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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154725
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】検出装置及び検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/28 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
G01C21/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068714
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100180655
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】市川 洋光
【テーマコード(参考)】
2F129
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB03
2F129BB27
2F129BB28
2F129BB29
2F129BB39
2F129BB66
2F129EE78
2F129EE94
2F129FF02
2F129FF11
2F129FF15
2F129FF20
2F129FF62
2F129FF71
2F129HH12
(57)【要約】
【課題】車両に設置された加速度センサの設置角度ずれを高精度に検出可能な検出装置及び検出方法が提供される。
【解決手段】検出装置(10)は、車両(20)に設置された加速度センサ(71)の設置角度ずれを検出する検出装置であって、加速度センサによって測定された車両の加速度情報を含むセンサ情報を取得する取得部(131)と、GPSによって測定された車両の位置情報を含むGPS情報に基づく加速度又は車両の長期間走行によって推定される加速度と、センサ情報に基づく加速度との比較によって設置角度ずれを検出する検出部(132)と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設置された加速度センサの設置角度ずれを検出する検出装置であって、
前記加速度センサによって測定された前記車両の加速度情報を含むセンサ情報を取得する取得部と、
GPSによって測定された前記車両の位置情報を含むGPS情報に基づく加速度又は前記車両の長期間走行によって推定される加速度と、前記センサ情報に基づく加速度との比較によって前記設置角度ずれを検出する検出部と、を備える、検出装置。
【請求項2】
重力加速度の方向をZ軸方向とし、前記Z軸方向に垂直であって前記車両の進行方向をY軸方向とし、前記Z軸方向及び前記Y軸方向に垂直な前記車両の左右方向をX軸方向として、
前記検出部は、XY平面内での前記設置角度ずれを、前記GPS情報に基づく加速度の頻度分布から得られる十字形状と前記センサ情報に基づく加速度の頻度分布から得られる十字形状の傾きの差に基づいて検出する、請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
重力加速度の方向をZ軸方向とし、前記Z軸方向に垂直であって前記車両の進行方向をY軸方向とし、前記Z軸方向及び前記Y軸方向に垂直な前記車両の左右方向をX軸方向として、
前記検出部は、YZ平面内での前記設置角度ずれを、同時刻における前記GPS情報に基づく加速度に対する前記センサ情報に基づく加速度のオフセットに基づいて検出する、請求項1に記載の検出装置。
【請求項4】
重力加速度の方向をZ軸方向とし、前記Z軸方向に垂直であって前記車両の進行方向をY軸方向とし、前記Z軸方向及び前記Y軸方向に垂直な前記車両の左右方向をX軸方向として、
前記検出部は、ZX平面内での前記設置角度ずれを、同時刻における前記GPS情報に基づく加速度に対する前記センサ情報に基づく加速度のオフセットに基づいて検出する、請求項1に記載の検出装置。
【請求項5】
前記検出部は、ZX平面内での前記設置角度ずれを、前記オフセットから路面カントによるずれを除くことによって検出し、
前記検出部は、前記路面カントによるずれを、前記車両が走行する道路を過去に走行した他の車両の前記ZX平面内での前記設置角度ずれの統計値に基づいて算出する、請求項4に記載の検出装置。
【請求項6】
車両に設置された加速度センサの設置角度ずれを検出する検出方法であって、
前記加速度センサによって測定された前記車両の加速度情報を含むセンサ情報を取得する取得ステップと、
GPSによって測定された前記車両の位置情報を含むGPS情報に基づく加速度又は前記車両の長期間走行によって推定される加速度と、前記センサ情報に基づく加速度との比較によって前記設置角度ずれを検出する検出ステップと、を含む、検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検出装置及び検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両にセンサなどを設置することで、車両の方向又は位置を特定する技術が知られている。例えば特許文献1は、車両にセンサが設けられ、GPS(Global Positioning System)によって車両の位置が検出されることを記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-139845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、車両に設置された加速度センサの情報を用いて車両の方向又は位置を特定する場合に、正確な車両の加速度を測定するために、加速度センサが正しい姿勢で設置されている必要がある。しかし、車載器設置時に車両が平坦な路面で停止していることが保証できず、また曲線が多いダッシュボードなどに狭い車内で取り付けを行うため、作業誤差により車載器の取り付け方向ズレ、回転ズレなどが発生してしまう。さらに、固定が不十分であれば、設置後の振動又は他の作業での干渉により取り付け状態が変わってしまうことがあり得る。また、加速度センサが車載装置として設置される場合に、物理的な衝突などによって加速度センサに傾きが生じることがあり得る。また、このような加速度センサの設置は、人が外観で把握できるより精密な精度が要求される。その後のデータ分析における精度を考慮すると、加速度センサの設置角度ずれ(正しい姿勢に対して傾いたずれ)は、例えば0.5°以下であることが要求される。そのため、車載器を現場で精密に設置するだけでは十分でない。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、車両に設置された加速度センサの設置角度ずれを高精度に検出可能な検出装置及び検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の一実施形態に係る検出装置は、
車両に設置された加速度センサの設置角度ずれを検出する検出装置であって、
前記加速度センサによって測定された前記車両の加速度情報を含むセンサ情報を取得する取得部と、
GPSによって測定された前記車両の位置情報を含むGPS情報に基づく加速度又は前記車両の長期間走行によって推定される加速度と、前記センサ情報に基づく加速度との比較によって前記設置角度ずれを検出する検出部と、を備える。
この構成により、車両に設置された加速度センサの設置角度ずれを高精度に検出することができる。
【0007】
(2)本開示の一実施形態として、(1)において、
重力加速度の方向をZ軸方向とし、前記Z軸方向に垂直であって前記車両の進行方向をY軸方向とし、前記Z軸方向及び前記Y軸方向に垂直な前記車両の左右方向をX軸方向として、
前記検出部は、XY平面内での前記設置角度ずれを、前記GPS情報に基づく加速度の頻度分布から得られる十字形状と前記センサ情報に基づく加速度の頻度分布から得られる十字形状の傾きの差に基づいて検出する。
この構成により、XY平面内での設置角度ずれを、複雑な計算によらずに高精度に検出することができる。
【0008】
(3)本開示の一実施形態として、(1)又は(2)において、
重力加速度の方向をZ軸方向とし、前記Z軸方向に垂直であって前記車両の進行方向をY軸方向とし、前記Z軸方向及び前記Y軸方向に垂直な前記車両の左右方向をX軸方向として、
前記検出部は、YZ平面内での前記設置角度ずれを、同時刻における前記GPS情報に基づく加速度に対する前記センサ情報に基づく加速度のオフセットに基づいて検出する。
この構成により、YZ平面内での設置角度ずれを、複雑な計算によらずに高精度に検出することができる。
【0009】
(4)本開示の一実施形態として、(1)から(3)のいずれかにおいて、
重力加速度の方向をZ軸方向とし、前記Z軸方向に垂直であって前記車両の進行方向をY軸方向とし、前記Z軸方向及び前記Y軸方向に垂直な前記車両の左右方向をX軸方向として、
前記検出部は、ZX平面内での前記設置角度ずれを、同時刻における前記GPS情報に基づく加速度に対する前記センサ情報に基づく加速度のオフセットに基づいて検出する。
この構成により、ZX平面内での設置角度ずれを、複雑な計算によらずに高精度に検出することができる。
【0010】
(5)本開示の一実施形態として、(4)において、
前記検出部は、ZX平面内での前記設置角度ずれを、前記オフセットから路面カントによるずれを除くことによって検出し、
前記検出部は、前記路面カントによるずれを、前記車両が走行する道路を過去に走行した他の車両の前記ZX平面内での前記設置角度ずれの統計値に基づいて算出する。
この構成により、路面カントを考慮して、ZX平面内での設置角度ずれをさらに高精度に検出することができる。
【0011】
(6)本開示の一実施形態に係る検出方法は、
車両に設置された加速度センサの設置角度ずれを検出する検出方法であって、
前記加速度センサによって測定された前記車両の加速度情報を含むセンサ情報を取得する取得ステップと、
GPSによって測定された前記車両の位置情報を含むGPS情報に基づく加速度又は前記車両の長期間走行によって推定される加速度と、前記センサ情報に基づく加速度との比較によって前記設置角度ずれを検出する検出ステップと、を含む。
この構成により、車両に設置された加速度センサの設置角度ずれを高精度に検出することができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、車両に設置された加速度センサの設置角度ずれを高精度に検出可能な検出装置及び検出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る検出装置を含む検出システムの構成例を示す図である。
図2図2は、図1の検出システムの構成例を示す別の図である。
図3図3は、本開示の一実施形態に係る検出方法の処理を説明するための図である。
図4図4は、XY平面内での設置角度ずれを説明するための図である。
図5図5は、YZ平面内での設置角度ずれを説明するための図である。
図6図6は、ZX平面内での設置角度ずれを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本開示の一実施形態に係る検出装置10(図1参照)及び検出方法が説明される。各図中、同一又は相当する部分には、同一符号が付されている。本実施形態の説明において、同一又は相当する部分については、説明を適宜省略又は簡略化する。
【0015】
図1及び図2は、検出システム1の構成例を示す図である。検出システム1は、検出装置10を含む。図1は検出装置10の内部構成例を含むブロック図である。図2は検出システム1の全体構成を示す。
【0016】
本実施形態に係る検出装置10は車両20に設置された加速度センサ71の設置角度ずれを検出する。設置角度ずれは、加速度センサ71の正しい姿勢に対して傾いたずれである。正しい姿勢とは、加速度センサ71が車両20の加速度を正確に測定できる姿勢である。設置角度ずれがあると、加速度センサ71によって測定される車両20の加速度に誤差(偏り)が生じる。設置角度ずれは、車両20の走行中の振動などによって生じたり、加速度センサ71の設置作業の不備によって生じたりする。検出装置10は、車両20から位置情報及び加速度情報を取得して、設置角度ずれを検出する。検出装置10は、例えば検出した設置角度ずれに基づいて、車両20の加速度情報を補正して、補正後の加速度を用いてタイヤの劣化予測などに用いてよい。また、検出装置10は、検出した設置角度ずれが許容される範囲を超える場合に、車両20の管理者又は運転者に、測定される車両20の加速度情報に大きな誤差が含まれることを警告し、加速度センサ71の姿勢を正すことを促すメッセージを出力してよい。本実施形態において、車両20は一般的な乗用車であるが、特定の車種に限定されない。車両20は、タクシー、バス、トラック等であり得る。
【0017】
検出装置10は、通信部11と、記憶部12と、制御部13と、を備える。制御部13は、取得部131と、検出部132と、出力部133と、を備える。検出装置10は、ハードウェア構成として、例えばコンピュータであってよい。コンピュータは、サーバコンピュータであってよいし、ラップトップ又はタブレットのように可搬のコンピュータであってよい。検出装置10の構成要素の詳細については後述する。
【0018】
検出装置10は、ネットワーク40で接続される車両20に搭載される装置(車載装置21)とともに、検出システム1を構成してよい。ネットワーク40は例えばインターネットである。また、ネットワーク40は、例えば一部においてLAN(Local Area Network)を含んで構成されてよい。ここで、検出システム1は、さらに車載装置21の車両20への取り付けを行う車両整備施設のコンピュータ又は車両20を管理する管理者のコンピュータなどを含んで構成されてよい。車両整備施設又は車両20の管理者のコンピュータは、サーバ又は移動端末などであってよく、例えば検出装置10からの警告又はメッセージを、ネットワーク40を介して取得してディスプレイに表示してよい。
【0019】
本実施形態において、車両20は車載装置21を備える。車載装置21は、データ収集部70及び車載通信部80を備える。データ収集部70は、車両20の加速度情報及び位置情報を収集して車載通信部80に出力する。本実施形態において、データ収集部70は加速度センサ71及びGPS装置72を備えて構成される。車載装置21は、例えばカーナビゲーションシステムであってよいが、車両20の加速度情報及び位置情報を収集可能な装置であればよく、特定の装置に限定されない。加速度センサ71は、車両20の加速度を測定して加速度情報として収集する。GPS装置72は、GPSによる車両20の位置特定が可能な装置であって、車両20の位置情報を収集する。本実施形態において、GPS装置72は車両20の速度情報も収集するが、速度情報が複数の位置情報と移動時間から算出されてよい。本実施形態において、データ収集部70は、車両20の位置、速度及び加速度を周期的に収集する。ここで、図2に示すように座標軸が定められ、重力加速度の方向(すなわち鉛直方向)をZ軸方向とし、Z軸方向に垂直であって車両20の進行方向(前後方向)をY軸方向とし、Z軸方向及びY軸方向に垂直な車両20の左右方向(横方向)をX軸方向とする。加速度センサ71は、加速度情報として、少なくとも車両20の進行方向及び左右方向の加速度を収集する。車両20の進行方向の加速度は前後加速度と称されることがある。また、車両20の左右方向の加速度は左右加速度と称されることがある。
【0020】
車載通信部80は、データ収集部70によって収集された車両20の走行データを検出装置10に出力する。車載通信部80は例えば無線通信モジュールで構成されてよいが、特定の装置に限定されない。本実施形態において、車載通信部80は、ネットワーク40を介して、検出装置10と通信可能であるように構成される。検出装置10に出力された車両20の走行データは記憶部12に蓄積される。ここで、検出装置10は、複数の車両20から走行データを受け取る。本実施形態において、検出装置10の記憶部12は、複数の車両20の走行データを、車両20のそれぞれを表す識別子と関連付けて、時系列データとして蓄積する。
【0021】
上記のように、車載装置21に含まれる加速度センサ71について、走行中の振動、設置作業の不備などによって設置角度ずれが生じ得る(図2参照)。加速度センサ71の設置角度ずれは外観でわかりにくいことも多い。検出装置10は、以下に説明する構成と処理によって、GPS情報及びセンサ情報に基づいて、設置角度ずれを高精度に検出することができる。ここで、GPS情報は、GPSによって測定された車両20の位置情報を含む情報であって、本実施形態においてGPS装置72が収集した車両20の位置情報及び速度情報である。また、センサ情報は、加速度センサ71によって測定された車両20の加速度情報であって、本実施形態において加速度センサ71が収集した車両20の前後加速度及び左右加速度の情報である。また、加速度センサ71の3つ(三次元)の検出軸が、上記のX軸、Y軸及びZ軸に平行であるような姿勢で車両20に設けられている状態が、正しい姿勢(設置角度ずれがない状態)である。
【0022】
以下、検出装置10の構成要素の詳細が説明される。通信部11は、ネットワーク40に接続する1つ以上の通信モジュールを含んで構成される。通信部11は、例えば4G(4th Generation)、5G(5th Generation)などの移動体通信規格に対応する通信モジュールを含んでよい。通信部11は、例えば無線のLAN規格(一例としてIEEE802.11)に対応する通信モジュールを含んでよい。また、通信部11は、例えば有線のLAN規格に対応する通信モジュールを含んでよい。
【0023】
記憶部12は、1つ以上のメモリである。メモリは、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、又は光メモリ等であるが、これらに限られず任意のメモリとすることができる。記憶部12は、例えば検出装置10に内蔵されるが、任意のインターフェースを介して検出装置10によって外部からアクセスされる構成も可能である。
【0024】
記憶部12は、制御部13が実行する各種の算出において使用される各種のデータを記憶する。また、記憶部12は、制御部13が実行する各種の算出の結果及び中間データを記憶してよい。
【0025】
本実施形態において、記憶部12は、通信部11を介して取得された複数の車両20のそれぞれの走行状態を時系列で示す走行実績データを蓄積する。また、記憶部12はネットワーク40、通信部11を介して取得された道路地図情報を記憶してよい。道路地図情報は、車両20の位置情報(緯度及び経度)によって対応付けられて、走行実績データとして蓄積されてよい。
【0026】
制御部13は、1つ以上のプロセッサである。プロセッサは、例えば汎用のプロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサであるが、これらに限られず任意のプロセッサとすることができる。制御部13は、検出装置10の全体の動作を制御する。
【0027】
ここで、検出装置10は、以下のようなソフトウェア構成を有してよい。検出装置10の動作の制御に用いられる1つ以上のプログラムが記憶部12に記憶される。記憶部12に記憶されたプログラムは、制御部13のプロセッサによって読み込まれると、制御部13を取得部131、検出部132及び出力部133として機能させる。
【0028】
取得部131は、車両20のGPS情報と、センサ情報と、を取得する。詳細に述べると、図3に示すように、取得部131は、GPS情報として車両20の位置と速度の情報を取得する。また、図3に示すように、取得部131は、センサ情報として車両20の前後加速度と左右加速度の情報を取得する。ここで、図3は、本実施形態に係る検出装置10が実行する検出方法の処理を説明するための図である。取得部131は、記憶部12から走行実績データを読み出して、GPS情報とセンサ情報を取得する。つまり、取得部131は、車両20の走行状態を時系列で示す時系列データとして、GPS情報とセンサ情報を取得する。また、取得部131は、道路地図情報に対応付けられた車両20が走行する道路の情報も取得してよい。
【0029】
検出部132は、GPS情報に基づく加速度とセンサ情報に基づく加速度との比較によって、加速度センサ71の設置角度ずれを検出する。また、検出部132は、加速度センサ71の設置角度ずれを検出するための中間処理を行う。検出部132は、GPS情報、センサ情報及び中間処理で得られた中間データを用いて、XY平面内、YZ平面内及びZX平面内での設置角度ずれをそれぞれ検出する。以下に、図面を参照しながら、検出部132の中間処理及び検出処理が説明される。
【0030】
図3に示すように、検出部132は、中間処理として、左右加速度及び前後加速度を算出する。検出部132は、例えばGPSの位置情報(軌跡)から旋回半径を算出する。検出部132は、例えばGPSの速度情報からノイズを除去するため、ローパスフィルタを適用した後の速度を求めてよい。検出部132は、例えば算出した旋回半径と速度を用いて、公知の運動方程式から左右加速度を算出してよい。また、検出部132は、例えば速度を時間微分することによって、前後加速度を算出してよい。ローパスフィルタを適用する場合に、左右加速度の算出及び時間微分において、ノイズ除去後の速度が用いられることが好ましい。ここで、GPS情報から算出された加速度を、センサ情報に基づく加速度と区別するために、GPS情報に基づく加速度と表記することがある。中間処理として、検出部132は、GPS情報に基づく左右加速度及びGPS情報に基づく前後加速度を算出する。
【0031】
また、検出部132は、中間処理として、GPS情報に基づく加速度の頻度分布を作成する。頻度分布は、例えばヒートマップであってよいし、1つの軸に頻度を割り当てる3次元のグラフであってよい。頻度分布は、例えば図4のGPS情報と示されたグラフのように、縦軸がGPS情報に基づく前後加速度で、横軸がGPS情報に基づく左右加速度であるように作成されてよい。
【0032】
また、検出部132は、中間処理として、例えばセンサ情報に基づく加速度(左右加速度及び前後加速度)からノイズを除去するため、ローパスフィルタを適用した後の加速度を求めてよい。
【0033】
また、検出部132は、中間処理として、センサ情報に基づく加速度の頻度分布を作成する。ローパスフィルタを適用する場合に、頻度分布の作成において、ノイズ除去後の加速度が用いられることが好ましい。頻度分布は、GPS情報に基づく加速度の場合と同様に、例えばヒートマップであってよいし、1つの軸に頻度を割り当てる3次元のグラフであってよい。頻度分布は、例えば図4のセンサ情報と示されたグラフのように、縦軸がセンサ情報に基づく前後加速度で、横軸がセンサ情報に基づく左右加速度であるように作成されてよい。
【0034】
このような中間処理は、取得部131がGPS情報及びセンサ情報を取得した後で、検出部132が設置角度ずれを検出する前に実行されればよい。換言すると、設置角度ずれを検出する検出方法において、中間処理は、取得ステップと検出ステップとの間に実行されればよい。ここで、取得ステップは、GPS情報とセンサ情報とを取得する処理である。また、検出ステップは、GPS情報に基づく加速度とセンサ情報に基づく加速度との比較によって設置角度ずれを検出する処理である。検出部132は、中間処理で得られた中間データを記憶部12に記憶させてよい。
【0035】
検出部132は、検出処理として、XY平面内での設置角度ずれを、GPS情報に基づく加速度の頻度分布から得られる十字形状とセンサ情報に基づく加速度の頻度分布から得られる十字形状の傾きの差に基づいて検出する。図4は、XY平面内での設置角度ずれを説明するための図である。上記の中間処理で得られたGPS情報に基づく加速度の頻度分布及びセンサ情報に基づく加速度の頻度分布では、前後加速度と左右加速度とを直交する座標のそれぞれに対応させる。ここで、車両20が進行方向(前後方向)に加速する場合に、一般に左右加速度はほぼゼロである。また、通常の運転において、車両20は十分に減速してから右折又は左折する。したがって、車両20が横方向(左右方向)に加速する場合に、一般に前後加速度はほぼゼロである。したがって、センサ情報に基づく加速度とGPS情報に基づく加速度のそれぞれについて、高い頻度のデータを抽出すると、図4に示すように十字形状(クロス形状)を得ることができる。
【0036】
ここで、GPS情報に基づく加速度については、縦軸と横軸に平行な十字形状が得られる。ただし、加速度センサ71にXY平面内での設置角度ずれがあると、センサ情報に基づく加速度の十字形状は、縦軸と横軸に平行にならず、設置角度ずれの分だけ回転する。したがって、検出部132は、GPS情報に基づく加速度の頻度分布から得られる十字形状とセンサ情報に基づく加速度の頻度分布から得られる十字形状の傾きの差に基づいて、加速度センサ71のXY平面内での設置角度ずれを検出する(算出する)ことができる。検出部132は、XY平面内での設置角度ずれを、複雑な計算によらずに、すなわち演算負荷の少ない手法で、高精度に検出することができる。
【0037】
検出部132は、検出処理として、YZ平面内での設置角度ずれを、同時刻におけるGPS情報に基づく加速度に対するセンサ情報に基づく加速度のオフセットに基づいて検出する。図5は、YZ平面内での設置角度ずれを説明するための図である。オフセットの算出のために、検出部132は、上記の中間処理で得られたGPS情報に基づく前後加速度とセンサ情報に基づく前後加速度を直交する座標のそれぞれに対応させて、同時刻における車両20の加速度をプロットする。加速度センサ71にYZ平面内での設置角度ずれがあると、センサ情報に基づく前後加速度に重力加速度の一部が加えられて、図5のようにオフセットとして現れる。例えば加速度センサ71がθの角度のずれをもって設置された場合に、重力加速度をGとするとGsinθで算出されるオフセットが生じる。一例としてθが2°であれば、約0.03Gのオフセットが生じる。検出部132は、GPS情報に基づく前後加速度に対するセンサ情報に基づく前後加速度のオフセットからYZ平面内での設置角度ずれを検出する(算出する)ことができる。検出部132は、YZ平面内での設置角度ずれを、複雑な計算によらずに、すなわち演算負荷の少ない手法で、高精度に検出することができる。
【0038】
検出部132は、検出処理として、ZX平面内での設置角度ずれを、同時刻におけるGPS情報に基づく加速度に対するセンサ情報に基づく加速度のオフセットに基づいて検出する。図6は、ZX平面内での設置角度ずれを説明するための図である。オフセットの算出のために、検出部132は、上記の中間処理で得られたGPS情報に基づく左右加速度とセンサ情報に基づく左右加速度を直交する座標のそれぞれに対応させて、同時刻における車両20の加速度をプロットする。加速度センサ71にZX平面内での設置角度ずれがあると、センサ情報に基づく左右加速度に重力加速度の一部が加えられて、図6のようにオフセットとして現れる。例えば加速度センサ71がθの角度のずれをもって設置された場合に、重力加速度をGとするとGsinθで算出されるオフセットが生じる。一例としてθが5°であれば、約0.09Gのオフセットが生じる。検出部132は、GPS情報に基づく左右加速度に対するセンサ情報に基づく左右加速度のオフセットからZX平面内での設置角度ずれを検出する(算出する)ことができる。検出部132は、ZX平面内での設置角度ずれを、複雑な計算によらずに、すなわち演算負荷の少ない手法で、高精度に検出することができる。
【0039】
ここで、X方向すなわち車両20の左右方向について、道路が路面カントを有しており、オフセットに路面カントによるずれが含まれることがある。路面カントは、道路の水はけを良くするために、道路の中央部が盛り上がるようにつけられた角度である。検出部132は、路面カントによるずれを、車両20が走行する道路を過去に走行した他の車両20のZX平面内での設置角度ずれの統計値に基づいて算出してよい。統計値は例えば平均値であってよいし、例えば中央値であってよい。検出部132は、例えば過去に同じ道路を走行した他の車両20について加速度センサ71の設置角度ずれが無かった場合に、これらの車両20で得られたオフセット(ZX平面内での設置角度ずれ)の統計値を路面カントによるずれとしてよい。検出部132は、ZX平面内での設置角度ずれを、オフセットから路面カントによるずれを除くことによって検出できる。例えば最初に得られたオフセットが5°であって、過去に同じ道路を走行した他の車両20の走行実績データなどに基づいて得られた路面カントが3°であれば、検出部132は、ZX平面内での設置角度ずれが2°であると検出してよい。このように検出部132は、ZX平面内での設置角度ずれについて、路面カントを考慮してさらに高精度に検出することができる。
【0040】
検出部132は、XY平面内、YZ平面内及びZX平面内での設置角度ずれを全て検出してよいし、一部の検出を省略してよい。検出装置10が車両20の加速度を用いてタイヤの劣化予測などを行う機能を有する場合に、検出された設置角度ずれに基づいて、車両20の加速度情報が補正されて、補正後の加速度がタイヤの劣化予測で用いられてよい。
【0041】
出力部133は、検出部132が検出した加速度センサ71の設置角度ずれに基づいて、車両20の管理者又は運転者に、測定される車両20の加速度情報に大きな誤差が含まれることを警告し、加速度センサ71の姿勢を正すことを促すメッセージを出力してよい。一例として、出力部133は、XY平面内、YZ平面内及びZX平面内での設置角度ずれのいずれかの大きさが10°を超える場合に、加速度センサ71の姿勢を正すことを促すメッセージを出力してよい。
【0042】
以上のように、本実施形態に係る検出装置10及び検出方法は、上記の構成によって、車両20に設置された加速度センサ71の設置角度ずれを高精度に検出することができる。
【0043】
本開示の実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部又は各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。本開示に係る実施形態は装置が備えるプロセッサにより実行されるプログラム及びプログラムを記録した記憶媒体としても実現し得るものである。本開示の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【0044】
上記の実施形態において、データ収集部70がGPS装置72を備え、GPS情報に基づく加速度との比較によって加速度センサ71の設置角度ずれが検出されるとした。ここで、車両20の長期間走行による十分な走行実績データの蓄積がある場合に、GPS情報を用いないで設置角度ずれを検出することが可能である。GPS情報を用いないで設置角度ずれの検出を行う変形例では、上記のように中間処理で算出されるGPS情報に基づく加速度に代えて、車両20の長期間走行によって推定される加速度(最頻と推定される加速度)を用いる。
【0045】
車両20が長期間走行する場合に、前後加速度の最頻値は一般にゼロ(0G)になる。したがって、車両20の長期間走行によって推定される前後加速度はゼロである。そのため、本変形例において検出部132は、Y方向すなわち車両20の前後方向について、センサ情報に基づく前後加速度とゼロとの比較(つまりセンサ情報に基づく前後加速度そのもの)によって設置角度ずれを検出する。具体的な処理として、検出部132は、長期間走行で得られたセンサ情報に基づく前後加速度の最頻値を算出する。検出部132は、算出された前後加速度の最頻値を、Y方向の設置角度ずれに基づく重力加速度成分(Gsinθ)であると扱う。
【0046】
車両20が長期間走行する場合に、左右加速度の最頻値は一般に路面カントによるずれ(以下「AC」と表記する)と等しくなる。したがって、車両20の長期間走行によって推定される左右加速度はACである。そのため、本変形例において検出部132は、X方向すなわち車両20の左右方向について、センサ情報に基づく左右加速度とACとの比較によって設置角度ずれを検出する。ここで、ACは上記のように、例えば他の車両20における設置角度ずれの統計値などから算出できる。具体的な処理として、検出部132は、長期間走行で得られたセンサ情報に基づく左右加速度の最頻値を算出する。検出部132は、算出された左右加速度の最頻値からACを除いた値を、X方向の設置角度ずれに基づく重力加速度成分(Gsinθ)であると扱う。
【0047】
ここで、本変形例は、一部又は全部が上記の実施形態における手法と組み合わされて実行されてよい。例えばX軸又はY軸についてGPS情報が得られない場合に、その軸について、本変形例の手法が適用されてよい。本変形例の手法が適用される場合に、検出部132は、GPS情報に基づく加速度又は車両20の長期間走行によって推定される加速度と、センサ情報に基づく加速度との比較によって設置角度ずれを検出すればよい。また、取得部131は少なくともセンサ情報を取得すればよい。
【国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)への貢献】
【0048】
持続可能な社会の実現に向けて、SDGsが提唱されている。本開示の一実施形態は「No.9 産業と技術革新の基盤をつくろう」などに貢献する技術となり得ると考えられる。
【符号の説明】
【0049】
1 検出システム
10 検出装置
11 通信部
12 記憶部
13 制御部
20 車両
21 車載装置
40 ネットワーク
70 データ収集部
71 加速度センサ
72 GPS装置
80 車載通信部
131 取得部
132 検出部
133 出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6