(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154705
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】情報処理装置及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/00 20060101AFI20241024BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20241024BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241024BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J3/32
H02J7/00 P
H02J13/00 301
H02J13/00 301A
H02J13/00 311T
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068677
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】堀井 雄介
(72)【発明者】
【氏名】江原 雅人
(72)【発明者】
【氏名】小鮒 俊介
(72)【発明者】
【氏名】石川 裕幸
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
5G064AC05
5G064AC09
5G064CB21
5G064DA11
5G066AA03
5G066HB06
5G066HB09
5G066JB03
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503FA06
(57)【要約】
【課題】充放電の繰り返しによる電力の損失を低減することが可能な情報処理装置を提供すること。
【解決手段】本開示にかかる充放電計画装置10において、充放電計画部13は、電動車に対し、第1充放電指令値を用いた電力の充放電を指示するための第1充放電計画を作成する第1充放電計画部と、第1充放電計画が指示された後に電力調整に関する追加要求を受けた場合、第2充放電指令値を用いた充放電を電動車に指示するための第2充放電計画を作成する第2充放電計画部と、の機能を有する。第2充放電計画部は、次の(i)又は(ii)の条件を満たす第2充放電指令値を算出し、第2充放電計画を作成する。(i)第1充放電指令値と第2充放電指令値とが等しい (ii)第1充放電指令値と第2充放電指令値との積が0より大きく、かつ、第2充放電指令値の絶対値が第1充放電指令値の絶対値より大きい
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車に対し、第1充放電指令値を用いた電力の充放電を指示するための第1充放電計画を作成する第1充放電計画部と、
前記第1充放電計画が指示された後に電力調整に関する追加要求を受けた場合、第2充放電指令値を用いた充放電を前記電動車に指示するための第2充放電計画を作成する第2充放電計画部と、を備え、
前記第2充放電計画部は、次の(i)又は(ii)の条件を満たす前記第2充放電指令値を算出し、当該第2充放電指令値を用いて前記第2充放電計画を作成する、
(i)前記第1充放電指令値と前記第2充放電指令値とが等しい
(ii)前記第1充放電指令値と前記第2充放電指令値との積が0より大きく、かつ、前記第2充放電指令値の絶対値が前記第1充放電指令値の絶対値より大きい
情報処理装置。
【請求項2】
前記第2充放電計画部は、充放電に係る電力費用の最小化問題を解くことによって、前記第2充放電指令値を算出する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記第2充放電計画部は、前記第2充放電指令値が所定の閾値以上となるように、前記第2充放電指令値を算出する
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記第2充放電計画が作成されるまでは前記第1充放電計画に従って充放電を行い、前記第2充放電計画が作成されたことに応じて、前記第2充放電計画に従って充放電を行うように、前記電動車の充放電を制御する
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
電動車に対し、第1充放電指令値を用いた電力の充放電を指示するための第1充放電計画を作成する第1充放電計画ステップと、
前記第1充放電計画が指示された後に電力調整に関する追加要求を受けた場合、第2充放電指令値を用いた充放電を前記電動車に指示するための第2充放電計画を作成する第2充放電計画ステップと、を備え、
前記第2充放電計画ステップでは、次の(i)又は(ii)の条件を満たす前記第2充放電指令値を算出し、当該第2充放電指令値を用いて前記第2充放電計画を作成する、
(i)前記第1充放電指令値と前記第2充放電指令値とが等しい
(ii)前記第1充放電指令値と前記第2充放電指令値との積が0より大きく、かつ、前記第2充放電指令値の絶対値が前記第1充放電指令値の絶対値より大きい
情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電動車を用いたバーチャルパワープラント(VPP:Virtual Power Plant)に関する技術が知られている。電動車を用いたVPPでは、電動車の移動手段としての機能と、エネルギリソースとしての機能と、を両立させるように、電動車のバッテリを使用するための充放電計画を作成することが求められる。
【0003】
関連する技術として、特許文献1は、充放電計画の指示後に電力調整に関する追加要求を受けた場合、電動車の予測された行動に基づいて、追加要求を満たす変更充放電計画を作成し、電動車に提示する電力調整装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
充放電計画及び充放電制御の実運用においては、電動車の運行状況、再生可能エネルギの発生状況、又は系内の対象以外の負荷の変動などに応じて、過去に作成された充放電計画を適切な内容に更新する必要がある。充放電計画には、充放電を制御するための充放電指令値の情報が含まれている。充放電計画を更新することで、更新直前の充放電指令値と更新後の充放電指令値とが異なる場合、充放電の切替えが生じる場合がある。充放電の切替えにより、短期間における充放電の繰り返しが発生し、電力の損失が増加するおそれがある。特許文献1が開示する技術では、このような充放電の繰り返しに伴う電力の損失については考慮されていない。
【0006】
本開示の目的は、上述した課題を鑑み、充放電の繰り返しによる電力の損失を低減することが可能な情報処理装置及び情報処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示にかかる情報処理装置は、電動車に対し、第1充放電指令値を用いた電力の充放電を指示するための第1充放電計画を作成する第1充放電計画部と、前記第1充放電計画が指示された後に電力調整に関する追加要求を受けた場合、第2充放電指令値を用いた充放電を前記電動車に指示するための第2充放電計画を作成する第2充放電計画部と、を備えるものである。前記第2充放電計画部は、次の(i)又は(ii)の条件を満たす前記第2充放電指令値を算出し、当該第2充放電指令値を用いて前記第2充放電計画を作成する。(i)前記第1充放電指令値と前記第2充放電指令値とが等しい (ii)前記第1充放電指令値と前記第2充放電指令値との積が0より大きく、かつ、前記第2充放電指令値の絶対値が前記第1充放電指令値の絶対値より大きい
このような構成により、充放電の繰り返しによる電力の損失を低減することができる。
【0008】
本開示にかかる情報処理方法は、電動車に対し、第1充放電指令値を用いた電力の充放電を指示するための第1充放電計画を作成する第1充放電計画ステップと、前記第1充放電計画が指示された後に電力調整に関する追加要求を受けた場合、第2充放電指令値を用いた充放電を前記電動車に指示するための第2充放電計画を作成する第2充放電計画ステップと、を備えるものである。前記第2充放電計画ステップでは、次の(i)又は(ii)の条件を満たす前記第2充放電指令値を算出し、当該第2充放電指令値を用いて前記第2充放電計画を作成する。(i)前記第1充放電指令値と前記第2充放電指令値とが等しい (ii)前記第1充放電指令値と前記第2充放電指令値との積が0より大きく、かつ、前記第2充放電指令値の絶対値が前記第1充放電指令値の絶対値より大きい
このような構成により、充放電の繰り返しによる電力の損失を低減することができる。
【発明の効果】
【0009】
本開示にかかる情報処理装置及び情報処理方法は、充放電の繰り返しによる電力の損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態にかかる充放電制御システムの全体構成を示す図である。
【
図2】実施形態にかかる充放電計画装置及び充放電制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】実施形態にかかる充放電計画の作成及び充放電制御の流れを示す図である。
【
図4】実施形態にかかる充放電計画装置が行う処理を示すフローチャートである。
【
図5】実施形態にかかる充放電制御装置が行う処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一又は対応する要素には同一の符号が付されている。説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略される。
【0012】
(充放電制御システム1の構成)
初めに、
図1を参照して実施形態にかかる充放電制御システム1について説明する。
図1は、本実施形態にかかる充放電制御システム1の全体構成を示す図である。図に示されるように、充放電制御システム1は、充放電計画装置10、充放電制御装置20、情報端末30、配電網2、複数の充放電機器4、及び複数の電動車5を備えている。充放電制御システム1は、所定の処理を行うことで、複数の電動車5の充放電を制御するためのシステムである。
【0013】
充放電計画装置10、充放電制御装置20、情報端末30、及び複数の充放電機器4のそれぞれは、ネットワークNを介して接続されている。ネットワークNは、有線又は無線の通信回線である。ネットワークNは、例えば、インターネット、専用線、電話回線、移動体通信網、又はその他の通信回線などであってよい。またネットワークNは、これらの組み合わせであってもよい。
【0014】
情報端末30は、充放電制御システム1においての入力を行うための入力端末である。情報端末30は、例えば、PC(Personal Computer)又はスマートフォンなどである。情報端末30は、ネットワークNを介して、ユーザからの入力を受け付ける。ユーザは、例えば、電動車5の利用者、電動車5を用いたVPPの利用者、又は充放電制御システム1の管理者などである。例えば、ユーザは、充放電計画の実行に承諾するか否かを、情報端末30を介して入力する。
【0015】
配電網2は、住宅や商工業施設などに電力を供給するための電力網である。配電網2は、電力を供給する電力ケーブルなどを含み得る。配電網2には、火力発電所などの集中型電源を有する電力系統が接続され得る。配電網2には、太陽光などの自然エネルギを用いて発電を行う分散型電源が接続されてもよい。
【0016】
充放電機器4は、電動車5が備えるバッテリに対する充放電を行うための機器である。充放電機器4は、接続された配電網2から電動車5に電力を供給することで、電動車5の充電を行う。また、充放電機器4は、電動車5の余剰電力を引き取ることで、電動車5の放電を行う。充放電機器4は、例えば、電動車5から引き取った余剰電力を家の中に供給するためのV2H(Vehicle to Home)機器などであってよい。
【0017】
電動車5は、バッテリに蓄えた電気エネルギを、動力の全て又は一部として用いて走行する自動車である。電動車5は、例えば、電動自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)、又はプラグインハイブリッド自動車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)などである。複数の電動車5は、VPPにおけるエネルギリソースとして用いられ得る。
【0018】
ここで、充放電制御システム1が行う処理の概要を説明する。まず、充放電計画装置10は、複数の電動車5の充電及び放電を制御するための充放電計画を作成する。充放電計画は、複数の電動車5に対する充電又は放電のタイミングを、時系列に沿って管理するための情報である。充放電計画装置10は、充放電計画に基づいて、複数の電動車5に充放電を指示するための車両群充放電指令を生成し、充放電制御装置20に送信する。車両群充放電指令は、充放電を指示するための充放電指令値を含んでいる。充放電指令値は、充電電力値又は放電電力値である。
【0019】
充放電制御装置20は、車両群充放電指令を受信し、電動車5ごとの個車充放電計画を作成する。充放電制御装置20は、複数の電動車5のそれぞれの行動予定などを加味して、個車充放電計画を作成してもよい。充放電制御装置20は、作成した個車充放電計画に基づいて、複数の電動車5のそれぞれの充放電を制御する。
【0020】
また、充放電計画装置10は、充放電計画を指示した後に電力調整に関する追加要求を受けた場合、充放電計画を新たに作成する。「発明が解決しようとする課題」において説明したように、電動車5に対して充放電を繰り返した場合、電力の損失が増加するおそれがある。しかしながら、電力の運用実績や、当該運用実績に基づき予測された電力需給によっては、作成された充放電計画が充放電の切替えを含む場合がある。
【0021】
充放電計画装置10は、更新する充放電計画の作成時に、直前の充放電計画で作成した充放電指令値のうち、更新時に使用されている指令値を参照し、不必要な充放電の切替えを生じさせないような充放電計画を作成する。このようにすることで、充放電計画装置10は、充放電の繰り返しによる電力の損失を低減することを可能とする。
【0022】
続いて、
図2を参照して、充放電計画装置10及び充放電制御装置20の構成について説明する。
図2は、充放電計画装置10及び充放電制御装置20の構成を示すブロック図である。なお、図に示される一方向矢印は、情報(データ又は信号など)の流れを端的に示したものであり、情報の双方向性を排除するものではない。
【0023】
(充放電計画装置10の構成)
充放電計画装置10は、関連情報取得部11、受給予測部12、及び充放電計画部13を備えている。充放電計画装置10は、図示しない構成としてプロセッサ、メモリ及び記憶装置を備えている。当該記憶装置には、本実施形態にかかる処理が実装されたプログラムが記憶されている。プロセッサは、記憶装置からプログラムをメモリへ読み込ませ、当該プログラムを実行することができる。これにより、プロセッサは、関連情報取得部11、受給予測部12、及び充放電計画部13の機能を実現する。または、関連情報取得部11、受給予測部12、及び充放電計画部13は、それぞれが専用のハードウエアで実現されていてもよい。
【0024】
関連情報取得部11は、電力の需給に関連する関連情報を取得する。関連情報は、例えば、需給に関する過去の実績を示す実績情報Aを含み得る。実績情報Aは、例えば、電力、気温、日射量、天候、又は電力の生産量などの実績を示す情報である。また、関連情報は、需給の予測に関する予測情報Bを含んでもよい。予測情報Bは、例えば、将来の天候又は電力の生産量などの予測を示す情報である。
【0025】
受給予測部12は、関連情報取得部11で取得された関連情報に基づいて、電力の需給を予測する。受給予測部12は、電力負荷の状況や、発電の状況を予測することで需給を予測し得る。受給予測部12は、例えば、実績情報Aを学習データとして用いて学習を行った学習済みモデルを用いることで、需給を予測してもよい。
【0026】
なお、ここでは充放電計画装置10が受給予測部12を備える構成を用いて説明しているが、受給予測部12の機能を外部の装置が備えてもよい。例えば、受給予測部12は、ネットワークNを介して外部の装置から予測結果を取得してもよい。
【0027】
充放電計画部13は、受給予測部12における予測結果に基づいて、複数の電動車5に指示を行うための充放電計画を作成する。また、充放電計画部13は、コスト又は環境に関する環境情報Cを取得して、受給予測部12における予測結果と環境情報Cとに基づいて、充放電計画を作成してもよい。環境情報Cは、例えば、電力単価、契約情報、CO2原単位、又は電源構成などの情報を含み得る。
【0028】
充放電計画部13は、電動車に対し、第1充放電指令値を用いた電力の充放電を指示するための第1充放電計画を作成する第1充放電計画部として機能する。また、充放電計画部13は、第1充放電計画が指示された後に電力調整に関する追加要求を受けた場合、第2充放電指令値を用いた充放電を電動車に指示するための第2充放電計画を作成する第2充放電計画部としても機能する。ここで、第2充放電計画部としての充放電計画部13の機能について、その概要を説明する。なお、具体例については後述する。
【0029】
充放電計画部13は、次の(i)又は(ii)の条件を満たす第2充放電指令値を算出し、当該第2充放電指令値を用いて第2充放電計画を作成する。
(i)第1充放電指令値と第2充放電指令値とが等しい
(ii)第1充放電指令値と第2充放電指令値との積が0より大きく、かつ、第2充放電指令値の絶対値が第1充放電指令値の絶対値より大きい
【0030】
なお、条件(i)において、「第1充放電指令値と第2充放電指令値とが等しい」とは、第1充放電指令値と第2充放電指令値とが厳密に同一である場合のみには限定されない。すなわち、第1充放電指令値と第2充放電指令値との差分が所定の範囲内である場合が含まれ得る。所定の範囲は、充放電制御システム1のユーザなどにより適宜設定され得る。
【0031】
また、充放電計画部13は、第1充放電指令値と第2充放電指令値との差分を最小化する最小化問題を解くことによって、第2充放電指令値を算出してもよい。さらに、充放電計画部13は、第2充放電指令値が所定の閾値以上となるように、第2充放電指令値を算出してもよい。
【0032】
充放電計画部13は、作成した充放電計画を複数の電動車5に実行させるための車両群充放電指令Dを生成する。車両群充放電指令Dは、時間帯当たりの充放電指示の情報を含み得る。なお、充放電計画装置10は、第2充放電計画が作成されるまでは第1充放電計画に従って充放電を行い、第2充放電計画が作成されたことに応じて、第2充放電計画に従って充放電を行うように、複数の電動車5の充放電を制御する。当該制御は充放電制御装置20において行われてもよい。
【0033】
また、充放電計画部13は、車両群充放電指令D以外に、充放電機器4などの機器に対する種々の指令を含む機器指令Eを生成してもよい。
【0034】
ここで、
図3を参照しながら、充放電計画部13が作成する充放電計画の具体例について説明する。
図3は、充放電計画の作成及び充放電制御の流れを示す図である。図の横軸は時間tを示している。
【0035】
まず、以下で説明する充放電計画において用いられる充放電指令値Vについて説明する。充放電指令値Vは、充放電の量を指示するための情報である。充放電指令値Vは、充放電計画を作成した時刻t1と、充放電計画が適用される時刻t2と、を用いてV(t1,t2)のように表される。ここで、t1≦t2である。また、充放電指令値Vは、充電時に正の値を示し、放電時に負の値を示す。
【0036】
図3を参照して具体的に説明する。まず、充放電計画部13(第1充放電計画部)は、t=kの時点において、充放電計画P1(第1充放電計画)を作成する。充放電計画P1における充放電指令値(第1充放電指令値)は、V1(k,k+1)で表される。充放電計画部13は、V1(k,k+1)を含む車両群充放電指令D(
図2を参照)を生成する。
【0037】
充放電計画部13は、t=kの時点で作成した充放電計画P1のうち、期間T1の充放電計画に含まれるV1(k,k+1)を用いて、直ちに複数の電動車5の充放電制御を行うように車両群充放電指令Dを生成する。これにより、V1(k,k+1)は、期間T1において、複数の電動車5の充放電制御のために直ちに用いられる。
【0038】
ここで、充放電計画P1の指示を行った後のt=k+1の時点において、充放電計画部13が、電力調整に関する追加要求を受信したとする。充放電計画部13(第2充放電計画部)は、t=k+1の時点において、充放電計画P2(第2充放電計画)を作成する。充放電計画P2における充放電指令値(第2充放電指令値)は、V2(k+1、k+1)で表される。
【0039】
充放電計画部13は、充放電計画P2が作成されるまでの間の期間T2においては、t=kの時点で作成した充放電計画P1のV1(k,k+1)を用いて充放電制御を行うように車両群充放電指令Dを生成する。充放電計画部13がt=k+1で充放電計画P2の作成を開始し、t=Xで作成を完了したとすると、t=k+1からt=Xまでが期間T2である。
【0040】
充放電計画部13は、t=Xにおいて、充放電計画を充放電計画P1から充放電計画P2に更新する。充放電計画部13は、t=X以降の期間T3において充放電計画P2に含まれるV2(k+1、k+1)を用いて、複数の電動車5の充放電制御を行うように車両群充放電指令Dを生成する。
【0041】
ここで、V1(k,k+1)×V2(k+1,k+1)<0が満たされる場合、短時間の間に充放電の繰り返しが発生する。そのため、充放電計画部13は、期間T2で充電が行われた場合に、期間T3で放電が行われないように、V2(k+1,k+1)の算出に制約を与える。同様に、充放電計画部13は、期間T2で放電が行われた場合に、期間T3で充電が行われないように、V2(k+1,k+1)の算出に制約を与える。
【0042】
具体的には、充放電計画部13は、充放電計画P2の作成において、以下に示される条件(I)又は(II)を満たすようにV2(k+1,k+1)を算出する。条件(I)及び(II)は、上述した(i)及び(ii)に対応する。
【0043】
(I)V2(k+1,k+1)=V1(k,k+1)
(II)V1(k,k+1)×V2(k+1,k+1)>0、かつ、|V2(k+1,k+1)|>|V1(k,k+1)|
【0044】
充放電計画部13は、上述のような制約下において、充放電に係る費用を最小化するようなV2(k+1,k+1)を算出する。具体的には、充放電費用の最小化を目的関数とした最適化問題を解くことでV2(k+1,k+1)を算出する。
【0045】
充放電計画部13は、上述した以外の条件を用いて充放電計画を作成してもよい。例えば、算出された充放電指令値が、電動車5の待機電力を下回るような微小な値であるとする。このような場合、充放電指令によりシステム全体の充放電効率を低下させる可能性がある。充放電効率の低下を防ぐため、充放電計画部13は、充放電指令値が所定の閾値以上となるように充放電計画を作成してもよい。所定の閾値は、予め設定されてもよいし、適宜変更されてもよい。このように最低充放電電力の制約を加えることで、充放電計画部13は、微小な充放電指令を含まない充放電計画を作成することができる。
【0046】
上述したような処理を行うことで、充放電計画部13は、充放電計画を最適化することができる。
【0047】
(充放電制御装置20の構成)
図2に戻り、充放電制御装置20について説明する。図に示されるように、充放電制御装置20は、個車情報取得部21、個車充放電可能量算出部22、及び個車充放電計画部23を備えている。充放電計画装置10と同様、充放電制御装置20は、図示しない構成としてプロセッサ、メモリ及び記憶装置を備えている。プロセッサは、個車情報取得部21、個車充放電可能量算出部22、及び個車充放電計画部23の機能を実現する。個車情報取得部21等は、それぞれが専用のハードウエアで実現されていてもよい。
【0048】
個車情報取得部21は、電動車5に関する個車情報Fを取得する。個車情報Fは、電動車5から取得可能な情報である。個車情報Fは、例えば、電動車5の現在位置又は電池状態などを示す情報である。個車情報取得部21は、電動車5が備える図示しない位置情報センサ又はバッテリ残量センサなどを用いてこれらの情報を取得し得る。個車情報Fは、複数の電動車5のそれぞれを識別するための識別情報と対応付けられている。
【0049】
また、個車情報取得部21は、電動車5の行動予定に関する個車行動予定情報Gを取得する。例えば、個車情報取得部21は、電動車5のユーザなどから入力を受け付けることで個車行動予定情報Gを取得する。電動車5のユーザは、情報端末30を介して個車行動予定情報Gを入力する。または、個車情報取得部21は、個車情報Fに基づいて、電動車5の行動予定を予測することで個車行動予定情報Gを取得してもよい。
【0050】
個車充放電可能量算出部22は、個車情報取得部21で取得された個車情報F及び個車行動予定情報Gに基づいて、電動車5に対する充放電可能量を算出する。個車充放電可能量算出部22は、個車情報F及び個車行動予定情報Gのいずれか一方を用いて充放電可能量を算出してもよい。
【0051】
個車充放電計画部23は、個車充放電可能量算出部22における算出結果と、車両群充放電指令Dと、を用いて、充放電計画を電動車5のそれぞれに実行させるための個車充放電指令Hを生成する。これにより、個車充放電計画部23は、それぞれの電動車5に対する充放電計画を最適化することができる。個車充放電計画部23は、個車充放電指令Hを複数の電動車5のそれぞれに送信する。
【0052】
電動車5では、図示しないECU(Electronic Control Unit)が個車充放電指令Hを受信し、指示された充放電計画を実行する。なお、ECUに限らず、電動車5は、カーナビゲーションシステムなどを用いて、個車充放電指令Hを受信し、充放電計画を実行してもよい。また、電動車5は、情報端末30を介してユーザの意向を受け付け、承諾があった場合に充放電計画を実行するようにしてもよい。
【0053】
また、個車充放電計画部23は、複数の電動車5に対する時間帯当たりの充放電可能量を示す車両群充放電可能量Iを算出し、車両群充放電可能量Iを充放電計画部13に出力する。
【0054】
以上、充放電制御システム1の構成について説明したが、充放電制御システム1の構成は
図1及び
図2に示されるものに限定されない。例えば、充放電計画装置10及び充放電制御装置20の各構成要素の一部又は全部が複数の情報処理装置や回路等により実現される場合には、複数の情報処理装置や回路等は、集中配置されてもよいし、分散配置されてもよい。例えば、情報処理装置や回路等は、クライアントサーバシステム、クラウドコンピューティングシステム等、各々が通信ネットワークを介して接続される形態として実現されてもよい。また、充放電計画装置10及び充放電制御装置20の機能がSaaS(Software as a Service)形式で提供されてもよい。
【0055】
また、本実施形態では、充放電計画装置10及び充放電制御装置20を別個の装置として説明したが、充放電計画装置10及び充放電制御装置20が同一の装置により実現されてもよい。
【0056】
(充放電計画装置10の処理)
続いて、
図4を参照して、本実施形態にかかる充放電計画装置10が行う処理を説明する。
図4は、充放電計画装置10が行う処理を示すフローチャートである。ここでは、上述した
図1~
図3の例を用いて説明を行う。
【0057】
まず、関連情報取得部11は、実績情報A及び予測情報B(共に
図2を参照)を取得する(S11)。次に、受給予測部12は、実績情報A及び予測情報Bに基づいて電力の需給を予測する(S12)。続いて、充放電計画部13は、予測結果に基づいて充放電計画を作成する(S13)。充放電計画部13は、予測結果に加えて環境情報Cを加味して充放電計画を作成してもよい。続いて、充放電計画部13は、作成した充放電計画が追加要求に対するものであるか否かを判定する(S14)。充放電計画が追加要求に対するものである場合(S14のYES)はステップS15に進み、そうでない場合(S14のNO)はステップS17に進む。
【0058】
まず、充放電計画が追加要求に対するものでない場合(S14のNO)における処理について説明する。ここで、充放電計画部13は、ステップS13において、充放電計画P1を作成したものとする。充放電計画P1は、充放電指令値V1(k,k+1)の情報を含んでいる。充放電計画部13は、V1(k,k+1)を含む車両群充放電指令Dを生成する(S17)。充放電計画部13は、車両群充放電指令Dを充放電制御装置20に送信する(S18)。
【0059】
次に、充放電計画が追加要求に対するものである場合(S14のYES)における処理について説明する。ここで、充放電計画部13は、ステップS13において、充放電計画P1の内容が変更された充放電計画P2を作成したものとする。充放電計画P2は、充放電指令値V2(k+1,k+1)の情報を含んでいる。また、ここでは、充放電計画P2からみて、直前に生成された充放電計画は充放電計画P1であるものとして説明を行う。充放電計画P1は、V1(k,k+1)を含んでいる。
【0060】
充放電計画部13は、V2(k+1,k+1)=V1(k,k+1)であるか否かを判定する(S15)。当該判定は、上述した条件(I)を満たすか否かを判定するものである。V2(k+1,k+1)=V1(k,k+1)である場合(S15のYES)はステップS17に進む。
【0061】
V2(k+1,k+1)=V1(k,k+1)でない場合(S15のNO)、充放電計画部13は、V1(k,k+1)×V2(k+1,k+1)>0、かつ、|V2(k+1,k+1)|>|V1(k,k+1)|を満たすV2(k+1,k+1)を算出する(S16)。これにより、充放電計画部13は、上述した条件(II)を満たすV2(k+1,k+1)を算出する。
【0062】
続いて、充放電計画部13は、V2(k+1,k+1)を含む車両群充放電指令Dを生成する(S17)。充放電計画部13は、車両群充放電指令Dを充放電制御装置20に送信する(S18)。
【0063】
(充放電制御装置20の処理)
続いて、
図5を参照して、本実施形態にかかる充放電制御装置20が行う処理を説明する。
図5は、充放電制御装置20が行う処理を示すフローチャートである。ここでも、上述した
図1~
図3の例を用いて説明を行う。
【0064】
まず、個車充放電計画部23は、充放電計画装置10から車両群充放電指令Dを受信する(S21)。次に、個車情報取得部21は、個車情報F及び個車行動予定情報Gを取得する(S22)。個車充放電可能量算出部22は、個車情報F及び個車行動予定情報Gに基づいて、電動車5の充放電可能量を算出する(S23)。
【0065】
続いて、個車充放電計画部23は、電動車5ごとの充放電計画を作成する(S24)。個車充放電計画部23は、作成した電動車5ごとの充放電計画に基づいて、個車充放電指令Hを生成する(S25)。個車充放電計画部23は、個車充放電指令Hを複数の電動車5のそれぞれに送信する(S26)。これにより、例えば、電動車5のECUは、個車充放電指令Hに従って、電動車5が備えるバッテリの充放電を制御する。
【0066】
以上説明したように、本実施形態にかかる充放電制御システム1では、充放電計画装置10において、充放電計画を作成する。充放電計画装置10は、充放電計画の指示後において、電力調整に関する追加要求を受けた場合、直前に作成された充放電計画が示す充放電指令値を参照し、所定の条件を満たす充放電指令値を算出する。充放電指令値に制約を設けることで、充放電計画装置10は、追加要求を満たし、かつ、充放電の繰り返しによる電力の損失を低減することが可能な充放電計画を作成することができる。これにより、充放電制御システム1は、充放電エネルギ効率の向上を実現することができる。
【0067】
上述した充放電計画装置10及び充放電制御装置20の各機能構成部は、各機能構成部を実現するハードウエア(例:ハードワイヤードされた電子回路など)で実現されてもよいし、ハードウエアとソフトウエアとの組み合わせ(例:電子回路とそれを制御するプログラムの組み合わせなど)で実現されてもよい。例えば、本開示は、任意の処理を、CPUにプログラムを実行させることにより実現させてもよい。
【0068】
プログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、本実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、又はその他の形式の伝搬信号を含む。
【0069】
なお、本開示は上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0070】
1:充放電制御システム、2:配電網、4:充放電機器、5:電動車、10:充放電計画装置、11:関連情報取得部、12:受給予測部、13:充放電計画部(第1及び第2充放電計画部)、20:充放電制御装置、21:個車情報取得部、22:個車充放電可能量算出部、23:個車充放電計画部、30:情報端末、A:実績情報、B:予測情報、C:環境情報、D:車両群充放電指令、E:機器指令、F:個車情報、G:個車行動予定情報、H:個車充放電指令、I:車両群充放電可能量、N:ネットワーク、P1~P2:充放電計画、T1~T3:期間、V及びV1~V2:充放電指令値