(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154732
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20241024BHJP
【FI】
H02M7/48 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068729
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 洋祐
(72)【発明者】
【氏名】楠本 将大
(72)【発明者】
【氏名】滝 雅人
(72)【発明者】
【氏名】福田 純一
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770BA02
5H770BA20
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA10
5H770DA41
5H770EA30
5H770HA02Y
5H770HA03W
5H770HA07Z
5H770JA10X
5H770JA17Z
(57)【要約】
【課題】外部充電制御を簡易に実施できる電力変換装置を提供する。
【解決手段】電力変換装置20は、バッテリ10と、回転電機30と、充電器11と、を備えるシステムに適用される。電力変換装置20は、各相巻線32U~32Wに流れる電流を制御する各スイッチSUH~SWLを有し、各相上アームスイッチSUH~SWHのドレインを接続している正極側経路Lpが、バッテリ10の正極側に電気的に接続可能とされ、かつ各相下アームスイッチSUL~SWLのソースを接続している負極側経路Lnが、バッテリ10の負極側に電気的に接続可能とされたインバータ40と、負極側経路Lnに、充電器11の負極側が電気的に接続可能とされた負極側接続部81と、各相導電部材50U~50Wに、充電器11の正極側が電気的に接続可能とされた正極側接続部80と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充放電可能な蓄電部(10)と、
複数相の電機子巻線(32U~32W)を有し、前記蓄電部を電源として駆動する回転電機(30)と、
前記蓄電部の充電電力を供給する充電器(11)と、を備えるシステムに適用される電力変換装置(20)において、
前記電機子巻線に流れる電流を制御する上下アームの電流スイッチ(SUH~SWL)を相数分有し、各相における上アームの前記電流スイッチの高電位側端子を接続している正極側経路(Lp)が、前記蓄電部の正極側に電気的に接続可能とされ、かつ各相における下アームの前記電流スイッチの低電位側端子を接続している負極側経路(Ln)が、前記蓄電部の負極側に電気的に接続可能とされたインバータ(40)と、
前記負極側経路に、前記充電器の負極側が電気的に接続可能とされた負極側接続部(81)と、
各相において上下アームの前記各電流スイッチの接続点及び前記各電機子巻線の端部を接続している線電流経路(34U~34W,42U~42W,50U~50W)のうち少なくとも1相の線電流経路に、前記充電器の正極側が電気的に接続可能とされた正極側接続部(80)と、を備える、電力変換装置。
【請求項2】
前記正極側接続部及び前記負極側接続部を介して前記充電器及び前記蓄電部が電気的に接続された状態において、前記回転電機の出力トルクを所定値以下にしつつ、前記充電器の出力電圧を昇圧し、昇圧された電圧を蓄電部に供給する昇圧動作を行うべく、前記電流スイッチのスイッチング制御を行う制御部と、を備える、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
各相のうち、前記回転電機のロータ(31)における電気角に応じて定められる相であり、前記回転電機の出力トルクが前記所定値以下となるように、前記電機子巻線に流すq軸電流を0又は0付近の値とした場合に、前記線電流経路に流れる電流の向きが他の相とは逆向きである相を特定相とし、
各相のうち、前記昇圧動作中に前記線電流経路に流れる電流の向きが、前記正極側接続部側から前記電機子巻線側に向かう向きである相を充電入力相とし、
前記スイッチング制御が行われることに先立ち、前記充電入力相が前記特定相となるように、前記ロータの電気角を調整する処理、及び前記充電入力相を定める処理の少なくともいずれかである事前処理を行う処理部を備える、請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記正極側接続部及び各相の前記線電流経路を接続する充電経路(Lc,Lu~Lw)と、
各相の前記充電経路に設けられた充電スイッチ(Qu~Qw)と、を備え、
前記処理部は、前記事前処理として、前記ロータの電気角に基づいて、前記各充電スイッチのうちいずれかをオンすることにより、前記充電入力相を定める処理を行う、請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記正極側接続部及び各相の前記線電流経路のうちいずれかを接続する充電経路(Le)を備え、
前記充電入力相は、前記充電経路を介して前記正極側接続部と前記線電流経路とが接続された相であり、
前記処理部は、前記事前処理として、前記充電入力相が前記特定相となる電気角の範囲内に、前記ロータの電気角が含まれるように、前記電流スイッチのオンオフによって前記各電機子巻線に電流を流すことにより前記ロータを回転させ、前記ロータの電気角を調整する処理を行う、請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記充電入力相が前記特定相となる電気角の範囲には、第1範囲と、前記第1範囲外の第2範囲とが含まれ、
前記処理部は、前記事前処理として、前記第1範囲及び前記第2範囲のうち現状における前記ロータの電気角から近い方である特定範囲に前記ロータの電気角が含まれるように、前記電流スイッチのオンオフによって前記各電機子巻線に電流を流すことにより前記ロータを回転させ、前記ロータの電気角を調整する処理を行う、請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記回転電機のロータ(31)の電気角に基づいて、各相の前記線電流経路に流れる電流の大きさの比であって、前記回転電機の出力トルクが前記所定値以下となるように、前記電機子巻線に流れるq軸電流が0又は0付近の値となる電流比を設定する設定部を備え、
前記制御部は、各相の前記線電流経路に流れる電流の大きさの比が前記設定部により設定された前記電流比になるように、前記スイッチング制御を行う、請求項2~6のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項8】
各相のうち、前記昇圧動作中に前記線電流経路に流れる電流の向きが、前記正極側接続部側から前記電機子巻線側に向かう向きである相を充電入力相とし、
前記制御部は、前記スイッチング制御において、
前記蓄電部の電圧及び前記充電器の充電電力の電圧に基づいて、前記昇圧動作の昇圧比を算出し、
前記昇圧比及び前記電流比に基づいて、各相のうち充電入力相以外の相における下アームの前記電流スイッチのデューティ比を算出し、
各相の上アームの前記電流スイッチ及び前記充電入力相における下アームの前記電流スイッチをオフすると共に、前記デューティ比に基づいて、各相のうち充電入力相以外の相における下アームの前記電流スイッチをオンオフする、請求項7に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記各電流スイッチには、逆並列にダイオード(DUH~DWL)が接続されており、
前記充電器の充電電力の電圧が前記蓄電部の電圧よりも高い場合に、前記正極側接続部及び前記負極側接続部を介して前記充電器及び前記蓄電部が電気的に接続された状態において、前記電流スイッチをオフする制御部を備える、請求項1に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータを備える電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電力変換装置としては、電気自動車等の蓄電部と、蓄電部の充電電力を供給する充電器を備えるシステムに適用されるものが知られている。電力変換装置は、充電器から蓄電部へ電力を供給する外部充電制御を行う際に、充電器の出力電圧を昇圧し、昇圧した電圧を蓄電部へ供給する昇圧動作を行うべく、インバータのスイッチング制御を行う。これにより、電力変換装置とは別に昇圧コンバータを設けることなく外部充電制御を行うことが可能となり、システムの小型化が図られる。このような技術の例として、特許文献1に開示された技術が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
外部充電制御を簡易に実施できる電力変換装置が望まれている。
【0005】
例えば、特許文献1には、3レベルインバータの直流側に接続された2つのコンデンサの中間端子に充電器の正極側が接続される構成が記載されている。この構成を2レベルインバータに採用した場合、インバータ及びインバータに接続されたコンデンサの構造を変更することが必要となることに起因して、外部充電制御を簡易に実施できないことが懸念される。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、外部充電制御を簡易に実施できる電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
充放電可能な蓄電部と、
複数相の電機子巻線を有し、前記蓄電部を電源として駆動する回転電機と、
前記蓄電部の充電電力を供給する充電器と、を備えるシステムに適用される電力変換装置において、
前記電機子巻線に流れる電流を制御する上下アームの電流スイッチを相数分有し、各相における上アームの前記電流スイッチの高電位側端子を接続している正極側経路が、前記蓄電部の正極側に電気的に接続可能とされ、かつ各相における下アームの前記電流スイッチの低電位側端子を接続している負極側経路が、前記蓄電部の負極側に電気的に接続可能とされたインバータと、
前記負極側経路に、前記充電器の負極側が電気的に接続可能とされた負極側接続部と、
各相において上下アームの前記各電流スイッチの接続点及び前記各電機子巻線の端部を接続している線電流経路のうち少なくとも1相の線電流経路に、前記充電器の正極側が電気的に接続可能とされた正極側接続部と、を備える。
【0008】
本発明によれば、各相において上下アームの各電流スイッチの接続点及び各電機子巻線の端部を接続している線電流経路のうち少なくとも1相の線電流経路に、充電器の正極側が電気的に接続可能とされると共に、負極側経路に、充電器の負極側が電気的に接続可能とされる。この場合、電力変換装置及び回転機器において構造が変更されることを抑制しつつ、インバータ及び巻線を介して充電器を蓄電部に電気的に接続できる。そのため、インバータに昇圧動作を行わせるための構成を簡易に実現できる。その結果、外部充電制御を簡易に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る充電システムの全体構成図。
【
図5】充電入力相と、特定相との対応関係を示す図。
【
図6】制御装置が行う制御の処理手順を示すフローチャート。
【
図8】第2実施形態に係る充電システムの全体構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
以下、本発明に係る電力変換装置を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態において電力変換装置は、電気自動車やハイブリッド車両等の電動車両に搭載されている。
【0011】
図1に示すように、充電システムは、バッテリ10、電力変換装置20及び回転電機30を備えている。バッテリ10は、充放電可能な2次電池であり、例えば百V以上となる端子電圧を有している。バッテリ10は、例えば、リチウムイオン蓄電池又はニッケル水素蓄電池である。なお、本実施形態において、バッテリ10が「蓄電部」に相当する。
【0012】
回転電機30は、車載主機であり、そのロータ31が車両の駆動輪と動力伝達可能とされている。回転電機30は、ブラシレスの同期機であり、例えば永久磁石同期機である。回転電機30は、電機子巻線であるU,V,W相巻線32U,32V,32Wを備えている。各相巻線32U,32V,32Wは、電気角で互いに120°ずれている。各相巻線32U,32V,32Wは、インバータ40を介してバッテリ10に接続されている。
【0013】
電力変換装置20は、インバータ40を備えている。インバータ40は、上アームスイッチSUH,SVH,SWHと、下アームスイッチSUL,SVL,SWLとの直列接続体を3相分備えている。本実施形態では、各スイッチSUH,SUL,SVH,SVL,SWH,SWLとして、電圧制御形の半導体スイッチング素子が用いられており、より具体的にはSiC(シリコンカーバイド)系材料や、GaN(窒化ガリウム)系材料などによって構成されたNチャネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)が用いられている。各スイッチSUH,SUL,SVH,SVL,SWH,SWLには、ボディダイオードDUH,DUL,DVH,DVL,DWH,DWLが内蔵されている。なお、各スイッチSUH~SWLとして、Siで構成されたIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が用いられてもよい。この場合、各スイッチSUH~SWLには、フリーホイールダイオードが逆並列に接続される。各スイッチSUH~SWLが、「電流スイッチ」に相当する。
【0014】
各相上アームスイッチSUH,SVH,SWHの高電位側端子であるドレインには、バスバー等の正極側経路Lpを介して、バッテリ10の正極端子が接続されている。各相下アームスイッチSUL,SVL,SWLの低電位側端子であるソースには、バスバー等の負極側経路Lnを介して、バッテリ10の負極端子が接続されている。
【0015】
本実施形態において、インバータ40は、インバータケース41に収容されており、回転電機30は、モータケース33に収容されている。インバータケース41及びモータケース33は、互いに離間した位置に配置されている。インバータケース41は、U,V,W相インバータ端子42U,42V,42Wを有している。モータケース33は、U,V,W相モータ端子34U,34V,34Wを有している。
【0016】
充電システムは、U,V,W相導電部材50U,50V,50Wを備えている。各相導電部材50U,50V,50Wは、例えば、ケーブル又はバスバーである。各相導電部材50U,50V,50Wは、インバータケース41及びモータケース33それぞれの外部に設けられている。
【0017】
各相において、上アームスイッチSUH,SVH,SWH及び下アームスイッチSUL,SVL,SWLの接続点が、巻線32U,32V,32Wの端部に電気的に接続されている。具体的には、U相上,下アームスイッチSUH,SULの接続点が、U相インバータ端子42U、U相導電部材50U及びU相モータ端子34Uを介して、U相巻線32Uの第1端に接続されている。V相上,下アームスイッチSVH,SVLの接続点が、V相インバータ端子42V、V相導電部材50V及びV相モータ端子34Vを介して、V相巻線32Vの第1端が接続されている。W相上,下アームスイッチSWH,SWLの接続点が、W相インバータ端子42W、W相導電部材50W及びW相モータ端子34Wを介して、W相巻線32Wの第1端が接続されている。U,V,W相巻線32U,32V,32Wの第2端は中性点で接続されている。
【0018】
インバータ40は、バッテリ10から供給される電圧を平滑化するコンデンサ43を備えている。コンデンサ43は、正極側経路Lp及び負極側経路Lnを電気的に接続している。なお、コンデンサ43は、インバータ40の外部に設けられていてもよい。
【0019】
充電システムは、電圧センサ60、電流センサ61及び回転角センサ62を備えている。電圧センサ60は、コンデンサ43の電圧を検出する。電流センサ61は、各相導電部材50U,50V,50Wに流れる電流のうち、少なくとも2相分の電流を検出する。回転角センサ62は、例えばレゾルバにより構成され、回転電機30を構成するロータ31の電気角を検出する。各センサ60~62の検出値は、電力変換装置20が備える制御装置70に入力される。
【0020】
制御装置70は、CPUや各種メモリを備えるマイクロコンピュータを主体として構成される。マイクロコンピュータが提供する機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェアおよびそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、マイクロコンピュータがハードウェアである電子回路によって提供される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路によって提供することができる。例えば、マイクロコンピュータは、自身が備える記憶部としての非遷移的実体的記録媒体(non-transitory tangible storage medium)に格納されたプログラムを実行する。プログラムには、例えば、
図6等に示す処理のプログラムが含まれる。プログラムが実行されることにより、プログラムに対応する方法が実行される。記憶部は、例えば不揮発性メモリである。なお、記憶部に記憶されたプログラムは、例えばOTA(Over The Air)等、インターネット等の通信ネットワークを介してダウンロード及び更新が可能である。
【0021】
制御装置70は、回転電機30の駆動制御と、外部充電制御とを行う。回転電機30の駆動制御は、車両を走行させるためのであって、回転電機30の制御量(例えばトルク)を指令値に制御するための制御である。制御装置70は、インバータ40が有する各スイッチSUH~SWLを交互にオンするためのスイッチング指令を生成する。スイッチング指令は、オン指令又はオフ指令である。
【0022】
外部充電制御は、車両の停車中において、充電システムが備える充電器11からバッテリ10へと電力を供給する制御である。充電器11は、バッテリ10、電力変換装置20、各種センサ60~62を備える車両の外部に設けられている。充電器11は、例えば、定置式の充電器であり、急速充電器とも呼ばれる。充電器11は、例えば、直流電源であるが、交流電源であってもよい。この場合、AC/DCコンバータが必要となる。
【0023】
ここで、外部充電制御を簡易に実施できる電力変換装置が望まれている。
【0024】
例えば、外部充電制御を実施するための構成として、3レベルインバータの直流側に接続された2つのコンデンサの中間端子に、充電器の正極側を接続する構成が考えられる。しかしながら、この構成を2レベルインバータに採用した場合、インバータ及びインバータに接続されたコンデンサの構造を変更することが必要となることに起因して、外部充電制御を簡易に実施できないことが懸念される。
【0025】
また、例えば、回転電機の各相巻線の中性点に、充電器の正極側を接続する構成が考えられる。しかしながら、この構成を採用した場合、回転電機の構造を変更することが必要となることに起因して、外部充電制御を簡易に実施できないことが懸念される。
【0026】
上述した点に鑑みて、本実施形態に係る電力変換装置20は、以下の構成を備えている。
【0027】
電力変換装置20は、正極側接続部80及び負極側接続部81を備えている。負極側接続部81は、負極側充電経路Ldを介してインバータ40の負極側経路Lnに接続されている。正極側接続部80は、正極側充電経路Lcを介して各相導電部材50U,50V,50Wに接続されている。正極側充電経路Lcは、U,V,W相接続経路Lu,Lv,Lwを含む。本実施形態では、U相接続経路Luを介して正極側接続部80及びU相導電部材50Uが接続され、V相接続経路Lvを介して正極側接続部80及びV相導電部材50Vが接続され、W相接続経路Lwを介して正極側接続部80及びW相導電部材50Wが接続されている。
【0028】
なお、各相接続経路Lu,Lv,Lwは、各相導電部材50U,50V,50Wに代えて、各相インバータ端子42U,42V,42W又は各相モータ端子34U,34V,34Wに接続されてもよい。本実施形態において、各相モータ端子34U,34V,34W、各相インバータ端子42U,42V,42W及び各相導電部材50U,50V,50Wが「線電流経路」に相当する。
【0029】
各相接続経路Lu,Lv,Lwには、各相充電スイッチQu,Qv,Qwが設けられている。また、負極側充電経路Ldには、負極側充電スイッチQnが設けられている。各相充電スイッチQu,Qv,Qw及び負極側充電スイッチQnは、機械式リレー又は半導体スイッチング素子である。各相充電スイッチQu,Qv,Qw及び負極側充電スイッチQnは、制御装置70により駆動される。
【0030】
正極側接続部80が充電器11の正極端子に接続可能とされ、負極側接続部81が充電器11の負極端子に接続可能とされている。具体的には、正極側接続部80及び負極側接続部81により構成される車両のインレットが、充電器11側のコネクタに接続可能に構成されている。車両のユーザ(例えばドライバ)又は作業者により車両のインレット及び充電器11側のコネクタが接続され、正極側接続部80及び負極側接続部81を介して充電器11及びバッテリ10が電気的に接続される。これにより、外部充電制御が実行可能な状態とされる。
【0031】
制御装置70は、外部充電制御中において、充電器11の充電電力の電圧がバッテリ10の電圧よりも低い場合に、充電器11の出力電圧を昇圧し、昇圧された電圧をバッテリ10に供給する昇圧動作を行う。昇圧動作中において、回転電機30及びインバータ40は充電器11の出力電圧を昇圧する昇圧コンバータとして機能する。制御装置70は、各相充電スイッチQu~Qwのうちオンされた充電スイッチの相に応じて、各スイッチSUH~SWLのスイッチング制御を行うことにより、回転電機30及びインバータ40を昇圧コンバータとして機能させる。
【0032】
具体的には、制御装置70は、昇圧動作において、充電スイッチがオンされた相の下アームスイッチ、及び各相上アームスイッチSUH~SWHをオフする。また、制御装置70は、昇圧動作において、各相のうち充電スイッチがオンされた相以外の相の下アームスイッチをオンオフする。
【0033】
図2及び
図3に、昇圧動作の一例を示す。ここでは、W相充電スイッチQwがオンされ、正極側接続部80を介して充電器11の正極端子及びW相導電部材50Wが接続されている場合の昇圧動作について説明する。この場合、制御装置70は、昇圧動作中において、各相上アームスイッチSUH~SWH及びW相下アームスイッチSWLをオフすると共に、U,V相下アームスイッチSUL,SVLをオンオフする。
【0034】
図2に、U,V相下アームスイッチSUL,SVLがオンされると共に、各相上アームスイッチSUH~SWH及びW相下アームスイッチSWLがオフされる場合の電流経路を示す。この場合、充電器11、正極側接続部80、正極側充電経路Lc、W相接続経路Lw、W相導電部材50W、W相巻線32W、U,V相巻線32U,32V、U,V相導電部材50V,50W、U,V相下アームスイッチSUL,SVL、負極側経路Ln、負極側充電経路Ld及び負極側接続部81を含む閉回路が形成される。これにより、各相巻線32U,32V,32Wに磁気エネルギが蓄積される。
【0035】
図3に、各スイッチSUH~SWLがオフされる場合の電流経路を示す。この場合、充電器11、正極側接続部80、正極側充電経路Lc、W相接続経路Lw、W相導電部材50W、W相巻線32W、U,V相巻線32U,32V、U,V相導電部材50V,50W、U,V相上アームダイオードDUH,DVH、正極側経路Lp、バッテリ10、負極側充電経路Ld及び負極側接続部81を含む閉回路が形成される。これにより、充電器11の出力電圧が昇圧され、昇圧された電圧がバッテリ10へと供給される。
【0036】
なお、U相充電スイッチQuがオンされると、正極側接続部80を介して充電器11の正極端子及びU相導電部材50Uが接続される。この場合、制御装置70は、昇圧動作中において、各相上アームスイッチSUH~SWH及びU相下アームスイッチSULをオフすると共に、V,W相下アームスイッチSVL,SWLをオンオフする。V相充電スイッチQvがオンされると、正極側接続部80を介して充電器11の正極端子及びV相導電部材50Vが接続される。この場合、制御装置70は、昇圧動作中において、各相上アームスイッチSUH~SWH及びV相下アームスイッチSVLをオフすると共に、U,W相下アームスイッチSUL,SWLをオンオフする。
【0037】
各相充電スイッチQu~Qwのうちいずれか2つがオンされ、正極側接続部80を介して充電器11の正極端子及び各相導電部材50U~50Wのうちいずれか2つが接続されている場合に、昇圧動作を行うことが可能である。例えば、U,V相充電スイッチQu,Qvがオンされると、正極側接続部80を介して充電器11の正極端子及びU,V相導電部材50U,50Vが接続される。この場合、制御装置70は、昇圧動作中において、各相上アームスイッチSUH~SWH及びU,V相下アームスイッチSUL,SVLをオフすると共に、W相下アームスイッチSWLをオンオフする。
【0038】
制御装置70は、外部充電制御において、回転電機30の出力トルクを所定値以下にしつつ、昇圧動作を行うべく、各スイッチSUH~SWLのスイッチング制御を行う。なお、所定値は、車両が動かない程度の小さいトルクであればよい。例えば、所定値は、回転電機30が出力可能な最大トルクの15%以下、10%以下又は5%以下のトルクである。
【0039】
以下では、制御装置70が行う外部充電制御について説明する。
図4に、外部充電制御を行う制御装置70の構成を示す。
【0040】
制御装置70は、処理部71を備えている。処理部71には、回転電機30のロータ31の電気角θが入力される。処理部71は、回転電機30のロータ31の電気角θとして、回転角センサ62の検出値を用いることが可能である。
【0041】
処理部71は、昇圧動作を行うための各スイッチSUH~SWLのスイッチング制御に先立ち、充電入力相を定める事前処理を行う。充電入力相は、各相のうち、昇圧動作中に各相導電部材50U~50Wに流れる電流の向きが、正極側接続部80側から各相巻線32U~32W側に向かう向きとなる相である。
【0042】
ここで、処理部71は、事前処理として、回転電機30のロータ31の電気角θに基づいて、充電入力相が特定相となるように、各相充電スイッチQu~Qwのうちいずれかをオンする。特定相は、各相のうち、回転電機30のロータ31における電気角θに応じて定められる相である。特定相は、回転電機30の出力トルクが所定値以下となるように、各相巻線32U~32Wに流すq軸電流を0又は0付近の値とした場合に、各相導電部材50U~50Wに流れる電流の向きが他の相とは逆向きとなる相である。
【0043】
図5に、各相巻線32U~32Wに流すq軸電流を0とした場合における各相導電部材50U~50Wに流れる線電流の波形と、特定相と、充電入力相との対応関係を示す。本実施形態では、充電入力相は、各相のうち充電スイッチQu~Qwがオンされた相である。なお、
図5では、実線によりU相導電部材50Uに流れる電流を示し、破線によりV相導電部材50Vに流れる電流を示し、一点鎖線によりW相導電部材50Wに流れる電流を示す。各相導電部材50U,50V,50Wに流れる電流の符号は、各相において、上,下アームスイッチの接続点から巻線の第1端へと流れる方向を正とし、巻線の第1端から上,下アームスイッチの接続点へと流れる方向を負とする。
【0044】
例えば、回転電機30のロータ31の電気角θが240°である場合、U,V相導電部材50U,50Vに流れる線電流の符号が負であり、W相導電部材50Wに流れる線電流の符号が正である。そのため、回転電機30のロータ31の電気角θが240°である場合の特定相は、W相である。処理部71は、特定相がW相である場合、W相充電スイッチQwをオンする。これにより、充電入力相が特定相であるW相に定められる。なお、回転電機30のロータ31の電気角θが240°である場合に限らず、30°≦θ<90°及び210°≦θ<270°である場合の特定相は、W相である。この場合、処理部71は、同様にして、W相充電スイッチQwをオンする。
【0045】
回転電機30のロータ31の電気角θが240°である場合に充電入力相がW相に定められたのと同様にして、電気角θに応じて充電入力相が以下のように定められている。0°≦θ<30°、150°≦θ<210°及び330°≦θ<360°である場合の特定相は、U相である。処理部71は、特定相がU相である場合、U相充電スイッチQuをオンする。これにより、充電入力相が特定相であるU相に定められる。
【0046】
90°≦θ<150°及び270°≦θ<330°である場合の特定相は、V相である。処理部71は、特定相がV相である場合、V相充電スイッチQvをオンする。これにより、充電入力相が特定相であるV相に定められる。
【0047】
図4の説明に戻り、制御装置70は、設定部72を備えている。処理部71は、事前処理が完了したことを伝達する伝達信号Sgを、設定部72に出力する。伝達信号Sgには、充電入力相の情報が含まれる。設定部72は、伝達信号Sgを受信した場合に、各相導電部材50U~50Wに流れる電流の大きさの比である電流比Irを設定する。言い換えると、設定部72は、充電入力相が定められた後において、電流比Irを設定する。設定部72は、回転電機30のロータ31の電気角θに基づいて、回転電機30の出力トルクが所定値以下となるように、各相巻線32U~32Wに流れるq軸電流が0又は0付近の値となる電流比Irを設定する。設定部72は、回転電機30のロータ31の電気角θとして、回転角センサ62の検出値を用いることが可能である。
【0048】
例えば、
図5に示すように、設定部72は、回転電機30のロータ31の電気角θが240°である場合、各相巻線32U~32Wに流れるq軸電流が0となるように電流比Irを、|Iu|:|Iv|:|Iw|=1:1:2に設定する。なお、設定部72は、回転電機30のロータ31の電気角θが240°以外である場合にも、電気角θが240°の場合と同様に、電流比Irを設定することが可能である。
【0049】
制御装置70は、算出部73を備えている。算出部73には、電流比Ir、バッテリ10の電圧を示す電圧情報VH及び充電器11の充電電力の電圧を示す電圧情報Vinが入力される。算出部73は、電流比Irに基づいて、各相のうち充電入力相以外の相における各下アームスイッチのオン時間を算出する。算出部73は、バッテリ10の電圧情報VH及び充電器11の充電電力の電圧情報Vinに基づいて、昇圧動作における昇圧比を算出する。そして、算出部73は、昇圧比と各相のうち充電入力相以外の相における各下アームスイッチのオン時間とに基づいて、各相のうち充電入力相以外の相における各下アームスイッチのオフ時間を算出する。これにより、各相のうち充電入力相以外の相における各下アームスイッチのデューティ比が算出される。デューティ比は、スイッチの1スイッチング周期に対するオン期間の比率である。昇圧動作中において、各相上アームスイッチSUH~SWH及び充電入力相の下アームスイッチは、オフされる。
【0050】
なお、設定部72は、バッテリ10の電圧情報VHとして、電圧センサ60の検出値やバッテリ10の定格電圧の情報を用いることが可能である。また、設定部72は、充電器11の充電電力の電圧情報Vinとして、制御装置70に対して上位のECUから送信される充電器11の情報を用いることが可能である。この場合、上位のECUが充電器11の充電電力の電圧情報Vinを取得することが必要となる。
【0051】
図6に、制御装置70により実行される制御の処理手順を示す。この制御は所定周期ごとに繰り返し実行される。
【0052】
ステップS10では、外部充電制御を行うか否かを判定する。外部充電制御を行うか否かの判定は、制御装置70に対して上位のECUからの送信情報に基づいて行うことが可能である。具体的には、上位のECUからの送信情報に基づいて、正極側接続部80及び負極側接続部81を介して充電器11及びバッテリ10が電気的に接続された状態であり、かつ指令トルクが0であるかを判定する。ステップS10において否定判定した場合、ステップS17に進む。一方、ステップS10において肯定判定した場合、負極側充電スイッチQnをオンし、ステップS11に進む。
【0053】
ステップS11では、昇圧動作を行うか否かを判定する。昇圧動作を行うか否かの判定は、バッテリ10の電圧と充電器11の充電電力の電圧との比較に基づいて行うことが可能である。充電器11の充電電力の電圧がバッテリ10の電圧より低い場合に、昇圧動作を行うと判定し、ステップS12に進む。一方、充電器11の充電電力の電圧がバッテリ10の電圧より高い場合に、昇圧動作を行わないと判定し、ステップS16に進む。なお、バッテリ10の電圧としては、電圧センサ60の検出値やバッテリ10の定格電圧を用いることが可能である。充電器11の充電電力の電圧としては、制御装置70に対して上位のECUから送信される情報を用いることが可能である。
【0054】
ステップS12では、回転電機30のロータ31の電気角θを取得する。回転電機30のロータ31の電気角θとしては、回転角センサ62の検出値を用いることが可能である。ステップS13では、取得した電気角θに基づいて、各相充電スイッチQu~Qwのうちいずれかをオンする事前処理を行う。これにより、充電入力相が定められる。ステップS13において、制御装置70は、処理部71として機能する。
【0055】
ステップS14では、回転電機30のロータ31の電気角θに基づいて、回転電機30の出力トルクが所定値以下になるように、各相巻線32U~32Wに流れるq軸電流が0又は0付近の値となる電流比Irを設定する。ステップS14において、制御装置70は、設定部72として機能する。ステップS15では、昇圧動作を行うためのスイッチング制御を行う。具体的には、バッテリ10の電圧情報VH及び充電器11の充電電力の電圧情報Vinに基づいて、昇圧比を算出する。そして、電流比Ir及び昇圧比に基づいて、各相のうち充電入力相以外の相における各下アームスイッチのデューティ比を算出する。そして、各相上アームスイッチSUH~SWH及び充電入力相の下アームスイッチをオフすると共に、算出したデューティ比に基づいて、各相のうち充電入力相以外の相における各下アームスイッチをオンオフする。これにより、回転電機30及びインバータ40を昇圧コンバータとして機能させ、外部充電制御を実行することが可能となる。ステップS15において、制御装置70は、算出部73として機能する。
【0056】
ステップS16では、通常充電制御を行う。通常充電制御では、各スイッチSUH~SWLをオフし、かつ各相充電スイッチQu~Qwのうち少なくとも1つをオンする。この場合、充電器11の充電電力は、オンされた充電スイッチの相における上アームダイオードを介してバッテリ10に供給される。例えば、各相充電スイッチQu~Qwをオンして通常充電制御を行うことが可能である。この場合、
図7に示すように、充電器11、正極側接続部80、正極側充電経路Lc、各相接続経路Lu,Lv,Lw、各相導電部材50U,50V,50W、各相上アームダイオードDUH,DVH,DWH、正極側経路Lp、バッテリ10、負極側充電経路Ld及び負極側接続部81を含む閉回路が形成される。これにより、充電器11からバッテリ10へと電力が供給される。本実施形態において、ステップS15,S16の処理が「制御部」に相当する。
【0057】
ステップS17では、回転電機30の駆動制御を行う。この場合、例えば、制御量を、回転電機30のトルクとし、指令値を、上位の制御装置から入力される指令トルクとして、電流フィードバック制御を行う。電流フィードバック制御は、各相導電部材50U,50V,50Wに流れる電流を、指令トルクに基づいて設定される指令電流にするフィードバック制御である。各相導電部材50U,50V,50Wに流れる電流としては、電流センサ61の検出値を用いることが可能である。
【0058】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0059】
電力変換装置20において、各相導電部材50U~50Wに、充電器11の正極端子が電気的に接続可能とされると共に、負極側経路Lnに、充電器11の負極端子が電気的に接続可能とされる。この場合、回転電機30及びインバータ40において構造が変更されることを抑制しつつ、インバータ40及び各相巻線32U~32Wを介して充電器11をバッテリ10に電気的に接続できる。そのため、インバータ40に昇圧動作を行わせるための構成を簡易に実現できる。その結果、外部充電制御を簡易に実施することができる。
【0060】
正極側接続部80及び負極側接続部81を介して充電器11及びバッテリ10が電気的に接続された状態において、回転電機30の出力トルクを所定値以下にしつつ、昇圧動作を行うべく、スイッチング制御が行われる。これにより、回転電機30のロータ31が意図せず回転することを抑制しつつ、外部充電制御を実施することができる。そのため、回転電機30のロータ31が意図せず回転することに起因して、外部充電制御を実施できない事態の発生を抑制でき、外部充電制御を簡易に実施することができる。
【0061】
スイッチング制御が行われることに先立ち、充電入力相が特定相となるように、各充電スイッチQu~Qwのうちいずれかをオンする事前処理が行われる。充電入力相が特定相に一致した状態では、昇圧動作中において、回転電機30の出力トルクが所定値以下となるように、電機子巻線に流すq軸電流を0又は0付近の値に制御することが可能となる。そのため、事前処理が行われた後において、昇圧動作を行うためのスイッチング制御が行われることにより、外部充電制御中において、回転電機30のロータ31が意図せず回転することを的確に抑制することができる。
【0062】
正極側接続部80及び各相導電部材50U~50Wを接続する各相接続経路Lu~Lwが備えられ、各相接続経路Lu~Lwには各相充電スイッチQu~Qwが設けられている。この構成では、各相充電スイッチQu~Qwのうちいずれかがオンされることにより、充電入力相を定めることが可能となる。そこで、本実施形態によれば、回転電機30のロータ31の電気角θに基づいて、各相充電スイッチQu~Qwのうちいずれかをオンすることにより、充電入力相が定められる。これにより、充電入力相を特定相に的確に一致させることができる。
【0063】
回転電機30のロータ31の電気角θに基づいて、各相導電部材50U~50Wに流れる線電流の大きさの比であって、回転電機30の出力トルクが所定値以下となるように、各相巻線32U~32Wに流れるq軸電流が0又は0付近の値となる電流比が設定される。そして、各相導電部材50U~50Wに流れる電流の大きさが設定された電流比になるように、スイッチング制御が行われる。これにより、回転電機30のロータ31が回転することを抑制するのに好適なスイッチング制御を実施することができる。
【0064】
バッテリ10の電圧情報VH及び充電器11の充電電力の電圧情報Vinに基づいて、昇圧比が算出され、昇圧比及び電流比に基づいて、各相のうち充電入力相以外の相における各下アームスイッチのデューティ比が算出される。そして、各相上アームスイッチSUH~SWH及び充電入力相の下アームスイッチがオフされると共に、デューティ比に基づいて、各相のうち充電入力相以外の相における各下アームスイッチがオンオフされる。これにより、充電器11の充電電力の電圧を、バッテリ10を充電可能な電圧に昇圧しつつ、回転電機30のロータ31が回転することを抑制するのに好適なスイッチング制御を実施することができる。
【0065】
充電器11の充電電力の電圧がバッテリ10の電圧よりも高い場合に、正極側接続部80及び負極側接続部81を介して充電器11及びバッテリ10が電気的に接続された状態において、各スイッチSUH~SWLがオフされる。充電器11の充電電力の電圧がバッテリ10の電圧よりも高い場合では、各相充電スイッチQu~Qwがオンされた相の上アームダイオードを介して、充電器11の出力電流がバッテリ10に供給される。これにより、各スイッチSUH~SWLのスイッチング制御を行うことなく、外部充電制御を行うことができる。そのため、外部充電制御を簡易に実施することができる。
【0066】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0067】
図8に、本実施形態に係る充電システムの全体構成図を示す。本実施形態において、正極側接続部80は、正極側充電経路Leを介して各相導電部材50U~50WのうちW相導電部材50Wのみと接続されている。正極側充電経路Leには、W相充電スイッチQwが設けられている。なお、
図8において、先の
図1に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0068】
以下では、本実施形態に係る制御装置70が行う外部充電制御について説明する。
【0069】
上述した構成では、充電入力相がW相に定められる。一方で、回転電機30のロータ31の電気角θを変化させ、特定相を変更することが可能である。そこで、処理部71は、事前処理として、回転電機30のロータ31の電気角θを特定範囲内の値とするように、回転電機30のロータ31の電気角θを調整する処理を行う。ここで、特定範囲は、回転電機30のロータ31における電気角θの範囲であって、充電入力相が特定相となる電気角θの範囲である。具体的には、充電入力相が特定相となる電気角θの範囲には、第1範囲と、第1範囲の最小値及び最大値に180°を加算した値から定められる第2範囲とがある。例えば、
図9に示すように、充電入力相がW相に定められている場合、30°≦θ≦90°が第1範囲A1であり、210°≦θ≦270°が第2範囲A2である。
【0070】
処理部71は、事前処理において、第1範囲及び第2範囲のうち現状における回転電機30のロータ31の電気角θから近い方を特定範囲とし、特定範囲内に回転電機30のロータ31の電気角θが含まれるように、各スイッチSUH~SWLをオンオフさせて各相巻線32U~32Wに電流を流し、回転電機30のロータ31を回転させる。例えば、処理部71は、現状における回転電機30のロータ31の電気角θに対して、第1範囲の中央値までの角度及び第2範囲の中央値までの角度が小さい方を特定範囲とすればよい。
【0071】
具体的には、
図9に示すように、処理部71は、事前処理において、現状における回転電機30のロータ31の電気角θが180°である場合に、第2範囲A2を特定範囲とし、第2範囲A2内に電気角θが含まれるように、各スイッチSUH~SWLをオンオフさせて各相巻線32U~32Wに電流を流し、回転電機30のロータ31を回転させる。これにより、事前処理において、電気角θを第1範囲A1内の値とする場合に比べて、回転電機30のロータ31が回転することを抑制できる。なお、
図9では、実線によりU相導電部材50Uに流れる電流を示し、破線によりV相導電部材50Vに流れる電流を示し、一点鎖線によりW相導電部材50Wに流れる電流を示している。
【0072】
また、例えば、処理部71は、事前処理において、現状における回転電機30のロータ31の電気角θが180°である場合に、電気角θを、第2範囲A2内の中央値である240°より小さい値まで変化させてもよいし、240°まで変化させてもよいし、240°より大きい値まで変化させてもよい。処理部71は、事前処理において、現状における回転電機30のロータ31の電気角θが180°である場合に、第1範囲A1内に電気角θが含まれるように、各スイッチSUH~SWLをオンオフさせて各相巻線32U~32Wに電流を流し、ロータ31を回転させてもよい。
【0073】
本実施形態では、先の
図6のステップS12において、現状における回転電機30のロータ31の電気角θを取得する。言い換えると、事前処理を行う前の回転電機30のロータ31の電気角θを取得する。
【0074】
ステップS13において、事前処理として、特定範囲内に回転電機30のロータ31の電気角θが含まれるように、回転電機30のロータ31を回転させ、ロータ31の電気角θを調整する処理を行う。事前処理は、各スイッチSUH~SWLをオンオフさせ、各相巻線32U~32Wに電流を流すことにより実行可能である。その後、W相充電スイッチQw及び負極側充電スイッチQnをオンし、ステップS14に進む。ステップS14,S15の処理は、第1実施形態と同様である。
【0075】
なお、現状における回転電機30のロータ31の電気角θが、特定範囲内の値である場合には、ロータ31の電気角θを調整する処理を行わなくてもよい。また、回転電機30のロータ31の電気角θを調整する処理を行うよりも前に、W相充電スイッチQw及び負極側充電スイッチQnをオンし、充電器11の充電電力を電源として各相巻線32U~32Wに電流を流し、回転電機30のロータ31を回転させることにより、回転電機30のロータ31の電気角θを調整してもよい。
【0076】
本実施形態では、正極側充電経路Leを介して正極側接続部80とW相導電部材50Wとが接続されたW相が充電入力相となる。この場合、回転電機30のロータ31における電気角θの範囲であって、充電入力相が特定相となる電気角θの範囲が第1範囲A1及び第2範囲A2に定められる。そこで、充電入力相が特定相となる第2範囲A2内に回転電機30のロータ31の電気角θが含まれるように、各スイッチSUH~SWLのオンオフによって各相巻線32U~32Wに電流を流すことにより回転電機30のロータ31を回転させ、回転電機30のロータ31の電気角θが調整される。これにより、回転電機30のロータ31が回転させられ、充電入力相を特定相に的確に一致させることができる。
【0077】
<その他の実施形態>
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0078】
・第2実施形態において、正極側接続部80は、正極側充電経路Leを介して各相導電部材50U~50WのうちU相導電部材50Uのみと接続され、正極側充電経路Leには、U相充電スイッチQuが設けられてもよい。この場合、U相が充電入力相となり、充電入力相が特定相となる電気角θの範囲が0°≦θ<30°、150°≦θ<210°及び330°≦θ<360°に定められる。
【0079】
また、正極側接続部80は、正極側充電経路Leを介して各相導電部材50U~50WのうちV相導電部材50Vのみと接続され、正極側充電経路Leには、V相充電スイッチQvが設けられてもよい。この場合、V相が充電入力相となり、充電入力相が特定相となる電気角θの範囲が90°≦θ≦150°及び270°≦θ≦330°に定められる。
【0080】
・第1実施形態において、先の
図6のステップS13の事前処理として、各相充電スイッチQu~Qwのうちいずれかをオンする処理と、回転電機30のロータ31の電気角θを調整する処理とを行ってもよい。
【0081】
例えば、事前処理として、現状における回転電機30のロータ31の電気角θが0°≦θ<30°、150°≦θ<210°及び330°≦θ<360°である場合には、回転電機30のロータ31の電気角θを調整する処理を行い、現状における回転電機30のロータ31の電気角θが0°≦θ<30°、150°≦θ<210°及び330°≦θ<360°以外の値である場合には、V,W相充電スイッチQv,Qwのうちいずれかをオンする処理を行ってもよい。この場合、各相接続経路Lu~LwのうちU相接続経路Luを省略することが可能である。
【0082】
・インバータに接続される蓄電部は、蓄電池に限らず、充放電可能なコンデンサであってもよい。
【0083】
・回転電機としては、各相の巻線が星形結線されるものに限らず、Δ結線されるものであってもよい。
【0084】
・インバータ、回転電機及び制御装置の搭載先としては、車両に限られず、例えば航空機又は船舶等の移動体であってもよい。移動体が航空機の場合、回転電機は航空機の飛行動力源となり、移動体が船舶の場合、回転電機は船舶の航行動力源となる。また、インバータ、回転電機及び制御装置の搭載先としては、移動体に限られない。
【0085】
・本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0086】
・以下、上述した各実施形態から抽出される特徴的な構成を記載する。
[構成1]
充放電可能な蓄電部(10)と、
複数相の電機子巻線(32U~32W)を有し、前記蓄電部を電源として駆動する回転電機(30)と、
前記蓄電部の充電電力を供給する充電器(11)と、を備えるシステムに適用される電力変換装置(20)において、
前記電機子巻線に流れる電流を制御する上下アームの電流スイッチ(SUH~SWL)を相数分有し、各相における上アームの前記電流スイッチの高電位側端子を接続している正極側経路(Lp)が、前記蓄電部の正極側に電気的に接続可能とされ、かつ各相における下アームの前記電流スイッチの低電位側端子を接続している負極側経路(Ln)が、前記蓄電部の負極側に電気的に接続可能とされたインバータ(40)と、
前記負極側経路に、前記充電器の負極側が電気的に接続可能とされた負極側接続部(81)と、
各相において上下アームの前記各電流スイッチの接続点及び前記各電機子巻線の端部を接続している線電流経路(34U~34W,42U~42W,50U~50W)のうち少なくとも1相の線電流経路に、前記充電器の正極側が電気的に接続可能とされた正極側接続部(80)と、を備える、電力変換装置。
[構成2]
前記正極側接続部及び前記負極側接続部を介して前記充電器及び前記蓄電部が電気的に接続された状態において、前記回転電機の出力トルクを所定値以下にしつつ、前記充電器の出力電圧を昇圧し、昇圧された電圧を蓄電部に供給する昇圧動作を行うべく、前記電流スイッチのスイッチング制御を行う制御部と、を備える、構成1に記載の電力変換装置。
[構成3]
各相のうち、前記回転電機のロータ(31)における電気角に応じて定められる相であり、前記回転電機の出力トルクが前記所定値以下となるように、前記電機子巻線に流すq軸電流を0又は0付近の値とした場合に、前記線電流経路に流れる電流の向きが他の相とは逆向きである相を特定相とし、
各相のうち、前記昇圧動作中に前記線電流経路に流れる電流の向きが、前記正極側接続部側から前記電機子巻線側に向かう向きである相を充電入力相とし、
前記スイッチング制御が行われることに先立ち、前記充電入力相が前記特定相となるように、前記ロータの電気角を調整する処理、及び前記充電入力相を定める処理の少なくともいずれかである事前処理を行う処理部を備える、構成2に記載の電力変換装置。
[構成4]
前記正極側接続部及び各相の前記線電流経路を接続する充電経路(Lc,Lu~Lw)と、
各相の前記充電経路に設けられた充電スイッチ(Qu~Qw)と、を備え、
前記処理部は、前記事前処理として、前記ロータの電気角に基づいて、前記各充電スイッチのうちいずれかをオンすることにより、前記充電入力相を定める処理を行う、構成3に記載の電力変換装置。
[構成5]
前記正極側接続部及び各相の前記線電流経路のうちいずれかを接続する充電経路(Le)を備え、
前記充電入力相は、前記充電経路を介して前記正極側接続部と前記線電流経路とが接続された相であり、
前記処理部は、前記事前処理として、前記充電入力相が前記特定相となる電気角の範囲内に、前記ロータの電気角が含まれるように、前記電流スイッチのオンオフによって前記各電機子巻線に電流を流すことにより前記ロータを回転させ、前記ロータの電気角を調整する処理を行う、構成3に記載の電力変換装置。
[構成6]
前記充電入力相が前記特定相となる電気角の範囲には、第1範囲と、前記第1範囲外の第2範囲とが含まれ、
前記処理部は、前記事前処理として、前記第1範囲及び前記第2範囲のうち現状における前記ロータの電気角から近い方である特定範囲に前記ロータの電気角が含まれるように、前記電流スイッチのオンオフによって前記各電機子巻線に電流を流すことにより前記ロータを回転させ、前記ロータの電気角を調整する処理を行う、構成5に記載の電力変換装置。
[構成7]
前記回転電機のロータ(31)の電気角に基づいて、各相の前記線電流経路に流れる電流の大きさの比であって、前記回転電機の出力トルクが前記所定値以下となるように、前記電機子巻線に流れるq軸電流が0又は0付近の値となる電流比を設定する設定部を備え、
前記制御部は、各相の前記線電流経路に流れる電流の大きさの比が前記設定部により設定された前記電流比になるように、前記スイッチング制御を行う、構成2~6のいずれか1つに記載の電力変換装置。
[構成8]
各相のうち、前記昇圧動作中に前記線電流経路に流れる電流の向きが、前記正極側接続部側から前記電機子巻線側に向かう向きである相を充電入力相とし、
前記制御部は、前記スイッチング制御において、
前記蓄電部の電圧及び前記充電器の充電電力の電圧に基づいて、前記昇圧動作の昇圧比を算出し、
前記昇圧比及び前記電流比に基づいて、各相のうち充電入力相以外の相における下アームの前記電流スイッチのデューティ比を算出し、
各相の上アームの前記電流スイッチ及び前記充電入力相における下アームの前記電流スイッチをオフすると共に、前記デューティ比に基づいて、各相のうち充電入力相以外の相における下アームの前記電流スイッチをオンオフする、構成7に記載の電力変換装置。
[構成9]
前記各電流スイッチには、逆並列にダイオード(DUH~DWL)が接続されており、
前記充電器の充電電力の電圧が前記蓄電部の電圧よりも高い場合に、前記正極側接続部及び前記負極側接続部を介して前記充電器及び前記蓄電部が電気的に接続された状態において、前記電流スイッチをオフする制御部を備える、構成1~8のいずれか1つに記載の電力変換装置。
【符号の説明】
【0087】
10…バッテリ、11…充電器、20…電力変換装置、30…回転電機、31U,31V,31W…U,V,W相巻線、40…インバータ、50U,50V,50W…U,V,W相導電部材、80…正極側接続部、81…負極側接続部、U,V,W相上アームスイッチ…SUH,SVH,SWH、U,V,W相下アームスイッチ…SUL,SVL,SWL。