(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154708
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】ワークのクリーニング装置と、クリーニング方法
(51)【国際特許分類】
G11B 5/60 20060101AFI20241024BHJP
B08B 5/00 20060101ALI20241024BHJP
G11B 21/21 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
G11B5/60 Z
B08B5/00 A
G11B21/21 Z
G11B5/60 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068683
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古田 英次郎
【テーマコード(参考)】
3B116
【Fターム(参考)】
3B116AA46
3B116AB03
3B116AB32
3B116AB42
3B116BB22
3B116BB72
3B116BB88
3B116BB89
(57)【要約】
【課題】ワークを気体中で効果的に洗浄することができるクリーニング装置を提供する。
【解決手段】クリーニング装置1は、ワークとしてのディスク装置用のサスペンション10を支持する支持部材70と、サスペンション10のアクチュエータ搭載部に設けられた圧電素子と、加振信号発生器80と、吹付け吸引ユニット72とを備えている。加振信号発生器80は、前記圧電素子に加振信号を印加する。加振信号によって前記圧電素子を振動させた状態のもとで、吹付け吸引ユニット72によってサスペンション10に空気等の気体を吹き付けるとともに、サスペンション10の周囲の気体を吸入する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを洗浄するクリーニング装置であって、
前記ワークに搭載された圧電素子と、
前記ワークに設けられ前記圧電素子と導通する配線部と、
前記ワークを支持する支持部材と、
前記圧電素子に前記配線部を介して加振信号を出力する加振信号発生器と、
前記加振信号発生器と前記配線部とを電気的に接続する給電接続部と、
前記圧電素子が前記加振信号によって振動している状態において前記ワークに気体を吹き付ける気体噴射機構と、
を具備したことを特徴とするワークのクリーニング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のクリーニング装置において、
前記加振信号が前記圧電素子に超音波振動を生じさせる振動周波数であるクリーニング装置。
【請求項3】
請求項1に記載のクリーニング装置において、
前記気体噴射機構が前記気体をイオン化する静電気除去装置を備えたクリーニング装置。
【請求項4】
請求項1に記載のクリーニング装置において、
前記ワークの周囲の気体を吸い込む吸引機構を有したクリーニング装置。
【請求項5】
請求項1に記載のクリーニング装置において、
前記ワークがディスク装置用のサスペンションであり、
前記サスペンションのアクチュエータ搭載部に前記圧電素子が配置されたクリーニング装置。
【請求項6】
ワークを気体中で洗浄するクリーニング方法であって、
前記ワークに圧電素子を取付け、
前記圧電素子が取付けられた前記ワークを支持し、
前記圧電素子に加振信号を印加することにより前記圧電素子を振動させるとともに前記ワークを振動させ、
前記ワークが振動している状態において前記ワークに気体を吹き付けることを特徴とするワークのクリーニング方法。
【請求項7】
請求項6に記載のクリーニング方法において、イオン化された気体を前記ワークに吹き付けるクリーニング方法。
【請求項8】
請求項6に記載のクリーニング方法において、
前記ワークがディスク装置用のサスペンションであり、
前記サスペンションのアクチュエータ搭載部に前記圧電素子を固定し、
前記アクチュエータ搭載部に固定された前記圧電素子に超音波振動のための前記加振信号を印加し、
前記圧電素子に超音波振動を生じさせるとともに前記ワークを振動させるクリーニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清浄であることが求められるディスク装置用のサスペンション等のワークを洗浄するクリーニング装置と、クリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータ等の情報処理装置にディスク装置が使用されている。ディスク装置は、スピンドルを中心に回転する磁気ディスクと、ピボット軸を中心に旋回するキャリッジなどを含んでいる。キャリッジのアームに、ディスク装置用のサスペンション(これ以降、単にサスペンションと称すことがある)が設けられている。
【0003】
前記サスペンションは、ベースプレートと、ロードビーム(load beam)と、フレキシャ(flexure)などを備えている。前記フレキシャの先端付近に形成されたジンバ部に、スライダが設けられている。スライダには、ディスクに記録されたデータの読取りや書込み等のアクセスを行なうための素子が設けられている。圧電素子からなるアクチュエータ素子を搭載したサスペンションも知られている。
【0004】
万一、前記サスペンションにパーティクル等の汚染物質が付着していると、ディスク装置に重大な不具合が生じる原因となる。例えばサスペンションの表面に付着したパーティクルが剥がれ落ち、ディスクとスライダとの間に入り込むと、ディスク装置が故障する原因となる。このためディスク装置の製造プロセスにおいて前記サスペンションを十分に洗浄(cleaning)し、サスペンションを清浄な状態に保つ必要がある。洗浄に使用される流体は一般に液体であるが、気体が使用されることもある。
【0005】
特許文献1に記載された洗浄装置は、液体を用いてディスク装置の洗浄を行なうようにしている。特許文献2に記載された洗浄装置は、液中に配置された超音波振動子を有している。この超音波振動子によって液体を振動させ、被洗浄物を振動させると説明されている。特許文献3に記載された洗浄装置は、流体(気体または液体)を被洗浄物に吹き付けることにより被洗浄物を洗浄する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-158004号公報
【特許文献2】特開2006-116403号公報
【特許文献3】特許第5010875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1や特許文献2のように液体を用いて洗浄を行なう洗浄装置は、液体を収容する洗浄槽が必要である。しかも被洗浄物に付着した液体を乾燥させる工程が必要である。このため洗浄のための設備が大掛かりとなり、しかも乾燥に時間がかかるという問題がある。特許文献2に記載された洗浄装置は、洗浄のための専用の超音波振動子を洗浄槽の内部に配置する必要がある。また被洗浄物の特に洗浄した部位に超音波振動を有効に作用させることができるとは限らない。
【0008】
特許文献3のように流体を被洗浄物に吹き付ける洗浄装置では、流体の吹付けにより被洗浄物が変形する可能性がある。このため被洗浄物が微小で薄く、形状が複雑な場合、被洗浄物に付着したパーティクルを効果的に洗浄することが難しいことがある。特に圧電素子が搭載されたディスク装置用のサスペンションでは、圧電素子の搭載部などにパーティクルが付着している可能性があり、高い清浄度が要求されている。
【0009】
本発明の目的は、ディスク装置用のサスペンションのように高い清浄度が要求されるワークを空気等の気体中で効果的に洗浄することが可能なクリーニング装置と、クリーニング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
1つの実施形態は、ワークを洗浄するクリーニング装置であって、前記ワークに搭載された圧電素子と、前記ワークに設けられ前記圧電素子と導通する配線部とを有している。さらにこのクリーニング装置は、前記ワークを支持する支持部材と、加振信号発生器と、給電接続部と、気体噴射機構とを具備している。前記加振信号発生器は、前記圧電素子に前記配線部を介して加振信号を出力する。前記給電接続部は、前記加振信号発生器と前記配線部とを電気的に接続する。前記気体噴射機構は、前記圧電素子が前記加振信号によって振動している状態において前記ワークに空気等の気体を吹き付ける。
【0011】
この実施形態のクリーニング装置において、前記加振信号が前記圧電素子に超音波振動を生じさせる振動周波数であってもよい。また前記気体噴射機構が前記気体をイオン化する静電気除去装置を備えてもよい。前記ワークの周囲の気体を吸い込む吸引機構を有してもよい。前記ワークの一例がディスク装置用のサスペンションであり、このサスペンションのアクチュエータ搭載部に前記圧電素子が配置されてもよい。
【0012】
1つの実施形態に係るクリーニング方法は、前記ワークに圧電素子を取付け、前記圧電素子が取付けられた前記ワークを支持し、前記圧電素子に加振信号を出力することにより前記圧電素子を振動させるとともに前記ワークを振動させ、前記ワークが振動している状態において前記ワークに気体を吹き付ける。
【0013】
この実施形態のクリーニング方法において、イオン化された気体を前記ワークに吹き付けてもよい。前記ワークがディスク装置用のサスペンションであり、前記サスペンションのアクチュエータ搭載部に前記圧電素子を固定してもよい。そして前記圧電素子に超音波振動のための前記加振信号を印加し、前記圧電素子に超音波振動を生じさせるとともに前記ワークを振動させてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ディスク装置用のサスペンション等のように高い清浄度が求められるワークを、空気等の気体中で効果的に洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】1つの実施形態に係るクリーニング装置とワークを模式的に表わした斜視図。
【
図2】
図1に示されたクリーニング装置の一部とワークの一部の断面図。
【
図3】ワークの一例としてのディスク装置用のサスペンションの平面図。
【
図4】
図3に示されたサスペンションのアクチュエータ搭載部の断面図。
【
図5】
図1に示されたクリーニング装置のプローブユニットの一部とサスペンションの一部とを模式的に示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に1つの実施形態に係るクリーニング浄置と、クリーニング方法とについて、
図1から
図5を参照して説明する。本実施形態のクリーニング浄置は、ワークの一例としてのディスク装置用のサスペンションを空気中で洗浄する工程で使用される。この明細書では、ディスク装置用のサスペンションを単にサスペンションと称すことがある。ただし、ワークがサスペンション以外であってもよい。
【0017】
図1は、クリーニング装置1とワークWを模式的に表わした斜視図である。
図2は、クリーニング装置1の一部と、ワークWの一部を示す断面図である。
図3は、ワークWの一例としてのディスク装置用のサスペンション10の平面図である。
図3中の両方向矢印X1はサスペンション10の長さ方向を示している。
図3中の両方向矢印Y1はサスペンション10の幅方向である。
図4はサスペンション10の一部の断面図である。サスペンション10には様々な種類があり、
図3と
図4はほんの一例を示したに過ぎない。
【0018】
サスペンション10は、ベースプレート11と、ロードビーム12と、フレキシャ13とを含んでいる。フレキシャ13は、ベースプレート11の後方に延びるフレキシャテール13aを有している。フレキシャテール13aの端部に形成されたテールパッド部13b(
図1に示す)に、ディスク装置のアンプ等に接続されるテール電極14(
図5に模式的に示す)が設けられている。
【0019】
図3に示されたようにフレキシャ13は、メタルベース20と、メタルベース20に沿って配置された配線部21とを有している。配線部21はテール電極14と電気的に導通している。メタルベース20はステンレス鋼の板からなる。配線部21は、メタルベース20の上に形成された絶縁層22(
図4に一部を示す)と、絶縁層22の上に形成された複数の導体23,24(
図4に一部を示す)とを含んでいる。
【0020】
ロードビーム12の基部側に第1のアクチュエータ搭載部30が形成されている。第1のアクチュエータ搭載部30に、一対の第1の圧電素子31,32からなる第1の圧電ユニット33が配置されている。第1の圧電素子31,32は、それぞれ、電気絶縁性の接着剤によって、第1のアクチュエータ搭載部30に固定されている。一対の第1の圧電素子31,32は互いに共通の構成である。
【0021】
第1の圧電素子31,32は、それぞれ、PZT(ジルコン酸チタン酸鉛)等の圧電体と、第1の電極と、第2の電極とを有している。第1の圧電素子31,32は、それぞれ配線部21の端子21a,21bを介して、電圧を印加することができるようになっている。
【0022】
ディスク装置が完成し製品として使用される際には、第1の圧電素子31,32に駆動電圧が印加される。第1の圧電素子31,32に駆動電圧が印加されると、電圧の大きさと極性とに応じて、第1の圧電素子31,32が伸縮する。これにより、ロードビーム12を幅方向(
図3に両方向矢印Y1で示す方向)に移動させることができる。
【0023】
フレキシャ13の先端側に第2のアクチュエータ搭載部40が形成されている。第2のアクチュエータ搭載部40に、一対の第2の圧電素子41,42からなる第2の圧電ユニット43が配置されている。これら第2の圧電素子41,42は互いに共通の構成であるため、これ以降は一方の圧電素子41を代表して説明する。
図4は第2の圧電素子41を含む第2のアクチュエータ搭載部40の断面図である。
【0024】
図4に示されたように、第2の圧電素子41の両端部がそれぞれ電気絶縁性の接着剤45,46によって、フレキシャ13のメタルベース20に固定されている。第2の圧電素子41は、PZT等からなる圧電体50と、第1電極51と、第2電極52とを有している。第1電極51は、一方の導電部材55と導体23とを介してメタルベース20に電気的に接続されている。第2電極52は、他方の導電部材57を介して導体24に接続されている。導体23,24は配線部21の一部である。
【0025】
ディスク装置が完成し製品として使用される際には、第2の圧電素子41,42に駆動電圧が印加される。第2の圧電素子41,42に駆動電圧が印加されると、電圧の大きさと極性とに応じて、第2の圧電素子41,42が伸縮する。
図4中の両方向矢印X2は、第2の圧電素子41が伸縮する方向を示している。第2の圧電素子41,42が伸縮することにより、サスペンション10の先端側をスウェイ方向(
図3に両方向矢印Y2で示す)に微小量移動させることができる。
【0026】
本実施形態のサスペンション10は、第1の圧電ユニット33と、第2の圧電ユニット43とを有している。しかしサスペンションの仕様によっては、第1の圧電ユニット33と第2の圧電ユニット43とのいずれか一方を有していてもよい。さらに第3の圧電ユニットを有していてもよい。
【0027】
サスペンション10を製造する工程において、サスペンション10がクリーニングされる。以下に、サスペンション10を洗浄するためのクリーニング装置1について、
図1から
図5を参照して説明する。本実施形態のクリーニング装置1は、サスペンション10に搭載された第1の圧電素子31,32と第2の圧電素子41,42とを含んでいる。
【0028】
図1に示されたクリーニング装置1は、サスペンション10を所定位置に保持する支持部材70と、支持部材70を移動させる搬送機構71と、吹付け吸引ユニット72とを有している。吹付け吸引ユニット72は、移動機構73によってサスペンション10の長さ方向に移動させることができる。移動機構73は、駆動源としてのサーボモータ74を含んでいる。
【0029】
さらに本実施形態のクリーニング装置1は、加振信号発生器80と、給電接続部81と、制御部82などを含んでいる。給電接続部81は、テール電極14(
図5に示す)と加振信号発生器80との電気的接続がなす機能を有している。制御部82は、クリーニング装置1の制御をつかさどる電気的な回路構成とメモリ等を含んでいる。
【0030】
図1に示されたように、支持部材70の上面に、サスペンション10を載置するための平坦なワーク載置面70aが形成されている。ワーク載置面70aに複数のサスペンション10が所定ピッチP1で配置される。これらサスペンション10は、枠部10aによって互いにつながれている。枠部10aによってつながれた状態の複数のサスペンション10と枠部10aとによって、シート状のサスペンション連鎖品が構成されている。
【0031】
搬送機構71は、サスペンション10が載置された支持部材70を、
図1に矢印M1で示す方向に、所定ピッチP1ずつ、間欠的に移動させる。搬送機構71の一例は、ガイド部材90と、駆動源91とを含んでいる。ガイド部材90は、サスペンション10が移動する方向、すなわちサスペンション10が並んでいる方向(矢印M1で示す方向)に延びている。
【0032】
駆動源91の一例は、制御部82によって制御されるサーボモータである。駆動源91として機能するサーボモータは、ボールねじ等の力伝達機構92を介して、支持部材70を
図1に矢印M1で示す方向に、ピッチP1ずつ、間欠的に移動させる。
【0033】
図2に示されたように、支持部材70のワーク載置面70aに、複数の吸引孔100が形成されている。吸引孔100は、吸引管101を介して排気ポンプ等の負圧発生源102に接続されている。負圧発生源102が生じた負圧によって吸引孔100から空気が吸い込まれることにより、サスペンション10がワーク載置面70aに吸着される。
【0034】
給電接続部81の一例は、支持構体110と、支持構体110の下部に設けられたテールパッド支持部111と、支持構体110の上方に設けられたプローブユニット112と、駆動機構113とを含んでいる。駆動機構113は、プローブユニット112を上下方向に移動させる。プローブユニット112の下面に複数のプローブ120,121,122(
図5に一部を示す)が設けられている。プローブ120,121,122は、電線125を介して加振信号発生器80に接続されている。
【0035】
図1に示されたように、テールパッド支持部111にテールパッド部13bが載置される。この状態のもとで、プローブユニット112が駆動機構113によってテールパッド部13bに向かって移動する。プローブユニット112が下降端まで移動すると、
図5に示されたようにプローブ120,121がそれぞれ特定のテール電極14a,14bと接触する。これにより、第1の圧電素子31,32あるいは第2の圧電素子41,42と加振信号発生器80との電気的接続がなされる。
【0036】
加振信号発生器80は、第1の圧電素子31,32と第2の圧電素子41,42とに、超音波振動を生じさせるための加振信号を出力する。すなわち加振信号発生器80は、給電接続部81を介してサスペンション10のテール電極14に加振信号を出力する。
【0037】
テール電極14に入力した加振信号は、サスペンション10の配線部21を介して、第1の圧電素子31,32と第2の圧電素子41,42とに印加される。この加振信号により、第1の圧電素子31,32と第2の圧電素子41,42とを振動させることができる。加振信号が超音波の振動周波数の場合には、圧電素子31,32,41,42に超音波振動を生じさせることができる。
【0038】
加振信号発生器80が出力する加振信号は、例えばサイン波、矩形波、鋸波などであり、これらの振動波形を組み合わせて使用してもよい。例えば振動波形を正弦波掃引(sine wave sweep)に基づいて変更してもよい。また振動波形をランダムに変更してもよい。第1の圧電素子31,32に印加する振動周波数と、第2の圧電素子41,42に印加する振動周波数とを互いに異ならせてもよい。振動周波数は、例えば数kHzから数百kHzであるが、それ以外の振動周波数でもよい。洗浄の目的によっては、超音波振動のための振動周波数以外の加振信号が使用されてもよい。
【0039】
パーティクルの大きさや汚れの性状に応じて、振動周波数を変化させてもよい。例えば比較的大きなパーティクルに対して低い振動周波数を用い、細かなパーティクルに対して高い振動周波数を用いてもよい。ワークがサスペンション10の場合、サスペンション10にダメージを与えないように考慮された振動周波数が望ましい。
【0040】
図2に示されたように吹付け吸引ユニット72は、気体噴射機構130と、吸引機構131とを備えている。気体噴射機構130は、例えば空気などの気体を噴出するノズル140と、ノズル140に気体を供給する気体供給源141と、供給管142と、フィルタ143と、静電気除去装置(イオナイザ)144とを含んでいる。気体供給源141は、空気あるいは不活性ガス等の圧縮された気体を、静電気除去装置144を介してノズル140に供給する。
【0041】
静電気除去装置144の一例は、放電針に高電圧を印加しイオンを放出することにより、イオン化された気体(例えば空気)をノズル140に供給する。気体供給源141から供給された気体(例えば空気)が静電気除去装置144によってイオン化される。こうしてイオン化された気体がノズル140からサスペンション10に向けて噴射される。ノズル140から噴出した気体(例えば空気)は、
図2に矢印Aで示すようにサスペンション10やワーク載置面70aに衝突し反射する。なお、サスペンション10の静電気帯電が問題のない程度であれば、静電気除去装置144を用いなくてもよい。
【0042】
吸引機構131は、ノズル140の周囲に形成された吸入口150と、吸入口150に連通する吸入チャンバ151と、吸入チャンバ151に接続された吸入管152とを有している。吸入管152は負圧発生源102に接続されている。吸入口150から吸入チャンバ151を経て負圧発生源102に吸い込まれた気体(例えば空気)は、フィルタ153を通って排出される。
【0043】
静電気除去装置144によってイオン化された気体がノズル140からサスペンション10に向けて噴射される。この状態において、吹付け吸引ユニット72がサスペンション10の長さ方向(
図2と
図3とに両方向矢印Y3で示す方向)に移動する。このときサスペンション10は、ワーク載置面70aの吸引孔100から吸い込まれる空気によって、ワーク載置面70aに吸着されている。
【0044】
サスペンション10がワーク載置面70aに吸着された状態のもとで、イオン化された気体(例えば空気)がノズル140からサスペンション10に向けて噴出する。これと同時に、吹付け吸引ユニット72がサスペンション10の長さ方向に移動する。このためイオン化された気体(例えば空気)がサスペンション10の長さ方向に連続して吹き付けられる。
【0045】
イオン化された気体(例えば空気)がサスペンション10に吹き付けられるため、サスペンション10に帯電している可能性のある静電気が除去される。このため薄く撓みやすいサスペンション10の長さ方向の一部がワーク載置面70aから離れたり、反ったりすることが抑制される。
【0046】
以下に本実施形態のクリーニング装置1の作用について説明する。ここではディスク装置用のサスペンション10をクリーニングする場合について述べるが、被洗浄物としてのワークは、サスペンション以外の電子部品であってもよい。要するに清浄であることが求められるワークである。
【0047】
図1に示されたように、ワーク載置面70aの上にサスペンション10が載置される。給電接続部81のテールパッド支持部111に、テールパッド部13bが載置される。この状態のもとで、プローブユニット112がテールパッド部13bに向かって移動する。
図5に示されたように、プローブ120,121が特定のテール電極14a,14bに接触する。これらテール電極14a,14bは、配線部21を介して例えば第1の圧電素子31,32と導通している。さらに別のプローブ122がアース側のメタルベース20と接触する。
【0048】
超音波振動を生じさせるための加振信号が加振信号発生器80からプローブ120,121に出力される。加振信号は、特定のテール電極14a,14bを介して、例えば第1の圧電素子31,32に印加される。加振信号は、例えばサイン波、矩形波、鋸波などであり、これらの振動波形を組み合わせてもよい。また振動波形を正弦波掃引(sine wave sweep)に基づいて変更してもよい。振動波形をランダムに変更してもよい。
【0049】
予想されるパーティクルや汚れに応じて、様々な振動波形を用いることにより、パーティクルや汚れを効果的に落とすことが可能である。例えば比較的大きなパーティクルに対して低い振動周波数を用い、細かなパーティクルに対して高い振動周波数を用いてもよい。サスペンションに与えるダメージを小さくできるような振動周波数を用いてもよい。
【0050】
サスペンション10を加振することによりクリーニングを行なう場合、小さい振動周波数を用いた方が大きい振動周波数を用いるよりも大きな洗浄効果が得られることがある。このため予想されるパーティクルに応じて、第1の圧電素子31,32に印加する振動周波数と、第2の圧電素子41,42に印加する振動周波数とを互いに異ならせてもよい。第1の圧電素子31,32と、第2の圧電素子41,42とのいずれか一方を振動させてもよい。
【0051】
以上説明したように、本実施形態のクリーニング方法は、下記の工程を含んでいる。
(1)サスペンション10の第1のアクチュエータ搭載部30に第1の圧電素子31,32を取付け、
(2)サスペンション10の第2のアクチュエータ搭載部40に第2の圧電素子41,42を取付け、
(3)サスペンション10を支持部材70のワーク載置面70aに載置し、
(4)加振信号発生器80によって第1の圧電素子31,32および、または第2の圧電素子41,42に超音波振動を生じさせるとともに、サスペンション10を振動させ、
(5)サスペンション10が振動している状態において、気体噴射機構130によってサスペンション10に気体を吹き付けるとともに、
(6)吸引機構131によってサスペンション10の周囲の空気を吸引する。
【0052】
本実施形態のクリーニング装置1は、高い清浄度が望まれるディスク装置用のサスペンションをクリーニングする際に、サスペンション自身のアクチュエータ搭載部に配置された圧電素子を加振する。このため、特にパーティクルの付着が懸念されるアクチュエータ搭載部や、圧電素子の表面なども効果的にクリーニングすることができる。
【0053】
本実施形態の吹付け吸引ユニット72は、気体を噴出するノズル140と気体を吸入する吸入口150とを有している。ノズル140からワークに向けて吹付けた気体によってパーティクルがワークから剥がれると、そのパーティクルが気体と共に吸入口150に吸入される。このためワークから脱落したパーティクルがワークに再付着することを防止できる。
【0054】
本発明を実施するに当たり、クリーニング装置を構成する各要素を種々に変更して実施できることは言うまでもない。被洗浄物としてのワークは、第1の圧電素子と第2の圧電素子の一方のみを有するサスペンションであってもよい。またワークがサスペンション以外の電子部品でもよく、要するに清浄であることが望まれるワークに適用するとよい。
【符号の説明】
【0055】
1…クリーニング装置、W…ワーク、10…ディスク装置用のサスペンション、12…ロードビーム、13…フレキシャ、13a…フレキシャテール、13b…テールパッド部、14…テール電極、20…メタルベース、21…配線部、30…第1のアクチュエータ搭載部、31,32…第1の圧電素子、33…第1の圧電ユニット、40…第2のアクチュエータ搭載部、41,42…第2の圧電素子、43…第2の圧電ユニット、70…支持部材、70a…ワーク載置面、71…搬送機構、72…吹付け吸引ユニット、80…加振信号発生器、81…給電接続部、82…制御部、100…吸引孔、102…負圧発生源、111…テールパッド支持部、112…プローブユニット、120,121,122…プローブ、130…気体噴射機構、131…吸引機構、140…ノズル、141…気体供給源、144…静電気除去装置、150…吸入口。