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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154721
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】カバー構造及びカバー取り外し方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
B25J19/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068707
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 功
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】小出 拓磨
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS12
3C707CY29
3C707CY37
(57)【要約】
【課題】ロボットが有するアームのハウジングに取り付けられたカバー部材を容易に取り外すことができるカバー構造及びカバー取り外し方法を提供する。
【解決手段】カバー構造1は、開口部4が設けられ、ロボットRBが有するアームの駆動機構2Aが収納されたハウジング2と、開口部4の周縁部分5に対して着脱自在に設けられ、装着状態において開口部4を覆うカバー部材3と、を備える。カバー部材3に、カバー部材3を周縁部分5に締結するためのボルトが挿入される孔であって、カバー部材3の周縁に沿って配される複数のボルト孔22と、装着状態にあるカバー部材3を駆動機構2A側から押し出すための取り外し用治具10が挿入される一つ以上の取り外し用挿入孔13A,13Bと、が形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部が設けられ、ロボットが有するアームの駆動機構が収納されたハウジングと、
前記開口部の周縁部分に対して着脱自在に設けられ、装着状態において前記開口部を覆うカバー部材と、を備え、
前記カバー部材に、
前記カバー部材を前記周縁部分に締結するためのボルトが挿入される孔であって、前記カバー部材の周縁に沿って配される複数の固定用挿入孔と、
前記装着状態にある前記カバー部材を前記駆動機構側から押し出すための取り外し用治具が挿入される一つ以上の取り外し用挿入孔と、
が形成されていることを特徴とするカバー構造。
【請求項2】
前記ハウジングは、
前記周縁部分のうち、前記取り外し用挿入孔に対応する位置に前記取り外し用挿入孔に連通するよう形成された凹部と、
前記凹部に収容され、前記カバー部材の平面視において前記取り外し用挿入孔のなす領域よりも大きい平面サイズを有し、前記取り外し用挿入孔に挿入された前記取り外し用治具と係合するように設けられる係合部材と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のカバー構造。
【請求項3】
前記取り外し用挿入孔は、前記カバー部材の主面において短手方向に沿って重心を通過する第一の仮想線によって分割される二つの領域に、1つずつ形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のカバー構造。
【請求項4】
前記取り外し用挿入孔は、前記カバー部材の前記装着状態において、当該取り外し用挿入孔を封止する封止用治具が挿入され、前記カバー部材を前記駆動機構側から押し出す際に、当該封止用治具が外された状態で、前記取り外し用治具が挿入されることを特徴とする請求項1に記載のカバー構造。
【請求項5】
請求項1のカバー構造において、
前記取り外し用挿入孔に対して前記治具を挿入する工程と、
前記複数の固定用挿入孔に挿入されたすべての前記ボルトが取り外された状態にて、挿入した前記治具を引っ張りながら前記カバー部材を前記駆動機構側から押し出す工程と、
を備えることを特徴とするカバー取り外し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットが有するアームに適用されるカバー構造及びカバー取り外し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ロボット分野において、ロボットが有するアームの駆動機構に対する保守又は点検を行うためのカバー構造が知られている。
【0003】
特許文献1には、ハウジングの開口部の周縁部分には、複数のボルト孔が形成され、カバー部材及びシール部材には、このボルト孔に対応する貫通孔が形成され、ボルトを当該貫通孔に挿入するとともに当該ボルト孔に螺合させることで、開口部にカバー部材を固定するカバー構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5970921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、何らかの理由でカバー部材とハウジングの間の密着性が高くなり、すべてのボルトを取り外した後であっても、カバー部材がハウジングに固着していることがあり得る。例えば、特許文献1に開示されるカバー構造では、カバー部材の外側(つまり、正面又は側面)からカバー部材を把持しにくく、カバー部材を容易に取り外せないという問題がある。
【0006】
上記問題に鑑み、本発明は、ロボットが有するアームのハウジングに取り付けられたカバー部材を容易に取り外すことができる、カバー構造及びカバー取り外し方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のカバー構造は、開口部が設けられ、ロボットが有するアームの駆動機構が収納されたハウジングと、前記開口部の周縁部分に対して着脱自在に設けられ、装着状態において前記開口部を覆うカバー部材と、を備え、前記カバー部材に、前記カバー部材を前記周縁部分に締結するためのボルトが挿入される孔であって、前記カバー部材の周縁に沿って配される複数の固定用挿入孔と、前記装着状態にある前記カバー部材を前記駆動機構側から押し出すための取り外し用治具が挿入される一つ以上の取り外し用挿入孔と、が形成されている。
【0008】
また、前記ハウジングは、前記周縁部分のうち、前記取り外し用挿入孔に対応する位置に前記取り外し用挿入孔に連通するよう形成された凹部と、前記凹部に収容され、前記カバー部材の平面視において前記取り外し用挿入孔のなす領域よりも大きい平面サイズを有し、前記取り外し用挿入孔に挿入された前記取り外し用治具と係合するように設けられる係合部材と、を備える。
【0009】
また、前記取り外し用挿入孔は、前記カバー部材の主面において短手方向に沿って重心を通過する第一の仮想線によって分割される二つの領域に、1つずつ形成される。
【0010】
また、前記取り外し用挿入孔は、前記カバー部材の前記装着状態において、当該取り外し用挿入孔を封止する封止用治具が挿入され、前記カバー部材を前記駆動機構側から押し出す際に、当該封止用治具が外された状態で、前記取り外し用治具が挿入される。
【0011】
本発明のカバー取り外し方法では、上記カバー構造において、前記取り外し用挿入孔に対して前記治具を挿入する工程と、前記複数の固定用挿入孔に挿入されたすべての前記ボルトが取り外された状態にて、挿入した前記治具を引っ張りながら前記カバー部材を前記駆動機構側から押し出す工程と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るカバー構造及びカバー取り外し方法によれば、ロボットが有するアームのハウジングに取り付けられたカバー部材を容易に取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態におけるカバー構造が適用されるロボットの全体概略図である。
図2図1のカバー部材を取り外した状態におけるハウジングの部分拡大図である。
図3図1のカバー部材が装着された状態におけるハウジングの部分拡大図である。
図4】封止用治具が螺合した状態における図2の係合部材近傍における断面図である。
図5】取り外し用治具が螺合した状態における図2の係合部材近傍における断面図である。
図6図5の係合部材に螺合した取り外し用治具を引き出す状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。なお、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては極力同一の符号を付して、重複する説明は適宜省略する。
【0015】
≪構成≫
図1は、本発明の一実施形態におけるカバー構造1が適用されるロボットRBの全体概略図である。
ロボットRBは、例えば、複数の関節軸を有する垂直多関節型ロボットである。ロボットRBは、例えば体部を回転させる旋回軸(J1軸)、体部を前後に動かす下腕軸(J2軸)、腕部を上下に動かす上腕軸(J3軸)、腕部を回転させる手首旋回軸(J4軸)、手首を上下に振る「手首曲げ軸」(J5軸)、及び手首を回転させる手首回転軸(J6軸)を有する。ロボットRBは、図示しない制御装置による指令に応じて、複数の関節軸を独立して駆動することで、ワークの把持・移動、溶接、塗装を含む様々な作業を行うことができる。なお、ロボットRBの種類は、垂直多関節型ロボットに限られず、例えば、水平多関節ロボット、パラレルリンクロボット、あるいは直交ロボットのいずれであってもよい。
【0016】
本発明の一実施形態(以下、「本実施形態」と記載)に係るカバー構造1は、ロボットRBが有するアームの駆動機構2Aが収納されるハウジング2、及び、ハウジング2に対して着脱自在なカバー部材3を主要部として備えている。このカバー構造1は、J1軸~J6軸のうちの少なくとも一つの関節軸に設けられている。
【0017】
図2は、図1のカバー部材3を取り外した状態におけるハウジング2の部分拡大図である。
図2に示すように、ハウジング2は開口部4を有している。なお、開口部4は駆動機構2Aの近傍に配置されている。
【0018】
図3は、図1のカバー部材3が装着された状態におけるハウジング2の駆動機構2A周辺の部分拡大図である。ただし、図3では、後述する取り外し用治具10及び封止用治具15を省略している。
【0019】
図3に示すカバー部材3は、図2に示す開口部4の周縁部分5に対して着脱自在に設けられ、装着状態において開口部4を覆う略平板状のものである。
【0020】
またカバー部材3に、第一の取り外し用挿入孔13Aと、第二の取り外し用挿入孔13Bと、複数の固定用挿入孔23とが形成されている。
【0021】
複数の固定用挿入孔23は、カバー部材3を開口部4の周縁部分5に対して装着した状態において、カバー部材3を開口部4の周縁部分5に締結するためのボルトである固定用ボルト25が挿入される孔であって、カバー部材3の周縁に沿って略等間隔に配されている。
【0022】
第一の取り外し用挿入孔13A及び第二の取り外し用挿入孔13Bは、取り外し用治具10、及び、封止用治具15が挿入される孔であり、それぞれカバー部材3の周縁に形成されている。
【0023】
ここで、カバー部材3の重心を重心Pとし、カバー部材3の主面において短手方向に沿って重心Pを通過する仮想線を、第一の仮想線L1とし、カバー部材3の主面において長手方向に沿って重心Pを通過する仮想線を、第二の仮想線L2とする。
【0024】
取り外し用挿入孔13A,13Bは、カバー部材3の周縁のうち、第一の仮想線L1によって分割される二つの領域R1,R2に、それぞれ形成されている。図3では、一方の領域R1に第一の取り外し用挿入孔13Aが、他方の領域R2に第二の取り外し用挿入孔13Bが、それぞれ形成された様子を示している。
【0025】
より詳しくは、一方の領域R1に形成される第一の取り外し用挿入孔13Aは、一方の領域R1を第二の仮想線L2によって分割した二つの領域片のうち、一方の領域片R1Aに形成されている。また、他方の領域R2に形成される第二の取り外し用挿入孔13Bは、他方の領域R2を第二の仮想線L2によって分割した二つの領域片のうち、上記一方の領域片R1Aと隣接しない側の領域片R2Aに形成されている。
【0026】
さらに、第一の取り外し用挿入孔13Aは、領域片R1Aにおいて、隣り合う固定用挿入孔23同士の略中間位置に形成されるのが好ましい。同様に、第二の取り外し用挿入孔13Bは、領域片R2Aにおいて、隣り合う固定用挿入孔23同士の略中間位置に形成されるのが好ましい。
【0027】
また、図2に示すようにハウジング2は、第一の凹部11Aと、第二の凹部11Bと、第一の係合部材12Aと、第二の係合部材12Bと、複数のボルト孔22とを備えている。
【0028】
第一の凹部11Aは、開口部4の周縁部分5における、第一の取り外し用挿入孔13Aに対応する位置に第一の取り外し用挿入孔13Aに連通して形成されている。また、第二の凹部11Bは、開口部4の周縁部分5における、第二の取り外し用挿入孔13Bに対応する位置に第二の取り外し用挿入孔13Bに連通して形成されている。
【0029】
第一の係合部材12Aと第二の係合部材12Bは、それぞれ第一の凹部11A、第二の凹部11Bに収容されている。
【0030】
また、第一の係合部材12Aは、カバー部材3の平面視において後述する第一の取り外し用挿入孔13Aのなす領域よりも大きい平面サイズを有し、第一の取り外し用挿入孔13Aに挿入された後述の取り外し用治具10、及び、第一の取り外し用挿入孔13Aに挿入された後述の封止用治具15と、それぞれ係合するように設けられている。
【0031】
また、第二の係合部材12Bは、カバー部材3の平面視において後述する第二の取り外し用挿入孔13Bのなす領域よりも大きい平面サイズを有し、第二の取り外し用挿入孔13Bに挿入された取り外し用治具10、及び、第二の取り外し用挿入孔13Bに挿入された封止用治具15と、それぞれ係合するように設けられている。
【0032】
複数のボルト孔22は、後述する固定用ボルト25でカバー部材3を周縁部分5に締結するためのボルト孔である。
【0033】
また、本実施形態に係るカバー構造1は、図3に破線で示すように、カバー部材3と開口部4の周縁部分5との間に介装されるシール部材6を更に備える。
【0034】
シール部材6は、例えば、紙、樹脂又はゴムから構成されるシートパッキンである。シール部材6には、第一の取り外し用貫通孔14Aと、第二の取り外し用貫通孔14Bと、複数の固定用貫通孔42とが形成されている。開口部4の周縁部分5に対して装着した状態のカバー部材3は、このシール部材6によって、周縁部分5に固着されている。
【0035】
第一の取り外し用貫通孔14Aは、取り外し用治具10及び封止用治具15が挿入される孔であり、第一の取り外し用挿入孔13Aに対応する位置に形成されている。また、第二の取り外し用貫通孔14Bは、取り外し用治具10及び封止用治具15が挿入される孔であり、第二の取り外し用挿入孔13Bに対応する位置に形成されている。
【0036】
複数の固定用貫通孔24は、カバー部材3を、シール部材6を介して開口部4の周縁部分5に装着した状態において、固定用ボルト25が挿入される孔であって、それぞれ、各固定用挿入孔23に対応する位置に形成されている。
【0037】
ただしシール部材6は、上述した各孔に代えて、形状を問わない隙間が形成されたものとしてもよい。
【0038】
図4は、封止用治具15が螺合した状態における図2の第一の係合部材12A近傍における断面図である。
図4に示すように、第一の係合部材12Aは、例えば平行ピンなどの部材において、外側(カバー部材3側)を向く端面21にボルト孔16が形成されたものである。そして第一の係合部材12Aは、第一の凹部11Aに対して圧入されるようにして収容されている。ただし、第一の係合部材12Aは、第一の凹部11Aの延伸方向(カバー部材3の法線方向)に所定以上の力が作用することで当該方向に移動可能となるように、第一の凹部11Aに圧入されている。
【0039】
また、第一の係合部材12Aの端面21は、カバー部材3の平面視において第一の取り外し用挿入孔13Aのなす領域よりも大きい平面サイズを有しており、かつ、ボルト孔16は、当該領域以下の平面サイズを有している。
【0040】
封止用治具15は、装着状態にあるカバー部材3の、第一の取り外し用挿入孔13A及び第二の取り外し用挿入孔13Bを封止し、カバー部材3の外観を向上させるためのボルト形状のものである。
【0041】
ボルト形状の封止用治具15は、頭部18がカバー部材3に当接した状態で、ボルト部17が、第一の取り外し用挿入孔13A及び第一の取り外し用貫通孔14Aに挿入されるとともに、ボルト孔16に螺合することができる。これにより、封止用治具15は、装着状態にあるカバー部材3における第一の取り外し用挿入孔13Aを封止する。
【0042】
カバー部材3を装着状態とし、複数の固定用ボルト25が、固定用挿入孔23及び固定用貫通孔24に挿入されボルト孔22に螺合した状態においては、上述のようにして、封止用治具15をボルト孔16に螺合した状態とし、第一の取り外し用挿入孔13Aを封止する。
【0043】
図5は、取り外し用治具10が螺合した状態における図2の第一の係合部材12A近傍における断面図である。
取り外し用治具10は、開口部4の周縁部分5に対して装着状態にあるカバー部材3をアームの駆動機構2A側(以下、内側と称す)から押し出すためのボルト形状のものである。
【0044】
ボルト形状の取り外し用治具10におけるボルト部19は、封止用治具15におけるボルト部17よりも長い。これによって、取り外し用治具10は、頭部20がカバー部材3から(外側に)離隔した状態で、ボルト部19が、第一の取り外し用挿入孔13A及び第一の取り外し用貫通孔14Aに挿入されるとともに、ボルト孔16に螺合することができる。
【0045】
図6は、図5の第一の係合部材12Aに螺合した取り外し用治具10を引き抜く状態を示す断面図である。
装着状態のカバー部材3を取り外す際には、複数の固定用ボルト25がボルト孔22から外され、封止用治具15がボルト孔16から外された状態において、図6に示すように、取り外し用治具10をボルト孔16に螺合させてから外側(カバー部材3の法線方向)に引き抜くことで、開口部4の周縁部分5に対して装着状態にあるカバー部材3を内側から押し出すことができ、カバー部材3を取り外すことができる。
【0046】
なお、以上の図4~6を用いた説明は、第二の凹部11B、第二の係合部材12B、第二の取り外し用挿入孔13B、及び、第二の取り外し用貫通孔14Bついても同様である。
【0047】
≪装着手順≫
以下、カバー部材3の装着に関する手順について説明する。
【0048】
まず、開口部4の周縁部分5にシール部材6を介装しカバー部材3を装着する。次に、固定用ボルト25を、カバー部材3の固定用挿入孔23及び固定用貫通孔24に挿入しボルト孔22に螺合させる。これによって、装着状態のカバー部材3を固定することができる。
【0049】
さらに、図4に示すように、一つの封止用治具15のボルト部17を、第一の取り外し用挿入孔13A及び第一の取り外し用貫通孔14Aに挿入し、第一の凹部11Aに圧入された第一の係合部材12Aにおけるボルト孔16に螺合させる。このとき、封止用治具15の頭部18がカバー部材3における第一の取り外し用挿入孔13Aの周囲に当接し、第一の取り外し用挿入孔13Aを封止する。
【0050】
同様にして、他の封止用治具15のボルト部17を、第二の取り外し用挿入孔13B及び第二の取り外し用貫通孔14Bに挿入し、第二の凹部11Bに圧入された第二の係合部材12Bにおけるボルト孔16に螺合させる。このとき、封止用治具15の頭部18がカバー部材3における第二の取り外し用挿入孔13Bの周囲に当接し、第二の取り外し用挿入孔13Bを封止する。
【0051】
これによって、取り外し用挿入孔13A,13Bから埃や水などがハウジング2の内部に侵入することを防ぐことができる。
【0052】
≪取り外し手順≫
以下、カバー部材3の取り外しに関する手順について説明する。
【0053】
まず、一つの封止用治具15を、第一の取り外し用挿入孔13A、第一の取り外し用貫通孔14A、及び、第一の係合部材12Aのボルト孔16から外すとともに、他の封止用治具15を、第二の取り外し用挿入孔13B、第二の取り外し用貫通孔14B、ボルト孔16から外す。次に、固定用ボルト25を、固定用挿入孔23、固定用貫通孔24、及び、第二の係合部材12Bのボルト孔22から外す。この状態においては、未だカバー部材3はシール部材6によって周縁部分5に対して固着している。
【0054】
そして、図5に示すように、一つの取り外し用治具10のボルト部19を、封止用治具15が外された状態の第一の取り外し用挿入孔13A及び第一の取り外し用貫通孔14Aに挿入し、第一の凹部11Aに圧入された第一の係合部材12Aにおけるボルト孔16に螺合させる。このとき、取り外し用治具10の頭部20はカバー部材3から外側に離隔した状態となる。
【0055】
同様にして、他の取り外し用治具10のボルト部19を、封止用治具15が外された状態の第二の取り外し用挿入孔13B及び第二の取り外し用貫通孔14Bに挿入し、第二の凹部11Bに圧入された第二の係合部材12Bにおけるボルト孔16に螺合させる。このとき、取り外し用治具10の頭部20はカバー部材3から外側に離隔した状態となる。
【0056】
上述の状態において、二つの取り外し用治具10の頭部20側を両手で掴み、二つの取り外し用治具10を同時に外側(カバー部材3の法線方向)に引き抜くことで、二つの取り外し用治具10にそれぞれ固定された係合部材12A,12Bが、(所定以上の力が加わることで)凹部11A,11Bの内周面に対して摺動しながら外側に向けて移動する。
【0057】
その際、図6に示すように、係合部材12A,12Bの端面21がシール部材6における取り外し用挿入孔13A,13Bの周囲を内側から押し出すことになり、シール部材6及びカバー部材3をハウジング2の開口部4における周縁部分5から取り外すことができる。
【0058】
≪作用効果≫
以上のように、本実施の形態の構成によれば、作業者が、各々の固定用挿入孔23に挿入された固定用ボルト25を外し、取り外し用治具10を取り外し用挿入孔13A,13Bに挿入した後に予め定められた操作を行うことで、カバー部材3に対し、その内側から押し出す外力を与えることができる。これにより、カバー部材3をハウジング2から取り外しやすくなる。
【0059】
また、作業者が係合部材12A,12Bに係合された状態の取り外し用治具10を外側に引き出すことにより、係合部材12A,12Bがカバー部材3を内側から押し出すことが可能となるので、カバー部材3を取り外すための操作がより容易になる。特に、平面サイズが大きい係合部材12A,12Bをハウジング2に収容することで、取り外し用挿入孔13A,13Bの平面サイズをより小さくでき、カバー部材3の意匠性や設計自由度がより高くなる。
【0060】
また、二つの領域R1,R2にそれぞれ形成される取り外し用挿入孔13A,13Bに対してそれぞれ挿入される取り外し用治具10を、作業者が両手で掴んで引っ張る際に、カバー部材3の長手方向における重量のバランスを保ちやすくなり、カバー部材3を取り外すための操作がより容易になる。
【0061】
また、各領域片R1A,R2Aにそれぞれ形成される取り外し用挿入孔13A,13Bに対してそれぞれ挿入される二本の取り外し用治具10を、作業者が両手で掴んで引き出す際に、カバー部材3の短手方向における重量のバランスを保ちやすくなり、カバー部材3を取り外すための操作がより容易になる。
【0062】
また、カバー構造1は、カバー部材3と周縁部分5との間に介装される紙製のシール部材を更に備えたことにより、油や埃を含む異物が紙製のシール部材6に吸着することによって、カバー部材3と周縁部分5の間の密着性が高くなる傾向がある。つまり、カバー部材3を取り外すためのアシスト効果がより顕著に現われる。
【0063】
≪変形例≫
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。すなわち、上述した具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。また、上記実施形態及び下記変形例が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【0064】
例えば、上記実施形態では、取り外し用治具10及び封止用治具15がボルト形状であり、係合部材12A,12Bのボルト孔16は、取り外し用治具10のボルト部17、及び、封止用治具15のボルト部19が、それぞれ螺合するものとした。これに代えて、ボルト部17,19を、例えば鎌継ぎ等の継ぎ手の一方(雄側あるいは雌側)の部材とし、ボルト孔16を、当該継ぎ手の他方(雌側あるいは雄側)の部材としてもよい。
すなわち、係合部材12A,12Bは、取り外し用治具10及び封止用治具15がそれぞれ係合するものであればよく、その具体的な形状が限定されるものではない。
【0065】
また、上記実施形態では、係合部材12A,12Bが、それぞれ凹部11A,11Bに圧入されているものとしたが、係合部材12A,12Bは、それぞれ凹部11A,11Bに対し微小な隙間(取り外し用治具10及び封止用治具15を係合する際に支障をきたさない程度の隙間)を有するようにして遊嵌されるものとしてもよい。あるいは、係合部材12A,12Bの外周面、及び、凹部11A,11Bの内周面が、それぞれねじ切りされているものとし、この係合部材12A,12Bと凹部11A,11Bとが螺合するように構成されてもよい。
すなわち、係合部材12A,12Bは、それぞれ凹部11A,11Bに収容されていればよく、その具体的な形状が限定されるものではない。
【0066】
このように、取り外し用治具10と係合する係合部材12A,12Bを、周縁部分5に形成された凹部11A,11Bに収容することで、取り外し用治具10が係合する取り外し用挿入孔13A,13Bの径を小さくすることができ、カバー部材3の意匠性や設計自由度が高くなる。
【0067】
さらに、取り外し用治具10の形状などによっては、係合部材12A,12B自体を省くこともできる。
例えば、取り外し用治具10が、先端が曲がった形状、すなわちJ字状である場合、取り外し用治具10を、取り外し用挿入孔13A,13B、取り外し用貫通孔14A,14B、凹部11A,11Bに挿入し、カバー部材3の平面視において少しずらしてから引き抜くと、当該先端によってカバー部材3を内側から外側に押し出すことができる。
あるいは、周縁部分5のいずれかの箇所に、縮んだ状態のばねを仕込んでおくとともに、凹部11A,11Bの底面に当該ばねを開放するスイッチを設けておくことで、棒状の取り外し用治具10を取り外し用挿入孔13A,13B、取り外し用貫通孔14A,14B、凹部11A,11Bに挿入して機械スイッチを押すと、ばねが解放され、カバー部材3を内側から外側に押し出すことができる。
すなわち、取り外し用挿入孔13A,13Bは、装着状態にあるカバー部材3を内側から押し出すための取り外し用治具10が挿入されるものであればよい。
【0068】
また、上記実施形態では、第一の取り外し用挿入孔13A及び第二の取り外し用挿入孔13Bを備えるものとしたが、取り外し用挿入孔は一つ以上であればよく、その個数は限定されるものではない。
【0069】
また、上記実施形態において説明したシール部材6は省いてもよい。シール部材6を省いた場合であっても、装着状態のカバー部材3とハウジング2が略面一となっている場合などに、本発明に係るカバー構造1が有効となる。
【符号の説明】
【0070】
1…カバー構造、2…ハウジング、2A…駆動機構、3…カバー部材、4…開口部、5…(開口部4の)周縁部分、6…シール部材、10…取り外し用治具、11A…第一の凹部、11B…第二の凹部、12A…第一の係合部材、12B…第二の係合部材、13A…第一の取り外し用挿入孔、13B…第二の取り外し用挿入孔、22…ボルト孔、23…固定用挿入孔、25…固定用ボルト、RB…ロボット
図1
図2
図3
図4
図5
図6