(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154712
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】自動取引装置
(51)【国際特許分類】
G07D 11/235 20190101AFI20241024BHJP
【FI】
G07D11/235
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068690
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180275
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 倫太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161861
【弁理士】
【氏名又は名称】若林 裕介
(72)【発明者】
【氏名】前田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】木下 未来
【テーマコード(参考)】
3E141
【Fターム(参考)】
3E141AA01
3E141AA08
3E141BA07
3E141DA05
3E141FA06
3E141FF09
3E141GA07
(57)【要約】
【課題】 顧客が出金取引を実施し、現金の受取りが確認できなかった場合でも、その後の係員の作業負担を軽減できる自動取引装置を提供する。
【解決手段】 本発明は、現金の出金取引を行う自動取引装置において、現金を収納する現金収納部と、支払い現金を顧客に提供する現金排出口と、所定時間経過後、前記現金排出口に残留した現金を再計数する計数部と、前記計数部で再計数した現金の金額と、顧客が指定した出金額である取引金額とが合致した場合、前記出金取引を無効とし、出金取引前の状態に戻す第1の取引処理部と、無効とした前記出金取引の情報と共に、前記出金取引を無効とする際に再計数した現金の金種情報を含む訂正情報を生成する第2の取引処理部とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
現金の出金取引を行う自動取引装置において、
現金を収納する現金収納部と、
支払い現金を顧客に提供する現金排出口と、
所定時間経過後、前記現金排出口に残留した現金を再計数する計数部と、
前記計数部で再計数した現金の金額と、顧客が指定した出金額である取引金額とが合致した場合、前記出金取引を無効とし、出金取引前の状態に戻す第1の取引処理部と、
無効とした前記出金取引の情報と共に、前記出金取引を無効とする際に再計数した現金の金種情報を含む訂正情報を生成する第2の取引処理部と
を有することを特徴とする自動取引装置。
【請求項2】
前記計数部は、前記現金排出口に残留した現金を再計数した後、再計数した現金を一時保留部に搬送し、
前記第1の取引処理部は、前記出金取引を無効とする際、前記一時保留部に搬送した現金を前記現金収納部に搬送して収納する
ことを特徴とする請求項1に記載の自動取引装置。
【請求項3】
前記訂正情報は、前記出金取引を無効とする前後の当該自動取引装置で管理している出金管理情報を含むことを特徴とする請求項1に記載の自動取引装置。
【請求項4】
前記出金管理情報は、当該自動取引装置において前記出金取引に係る処理が実行される度に前記取引金額が加算され、前記出金取引が無効とされる度に出金取引前の状態に戻る出金総額を示す第1のカウンタの情報と、出金取引前の前記第1のカウンタの値が格納される第2のカウンタの情報とを含むことを特徴とする請求項3に記載の自動取引装置。
【請求項5】
前記第2の取引処理部は、前記訂正情報を明細票に印字し、印字した前記明細票を所定の格納庫に格納する制御を行うことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の自動取引装置。
【請求項6】
現金の出金取引を行う自動取引装置において、
現金を収納する現金収納部と、
支払い現金を顧客に提供する現金排出口と、
所定時間経過後、前記現金排出口に残留した現金を再計数する計数部と、
前記計数部で再計数した現金の金額と、顧客が指定した出金金額である取引金額とが合致しない場合、一時保留部で保留している現金を専用の現金取忘れボックスに搬送する第1の取引処理部と、
成立した前記出金取引の情報と共に、前記出金取引が成立後再計数した現金の金種情報を含む現金受取情報を生成する第2の取引処理部と
を有することを特徴とする自動取引装置。
【請求項7】
前記現金受取情報は、前記出金取引を無効とする前後の当該自動取引装置で管理している出金管理情報を含むことを特徴とする請求項6に記載の自動取引装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動取引装置に関し、例えば、銀行などの金融機関等に設置されるATM(Automatic Teller Machine)に適用し得る。
【背景技術】
【0002】
従来、顧客がATMを利用して出金取引が実施された際、所定の時間を経過しても現金の受取りがなかった場合、1度出金された現金を装置内(専用の現金取忘れボックス)に収納し、出金された現金を不正に持ち去られることを防止するようになっている。そして、後日、顧客に対して現金取り忘れの連絡を行い、連絡を受けた顧客が取り忘れた現金を受け取る流れとなる。
【0003】
しかしながら、上記オペレーションでは、顧客への連絡や現金取忘れボックスからの現金の回収等金融機関側の負担が大きい。
【0004】
この問題に対して、特許文献1では以下の内容が開示されている。即ち、顧客の取り忘れ等により現金受取り口に残留した現金をまず、計数部において鑑定し計数する。この計数後、その現金を一時保留部に収納する。そして、残留した現金が出金取引の金額入力で指定された合計金額と同一金額の場合、ホストに対して訂正要求電文を送信することにより、その出金処理前に実行した出金手続きを無効とし、出金処理前の状態に自動的に戻すこととした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述の特許文献1に記載の技術では、ホスト側では元帳の訂正処理を行っているが、ATM側では証跡を残していない。即ち、ATMを利用する顧客からのクレーム対応、及びATM側で管理している現金データとホスト側で管理している現金データの精査不一致時の係員の負担が依然として解消されないままであった。
【0007】
そのため、顧客が出金取引を実施し、現金の受取りが確認できなかった場合でも、その後の係員の作業負担を軽減できる自動取引装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の本発明は、現金の出金取引を行う自動取引装置において、(1)現金を収納する現金収納部と、(2)支払い現金を顧客に提供する現金排出口と、(3)所定時間経過後、前記排出口に残留した現金を再計数する計数部と、(4)前記計数部で再計数した現金の金額と、顧客が指定した出金額である取引金額とが合致した場合、前記出金取引を無効とし、出金取引前の状態に戻す第1の取引処理部と、(5)無効とした前記出金取引の情報と共に、前記出金取引を無効とする際に再計数した現金の金種情報を含む訂正情報を生成する第2の取引処理部とを有することを特徴とする。
【0009】
第2の本発明は、現金の出金取引を行う自動取引装置において、(1)現金を収納する現金収納部と、(2)支払い現金を顧客に提供する現金排出口と、(3)所定時間経過後、前記現金排出口に残留した現金を再計数する計数部と、(4)前記計数部で再計数した現金の金額と、顧客が指定した出金金額である取引金額とが合致しない場合、一時保留部で保留している現金を専用の現金取忘れボックスに搬送する第1の取引処理部と、(5)成立した前記出金取引の情報と共に、前記出金取引が成立後再計数した現金の金種情報を含む現金受取情報を生成する第2の取引処理部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、顧客が出金取引を実施し、現金の受取りが確認できなかった場合でも、その後の係員の作業負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態のATMの制御系の構成を示すブロック図である。
【
図2】実施形態に係る自動取引システムの全体構成を示す全体構成図である。
【
図3】実施形態に係るATMの外観構成を示す外観斜視図である。
【
図4】実施形態に係る紙幣入出金部の内部構成を模式的に示すブロック図である。
【
図5】実施形態に係る硬貨入出金部の内部構成を模式的に示すブロック図である。
【
図6】実施形態に係る取引処理部の特徴動作(出金時において現金受取タイムアウトが発生した場合の処理)を示すフローチャート(その1)である。
【
図7】実施形態に係る取引処理部の特徴動作(出金時において現金受取タイムアウトが発生した場合の処理)を示すフローチャート(その2)である。
【
図8】実施形態に係る取引選択画面の一例を示す説明図である。
【
図9】実施形態に係る支払訂正票(明細票に印字した支払訂正票)の一例を示す説明図である。
【
図10】実施形態に係る受取タイムアウト票(明細票に印字した受取タイムアウト票)の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(A)主たる実施形態
以下では、本発明の自動取引装置の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、本発明の自動取引装置をATMに適用した例について説明する。
【0013】
(A-1)実施形態の構成
(A-1-1)全体構成
図2は、実施形態に係る自動取引システムの全体構成を示す全体構成図である。
図2において、自動取引システム5は、ネットワークNに接続可能な、ATM1、ホストコンピュータ2、及び監視装置3を有して構成される。
【0014】
ネットワークNは、金融取引に関するデータを通信することができる通信網であり、例えば、専用網を適用することができる。また、ネットワークNは、金融取引に関するデータを通信することができるのであれば公衆網としても良い。
【0015】
ATM1は、例えば、金融機関、駅、コンビニエンスストア、ホテル等に設けられている現金自動預け払い装置(ATM)である。なお、変形例として、ATM1の代わりに、現金を出金可能な他の装置にも適用することができる。
【0016】
ATM1は、ネットワークNを介して、ホストコンピュータ2と通信可能であり、例えば、振り込み取引、預け入れ取引(入金取引)、引き出し取引(出金取引)等の各種金融取引を行うものである。なお、
図2では、説明を容易にするために、1台のATM1のみ図示している。しかし、実際には、複数台のATM1のそれぞれが、ネットワークNを介して、ホストコンピュータ2と接続する。
【0017】
監視装置3は、ATM1から通知(障害情報等)を受信すること等により、ATM1の状況を管理する装置である。この監視装置3は、例えば図示しない監視センタ内に設置される。監視装置3は、通知内容に応じて、ATM1を管理する保守員や係員等に対応を指示する。
【0018】
ホストコンピュータ2は、金融機関のホストコンピュータであり、ATM1から取引に関する情報を取得すると、取得した取引に関する情報に基づいて、顧客が行なった取引の内容を管理するものである。
【0019】
(A-1-2)ATM1の詳細な構成
図3は、実施形態に係るATMの外観構成を示す外観斜視図である。
【0020】
図3において、ATM1は、操作表示部12、カード入出口13、紙幣入出口14、硬貨入出口15、及びレシート排出口16を有する。
【0021】
操作表示部12は、例えば、取引種類の選択メニュー画面、各取引の操作画面、取引内容の確認画面等を表示したり、顧客が入力した入力情報を取り込んだりするものである。操作表示部12は、例えば、タッチパネル方式の操作表示部を適用することができる。なお、操作表示部12は、操作部と表示部とが一体となったタッチパネル方式のものに限らず、操作部と表示部とがそれぞれ物理的に別の構成のものであってもよい。
【0022】
カード入出口13は、利用者がキャッシュカードを挿入したり又はキャッシュカードを取り出したりするものである。
【0023】
紙幣入出口14は、顧客が紙幣を挿入したり又は紙幣を取り出したりするものである。紙幣入出口14は、例えば、開閉可能な開閉体を有するバケットタイプのものを用いても良いし、若しくは、開閉体を有しないバケットタイプのものを用いることができる。顧客が紙幣を投入するときには、例えば、開閉体を有するバケットタイプの場合、開閉体がバケットの開口部を開けた後、顧客はバケットの開口部に紙幣を投入し、その後ATM1は、開閉体が閉じて投入された紙幣を取り込む。またATM1が紙幣を返却するときには、ATM1はバケットに紙幣を繰り出し、その後、開閉体が開放する。なお、紙幣入出口14は、紙幣を投入する紙幣入口と紙幣を放出する紙幣出口とが一体となったものに限らず、紙幣入口と紙幣出口とがそれぞれ物理的に別の構成のものであってもよい。
【0024】
硬貨入出口15は、顧客が硬貨を投入したり又は硬貨を取り出したりするものである。硬貨入出口15も、例えば、開閉体が開口部を開閉可能なバケットタイプのものを用いても良いし、若しくは、開閉体を有しないバケットタイプのものを用いても良い。この場合も、紙幣入出口14と同様に、顧客が硬貨を投入するときには、例えば、開閉体を有するバケットタイプの場合、開閉体がバケットの開口部を開けた後、顧客はバケットの開口部に硬貨を投入し、その後ATM1は、開閉体を閉じて投入された硬貨を取り込む。またATM1が硬貨を返却するときには、ATM1はバケットに硬貨を繰り出し、その後、開閉体が開放する。なお、硬貨入出口15は、硬貨を投入する硬貨入口と硬貨を放出する硬貨出口とが一体となったものに限らず、硬貨入口と硬貨出口とがそれぞれ物理的に別の構成のものであってもよい。
【0025】
レシート排出口16は、取引内容を印刷した明細票(レシート)を排出するものである。
【0026】
図1は、実施形態のATMの制御系の構成を示すブロック図である。
図1において、ATM1は、制御部10、記憶部20、通信部30、操作表示制御部40、カード処理部50、紙幣入出金部60、硬貨入出金部70、及び明細票発行部80を有する。
【0027】
制御部10は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心に構成されており、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、記憶部20から所定のプログラムを読み出して実行することにより、各部を制御して入金取引、収納処理や出金取引等の種々の処理を行う。
【0028】
制御部10が備える取引処理部11は、ホストコンピュータ2と連携して、各取引に係る処理を行う機能部である。
【0029】
記憶部20は、制御部10が実行する処理プログラム等を記憶するものあり、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等により構成される。記憶部20には、利用者が行なった取引の情報である取引情報、発生した障害の内容を示す情報、ジャーナルデータ等が記憶される。
【0030】
通信部30は、ネットワークNを介して、ホストコンピュータ2と接続するためのネットワークインタフェースである。
【0031】
操作表示制御部40は、制御部10の制御の下、操作表示部12の動作を制御するものである。操作表示制御部40は、制御部10から画面情報に基づいて、操作表示部12に画面を表示させたり、又は操作表示部12から入力された情報を制御部10に与えたりするものである。
【0032】
カード処理部50は、制御部10の制御の下、カード入出口13からキャッシュカードを取り込んだり又は排出したりするものである。また、カード処理部50は、カード入出口13から挿入されたキャッシュカードの格納部(例えば、磁気格納部やICチップ等)に格納されているカード情報を読み取り、そのカード情報を制御部10に与えるものである。
【0033】
紙幣入出金部60は、制御部10の制御の下、紙幣を金種別に収納・管理するものである。
【0034】
図4は、実施形態に係る紙幣入出金部の内部構成を模式的に示すブロック図である。紙幣入出金部60は、上述の紙幣入出口14と、この紙幣入出口14に受け入れられ、図示しない紙幣分離機構により1枚ずつ分離された紙幣の金種等を鑑別すると共に鑑別した紙幣を金種毎に計数する紙幣認識部61と、この紙幣認識部61で鑑別計数された紙幣を集積して一時保留する紙幣一時保留部62と、入金紙幣を金種別に収納する1又は2以上の紙幣収納庫63と、顧客が取り忘れた紙幣を収納する紙幣取忘ボックス64と、各部に紙幣を搬送する紙幣搬送ユニット65とを有して構成される。なお、
図4は、紙幣入出金部60を構成する各部との間で紙幣を搬送可能なように、各部が紙幣搬送ユニット65で接続されていることを模式的に示すものであり、紙幣入出金部60内における各部の配置関係、接続関係および接続順序を限定するものではない。
【0035】
硬貨入出金部70は、制御部10の制御の下、硬貨を金種別に収納・管理するものである。
【0036】
図5は、実施形態に係る硬貨入出金部の内部構成を模式的に示すブロック図である。硬貨入出金部70は、上述の硬貨入出口15と、この硬貨入出口15に受け入れられ、図示しない硬貨分離機構により1枚ずつ分離された硬貨の金種等を鑑別すると共に鑑別した硬貨を金種毎に計数する硬貨認識部71と、この硬貨認識部71で鑑別計数された硬貨を集積して一時保留する硬貨一時保留部72と、入金硬貨を金種別に収納する1又は2以上の硬貨収納庫73と、顧客が取り忘れた紙幣を収納する硬貨取忘ボックス74と、各部に硬貨を搬送する硬貨搬送ユニット75とを有して構成される。なお、
図5は、硬貨入出金部70を構成する各部との間で硬貨を搬送可能なように、各部が硬貨搬送ユニット75で接続されていることを模式的に示すものであり、硬貨入出金部70内における各部の配置関係、接続関係および接続順序を限定するものではない。
【0037】
明細票発行部80は、制御部10の制御の下、取引明細票に取引結果を印刷して、レシート排出口16から発行(排出)を行うものである。また、明細票発行部80は、発行された明細票を内部に格納するための明細票格納庫Bを備える。
【0038】
(A-1-3)取引処理部11の詳細な構成
取引処理部11は、顧客との取引処理を行うための情報処理(顧客への操作画面の提示や操作受付に伴う処理を含む)や取引処理に伴ってATM1内の各構成要素の制御等を行うものである。
【0039】
取引処理部11は、出金取引が行われる度に(後述する支払許可電文を受信するタイミングで)取引金額を加算する支払カウンタCと、出金取引が選択された際に現在の支払カウンタCの値を退避して保持するための支払一時退避カウンタTとを有する。なお、ATM1が管理する支払カウンタCの値は、定期的にホストコンピュータ2で保持する同種のカウンタと突合せを行って、現金データの精査を行っている。なお、支払カウンタCは、取引金額のカウントに加えて、取引の件数もカウントしても良い。
【0040】
この実施形態のATM1(取引処理部11)は、出金取引が選択されると、現在の支払カウンタCの値を支払一時退避カウンタTにコピーする。そして、既存の出金取引の処理で現金が出金された後、所定時間が経過しても顧客の現金の受け取りが確認できなかった場合、現金を再計数した後、一時保留部(紙幣一時保留部62及び又は硬貨一時保留部72)に搬送する。
【0041】
続けて、取引処理部11は、再計数した金額と取引金額が合致するか判定を行い、再計数した金額と取引金額が合致した場合、ホスト通信を行い、出金取引の無効処理を行う。そして、取引処理部11は、無効処理に伴い、支払カウンタCに一時退避カウンタTの値をコピーして、取引前の状態を保つ。
【0042】
一方、取引処理部11は、再計数した金額と取引金額が合致しない場合、取引は成立したものとし、顧客が取り忘れた現金を現金取忘ボックス(紙幣取忘ボックス64及び又は硬貨取忘ボックス74)に搬送する。
【0043】
取引処理部11は、いずれの場合も、取引の内容を印字した明細票(後述する支払訂正票及び受取タイムアウト票)を発行して、該明細票を明細票格納庫Bに保持する。各明細票の詳細は動作の項で説明する。
【0044】
(A-2)実施形態の動作
次に、以上のような構成を有する実施形態の自動取引システム5の動作を説明する。
【0045】
(A-2-1)
図6のフロチャートの処理
図6は、実施形態に係る取引処理部の特徴動作(出金時において現金受取タイムアウトが発生した場合の処理)を示すフローチャート(その1)である。
【0046】
まず、初期状態(顧客待ち状態)として、取引処理部11の制御に基づいて、操作表示部12に、取引の種類を選択することが可能な操作画面(以下、「取引選択画面」と呼ぶ)が表示されているものとする(S101)。例えば、
図8に示すような取引選択画面100である。そして、ここでは、顧客により、上述の取引選択画面で、「出金取引」が押下(選択)されたものとして説明する(S102)。
【0047】
取引処理部11は、現在の支払カウンタCの値を一時退避カウンタTにコピーする(S103)。
【0048】
次に、取引処理部11は、操作表示部12にキャッシュカードの挿入を要求する画面(例えば、「キャッシュカードを挿入してください」というメッセージを表示した画面)を表示させたものとする。そして、顧客により、カード入出口13にキャッシュカードが挿入されたものとする(S104)。
【0049】
取引処理部11は、顧客から出金取引に必要な暗証番号の入力(S105)及び、出金金額の入力(S106)を受付ける処理を行う。具体的には、取引処理部11は、操作表示部12に暗証番号の入力を要求する画面(例えば、「暗証番号をキー入力してください」というメッセージ)を表示して、ソフトキー又はハードキーを用いた暗証番号入力を受付けるようにしても良い。また、取引処理部11は、操作表示部12に、出金金額の入力を要求する画面(例えば、ソフトキーを用いた金額入力を受付ける出金金額入力画面)を表示して出金金額の入力を受付けるようにしても良い。
【0050】
暗証番号及び出金金額が入力されると、取引処理部11は、ホストコンピュータ2と通信して、出金取引に係る情報処理を実行する(S107)。
【0051】
取引処理部11は、ホストコンピュータ2から支払許可電文(取引成立の応答電文)を受信すると、支払カウンタCの更新を行う(S108)。即ち、取引処理部11は、支払カウンタCに取引金額(顧客が入力した出金金額)を加算する。
【0052】
取引処理部11は、紙幣入出金部60及び硬貨入出金部70を制御して、出金する現金を準備する処理(取引金額分の現金計数を行った後、紙幣入出口14及び又は硬貨入出口15まで現金を搬送して、紙幣入出口14及び又は硬貨入出口15の開閉体(シャッタ)を開く)を行う(S109)。また、取引処理部11は、キャッシュカードをカード入出口13から排出すると共に、明細票に出金取引に係る内容を印字する制御を行い、レシート排出口16から明細票を排出する(S110)。
【0053】
取引処理部11は、現金放出と同時に現金の受取待ちを監視するタイマ(現金受取タイマ)を起動する(S111)。以下では、顧客が現金を受け取られず放置したか、又は現金の一部を受け取ったことを前提として説明を継続する。
【0054】
取引処理部11は、現金受取タイマがタイムアウトすると、受取忘れとなった現金を紙幣入出口14及び又は硬貨入出口15から紙幣認識部61及び又は硬貨認識部71に搬送した後、再度現金計数を実施し、紙幣一時保留部62及び又は硬貨一時保留部72に搬送する(S112)。
【0055】
取引処理部11は、取引金額(上述のステップS106で顧客が入力した金額)と、再計数した金額とが合致するか否か確認する(S113)。
【0056】
取引処理部11は、上述のステップS113で取引金額と再計数した金額が合致した場合、ホスト通信を行い、出金取引のキャンセル処理を行う(S114)。具体的には、ATM1からホストコンピュータ2に対して支払訂正要求電文を送信することによって、ホストコンピュータ2は該当口座に対して元帳の戻し処理を実行して口座残高及び取引履歴情報がATM1を利用する顧客が出金取引を実行する前の状態に戻る。
【0057】
取引処理部11は、ホストコンピュータ2から支払訂正許可電文(支払訂正成立の応答電文)を受信すると、現金を紙幣一時保留部62及び又は硬貨一時保留部72から紙幣収納庫63及び又は硬貨収納庫73に搬送する(S115)。
【0058】
取引処理部11は、支払カウンタCの戻し処理を実施する(S116)。即ち、取引処理部11は、一時退避カウンタTの値を支払カウンタCにコピーする。
【0059】
取引処理部11は、支払訂正票を明細票に印字し内部(明細票格納庫B)に取り込む(S117)。
【0060】
図9は、実施形態に係る支払訂正票(明細票に印字した支払訂正票)の一例を示す説明図である。
【0061】
支払訂正票200では、従来から存在する既存の表示欄201と、支払訂正の証跡となる追加表示欄202とを有する。
【0062】
表示欄201には、出金取引(支払)の日付を示す「取扱日付」と、金融機関を識別するコードである「金融機関No」と、各金融機関の店舗を識別するコードである「店番」と、出金取引に係る顧客の口座番号を示す「口座番号」と、取引内容を示す「お取引内容」と、取引金額を示す「お取引金額」と、取引金額分の現金の金種を示す「金種別枚数(紙幣、硬貨)」、取引に係るメッセージ(訂正済みを示すメッセージ)を示す「ご案内」の項目が印字されている。なお、
図9は取引金額が10000円の例であり、現金の金種は紙幣の金種(万券、五千券、千券)のみ表示しても良い。
【0063】
また、追加表示欄202には、現金収納庫(紙幣収納庫63、硬貨収納庫73)に現金を戻した各金種の枚数を示す「現金収納庫戻し枚数」と、取引前の支払カウンタC(言い換えれば、一時退避カウンタT)の内容を示す「取引前カウンタ」と、訂正後の支払カウンタCの内容を示す「取引後カウンタ」の項目が印字されている。なお、取引前カウンタ及び取引後カウンタは、出金管理情報の一例である。
【0064】
上記の「お取引金額」及び「金種別枚数」は上述の出金金額入力画面で顧客が入力した金額を基に編集されたデータである。この「金種別枚数」の値と「現金収納庫戻し枚数」の値が同じであることで現金収納庫から現金が払い出されていない証跡となる。また、出金取引開始時に退避した一時退避カウンタTの値と訂正後カウンタ(現在の支払カウンタC)の値が同じであることが取引が実施されていないことの証跡となる。なお、
図9では、カウントアップした出金取引の件数も表示しているが、金額のみ表示しても良い。
【0065】
取引処理部11は、上述の支払訂正票と同様のデータを電子ジャーナルデータにも格納する(S118)。
【0066】
(A-2-2)
図7のフロチャートの処理
図7は、実施形態に係る取引処理部の特徴動作(出金時において現金受取タイムアウトが発生し場合の処理)を示すフローチャート(その2)である。
【0067】
上述のステップS113で取引金額と再計数した金額が合致しなかった場合、取引処理部11は、現金を紙幣一時保留部62及び又は硬貨一時保留部72から紙幣取忘ボックス64及び又は硬貨取忘ボックス74に搬送する(S201)。
【0068】
取引処理部11は、受取タイムアウト票を明細票に印字し内部(明細票格納庫B)に取り込む(S202)。
【0069】
図10は、実施形態に係る受取タイムアウト票(明細票に印字した受取タイムアウト票)の一例を示す説明図である。
【0070】
受取タイムアウト票300では、従来から存在する既存の表示欄301と、追加表示欄302と有する。
【0071】
表示欄301に表示する各項目は、上述の表示欄201で示した各項目と基本的に同様であるので(「ご案内」には受取タイムアウトと表記)、詳しい説明は省略する。
【0072】
一方、追加表示欄302には、現金取忘ボックス(紙幣取忘ボックス64、硬貨取忘ボックス74)に現金を搬送した各金種の枚数を示す「現金取忘ボックス搬送枚数」と、取引前の支払カウンタC(言い換えれば、一時退避カウンタT)の内容を示す「取引前カウンタ」と、取忘後の支払カウンタCの内容を示す「取忘後カウンタ」の項目が印字されている。
【0073】
上述の「金種別枚数」の値と「現金取忘ボックス搬送枚数」の値が相違することでATM1を利用する顧客が現金を一部取り忘れた証跡となり、出金取引開始時に退避した取引前カウンタ(言い換えれば、一時退避カウンタT)の値より取忘後カウンタ(支払カウンタC)の値が更新されていることで取引が成立していることの証跡となる。
【0074】
取引処理部11は、上述の受取タイムアウト票と同様のデータを電子ジャーナルデータにも格納する(S203)。
【0075】
取引処理部11は、監視装置3に現金受取タイムアウトの通知を行う(S204)。なお、監視装置3に通知する内容は現金受取タイムアウト票に印字した内容と同様で良く、例えば、「取扱日付」、「口座情報」、「取引名称」、「取引金額」、「金種別枚数」、受取タイムアウト発生を表すメッセージに加えて「現金取忘ボックス搬送枚数」、「取引前カウンタ」、「取忘後カウンタ」等の項目の内容で良い。この通知を受け取ることにより、監視装置3は、ATM1を利用された顧客を特定して、現金を一部取り忘れているので返却する旨の連絡を入れることが可能となる。
【0076】
(A-3)実施形態の効果
この実施形態によれば以下の効果を奏する。
【0077】
第1に、現金受取タイムアウトで受取忘れられた現金の再計数処理結果の合計金額と出金取引の金額入力で指定された合計金額が合致した場合にホスト側では元帳の訂正処理を行っているのに加えてATM側で証跡を残すことでATM1を利用する顧客からのクレーム対応及び精査不一致時の係員の負担をなくすことが可能となった。
【0078】
第2に、出金取引において現金の受取忘れが発生してATM1を利用された顧客が現金を一部取り忘れされた場合でも速やかにATM1を利用された顧客を特定して、現金を一部取り忘れているので返却する旨の連絡を入れることが可能となった。
【0079】
(B)他の実施形態
本発明は、上記各実施形態に限定されるものではなく、以下に例示するような変形実施形態も挙げることができる。
【0080】
(B-1)上記実施形態では、
図6のフローチャート中のステップS116において、一時退避カウンタTの値を支払カウンタCにコピーすることで、支払カウンタCの戻し処理を行っていたが、変形例として、ホストコンピュータ2から通知される電文(支払訂正要求電文)に含まれるホスト側で管理している支払カウンタCと同種のカウンタの情報を用いて支払カウンタCの戻し処理を行っても良い。
【0081】
(B-2)変形例として、ATM1は、上記実施形態及び(C-1)で述べた変形例の構成及び/又は機能の全部又は一部を組み合わせて使用しても良い。また、ATM1は、上記各実施形態及び(C-1)で述べた変形例の構成及び/又は機能のうち少なくとも一部を省略しても良い。
【符号の説明】
【0082】
2…ホストコンピュータ、3…監視装置、5…自動取引システム、10…制御部、11…取引処理部、12…操作表示部、13…カード入出口、14…紙幣入出口、15…硬貨入出口、16…レシート排出口、20…記憶部、30…通信部、40…操作表示制御部、50…カード処理部、60…紙幣入出金部、61…紙幣認識部、62…紙幣一時保留部、63…紙幣収納庫、64…紙幣取忘ボックス、65…紙幣搬送ユニット、70…硬貨入出金部、71…硬貨認識部、72…硬貨一時保留部、73…硬貨収納庫、74…硬貨取忘ボックス、75…硬貨搬送ユニット、80…明細票発行部、100…取引選択画面、200…支払訂正票、201…表示欄、202…追加表示欄、300…受取タイムアウト票、301…表示欄、302…追加表示欄、B…明細票格納庫、C…支払カウンタ、T…支払一時退避カウンタ、N…ネットワーク。