、表示部52とを備える。入力部51は、操作パネル等の入力装置に対応する。操作パネルは、ハードキー、および/またはソフトウェアキーを含んで構成され得る。表示部52は、モニタに対応する。入力部51と表示部52とは、キャブ5内に設置される。
【0121】
コントローラ50は、記憶部500と、ブームシリンダ推力算出部501と、油圧伝達効率算出部502と、寸法値算出部503と、水平距離算出部504と、積荷搬送工程判定部505と、水平加速度取得部507と、補正係数決定部508と、瞬時ペイロード値算出部509と、積荷質量算出部510と、表示制御部511とを備える。
【0122】
記憶部500には、入力部51を介して入力された各種のデータが予め記憶されている。記憶部500には、バケット14の質量Wgbucketと、チルトロッド17の質量Wgtiltrodと、ベルクランク16の質量Wgbellcrankと、ブーム15の質量Wgboomと、MassCorrectionFactorと、空荷補正係数βと、積荷補正係数γと、作業機設計寸法値と、作業機設計重心位置とが記憶されている。
【0123】
なお、作業機設計寸法値とは、バケット14、ブーム15、ベルクランク16、チルトロッド17等の作業機3を構成する各部品の設計寸法値である。当該設計寸法値は、たとえばブーム15に関しては、ブームフートピン21が挿入される貫通穴と、バケットピン22が挿入される貫通穴との間の距離、ブームフートピン21が挿入される貫通穴と、ピン24が挿入される貫通穴との間の距離等である。
【0124】
作業機設計重心位置とは、バケット14、ブーム15、ベルクランク16、チルトロッド17等の作業機3を構成する各部品における重心位置(理論値)である。作業機設計重心位置は、各部品における固有の座標系における重心位置である。作業機設計重心位置は、当該各部品に関し、当該部品の特定の位置を原点としたときの座標値として示される。作業機設計重心位置が2次元の座標系で表記可能なように原点の位置を設定できる。この場合、たとえばブーム15については、ブーム15の側面視においてブームフートピン21が挿入される貫通穴の中心を上記特定の位置(原点)とすることができる。
【0125】
作業機設計寸法値は、寸法値算出部503で利用される。作業機設計重心位置は、水平距離算出部504で利用される。バケット14の質量Wgbucketと、チルトロッド17の質量Wgtiltrodと、ベルクランク16の質量Wgbellcrankと、ブーム15の質量Wgboomと、MassCorrectionFactorと、空荷補正係数βと、積荷補正係数γとは、瞬時ペイロード値算出部509で利用される。
【0126】
ブームシリンダ推力算出部501は、圧力センサ31b、31hにより検知されたシリンダ圧力に基づいて、上述したブームシリンダ18の推力Fcylを算出する。具体的には、ブームシリンダ推力算出部501は、圧力センサ31bから取得したブームシリンダ18のボトム圧と、圧力センサ31hから取得したからヘッド圧とに基づいて推力Fcylを周期的に算出する。ブームシリンダ推力算出部501は、取得したブームシリンダ18のボトム圧のみから推力Fcylを算出してもよい。算出された推力Fcylの値は、瞬時ペイロード値算出部509に送られる。
【0127】
油圧伝達効率算出部502は、上述したブーム角度に関する情報を検知するセンサによって検知されたブーム角度θboomの値に基づいて、ブーム15の油圧伝達効率ηを計算する。詳しくは、油圧伝達効率算出部502は、ブーム角度θboomの値の単位時間当たりの変化量を算出し、当該変化量に基づき油圧伝達効率ηを決定する。油圧伝達効率算出部502は、算出された油圧伝達効率ηを瞬時ペイロード値算出部509に送る。算出された油圧伝達効率ηは、上述した式(7)に代入される。
【0128】
なお、ブーム角度θboomの値の単位時間当たりの変化量がゼロの場合には油圧伝達効率ηを算出できないため、油圧伝達効率算出部502は、たとえば、直前に算出された油圧伝達効率ηを瞬時ペイロード値算出部509に送る。
【0129】
上記のように、油圧伝達効率ηを都度計算するのではなく、油圧伝達効率ηとして、事前に決定された一定の値を用いてもよい。
【0130】
寸法値算出部503は、記憶部500に記憶された上記作業機設計寸法値と、バケット角度と、ブーム角度θboomとを用いて、上述した各寸法Rl1,Rl2,Rbi(i=1~6)の値を算出する。寸法値算出部503は、各寸法Rl1,Rl2,Rbi(i=1~6)の値を周期的に算出する。寸法値算出部503は、算出結果を、瞬時ペイロード値算出部509に送る。
【0131】
水平距離算出部504は、記憶部500に記憶された上記作業機設計重心位置と、バケット角度と、ブーム角度θboomとを用いて、上述した水平距離Rgjを算出する。具体的には、水平距離算出部504は、各水平距離Rgbucket,Rgtiltrod,Rgbellcrank,Rgboomを周期的に算出する。水平距離算出部504は、算出結果を、瞬時ペイロード値算出部509に送る。
【0132】
積荷搬送工程判定部505は、ホイールローダ1が積荷搬送工程中か否かを判定する。詳しくは、積荷搬送工程判定部505は、ブームシリンダ18の姿勢が水平状態、および、ホイールローダ1が後進状態のうちの少なくとの一方の状態にあるときに、ホイールローダ1が積荷搬送工程中であると判定する。
【0133】
より詳しくは、積荷搬送工程判定部505は、走行レバー53の操作状態に基づき、ホイールローダ1が後進状態か否かを判断する。本例では、積荷搬送工程判定部505は、走行レバー53が後進位置であれば、後進状態と判断する。積荷搬送工程判定部505は、走行レバー53が前進位置または中立位置であれば、後進状態でないと判断する。
【0134】
さらに詳しくは、積荷搬送工程判定部505は、上述したように、ブーム15とブームシリンダ18との幾何学的関係に基づき、ブームシリンダ18の角度を算出する。積荷搬送工程判定部505は、ブームシリンダ18の角度に基づき、ブームシリンダ18の姿勢が水平状態となっているか否かを判定する。積荷搬送工程判定部505は、ブームシリンダ18の角度が-10°以上かつ10°以下の範囲のときに、ブームシリンダ18の姿勢が水平状態となっていると判断する。なお、ブームシリンダ18の角度に基づく判定に限定されず、コントローラ50は、ブーム角度θboomが予め定められた角度範囲(たとえば、-40°以上かつ-20°以下の範囲)のときに、積荷搬送工程中と判定してもよい。
【0135】
積荷搬送工程判定部505は、後進状態と判断した場合、積荷搬送工程中と判断する。積荷搬送工程判定部505は、ブームシリンダ18の姿勢が水平状態となっていると判断した場合も、積荷搬送工程中と判断する。積荷搬送工程判定部505は、後進状態でなく、かつ、ブームシリンダ18の姿勢が水平状態でなければ、積荷搬送工程中でないと判断する。
【0136】
積荷搬送工程判定部505は、「積荷搬送工程中」または「積荷搬送工程中でない」ことを表す判定結果を補正係数決定部508に周期的に送る。
【0137】
水平加速度取得部507は、機械本体9の水平方向の加速度avehicleを周期的に取得する。水平加速度取得部507は、加速度avehicleの値を補正係数決定部508に周期的に送る。
【0138】
加速度avehicleの取得方法は、特に限定されない。たとえば、水平加速度取得部507は、加速度センサ(図示せず)によって検出された水平方向の加速度avehicleを取得する。あるいは、水平加速度取得部507は、IMUによって検出されたデータから、加速度avehicleを算出してもよい。あるいは、水平加速度取得部507は、機械本体9の速度を時間微分することにより、加速度avehicleを算出してもよい。機械本体9の速度から加速度avehicleを算出する場合、当該速度をローパスフィルタによって平滑化した後に、加速度avehicleを算出することが好ましい。
【0139】
補正係数決定部508は、ブームシリンダ18の姿勢に基づき、補正係数δaを決定する。詳しくは、補正係数決定部508は、ブームシリンダ18の角度と相関関係にあるブーム角度θboomを用いて、補正係数δaを決定する。具体的には、補正係数決定部508は、ブーム角度θboomと、積荷搬送工程判定部505の判定結果と、水平加速度取得部507によって取得された加速度avehicleとに基づき、補正係数δaを決定する。具体的には、補正係数決定部508は、上述した式(8)を用いて、補正係数δaを決定する。
【0140】
積荷搬送工程判定部505の判定結果が「積荷搬送工程中」である場合、補正係数決定部508は、式(8)の上側の行の数式を用いて補正係数δaを周期的に決定する。この場合、補正係数決定部508は、数式(8)に示されるように、加速度avehicleを用いて補正係数δaを決定する。
【0141】
補正係数決定部508は、積荷搬送工程判定部505の判定結果が「積荷搬送工程中でない」場合、式(8)の下側の行に示すように、補正係数δaの値を“1”とする。具体的には、ブームシリンダ18が動いている場合、走行レバー53が前進位置または中立位置にある場合には、補正係数決定部508によって、補正係数δaの値が“1”に設定される。
【0142】
補正係数決定部508は、式(8)を用いて計算した補正係数δaの値を、周期的に瞬時ペイロード値算出部509に送る。
【0143】
瞬時ペイロード値算出部509は、各質量Wgbucket,Wgtiltrod,Wgbellcrank,Wgboomと、MassCorrectionFactorと、各補正係数β,γと、推力Fcylと、油圧伝達効率ηと、各寸法Rl1,Rl2,Rbi(i=1~6)と、各水平距離Rgbucket,Rgtiltrod,Rgbellcrank,Rgboomと、補正係数δaとに基づき、瞬時ペイロード値Wload_CRを周期的に算出する。
【0144】
詳しくは、瞬時ペイロード値算出部509は、上述した式(7)を用いて、瞬時ペイロード値Wload_CRを算出する。なお、各質量Wgbucket,Wgtiltrod,Wgbellcrank,Wgboomと、MassCorrectionFactorとは、上述した式(2)に示されるように、式(7)の分子に含まれる“bWload”の算出に利用される。瞬時ペイロード値算出部509は、瞬時ペイロード値Wload_CRを周期的に積荷質量算出部510に送る。
【0145】
積荷質量算出部510は、連続して送られてきた複数の瞬時ペイロード値Wload_CRの平均値を算出し、当該平均値を積荷質量に決定する。たとえば、積荷質量算出部510は、連続して送られてきた5つの瞬時ペイロード値Wload_CRの平均値を積荷質量とする。積荷質量算出部510は、決定した積荷質量を表示制御部511に送る。
【0146】
表示制御部511は、積荷質量を表示部52に表示させる。表示制御部511は、積荷質量を積荷質量算出部510から取得する都度、表示部52に表示される積荷質量の値を更新する。
【0147】
<F.制御構造>
図7は、コントローラ50で実行される処理の流れを説明するためのフロー図である。なお、図7においては、瞬時ペイロード値Wload_CRの算出までの処理を記載している。また、図7に示す一連処理は、周期的に繰り返し実行される。
【0148】
ステップS1において、コントローラ50は、各寸法Rl1,Rl2,Rbi(i=1~6)の値を算出する。ステップS2において、コントローラ50は、各水平距離Rgbucket,Rgtiltrod,Rgbellcrank,Rgboomを算出する。ステップS3において、コントローラ50は、作業機重量によるモーメントbWloadの値を算出する。なお、算出されたbWloadの値は、式(7)に代入される。
【0149】
ステップS4において、コントローラ50は、ブームシリンダ18の推力Fcylを算出する。ステップS5において、コントローラ50は、ブーム角度θboomの単位時間当たりの変化量に基づき、油圧伝達効率ηを算出する。なお、上述したように、ブーム角度θboomの値の単位時間当たりの変化量がゼロの場合には、コントローラ50は、たとえば、直前に算出された油圧伝達効率ηを用いる。
【0150】
ステップS6において、コントローラ50は、積荷搬送工程中であるか否かを判定する。積荷搬送工程中でないと判定された場合(ステップS6においてNO)、コントローラ50は、ステップS7において、補正係数δaの値を“1”に設定する。詳しくは、コントローラ50は、上述した式(8)を参照して、補正係数δaの値を“1”に設定する。
【0151】
積荷搬送工程中であると判定された場合(ステップS6においてYES)、コントローラ50は、ステップS9において、コントローラ50は、加速度avehicleの値を取得する。さらに、ステップS10において、コントローラ50は、加速度avehicleの値を用いて、補正δaの値を算出する。具体的には、コントローラ50は、式(8)の上側の行の数式を用いて、補正係数δaの値を算出する。
【0152】
ステップS7またはステップS10の後、ステップS8において、コントローラ50は、補正係数δaの値を上述した式(7)に代入することにより、瞬時ペイロード値Wload_CRを算出する。
【0153】
<G.変形例>
(1)上記においては、コントローラ50は、図7のステップS6に示したように、積荷搬送工程中のときに、ブームシリンダ18の推力Fcylを式(8)の上の行の数式(補正係数δa,変数)を乗じて補正し、かつ補正後の推力の値(Fcyl×δa)を用いてバケット14内の積荷質量を算出した。しかしながら、これに限定されるものではない。コントローラ50は、積荷搬送工程中であるか否かにかかわらず、ブームシリンダ18の推力Fcylを数式(8)の上の行の数式(補正係数δa)を乗じて補正し、かつ補正後の推力の値(Fcyl×δa)を用いてバケット14内の積荷質量を算出してもよい。
【0154】
(2)コントローラ50は、瞬時ペイロード値Wload_CRを積荷質量として、表示部52に出力してもよい。コントローラ50は、瞬時ペイロード値Wload_CRの平均を算出せずに、瞬時ペイロード値Wload_CRを表示部52に表示してもよい。
【0155】
<付記>
[項目1]
走行体が取り付けられる本体と、
前記本体に取り付けられるブームと、前記ブームに取り付けられるバケットとを含む作業機と、
前記本体に対する前記ブームの角度を変化させるブームシリンダと、
前記ブームシリンダの推力を検出するセンサと、
前記本体に対する前記ブームシリンダの姿勢に基づき前記検出された推力の値を補正し、かつ、前記補正後の推力の値を用いて前記バケット内の前記積荷質量を算出するコントローラと、を備える、作業機械。
【0156】
[項目2]
前記コントローラは、前記作業機械が積荷搬送工程中であると判断されたことを条件に、前記補正後の推力の値を用いて前記バケット内の前記積荷質量を算出する、項目1に記載の作業機械。
【0157】
[項目3]
前記コントローラは、前記ブームシリンダの姿勢が水平状態であるとき、および/または、前記作業機械が後進状態にあるときに、前記作業機械が積荷搬送工程中であると判断する、項目2に記載の作業機械。
【0158】
[項目4]
前記コントローラは、
前記作業機械の走行時に生じる慣性力によって前記ブームシリンダが受ける前記ブームシリンダの伸縮方向の力が最大となるときの前記ブームの角度を示した角度データを予め記憶しており、
前記角度データをさらに用いて前記検出された推力を補正することにより、前記バケット内の前記積荷質量を算出する、項目1から3のいずれか1項に記載の作業機械。
【0159】
[項目5]
前記ブームを前記本体に接続するブームフートピンをさらに備え、
前記角度データは、前記ブームシリンダで発生する反力のうち前記ブームシリンダの伸縮方向の力についての前記ブームフートピン回りのモーメントが最大となるときの前記ブームの角度である、項目4に記載の作業機械。
【0160】
[項目6]
前記コントローラは、前記ブームシリンダの推力を第1の変数として含む第1の演算式に対して前記第1の変数の値を補正するための補正係数を乗じることにより得られた第2の演算式を記憶しており、
前記補正係数は、第2の変数として、前記ブームシリンダの角度または前記ブームの角度を含み、
前記第1の演算式は、前記バケット内の積荷によるモーメントと前記作業機の重量によるモーメントとの和と、前記ブームシリンダの推力によるモーメントと前記バケットの反力によるモーメントとの和とのつり合いから導かれ、
前記コントローラは、前記第2の演算式に基づき、前記バケット内の前記積荷質量を算出する、項目1から5のいずれか1項に記載の作業機械。
【0161】
[項目7]
前記コントローラは、前記ブームシリンダの姿勢を、前記ブームシリンダの角度に基づき算出する、項目1から6のいずれか1項に記載の作業機械。
【0162】
[項目8]
前記ブームシリンダは、前記本体に取り付けられる基端部と、前記バケットに取り付けられる先端部とを有し、
前記コントローラは、前記ブームシリンダの姿勢を、前記ブームの寸法と、前記本体に対する前記基端部の取り付け位置と、前記バケットに対する前記先端部の取り付け位置と、前記本体に対する前記ブームの角度とに基づき算出する、項目1から6のいずれか1項に記載の作業機械。
【0163】
[項目9]
前記ブームシリンダの角度を検出する第1のセンサと、
前記推力を検出する第2のセンサとをさらに備え、
前記コントローラは、前記第1のセンサによる前記検出の結果と、前記第2のセンサによる前記検出の結果とをさらに取得する、項目8に記載の作業機械。
【0164】
[項目10]
前記ブームの角度を検出する第1のセンサと、
前記推力を検出する第2のセンサとをさらに備え、
前記コントローラは、前記第1のセンサによる前記検出の結果と、前記第2のセンサによる前記検出の結果とをさらに取得する、項目8に記載の作業機械。
【0165】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0166】
1 ホイールローダ、2 車体フレーム、3 作業機、4 走行装置、4a 走行輪、5 キャブ、6 カウンタウエイト、9 機械本体、11 前フレーム、12 後フレーム、13 ステアリングシリンダ、14 バケット、15 ブーム、16 ベルクランク、17 チルトロッド、18 ブームシリンダ、18a チューブ、18b ロッド、18c ピストン、19 バケットシリンダ、21 ブームフートピン、22 バケットピン、29 支持ピン、31b,31h,32b,32h 圧力センサ、33,34 ポテンショメータ、35,36 ストロークセンサ、39 撮像デバイス、40 角度センサ、50 コントローラ、51 入力部、52 表示部、53 走行レバー、500 記憶部、501 ブームシリンダ推力算出部、502 油圧伝達効率算出部、503 寸法値算出部、504 水平距離算出部、505 積荷搬送工程判定部、507 水平加速度取得部、508 補正係数決定部、509 瞬時ペイロード値算出部、510 積荷質量算出部、511 表示制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7